2017年08月05日

Eテレモーガンフリーマン時空を超えて「人間は神になれるのか?」

Eテレモーガンフリーマン時空を超えて「人間は神になれるのか?」

 今回は神の領域、とされてきた分野の研究をされている人たちの紹介でした。
 聖書ベースの話になっていました。

○生命をデザインする
 最初に出てきた生物工学者は、DNAを改変して、
 生命の新しい形をつくる研究をしているそうです。

 彼が座っている四角い椅子は、実は菌類が作ったものだそうです
 マッシュルームを木のチップと一緒にすると、
 菌糸を伸ばして絡み合い、固い物質になることを利用しているらしい
 これは彼の発明ではないが
 発明者はこれを「マイコテクチャー」と名付けた
 マイコロジー、菌類学とアーキテクチャー、建築を組み合わせた造語だそうです。

 彼はこれと同じく、
 細胞が自力で複雑な形を取れるように、
 DNAをデザインすることを考えているそうです
 これがうまくいけば、
 状況に応じて椅子になったりベッドになったりする生物家具ができるかも?とのこと

 彼は自由に動くダンサーのよつうな分子をつくることを考えていて、
 「この分子は細胞の中に結び付き、
  細胞に大胆な動きをもたらす」
 と述べている

 この分子はDNAを改変してつくるらしい
 起きて欲しい形になるようDNAをプログラムし直して戻し、
 そのような動きになるかを確かめる
 まずは1つの細胞をコントロールし
 これを複数の細胞に広げていくそうです

 リンゴや樹木だけでなく
 自転車などのような複雑な構造もできるかもしれない、とのこと
 ただし、自転車くらいのレベルになれば
 状況に応じて違う動きをせねばならず
 複雑なプログラムが必要になるそうです

 人間はものを作り、操り、変えていく、
 コントロールしていこうとするのが人間の本質、とのことです

 アイデアとしては遺伝子組み換え作物などと同じで、
 非常にシンプルですね。
 ただ、意思となると倫理的な問題はあるかも…

○意識を定量化する
 聖書では
 「人間は自由意思をもつ生き物」
 と定義されているそうですが
 自由意思は人間の特権なのか?

 この神経科学者は、
 意識はそんな神秘的なものではなく、
 数学的に定量できると考えている

 彼女は
 脳に損傷を受けると、
 大脳皮質の場合は意識が無くなるが
 小脳の場合は意識はある
 この違いは何なのか?に目をつけたそうです

 小脳の方がニューロンの数が多いので数は関係ない
 ネットワークを作っているかどうかだ、としている

 ニューロンの1つ1つを電球に例えると
 それぞれのスイッチが別々にあれば、
 1つが壊れても他に影響しない

 しかし大脳皮質の場合はそれぞれのスイッチがネットワークを作っており
 1つのスイッチがほかに影響を与え、
 情報を全体で共有している
 思考や感情にはこのニューロンどうしの結合が必要、
 と彼女は考えているそうです

 彼女はこの仮説をもとに、意識があるかどうかを定量する単位と、それを出す公式を作ったそうです
 記号のφで示され、これが高いほど意識レベルが高い
 彼女の公式に当てはめれば、
 人の脳でもミミズの脳でも、
 コンピューターでも意識レベルがはかれるそうです

 この指標を使えば、自己を認識する機械をつくることも可能かもしれない、とのことです。

 (この理論は、ジュリオ・トノーニ氏が2004年に発表した「統合情報理論」と呼ばれるものみたいです。
 「意識はいつ生まれるのか―脳 の謎に挑む統合情報理論 」
という本にも書かれているようで、
 概要はこの番組で紹介されていたとおりで
 意識の発生を
 ・脳にある情報量の多さ、と、
 ・それらの情報がどのくらい統合されているか、
 のかけ算で説明しようとしていて、
 この情報量はビットで示されるそうです)

 さて次は、人間はあーだこーだ考えないといけないけど、
 神なら一発で分かるだろう、という問題についてです
○問題解決の最短手順をコンピューターで探す
 このコンピューター科学者(トマス・ロキッキ)はルービックキューブの研究をしているそうです

 彼は高校のとき、このパズルに出会うが解けない
 そこでそろう方法をノートに書きとめ、攻略法を発見したそうです

 しかし彼はこのパズルの攻略法を極めようと思った
 どんなスタートでも、最短で6面を揃える根本原理を探そうとした
 これは「神のアルゴリズム」と呼ばれたそうです
 というのは、普通に一つ一つ探していたらありうるパターンは870億とおりある。

 6面を揃えるのに最短でも10秒かかるが
 このパターン全てを試すには、70億人使っても1000年以上かかるそうです
 すぐに分かるのは神の領域、ということでこの名前なのだそうだ

 彼によればこの人間の能力の枠を広げてくれるのがコンピューターだそうです
 この複雑な問題を20億の小さな問題に分割し、
 たくさんのコンピューターに分担させることを考えたそうです
 数学の「群論」などの理論を使ったとか。

 これにより、全くのランダム状態から6面全ての色を揃えるパターンを見つけたそうです
 その最短手順は20
 どんな状態からでも、20以内の手で解くことができるそうです
 (http://www.afpbb.com/articles/-/2748734?act=all

 によれば、
 このルービックキューブ問題は、
 Google社の支援を受けた国際数学チームが解いたものらしいです。
 今回出演されている科学者もそのチームの一人。

 このチームの話では、
 人間が記憶できるアルゴリズムでは最小でも、40手かかるのだとか。
 しかしもっと効率的なアルゴリズムをコンピューターで追求した結果、
 20手でいけることがわかったのだとか。

 これはGoogleの空き時間にGoogleのコンピューターを使って、
 わずか数週間で解いたそうですが
 コンピューターの仕様などは明らかにされていないのだそう。
 企業秘密なんですかね?)

 彼はこの手法は、
 人類の問題を解決する方法にも応用できる、と考えている
 複数の要素が絡み合った複雑な問題でも、
 コンピューターと人間の優れたアイデアを組み合わせ、
 分割して処理すれば答が出るはず、とのこと

 これにより、
 全ての人に最短の時間で食料を配り、飢餓を解決する方法や
 病原体を根絶するための最短の手順もわかる
 交通事故、貧困、経済問題も解決できるかもしれない、とのことです

 ただし、現実の世界では
 答がないかもしれない問題もあるようですが…

 次は、神はその人を見ればその人の全てを見通せるというが、
 人間はそれができるのか、という話です
○統計学で犯罪を防ぐ
 ここでは、人の行動をデジタルなデータに置き換え、
 未来の行動を予測する研究を紹介しています

 この統計学者リチャード・ジャニコウスキーは、最初にレストランにいました
 女性が選ぶ料理をデータをもとに当てる
 お客さんの注文するものは、
 過去のお客さんのデータと、レストランのデータを組み合わせれば予測可能なのだそうです
 例えば、何人連れ、何曜日、どの時間帯、何を注文したか…など
 それらを関連付ければ予測できる

 彼はこの手法で犯罪予防も行ったそうです
 いわば統計学で、人の心の悪を予測したともいえる

 彼は2005年、テネシー州のメンフィスで、
 犯罪防止プロジェクトに関わったそうです

 監視カメラの映像を取り込み
 犯罪者の逮捕歴のデータ、
 事件のデータ、
 犯罪研究からの理論、
 などを重ねて行動パターンを見つける
 そのための基本的なプログラムを彼が作ったそうです
 (このプログラムは「ブルークラッシュ」というそうです。
 IBMが開発、メンフィスでは2006年から導入しているらしい
 http://president.jp/articles/-/15683?display=b
 にも紹介されていますが、
 この記事では、ビッグデータを活用することで、AIが犯罪予測にも使われるようになった、
 という文脈で説明されています

 ちなみに似たような犯罪予測システムはアメリカのいくつかの州でも採用され、
 それなりに効果はあるようです。
 日本でも京都府警が初めて犯罪予測システムを導入したとのことです)

