2016年11月30日

NHKスペシャル「追跡 パナマ文書 衝撃の“日本人700人”」

NHKスペシャル「追跡 パナマ文書 衝撃の“日本人700人”」

 今回はパナマ文書について。
 パナマ文書っていうと、
 富裕層とか各国の権力者の資産隠しの話?
 と思ってあんまり興味が沸いていなかったのですけど
 取りあえず見てみました。

 そしたら、今回は一般の人が知らない間に犯罪に巻き込まれているかもしれない話になっていて、
 けっこう見応えがありました。

 というわけで内容から。

○パナマ文書とは
 パナマ文書とは、
 パナマの法律事務所から漏れた大量の文書

 名無しのゴンベエを名乗る人物からもたらされたもので、
 アメリカにあるICIJ、国際調査報道ジャーナリスト連合により詳細に調査された

 内容としては
 このパナマの法律事務所が設立した世界各地のペーパーカンパニーの情報
 設立を依頼した個人の名前、パスポート、住所の証明書などの個人情報も含まれる

 ここには権力者、富裕層の名前もあり、
 彼らの資産逃れの実態が明らかになった
 違法、あるいは違法スレスレの行為があった、
 ということで世界的な問題となった

 アイルランド首相の辞任、
ロシアのプーチン大統領や中国の習首席なども関わっているのでは、という話がありましたね…

 NHKも6月からこのICIJの調査プロジェクトに加わったそうです。
 その結果日本人700人の情報が記載されていることが分かり、
 NHKはその個人一人一人について詳細を聞いて回っています。
 取材を拒否する人もいたが、応じてくれる人もいた

 今回の番組はその結果の一部をまとめたものです。

○漫画家のいがらしゆみこさん
 本人は「身に覚えがない」
 サインも本人のものではなかった
 サインすれば他人でもペーパーカンパニーを作ってしまえるのか、
 と驚いていました。

○富裕層の男性
 彼は名前も顔も隠していました。
 かなりの資産家らしく、
 高級車24台を持ち、うち数台は限定ものの高額なもの
 また、着けている時計も出せば個人を特定されるほどレアなものらしい

 彼はイギリス領バージン諸島に2つのペーパーカンパニーを持っている
 ここに巨額の資産を持っていたらしい

 このように、
 富裕層などが税金を低く押さえる手段としてタックスヘイブンが使われることはよくある

 彼はこのお金で美味しいものを食べたりカジノで使ったりしていたらしい。

 しかし、パナマ文書でその資産の存在が明らかになり
 彼は税務署に自己申告して追徴課税を支払っているそうです。
 年間3億かそれ以上税金だけで支払っている、とのこと。

 彼は
 自分のケースは意図的ではないから悪質ではない、
 日本人はつい金持ちを妬む傾向にあるが
 金持ちは悪いという意識は持たないで欲しい、
 と話していました。

○元AIJ投資会社の顧問浅川和彦氏
 巨額の年金資金の運用に失敗し、
 その損失を隠蔽したとして
 詐欺容疑で逮捕された
 この事件で90万人の年金が失われ
 今まで回収できたのは被害者の資金の1/10にも満たないらしい

 パナマ文書から
 彼がバージン諸島に2つのペーパーカンパニーを持っていたことが発覚

 収監直前の彼にNHKがインタビューしています。
 本人は「知らない」の一点張り。
 しかしやがて、
 「かつて証券マンだったとき、
  顧客の不正に協力するために設立した」と告白。
 日本の株を買う隠れ資金として利用していたそうです。
 しかし、個人として利益を得ていたわけではない、とのこと

 しかしパナマ文書の記録では、
 不可解な名義変更があった

 元々2つの会社は浅川氏本人の名義ではなく代理人名義で、
 自分の名前を隠して株価の取引がされていた
 しかし、AIJの不正が発覚し、逮捕される前に本人名義に変えられている

 本人はこれについても
 「そんなことはない、知らない」

 しかし、この事実が分かったあと再び捜査が入り、
 1000万の預金が彼のペーパーカンパニーの口座から発見されたらしい

 これらの名義変更と1000万の預金は何なのか?

 彼の証券マン時代にペーパーカンパニー設立に関わった人物の推測によると

 不正発覚後、浅川氏が急に名義変更したのは
 お金を動かしやすくするためだったのではないか、とのこと
 代理人名義だと、お金の出し入れが時間がかかる
 自分の名前を表に出してでも
 慌てて動かしたいお金があったのではないか、
 とのこと。
 ペーパーカンパニーの口座に残された1000万は、
 巨額のお金を動かして残ったお金ではないか、とのことです。

 つまり、不正が発覚した後、
 年金投資詐欺の被害者への多額の補償金の支払いを命ぜられる前に、
 自分が持つペーパーカンパニーの巨額資産をどこかに隠し、
 支払いを免れようとしているのではないか、
 というわけです。

 本人に問合せしても、今のところ回答はないらしい

○一般人が巻き込まれている例
 今回明らかになった例として
 一般人が犯罪に巻き込まれるかもしれないケースがあったそうです。

 今回取材班が注目したのは
 7人の一般人について
 いずれも住所などはバラバラだが、
 カリブ海のアンギラという所にペーパーカンパニーを所有している

 いずれも設立を依頼した個人の名前、パスポート、住所の証明書が明らかにされており、
 それを元に一人一人聞いて回っています。

 しかし、7人とも
 書いてある住所は存在しないか、全く違う人が住んでいた

 このうち一人に接触できたので本人に尋ねると
 「アンギラってどこ?」
 「全く知らない」とのこと
 更に、住所の証明に使われていた携帯電話の領収書については、
 携帯電話会社によれば契約の実態自体がないとのこと

