2017年08月07日

NHKBS世界のドキュメンタリー「メモリー・ハッカー~あなたの記憶が塗り替えられる~」

NHKBS世界のドキュメンタリー「メモリー・ハッカー~あなたの記憶が塗り替えられる~」

 アメリカ2016年製作のドキュメンタリー。
 記憶に関する研究についての話でした。
 記憶って海馬と大脳皮質の働きちゃうのん?
 と思っていましたが、記憶についてはまだまだ謎が多いのだそうです。
 記憶だけでなく、忘れる能力もなんなんだろう、と思わされる内容でした

○驚異的な記憶力の持ち主たち
 最初に出てきたのは11歳の少年。
 彼は一見普通の少年に見えるが
 実は過去の出来事を全て覚えていられる能力を持っているのだそうです。
 年月日を言えば、その日の出来事をすべて正確に答えられる

 このような人たちは
 HSAM
 (Highly Super Autobiographical Memory、高度に優れた自己再生記憶)
 と呼ばれ
 カリフォルニア大学のジム・マッガウ氏が15年前に発見したそうです
 彼は今まで数千人を調査、そのうち55人が見つかっている

 彼はHSAMたちの脳をスキャンして調べたそうですが
 鉤状束、と呼ばれる所が活発など、
 いくつかの特徴に分けられはするものの、
 共通するパターンは発見されていないそうです

 先の11歳の少年は7歳の頃からこの特異な記憶力を発揮しているそうですが、
 子供で見つかる例は珍しいそうで
 彼が記憶を呼び覚ますときの脳をスキャンし、詳しく研究しているそうです

 ほかの人と何が違うのか、
 人よりを記憶力が優れているのか
 それとも全てを記憶する力は誰にでもあるが、それを取り出す力が特異的なのか…

○てんかん患者の研究
 記憶の研究は、あるてんかん患者により大きく進歩した

 これはあまりにも有名な話ですが、ブレンダ・ミルナー氏によるてんかん患者ヘンリー・モレゾン氏(HM)の研究

 モレゾン氏は子供時代に自転車事故にあい、
 それ以来てんかんに悩まされた
 そこで医者は、てんかんを起こす脳の部位を切除する手術を行う
 ほとんどの海馬を取り除いたそうです

 その後、てんかんの発作は無くなったが
 副作用として、モレゾン氏は新しいことを全く覚えられなくなってしまった

 このことから、長期記憶には海馬の働きが必要と考えられるようになった。

 ミルナー氏がこのときの話をしていました
 「彼は実験には協力的でした、特にパズルが好きでした」
 その一つに手を鏡越しにだけ見えるようにして
 星などの図形をたどってもらう実験があったそうです

 普通の人は何回かやれば学習できるが
 モレゾン氏は新しいことを覚えられないため、学習はできないのではないか
 と予想されていたそうです

 しかし彼は練習するごとに上手になった
 ミルナー氏はとても嬉しかったそうです
 「それが突破口でした、運動機能は学習できることがわかった」

 ここから、記憶にはいくつか種類があると考えられるようになった
 運動、意味など、違う種類の記憶は
 別々の脳の部位に保管されているようだ、と分かった

 それ以来、記憶の研究はさらに進んだそうです
○記憶を脳の変化として捉えた研究
 ノーベル生物学賞を受賞したコロンビア大学のエリック・カンデル氏は
 記憶についての画期的な研究をしたそうです

 彼の研究の原点は子供の時の記憶だった
 彼は誕生日に、オモチャの車を買ってもらったそうです
 しかし、その二日後、
 「クリスタル・ナハト」と呼ばれる
 ナチス兵によるユダヤ人地区の襲撃が行われた

 彼らはアパートを追われ、
 一週間後に帰ってきたときは金目のものは全て奪われ、
 オモチャの車も無くなっていた
 子供心にとても辛かったのだそうです

 彼は「ホロコースト体験者はその経験を一生忘れられない」
 と述べている
 ではなぜ忘れられないのか?
 それを知りたくて精神分析や心理学を学んだそうですが
 記憶の研究が最も大事だと感じたそうです

 記憶が海馬に関係しているのは分かっていたが、
 では意識がどうやって海馬にたどり着くのか?

