2017年07月29日

NHKBSプレミアム フランケンシュタインの誘惑「“いのち”の優劣 ナチス 知られざる科学者」

NHKBSプレミアム フランケンシュタインの誘惑「“いのち”の優劣 ナチス 知られざる科学者」」

 この番組はたまに見ます
 (というか、子供が見るコズミックフロント☆ネクストと同じ時間帯なので、勝手に録画されている(笑))
 科学の闇の歴史、黒歴史を暴くという番組で
 吉川晃司さんのナレーションの怪しさもいい味だしてるし
 進行役の武内陶子アナのぶっちゃけた感想もなかなか良い。

 今週は人工知能の話で、それも良かったんですが
 同じ日の別の時間帯に放送されたものがあまりに衝撃的だったんで、
 そちらを書きたいと思います。

 これは1月に放送されたものの再放送らしい。ノーチェックだったな。

 紹介されているのは
 ナチスドイツ時代の人類遺伝学者、オトマール・フォン・フェアシュアーの話でした。

 専門家も知らない、と言ってたから
 彼の行いは伏せられていたようですが、

 彼は「優生学」という学問の研究を進め、
 ナチスドイツの残虐行為に科学のお墨付きを与えたそうです

 でも見ていると、彼だけでなく、時代全体がクレイジーだった、としかいいようがない。

 しかし。

 このクレイジーさは、今の遺伝子診断、ゲノム編集と根本的には何の違いもない…
 という事実に背筋が寒くなりました。

というわけで内容から。

○フェアシュアーがのめり込んだ優生学
 彼は1896年、ドイツ中部のゾルツという町で、
 貴族の息子として生まれたそうです
 自然科学に興味を持ち、大学で医学を学ぶ

 そこで彼が夢中になったのは「優生学」だそうです
 これは19~20世紀に流行していた学問で
 ダーウィンの進化論
 (生物は自然淘汰で進化した、という学問)
 メンデルの遺伝学
 (生物の形質が、遺伝により子孫に伝えられる、という学問)
 が結び付いたもので

 劣った遺伝子を排除し、
 優れた遺伝子を残し、
 人為的に淘汰を起こさせ
 人類の進歩を促し、
 ユートピアを作る…
 という構想だそうです

 歴史家によれば
 「優生学のテーマは、民族全体の健康を守ること」
 病気や障害が民族全体に広がらないよう、遺伝学を利用できないか、
 と考える学問なのだそう

 彼はこの学問に取りつかれ、
 大学卒業後、付属病院で研究を始めた

 対象にしたのは双子
 一卵性双生児と二卵性双生児を比較した
 一卵性双生児は、1つの受精卵が2つに分かれて産まれるので、遺伝的には全く同じものをもつ
 二卵性双生児は、2つの受精卵から産まれるので、遺伝的には少し違う

 そこで、ある病気へのかかりやすさが一卵性双生児の方が多ければ
 その病気は遺伝的なものと判断できる

 彼はこの方法で結核の研究を行った
 結核は当時死の病、と言われたが
 感染しても発症しない人、する人がいた
 そこで127組を対象に研究したところ
 一卵性双生児の方が発症率が45%高い、という結果になった

 医師で歴史家の方は
 「彼の研究は医学的には間違いでなかったことが、最近の研究で明らかになりつつある」
 とのことです
 当時でも、彼の研究は高く評価された

 そして、彼はこの成果を優生学に取り入れるべきだと主張した
 「結核患者は不妊手術をすべき」と言ったそうです
 不妊手術とは、男性は輸精管、女性は輸卵管を切除する手術
 優生学ではこれを「断種」と呼ぶそうです

○「断種法」の実現に働きかけるフェアシュアー
 彼は1931年には、
 「病気や障害の原因となる遺伝子が、子孫に受け継がれるのは望ましくない、
  そういう遺伝子を持つ可能性のある人は中絶や不妊手術をすべき、
  これはキリスト教的な慈愛精神にも合う」と主張した
 キリスト教で禁止されている中絶を正当化したそうです