 彼に話を聞くと、
 去年住んでいた寮で盗難に遇い、
 パスポートなどが盗まれたのだそう。
 パスポートは返ってきたが、
 盗まれたときにコピーなどが取られた可能性がある

 他の6人については、
 この男性のような盗難はないそうです。
 しかしパソコンをレンタルするときに
 レンタル会社にパスポートを提出したことがあり、
 そこから情報が漏れた可能性があるそうです。
 レンタル会社も
 「自社から個人情報が漏れた可能性はある」
 と認めているそうです。

 つまり漏れた情報を元に誰かが勝手にペーパーカンパニーを設立したということになる

 この6人のうち、
 一人の小豆島にすむ女性はペーパーカンパニーの運営責任者にさせられていた
 その会社をネットで調べると、
 出会い系サイトの運営をしていることになっている
 実はこのようなペーパーカンパニーは、
 暴力団などの資金源獲得に利用されている恐れがあるらしい

 この女性は
 「知らない、恐ろしい、記録を消せるなら消したい」

 このペーパーカンパニーは
 香港の「モサック・フォンセカ」という会社により設立されている
 日本の個人情報が香港の仲介業者に流れ、
 仲介業者からモサック社に流れてペーパーカンパニーが立てられたらしい
 香港には、モサック社と取引がある仲介業者は2000社以上あるそうです。

 このモサック社について、
 NHKは香港のテレビHK01と共同取材することになったそうです。
 HK01は政治家の不正を暴くなどの実績があり、
 今回も、闇の資金源につながる香港の仲介業者の実態に興味があるとのこと

 先程の小豆島の女性は、
 HK01の取材に応じて香港に足を運んでいます。
 「どうすればこのカンパニーを閉鎖できるか知りたい」

 しかし、モサック社の担当者に会っても
 「仲介業者の責任だからそちらに聞いてくれ」

 そこで仲介業者の担当者に会うと、
 「ルールのため情報源は言えない」
 食い下がっても、日本の投資会社で取引が長い所だ
 としか教えてくれなかったらしい

 ペーパーカンパニー設立を行うモサック社によると
 ペーパーカンパニーは、
 パスポートと住所の証明さえあれば
 あとはメールでのやり取りで設立できるのだそうです。
 本人確認もしない、とのこと

 香港の議員は
 「ペーパーカンパニーは国際的な犯罪集団の資金源になっている恐れがある
 そこに外国人が巻き込まれている事実は許せない」

 被害の女性は
 「誰かが悪意を持って利用したのは事実、
  何かあったときは私の責任にさせられる、
  私の人生を侵されている」
 と憤っていました。

 ちなみに、このように一般人の個人情報がパナマ文書に載せられている事実は、
 この日お昼のニュースで流れていました。
 しかしニュースで見た限りは
 時間の関係か、さらっと話している感じで、
 闇の資金源になっているかもとかいう話は無かったので
 「ふーん、だからなに?」
 みたいな感じでしたけどね…
 (私なんかはNスペの番宣か?と思ってました)

○ジャーナリズムの変化
 パナマ文書はジャーナリストの世界も変えたそうです。
 お金の流れが国境を越えて行われていることから、
 複数の国での共同取材が増えたらしい。
 タックスヘイブンは不透明な存在、
 過激組織の資金源にされているかもしれない、
 という危機感が共通してある

 現在、NHKはイタリアと共同で美術品に関する件を調査中
 また別の事実が明らかにされるのかも。

まだまだパナマ文書については分析中のようなので
to be continued...という感じの終わりかたでした。

感想など
・そもそもタックスヘイブン、つまり法人税率が低い国って何で存在するの?
 という素朴な疑問を感じました。

 そしたら、どうもタックスヘイブンは資本主義の必要悪的な存在みたいです。

 http://s.news.mynavi.jp/c_career/level1/yoko/2013/03/post_3324.html

 http://wpb.shueisha.co.jp/2013/10/24/22624/2/

 どの専門家も「タックスヘイブンは無くならないだろう」と話しています。
 ・タックスヘイブンは島国とか小さい国が多く、
  そういう国は企業を呼べ、国おこしになる
 ・企業は節税になる

 そういえば、この前見た「マネー・ワールド」でも同じような話だったな。

 企業にとっても節税になり、株主利益を守れる。
 そこはまぁ企業も苦しい一面があるのかなと思えなくもない。
 (といっても違法行為はどうかと思うが…)

 しかし私が一番よく分からないのは、
 富裕層や権力者がなぜタックスヘイブンをわざわざ使うのかです。
 今回インタビューに出ていた資産家の男性も
 タックスヘイブンで浮いたお金で豪遊した、とあった。
 だけど、そんなのできるくらいの財産は元々あるのでは?
 (まぁ、彼は意図的ではないらしいが)

 なんかお金持ちの本とか読むと、
 お金持ちほど貯めたがる、みたいな話をよく見るけど
 その辺は凡人には分からん感覚だなぁと思う。
 お金持ちの独特な心理を研究したら格差是正につながるのかも…

 ちなみにネット上での1つの意見としては
 「お金持ちが税金をちゃんと払ったところで
  国がちゃんと使うのか。
  政治家の私腹を肥やすのに使われるだけだ」
 という意見もありました。

