2017年09月20日

「超高齢社会2.0 クラウド時代の働き方革命」檜山 敦

「超高齢社会2.0 クラウド時代の働き方革命」檜山 敦

 この前のオイコノミアで「高齢化」の話をしていましたが、
 その前にたまたま借りていて、
 いいタイミングだったので読んでみました。

 これからの少子高齢化時代、元気な高齢者の活躍の場を増やしていこう、
 そのためにICT(情報通信技術)を活用しよう、
 という主旨の本です。

 色んな事例がごちゃごちゃしていてちょっと読みにくかったのはありましたが、
 内容としては興味深かったです。

 というのは、高齢化社会、人工知能社会の雇用って共に悲観的なイメージになりがちなんですが、
 実は両者を組み合わせたら希望が持てる未来になるんじゃ?という発想の本なのです。

 私の印象に残ったところを書いてみたいと思います。
 (私のざっくり理解ですが…)

○筆者の研究
 前座として、筆者の専門などの説明がありました。

 元々筆者の専門は、
 人間と情報機器とのコミュニケーションを設計する技術だそうです。

 例としてバーチャルリアリティやヒューマンインターフェイス、とありまして
 ヒューマンインターフェイスってなに?と思ったんですが

 辞書的には
 「人間が使用するのに必要な安全性,信頼性, 利便性などをもった機械システムを,人間の 知覚,認知,行動を熟知したうえで,利用者 と機械を含んだ系をシステム的にとらえて構 築・研究する分野」
 とあります。

 平たく言えば、人間の体の機能に沿った使いやすい機械システムを考える分野、ということかしら)

 さて筆者は2006年から東大のIRT研究機構というところで
 少子高齢化社会において、
 日常生活支援をするためのロボットや機器の開発に関わるようになった、とのことです

 そして2011年からはIBMと協同で
 「ICT基盤の「高齢者クラウド」の研究開発」
 をしているらしい

 これは、高齢者の活躍の場(労働やボランティアなど)をクラウドコンピューティングにより増やせないか、
 という発想の研究だそうです

 クラウドコンピューティングとはなにか?
 一般的には、
 今まで個々のコンピューターで作成、保存、利用していたテキストや画像などの情報を、
 インターネット上で保存、共有などする、
 (ネット上の空間を雲みたいに利用する)
 という感じの意味合いですが

 「高齢者クラウド」の「クラウド」は、雲cloudだけでなく「群衆」crowdも意味するらしい
 つまり、たくさんの人が少しずつ仕事をして全体で一人分、という働きかたでもいいのでは
 という発想なのだそうだ。

 筆者は人口ピラミッドを見ていて
 高齢者が現役世代を上回る将来の図を上下ひっくり返したとき
 「たくさんの高齢者が現役世代を支える」働きかたを閃いたそうです。

 少子化で現役世代が少なくなる時代、
 高齢者は「支えられるだけの存在」ではない、
 元気なシニアが、先細りする現役世代の労働を支える発想があってもいいのでは、と。

 しかし、高齢者の労働市場はまだ少ない。
 筆者は、そこをICTの活用で解決することを考えています

 そのためには、高齢者がICTに親しんでいる必要があるが
 コンピューターというと高齢者には敬遠されがち
 しかし、
 「最先端は使いやすい」
 だからもっと高齢者には親しんでほしい、
 というような話をし、実際活用して生き生き暮らすシニアを紹介しています

 また、このような高齢者クラウドを生かす働きかたについては
 当事者の高齢者だけではなく
 現役世代や、バブル世代団塊ジュニアなどの次世代シニアなど、全世代を巻き込み、
 日本人の働きかた自体を改革するような議論もしていかねばならない、
 というような話もしています

○高齢者が働く意義
 筆者は、元気な高齢者が働くメリットについて書いています

 現役世代の周辺労働をして、少ない人的資源をコア労働に集中できるように助ける、というメリットもあるが、
 何よりもシニア自身にとって健康長寿につながるのだそうだ。

 筆者は3つほど国内外の疫学的な調査研究を紹介していますが、いずれも
 ・老年期に就労したり、生涯学習している人
 ・社会との繋がりがある人
 ・継続的な運動をしている人
 などは長生きが多い、という有意な結果があるようです。

 ではシニアの意識はどうか?
 平成26年の内閣府の35~65歳対象の調査が紹介されていて
 ・65歳までは働きたい人はだいたい3割
 ・65歳過ぎても働きたい人はだいたい5割
 ・元気ならいつまでも働きたい人は25%くらい、
 とありました。

 (たぶんこれ、こないだのオイコノミアでも紹介されていたデータですが
 番組では生涯働きたい人は少ない、というニュアンスでしたけど
 ここでは65歳過ぎても働きたい人は5割もいる、というニュアンスで書かれていました。

 たしかに65過ぎでも働きたい人半数、てのは多いなと私も思いました。
 シニア労働市場が拡大し、シニアも働くのが当たり前になったらこの数字も増えていくのかも、と思います。)

 また、東大の柏キャンパスでは、
 シニア対象セミナーをしているそうで、
 その参加者へのアンケートがあるそうです。

 それによれば
 「仕事に求めるもの」として
 「自分が健康でいられる」がもっとも多く、
 「達成感」「他人との交流」「社会への貢献」「自己成長」などがそれに続く。
 「収入」や「自己への評価」はそれに比べて低いそうです

 また、今までの仕事にこだわらない人の方が多いのだとか。

 (働きがいや生きがいを重視する人が多い。また、自分のしてきたキャリアにこだわらない人が多いのは意外でした)

○高齢者がICTを活用する利点、活用している実例
 次に筆者は、高齢者がICTを活用するメリットを書いていました

 最近はシニアのパソコン、携帯利用者の割合は増えているそうです。
 (平成20年と24年を比べると
60代、70代ともに倍増している)

 しかし柏市のシニア180人へのアンケートだと
 Eメールや検索機能、文書作成などはする人が増えたが
 ネットでの商取引やSNSなどの使用割合は少ないそうです

 (都市で社会参加への意識の高いシニアでこの結果なので、
 地方だともっと少ないんだろうなぁ、と思いました)

 筆者はシニアのICTへの壁として3つほど挙げています
 ・物理的バリア
 ”視力の低下、手先の機能低下
 ・概念的バリア
  新しい技術を覚えられない、敬遠する気持ち
 ・心理的バリア
  炎上、個人情報流出への恐れ

 しかし、これらを取り除く技術の開発もされつつあるし、これからも進めていくべきとしています

 例えば
 「物理的バリア」に対しては、らくらくスマホなど大きい字で使いやすい端末にすること

 「概念的バリア」については、高齢者が使い慣れている道具(テレビのリモコンなど)に似せた端末にすること、

 「心理的バリア」については、間違えたら前に戻れるようにする、簡単な質問に答える形にするアプリにする、など…

 まぁでもこれらのバリアは関係なく、
 ICTを活用して生き生き暮らすシニアもいらっしゃるようで
 その例もいくつか紹介しています

 具体例は本書を読んでほしいですが
 iPadを使いこなしてプレゼンする人、
 エクセルを刺繍模様作りに活用してしまった女性などがいてすごいなーと思いました。

 また、「シニア情報生活アドバイザー」なる資格もあるそうで、
 取得された方は地域のシニアコミュニティでのICT活用リーダーとなることが期待されるそうです。
 地域と都市とのIT格差がこれで解消できれば、とのこと

 ほか、認知症でICTを使いこなし、
 困りごとを発信する方もいました。
 こういう声が認知症予防や援助のアプリ開発に繋がる可能性もあるそうです

 ほか、シニアの日常生活をICTで支えるアイデアもいくつか書かれていました

 シニアの場合、若者のように、
 単純に機械で足りない機能を補うだけだと、
 かえってシニアの自立を妨げてしまう危険もある
 ですので、今ある身体の機能を生かし、シニアが自立した生活をするための補助として活用する視点が必要なのだそうです。

 具体的に今出ている商品としては
 ・ウェアラブル端末(眼鏡、手首ベルトなど)で健康をチェック、身体機能の変化を見守る
 ・バーチャルリアリティーを使った筋トレ
 ・ウェアラブル端末による忘れ物アラーム
 ・歩行支援、重い荷物持ちのサポートスーツ
 ・セグウェイのような乗り物、自動運転
 ・見守りや会話のロボット、象印の見守り電気ポット
 ・テレワーク、クラウドワークなどの就労支援

 …などがあるそうです

○筆者の提案する「高齢者のモザイク型就労」
 筆者はシニアへのアンケートなどから
 シニアの望む働きかたとして
 ・働きたいときに働きたい(フルタイムにはこだわらない)
 ・仕事の動機は、自分の健康維持、人との出会い、達成感、貢献などで
  収入や地位にはこだわらない

 などを挙げています

 しかし企業が求める人材は、未だに
 「安定的に長く働いてくれる人」
 ですし、シニア年代になると給料が上がるという給与体系
 このため企業からすると、
 シニアは
 ・給料が高い
 ・長く働けるか分からない
 ・今までの会社では優秀でも、逆に考えが固定化されて他ではつぶしがきかないかもしれない
 という、非常に雇いにくい人材なのだそうだ

 このため、今のシニア労働市場は
 高い給料でハイスキルの仕事
 または
 安い労働
 かどちらか、二極化しているらしい

 つまり、当の高齢者はフルタイムとか高給は望んでいない人が多いのに、
 労働市場は昔の考え方のままなのだそう。
 筆者は、これではどちらにとっても不幸だとしています

 このため、ICTを利用した高齢者の能力の活用を考えているそうです

 筆者の提案する高齢者の働きかたは「モザイク型就労」で、
 モザイクにも3つあり
 ・時間的モザイク
 ・空間モザイク
 ・スキルモザイク
 だそうです

 「時間的モザイク」は、色んな人が都合のいい時間だけ融通しあって働く仕組み

 具体的には
 ・柏市の「生きがい就労事業」
 (現役世代の仕事の周辺労働を、シニアが助ける事業)
 の割り振りにICTを活用した例、
 ・電子図書館の校正ボランティア
 (電子化したい図書をスキャナーで取り込み、テキスト変換したあとの変な文章を校正するボランティア)
 での作業の進捗把握にICTを活用した例
 などが紹介されていました

 「空間モザイク」は、
 移動が難しい高齢者が、遠隔で現役世代をサポートすることが考えられるらしい。

 例としては、遠隔講義などでロボットを活用し、
 Skypeなどのテレビ電話よりも臨場感を持たせた例がありました

 「スキルモザイク」としては色んな能力を持つシニア人材をマッチングさせ、
 求める企業で能力を活用させる仕組み

 これは筆者のメイン研究なのか、個別に一章割いていました

○高齢者のスキルマッチングへのICT活用法
 筆者はサーキュレーションという株式会社と共同で、
 人材マッチングの検索エンジンを構築したそうです。

 この人材紹介会社は、経営相談顧問に特化した人材を紹介する会社のようですが、

 業務の流れとしては
 クライアント企業が、課題となることを「サーキュレーション」の営業担当に相談、
 「サーキュレーション」のジョブコーディネーターが登録者の中から、条件に合う人材を探し、
 その人と企業で個別面談してもらう、
 という流れらしいのですが

 どれだけ多くの人材を活用できるかどうかは、
 ジョブコーディネーターの腕次第になる

 ここをICT活用で効率を上げることを考えたらしい

 筆者が使ったのは
 ・「自然言語処理」
 ・「対話的検索システム」
 の二刀流だそうです

 「自然言語処理」というのは、
 クライアント企業の依頼文章と、
 登録者の履歴、過去の職務、情報の文章
 の2つの文章の主語、動詞などを機械的に抽出、
 過去のマッチングを学習させた人工知能に検索させ
 ヒットするものを機械的に探すもの

 一方これでは、依頼文章が漠然としたものの場合、
 (例えば「新規事業開拓に必要な人材」…など)
 検索が難しい

 このため「対話的検索システム」で、
 漠然とした依頼文章をジョブコーディネーターが読んで、連想する単語を後から追加入力できる機能を足したそうです

 つまり、ジョブコーディネーターの
 「文には書いてはいないが、こういう依頼は経験からすればこういう職種の人が必要だ」
 という「経験知」を活用させる仕組みなのだそう

 この対話的検索システムの追加で、マッチングが有意に増加したらしい

 追加入力した「経験知」を人工知能に学習させれば
 こちらも自動化できるかもしれない、とのことでした。

 その他、ライドシェアのウーバー
 (自家用車でお客を乗せるサービス、
 運び手は事前にサイトに登録しておき、
 利用者はスマホで予約できる)
 をもじった「GBAR(ジーバー、名前がユニークですね)」
 の仕組みも考えているそうです。
 これは、シニアの労働を好きなときにスマホで頼めるサービスだそう
 
 筆者は、
 ICT活用によるシニアの仕事マッチングを3段階で実現することを考えているそうで、
 ・まずマッチングできるジョブコーディネーターを育成する
  ジョブコーディネーターのスキルや知識もICTで蓄積、共有する

 ・次に、これらの知識などを人工知能に学習させるなどして、
  ジョブマッチングを高精度化する

 ・ジョブマッチングが高精度になれば、
  たくさんのシニアが労働力として確保できるので、
  それらの人材をICTを活用して適切に配置すれば、
  時間モザイク、空間モザイク的な就労が行えるようになる

 …とのことです

○まとめなど
 筆者はICT活用には
 ・雇用制度設計の見直し、
 ・兼業規定の緩和、
 ・法制度の整備、
 などまだ課題はあるとしています
 また、人工知能で仕事が奪われる、という議論もある。

 しかし筆者は、高齢者クラウドの活用は、仕事をむしろ増やす可能性もある、と述べています
 つまり、一人一人の能力を見いだし、
 社会のニーズと結びつけ、
 高齢者の雇用を新たに産み出す可能性、です。

 筆者によれば、テレワークが進めば、
 シニアが海外の途上国を支援する可能性も出てくる、
 日本のシニアが、世界も豊かにする時代が来るかもしれない、とのことです。

 ICTが、高齢者自身を豊かにし、社会も豊かにする方向に生かされてほしい、
 と筆者は結んでいました。

○感想など
・読みながら、このままだとシニアも若者も、新技術をいち早く理解するか否かで
 勝ち組、負け組が決まる時代になってしまいそうだなぁ~
 と思ってしまいました。

 高齢者は特に二極化が進むんじゃないかしら。

 筆者は高齢者がICTに親しめばこのような社会が進む、と書いていたけど、
 現実的にはそういう新しいものに飛び付けるシニアって、今のところ一部の少数派に限られるように私は思う。

 なので技術の開発も大事ですが、それで経済格差ができても不幸なので、
 いかに多くの人に使ってもらうかも鍵だと思います。

 筆者は柏市の先進的なお年寄りと研究されていますし、
 ご自身も1978年生まれとお若い。
 新しい行き渡りにくい、着いていけない田舎のお年寄りの意見も聞いて進めていく方が
 誰もが取り入れやすい、格差のないやり方が生まれるのではと思いました。

 個人的には、年配の人ってお上意識が強い気がするので、
 (偏見ですかね?)
 国や自治体など公的な組織が進める方が、みんな積極的になるのかも。

 前どこかの県で、
 認知症発見のためのゲーム的なものを定期健診に取り入れている自治体がありましたが
 そういうところからお年寄りにICTに慣れてもらうといいのかなと思いました。

・モザイク労働は、育児中の主婦などにも使えるのではないかと思いました。

 好きなときに働きたい、
 自宅でも働けるようにしたい、
 なかなか埋もれたスキルを生かせない、
 という悩みは、むしろ育児でキャリア中断せざるを得なくなった主婦に多いのでは、と思います。
 少なくとも子供が小さいうちは家庭優先、フルタイムも高給も求めてない人が多いのでは。

 シニアの雇用を考え直す場合、
 どのみち今までの雇用や給与体制全体をを考え直さねばならないのだから
 育児介護など、若者でもバリバリ働けない人のための同様のシステムが、同時並行的にできるといいなと思います。

・筆者の人口ピラミッド逆さの発想はなるほどと思った。
 今の高齢化対策って、
 高齢者を「支えられる人」
 悪く言えば「現役世代の重荷」的な扱いになっている気がする。
 そうではなく、元気な人は逆に支え手にする発想は必要だなと思う。

 ただ、私の母が
 「年を取っても働けと言うのか」
 と文句を言っていましたけど
 高齢者が楽しんで、自分から進んで働けるといいなと思います。

 今の年金制度がやる気を無くさせるのかな?
 義父さんも、働いても年金減らされる、ひどければ税金取られてバカらしい、といいますし…

 年金は年金でみんな一律で払い、
 後から税金引く、とかしたらやる気でるのかな?
 もしくはお金ではなくサービスとか現物で支払うとかしたらいいのかな?

私の貧しい知恵では答えは出ませんけど、
筆者のように若い世代がシニア労働について考えたり、議論するってのは何となく未来に希望が持てる、と感じた本でした。

私は新技術を取り入れて楽しむばーさんになりたいです(笑)
そして、なるべく元気に長生きしたい。
仕事させてもらえるなら、一生社会貢献したいです。

というわけで今回はこの辺で。

posted by Amago at 15:40| Comment(0) | 本(人生) | 更新情報をチェックする

2017年09月17日

NHKBS世界のドキュメンタリー「“楽園”に渡った異邦人たち」

NHKBS世界のドキュメンタリー「“楽園”に渡った異邦人たち」

オランダ2016年製作のドキュメンタリー。
ヨーロッパ南部の難民収容所で、
難民の方々に難民審査官みたいな?感じの人がヨーロッパ社会の率直な意見をぶつけた番組。

うーんでもこれ、やり方がどうなんだろう…と思いました。
ネタバレになってしまうんですが、
移民たちに質問をぶつける役の人が、
役人とかではなく、何の権限もない役者さんなんです。

しかし聞かれている移民の側は多分難民審査官かなにかと思い込んでる(騙されている)
という感じ…

まぁそうでもしないと本音を引き出せないのかもしれないが、

本来は役人とか、しかるべき立場の人だけに打ち明けるような、個人的な話もさせている感じで、
ここまで聞いていいのかと思ってしまった。

移民だからって何をしてもいいわけじゃないですし、
出演者に後でテレビですよ、と説明して了承してもらえたのかな?と気になる番組でした。

とはいえ、緊迫したやり取りは見ごたえがありました

「第1幕 ヨーロッパ人の1つの本音「祖国を建て直せ」」
 舞台は教室のようなところ。
 白人の中年男性
 (ちょっと細身?の少し神経質そうな感じの人)
 が教壇のような所に立って話をしていて、
 彼の話を聞いているのはアフリカ、中東系の難民たち10人くらいでした。

 白人男性は眉間にシワを寄せた権威的な雰囲気で、
 おそらく難民たちは彼が誰かは分かっていない。

 彼は移民たちに
 「みなさんようこそ」と話しかけていました。

 「みなさんは若くて、野心と希望がある。
  あなたがたは異国で新しい運命を切り開こうとやって来た、そうですね?」

 しかしそのあと、
 「少し話をしたいと思います。
  あなた方には、真実を知る権利があるからです。現実をね」
 そして白人男性はこのあと、彼らに厳しい言葉を投げ続けました

 彼はまず
 「なぜ祖国を出てきたのですか」とみんなに聞く

 「仕事を得るため」
 「庇護を求めるため」
 「ヨーロッパがどんなところか知りたかった」…など

 男性は
 「ここで知っておいて欲しいことがある」と言い、
 ・去年1年のヨーロッパへの移民が150万人
 ・移民1人に対し、初期の1年で2万6千ユーロ(312万円)の経費がかかる
 ・つまり150万人で年間390億ユーロ(4兆7000億円くらい)かかる
 と話す

 そして
 「集団での移住は楽園ではないのだ、
  とんでもないこと、破滅につながる」と厳しい言葉。

 難民たちは
 「分かります、私も常にその事を考えています
  私たちはどうしたらいいんでしょうかね?」と聞く。

 白人男性はそれに対して
 「私の父の話をします」
 第二次対戦時に子供だった父親の話をし、
 ヨーロッパが戦争の悲惨さから復興したのは
 自分の父親のような若い世代が逃げずに国を再建したからだ、と話す
 そして
 「あなたがたも、我々の父親世代のように頑張ってみたらどうかと提案したいのです」

 しかしアフリカから来た人は
 「アフリカがそんな風になれると思っているのですか、アフリカは…」
 男性
 「もちろんです、これはあなた方の問題です」
 驚く難民たちに
 「もちろんそれをするなら革命を起こして、
  指導者を暗殺せねばならないかもしれない」と畳み掛ける

 しかし難民は
 「150万の移民の人たちはヨーロッパに来たくて来てるわけじゃない、
  それでも来ているのは助けが要るからなんです」

 男性は
 「しかし制度で助けられる人には限りがある、
  みんなを助けていたらどうなりますか?
  この制度が破綻してしまったら、私の子供も親も、君たちも救えなくなる、
  あまりに多くの移民が、我々の制度にすがるだけで貢献しないからだ」と厳しい

 難民は
 「私はその考えには反対だ。
  アフリカからの移民は高い能力の人たちが多い、
  その能力であなた方の社会に貢献できる」

 しかし男性は
 「ではあなたはなんの仕事をするんですか?」と聞く。
 「私は木工職人だ」
 男性
 「ヨーロッパでは手作りの家具は少ない、
  機械化が進んでいるからです」

 また、電気技師という難民には
 「隣の電線が壊れて修理が必要だとします、
  あなたと私がいたら、どちらが雇われると思いますか」
 「僕だ」
 「いや、私です。
  あなたはヨーロッパの電気を知らないから信用されない」
 電気技師の難民は
 「あなたは分かってない、頑張って仕事をすれば…」
 しかし男性は
 「私の言うことは必ず正しい、それが現実です」
 他の難民が
 「移民を訓練すれば…」といいかけても
 「訓練する費用を誰が出すんですか?」

 そして男性は、
 「あなたがたは素晴らしい話をお持ちのようなので、私の統計の話をしますが、
  アフリカからきた人のうち55%は仕事をしない、
  あなたがたが残りの45%に入れればいいが、そうでなければ一生働くことはない」
 と突き放すようにいう。

 難民が苛立って
 「その話は誇張ですか?何が言いたいんですか?」
 男性は
 「私が言いたいのは、責任はあなた方にないということだ。

  責任は、ヨーロッパの夢想家、理想主義者、社会主義者にある。
  あなたがたに誤った希望を持たせ、簡単に移住できるという幻想を植え付けた

  そして君たちは危険な地中海を渡る。
  連れてこられた小さい子が命を落とすことになる」

 難民は
 「嘘だ、そんなの不公平だ」
 男性は
 「そうだ、世界は不公平だ」
 難民
 「私たちはあなたに助けてほしいんだ」
 男性
 「私には助けられない、あなたがたが自分達で助け合うべきだ」

 男性はなおも続く反論を遮って「次の話にいきます」
 「あなたは信仰心がありますか?」
 キリスト教徒も数人いるが、難民にはイスラム教徒が多い
 男性は
 「では、あなたがたは自分の信じる神と、社会の決まりとどちらが重要ですか」
 イスラム教徒は
 「アラーの教えは重要です」

 すかさず男性は
 「問題はそこだ、
  ヨーロッパでは神の教えはおとぎ話だ、クリスマスと同じなんだよ。
  我々は神よりも自分の力で議会を作りたいんです」
 そして、
 「しかし毎年150万人押し寄せる難民は法よりも神の教えに従えという、
  そういう人たちが我々を指図する日が来るかもしれない」

 イスラム教徒は
 「あなたの言うことはおかしい、
  150万の難民が2000万になって、ヨーロッパの法を変える権利を受けられる日がいつ来るのか?」
  男性は
 「たくさん押し寄せれば、いつかはなるだろう。
  ヨーロッパのイスラム教徒が何をしたか話しましょう、
  2015年11月、パリでテロが起きて129人が犠牲になった…」

 イスラム教徒たちは口々に
 「犯人はヨーロッパ人だ」
 「あなたはおかしい、本当のイスラム教徒は、同胞である他人は攻撃しない」
 「あいつらは本当のイスラム教徒じゃない」
 と反論するが

 男性は
 「私には本当のイスラム教徒とテロリストの違いがわからない、
  君たちにはヨーロッパには来てほしくない」
 と断言していました

 緊迫した空気でこの1幕は終わりました

(…見ていて気分は良くなかった。
 何なんでしょう、この時間?
 難民がどう思うか。自分達は差別的な言葉を浴びせられるために集められたのか?と思ってるんじゃないかなぁ…と思ってしまった。
 まぁ、あとでこれは演技だと分かるのだが) 

「第2幕ヨーロッパ人の別の本音「豊かさを分配すべき」」
 次も教室みたいな所で、
 同じ白人男性が教壇に、
 難民たち(違うグループ)が生徒のように話を聞いている

 男性は
 「ようこそ皆さん」と呼び掛ける。
 「皆さんは探求者、冒険者、先駆者に見える。勇気ある人たちです。
  世界の歴史は勇気ある人たちが切り開いたのです」

 そして男性は
 「2015年9月、私は1枚の写真に心を痛めた」
 シリア人の3歳の男の子が、地中海を渡ろうとして溺れ、海岸で遺体で発見されたときの写真を貼る

 そして「この子の死は誰に責任があるのか?」と話していました
 シリア政府が、国の状態を悪化させたから…?
 この子の親が、小さな子に危険な旅をさせたから…?
 しかし彼は
 「私も責任を感じます」
 自分が選んだヨーロッパの政治家が、出身国で渡航を制限しているからだと指摘。
 「ヨーロッパには違う意見の人もいるが、私はこんな状況は許せない」

 彼は、誰もが生まれる国は選べない、と述べ、
 難民が生まれながらに貧しく、ヨーロッパが豊かなのは
 そもそもヨーロッパの植民地政策にある、と話していました
 「我々の祖先が皆さんの祖国を利用し、搾取し、奴隷同然の扱いをして
  ヨーロッパは富を築いた」

 そして
 「ヨーロッパ人5億に対し、難民はたったの100万人。
  それだけの難民は脅威にならない、
  過去の植民地政策を考えれば、今こそ我々がお返しするときだ」と話していました。

 また彼は、ヨーロッパの7つの大学のケーススタディをもとにした試算では
 国境を無くすと世界経済は70%上昇する、という結果を話していました。
 「それには皆さんの協力が必要です、
  ヨーロッパのために働き、貢献してもらう、
  その見返りに我々は福祉や老後の生活を保証する…」

 すると難民は
 「そうだ、我々は見返りが欲しい」
 男性も
 「私たちはウィンウィンの関係にならねばならない、
  ヨーロッパの福祉制度を誰でも使えるように拡大すべきだ」

 そして男性は
 「そこで君たちに聞きたい、
  ヨーロッパに何を求めてきましたか?」

 難民たちは
 「私はいい暮らしをしたいんです。自分の家もほしい、仕事するためのお店も欲しい」

 「国に戻って家を建てたい、子供も欲しいしいい教育も受けさせたい」
 などの夢を語っていました

 「いいですね。いい生活、教育も大切です。
 「皆さんの夢は手放してはいけない、国境のない世界でいつかつかむべきものです」と励ましていました

 (こちらは1幕よりは穏やかに見られましたが
 何だろ、逆に違和感?気持ち悪さ?を感じました。
 国境を取り払うって現実離れしすぎているというか…
 ひねくれた見方かもしれないが、ここまで難民に好意的な人ってどのくらいいるのかなぁと思ってしまった)

第3幕「難民認定ルールの適用がもたらす現実」
 次に、
 「収容所の難民たちは居住許可を求めている
  許可を得るには入国ゲームに参加せねばならない」
 という字幕が示されていました

 教壇に立つ白人男性は
 「この収容所はここ(地図でイタリアの付け根あたり)ですが
  あなたがたがオランダに行ったとき、
  より豊かな生活を得られるかを調べたいと思います」

 難民たちに
 「どこから来ましたか」
 「来た理由は」
 と聞いていく

 ・出国理由
 「より豊かな生活」
 「お金を稼いで仕送りしたい」
  「よりよい教育を受けたい」
  などの答えの人には、
  「経済移民」とし
  「経済移民は、ヨーロッパでは絶対に居住許可は得られない、これは決まりです」
  「退出してください」と命令する

 ・出身国
  ガーナ、インド、モロッコ、モンゴル…といった国の名前を黒板に書き、

  これらは安全な国とされる国のリストだとし、
  「これらの国から来た人たちはオランダでは絶対に居住許可は得られません」

  ただし1つだけ例外があり、
  LGBTの人たちはOKらしい
  「そうでなければ退出してください」

 しかし他にも、許可を得られるための条件がある
 男性は
 「この中で既に指紋登録をした人は?」
 これに手を挙げた人に対し

 「難民希望者は、最初に到着した国に保護申請する義務がある」
 これをダブリン規則というそうですが
 指紋登録した人は既にその国で保護申請してしまっているので
 オランダでは居住許可は得られないらしい
 「あなたたちも退出してください」

 つまり
 ・安全とされていない国からの出国
 ・身の危険を感じる差し迫った理由がある
 ・指紋登録をしていない
 に該当する人が居住許可を得られる可能性がある

 次に、男性は残った数人に面接をし
 「なぜ出国したのか」
 「祖国の状況は」
 などの話を聞いていました
 (この辺は個人的な話なので省略)

 そしてそのあと、一人一人に対して
 「あなたは○○だから居住許可が得られる」
 「あなたは○○だから居住許可は得られない」
 とジャッジしていました

 基本的には、
 祖国が戦争などで逃げないと生きられないような状況が公の認識になっていて、
 その根拠とする本人の話に一貫性、信憑性がある場合の人は、
 居住許可は与えられていて、

 夢を叶えるためとか、
 国内に安全な場所がある場合や、
 祖国の脅威が漠然としている、
 と判断される場合、などはダメらしい

 けっこう厳しくやっているんですね。
 お金を稼ぎたい人が多いのかなと思っていたけど…

 しかし、この講義したりジャッジしてる男性、一体何者?
その種明かしで終わっていました

「エピローグ”彼“の正体」
 最後に男性は外でアフリカ系の難民たちと話していました

 さきほどの神経質そうな学者風の雰囲気とは変わって、Tシャツ短パンのリラックスした感じ。

 男性の会話のなかで
 「僕は俳優だ、映画を撮っているんだよ」
 「ドキュメンタリーで、見た人が難民に対する気持ちが少し変わるかもしれない」
 などの言葉から、彼の素性と番組の意図が分かる感じになっていました

○感想など
・うーん、正直、見た人に何を感じて欲しいのかよくわかりませんでした。

 なんだろう、特に1幕。
 難民側の発言機会が少ないのと
 白人男性と難民が対等な討論をしていないのが気になった。(そもそも最初から正体明かしてないし)

 1幕は、難民が反論しても白人男性は抑え込み、難民を黙らせている。
 お互いの討論になっていない。

 たぶんこれは、ヨーロッパの難民受け入れ反対の人の立場そのままで、
 反対の人はこれを見て胸がすっとするかもしれない。

 でもこの構成では、
 反対派が自分の意見のおかしい部分に気付くことはないのでは、と感じました

 冷静な反対論者や良心のある人なら
 男性の移民への高圧的な態度を見て嫌なものを感じるかもしれないし、
 次の第2幕との対比で
 「年間150万人の移民は多くないかもしれない」
 「移民も働かせてみれば社会に貢献してくれるかもしれない」
 と考えを改めるかもしれない。

 しかし本気で1幕のような意見を持つ人は
 2幕を見ても
 「国境無くす?なに夢物語言ってるんだ」
 くらいの気持ちにしかならないんじゃないかなぁ、
 と思いました。

 これは何でかな?と思ったんだけど
 んー、2幕の方が訴えかけが弱いのよね。

 1幕は「お前ら人に頼ってないで、自分で何とかしろよ」
 みたいな怒りがあるからかな?なんかストレートに来たんだけど、
 2幕は話が抽象的過ぎて弱い。
 溺れた男の子の話も
 (さすがに遺体の写真は画面に出ないので)
 かわいそうだけどピンと来ないし、
 植民地政策とか言われても昔話に聞こえるし…

 アフリカ系の方が実際にヨーロッパを経済成長させたストーリーでもあれば、
 説得力があったのかな~と思いました。

 でもアフリカとか移民の方が ヨーロッパで活躍できない理由の1つは
 彼らの能力云々よりも
 「あいつらにできるわけない」
 という社会の思い込みなのかな、というのは感じました。

 そう思う人がいる社会だから、
 彼らは活躍の機会を与えられない。
 あるいは不利な立場で勝負させられる、
 あるいは重圧につぶされて彼らがベストを尽くせない…

 そして、こうした差別が原因で彼らが失敗しようものなら
 「やっぱりあいつらはだめだ」
 という思い込みがより強くなる…
 という悪循環なんだろうな。

 なので、国境を取るとか大きなことは難しいけど、
 「彼らにまずやらせてみる、機会を与える、彼らに機会を与えられるよう助ける」
 だけでもできることなのかなと思いました。

・それから第3幕では、
 移民受け入れ審査の厳しさを感じました。

 難民、移民受け入れ反対派の意見だと
 「あの人たちは我々の仕事を奪う」
 があるけど違うのね。
 仕事目的の人は、申請の段階で除外される。
 難民が仕事ができるようになったとしても、それは彼らの努力の賜物であり、仕事を奪うために来ているわけではない。ただの誤解だったんだなと知りました。
 (もしかして就労目的でビザとか取って来る人はいるかもしれないが
 そういう人たちと混同されているのだろうか、
 あるいは「やつらは仕事を奪う」というのは政治家のロジックに騙されているだけなのかも)

・イスラム教徒への誤解も気になりました。
 
 本当の心優しいイスラム教徒の人は、
 ISみたいな過激組織は嫌いだし、迷惑なんだろう。

 でも実際テロをみているヨーロッパの人が、
 町でうろうろするイスラム教徒をみて
 「あの人が突然テロを起こすかも」と思ってしまう恐怖も分からなくはない…
 彼らと直接話してみれば分かるんだろうけど
 もし本物のテロリストなら、話す前に撃たれちゃう可能性もあるわけですし。

 たぶん、ヨーロッパの人も頭から「イスラム教イコール危険」と考える人ばかりではないと思うのです。
 ただ1幕で言うように「過激派と本当のイスラム教徒の違いが分からない」から、怖がらざるを得ないのだろう。
 ここは教育で誤解を解いてもどうしようもない。見分ける方法があればいいのに、と思う。難しい。
 
番組の設定自体は少々モヤモヤしたが
(難民とヨーロッパの人が対等に討論しあえると良かったのだが)
色々考えさせられました。

というわけで今回はこの辺で。

2017年09月16日

Eテレモーガンフリーマン時空を超えて「デジタル技術は世界を滅ぼすのか?」

Eテレモーガンフリーマン時空を超えて「デジタル技術は世界を滅ぼすのか?」

今回はデジタル技術の脅威についてです。
いつもよりは現実的な話が多かったかなという印象でした。

○世界の時間を管理する科学者
 最初に出てきたのは、アメリカコロラド州の、国立標準技術研究所の科学者。

 この研究所は世界の正確な時刻の同期システムを管理しているみたいなんですが
 このシステムは空港、電力、病院など
 現代の生活に必須な世界のシステムの要となっており
 テロリストなどの格好の攻撃対象になりうる、
 という話をしています

 登場した科学者は
 「インターネット時刻サービス」
 を開発した人だそうです
 このサービスは同期信号により、100万分の1の誤差で時刻を同期させるもので
 我々のコンピューター、携帯などはほとんどこのサービスを利用しているらしい

 彼は更に精密な時計を開発しているそうです
 「イッテルビジウム光格子時計」
 これは一万個のイッテルビジウムの原子を絶対零度に冷やし、
 ここにレーザー光線を当て、
 そのとき生じる高い振動数で時計を刻むもので
 精度は今の1000倍以上、
 振動数は1秒に518兆回、という目に見えない速さらしい

 彼によれば、次に来る技術はIoT、
 電化製品に固有のアドレスを割り当ててネットワークにつなげるもので、
 こうなればコミュニケーション量も増え、
 正確な同期時計がますます必要とされるだろう、とのこと

 彼によれば、この研究所には多くの原子時計があり
 違う方法で同期している、とのこと

 これらの正確な同期は
 電力網の整備や
 通信ネットワークの同期、
 金融取引のタイミング、
 GPSには欠かせないものとなっているそうです

 このため、このシステムが一旦破壊されたら
 連鎖反応的に混乱が拡大していく恐れがある

 例えば空港では管制官が、
 それぞれの飛行機の時間や速度、距離をこの同期システムで把握している
 もしシステムに不具合があれば、
 飛行機が混み合った空港では大惨事になってしまう
 インフラ、発電所や病院、食糧の供給、石油生産などにも大きな影響が出るそうです

 もしテロリストなど、悪意を持つ人間が破壊を企てたら…

 彼によれば
 ここ1、2年でハッキングは激増しているそうです
 昔は一部の人がハッキングするだけだったが、
 今はハッキングソフトの開発者がそれをばらまき、
 素人が一斉にハッキングすることも可能になった、とのこと

 それを防ぐため、この研究所では時計を分散させてリスク回避しているそうです
 それも別々のサーバー、別々のネットワークで動かし、
 被害をなるべく少なくしているそうです

 (恥ずかしながら、同期の意味がわからないので調べましたが

 辞書的には
 「二つ以上の信号や 処理のタイミングが合うこと」
だそうです

 時刻の同期、とあるので
 違うシステム間で時刻をあわせることかな、と理解。

 ちなみにパソコンやスマホで「同期する」とは、
 「複数の端末やサービスに保存されているファイルやデータ、設定などを
  同じ最新の内容にすることを指す場合が多い」
 そうですが、この場合はファイルでなく、時刻の同期なので少し違う気がする。

 しかし、何で時間をそんなに精密にあわせる必要があるのか?
 と素朴な疑問があったのですが

 http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/ITPro/SEC_CHECK/20030125/1/?ST=spleaf

 などによると
 複数のコンピューターシステムを同時に管理するとき、
 それらを関連付ける手がかりになるのが時刻になるのだそうです。

 例えばセキュリティで事故があったとして、
 事故の原因、影響を受けた範囲、対策などを調べるとき、

 それぞれのシステムの出力ログを解析することになるが
 その解析の手がかりになるのが出力された時刻なのだそう

 もし各コンピューターの時刻がずれていたら
 その誤差を直すところからやらねばならず二度手間になる

 また、メールを送ったりデータをやり取りするとき
 未来からのメールとか、時間のずれたデータが認識されない場合もある

 手動なら直せるが、データが膨大で、操作が自動化されていたら
 システムがエラーを起こしてストップしてしまうかもしれない

 精密な時計はそれほど重要みたいです。
 世の中が便利になればなるほど、
 少しでも時計が狂ったら大惨事になってしまう
 と思うと怖いですね…)

○生体認証技術は完全ではない
 次に登場したのはスイスの生体認証の専門家。

 生体認証は個人の特徴を認証するので
 IDやパスワードより精密と言われているが
 そこには穴がある、という話をしています

 生体認証には、今は顔認証、目の虹彩認証、歩き方の認証などがあるそうです
 もし要人のセキュリティシステムが破られたら
 大統領になりすます人も出てくるかもしれない…

 そこでこの研究者は、それらのシステムの弱点を常に探しているそうです

 例えばパソコンの顔認証システム
 彼は同僚のパソコンの顔認証を、
 同僚の写真を見せることで通り抜けていました

 次に彼はセキュリティを守る側になり、
 瞬きしない場合は認証しないという条件をつける

 すると、写真は瞬きしないので認証しない

 しかし、3D画像ソフトを使い、
 同僚の顔の特徴をとらえたマスク、目だけくりぬいたものを作る

 それを彼が顔に付けて画面を見ると、顔認証は通り抜けてしまった
 (人間の目には、マスクを被った顔は明らかに怪しいのですが…(笑))

 一般の人はマスクまで作られないかもしれないが、
 要人の場合、顔写真は公に出回っているので
 セキュリティシステムをすり抜けることは可能になる

 このように完璧に見える認証システムも万全ではない
 セキュリティシステムと、それを破る技術のいたちごっこなのだそう
 彼は
 「ゴールの見えないレース」
 「新たな兵器開発競争」
 と表現していました

 「この問題について我々が真剣に考えていかないと、テロリストが勝利してしまうことになる」

○インプラントを利用したコンピューターウィルスの拡散
 次の科学者はレディング大学(イギリス)の研究者。

 彼は心臓のペースメーカーや、
 糖尿病インスリンポンプなど、
 医療用インプラント
 (体内で埋め込む形で使う機器)
 の開発をしてきたそうです

 彼によれば、
 これらは設定を変えるときなどに無線通信で情報のやり取りをするため、
 ネットワークをハッキングすれば不正な指示を送ることができてしまう
 しかもこれらの医療機器にはそれを止めるシステムはないのだそうです

 彼は2010年、埋め込みデバイスによるハッキングの実験を行っています
 やり方としては
 自分の指の内部にマイクロチップを埋め込む
 マイクロチップには、自分の個人情報や研究所のドアを開くためのパスワードが入っている

 そしてこのマイクロチップにコンピューターウィルスを読み込ませたそうです
 するとこのウィルスは、
 研究所のセキュリティシステムを通じてメインシステムに侵入し、
 メインシステムから建物に出入りする個人のICカードにも感染した
 この個人のICカードを持つ人があちこちの建物に出入りすれば
 ほかの建物にも感染するだろう、とのこと

 彼の実験によれば、
 インプラントや義足、義手などを持つ個人を利用し、
 本人はそれと知らぬまま
 コンピューターウィルスを世界中に撒き散らすことも可能かもしれない、とのことです

○コンピューターウィルスと生体ウィルス
 次の科学者は、ノースウェスタン大学の生物物理学者。
 彼はコンピューターウィルスの研究をしていたが、
 その広がりに生物学的ウィルスとの類似性を見いだし、
 そこから生物学的ウィルスにも興味を持つようになったそうです

 彼の研究所では、あらゆるウィルスの広がりかたを予測し、
 それを防ぐ方法を探しているそうです

 2009年、メキシコで発見されたH1N1というインフルエンザウィルスについて、
 感染状況を予測するプログラム「グリーム」を作ったそうです

 プログラム上で仮想のウィルスを持つメキシコ人を一人飛行機に乗せ、
 ある場所へ出掛けたらウィルスがどのように広がるかをシミュレーションし
 このようなシミュレーションを繰り返すと広がりのパターンが分かるのだそうです

 彼によれば、このプログラムを利用してコンピューターウィルスの感染経路も予測できる、とのこと

 ただし、コンピューターウィルスは生体ウィルスに比べ、広がりが早いのだそう
 生体ウィルスの場合は人間同士の物理的接触が必要なため、
 流行には数週間~数ヵ月かかるが
 コンピューターウィルスの場合、接触なしでもインターネットを介して広がるため、
 短期間で爆発的に広がる

 彼はこれを防ぐため、免疫システムのような、
 ウィルスを見つけ出し、排除するプログラムを開発しているそうです

 しかしウィルスは日々変化しており
 これらを発見し、
 1度感染されたプログラムを元通りにするのは難しいそうです

 また、「トロイの木馬」のように
 無害を装い長期間潜伏し、ある日突然発症するようなコンピューターウィルスもあるのだそう

 では、もしトロイの木馬のような感染機構を持つ生物学的ウィルスが開発されたら?

 彼はその可能性については否定的でした
 生物学的システムはコンピューターよりはるかに複雑で、
 病原体を扱うのはテロリストにとってもリスクが高い、
 自然のシステムを作り替えたら破滅につながる、
 と話していました

○解読不能な暗号
 次の科学者は、カリフォルニア工科大学の暗号学研究者
 (暗号学、てのがあるんですね)
 彼は解読不能な暗号を考えているそうです

 彼は過去の暗号の例として
 「カエサル暗号」
 を紹介していました

 これは、アルファベットの文字を何らかの法則に従い、別のアルファベットの文字に対応させた暗号

 例えば暗号化されて意味がわからないアルファベットの羅列について、
 最も使われている文字を探しだす(この場合は「I」)
 英語の文章で最も使われているアルファベットは「E」なので、
 IがEに対応している

 IとEはアルファベット順で4文字ずれているので
 ほかの文字もアルファベット順で4文字ずれた文字と対応させる

 この場合、暗号化前の文字と暗号化後の文字の対応表があれば暗号が解読できる

 このような暗号は、ギリシャ時代には解読困難だったが
 コンピューターの使える今では簡単に解読されてしまう

 現在使われている暗号は、
 「ワンタイムパッド」
 と呼ばれるもので
 これは文字を数字化し、
 別に用意した数字(乱数)を足し引きして暗号化する
 文字一つ一つにランダムな数字を当てはめるので
 ある文字が分かっても他の文字の解読の手がかりにならないそうです
 文字と数字の対応表を持つ人しかわからない
 (使う乱数は一回だけの使い捨てなので、ワンタイム(一回)パッドと言うそうです)

 しかしこれも完全ではなく、
 多くの企業では、当てはめる乱数は乱数発生器に頼っていることが多いが

 元NSA、CIA局員のエドワード・スノーデンは
 NSA(国家安全保障局)が乱数発生器に細工をし、
 乱数発生器は本来の乱数を出していないことを暴いているそうです

 そこでこの暗号研究者は、光の乱数発生器を用いる方法を考えているそうです

 彼と仲間の研究者は、
 散乱した粒子に光を当てると、
 真にランダムな図形が描かれるのを発見し、これを利用することを考えた

 高分子ポリマー分散液晶にレーザーを当てると
 光がランダムに拡散し、
 それらの干渉により、ポリマーの裏側に一定のパターンの模様が生まれる

 この模様はランダムにできるもので
 これを光に変換して信号に変えるのだそうです

 実際の使い方では、
 スパイAが、ある情報を光に変えて、ポリマーに通して散乱させ、この散乱模様をスパイBに渡す
 AとBは同じポリマーを共有しており
 スパイBが渡された散乱模様を読むとき、
 共有しているポリマーの模様を除くと元の情報が読み取れる
 という仕組みなのだそう

 ポリマーシートは立体的なので
 シートを写真にとっても再生できないそうです
 また、シートは内部までランダムで、
 内部まで探ろうとするとポリマーを破壊せねばならないらしく
 このため解読不能なのだそう

○ネット依存
 次は、ネット依存についての話です
 イギリス、ウェールズにあるスウォンジ大学のこの研究者は
 元々自閉症や薬物依存の治療についての研究をしていたそうです

 しかし最近ではネット依存の研究もしている
 「インターネットは個人を孤立させるようなテクノロジー、社会への影響が大きい」
 というのが研究の動機のようです

 彼はネットのヘビーユーザーについて、
 ネットを使わせないようにすると
 禁断症状のようなものが見られることを発見した
 そのときの彼らの体を調べると
 心拍数や血圧、皮膚の電気抵抗上昇するなど、
 闘争的な反応が見られたそうです
 「ネットは人の体に悪影響を与えている可能性がある、
  ネットは人を興奮させる」
 と話していました

 また、脳への影響を見ると、
 ヘビーユーザーの脳では
 前の部分の前頭前皮質、
 大脳の運動野などに影響が見られたそうです

 また、ある研究では
 1日10時間以上使うヘビーユーザーの脳では10%の萎縮が見られたとか
 これは重症の髄膜炎に匹敵するそうです

 「テクノロジーは人間に尽くすもののはずだったが、
  やがて人はそれなしではやっていけない依存状態になってしまう、
  あらゆるテクノロジーがそうだ」

 我々はインターネットにより幸福になるのか不幸になるのか
 前例のない社会実験をしているようなものだそうです
 「社会システムにはバックアップはないのに、
  それでも人はデジタル技術を選択してしまった」
 と述べていました

○コンピューターが意思を持ち、人間を取り込む世界
 次の科学者は、デジタル世界が意思をもったら?という話をしています。

 この神経生物学者は、アレン脳科学研究所の方。
 今のコンピューターやインターネットのネットワークは巨大で複雑化しており
 人の脳のニューロンネットワークより多くなっている、
と話していました

 ではこれらのコンピューターは自己認識や知覚などの知能を持つようになるのか?
 彼によれば、コンピューターの知能はまだ赤ん坊レベルだ、とのこと

 コンピューターが知能を持ったかを調べるテストとして
 「チューリングテスト」があるが、
 (コンピューターと人間に質問をして、
 被験者にその答えだけ教えてどちらが人間の答えか当てさせ、
 どちらが人間か分からない、と言われれば
 そのコンピューターは知能をもった、と判断するテスト)

 彼は「知能や意識の新しいチューリングテスト」を考えているそうです

 例えば視覚のテストとして
 不自然な合成写真を見せて、
 おかしいと判断できるかどうかのテスト
 人間が見れば、例えば月に関係ない人間がいるとか
 明らかに不自然と分かるが
 今のところコンピューターはそれは不自然と認識できないのだそうです

 このようなテストに合格すれば
 コンピューターが知覚や意識を持つことになるが
 それはセキュリティに関わってくるそうです
 コンピューターが勝手な行動を始めたら、
 コンピューターの独立性、自律性に影響が出てしまう

 また、人間よりもコンピューターが高い知能を持つようになれば
 コンピューターが人間を取り込む時代が来るかも?という話をしていました

 例えばミトコンドリアは昔は独立した生物だったが
 今は他の生物の細胞に取り込まれ、エネルギー発生装置として使われている

 同じように機械が人間を取り込む時代が来るとしたら?
 その場合コンピューターは、人間の何を欲しがるのか?
 (まるで「マトリックス」の世界ですね…
 ちなみに「マトリックス」では、人間の体のエネルギーシステムを吸いとってました)

 この科学者は
 「魂は要らないだろう」
 と話していました
 アルゴリズムやソフトウェアがあれば、魂が無くてもやっていける、と。

 モーガンさんのナレーションでは
 人間にしかない感情というものが、機械に乗っ取られない最後の拠り所となるかも、
 という感じの話をしていました

最後のナレーションでは

 テクノロジーの進歩は戦争を新しくした、
 青銅器の発見は斧を、
 鉄の発見は大砲や銃を産み出した

 テクノロジーは新たな武器になるのか?
 しかしそのテクノロジーを産み出す資源は鉱山ではなく、
 我々の心の中にある。

 とすれば、我々人類の運命を握るスーパーパワーと言うべきものは
 「人間の創造力」だろう…

と締め括っていました

○感想など
・顔認証といえば、最近AppleのiPhoneXの顔認証システムが話題になっていました。

そう言えば詳細知らないので調べましたが

Appleのページは重くて見にくいんで、
ほかのニュース系のサイトを見ると

https://www.lifehacker.jp/2017/09/170913-what-you-need-to-know-anout-face-id-on-iphone-x.html

http://www.appbank.net/2017/09/15/iphone-application/1413625.php

などで顔認証システムの「Face ID」について説明があります

Appleによると、とのことですが、
・Face IDは「TrueDepth」という独自カメラシステムを採用しているらしい。

TrueDepthシステムは、
通常のカメラのほか、
赤外線センサー、近接センサー、環境光センサー
などの色んなセンサーが組み合わされており、
立体を捉えるためのプロジェクション技術も搭載している
とのこと。

そしてユーザーがiPhoneを見ると、
色んなカメラで捉えたイメージから、
3万を超えるドットで立体パターンを作り
「A11 Bionic」というプロセッサーで顔認証するそうです。

このプロセッサーは色んな顔を学習したニューラルネットワーク、
つまり人工知能みたいです。
赤外線センサーもあるので、認証は暗闇でもできるのだそう。

セキュリティとしては、
「Face IDのデータは「A11 Bionic」プロセッサーの安全な領域に格納される」
らしく、なりすましによるロック 解除成功率は「100万分の1」なんだそうです
(これ以前のモデルに搭載されていた指紋認証は5万分の1だったそうです)
リアルな立体マスクについても、テストも重ねて認証されない確認はされているそうです。
双子でも大丈夫、だとか。

…というわけでAppleの主張によればセキュリティ的には良さそうですが

http://gigazine.net/news/20170914-unlock-phone-face-id/

などでは、
ハッカーの技術も進歩するので
指紋認証のように顔認証も破られる可能性はあること、

また生体認証は、
1度その元情報が流出してしまっても情報を変えられない、
などの問題点を指摘しています。

(ちなみにAppleは、この新商品発表のプレゼンで顔認証に失敗、
代わりにパスコードによるロック解除をしたため、
faceIDの信頼性が危ぶまれて株価急落、
なんてニュースもありました…

https://www.businessinsider.jp/post-104731

によれば、スタッフのミスとか FaceIDのエラーではなく、
iPhone Xがリスタートしてしま い、
顔認証機能が動作する以前のパスコードの入力を求めただけだったみたいです。

なので、真に安全かどうかは今後の検証になるかなと思います。

うーん、でもAppleさん、イメージ的には手痛いミスかなぁと思うが…)

・最初の話は、時刻システムにちょっと手を入れるだけで大混乱、てのは怖いなと思いました。
デジタル技術というかテクノロジー全般そうなんだろうけど
便利になればなるほど、
壊滅させられたときのダメージは大きそうだ。
原始的な生活に戻れとは言わないが
突然不便な生活になってもやっていけるサバイバル能力も身に付けておくといいのかも。

・生体認証は1度流出すると防げないから怖いですね。
そう言えば最近見たテレビで振り込め詐欺の話を見ていたら
「些細なことで個人情報は流出しうる」
という話をしていました

例えば健康食品のモニター募集で住所を書くとか、
子供のSNSの投稿でペットの名前や家族構成がばれるとか…

なので、個人情報はすでに流出しているかもと思って行動した方がいい、
と専門家が言っていたのが印象的でした。

ですので生体認証ってのはあんまり頼らない方がいいかもと思います。

やはり、漏れてもいいように対策すること、
例えばパスワードは定期的に変えるとか
意味の分からん並びにするとか、
めんどくさいから嫌だなと思うことをするのが一番なのかなと思いました。

・最後の話では、
コンピューターが人間を取り込む世界を空想していましたが
個人的には、コンピューターと人間が協力しあえる世界が来てほしいなと思います。

コンピューターが学習機能を持ち、人間に近づいていくと
人間のよさ、特徴ってなんだろう?
という議論になってくるかもしれないけど、

相田みつをさんの
「みんな違ってみんないい」
の詩にあるように
鳥は空を飛ぶ、
鈴はきれいな音を出す、
人間は話をする、

みたいに、コンピューターにはできて人間にはできないこと、
逆に人間にできてコンピューターにできないこと、
もあるはずだと思う。

どちらかがどちらかを飲み込むのではなく
そこを補いあっていければいいのかなと思います。

色々勉強になりました。
というわけで今回はこの辺で。