 歴史家によれば、
 「彼は不妊手術をしないことの方が残酷だと考えていた。
  望ましくない遺伝子は、民族全体の負担になる、
  民族を救うためなら小さい犠牲は仕方ない、と考えた」

 彼は、優生学は、目の前の患者だけでなく、
 民族全体も救えるんだ、と信じていたそうです

 さて、時代は第一次大戦後
 ドイツは多額の賠償金を背負い、
 さらに世界恐慌が起きて財政は火の車だった

 プロイセン州では科学者を呼び、
 財政負担を減らすための方策について意見を聞いていたそうです
 フェアシュアーもこの会議に呼ばれ
 ドイツ全体の障害者の数は20万人と見積もり、
 彼らに回す予算を健常者に振り分けるべきと主張した

 プロイセン州はその意見を受け、「断種法」案を提出
 この法律では
 「本人の同意が有れば不妊手術を行える」としていた
 しかし国の法律では不妊手術が禁止されていたため、成立しなかった

○ナチス政権とフェアシュアー
 ところが1933年、アドルフ・ヒトラーが登場、選挙で政権を勝ち取る
 彼は優生学に共感を持ち、断種法を制定
 しかもこのときの断種法は
 「本人の同意が無くても「強制的に」不妊手術が可能」、
 プロイセン州のものより踏み込んだ内容でした。

 歴史家によれば、この強制、の文字により
 「1933年は優生学者にとって解放の年となった、彼らにとっては満足するものだった」

 彼はさらに「遺伝学の医師」という雑誌を発行
 その中でヒトラーを「優生学を初めて実行した政治家」と称えていたそうです
 ナチスもフェアシュアーを
 「わが党への忠誠心が強く、政治的宣伝にもなる」
 と評価、彼は出世街道をひた走るようになる

 歴史家によれば
 「フェアシュアーにとってヒトラーはユートピアを実現してくれる存在、
  一方ナチスも、政策を実現するためには遺伝学者や医学者の知識が必要だった」

 持ちつ持たれつだったようです。

 彼はフランクフルト大学に新設された、遺伝病理学研究所の所長に就任
 フランクフルト市民の遺伝情報を集めて、
 障害の有無などを調べたカードのリストを作った

 さらに彼の研究所は保健所の資格も取り、直接市民を診察できるようにした

 そして調査結果と診断の結果、
 結婚する夫婦が健常であれば
 「結婚適正証明書」を発行

 しかし遺伝的に問題があると判断されれば「断種」を申請した
 申請先は「優生裁判所」というところ
 これはナチス政権が断種遂行のために設立した裁判所だそうです
 ここでは、断種申請された人へ10分もかからないうちに「断種」の判決が下された

(裁判所もあったという事実にはビックリしました…)

 その裁判記録は現在もフランクフルトに残っているそうで
 判決を下された人たちの写真、診断記録と共に残っている

 実際の記録が映されていました

 ある女性は結婚申請に来たとき
 ドイツの首都やフランスの首都が答えられず、
 字も読めないために知的障害と診断されていました
 彼女は妊娠6ヶ月だったそうですが
 「早急に中絶すべきだ」
 という診断がフェアシュアーにより書かれているそうです

 歴史家によれば
 「彼は、障害のない社会を作るためなら断種は素晴らしいことだ、
  自分達のしていることは人道的だと信じていた」
 そして、1945年までに40万人が強制的に断種させられたそうです

○スタジオでの解説
 ここまでのVTRを見て、解説がありました。
 武内アナが進行役、ゲストは ・仲野徹氏(阪大の生命科学者)
 ・松原洋一氏(国立成育医療研究センター、遺伝学の研究者)
 二人とも、フェアシュアーのことは「知らなかった」と驚いていました