 なるほどね、それも分かる。
 うーん、でもそれなら自分で財団作るなりして、
 教育とか貧困支援とか、有効と思えるような使い方をすればいいのではないか?
 実際、財団作ったり寄付する著名人もいますよね。
 お金を持つ人みんなが、そういう有効な使い方を考えてくれるといいのだが。
 
・今回は富裕層の資産隠しよりも一般市民が巻き込まれる話が
ちょっと驚きでした。
 タックスヘイブン自体は無くせそうにないですけど、
 ペーパーカンパニーの設立条件を厳しくするとか、
 設立依頼者の身元調査や本人確認をきちんとやるなどの対策はしてほしいものです。

 あと、パスポートの情報が勝手に使われるのも怖いと思いました。
 無効になったパスポートは使え無くするとか、
 本人の申し出があったらカンパニーを解消できるなど、
 被害が分かったら差し押さえできる仕組みもぜひ作っていただきたい。
 世界的な取り締まり組織ができたらと思います。

 個人としてできることとしては、情報の扱いには気を付けることかなぁ。
 (パスポートは持ってないけど)

今回のパナマ文書は匿名者の告発により明らかにされた訳ですが、
あらゆる意味で情報の持つ力は強いな~
と感じた次第です。

というわけで、今回はこの辺で。

2016年11月25日

Eテレオイコノミア「いくらで聴く?音楽の経済学」

Eテレオイコノミア「いくらで聴く?音楽の経済学」

今回は音楽について。
講師は大竹先生です。
音楽と経済学って、けっこう強引?と思ったりしましたが…

○渋谷の本屋さん
 さて最初は、又吉さんと先生が渋谷の本屋を訪れています。
 この本屋には本だけでなく、
 CD、お酒や雑貨なども置いています。

 この本屋は元々HMVというCD屋さんでしたが、
 CDの売り上げは年々減少、閉店となる。
 しかし去年、本屋として再オープンした。

 この本屋では売り方に特徴があり、
 例えばイタリア料理のレシピ本とオペラのCD、
 フランス料理のレシピ本とフランス映画のサントラCD、
 あるいはビールやワインとお酒の本、
 というように、関連性のあるものをまとめて陳列してあります。

○ゲストの清水ミチコさん
 トークの場面は、清水ミチコさんのライブから始まりました。
 矢野顕子さんのものまねかな?

 ここで先生が
 「ものまねも経済学と関係あるんですよ」

 清水さんは「ギャラですか」
 と言っていたけど、他にもある。
 ヒントは先程の本屋。

 正解は「補完効果」でした。
 「補完材」
  一緒に使うと、より効用が高まる2つの材
  例えばパンとジャム、など

 又吉さん
 「組み合わせるとより良くなる、ってことですね」

 経済学的には、
 補完材同士では、
 片方の消費が増えればもう一方の消費量も増える

 ものまねも、真似を披露すればオリジナルの人の認知度もアップする、という効果がある

 清水さん
 「そう言ってもらえると嬉しいですねー。
  たしかに矢野顕子さんのCDの動画の閲覧回数が増えたら
  私の動画も増える時があります」

 「矢野顕子さんのCDと清水さんのCDを並べて売ったらいいかもしれないですね」
  「どんだけ図々しいんだって言われる(笑)」

○ライブチケットの転売問題
 数ヵ月前、音楽愛好団体?から、チケットの転売反対を表明する新聞広告が出されました。
 そこでチケット転売問題を考えています。

 先生「お二人はチケット転売についてはどう思いますか」
 二人「ダメです」
 清水さんは、
 「でも自分が行けなくなったときに
  行きたい人にあげたいのは分かります」

 一般に、チケットを買ったが行けなくなって知り合いに売るのは違法ではない
 しかし、最初から転売する目的でチケットを大量に買い、
 売って利益を得るのは違法だそう。

 清水さん
 「有名なアーティストのコンサートで最前列に人がいなかった、という話もありますよね」

 先生によると、
 これは高すぎて売れなかったのではなく、
 高く売りたいので売り惜しんでいた可能性がある、とのこと。
 例えば30枚しかないチケットなら
 ほしい人は値段を釣り上げてでも買う。
 しかし100枚なら値段が下がってしまう。
 そういう目的で、少ない枚数にして売る人もいるのだそうだ。

 しかし先生によると、
 チケット転売問題は、
 経済学的に考えればチケットが安すぎるのが問題なのだそうです。

 ここで、チケットの枚数と価格の関係グラフを出しています。

 直線関係とすれば、売れる枚数と価格の釣り合いが大事。
 例えば10000円とか、高過ぎればほしい人は買うが、買えない人が多くて売れ残ってしまう
 逆に4000円とか安過ぎれば、チケットが足りなくなる
 このとき4000円で買う人の中には
 本当は20000円出しても買いたい人もいれば、
 4000円くらいしか出さない、と言う人もいる
 4000円くらいの価値しかつけない人が20000円の人に売るのが転売問題。

 なので経済学的には、8000円とか適正価格にすればこんなことはならない
 と考えるのだそうだ。

 しかし、安い価格設定をなぜするのか?