 このとき使用したのは二種類のデータで
 1つは「構造化データ」いわゆる数字のデータ
 犯罪件数、強盗件数、逮捕件数など

 もう1つは「非構造化データ」いわゆるストーリー的なデータ
 犯罪報告書などを取り込んだそうです

 これらを行うには、
 情報を読み取るプログラム、
 分析のプログラム、
 そしてそれらの結果をコンピューターシステムに入力することも必要だそうです

 これにより犯罪の傾向がわかった
 例えば一般住宅では、窃盗は誰もいない昼間に多い
 企業では営業終了直後に多い

 また、犯罪の起きる場所はは犯人の自宅からドーナツ状に分布している
 近所すぎると知人に顔を見られるし
 遠すぎると土地勘が働かないからだそう

 これらの傾向をもとに、
 中央市令室から警官を時間帯などに合わせ効率的に配備
 犯罪を予防できるようになったそうです
 メンフィスの凶悪犯罪は25%減少、
 強盗件数も他の都市と比べて5倍のペースで減少した
 (メンフィスの例は
 http://katsuki-kenta.com/2016/09/18/20160918101223/
 によれば
 IBMの2010年のプレスリリースに実績が書かれているそうです。
 転載してくださっているので読んでみると
 2006年よりも重犯罪が30%以上減少、
 そのうち暴力犯罪が15%減少
とある
 数値は少し違いますが、減ったことは減ったんですね。

 ちなみにメンフィスの例は
 松尾豊氏の「人工知能はなぜ未来を変えるのか」という本でも紹介されているらしい
 文庫みたいだし、私も読んでみたいです)

 モーガンさんのナレーションでは
 個人の行動も、ソーシャルメディアやネット検索の履歴から把握できるので、
 これをデータに変換し、犯罪予防に役立てられるかもしれない
 しかしそれが行きすぎれば、政府や企業に悪用される危険もある、
としていました

 次は、神は思考だけで物を動かすというが、
 それを可能にできるのかという話です
○思うだけでものを操る
 この神経生物学者はブラジル出身で
 ブラジルで盛んなサッカーの総合プレーと、脳のニューロンの相互作用が似ている、と話していました

 ゴールを決めていくプロセスは、複雑な脳の動きと同じ
 しかしこれを分析するために、
 一人一人のプレイヤーの動きを全て見ていくのは複雑すぎる

 サッカーを遠いスタンドから俯瞰すると
 ボールは見えないし選手は米粒状態

 しかしゴールが決まったときは何となく分かる
 選手はゴール前に集まるし、歓声も聞こえる

 彼は脳のネットワークで、このゴールの歓声を聞くのに成功したそうです
 「ブレインストーム」と名付けている
 複数のニューロンの働きを記録すると
 ニューロンの活動が弾けたとき、
 ポップコーンの弾けるような音がするそうです

 このパターンをデジタルで再生し
 機械とつなげて物体を動かすシステムを考えたそうです

 協力してもらったのはアカゲザル
 アカゲザルに、他のサルが腕を動かす画像を見せると、
 脳のある部位が活発になる
 これは自分が腕を動かしたときに活発になる部位と同じ
 (ミラーニューロン、ですね)

 そこで、この脳の動きを機械の腕につなげて動かしたそうです

 これを応用すれば、
 何かを考えただけで物を動かせるようになるかもしれない、とのこと

 さらに彼は、生き物の脳の動きをつなげる研究もしている
 2匹のラットに、脳の活動をモニターする装置を埋め込んだそうです
 脳には痛みを感じる受容体がないし、
 このセンサーは髪の毛ほどの細さなので影響はないらしい

 このセンサーを2匹のラットに埋め込み、それぞれをワイヤーでつなげる
 そしてそれぞれを別々の部屋に入れる
 それぞれの部屋には左右のまどがあり
 一匹が左右どちらかの窓をを開けて、
 もう片方も同じ側を開けたら双方にご褒美をあげるようにしたそうです
 その結果、正解率は70%になった
 ランダムに開ければ50%になるはずなので
 これは情報を別の生き物のどうしで共有する可能性を示している、とのこと

 これができれば我々は脳を共有し、
 偉大な1つの知性を作り上げることができるかもしれない、とのことです

 次は、
 「神は信じる者にとっては、どこにいても感じることができる」
 という聖書の言葉があるらしいが
 ならば神は複数の場所に同時に存在しないといけない…
 というわけで量子力学の「不確定性原理」の登場です
○量子テレポーテーション
 この科学者は量子物理学者で
 素粒子どうしの情報伝達の研究をしているが
 他人への伝達方法としては古典的な手紙が好きなんだそうだ
 手紙や郵便では、遠い外国に情報を伝えるとき、
 飛行機で輸送し、郵便局を経由し、相手先に送り届ける

 その経路も辿ることができる
 しかし量子の世界では
 量子は突然消えて突然別の場所に現れる
 そしてこの経路は辿れない

 量子状態、とは、素粒子がそのときどんな状態かを「確率」で示しているだけ
 例えば箱の中の電気が赤か青だとしても
 箱をあけない状態では色は赤青点滅してどっちか分からない状態
 しかし箱を開けたらどちらか1つの状態に決まる

 ここで、箱が2つあり
 それぞれが「量子もつれ」と言われる状態にあれば
 1つの状態が青に決まれば、
 もう1つはどんなに離れていても赤、逆の状態に決まる
 いわゆる量子テレポーテーション

 彼はこれを実際に実験し
 カナリア諸島の離れた2つの島で情報が一瞬にして伝達することを証明した

 彼は、これを宇宙空間でも実験することを考えているそうです
 人工衛星にのった素粒子と
 地上にある素粒子を同時に観測する

 ところで、素粒子では量子テレポーテーションはできるが
 人や物体では起きるのか?
 彼はこれを実現するには、
 技術革新や時間がもっと必要だろう、とのべています

 (量子テレポーテーションの話は以前も取り上げられていて
そのときはたしか、
 チェリーパイの素粒子(ミキサーでドロドロ…)
 をテレポーテーションしても
 それらを元どおりのパイの形に戻せない
 とかいう例えをしていたような記憶があります。
 大きい物質をテレポーテーションする限界はそこにあるんでしょうね)

 最後に、
 そもそも我々には神レベルになる資格はあるのか
 肉体などに限界はないのか、という話をしています
 (今までの話は何だったのー?て感じですが(笑))
○人間には限界がある
 この物理学者で哲学者の方によれば
 そもそも人は肉体的、精神的な限界があるそうです

 彼はスパルタン・レースという過酷なレースに挑戦しているそうです
 ビースト、という一番過酷なクラスでは、
 23㎞の山道を上りつつ25の障害を乗り越える
 綱を上り、鉄条網をくぐったりするんだそうです
 上級者は四時間でクリアできるが
 普通は九時間を目指しているとか…
 (スパルタンレースは日本にも上陸しているらしい。
 ほかには初心者向けのスプリント(5㎞くらい)、中級者のスーパー(13㎞くらい)があるそうです)

 なんでこんなことをしているのか?
 彼は、肉体を限界に追い込みたいのだそうだ。

 彼は、人間が神のようになるには、
 肉体的にも精神的にも限界があるとのべています

 プラトンは世界を知るには対称性を見つけること、と言ったそうです
 対称性とは、真ん中で分けると左右同じになること
 (他には回転対称などもありますね。
 物理学者、数学者が好きな概念ですね)

 彼によれば
動物、植物にもこのようなパターンがあり
 科学者たちはこれを発見してきた、と述べている

 そして彼によれば、
 科学者たちは宇宙もビッグバン以前は対称なものだった、と考えて宇宙を理解しようとしているそうです
 ビッグバンにより、対称世界がバラバラな破片に分かれたのだ、
 これを元通りに組み合わせれば宇宙が分かる、と思っているのだそうだ

 しかし彼は、これは幻想だとしている
 宇宙は対称ではないのでは、と。

 例えばニュートリノという素粒子は常にスピンが左巻きだと分かっている
 確率的には右、左両方巻きが同じ数あってもいいのにそうではない
 ニュートリノだけでも対称ではないのだから、
 自然界は完全な対称ではないのでは、とのことです

 例えば人間は、心臓は左、腎臓は右にあり
 人の顔も対称ではない

 そして同じように
 人間の知ることができることには限界がある
 観察対象を見る道具にも限界があるのでは、とのこと

 それでも知り得ぬことを知ろうとするのが人間、
 世の中には見知らぬなにかがあるから知りたい、と考えるのが人間だ
 と述べていました

○感想など
・先日、AIの番組(「フランケンシュタインの誘惑 強制終了 人工知能を予言した男」など)を見たせいか、そちら寄りの感想になってしまいますが…

 ルービックキューブ問題、データ活用による犯罪予測、
 脳神経の働きやネットワークの分析…
 色んな「神を超えるための研究」
 が、もはやコンピューターなしでは成り立たないんだなと思いました。

 これらと、最後の「人間の肉体には限界がある」
 というのと合わせると
 人工知能の「シンギュラリティ」
 は空想ではないのかもと思えてきました。

 シンギュラリティは
 カーツワイルさんという方が本に書いて有名になったそうで、
 私はこの本は直接読んでないので伝聞形になって申し訳ないのですが、
 関連するページなどを読ませていただくと、
 カーツワイル氏は
 「人類の進化の肉体的な限界を、人工知能との融合により乗り越える」
 というようなことを述べているそうです。

 具体的には、数年後には脳にAI的なものを埋め込んで、
 映画の「マトリックス」のような世界になっていく、
 などの予言?予測?をされているとか…

 今回最後に紹介された哲学者は
 「肉体には限界がある」と話していて
 私もそうだろうなぁと思います。
 しかしそうだとしても、
 我々の「知らないことを知りたい、世界のはてを見たい」
 という欲求が収まることはないでしょう。

 ですから、
 カーツワイル氏がいうようにAIを脳に埋め込むまではいかなくても、
 AIを人間の能力と融合させて、
 その限界を超えようという取り組みが行われる可能性は
 なくもないんだろうなぁと思いました。

 それとも、機械との融合なんて気持ち悪い、
 そこは越えてはならない一線だ、
 と抵抗する人の方がまだ多いのかな?
 それも分からなくはないなぁ。

 でも先進的な人たちがそういうのを試して能力を高めて
 そういう人たちだけで支配する世界ができたら嫌だなぁ
 …とどんどん空想が広がってしまいました(笑)

・二番目の方の、意識のレベルの高さは、ニューロンの数だけでなくそのネットワークの数による、
 という考え方も面白いなと思いました。

 ただそうなると、そのネットワークを作らせるものは何なのか?という疑問が出てきます。

 個人の意識を超えた超意識が作るのか
 あるいはDNAとかにプログラムされているのか、
 単に外的な環境に反応して生まれるのか…

 脳は鍛えるほどネットワークができる、というけど
 (老化防止にクリエイティブなことをする、とかね)
 でもそのとき本人が「鍛えたい」「鍛えよう」と思わなければ鍛えられないわけで
 その意思を作るものはなんなんだろうなと思いました。
 卵と鶏の議論みたいですね…

・DNAをデザインするとか、脳どうしをつなげるとかのアイデアもあったけど
 もしそうなったとしても、
 その影響まで見通す力まで持つのは難しそうだなと思いました。
 科学者は、自分が作ったものがどんな影響をもたらすのか、
 その重みは心に留めておかねばならないだろうなと思いました。
 …と考えていたら、これは自己進化型AIを作るときと同じ議論だと気がつきました。

 科学がどんなに進歩したとしても、神に近づいたとしても、
 人間が逃れられないのが、感情とか心理とか倫理とかの問題なんだろうな。

色々考えさせられました。
というわけで今回はこの辺で。

2017年07月15日

Eテレ モーガンフリーマン時空を超えて「神が進化を創造したのか?」

Eテレ モーガンフリーマン時空を超えて「神が進化を創造したのか?」
今回は進化の謎について。
大きく分けると
神のような存在が生命を作ったとする説、
自然淘汰による進化を支持する説
の2つの話になっていました。


○インテリジェント・デザイン説
 最初の生物化学者は、神のような超越的な存在が生命体を作った、とする
 「インテリジェント・デザイン説」
 を唱えています。
 これは古代の生物が祖先、という考え方とは矛盾しない、とのこと
 彼によれば
 「ダーウィンの進化論は、
  進化が突然変異により起きたとするのが問題」
 実際の自然を見ると、何かが意図して作ったとしか考えられないものが多く見られる、とのこと

 彼はバクテリアの鞭毛について研究してきたそうですが
 鞭毛は自然界のモーターのようなもので、
 留め具で細胞に繋ぎ止められ、
 必要に応じて回転することで働く
 プロペラ1つ欠けても機能しないそうです。
 
 このような研究を続けた結果、
 彼は生物がいかに精密であるかを知り、
 これは一つ一つの部品がゆっくり変化してできたとは考えにくい、
 と思うに至ったそうです。

 生命体は体全体で機能する必要があり、
 一つが欠けても動けない。
 このような複雑で精緻な仕組みは、
 徐々に進化したのでは作り上げられない、
 超越的な存在が、意図をもって作り上げたと考える方が妥当だ、とのこと

 彼はキリスト教徒なので神を信じるが
 その存在は必ずしも神でなくてもよい、とのことです
 何か意図が感じられるという点が重要なのだ、とのこと

○生物は生存に有利になるように徐々に変化したという説
 一方次の科学者は、
 生物は生存に有利になるよう進化していった、と考えている

 彼はバイオロボティクスの研究者で
 背骨の進化について調べているそうです

 我々には脊椎があり、脊椎は椎骨によりできているが、
 もとは脊索というやわらかい軟骨のコラーゲンが祖先だそうです
 今では一部の魚がこのやわらかいコラーゲンを持つとのこと
 彼は脊索が脊椎へと進化したのは
 DNAのちょっとしたミスによるもの、と考えているそうです。
 ミスにより背骨が強い魚が産まれ
 背骨の強い魚がより獲物を捕らえられるので生き残った、とのこと

 しかし、この過程は化石を辿るだけではわからない
 彼はロボットを作って調べています。
 ロボットと言っても丸い形のものに
 しっぽみたいなものが付いていて、そこに脊索が付いている

 これを深海に見立てた丸い暗いプールで泳がせて、
 5億年前の世界を再現しています
 獲物は光で、光に向かって動くようになっている

 このロボットを4つ用意し
 それぞれの脊索に椎骨をつけ(0個、5個、10個、15個)
 光を追うように競走させる
 
 彼らは
 0個が一番遅く、椎骨が多いほど速い…と予想していましたが、
 実際は
 15個より10個の方が有利でした

 この科学者は
 「椎骨には適正な数があるのだと思われる」
 と話していました。
 そして、これは、
 進化が様々な試行錯誤の末うまれたことを示している、
 と述べています
 この試行錯誤は、食べる、逃げるなど、
 淘汰の圧が起きて行われる

 彼はこの実験で、我々の背骨がどう進化したかもわかる、と述べているそうです

 彼によれば、
 「生命の進化のパートナーは背骨」
 なのだそう

 背骨があってこそ、
 我々は立つこともできたし、
 体をいろんな方向に曲げることもできるようになった
 この背骨は祖先からの贈り物、とも言え、
 進化の過程とはすなわち、体の組織を背骨の発達により強靭にする過程だった、とのことです

 「バイオロボティクスで見た脊椎の進化は、自然淘汰の一端を見せてくれた」
 
 つまり彼は自然淘汰による進化論を支持しており
 インテリジェント・デザイン説については
 「人間の持つ素晴らしい素晴らしい能力が
  行き当たりばったりに起きたと考えるのは抵抗があるのかもしれない」
 と理解を示しつつ
 「しかし進化は創造主によるものではなく、何もない自然から起きたもの」
 と述べています

〇進化の進み方は近道がある、と考える科学者
 進化論者は人類は38億年かけて進化した、とするが
 インテリジェント・デザイン説を支持する科学者は
 「生命体の精密さができるには、
  進化論の言う38億年だけでは時間が足りない」
 と考える

 しかし次の科学者は
 「行き当たりばったりの進化でも、時間はかからない」
 としています。

 この方はMITのコンピューター科学者で、
 子供の頃はコンピューターゲームを作るのが夢だったそうです
 「ゲームは世界のミニチュアみたいなもので、
  作る人はこの世界をすべて把握しているよう」

 彼はゲームのキャラクターは工場で作られると信じていたが、
 実際は人間がプログラミングで作っており
 その仕組みを知って感激したそうです

 「プログラミングコードとはゲームを説明するものではなく、
  ゲームそのもので、
  コードを変えればゲームの仕組みそのものも変わってしまう。
  これは数学の問題と同じだ、と思った」

 彼は現在は、複雑な生命体の進化を、数学で解明する研究をしているそうです

 彼はインテリジェント・デザイン説には反論する立場のようで
 「彼らは自然淘汰で人間の脳や鳥の羽などができたなんて考えられない、
  それはまるで竜巻がガラクタを巻き上げて、仕様可能な建物を作り出すようなものだ、という」

 彼のいるラボの近くの建物は奇妙なデザインが多いが
 「これは建築家が設計して建てたものです。
  しかし数学の世界では、ユニークな構造を作るために建築家は要らない」

 インテリジェントデザイン説の人たちは
 進化に38億年では足りない、というが
 彼は、それなりの時間があれば進化できることを示したのだそう

 「進化には近道がある」
 話を簡単にするために、チェスボードを作る問題を考える
 これは真っ白の8×8のマス目の盤を
 白黒の市松模様に塗り変える、という問題
 
 インテリジェント・デザイン説の場合
 神のような存在が、すでに作る模様をわかっていて
 一番早いパターンで白マスを黒に塗り替えるため
 隅の方から64歩で市松模様を作り上げることができる

 一方泥臭い進化で、総当たりのやり方をとる場合
 隅から出発して、すべての可能性の配色を1つ1つ試し
 ダメだったらまた最初からやり直す、というやり方をする
 この場合、2の64乗、つまり1800京というとんでもない歩数が必要になる

 しかしバクテリアから人間まで進化していくときに
 いちいちやり直ししていたら時間がかかる

 そこでもう一つのやり方を考える
 これは、初めに当てずっぽうにすべてのマスをランダムに塗るが、
 そのあと隣の色が同じマス目だけを選び、
 そのマス目の色を塗り替える、というやり方を取る 
 この場合、シミュレーションすると、かかる歩数は5000歩なのだそうです。

 つまり、試行錯誤の方法なら、神がデザインするよりは歩数は多いが
 総当たりよりははるかに少ない歩数で、市松模様を完成させられるそうです。
 
 彼は、進化の筋道でも、近道を見つけられるのでは、と話しています。
 進化の過程はランダムに変化しても、
 やり方次第では速く進化できる、とのこと
 「科学的に考える、とは、謎を見つけてもそれに屈しないこと
  常にこれはなぜだろうと説明を求めて、
  いい説明が見つかったら、さらにいい説明がないか探求することです」
 と話していました。

〇DNAの祖先を見つけた、と考える科学者
 すべての生物はDNAやRNAなどの遺伝物質を持っている、
 これは、生命は同じ祖先を持つ、とする進化論者の考えと合致する
 
 しかしこの説には一つ難題があり、それは
 「DNAの起源は何か?」
 ということだそうです。
 インテリジェント・デザイン説的には
 DNAは神が作った、ということになってしまう

 そこで次の科学者は
 DNAの起源や、DNAがどのように長期間生き延びてきたのかを研究をしているそうです
 この科学者はアリゾナ州立大学の化学者。

 生命は生きるためにDNAが必要だが、
 細胞が分裂する過程で、
 このDNAは完璧にコピーされ、受け継がれなければならない
 DNAをコピーする際には
 DNAポリメラーゼ、という酵素が働き
 鋳型となるDNAの配列通りに塩基をつなぎ、同じもう一本のDNAを作る、
 という作業が必要になる

 しかしDNAポリメラーゼというのはもともと存在していたわけではない
 そこで、DNAに先立つ遺伝物質があったはずだ、とのこと
 
 そのためには、DNAの二重らせんに結合するものでなければならない
 候補として挙がったのがRNA

 RNAはDNAより単純な構造をしていて
 リボースという糖からなっている
 しかしリボースの構造はちょっと複雑で、
 酸素原子1つと炭素原子4つが、特定の配列を取らねばならない
 この分子が自然にできる確率は、とてつもなく低いのだそうです。

 そこでこの化学者は、もっと単純な構造の物質を探したのだそうです
 そして試験管の中で試行錯誤し
 見つかったのがTNA(トレオース核酸)と呼ばれるもの
 これは炭素原子4つで、RNAよりも単純なのだそうです

 TNAから鎖状の高分子を作ると
 RNAの塩基とは結合できることが分かったので、
 RNAとの遺伝情報の交換は可能だ、とのこと

 TNAはRNAやDNAの祖先だったのかもしれない
 TNAはコピーを作れるかどうかは不明だが
 複雑な生命体にあるRNAに近い物質だと彼は信じているそうです。
 
 「我々は複雑な生命体を見ると、神のような存在を信じてしまう。
  しかし化学者としては、生命はどの分子が存在し、どの分子と結合したか
  それに尽きる」
 とのこと

 (TNAは、人工合成された核酸ポリマーで、天然には存在していないようです。

 ただここで登場したジョン・シャプーさんは、
 TNAが単純な構造で、原料も一種類の元素で済むこと、
 RNAなどと同じく遺伝情報をコピーできること、
 ポリメラーゼで合成できることなどから、
 RNAが生まれる前の初期の遺伝システムとなりうる、と考えているようです。

 http://www2.tba.t-com.ne.jp/nakada/takashi/origlife/
 によると
 RNAを構成するリボースは、
 自然では出来にくい、とのこと。

 自然界には糖類の異性体がとても多いので、
 炭素原子と酸素原子を普通に反応させても、
 リボースのできる割合は非常に低くなるし、
 しかもリボースは安定性が低くすぐ分解してしまうのだそうです。
 ですので初期の地球では、
 核酸を構成する糖類としてリボースやデオキシリボース(DNAの糖)以外のものも使われていた可能性もある、とのこと。

 つまりシャプーさんがTNAを代替物質として考えるのも不自然ではないようです。

 ただDNAやRNAの起源については他にも説があるようで

 http://indeep.jp/life-on-earth-was-started-by-comet/
 によれば

 彗星の原料となるダスト粒子ができる状態をシミュレートし
 (低温の真空に近い状態で
水とメタノールを混合)
 そのあと原始の地球に近い条件となるよう
 紫外線を照射して、太陽熱に近い温度に上げたところ
 リボースを含む幾つかの糖が生成されたそうです
 (この研究はサイエンスに掲載されたそうです)

 つまりリボースが、宇宙空間の凍ったダスト粒子から生成され、
 それが地球に落ちてきた可能性もある、とのことです。

 ちなみにDNAやRNAの他の材料である核酸やリン酸は
 原始の大気、火山ガスから生成されたり
 あるいは隕石に含まれていた可能性もある
 と考えられているようです)

〇構造から進化を考えた科学者
 次の科学者は、身の回りにある色んな似た構造から、
 生命の流れを考えた科学者です。

 この科学者はもともとルーマニアのバスケットのスター選手だったそうですが
 今は機械工学者
 「私は共産主義の国から来ましたが、
  バスケットのプレーの仕方はどんな政治体制でも関係ない」と話していました

 彼は今は流れについての研究をしているそうです
 彼によると、
 「バスケットボールのボールは、様々な経路を通り、
  コートのあらゆる場所からバスケットに向かって流れている

  攻める側は流れを広くしてボールを通りやすくし、
  一方守る側は、流れをせき止めて妨害しようとする」

 ボールは優秀な選手に集中し、その経路は大きくなる
 ボールが行かないところは経路がなくなっていく
 このボールの経路を線で描いていくと
 枝を広げた木のような形になるそうです。

 この流れのパターンは自然界にもたくさんあり、
 稲妻や葉っぱの葉脈なども同じ

 彼は、この共通構造は
 物質がある点から別の点へ流れていくことに関係がある
 と考えているそうです。

 例えば木の中には水が流れ、土から大気中へと水が動いていく
 そしてほかにも、「力」も木を通じて流れていく
 彼はこうした、ものの流れやそれが作る形には、
 自然の普遍的法則がある、と考え
 「コンストラクタル法則」と呼んでいるそうです

 「この法則を簡単に説明すると
  大きさと限りがあるものが生き残っていくには
  より大きな場所に、より効率的に流れていくしかない、ということ」

 これは人間の体の中でも同じで、
 酸素、血液、電気信号などもこの法則に従って流れるのだそうです。

 宇宙はこうした複雑な形を作り出すように設計された、
 とすれば、インテリジェントデザイン説になりそうですが、
 彼は創造主の存在は否定しています。
 「すべての形は自然現象で、
  私たちができるのはそれらを観察し、法則にまとめあげるだけ」

 彼によれば、
 木のような形、それを作る流れが生命を生み出すのだそうです。
 「プレー中のバスケットの動きは、
  社会の中の個人の動きの象徴そのものです、
  誰かが道を切り開こうとする一方で、誰かが阻止している」

 宇宙が進化し、流れを作り、生命を作っているのかもしれない

 (いまいち「コンストラクタル法則」がわからないので調べましたが

 http://president.jp/articles/-/11355?display=b

 https://www.jsme.or.jp/column/201312.htm

 http://hpo.hatenablog.com/entry/20131231/1388494029

 などを見ると、この研究者(エイドリアン・ベジャン)は
 「コンストラクタル法則」
 についての本も書かれているようです
 (邦訳「流れとかたち」、比較的読みやすいそうです)

 私は読んでないですが
 書評などをみると
 この本のなかでのコンストラクタル法則の定義は
 「有限大の流動系が時の流れの中で存続するためには、
  その系の配置は、中を通過する流れを良くするよう進化しなくてはならない」

 とあるようです。
 私なりに書きますと

 世の中で生き残るためには
 その中にスムーズな流れを持つことが必要、

 ということで
 これは自然現象だけではなく
 人間社会や歴史でも言える、
ということを
 ベジャンさんはこの本で述べているそうです

 逆に言えば、
 流れを読んで、それに乗る能力がないと生き残れない
 何かが止まったり詰まったりしていたら死んでしまう
 ということなのかな?

 古い体制の組織とか
 干からびかけた川とか
 壊死しそうな組織とかに
 当てはまるのかなぁと思いました…
 (もちろん逆の例もありますが)

 まぁただこの本には批判的な意見もあり
 突然の災害とか、予測不能な突発事態についてはどう説明するんだ、
 という意見もありました。

 しかしながら、自然現象から人間の社会まで大局的に見て
 共通する大きな法則を見つける視点はおもしろいなと思います。
 時間があれば読んでみたいです)

〇宇宙の成り立ちや人の倫理観は、幾何学や数学の法則が決めたと考える科学者
最初にモーガンさんは
 「我々の体は原子からできているが、
  原子の立場からは、自分が体の一部とは知らない
  原子が飛び散らないのはなぜか」
 …という問いを投げ掛けていました

 ここで登場した宇宙物理学者(ジョージ・エリス)は宇宙論と物理学の第一人者だそうです
 彼の最近の関心は、宇宙の成り立ちではなく世界の成り立ちについてなのだそうです

 彼はその複雑さを、ユース合唱団の歌声に例えています。

 「物理学者は電子と陽子が相互作用し、
  それぞれの人の脳内で、歌を歌うように振動を起こす
  物理は法則がすべての物事を起こす、と考える」

 しかし彼は今、
 この歌は単に粒子による物理的プロセスの寄せ集めではない、と考えているそうです
 
 ユース合唱団の例で言えば
 指揮者によるコントロールが必要になる
 指揮者の考えが、歌う人の脳内へとトップダウンでつながっていると考えられる、
 とのこと
 これを「トップダウン因果律」と呼ぶそうです
 聖歌隊員を構成する素粒子は、
 指揮者にコントロールされている、と考えるのだそうです

 (この説には少し違和感を感じました。
 これが本当なら、全く訓練を受けていない人たちでも
 名指揮者がいれば、指揮者のコントロールにより
 美しいハーモニーを産み出すことになるが
 実際は聖歌隊はたくさん練習しているはず。

 実際は、聖歌隊は、
 指揮者の振る舞いを見て
 そこからサインを読み取る練習をし、
 この振りの時にはこう歌うと記憶する

 その上で、本番歌うときに
 指揮者のしぐさを視覚情報として脳内に取り入れ、
 その情報が刺激となり記憶が想起されて、歌が出てくる、
 というメカニズムなんじゃないかと思うのですが…)
 
 では、美しい自然には指揮者がいるのか?

 彼は、幾何学模様にその存在を見出したそうです。
 彼は三角形を見て、
 「この図形にはピタゴラスの定理がある、
  これは宇宙全体に通じる普遍的な原理です」

 彼は幾何学の法則は、宇宙が始まる前から存在し
 物質世界はそれに支配されている、
 人間は後追いでそれを発見したに過ぎない、と考えているそうです

 古代ギリシャの哲学者プラトンも同じ説を唱えた

 しかも彼によれば、その数学的な法則はただ存在しているだけではなく、
 意味を持っていて
 人間の倫理観も規定している、と考えているそうです

 彼によれば
 善悪の判断、他人との接し方などは
 人類の誕生前からパターンが存在している、
 事象とはただ物理的に存在しているのではなく、意味を持っている、とのこと

 モーガンさんのナレーションによれば
 「人間が善悪を持つのは、人間が倫理的な存在に創造された、ということのあかしなのか
  それとも進化により、人間の道徳観が作られていったのか…」

〇道徳を決める脳内物質
 この科学者は、神経経済学という新しい学問を研究しているそうです。
 脳内物質の変化が行動にどう影響するかを調べる学問なのだそうだ。

 彼のお母さんは修道女だそうです。
 修道女は、善悪のスペシャリストですが、
 彼は「道徳観は一つではない、善と悪はどこから来たんだろう」と考えているそうです

 道徳観を特定する物質の候補としてオキシトシンが考えられたそうです

 オキシトシンは
 出産時の陣痛促進くらいしか役割が知られていなかった
 しかし男性にも存在することが分かった
 それはなぜか?
 
 彼は、オキシトシンは愛、信頼、共感に関係があると考えた
 そこで、脳内オキシトシンは他人を信用するときどう働くのか?を調べたそうです

 「オキシトシンは信頼感を促進する
  というのは実験室レベルでは分かっている、
  しかし現実世界ではどうか?」

 彼は体を張って、自らスカイダイビングをして調べていました。
 まずスカイダイビングする前に、地上で採血する
 ダイビング後もまた採血し
 脳内物質がどう変化したかを調べる
 
 彼はタンデムスカイダイビング、というのに挑戦
 これは二人で一組になり、一つのパラシュートを使う
 パートナーとなったのはほぼ初対面の方
 また、パラシュートなど器具の準備はすべて他人に任せている

 スカイダイビングの事故は、
 多くは人為的なもので
 パラシュートのたたみ方とか、器具の不具合などがほとんどなのだそうです
 しかし彼は他人を信頼して準備を任せた

 彼らは飛行機で3000メートルの空へ飛び
 そこでは「もう君を信用するしかないよ」
 「深呼吸して」「マジで?」といいながら飛び降りる。
 (見ててもこわいです…ようやるなーこんなん、と思いました…)
 
 長く感じる時間を経て無事にパラシュートが開き、着陸。
 「残りの人生、ようこそ」

 彼は
 「3000メートル以上の高さからでは、石のように落ちている
  遠ざかる飛行機を眺めていたらパニックになりそうだった」
 といいつつも、採血をそのまま行う

 分析してみると
 ストレスを感じると分泌されるコルチゾールは500%増加、
 勇気と関係するテストステロンは40%増加
 この辺は想定内だそうですが
 オキシトシンは17%増加、だそうです
 「全くの他人への信頼としては上出来」
 彼によれば、結婚式の後、新婦が新しい新郎への信頼感を示す時は28%増加する
 その半分以上なら十分だろう、とのこと

 さて、道徳分子があるとすれば、それはどのようにして作られたのか?についてですが
 彼は
 「進化が始まる前に何があったのかは分からない、
 創造主が作ったのかどうか、
 それは自分は答えられない、それは信仰の問題だ」
 と述べています。

 道徳分子は、神が作ったのか、
 それとも単に進化の過程で作られたのかは分からない

モーガンさんは最後に、
インテリジェンス・デザイン説は
善なる意図を持つ大きな存在が
この精緻な世界を作り出した、と考え

進化論は、自然淘汰という法則にのっとり、どん欲に自分の生存を求めることが
進化を推し進めてきた、と考える

どちらが正しいかは分からないが、
ただ一つ正しいのは、生命は素晴らしいことだ、と締めくくっていました。

○感想など
・インテリジェント・デザイン説は、
 「神が7日間かけてこの世を作った」
 とする聖書の世界観の人たちには受け入れられやすいのかなと思いました。

 私自身は、超越した存在というのはあるかもしれないと思うが
 「超越した存在が、精緻な生命体を意図して作った」
 てのは出来すぎな話かなぁと感じます。

 まぁたしかに自然界の美しさ、
 生命現象の精密さを見ていたら
 何かの創造主の存在を見いだしたくなるのも分かります。

 でも神とか超越した存在が、
意図して世界を作ったというのは
 神が上、我々は神の作った世界のキャラクター?て感じで
 上下関係がある気がして
 個人的には気に入らない(笑)

 それに、最初から意図しているなら
 完璧でない機能が残っているのはなぜか。
 例えば人間の尾てい骨とか、進化の名残のような不要なものをなぜ残すのか。

 あるいはなぜこの世に悪や犯罪があるのか…
 もとから善なる人たち、完璧な世界を作ればいいわけで。
 「悪を学ぶためだ」
 という人もいるかもしれないが
 もとから無いなら学ぶ必要は無いわけで…

 私の考えでは
 どっちかというと
 神様はいろんな実験をしているのかもしれないと思う。
 いろんな生き物、いろんな存在、いろんな考え方の人たちをこの世に作り
 どんな世の中になるかの実験…

 でもそれは「より良いものを作る」とか目的がある実験ではなく
 いろんな多様性を見たいのかな、と。

 そういう神(超越的存在)の世界観では
 悪は存在してはいけないものではないのかな、と思う。
 キリスト教的世界観で言えば
 悪はダメ、善なる人になれと言うが
 悪が無いと善も存在しないんだと思う。
 陰陽の世界観、太極図に近いのかなと思います。
 悪が無ければ善もない、
 辛さががあるから喜びがある、
 反粒子が無ければ粒子は無い…

 もちろんこの世に悪は無い方がいいんだろうけど、
 誰しも心の中には悪もあって
 それがあるから他人のミスに理解を示し、優しくなれる一面もある。
 そういう全てが混じりあった、
 全ての存在を認める世界、
 というのを実現しているのかなと思います。

 「悪を根絶せよ」という神様より
 「悪はありうる、みんな存在していいんだよ」
 という神様の方が
 私は優しさを感じます。

・進化の近道がある、という話も興味深かったです。
 進化を効率的にするアルゴリズム、というのが存在するのかもしれないですね。

 「群れはなぜ同じ方向を目指すか?」
 という群知能を扱った本では
 道が作られていない公園の中で
 出口にたどり着く最短ルートを作る問題で
 みんなが通るルートをより太く
 通らないルートを消していくと
 早く正解にたどり着ける
 というアルゴリズムが紹介されていました。

 人類の進化、遺伝子の突然変異にも
 似たようなアルゴリズムが使われているのかもしれない。

・DNAの起源、の話も不思議でした。
 考えてみたら、何で地球上の生き物はみんなDNAを持つのだろう。
 宇宙人がDNAにメッセージを残していったのでは、とかいう説が
 過去のこの番組で紹介されていたけど
 高度な知性をもつ宇宙人がDNAを残した説もあったりして、と思いました
 (想像するだけなら勝手なので(笑))

・最後の宇宙物理学者の
「幾何学の法則は宇宙以前から存在する」
 という考え方は「?」と思いました。

 それが本当とすれば
 なぜ幾何学の法則はできたのだろう?
 誰かが意図して作ったのか?
 たまたま出来てしまったのか?
 なぜそれが我々の倫理観を決めるのか?
 …よりいっそう疑問がわいてしまいました…

 しかし、そもそも幾何学の法則は絶対なのか?とも思います。

 幾何学法則は、
 我々のこの宇宙の、三次元世界だけに通用する法則なのかもしれない。

 そもそも、宇宙のこと自体が謎だらけで、
 10次元あるという人もいるし
 別の宇宙があるという人もいる。
 もし別の次元や別の宇宙があるとすれば
 そこでは別の数学の法則が通用しているのかもしれない、
 とも思います。

 個人的には、幾何学の法則は宇宙の誕生と共にできて
 私たちが住んでいる世界
 (というか、私たちの肉体で見ることができる世界)
 をある程度限定しているかもしれない、とは思うが
 宇宙全体もそうだ、とまでは言い切れないのではないかと思います。

インテリジェント・デザイン説にしろ
進化論にしろ
結果的にできたこの世界、生き物たち、生態系システムはみんな精密で美しいですね…
物でもそうだけど、作るのは難しいが壊すのは簡単。
壊さないように守らねばならないと思いました。

というわけで今回はこの辺で。

2017年07月08日

Eテレモーガンフリーマン時空を超えて「「運」は実在するか?」

モーガンフリーマン時空を超えて「「運」は実在するか?」

今回は運の話でした。
心理学者、統計学者、生物学者、物理学者とバラエティに富んでいたかなと思います

○運は心理に左右されると考える心理学者
 この心理学者は、運は気持ちに左右される、と話していました

 彼女は以下の実験をしています
 被験者にゴルフのパターを渡し、パットを打ってもらう
 一方には
 「このパターは2003年全英オープンで優勝したベン・カーティスのもの」
 一方には
 「このパターはいいパターですよ」
 実際はどちらも同じパターです
 実験したところ
 有名ゴルファーのもの、
 と言った場合成功率が15%上がったそうです

 彼女はこの理由について
 「過剰なプレッシャーから解放されたからではないか」
 と分析しています。
 プレッシャーは無さすぎてもダメだが
 誰かに見られながらプレイするのは過剰なプレッシャーがかかりがち

 しかしこのパターは特別だと思うことにより
 その固くなった気持ちが和らぐのではないか、とのこと

 また、これは視覚すらも変えることも分かっている
 被験者に、コンピューターの画面上でグリーンのホールの大きさを描いてもらったそうですが、
 実際よりホールの大きさ11%小さく見てしまっていたそうです
 しかし、「有名ゴルファーのパター」を渡された人はこの程度が減ったそうです

 思い込みにより成績が上がるのは、プラセーボ効果でも見られる
 彼女はそれは運とは少し違う、と述べています

 「物事を成功させられるかどうか、を決めるのは自信
  運とは少し違うと思います。
  それは不安やプレッシャーへの対処法の1つに過ぎず、自分でコントロールできるもの」
 と述べています

 (ゴルフのことはよく分からないので調べましたが、
 http://news.golfdigest.co.jp/pga/2613/article/35879/5/

 によればこのときのベン・カーティスはダークホース的な存在、
 優勝は神がかり的だったみたいです。

 当時はその前年に優勝を逃したタイガー・ウッズが首位を狙う展開で
 最終日の最初から単独首位に立つ別のゴルファーもいた

 また、カーティス自身は2000年にプロ入りしたばかりのルーキーで
 それまでの最高位は2週間前のウェスタンオープンで出した13位、
 この成績により全英オープンに初出場、
 というくらいの実力だったそう。

 最終日に他のライバルが思うようにスコアを伸ばせず、
 彼が優勝をさらったそうです)

○運は存在しないと考える統計学者
 一方次に出てきた統計学者は
 運のあるなしは心理的な作用に過ぎない
 確率論的に考えたらツキというものはない
 というようなことを述べています

 バスケットの選手はシュートを7回連続で決められると
 「今日は運がいい、乗っている」
 と考える

 しかしこの選手も調子がいい日、悪い日はあるだろうが
 シュートの成功確率は、
 全て平均化したら大体実力どおりのところに落ち着く

 この科学者は、NBAの選手のスリーポイントシュートの成功確率を分析したところ
 成功がツキによるもの、という証拠は見つからなかったのだそうです
 成功率の高い選手は、高いレベルのところを保つように鍛練している

 他の研究者も同じ結論だったそうです

 コイン投げに置き換えて考えると
 100回も投げていたら7回連続で表、というのは普通に有りうる
 確率論を計算すると、
 10回中7回連続で表になる確率は2%とかなり低いが
 100回につき7回連続で表になる確率となると32%くらいに上がる
 連続で表が出るのははツイているわけではなく、
 統計的には起こりうる1つの現象
 シュートの7回成功は、連続なら大騒ぎするが、
 連続でなければ何も言わないだけのことなのだそう
 
 なのでツキというのはなく、
 絶好調の時もあれば絶不調のときもある
 必要以上に成功に浮かれることも、失敗に落ち込む必要もない、とのことです

 この科学者は、
 一番成功率を上げる方法は
 何回でも諦めずチャレンジすること
 と言っています
 母数が増えたら成功数も増える、という理屈なのかな?
 「失敗のリスクなくして成功はない」
 と話していました

○人間は特別なストーリーを作りたがる、という科学者
 次の科学者も偶然の一致とは心理学的なもの、と話しています

 最初に以下のエピソードが紹介されていました

  イギリスで、自分の名前と住所を書いた風船を飛ばした少女がいたそうです
  200キロ先でそれを拾った人によれば、
  風船に書いてある名前は、
  隣に住む少女と全く同じ名前だった
  これは偶然なのか、運命だったのか?

 この認知科学者(メガネの知的な感じの方でした)は、
 人間は偶然でないことも偶然と思いたがる、
 というようなことを述べています

 例えば、同じ誕生日の人がいる確率を50%の状態にするには何人いればいいか

 ちょっと考えると、
 365日の半分の183人?という答えになる

 しかし実際は23人いればよい

 組み合わせのペアの数を考えると
 5人のうち2人が同じ誕生日の組み合わせは10とおり
 10人いれば55とおり
 15人いれば105とおり
 23人いれば253とおりの組み合わせができる

 これは365日の半分の183を越えるので
 同じ誕生日の人がいる確率は50%以上になる、とのこと

 この科学者は、我々がこれが理解できないのは
 我々は、人数が増えたとき、
 ペアの数も同じくらい増えると思ってしまうからなのだそうです
 実際は人数が多いほど、ペアの「増え方」も大きくなる

 このように、
 人は確率を推測するのは苦手
 (要するに数字に弱い)
 その代わりデータから物語を考えるのは得意

 地球には70億人いることを思えば
 その中で偶然風船の名前が一致するのは珍しいことではないらしい

 この科学者によれば
 偶然の一致が起きる確率を100万分の1として
 毎秒偶然の一致が地球のどこかで起きているとすれば
 1ヶ月に1回は偶然の一致に遭遇している計算になるそうです

 しかし我々は、それをなにか意味があるもの、としてストーリーを考えてしまう
 これはなぜかというと、
 我々の脳が複雑な世界を理解するためなのだそう

 それが理にかなっていることもあればそうでないこともあり
 結果間違った結論を出してしまうこともあるが、
 それが新しい考えを導きだすことにもつながっているのだそう。

 人間の脳の妄想も、新しい発見につながるのだとすれば、悪いことだけでは無さそうです

○運の確率を考えることで不安を和らげることはできる、という科学者
 次はデヴィッド・スピーゲルホルターさんという数学者。
 確率統計学の権威だそうです

 彼によれば、
 運の確率を知ることは、
 リスクを恐れる気持ちを和らげる役割がある、とのこと

 彼の専門は確率統計学だが、
 「未来に起こりうる出来事の確率を知るのは重要な仕事です」
 と述べている

 例えば我々は死を恐れる

 しかし彼によれば、我々は不運に過剰に反応しすぎているのだそう
 それはマスコミが負のニュースを多く報道するからだ、とのこと
 「平和なニュースは一面を飾りませんからね」

 しかしデータを見れば、
 平均寿命は確実に伸びている
 「これは素晴らしいことです」

 また、寿命は生活習慣によっても変わりうる
 例えばタバコ1本吸うと15分寿命を縮めると言われるが
 スモーカーは平均1日20本吸うので、
 1日で5時間、1年で76日寿命を失う計算になる
 一方30分のジョギングは30分寿命を伸ばすらしい

 このように、
 ライフスタイルにより寿命は左右されるが
 これには落とし穴もある

 「ベーコンサンドを毎日食べると大腸がんにかかるリスクは20%上がると言われている
  しかし食べなくても100人中5人は大腸がんにかかる
  ベーコンサンドを毎日食べたところで、
  大腸がんにかかるリスクは100人中5人が6人に増えるだけの話で、大したことはない
  だから私はたまにはベーコンサンドを食べる」

 では我々は今この時を謳歌すべきか、
 ライフスタイルを見直すべきなのか?

 この科学者は、死亡確率が百万分の1というのを1マイクロモード、
 という単位で表しています

 彼の計算によれば、
 隕石が落ちて死ぬ確率は1マイクロモート
 これは1日普通に過ごすのと同じ確率で、気にやむことはない

 一方乗馬をすれば死ぬ確率は0.5マイクロモート上がり
 ハンググライダーをすれば8、
 7000メートルを越える山を登ればリスクは43000上がる
 車の運転は年間40マイクロモート増えるのだそう

 また、死ぬ確率は年齢にもよる
 18歳の年間平均死亡確率は500マイクロモートだが
 60歳ではその14倍になるそうです

 しかしどのみち、我々は予期せぬ未来から逃れることはできない

 「大胆に生きても、慎重に生きてもリスクはつきもの、
  しかしリスクを受け入れて生きていくことはできる。
  実際みんなそんな風に生きています。
  みんな、避けようのない未来は知りたくないと思いますから」
 と述べていました

 結局、死ぬのはいつかは誰にも分からないけど、
 色んなケースでの死ぬ確率を知ることで、必要以上に恐れることはなくなる、
 ということを彼は言いたいみたいです

○運任せは生物の生き残り戦略、とする科学者
 次は視点を変えて生物の話。
 生物は細胞の遺伝的プログラムに従う一方で
 生命の誕生や、我々が健康に生きていることは偶然の巡り合わせの産物でもある

 この生物学者兼応用物理学者は
 細胞はプログラムどおり動く機械のようなものではなく、
 状況への対処は運任せである
 というようなことを述べていました

 一般的には、細胞にはDNAがあり、
 それに従いタンパク質が生成され
 それぞれ違った振る舞いをすると考えられている

 これはDNAの設計図とおりに進むのか?
 彼は以下の実験をしています

 クラゲの発光する遺伝子を細胞に注入し、
 そのあとに細胞分裂を行わせ、その様子をコマ撮りしてつなぎあわせる
 遺伝子の発現がオンになれば光るので
 いつ発現したかがビジュアル的に分かるそうです
 更に、遺伝子ごとに青、赤、緑などと色分けする
 細胞は同じDNAからのクローンなので
 設計図に忠実ならみんな同じように振る舞うはず

 大腸菌の実験結果を示していましたが
 赤と緑は似た遺伝子なので、
 片方が発現したらもう片方も発現するはずなのだそうです
 しかし写真を見ると赤が強い細胞、緑が強い細胞など様々
 発現は細胞ごとにランダムなのだそう

 しかもこのランダムさは時間的にも見られ
 発現は一定の間隔があるのではなく、
 不定期にどーんと発現したかと思うと何も起きないときもある

 科学者によれば
 この発現のランダムさは、種として生き延びるには有利なのだそう
 「全ての細胞が同じように発現するのはリスクが高すぎる、
  競馬で一気にかけるようなもの
 これでは1文無しになるリスクもあり
 リスクは分散させる方が理にかなっている」

 リスクを分散させることで
 環境の変化があってもどれかの細胞が生き残る可能性が生まれる

 「運や偶然なしに命は存在しない」とのことです

○量子力学
 さて次はよりミクロな世界、量子力学の話。
 量子力学の世界では、
 原子はいくつもの場所に同時に存在し、
 観察されて初めて場所が確定する、と考える

 マサチューセッツ工科大学の科学者は
 「量子力学はテクノロジーの基礎だが、
  量子力学の根底にあるのが不確定性」
 と述べています

 不確定なので次に何が起こるかは観察するまで分からない。
 これは言い換えれば
 我々は、起きること全てを知ることができない、とも言えるし
 あるいは世界が、何が起きるのかを物事が起きる瞬間まで決めていない、ともいえるそうです

 「物事の動きを予測するのは一種の賭けです」

 ある意味運任せというわけですが、
 物理学者の間でも
 量子力学と運との関係は意見が分かれているそうです
 (アインシュタインは量子力学の気まぐれさはお気に召さなかったようで、
 「神がサイコロをふるわけがない」と言っていました)

 別の物理学者アンドレアス・アルブレヒトという方は
 きちんとした物理法則に従っていそうなこの世界も
 量子力学の曖昧さに支配されている、と考えているようです

 この方はインフレーション理論提唱者だそうですが
 極大の世界(宇宙など)は
 極小の世界の理論(量子力学)で説明できると考えている

 例えばコインの裏と表どちらに出るかは
 量子力学の理論からすれば知ることはできないそうです

 というのは、コイン投げで表が出るか裏が出るかは色んな要素で決まる

 例えばコインの大きさ、初期の位置、投げるスピード…
 さらに、よりミクロな世界ならば、
 手のニューロンの細胞内の神経伝達物質の動きの影響もある

 しかしこれらの分子全ての動きが計算で分かったとしても、
 その分子の存在自体は、量子力学の不確定性から逃れられないのだそうです

 しかしこれは、大きな世界の物理学理論と矛盾するように見える

 彼の言うインフレーション理論では
 宇宙は最初に爆発がおき、その後急激に膨張してできたと考える

 量子力学の不確定性をこのインフレーション理論に当てはめると、
 ほかにも無限の宇宙があることになるのだそうです

 「金魚鉢の中の金魚は、この金魚鉢が世界の全てと思っていて、他の金魚鉢の存在を知らない。
  私たちの宇宙もこのようなものかもしれない」

 このいくつも存在する宇宙を「ポケット宇宙」と呼んでいるそうです
 (ビリヤードの台にあるポケットが語源のようです)

 しかしポケット宇宙が無限に存在するとすれば、
 確率論とつじつまがあわなくなるそうです

 量子測定、とは素粒子のある位置を確定させることだが、
 あらゆる結果がどこかのポケット宇宙に存在することになれば
 この確率が格段に上がってしまうのだそうだ

 しかしアルブレヒトは量子力学の方が正しいと考えているそうです
 他の宇宙は見えないが、ランダムさは見える

 彼は
 「何が起きてもいいように構えておくことだ」
 と述べていました

 (このくだりはイマイチよくわかりませんでしたが
 私なりに考えますと
 あらゆる結果はどこかの宇宙起きているが、
 自分のいる宇宙ではそれが見えないので不確定に感じる

 あるいは、どこかの宇宙でで起きているにしても、
 「どこで」起きるかは分からないので不確定になる

 つまり世界全体で見れば、存在確率は格段に上がっているのかもしれないが
 自分の見える自分の宇宙ではやはり存在確率は不確定ということかなと思いました)

○パラレル宇宙
 最後に登場したのは理論物理学者のマックス・テグマークさん。

 この方は以前モンキーパイソンの真似をしてたお茶目な方、
 わりとイケメンです(私の主観ですが(笑))
 何回か出てますね。
 今回も老人の姿をしたりベッドで寝る演技をしたり
 けっこう芸達者でした…(笑)

 それはさておき、
 彼は先程のポケット宇宙論は何も矛盾しないと述べています

 量子力学では、素粒子は色んなところに同時に存在していて、
 その素粒子がある場所にいる確率は波動関数で示される、と考える

 そして、観察した瞬間に1つの場所に集束し、粒子として観察されると考えられている

 これを波動関数の収縮、と言うそうですが
 しかし彼はこの収縮は起きないと考えているそうです

 彼によれば、
 素粒子は観察した瞬間は1つの場所に確定するが
 それは確定した素粒子自身にそう見えるだけで
 別バージョンの素粒子も、別の宇宙に同時に存在している、
 と考えているそうです

 人生の選択でも、誰かがある選択肢を選んだとしても、
 それが自分の人生を決めるわけではなく
 選ばなかった選択肢の自分も、
 別の宇宙にいる別バージョンの自分として生きているのだそう
 いわゆるパラレルワールドです

 先程のポケット宇宙論と違うのは
 複数存在する別の宇宙は、全て今の宇宙の別バージョン、ということ
 (ポケット宇宙はそれぞれ全く違う宇宙みたいです)

 ただし、このパラレルワールド理論には落とし穴があり、
 別バージョンの宇宙にいる自分を見ることはできないそうです

 何かを選んだ自分はその自分でしか生きられない
 ある宇宙では100歳のテグマークが生きていて
 ある宇宙のテグマークは交通事故に遭って既に死んでいるかもしれない

 「例えば私がどこかの部屋で眠りについたとする
  誰かがパラレルワールドの私を別の部屋に寝かせたとしても
  次に目覚めた私は、その部屋にいたと認識するだけ
  二人の私は別の部屋のドアを開け、別の人生を生きる
  開ける部屋が自分にとっての現実で、番号は記号でしかない」
 というような例えをしていました

 彼によれば、
 運や偶然は幻で、
 ランダムさや偶然は選んだ現実しか見えないのでそう感じる
 しかし大きな目でみれば
 ひっきりなしに別バージョンの自分が枝分かれして、
 全ての可能性が同時に存在している

 この全ての人生を知るにはどうすればいいか?
 彼によれば、生き残ることらしい
 60回死にそうな目に遭ってもまだ生き延びていれば
 本人は自分はめちゃラッキー、と思うだけかもしれないが
 その間に別バージョンの自分が大量に死んでるかもと思うことができる

 現実的には証明できないし、
 荒唐無稽かもしれないが
 先入観なしに本当の世界を追求するのが物理学の仕事なんです、と彼は述べていました

モーガンさんは最後に
パラレルワールドがあったとしても
人生は選択の連続、
という感じで締め括っていました。

○感想など
・最初のゴルフの話は、
 右足から入るみたいゲンカツギとか、
 スポーツ選手の「ルーティン」と言われる競技前の儀式みたいなもの
 などに通じるのかなと思いました。
 何かの動作をすることで、
 安心感を得たり
 ベストな結果が出る状態に体や心が整っていくのかな、と。

 自分でもそういうものを決めておくと落ち着くのかもしれません
 でもそれでうまくいかなかったときは凹みそうだな…、
 と思ったのだが、

 http://rkyudo-sports.com/cate13/en212.html
 によると
 トップ選手は失敗してもルーティン自体は変えないそうです

 ルーティンは集中のための手段であり、それは変えない。
 失敗については自分を客観的に見て修正するのだそうだ
 (具体的には動画を見たり、他人に見てもらったりする)

 なるほど、失敗したら
 「ルーティンしたのに何でうまくいかなかったんだよ!」
 と思う時点で私は凡人ですね(笑)

 心の拠り所を作るとしても、
 失敗してからそのせいにしない冷静さが必要なのねと思いました。

・ツキなんてないよという確率論の話は
 ギャンブラーにとっては夢を奪う話だなと思いました(笑)
 でも運も不運もありうるんだと思って
 両方に備えておくのが一番賢いのかなと思います

 「ツキの科学」という本を以前読んだのですが
 ここにも似たようなことは書いてあって
 確率論で言えば運も不運も起こりうる、
 (しかし人はそこに意味や奇跡などを見いだしたがるが)
 と書いてありました。

 しかしそれでも、幸運をつかむ人の行動にはパターンがあるそうです
 書き出してみると

 1社交性が高い
 2直感力が強い
 3幸運をつかむ勇気がある
 4不運のときの歯止めがある
 5悲観的

 1については、人とのつながりが多い方がよい情報を得られる確率が高まる、という感じの話。

 2については補足があり
 直感とは鍛えられるもので、
 色んな知識を脳に蓄積しておくと、
 それが突然必要なときに出てくる現象なんだそうです

 なので直感が出たら、それはたしかな情報に裏打ちされたものなのかを検証しないといけないし、
 自分の願望と混同してはいけない。
 かといって理性で考えておし殺してもいけない、
 とのことです。
 さじ加減が難しいですけど。

 3については、チャンスが来たときにパッと捕まえる勇気があるかどうか、だそうです
 これもただの向こう見ずではダメだとのこと

 45については、不運はいつでもあるものとして備えておけるかどうか、みたいです。

 しかしそれを妨げるのは
 ・損切りができない心理、
 ・サンクコスト(埋没費用)つまり今までつぎ込んだものを考えると撤退できない心理、
 ・必要以上の楽観
 ・失敗を運や人のせいにしてしまう
 などがあるんだそうです

 不運はいつでもありうるとして備え、
 不運が起きたら自分には何ができるか冷静に考えて、今できることをする。
 でもいつチャンスが来てもいいように備え、
 チャンスが来たらパッと捕まえる、
 という生き方が幸運の鍵だそうです。

○死などのリスクは必要以上に恐れる必要はない、
 という話も興味深かったです。
 「リスクにあなたは騙される」
 という本を以前読んだのですが、
 このリスク確率の読み誤り
というのはけっこう問題だそうです

 例えばテロを恐れるあまりイスラム教徒を憎悪する人もいるが
 実際はテロで死ぬ確率は交通事故で死ぬ確率より低い
 テロを恐れて飛行機に乗らず、車で移動して命を落とす人もいる

 また放射線被害を受ける確率はかなり低いのに
 必要以上に恐れ、東日本大震災後のような風評被害を起こす

 また、リスク確率の読み誤りは、ムダな保険にお金をかけることにもつながる、
 とも書いてありました。

 正しいリスク確率を計算して
 それに対しては備え、
 あとは運を天に任せて気楽に生きるのが良いようです。

・パラレル宇宙の考え方は面白いなと思います。
 昔のリチャード・バックの小説「one」という本はこのパラレルワールドを舞台にした話でしたが
 (冷戦とか出てくるのが時代を感じるが)
 別の選択肢をしている自分がどこかにいるなら面白いと思います。
 でも量子力学から考えればそれもありそうに思う。
 量子力学の不確定性を証明した幾つかの実験は既にされているので
 少なくとも素粒子の世界ではそのうちパラレルワールドが証明できるのかも、と思います
 (もっとマクロな世界での証明は、
 おそらく我々の肉体が現実を限定しているので無理ではなかろうかと思うのですが)

真実を追求する立場としては、
運は「科学的には幻想」
という一言で片付けられるのかもしれないが、

幸福を追求する立場としては、
なるべく運を引き寄せる生き方をしたいものです。

というわけで今回はこの辺で。