 松原氏は
 「彼は研究だけではなく、実際に自ら判決を下していた、という事実に衝撃を受けた」

 武内アナ
 「人類遺伝学とはどんな学問ですか」
 松原氏
 「研究対象の幅は広くて、進化の起源もあれば、健康や病気に関わる遺伝子の研究もある。
  現在は優生学は遺伝学のタブー、禁句に近い。黒歴史です」

 しかし当時は、世界的に断種の流れだったそうです

 世界初の断種法はアメリカで、
 アメリカが優生学の先進国
 「むしろドイツはアメリカに追い付け追い越せだった、
  日本にもその流れはあった。
  だから彼個人とかナチスだけのことではない」

 武内アナ
 「…そうなんですか?時代の流れ、というのは衝撃的ですね…」
 仲野氏は
 「だから、今の価値観のみで判断するのは正しくないと思います。
  ただ、子孫を残すというのは生物の最大の本能ですから、
  強制的な断種は、根本的な問題を含んでいる」

 松原氏
 「民族を守るとか、言葉の上では素晴らしいことに聞こえるが、
  行為としては悪魔のやり方ですね…」
 仲野氏はこれを
 「地獄への道は善意で塗り固められている」と表現
 「最初に止めさせれば良かったんだろうけど、
  結果的に40万人が断種させられた、
  悪いことでも、一旦その流れになるとそちらに行ってしまう。
  僕らはこれを「滑りやすい坂道理論」というけど、その典型ですね」

 アメリカも日本もその流れだった、というのも衝撃的でした。

○ユダヤ人の根絶
 VTRに戻ります

 やがて、ユダヤ人の根絶にも、優生学理論が使われるようになった

 ヒトラーは「我が闘争」で
 「金儲けするユダヤ人が国際的な不穏因子」と書き、
 フェアシュアーも
 「ドイツに異人種が増えると、ドイツ人の遺伝子が変化してしまう」

 こうしてユダヤ人排除のため
 1935年、血統保護法が制定
 ユダヤ人とドイツ人との結婚だけでなく、性交渉も禁止される

 しかしここで問題となったのは
 「ユダヤ人だ、とどうやって決めるのか」
 ナチスは、実はユダヤ人を特定する方法は無かったそうです
 医師で歴史家の方も
 「ドイツ人とユダヤ人とは外見の差はあまりない」
 とのこと

 そこでフェアシュアーは、ユダヤ人を特定する方法の研究を始めた
 外見の特徴を捜し出し、
 「身長が161~164センチ、鍵鼻、体臭がある」
 「他と比べ、糖尿病、聾、難聴の頻度が多い」
 などと書いている

 さらに、
 「ドイツ民族の特徴を保持できるよう、ユダヤ人を隔離すべき」とも主張
 結婚の禁止だけではなく、
 ユダヤ人の大量虐殺を科学的に後押しする形になった

 そして、研究所にヨーゼフ・メンゲレという新人が入る
 彼は優秀な大型新人として迎えられ
 フェアシュアーもその有能さを認め、自身の後継者と目していた

 1942年、フェアシュアーはベルリンのカイザーヴィルヘルム研究所に移る
 ここで彼は、ユダヤ人を特定するために
 血液のタンパク質を調べることを考えた

 しかしそれには大量の血液が要る
 それもユダヤ人だけでなく、多民族のものも必要になる
 そこでアウシュビッツ強制収容所に入れられた人たちの血液を利用することを考えた
 ここにはユダヤ人だけではなく
 ポーランドやソ連の捕虜もいた

 メンゲレは先頭に立って血液を採取し、フェアシュアーの所へ輸送するようになる
 血を最後まで搾り取られ、倒れる人もいた
 フェアシュアーの証言によれば、採取されたのは200人以上
 しかもメンゲレは眼球や内臓、骨格も研究対象にしようと、
 収容所の人たちの標本を作るため、殺戮も始めた…

 「これは全く科学とは呼べない、
  フェアシュアーの願望に過ぎず、
  倫理的に非難されるべき」
 と医師で歴史家の方は話していました

 ここまで彼らを暴走させたのは、いったい何だったんでしょう?