 これは、ファンにとってもアーティストにもメリットがあるらしい。
 ファンにとっては、安く買える。
 アーティストにとっては
 ・一時的に売れたからと値段を上げると、ファンが離れてしまう恐れがある、
 ・また、安い価格なら聞いてみよう、という新規のファンが開拓できる(特に財力のない若い人)

 ここで、又吉さんがチケット転売問題に対する解決案を提案しています。

 「例えば8000円とか高めに売っておいて、
  当日来てくれた人には3000円キャッシュバックする」

 又吉さんによると、
 転売する人はチケットが安いから大量に買い、
 それが一枚でも二枚でも高く売れたら儲かる
 だけど8000円など高いチケットなら、たくさん売らないと元が取れず、儲からないから転売目的の買い占めが無くなるのでは、
 ということらしい。

 「キャッシュバックだけもらって帰る人もいるかもしれないけど、
  それを何回もやっていたら
  ああまたこの人やなとチェックできる」

 このアイデアには先生も感心していましたが
 又吉さん
 「やっていないということはシステムを作るのが難しい…んですかね?」
 先生
 「そうですか?…そんなことないと思いますけどね。
  ぜひ採用してもらいたいですね」

○ライブの経済学実験
 次はライブコンサートを使った実験です。

 又吉さん、先生、清水さんと、
 何人かの被験者さんがライブを聞きます。
 ちなみに田中光さん(この番組で時々登場するシュールな?漫画を担当されている方)
 もおられました。

 登場したのはハンバートハンバート。
 2001年デビューの夫婦デュオです。
 ちなみに又吉さんは大ファンでそれを公言されているそうです。
 番組ではいつも頑張っている又吉さんのために来ていただいたそうです。
 それから田中さんもハンバートハンバートの大ファンなんだとか。

 さてみなさんで一曲聞きます。
 又吉さんのリクエスト「ぼくのお日さま」
 素朴な歌声に癒されますね~

 このあとハンバートハンバートには帰っていただき
 (一曲だけのために来ていただいたそうです(笑))
 被験者に質問をする
 「今のライブにいくら払いますか?」
 値段は聞き手の言い値だそうです。

 まず一般の被験者さんたちから。
 田中さんを含め6人ほどおられますが、
 安い人は100円、
 高い人は田中さんの4500円。

 理由を聞いています。
 2000円の方「一曲のCDは相場で1000円、ライブだからその倍」
 100円の方「申し訳ないんですけど、知らない方たちなので、一人50円として二人で100円」
 田中さんの4500円「めちゃくちゃファンなので、もう生で見られただけで大感激、いくらでも払いたいんだけど、今持っているのが5000円、電車代とか考えたら4500円かなと」

 このように理由は色々。

 清水さんは5000円
 「自分が歌う立場なら一人3000円くらいかな」
 又吉さんはなんと20000円
 「自分が好きだって公言しててそのために来ていただいてて、
  なんか責任みたいなのもあるし、
  一曲だけって嫌われるんちゃうかとも思うし(笑)
  あとライブって現場に行くとか、準備するのにかかると思うんですよ、
  もっと大きいところでたくさんの人の前でもできるのにこんな少人数でしてもらってるし」

 なるほど。
 ところで大竹先生は?
 「何を言うんですか、私経済学者ですよ」
 提示したのはなんと0円。
 清水さんに「オニ!」と言われていました(笑)

 先生はひるまず
 「だってみなさんの方が変わってますよ」
 例えば同じ服でも
 500円で売る店と1000円で売る店とどちらで買うか?
 「500円ですね」
 先生「0円なら?」
 又吉さん「怪しいですよ」
 清水さん「ありがたく買うかも」

 つまり、消費者が合理的に行動するのであればみんな一番安い0円と書くはず
 しかしそうならないのはなぜか?
 これについて
 行動経済学者のウリ・ニーズィー氏が実験を行ったらしい

 ツアーのお客さんに写真を撮影し、後で売る
 値段は
 A15ドル、B5ドル、Cお客さんの言い値
 のどれかを選んでもらう

 又吉さんならどれにする?
 「Bかな?」
 「Cは?」
 「0ドルと言ったときの相手の寂しい顔を見たくないんです」(笑)

 さて実際の実験結果は
 Aを選んだ人は23%、Bは64%、Cは55%
 CよりBの方が多い
 しかも、Cは5ドルより多く払う人もいた
 一枚あたりの平均利益を計算すると、
 Cは5ドル以上払う人がいるから平均単価が高かった

 又吉さん「やっぱ気使うんすよ」

 先生によると、
 これは自分で値切るのは抵抗を感じるためなんだそう。
 安すぎるとフェアではない、と考えてしまう
 又吉さん
 「0円にしたんや、と思われたり、自分で思ったりするのが辛いんですね」
 先生
 「私もさっきは辛かったんですよ」(笑)

 先の実験は
 「セルフイメージ仮説」
 として説明されている
 自分はフェアな人間だ、というセルフイメージを守るために
 非合理的な行動を取る
 という考え方

 相場を知っている人はそれに合わせて値段を付ける。
 これより下につけるのは自分が許せない
 相場を知らない人は分からないからつけられない
 (さっきの100円の人も知らなかったので安い値段になった、
とのこと)

 ちなみに先生によると、
 セルフイメージ効果は、他人が見ていなくてもいいのだそう。
 それを示す別の実験もあります。
 レストランの会計を決めてもらう
 A値段が分からないよう封筒にいれてもらう
 Bオーナーに直接渡してもらう
 結果では、Aの方が金額が多かったらしい。

 又吉さん
 「神社とかのお賽銭もセルフイメージがあるんですかね」
 清水さん
 「じゃらじゃらがダメだってお札を入れる人もいますね」

 他にもイギリスのレディオヘッドというバンドは
 2007年、アルバムのダウンロードを言い値で払ってもらう、
 という試みをした
 4割が支払ったそうです。

 「ファンだったら買いますよね。相場を知っている人は払う。
  ファンじゃない人は元から買わないんでしょうね」

最後は、先生は本当ならいくら値段をつけるか、
というような話で終わっていました。

感想など。
・チケット転売問題に対する又吉さんのアイデアはなかなかいいなと思います。
 ライブという商品に対して、
 お金だけでなく、会場に足を運ぶという手間も買い手に要求しているので
 本当に聞きたい人だけに来てもらえる可能性が高くなると思う。
 ただ問題は受付でキャッシュバックだと混乱しそうですね…
 金券とかグッズならまだ用意しやすいのかな?