 彼が研究対象に選んだのはジャンボアメフラシだそうです
 「同僚にはキャリアを捨てるのかと思われた」そうですが
 アメフラシが単純な刺激を記憶するときの脳細胞の変化を見ることにしたそうです
 
 彼はアメフラシの水管という水を吐き出す管に注目した
 アメフラシはここを刺激すると、嫌がってえらを引っ込めるそうです
 そこでここをつつき、電気刺激を与えるとえらを引っ込める
 次第につつくだけでえらを引っ込めるようになった

 つまりつつかれる→電気刺激
 という学習をしたそうです

 このときの細胞レベルの変化を見るため
 神経細胞を取り出して培養した

 これは当時としては画期的だったそうで
 「記憶を生物学上の変化として捉えた最初の研究」だそうです

 培養したのは2つの細胞
 1つは水管近くの神経細胞、
 もう1つは運動神経の細胞で
 それぞれの細胞は樹状突起、と呼ばれる部分の突起をのばしていき
 端っこのシナプスと呼ばれる接合部でつながっている

 記憶を学習させたアメフラシでは、
 この2つの細胞の間に、
 新たなシナプス結合が生まれたことがわかった
 リンクが一本の線だったのが、
 たくさんの線でつながっている様子がビジュアルでわかったそうです

 「最初見たときは仰天しましたよ」

 この実験は、記憶が脳の物理的な変化で起きている
 ということを初めて明らかにしたそうです

 カンデル氏によれば
 2つの細胞の中には細胞核
あるが、それを染めると
 記憶を学習した細胞では、
 そこからメッセンジャー(m)RNAが放出されるのが観察される
 観察を続けていくと、
 このmRNAが細胞末端のシナプスに移動、
 新しい細胞を作るように指令を出し、新たなネットワークを作っていた
 
 学習をするとき、脳にはこのような変化が起きているそうです

 アメフラシは細胞の数が少ないが
 人間でも基本的な変化は同じで、
 もっとたくさんのネットワークが出来ているのだろう、とのこと

 しかし、ネットワークはできても
 記憶はそのネットワークのどこに保存されているのか?

 記憶のありかを示す研究は最近なされているそうです

○記憶のありか
 ニューヨーク大学の研究者によれば
 記憶は1まとまりではなく、符号化されていくつかの場所に保存されている

 例えば
 ・視覚的な記憶は視覚野(頭の後ろ)
 ・臭いは嗅覚野(鼻の上)
 ・運動記憶は運動野(頭頂)
 ・感情は扁桃体(脳の奥)
 そしてこれらを統合して、
 1つの記憶として思い出せるようにしているのが海馬なのだそう

 しかし、記憶が脳に物理的に刻み込まれているとしたら、
 なぜ正確に思い出せないのか?
 どうして記憶は変わってしまうのか?

 最近では、思い出す過程でも脳の構造が変化する、
 と考えられているそうです

○記憶の再固定化
 カリーム・ネイダー氏は
 カンデル氏の講演を聞いて研究の着想を得たそうです
 「カンデル氏は、シナプスのできる美しい映像を見せてくれた」
 彼は、記憶が生まれるときこのような変化が起きるのなら
 思い出すときはどうだろうか、と考えたそうです

 記憶は図書館の本のように例えられる
 思い出すとは、頭の図書館に保存された本を取り出し、また元に戻すようなもの、
 その記録は永遠に存在し、取り出しても変わらない、
 というイメージを持たれがち
 これは「記憶の固定化」という概念だそうです