○解説
 ここでまたスタジオでの解説。
 武内アナ
 「ナチスも、ユダヤ人の特定が曖昧だった、というのは驚きでした…
  実際特定は可能なんですか?」
 仲野氏は
 「実際分からないと思います。
  ユダヤ人は色んな地に散らばっていて、その土地の民族との子孫がいる」
 松原氏も
 「遺伝学的にも難しいですね」
 そして
 「彼は自分の信じていることに暴走していった。
  科学は好奇心がもとですが、その対象が人間になると恐ろしいことになってしまう例です」
 「悪い好奇心ですね」

 武内アナ
 「ナチスとフェアシュアーはお互い利用しあっていたんですね」
 「科学にはスポンサーが要る、
  フェアシュアーの場合ナチスがスポンサーになった
  一方ナチスにとっては科学のお墨付きを与えてくれる方が、政策がやりやすくなった」
 武内アナ
 「反対する人はいなかったんでしょうか…」
 松原氏
 「言いやすい状況では無かったんでしょうね、言えば自分が危なくなる」
 仲野氏は
 「自分もこうなったとき、良心が保てるか自信はないですねぇ…
  抗いたいとは思うけど、実際起きるまでは分からない」

 …たしかに、おぞましいけど反対できない時代だったのかもしれない。

○戦後のフェアシュアー
 VTRに戻ります
 1945年1月、アウシュビッツ収容所は解放される
 5月にドイツは無条件降伏

 フェアシュアーは自分に不都合な書類を破棄、証拠隠滅をはかる

 そのあと連合国により
 戦争に荷担した科学者たちが裁判にかけられる
 連合国軍につかまり、射殺された人、
 死刑判決を受けた人…
 そしてフェアシュアーの愛弟子、ヨーゼフ・メンゲレは
 南米に逃亡、生涯追われる身になり暮らす

 しかしフェアシュアーは、裁判にはかけられたが
 「アウシュビッツでの出来事は一切知らなかった」
 とシラをきりとおし、600ライヒスマルクの罰金のみで放免される

 医師で歴史家の方は
 「彼は手を汚さない犯罪者、
彼も裁かれるべきだった」

 ところがその後の彼は裁かれるどころか、
 ドイツ医学会のトップに上り詰めていく

 1951年にはミュンスター大学の人類遺伝学研究所の所長、
 1952年にはドイツ人類医学協会会長に就任

 1968年、フェアシュアーは故郷で休暇を過ごしていた時に車にはねられ重体になる
 11ヶ月を昏睡状態のまま過ごし、そのまま亡くなった。享年73歳
 家族にも愛された生涯だったそうです

 歴史家によれば
 「彼は自分の行いに反省していたか疑わしい。
  彼はおそらく誇りを持ったまま墓に入ったのだと思う」

 彼の追悼記事には
 「信仰心が厚く模範的な人物」
 と評されていたそうです

○解説
 仲野氏は
 「裁判で知らなかったと言っているが、そんなはずはない」と批判していましたが
 松原氏は
 「彼の道義的責任は大きいが、
  彼が裁かれなかったバックグラウンドもある。
  アメリカ自身が優生学を推進しており、
  連合国も、あまり科学者たちを裁くと自分の首を締めることになるので、
  あまり踏み込めなかったのでは」
 武内アナ
 「なるほど…深いですねぇ…」
 仲野氏
 「こうなると、科学者の良心の問題ですね…」

 松原氏は、彼がトップになった理由として
 「フェアシュアーは、科学者としては優秀だったのだろう。
  それから、この時代は戦後で、医学や科学の人材が不足していたのもあるのでは」とのことです