・言い値の方が高い値段を払う、という結果は興味深かったです。
 安く払う自分が許せない、罪悪感を感じる、みたいなセルフイメージ仮説とかもあるのかもしれないけど
 何かしてくれた相手にお礼をした方が、
 結局自分も気分がいいし、
 後で報復や不利益を受けにくいからかなぁ、とも思いました。
 人類が生き残ってきたのも利他性のためだという説もありますし…
 非合理に見えて意外と合理的な選択なのかも?

・芸術とか、評価しにくいものの相場はどう決まるのかな?と思いました。
 芸術だけではなく、お笑いとか演劇、文学、心理療法、占いとかでも同じなんですけど。
 普通工業製品だと、作るときにかかるコストと利益を足したものが価格になる。
 でもライブ一曲につける値段だと、相場って何だ?と思ってしまう。
 CDの値段を基準にする人もいたし、
 その時持ち合わせた財布の中のお金を基準にする人もいるし、
 自分が演奏する立場として欲しい金額を基準にする人もいる。
 人により基準がバラバラだけど、
 その平均が相場になるのかな?
 そう考えると値段とかお金の価値自体、実体がありそうで実はあやふやなものなのかもと思いました。
 そういう不確かな世界で食べていく人たちはやっぱりすごいな。

・大竹先生が経済学者的に「0円」を選んでおきながら
後で「私も辛かったですよ」
 と正直に告白されるあたり、ちょっとググっと来てしまいました(笑)
 なんかこういうバランス感覚がいいですね~

純粋に楽しめた回でした。
というわけで今回はこの辺で。
posted by Amago at 16:05| Comment(0) | テレビ(オイコノミア) | 更新情報をチェックする

2016年11月24日

「天才! 成功する人々の法則」マルコム・グラッドウェル

「天才! 成功する人々の法則」マルコム・グラッドウェル

最初、翻訳者である勝間和代さんの本か?と思ってしまい、躊躇しましたが(笑)
(だって写真も筆者より大きいし…)
「1万時間の法則」
を提唱した方の本、と聞いて、興味をそそられ読んでみました。

原題は「outlier」
アウトライアーとは、
もとは統計学用語で、
他の値よりかけ離れた値を指すようです。
この本では、
凡人とはかけ離れた成功者、を指しています。

この本は、彼らの成功の原因は天賦の才能以外の要素が大きいよ、
ということを書いています。
邦題の「天才」とはちょっと本の内容とはズレているかなぁとは思うんですけどね…

内容をざっくり書いてみます。

筆者の分析によると
「並外れた成功者」を作り上げるものとして挙げているのは以下のもの。
●「マタイの法則」
 スキルを磨く機会がどれだけ与えられるか
●「1万時間の法則」
 トレーニング時間がどれだけあるか
 時間にしたら、トータル1万時間訓練して初めて花開くらしい
 (毎日10時間、365日休みなくするとしても3年かかる!)

●膨大な量のトレーニングをこなす忍耐力、継続力
●社会的な実践力
 つまり、自分の能力を人に伝え、他人と交渉する力。
 IQが高くても社会的に成功しない人はこれが欠けている

 また、後者2つの「忍耐力」や「社会的実践力」
 は本人の能力ですが、これらは
 ●育ってきた家庭環境
 ●民族的、文化的なもの
 が大きく影響するらしい。

ではこれらについて、詳しく書いていきます。
●成功者はスキルを磨く機会をたくさん与えられている
 「マタイの福音」より
 「持つ者はより与えられ、
  持たざる者は持っているものも奪われる」
 能力のある人は能力を磨く機会をたくさん与えられ、ない人は与えられないのだそうだ。

 ・生まれ月と成功の関係
  カナダのアイスホッケーチームでは、
  学年の集団の中で
  誕生月が早いほど成績がいい、
  という傾向があるそうです。

  これはなぜかというと、
  誕生月が早いほど体格が良い、発達が早い傾向がある。
  子供は成長期なので数ヵ月でも差は現れやすい。
  しかし、それが個人的能力の差と勘違いされ、優秀クラスに入れられる。
  優秀クラスの方がトップレベルの教育を受けられたり、
  試合に出られたり
  スキルを磨く機会も時間も多い。
  こうして能力の差がますます開く。

  アメリカの野球チーム、学力テストなどにも同じ傾向が見られる、とのこと。

  要するに成長期に年単位で区切って評価するから不公平が生まれるわけです。
  筆者は、これでは生まれ月が遅い人の才能を潰していることになる、
  クラスの能力評価を生まれ月ごとにするなど
  均等な機会が与えられるようにすべきだ、
  と述べています。

 ・生まれ年と成功の関係
  これはどうしようもないのかもしれないけど、
  生まれた時代と成功への影響についても書いています。

  大富豪のリストから、
  生まれた時代と成功の関係も分析すると、
  1930~40年生まれに成功者が多いらしい。

  これは、1919~第一次対戦、
  1930年頃に大恐慌、
  大恐慌~1945年に第二次対戦があったことが関係しているらしい。

  大恐慌時に20~30代の働き盛りだと、能力があっても仕事がなく、成功できない。
  なので1930~40年の時、
  親になっていた世代は成功してないことが多い。
  お金がないので子作りも控えている。

  しかし逆に見れば、彼らの子世代は数が少ないので少数精鋭、チャンスが増える。
  また、この頃は優秀な人が会社で働けず学校の先生になることも多く、
  いい教育を受けられる。
  子世代は、働き盛りになるころは戦争~戦後で、
  戦死しない限りはビジネスチャンスがあふれている。

  スキルを磨く機会、
  ビジネスの機会が多いので
成功しやすい
  ということらしい。

●1万時間の法則
 1万時間の法則は、
 ベルリンの音楽学校のバイオリニストの研究で見られた法則

  ここのバイオリニストを
  Aソリストになれるトップレベル
  Bオーケストラ団員になれる優秀なレベル
  C学校の先生くらいのレベル
  の3つに分け、練習時間との関係を見たらしい

  すると5歳くらいでは練習量には差がないが、
  8歳くらいから差が現れ、
  Aクラスでは20歳くらいで生涯トータル1万時間
  Bクラスでは8000時間、Cクラスでは4000時間だったらしい

  つまり音楽は、天賦の才能というより
  どれだけ熱心に練習したか、によるのだそうです。

  「神童」と呼ばれたかのモーツァルトも、
  幼い頃は他の作曲家の模倣が多く、
  オリジナルの評価が認められたのは20歳過ぎ、
  つまり曲作りのキャリアからしたら10年以上経ってからの遅咲きなのだそうだ。

  他にも
  IT時代の幕開けに活躍した
  ビル・ジョイ(UNIXのプログラムを改良した方)や
  ビル・ゲイツ(マイクロソフト創始者)
  が会社を起こすまでにプログラミングをした時間、
  ビートルズがデビューまでにライブをした時間、
  についても同じことが言えるという話をしています。
  伝記風に書かれているのでぐいぐい引き込まれる。

  しかしミソなのは、どの人も自分から
  「スキルを磨かせてくれ」
  と言ったわけではなく
  色んな幸運が重なり、
  結果的にトレーニング時間が1万時間になった点です。

  例えばビートルズは
  ドイツのハンブルグのライブハウスで
  練習させてもらう代わりに客寄せのためぶっ続けでライブを行うよう頼まれ、
  1日8時間、週7日休みなく働かざるを得なかった。

  また、ビル・ゲイツは
  高校くらいから近くに最新のコンピューターがあり、
  それを好き放題使える環境にあったり、
  当時新型コンピューター創成期のためプログラマーが足りず、
  学生ながら企業にプログラミングを頼まれる機会があったり…
  という幸運に恵まれていたそうです。
  ビル・ジョイも、大学のコンピューターにバグがあったために使い放題だったとか。

  そして、みんな必死でやっているうちに
  1万時間になったらしい。

  (先に、生まれ年による幸運の話も出ていましたが、
  コンピューター関連についても
  ビル・ゲイツらは1955年付近の生まれだったのも有利だった、
  という話もありました。

  昔のコンピューターは、
  プログラミングはパンチカード、つまり手動式、
  またメインフレームと呼ばれる親コンピューターに打ち込む
  (みんな共用なので何時間も列に並ばねばならない)
  方式だったそうです。

  しかし、1960年代半ば~70年くらいから、
  メインフレームとネットワークでつながる端末のコンピューター自身で処理できるようにする、
  今のタイムシェアと呼ばれる方式のコンピューターが出来たらしい。

  1955年付近の生まれの人たちは、
  このタイムシェア式のものに10代終わりくらいから触れる幸運に恵まれた。
  これより後の生まれだと幼すぎて関われず、
  これより前の生まれだと、
  メインフレーム型のコンピューターを採用している企業に就職してしまっている、
  というわけです)

●膨大な量のトレーニングを継続できる忍耐力
 この本のなかでは
 「数学の才能は忍耐力」
 という話が出ていました。

 国際的な数学テストの国別比較だと、
 テストに付随する膨大なアンケートに答えた回答数と
 数学力とで同じ順位だった、
 という結果があるそうです。
 膨大なアンケートに答えられる忍耐力のある人は、
 数学の成績もいいらしい。

 先のビル・ゲイツにしろビートルズにしろ、
 「好きだから続けられた」
 というのがあるのかもしれないが、
 途中で投げ出していたら大成しないわけで、
 1万時間継続するにはそれだけの気力みたいなものがあるのでしょうね。

 この他、ニューヨークのスラム街にありながら、
 数学の成績がトップクラスの学校がある。
 そこの生徒は朝から晩までびっしり勉強し、宿題も多いのだそうだ
 (児童によると、夜11時まで勉強しているのだとか)
 このように、継続できる力、強さが成功の一つの要素ではあるようです。

●社会的実践能力
 これはIQ195のアメリカのクイズチャンピオンと、
 世界的な物理学者オッペンハイマーとの対比を例に書かれていました。

 要するにどちらも才能はあったが、
 チャンピオン氏は荒んだ家庭で育ったためにコミュニケーション能力が低く、
 アカデミズムの世界で才能を発揮できていない。
 大学も二度中退させられています。
 一回目は母親の手続き忘れ、
 二回目は車が故障して通えなくなった。
 どちらも彼のせいではないし、
 彼自身教授にも掛け合っているのに冷たくあしらわれている。
 (具体的にどんな交渉をしたのか書いてないので分からないが、
  成績がいい人間だと分かってもらえなかったようだ、
  とあるので、
  おそらく落第生のようなものの言い方だったのだろう)
 そして彼は
 「大学なんて名声の欲しがるやつらばかり」
 みたいなことを言っています。