 しかしネイダーはそうではないと証明したそうです

 彼はラットにある特定の音をきかせ、そのあと電気刺激を与えることを繰り返した
 するとラットは次第に、
 音を聞いただけで怯えるようになった
 つまり音→電気刺激、という恐怖の記憶を学習した

 このラットにその音を聞かせて、
 そのあとアニソマイシン
という、
 タンパク質の合成を阻害する物質を投与したそうです

 「もし記憶が固定化されるものなら、薬物投与によっても変化がないはずです」

 しかし、アニソマイシン投与後は、ラットは普通に歩き始めたそうです
 何も恐怖記憶のないラットと同じになった

 「最初見たときは信じられなかった」

 つまり、記憶を思い出すときにも神経は作られるのだそうです
 思い出すたびに記憶は変えられる、という可能性が示された
 他の研究者の解説によれば
 「記憶とはしまいこんだ本ではなく
  ファイルを呼び出して修正を加え、上書き保存するようなもの」
 脳が新たな記憶を呼び出したとき、新しいタンパク質ができ、過去の記憶と新たな結合ができる
 記憶は再固定化される、と考えられているそうです

○クモ恐怖症の克服
 この結果を治療に応用した方がいるそうです

 アムステルダム大学のメレル・キント氏
 彼女はクモ恐怖症の治療を行っている

 実際のやり方を見ていると
 最初はクモに怯える男性に、虫かごに入っているタランチュラに敢えて触ってもらう
 「毒はありますか?」
 「毒グモだからありますよ」

 男性は触ることができない。
 「…口の中がカラカラです、体が震えます」
 「対象を見ることが大事です」
 クモに触れるまでではないが
手を近づけてもらう

 キント氏によれば、
 こうすることで恐怖記憶を引き出すそうです
 そしてそのあと、プロプラノールを飲んでもらう

 この薬は元々高血圧の薬で
 ノルアドレナリン分泌を阻害するそうです
 ノルアドレナリンは、ストレスに反応して分泌される
 これにより、記憶の再固定化を防ぐのだそうです

 「大事なのは、これは忘れさせる薬ではない、ということです」
 恐怖記憶をまず再活性化させないと効かないのだそうです

 さてこの男性は、
 次に訪れたとき、クモを触れるようになっていました
 最初はピッと触るだけだったが
 次第になでなでするようになり
 「ハムスターのようです」

 キント氏はこの方法で、30人のクモ恐怖症を治療したそうです
 「こんなに効果が出るなんて、私も信じられなかった」

 この効果は1年後も継続していたそうです
 先の男性は
 「怖がっていたときの自分の感じと今の感じは全然違う、
  まるで別人になったみたいだ」
 と話していました

 キント氏は
 「これが元々あった記憶を消した、という証拠にはならない。
  しかし恐怖が甦らないという事実はあるので、
  記憶が消えたという仮説は立てられる」
 これらは、PTSDの治療などにも応用されているそうです

 (ネイダー氏はタンパク質阻害剤、
 キント氏はホルモン阻害剤、
と使う薬が違うので、
 最初「?」と思ったのですが、

 私の理解で書きますと

 何かの記憶を思い出すには
 新しい神経細胞により
 昔の記憶の情報を、
 今の情報(再体験してまた口が渇く、体が震えるなど)
 と結びつけないといけないのだろう。

 タンパク質合成阻害剤は、
 その2つの情報が結びつけられず、結果的に思い出せなくなる。

 一方ホルモン阻害剤は、
 思い出したときの身体状態を変えてしまうことで、
 「思い出しても怖くない」という新しい情報に上書きさせてしまう、
 ということなのかなと思いました)

○間違った記憶を植え付ける
 次に、記憶の再固定化の話から
 「人の記憶はいかにあてにならないか」
 を研究する心理学者がいました

 この心理学者は、記憶過誤(間違った記憶)の実験をしています

 やり方としては
 子供の頃の記憶テストをする、という名目で被験者を集める
 そして被験者に話を聞いていく
 「12歳のとき△△から○○に引っ越してきました、とても嫌でした」

 話をしていくうち
 「ご両親にうかがったんですが、
  あなたは14歳のとき、友人と喧嘩をして警察が来たそうですが…」
 この中には実際の話とウソを混ぜるそうです
 本当なのは、友人の名前と当時住んでいた都市の名前だけ

 偽の話ですので、もちろん被験者は
 「何のことかよくわからないのですけど。覚えていません…」

 ここでテクニックとして
 「目を閉じてください。深呼吸して。
  この記憶を思い出すように集中するのです」
 そして
 「14歳の自分を思い浮かべてください
  場所は○○、季節は秋、あなたは友人と一緒にいた…」
 と誘導していく

 すると、被験者に一週間後に同じ質問をすると
 「私は彼女を押したかもしれない」
 などと言い出したのだそうです

 他の研究者の解説によれば
 「こんなことがあったかもしれない、
  と思いながらイメージしていくと、
  偽の記憶が作られてしまいやすい」
 「こうかもしれない、が、
  こうだろう、
  こうだ、と変わっていく」
 のだそうです

 この心理学者も
 「記憶を取り出すことに集中しなさい、
  というと、大概の人には効果がある」と話していました

 この方法で、7割以上の人が
 していない罪を犯したことを認めてしまうのだそうです。

 もしこれが犯罪の尋問のときに使われたら…
 間違った自白、間違った裁判に導く可能性がある。コワイですね。
 実際、冤罪事件の3/4は、間違った目撃証言に基づく事実の作り替えなのだそうです

 (これは、キント氏が行ったような新しい記憶の上書きを
 イメージングでさせた、ということかなと思いました)

○光で記憶をオンオフにする
 記憶の研究者は
 「トータル・リコール」
 「エターナル・サンシャイン」
 「インセプション」
 などの世界は実現する、
 と話しています

 (私自身は「トータル・リコール」だけ見たことがあります。
  火星にいた記憶を消された主人公(たしかシュワちゃん)
 が出てくる話なんですが、
 どれが本当でどれが嘘の記憶なのかわからなくなってくる話でした。

 「エターナル・サンシャイン」は記憶除去手術、
 「インセンプション」は夢のなかに入り込むスパイ
 の話だそうです)

 コロンビア大学のクリスティン・デュー氏は
 記憶のオンオフを光で操る研究をしている。
 これは光遺伝学と呼ばれる

 マウスを使い、
 楽しい記憶を光で呼び起こす実験を見せてくれました

 彼女は、このマウスの脳のDNAに、
 藻から取り出した光に反応するDNAを組み込んである

 このマウスにある薬品を投与し、その後楽しい経験をさせる
 薬品を投与すると、
 その後1時間以内の間に興奮している細胞と、光を発するタンパク質が結び付くよう指令が出されるそうです

 このように操作したマウスを
 新しいゲージにいれる
 新しいゲージは未知の世界なのでマウスは怯えて動かない

 マウスの脳を光ファイバーでつなぎ、体内の光をオンにすると
 楽しい記憶が思い出され、活発に動き出すようになるらしい
 しかし光をオフにすると楽しい記憶は無くなり、動かなくなる

 つまり彼女は、光をオンオフにすることで
 マウスを操っていることになる。

 記憶のコントロールは将来的に行われるだろう、
 問題はいつかだ、とほかの研究者は話していました

○まとめ
 最後は、色んな研究者のコメントによる、問題提起でした

 ・「記憶の操作は、進化の道を過ったことの証なのか」
  映画のように記憶の消去やコントロールができることは、
  果たして幸せなのか?と問うています。

 ・「どうして我々の体は、
   記憶の変更や修正を受け入れているのか」
  もしかして、記憶の変更、修正は生物として必要があるのかも、と…

 ・「HSAMの人たちの存在は、
  人の脳には、人生の全てを記憶する能力があることを示した。
  しかし、なぜ全員にこのような能力が備わっていないのか」
  ヒントとして、HSAMの少年は
  「良いことばかりじゃない。嫌な出来事も忘れることができない」
  と話しています。
  忘却も必要な能力なのかもしれない。

  ある研究者は
  「忘れるのは重要な働きの1つと考えられる。
   進化は、大事なものだけを保存するシステムを作っているのだ」
  と話していました

 「記憶の究極的な目的はおそらく正確無比な記憶ではない、
  過去の膨大な記憶から、必要なものを見つけるのは至難の技でしょう?」
  と話す研究者もいました

 ・最後に、記憶の意義とはなにか?についての話がありました
 「記憶とは、過去の記録を正確に思い出すためだけのものではなく、
  過去の記録を1つにまとめるクリエイティブなプロセスなのです」

 ナレーションでは
 「細胞は、我々の人知を超えたシステムで記憶を作っている。
 記憶により、我々は過去や未来に、思いをはせることができる。
 記憶は人生の物語をつむぐ、手助けをしてくれている」
 と締め括っていました

○感想など
・光遺伝学の研究は、昔サイエンスZEROとかモーガンさんの番組でも見かけましたが、
 最近はもっと進んでいるのだなぁと思いました。

 光を当てると神経細胞を活性化させるタンパク質は
 チャンネルロドプシン、という藻の遺伝子から作られる
 この遺伝子を特定の脳の部位にだけ発現させて、
 光をオンオフにすれば、狙った細胞(例えば恐怖を感じるとき働く細胞)のスイッチを好きなときにオンオフさせることができる…
 という話は聞いていましたが

 チャンネルロドプシンの発現を薬剤で調節する、
 というシステムがあるのは知りませんでした。

 この方法なら、例えばマウスが楽しんでいるとき、
 脳のどこが活性化しているか正確に知らなくても、
 薬剤を入れて、そのあと1時間以内に楽しませさえすれば
 そのとき活発だった細胞で、自動的にチャンネルロドプシンの発現がされている。
 便利なシステムですね。

 調べたらどうやらClontech社に、
 Tet-Off Advanced / Tet-On Advancedシステム、という商品があるみたいです。

 このシステムでは、ドキシサイクリンという薬剤存在下に限り、
 標的遺伝子の発現を誘導させるシステムがあるらしい
 (逆に、誘導させないシステムもあるらしい)

 これと、神経細胞が活発なときに発現する遺伝子
 (他には影響しないが、その細胞が活発であることの指標になるらしい)
 の調節領域を利用することで
 望みの時間内に活発な細胞にだけ、
 チャンネルロドプシンを発現させられるらしいです。

 このシステムを利用した研究は理科研でも行われているようで
 http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150618_1/
 などには、
 うつ状態のマウスに
 楽しい記憶を光で呼び起こすことに成功しています。

 また光遺伝学では、光をオンオフにするときは光ファイバー(つまりケーブル)を脳につなげていましたが
 http://www.amed.go.jp/news/release_20161011-01.html
 によれば、弱い光、あるいは遠隔の光でもOK、なシステムも
 東大とコロンビア大学との共同研究グループで考え出されているようです。技術の進歩はすごいですね。

・ネイダー氏の研究では
 恐怖記憶を持ったマウスでも、
 タンパク質合成阻害剤を投与されると恐怖記憶を忘れてしまう、という話でしたが

 http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150529_2/
 (これも理科研の研究)によれば、このとき記憶は消えたわけではないようです。

 この実験は、詳しくいうと
 このマウスにあらかじめ、
 恐怖体験(箱の中で電気ショックを与える)時に活発になる細胞にだけ、
 チャンネルロドプシンを発現させておく

 そのあと同じ箱に入れて恐怖を思い出させ、
 タンパク質合成阻害剤を投与すると恐怖は感じなくなる
 (ここはネイダー氏の実験と同じ)