 また、フェアシュアーの罪については
 松原氏は
 「残虐行為を科学的に推し進めてしまった」
 という点をあげています
 「科学と国家が悪い形で結び付くのは危険だ、ということを教えてくれますね」

 …残虐なことをしながら裁かれないのは納得いかない気もしますが、
 フェアシュアーは人徳はあったのかもしれない。
 これが人間なのかもしれない。

○現在も続く「優生学」
 さてここからは吉川さんのナレーション。

 フェアシュアーの手紙には
 「あの忌まわしい過去について話すのは止めましょう、もう過ぎたことですから」
 とあるそうですが、本当にそうか?

 遺伝の研究は進み、病気や障害の遺伝子の特定は進む
 胎児の出生前診断も容易になった
 次世代シーケンサーでは、一人の人の全ての遺伝子が1日で分かるようになっている

 日本では、胎児の遺伝子情報を調べる検査を受けた人は3万人、
 遺伝子的な疾患がある可能性があると告げられた人のうち、中絶を選んだのは9割に上る

 また、中国では人の受精卵の遺伝子を操作した、
 望み通りの人間を作る時代が訪れつつあると主張している…

○解説、議論
 松原氏は
 「遺伝病の子供を持つ親にとっては、
  次の子を考えるときに、出生前診断を受けるべきかは苦渋の選択になる」と指摘、
 安易な出生前診断、強制的な出生前診断は避けるべき、
 でないと新たな優生思想が生まれてしまう、
 と話していました

 仲野氏は
 「遺伝病の診断を受けられるようになったとして、
  大多数が受けても、受けない選択をする人も少数いるはずだが、
  そういう社会が、障害者を温かく受け入れられるか、という問題がある」

 障害者などが生きにくい社会になる恐れもある。

 松原氏も
 「例えばカリフォルニア州では、妊婦さんに医師がダウン症の出生前検査を勧めなければならないんです」
 武内アナ
 「勧めなければいけない、んですか…?」
 松原氏
 「ダウン症が減れば、医療費を削減できるという考えが、州としてはあるんですね」
 しかしこれはヘタをすると、ナチスの優生思想と結び付く、
 検査を受けないこと自体が非難される時代になるとすれば、それは大きな問題、
 病気の人の差別にもつながる、
 と話していました

 仲野氏は
 「命を選別してもいいのか、という問題もある。
  こういう言い方はいいのか分からないけど、
  どんな子が産まれるか分からないから面白い。
  偶然に左右されているから諦めがつくという考え方もある。
  またどんな子でも、自分の子ならかわいいと思える。
  だから命を選べるのは、果たして幸せなのか…」

 松原氏は
 「多くの遺伝疾患は治療法がないんです。
  そこを変えられるのは、患者にとっては夢のような話です。
  でもそれを越えて、背を高くするとか、望み通りに操作するのは神の領域。
  そこまで踏み込んでいいのか…」

 また、そもそも優れた遺伝子とは何なのか?という問題もある
 松原氏は、ピア・インディアンを例に挙げていました

 ピア・インディアンは飢餓に強い遺伝子を持つが、
 現代の飽食のアメリカでは、彼らは糖尿病に非常にかかりやすいそうです
 しかし、何十年も先に食料危機が起きたら、
 彼らは生き延びられる可能性が高い
 いい遺伝子、悪い遺伝子とは環境に左右される、とのことです

 仮に遺伝病とされる人も、環境によっては、それらの人々が生き延びる可能性もあるわけです
 (そういえば、鎌状赤血球の話を聞いたことがあります。
 これは赤血球がひしゃげている遺伝病で、貧血になりやすい
 アフリカなどにこの遺伝子を持つ人たちがいるそうです
 しかしこの人たちは、マラリアに対して生き延びやすいのだそうです)