 一方オッペンハイマーは、
 大学院時代、
 精神を病んだり教授に毒を盛るなどしているにも関わらず、
 クビにされることなく、
 病院での治療という穏便な処遇を受けている。
 また20年後、
 「マンハッタン計画」という一大プロジェクトを任され、
 科学の発展に貢献しています。

 オッペンハイマー氏は割と裕福な家庭に生まれ、
 人前で発表すること、
 人に交渉する権利意識などを教育されていたようです。
 マンハッタン計画の中心人物を魅了するような人間性があったらしい。

 筆者は才能があっても
 オッペンハイマーのような「実践能力」がないと成功できない、
 そしてその能力は家庭で培われると述べています。

 実際、IQの高い子供を集めて支援する研究の結果では、
 IQが高くても必ずしも社会的には成功していない人
 が結構な割合で存在することが示されています。
 それも、成功者は上流階級で育っている人が多かった。

 家庭環境と教育との関係を調べた社会学者の話によると
 家庭環境を分析すると、
 人種というより裕福か貧しいかで育て方が分けられるそうです。
 裕福な家は
 「共同育成」という育て方をする傾向にある。
 これは、
 ・子供と話し合い、何かあるときも理由を説明する
 ・子供のために学校にも介入し、教師に掛け合う
 ・子供が質問したり交渉するのを手助けする
 ・子供の才能、考え方などを育み評価する、
 などの教育をする。

 貧しい家の親は、
 ・子供の教育にはあまり介入せず、自然に育つに任せる
 ・権威の前に萎縮してしまう傾向があるのだそうだ。
 こちらも子供が独立志向を持つという利点はあるが、

 共同育成の方が権利意識や交渉能力を学べるのだそう。

家庭環境というか、教育が子供の成功を左右するようです。

●文化的なものと成功の関係
・後半はほとんどこの話。
 いくつかの例を挙げて説明されています。
 ・ユダヤ人や移民になぜ成功者が多いか
  ユダヤ人は歴史的に土地がなく、
  服飾関係など、技術のある仕事をしないと生活できなかった
  彼らは流浪の民で移住が多いが、
  アメリカなど、1から作り上げる国ではそのような技術者が重宝された

  また、ユダヤ人以外でも、
  移民は移民先で差別的な扱いを受けることがあり、
  格下の仕事をさせられるときがある。
  しかしその土地で時代が変化し、
  その格下扱いだった仕事が主流になったとき重宝がられる
  ということも起きている

  いずれにしても、
  必死で生きるために仕事をしてきたことで
  知らず知らずにスキルが磨かれていた(1万時間の法則…)

  また、ユダヤ人がするような技術的な仕事、自営の仕事は、
  農業の小作人などとは違い、
  自分の頭で考えて切り開いていかないといけない。
  しかし逆に言えば頑張ればそれだけの見返りがある。
  自主性、難しさ、見返りなど、
  「充実感を持てる仕事」の条件を兼ね備えているそうです。

  そしてそんな親を見て育つ子供は、
  自分で努力すればどうにかできるんだと学び、
  粘り強さ、やる気、頑張れば自分で生活を変えられるんだ、という意識などを持つのだそうだ。
  結果、ユダヤ人の子孫は弁護士や医者などが多いらしい。

 ・アメリカ南部の人間は攻撃的な傾向がある
  アメリカ南部などに移住してきた人たちは
  伝統的に祖先はアイルランドとか、肥沃でない過酷な土地環境の民族のルーツを持つ人が多いのだそうだ。
  そして彼らは心理学的なテストをすると、
  とっさの時には北部の出身地の人たちより激昂しやすい傾向があるのだとか。
  血が騒ぐってやつなんですかね…

 ・水田文化の民は勤勉
  水田民族は狩猟民族や小麦栽培の民族より勤勉なのだそう。
  狩猟民族は獲物が豊富なので採集できれば休憩する。

  小麦栽培は畑を休ませないと土地が痩せるので、休耕期がある。
  また、収量を上げるためには畑を広げ、
  機械化してパワープレイで収穫量を増やす。

  これに対し、水田栽培は
  水田栽培は水が栄養を運んでくれるので
  栽培するほど土地が肥えるため、休ませることはない。
  また、土地が狭いところで栽培するので土地が広げられず、
  収穫量を上げるには品種改良、栽培技術の改善など知恵を絞る。
  水田栽培の休みの時期にも、
  内職などをする勤勉さがあるのだそうだ。

  日本や中国などのテストの成績がいいのは、
  ここからくる忍耐強さにあるのでは、とのこと。

  ついでながら、
  ここでは数学能力について言語学的な分析もなされていました。
  中国語や日本語では、数字を表す言葉(イー、アル、サン、スーとか)は1音節など短い、英語は長い
  また、数字の数えかたは中国語や日本語、アジアの言語の方が論理的なんだそうです。
  英語は11、12とか、20、30などは不規則ですね。
  このため、アジアの子供はいちいち考え直さずとも
  論理的な考えがすんなり頭に入るのだそうだ。

 ・飛行機事故と序列意識の高い文化との関係
  飛行機事故の原因の1つとして
  スタッフ間のコミュニケーションの問題があるそうです。

  非常事態時には
  機長だろうが副操縦士だろうが管制官だろうが、
  対等に意見できないと対処できない。
  上司に楯突いても乗客の命を守る義務があるわけです。

  しかし、権威の序列意識が高い文化
  (上司に逆らうのは失礼だとか、
  上司が全て決定すべきと考える、など)
  ではこれがうまくいかないのだそう。

  韓国やコロンビアはわりと序列意識が高い社会なのだそうですが、
  これらの国の航空会社の事故ではそれが如実に現れていて、
  機長が疲労困憊で判断できないのに副操縦士が機長の命令を待っていたり、
  飛行機が墜落しそうなのに、機長の判断が間違っているのではと言えなかったり、
  高飛車な管制官に燃料がないと言い出せなかったり、

  といった例が出されていました。
  つまり生き死にという重大な局面下でも
  文化的な影響は免れないということらしい。

  大韓航空ではこれを体質的な問題ととらえ、
  アメリカ航空会社の方をを呼んで改革をしたそうです。
  真っ先に取り組んだのは社内のコミュニケーション手段を全て英語にすること。
  英語にすることで、文化的なしがらみから外れ、
  上司にも気後れせずに意見を言い合える意識が作り出せたそうです。

 ・ジャマイカ人のカラートの特権意識と教育の関係
  最後に文化と家庭の教育の関係を示唆する例として
  筆者のファミリーヒストリーも書かれており、
  これも読みごたえがありました。

  筆者の母親はジャマイカの生まれで、
  当時ジャマイカでは教育はほんの一握りの金持ちしか受けられなかったそうです。
  そんななか、裕福ではない家庭だった筆者の母親は
  名門高校で奨学生になる幸運に恵まれ、
  更にイギリス(当時はイギリス領だった)の大学に進学、
  そこで筆者の父親と出会い結婚、
  その後作家となり成功したそうです。

  この陰には筆者の祖母の尽力があったそうです。
  祖母は娘を名門高校に入れるため家庭教師を雇い勉強させていた。
  また、英国大学進学のお金を借金する行動力、貸してもらえる人格も持っていた。

  ではこの祖母の力はどこから来ていたのか?
  これは、祖母の曾祖父にまで遡るそうですが、
  当時ジャマイカでは本国の英国人がジャマイカで愛人を作り、
  混血(ムラート)の子供を生んでいた。
  ムラートは支配者層の子供なので仕事や生活などで優遇されていたそうです。
  これは肌の色により見分けられる。
  つまりアメリカと同じく、肌の色による露骨な差別があったようです。
  同じ家の中ですら、色が白い子供ほど大事にされていたのだとか。

  そして、筆者の先祖はムラートの生まれ、つまり支配階級にいた。
  祖母も特権意識を知らず知らずに身に付けていた。
  それが、娘に対する教育に現れたようです。

 (ちなみに筆者の母親は
  筆者の父親と結婚したあと、
  ジャマイカ人ということで  イギリスで差別を受ける経験もしたそうですが、
  このとき
  「私は今まで逆のことをしてきた」
  と回想記に書いていたそうです)

  筆者は
  成功は特別な人のものではなく予測できるもの。
  好機を与えられた者へのギフトであり、
  成功とは、それをつかむ強さをと平常心を持っていることである、
  と締め括っていました。

…内容はこんな感じ。

これだけ書くと、
ギフトのない凡人はどうすりゃいいのさ?
となりそうですけど、
「いかに子供を育てるべきか」
という教育論的に読んでいくと興味深い本でした。

 筆者の言うように、成功が予測可能ならそのように持っていけばいいのです。
 ギフトがないならもらいにいけばいい。
 何かで成功したい、
 何かの夢があるなら、
 1万時間こなすつもりで死ぬ気で頑張ればなんとかなる、
 とも言えるのかも。
 (できるかどうかは別にしてね…)

 子供にたいしても、
 何かの夢があるようなら、
 惜しみ無くその機会を与えてやることが親にできること、
 と言えそうです。
 もちろん、時代とか、運とか
 どうしようもできないことはあるけど、
 やれることはやってあとは天に任せるというか。

 それから親としては、
 中盤にあった、
 「共同育成」の考え方は参考になりました。
 要するに自己達成感とか自己肯定感、
 アドラー的に言えば「課題に立ち向かう勇気」
 などを育んであげることが必要なのですね。
 これは別に上流階級でなくても、
 そこそこの家庭なら親の心がけ次第で出来そうだと思います。

 文化的な影響はどうしようもない所もあるけど、
 韓国の航空会社のように
 文化的なクセを自覚して、
 それを改善するという方向を考えたらいいのかなと思います。

 例えば日本人は勤勉さ、思いやり、モラルを守るなどという良さがあるので、そこは伸ばす。
 しかし、創造性とか、意見を持つ、自分から発信する
 などの部分は弱いと思うので
 そこを鍛える教育をする
 (経験からいうと、
  英語でしゃべることも、これには大いに役立つと思います。
  英語は主語術語とか、言いたいことをハッキリさせないとしゃべれない言語体系になっているのです)

他にももうちょい読んだら発見がありそうだ。
教育に参考になる本でした。

ちなみに余談ながら、
多くの書評で言われているように、
訳がちょっと分かりにくかったかな…
オッペンハイマーと天才さんの違いのニュアンスとか、細かいところが何回か読む必要がありました。
まぁ、もとの文が面白いのでいいのですけど。

というわけで色々勉強になりました。
では今回はこの辺で。
posted by Amago at 09:58| Comment(0) | 本(人生) | 更新情報をチェックする