 しかしそのあと、別の箱にこのマウスを入れて、
 光をオンにすると恐怖の反応が甦るのだそうです。

 つまり、思い出すときはシナプス増強は必要だが、
 このシナプス増強を阻害しても、恐怖記憶自体は消えていない、ということになる
 研究者によれば、認知症などの健忘症でも同様のことが起きているのかもしれない、とのことです。

 そう言えば最近、大山のぶ代さんと砂川啓介さんの話をテレビで見ましたが、
 砂川さんが亡くなったとき、
 のぶ代さんは認知症で記憶が無いはずなのに
 最後のお別れの時に
 「お父さん…」
 と言って涙を流した、というエピソードが紹介されていました。

 つまり彼女の中でご主人の記憶はやはり消えていなかった、ということなのでしょう。

 ちなみに他にも理科研では光遺伝子を使った長期記憶のメカニズムの研究、
 などもされているようで
 (http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170407_1/)
 今後も記憶について色々分かってくるのかもと思います

・キント氏のクモ恐怖症治療でも
 彼女は記憶が消えたという仮説を立てていましたが、
 恐怖を感じた、という記憶は脳の中で消えていないのかもしれないですね。

 ただ、過去の自分が感じたことと、今の自分はもう違うものとして記憶し直すのかもしれない。
 子供のとき怖かったお墓が、大人になって全然怖くなくなるのと同じなのかも。

 このクモ治療方法では、
 思い出しているときの体の反応を変えることで脳の記憶を変えてしまう、
 つまり体から感情を変化させるという意味でも面白いなと思いました。

・記憶と言えば「脳が認める勉強法」という本を思い出しました。
 この中でキーとなっていた理論として、
 UCLAの心理学者、ロバート・ビヨーク氏の
 「覚えるために忘れる理論」が紹介されていました。

 彼によれば、人間の記憶容量は無限大だそうで
 覚えたものは忘れることはない、としている
 しかしその情報の洪水に飲み込まれないために、我々は忘れるのだそうだ。

 そして、思い出しにくいものを頑張って思い出したとき、
 記憶はより強く残される、という説を唱えています。

 このため、間隔を空け、忘れた頃に再学習すると効果がある
 勉強するときに場所を変えるなど、手がかりを増やすと覚えられる
 などの方法を提唱しています。

 この方は心理学者ですが、
 「記憶は消えない」てのは先の理科研の研究で証明されつつあるし
 「上書きするときにネットワークがたくさん作られるほど記憶は強く残る」
 というのが、神経細胞の染色などでビジュアル的に示される。
 物理現象として現れている内容とリンクしているのが興味深いと思いました。

・記憶の忘却、上書き、変更も素晴らしいシステムだなと思いました。
 ビヨーク氏は、人が記憶を忘れるのはたくさんの情報から必要なものだけ取り出すため、
 としているけど、
 危険に立ち向かえるようにするため、というのもあるんだろうなと思います。
 嫌な経験、怖い経験をある程度忘れられなければ、次のチャレンジには向かえないですし。

 そう言えばお年寄りほど、辛い経験は感じにくくなり
 幸せなことだけ覚えている、と聞いたこともあります。
 (詐欺に遭いやすいのはそのためだとか…)

 私も若いときより忘れやすくなったんですが
 それはそれで幸せなのかも。うまいことできているのかも。

 将来、これが進んで、もっと年を取って大切な人の記憶が無くなったら辛いな、とも思うんだけど
 「思い出せなくても、記憶は消えずに残っている」
 のが本当だとすれば救われる気持ちもします。

 (そう言えばミスチルさんの歌の
 「あんまり覚えてないや」
て歌も似たような内容だったな。
 おばあちゃん、おじいちゃんになってもちゃんと覚えてるんだ、
 ていう感じの三番の歌詞が好きです。
 地味だけどけっこう名曲かなと…)

色々考えてしまいました。
というわけで長くなりましたが、今回はこの辺で。
posted by Amago at 21:16| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする
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