 また、松原氏は
 「次世代シーケンサーは、一人のゲノムを隅から隅まで読めるんですが
  どの人を読んでも、どこかしら欠陥が何ヵ所もあるんです」

 つまり極端な話、みんなどこか劣っているわけです
 優れた遺伝子、劣った遺伝子という考え方自体が
 根本的に間違っている、ということ…

 松原氏は
 「だから、多様性を認めることだと思います」

 ナチスは
 「大衆の理解はあまりに小さく
  忘却力はあまりに大きい」と言っていたそうです

 しかし我々は、負の歴史を決して忘れてはならない

 フェアシュアーが血液の研究所をした所は、今は大学の施設になっているそうです

 しかしその壁には銅板?があり
 フェアシュアーはナチスドイツの非人道的行いに荷担した、
 とはっきり書かれています。

 さらにその板には、彼は裁かれることはなかった、とあり、
 「科学者たちは、その学術研究の内容と結果に責任を持たねばならない」
 とあるそうです
 この言葉で、番組は締め括られていました。

○感想など
 この話は、2つのシンプルだけど深い質問を突きつけている、と思います。
 1つは
 「社会や科学が暴走したとき、我々一人一人はそれを止められるのか」
 
 奴隷解放にしろ、戦争にしろ、どこかの国の言論弾圧にしろ
 誰かが勇気を出し、おかしいと声を上げることで世界が変わっていくわけですが
 最初におかしいと声を上げる人たちは、必ずと言っていいほど犠牲になってしまう。

 自分がその一人になれるのか…

 私も自信がありません。

 しかし勇気を出さねばならない、出したいとは思う。

 ミスチルさんの「HERO」を思い出します。
 「誰か一人の命と 引き換えに世界が救えるとして
  僕は誰かが 名乗り出るのを 待っているだけの男だ」
 でも最後には
 「HEROになりたい、ただ一人君にとっての…」

 私も、子供たち、未来のために守るべきものは守りたい。

・もう1つは
 「我々は多様性を認め、どんな人でも受け入れられる社会を作れるのか」

 以前、ダウン症の母親が作ったドキュメンタリー
 「ダウン症のない世界?」
 を見たときにも思ったのですが、

 出生前診断をすること自体が苦しみに繋がってしまう、
 という気がする。

 私は今後子供を産むことは多分ないですが、
 診断を受けられるとしても、受けたくはないですね…

 ですから、
 松原氏、仲野氏の議論にあったように
 出生前診断を受けないことや、
 受けない結果、障害のある子を産んだ人、
 障害をもって産まれた人、など
 にも寛容な社会であって欲しい、と思います。

 「ダウン症のない世界?」では、
 イギリスではダウン症の診断を受けることは義務ではないが、
 妊婦さんには、医師から受けなさい、中絶しなさいというプレッシャーがある、
 と紹介されていたので、世界がこの流れになれば危険だな、と思います。

 差別のない社会、多様性に寛容なを作るには、どうしたらいいか?

 私は、
 「多様性というのは、とても大事なのだ」
 という考え方をみんなで共有することだと思う。

 「欲望の民主主義」の番組でもあったけど
 多様性があり、色んな考え方の人がいるからこそ、
 我々は色々議論して、高めあって、進歩できるし、
 みんな違うから面白い。

 また、考え方の話だけでなく、
 進化論的にもむしろ多様性はとても大事、優生学は敵、
 ということも強調すべきだと思う。
 ピア・インディアンにしろ
 鎌状赤血球にしろ
 現代では劣性と見なされても
 環境が変われば優勢となる。
 浅はかな知恵で、これらの人たちを人為的に淘汰してしまえば、
 何かあったときに人類は滅亡してしまう可能性もあるのです。

 黒い歴史だからと蓋をするのではなく
 そこから目を背けずに学ぶ姿勢が、
 我々には必要だと思いました。

 科学者の方々、そうでない人にも是非とも見ていただきたい番組だと思います。

というわけで今回はこの辺で。
posted by Amago at 22:21| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする