2017年03月02日

「心をつなげる 相手と本当の関係を築くために大切な「共感コミュニケーション」12の方法」アンドリュー・ニューバーグほか

「心をつなげる 相手と本当の関係を築くために大切な「共感コミュニケーション」12の方法」アンドリュー・ニューバーグほか

 図書館で何となく借りた本です。
 筆者はアメリカの脳神経科学者だそう。

 この本では、
 心がつながる仕組みと、
 新しい効果的なコミュニケーション方法
 「共感コミュニケーション」
 について書いています。

 筆者によれば
 「共感コミュニケーション」を実践すると、
 会話はただの情報交換ではなくなる。
 お互いの理解を深め、絆を強め、
 会話そのものを楽しめるようになるのだそうです。

 今までのやり方を捨てて、
 慣れるまで練習はしないといけないが、
 実践できれば一時間で劇的に関係が変わるのだとか。


 ほうほう、と思って読んでみましたが、
 やり方としては、禅的な要素があると言いましょうか。
 なんか佐々木小次郎と対戦した時の宮本武蔵の心境にも似たものがあると思いました。

 まぁ、あの逸話は創作だという話もありますがそれは置いといて(笑)

 あのときの宮本武蔵は、ゆっくりやってきて、
 余裕をもって相手に向かった。
 そのため相手の手の内がよく見え、
 自分の気持ちにもニュートラルになれた。
 そのために、無駄も隙も無い一手を出せた…
 という話だったと思います。
(個人的な解釈ですが)

 それと同じで、共感コミュニケーションでも
 まず相手に向かう前に深い呼吸をしてリラックス、
 自分の気持ちを静観し、
 相手をよく観察。
 その上で前向きな言葉で話す。
 話すときはゆっくり、間をおいて、要点を簡潔に。

 そんな感じなので、日本人には馴染みやすい考え方(悪く言えば新鮮味がない?)かもしれません。

 ただこの本は
 理論の説明、
 そのあとパートナーとや自分でやるワーク(台本付き!)、
 そして応用。
 となっていて、頭での理解から入るやり方が西洋的な印象。

 日本人としては、
 具体的なやり方から入り、
 やりながら理論を理解していく方がすっと身に付きやすいかも。

 というわけで内容を私なりの解釈で書いてみます。

○脳科学的に有効なコミュニケーション方法
 第一部では、脳科学的の研究から分かったコミュニケーションの話が書かれています。

 私なりに箇条書きにしますと
 ●深呼吸、リラックスの効用
 ●言葉の持つ力を意識する
 ●非言語的なコミュニケーションを活用する
 ●人の記憶、意識は短時間しか持たない
 ●相手と同調するには、相手と同じしぐさをする
 ●信頼を得るにはモナリザの微笑
 …など。

 それぞれもう少し書いてみます。
 ●深呼吸、リラックスの効用
  筆者はこれに一章を割いているわけではないのですが、
  私はこの本のどのワークでも重要なのはこれだと思います。

  この本によると
  深呼吸してリラックス状態に入る、
  そのあとひたすら自分の心を静観する、
  というワークを毎日続けると、
  ストレス軽減にも仕事の生産性向上にも役立つそうです。

  これは「マインドフルネス」として知られる方法ですが、
  このときは、
  浮かんでくる全ての考え
   例えば
   「くだらない」「時間の無駄」
   などのいらいらが浮かんでも、
   「あれやらなきゃ」
   とかいうおしゃべりも
   全て判断を加えずに静観するらしい。

  すると自分の考えを客観的に観察できるし
  周りの音、周囲のことにも敏感になれるのだそうだ。

  これは、普段から一人の時に行っても良い、
  自分の考えの傾向が分かる。
  ひらめきがわくこともあるそうです。

  また、他人との会話を始める前にも有効な方法
  (宮本武蔵状態ですね(笑))

  また、このあと出てくる
  「ポジティブ言葉のワーク」
  「価値観探りのワーク」
  などでも、
  まず最初に呼吸してリラックス、という手法が使われます。

 ●言葉の持つ力を意識する
  ネガティブ言葉はやる気の減退、病気などをおこし
  ポジティブ言葉は集中力、行動、幸福感、満足感を増やす。

  これは感覚的には分かりきっていることですけど
  いろんな研究で、細胞や遺伝子レベルでも、言葉が影響することが分かってきたそうです。
  例えば、
   脳の構造を変える、
   分泌させるホルモンの量を変える、
   ストレス軽減に関する遺伝子発現を変える、など。

  ただ人間はネガティブ言葉の方に、より敏感にできているらしい
  (防衛本能のためなのでこれは仕方ない)
  幼児も、ネガティブ言葉から覚えるそうです。

  なので、意識的に前向きな言葉を浴びる、口に出すのが大事みたいです。
  前向きな言葉を浴びると、
  思考も前向きになり
  ・前頭葉が活性化→行動力、判断力が上がる
  ・頭頂葉が活性化→自分や他人への肯定感が増す
  ・快楽ホルモンの分泌、報酬系の活性化→幸福感が増す
  ・ストレス防御遺伝子の発現が活性化
  など、体にもよい影響が出るそうです。

  さらに、言葉は他人にも伝染する
  (これもネガティブ言葉の方がパワーが強い)
  他人に前向きな言葉をかけるのも有効だそう。
  ただしオーバーな言い方は警戒感を持たれるので、ほどほどがいいらしい。

  ただ、言葉の癖はなかなか治らない。
  そこでいくつかワークが紹介されていました。

  ・呼吸を意識してリラックスし、
   前向きな言葉、自分を鼓舞する言葉を繰り返し唱える
   毎日続ける

  ・自分ができたことを毎日3個、ノートに書き留める

  この2つのワークは、
  続けると幸福感が上がった、という結果があるそうです。

  ・ネガティブ思考を撃退するには
   ・「こんな考え方をして役立ったことがあったか?」と自問する
   ・「自分の心配は単なる想像か、現実に起こりうることか?」と自問する
   ・心配事を書いてみて、そのあと放置、実際起きたか見てみる
   ・自分のできること、楽しいことに目を向ける

 ●非言語的なコミュニケーションを活用する
  脳科学的には
  言葉は新皮質で生まれた。
  しかし新皮質から神経が伸びて、
  運動などを司る部位にも繋がっている

  こうして、人は言葉だけではなく、
  声のトーン、表情、ジェスチャーなどもコミュニケーション手段として使っているらしい

  脳では言語を司る所と、
ジェスチャーをコントロールする所は重なっているのだそうです。

  なので、自分が相手に何かを伝えたいときは
  ジェスチャーや表情をうまく作る練習をするとよい
  (鏡の前で練習するといい)
  声の抑揚も重要な要素だそうです。
  逆にこれらがチグハグだと相手を混乱させる

  相手と話すときは、相手の言葉だけでなく
  しぐさや声の感じなどを観察するとよい
  そのためにも、リラックスし、ゆっくり話すことが大事なのだそう。

  そのほか、社会的なコミュニケーション能力には
  島皮質と前帯状回、という部位が重要だそうで
  これらの部位は思いやり、共感などにかかわる。
  共感コミュニケーションを続けると、
  これらの部位が厚みを増すのだそうです。
  つまり、いいコミュニケーションは脳を変え、
  さらにいいコミュニケーションができるようになるとのこと。

 ●人の記憶、意識は短時間しか持たない
  筆者によると、
  人は一度に4つの塊の情報の塊しか処理できないらしい。
  また、時間にして30秒くらいの間しか記憶を維持できないらしい。

  これは、人の短時間記憶は
  ワーキングメモリ、
  という所に一時的に蓄えられるのだが
  その容量が限られているため。

  このため人間は、
  容量に入るように
  状況に関連性がありそうな言葉だけを抜き出して、記憶しているのだそうだ。

  なので、自分が話すときは、
  たくさん詳細なことを話すより、
  簡潔に、ゆっくり、間をおいて話す方が相手には伝わるらしい。

  これは、話し手も、言葉の選び方に慎重になれる
  という効用があるそうです。

 ●相手と同調するには、相手と同じしぐさをする
  会話しているカップル二人の脳を調べた研究では、
  意思疏通がうまくいっている場合は、
  二人とも、脳の言葉と発話機能の部分が活発だったそうです。

  また、相手と同じコミュニケーションスタイルをとると
 お互いの信頼、協調性が高まる
  と分かってきたそうです。
  「ニューラル・レゾナンス」というらしい。
  (ニューラル=神経、レゾナンス=共鳴)

  また、仲間を真似する時に働く神経はミラーニューロンとも呼ばれますが
  逆に嫌悪感を抱く相手などは、ここを不活性化させる働きが起きるらしい

  これを利用して、相手と協調したかったら
  相手のしぐさやトーンを真似るといいのだそう。

  ほか、相手が同調してくれなくても
  怒りは何も生まないそうです。
  「勝ち組は人を懲らしめないで勝ち、
   負け組は人を懲らしめて自滅する」
  意地悪されても相手をいたわる態度が
  結局他の人の友好を得られるらしい

 ●信頼を得るにはモナリザの微笑
  人は表情から感情を読み取る、
  という話がありましたが
  特に重要なのは口と目、だそうです。
  (本では、目だけの写真、
  口だけの写真も載せてあり
  これだけで感情が読み取れることを示しています)

  ですので、
  口と目の表現は、鏡の前で練習をした方がいい。
  相手にも混乱を与えなくなるそうです。

  特に伝わりやすいのは悲しみの感情だそうで、
  悲しみは共感を得られるから隠さない方がいい、
  とも書いてありました。

  また、モナリザの微笑というのは、
  本当に幸せな気分な人が心からこぼれる微笑みだそうで、
  この微笑みをされると
  穏やかな気分になるそうです。

  なので、人との会話の前にも
  幸せなことや、愛する人のことを心に思い浮かべ、モナリザの微笑を作ると、
  意思疏通がスムーズに行くそうです。
  (これはいろんな人のワークで実証済みらしい)

○筆者の提唱するワーク
 これらの研究成果から、筆者はワークを2つ考案しています。

 ●「価値観を探る」ワーク
  筆者は「価値観ワーク」と呼んでいます。

  深呼吸してリラックス状態になったあと

 「自分のなかで一番大切にしている価値は?」

  と問うワークです。

  価値というのも、別に決まりは無いのでなんでもいい。
  物欲的なことでも構わないし
  愛とか思いやりなど抽象的な言葉でもよい。

  これを続けると、
  自分の中で何が大事なのか、に意識的になれるのだそうです。

  自分の行動がそれに矛盾していないか見直すきっかけにもなるし、

  他人との会話の前にこれを行い、出てきたものについて話し合うと
  お互い、大事にしているものを尊重しあえる会話ができる。
  同じ言葉でも違う意味を与えている場合もあるが、
  そういう思い違いなども無くなるのだそうです。

 ●共感コミュニケーションのワーク
  これはこの本の根幹となるワークで、筆者は12の手順で分けています。

  私個人としては分けない方が分かりやすいと思うので、つなげて書くと

  「呼吸してリラックス、
   今、ここに集中。

   自分の感情などを静観。
   自分の深い価値観を確認。

   そのあと前向きな方向に気持ちを持っていき、
   楽しいこと、愛する人を心に浮かべ、モナリザの微笑になる。

   そのあと相手に向き合い
   相手を観察、非言語メッセージを読み取る。

   話すときは温かい言葉を使い、
   ゆっくり、簡潔に、間をおいて話す。

   聞くときは、相手の話に集中する。」


  ・会話の前に前向きになる、
   というのはけっこう難しい時もありますが
   後ろ向きになりそうなときは、
  自分のインナースピーチを聞いてその理由を探り、
  冷静に考えていくといいそうです。

  ・また、相手と価値観が合わないとか、相手への怒りがあっても
   お互いの価値観、目的を事前に冷静に話し合うことで
   対立が避けられるのだそうです。

  ・会話では、
   「誉め言葉から始まり、感謝の言葉で終わる」
   のが気分よく会話できるコツだそうです。

  ・聞くときは
   我々はどうしても自分のインナースピーチ、
   これから話すことのリハーサルに夢中になりがち、
   相手が言い終わらないうちに遮ってしまいがちである。

   相手がいっぱいしゃべりたいときはあえて遮らず、
   相手をよく観察するチャンスだと思い、
   相手を観察しつつ、自分のインナースピーチも聞いていくとリラックスできるそうです。

○共感コミュニケーションの応用編
 ・配偶者、恋人などのパートナーとの関係
 ・仕事上の関係
 ・子供との関係
 への応用を書いています。

 ●パートナーとの関係
  パートナーとでは、
  恋人になる過程でももちろん使えるし、
  喧嘩での仲直り、
  あるいは不幸にして別れる時も
  冷静に思いやりをもって話し合えるそうです。

  ここでは、相手との衝突を避けるための2つのワークが紹介されています。
  ・「空席エクササイズ」
   2つあるうちの1つの椅子に座り、
   空席に相手がいると空想する

   声のトーン、話の内容などを色々変えて、相手の反応を予想する

   怒りをぶちまけたらどうなるか?
   穏やかに話したらどうなるか?

   どんなスタイルが適切かが分かるそうです。

  ・「ウォームアップ・エクササイズ」
   中傷を受けた相手に冷静になれるワーク。
   過去にいさかいがあった特定のパートナーを思い浮かべ、
   その人がまた自分を誹謗中傷する姿を想像する
   そのときの自分の反応、気持ちを想像する

   そのあと
   普段の自分が、知らない誰かに暴言を吐かれるが、
   自分はリラックスして幸福な状態、穏やかになっている自分を想像する

   そして、想像の中で怒りに震える相手を観察し、
   相手が怒る原因を探り、
   相手に愛情を示してみる

   このときの自分の気持ちを感じとってから
   今の自分に戻る。

  これらのワークで、
  相手を尊重したり
  冷静に話し合えたりできた、
  という結果が報告されているそうです。

  ほか
  ・相手に暴言を吐かれても、相手を変えることはできない
   「今の言葉に傷ついた、私は悲しい
    あなたとは冷静に話したい」
   と伝えることが大事だそうです、

  ・パートナーとの言葉は慎重に選ぶ
   批判や非難は何も生まない、
   建設的な提案が大事。

   しかし、まずはインナースピーチをきちんと聞いて、
   自分のなかでバランスをを取っておくことが
   他人に攻撃的にならない第一歩だそうです。

 ●仕事上の関係
  ・チームで仕事をするときは、
   お互い大事にしている価値観をシェアしておくと
   一体感が増すらしい

  ・メンバーへの共感、思いやりがあるチームは生産性が高い、という結果がある

  ・個人のなかでも
   仕事における価値観と、
   自分の人間としての価値観を書き出すといいそうです。
   これが矛盾していると
   ストレスがたまるのだそう。

  ・会社やトップの価値観が共有されていることが
   会社経営では大事らしい

   かのドラッカーも
   仕事で一番大事なのは価値観だ、と話しているらしい。
   「社会貢献、価値の創造ができていないと思うなら、
    その仕事は辞めるべき」
   とまで言っておられるそうです。

 ●子供との関係
  ・子供との会話が多い家は、学業の成績がいい、という結果があるらしい。
   これは経済状況に関係ないそうです。
   色んな言葉を浴びさせてあげることがコミュニケーション能力の向上につながる。

   また、会話は量だけでなく質も大事。
   前向きな言葉、思いやりのある言葉が大事だそうです。

  ・ルールを親が押し付ける家よりも
   話し合い、協力しあう家の方がスムーズに解決策を探せる、という結果がある

  ・兄弟ゲンカでも、
   前向きで落ち着いた話し合いをさせると、
   暴力が減り、関係も改善するらしい

  ・若者に対する実験で、
   自分ができたことを毎日3つ書く、
   感謝日記を書き続ける、
   といったことで幸福度、満足度、楽観性が高まり、
   その後の人生でも他人と   友好な関係を築いている、
   という結果がある
   書くことも脳への刺激になるらしい
  ・家庭で共感コミュニケーションを実践すると、
   次世代にもそれは伝わる、とのこと

 筆者は最後に
 言葉の力は大きい、
 否定的なコミュニケーションを選ぶか、
 建設的で思いやりに満ちたコミュニケーションを選ぶかは我々次第だ、
 と締め括っていました。

感想など。
・呼吸をしてひたすら心を静観する、というのは一見無駄にも思えますけど
 ニュートラル、中庸の状態になれるのは重要だと思いました。

 カッとしているときにも怒っている自分を自覚する、
 自分の感情に振り回されずに周りが見える。
 また、こだわりや執着からも一歩引けるし
 ひらめきなどが起きることもあるかもしれない。

・推薦文を書いていた名越康文さんは、
 「価値観ワーク」はぜひやってほしい、と書いていました。

 この価値観ワークみたいなのは、
 ハローワークのセミナーでもしたことがあります。
 ワークライフバランスを考える、というお題だったんですけど、
 自分が大事にする価値観
 (お金、友情、家族、
  仕事の内容、やりがい、学び、人間関係など)
 を書き出し、最終的に5つくらいに絞り込み、
 それを使って一文を作る、という作業です。

 これをすると、自分の軸になるものがわかるそうです。
 これは人生で変わっていくものなので、
 定期的に見直すといいそうです。
 
 (ちなみにこのセミナーでは
 「学歴」「地位」などはあまり幸福感には影響しないが
 「人間関係」「健康」などは幸福感に影響するという統計結果を紹介されたり

 人生の中では「親」として、「友人」として、など、
 いろいろ自分の持つ役割があって、
 それに実際使っている時間の比重を書くワーク、などもあり、
 講師の方なんかは、「仕事に偏りすぎことに気づき、転職した」という話をしたり、
 なかなか興味深かった)

・最初にも書いたけど、全体的に東洋的な要素が含まれた手法だなと思いました。
 こないだの資本主義の番組で「禅的資本主義」の話がありましたが
 (禅で大事なのは、周りがどうなっても自分は冷静、中庸でいられること、だそうです)
 そういう見方が西洋でも見直されてきているのかな、と思いました。

というわけで、長くなりましたが、今回はこの辺で。
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2016年04月14日

「人の心は読めるか? 」ニコラス・エプリー

「人の心は読めるか? 」ニコラス・エプリー

先日読んだ本に「空気など読まなくていい」と書いてあったのですが、
そもそも空気って読めるのか?と思って借りてみた本。

全体的に、何かに対する理由を二つ三つに絞って書いてあるのでとても読みやすい本でした。
科学者の論文的な書き方で好感が持てる。

筆者はシカゴ大学ブース・ ビジネススクールの心理学者で、
人間が人の心をどう読むか、
詳しく言うと、他人の態度や心情や動機などをどう判断するか、それは正しいのか
の研究をされているそうです。

筆者によると、
読心術は特別な能力ではなく、みんな普段から何気なく使っており、
人間にしかない能力だそうです。
ただ限界があるのでうまく使いこなしましょう、ということらしいです。

大きくまとめると、
○人は自分が思うほど人の気持ちを分かっていない
○人は自分自身の気持ちすら分かっていない
○人の心を読むときに問題が起こる原因
 (相手の非人間化、自己中心的な解釈、ステレオタイプ化、行動バイアス)
○第六感とうまく付き合うには
 (想像するより、相手に聞く方が正確)

詳しく書いていきます。
○人は自分が思うほど人の気持ちを分かっていない
 ●人が自分をどう思うか推測する実験
  グループ全体からの平均的な印象は当たるが、
  個別の人からの印象に関してはそれほど当てられない。

 ●パートナーは何を考えているか推測する実験
  赤の他人に関することよりは当たるが、
  自分が思うほどその度合いは高くない

○人は自分自身の気持ちすら分かっていない
 ・自分の行動の想像(こうなったらこうするだろう、という予想)と実際の行動は一致しない
  自分の想像…意識的なもの
  実際の行動…無意識が起こすもの

 ・行動は無意識が起こすもの
   無意識の部分では膨大なシナプスの働きが起きていて、いちいち認知することができない
   本能的、習慣的なもの
    (左右対称なものは本能的に美しいと感じる、
     ~だから~して、と理由とセットで頼まれると、内容がどうであれ納得してしまう、など)
 ・意識は行動を後から意味付けしている

 ・無意識は自分を肯定する
  自分の行動を肯定するためにストーリーを作ってしまうこともある
  「自分は正しい、優れている」「他人は間違っている、劣っている」と思い、
  自分の行動もそれにあうよう意味付けされる

○人の心を読むときに問題が起こる原因
 ●相手の非人間化
  相手に心がない、モノと思ってしまう。相手に無関心なのもこれに当たる
  ・虐待、差別、戦争などは相手を人と見なさないことが原因らしい。

  ・人は他人に共感するとき、その人と同じものを見、同じ行動をする(物理的距離が短い)。
  ・また、自分と同じ、近いと思う人には共感が働きやすい(心理的距離が短い)。

  つまり相手に関心を持ち、物理的、心理的な距離を縮めることが重要らしい。

 例
  ・テロリストへの対応
   テロリストは無感情な人間ではなく、同胞愛から行動している。
   威嚇するとこちらへの反発心を強めるだけ、同情心に訴える戦略の方が有効
  ・部下のモチベーションアップ
   上司は自分は仕事のやりがいで動くが、部下はお金で動くと考えがち
   部下であろうが、やりがいやスキルアップなど内的な報酬の方がモチベーションアップになる
  ・通勤電車での過ごし方
   人は通勤電車では見知らぬ人と話すより、一人で好きなことをして過ごす方が快適と思いがちだが、
   実際は知らない人と話す方が満足度が高い

  ただし、相手に関心を持って相手の心を知ろうと思っていても、
  相手の心を間違って解釈すると問題になる(自己中心的な解釈、ステレオタイプ化、行動バイアス)
 ●相手の心の自己中心的な解釈
  原因は二つ
  1相手と違うものを注目している
   「頭隠して尻隠さず」隠れる人とオニの見るものが違う
    自覚しにくいのもある(人は自分のことばかり注目する傾向にある)
     ・人は、根拠なく自分は人より長生きする、幸せだと思う傾向がある
     ・パートナーより自分が家事をしているという思い込み
     ・自分の失敗はよく覚えているが、他人はたいがい覚えていない  …など
  2人と違うレンズで世界を見る
   ・裁判で当事者二人の主張が違う
   ・9.11の解釈はアメリカ人とテロリストで大きく異なる  …など

  これを防ぐには
   1相手の注目するものに関心を持つ
    自分と相手は同じくらい注目されるべきもの、と思っておく
   2レンズの違いは意識しにくいので、
    相手の視点を持つというより
    相手と同じ経験をする、相手にリアルな話を聞く
    くらいのことをしないといけない

 ●ステレオタイプ化(女だから、日本人だから、など相手の所属する集団でレッテルを張ってしまう)
 ・ステレオタイプ化は相手を理解するのに手っ取り早い利点があるが、間違いもある。理由は三つ
  1ステレオタイプそのものが間違っている
    集団についての情報が少なすぎると偏ったステレオタイプになる
  2ステレオタイプの集団同士の違いに注目しすぎる
    男と女は違うが、その違いは思っているほど大きくない。
    人間として同じ行動も多い。
    相手との共通点もあるのに、相手との違いを大袈裟に捉えてしまう
  3ステレオタイプが逆に行動を縛る
   老人を年寄り扱いすると認知症テストの成績が悪くなるが
   年長者についての肯定的な言葉をかけると成績が良くなる、など

  これを防ぐには、ステレオタイプに囚われず、違いばかりに注目せず、
  個人そのものを見ることが大事

 ●行動バイアス 相手の態度や行動は相手の気持ちの現れだと思ってしまう
  ・実際は行動はその人の状況や立場に左右されることが多い
  ・「行動科学」問題行動には、意識を変えようとするより環境を変える対処が有効
  例
  ・環境美化…啓発活動より、ごみ箱を増やし、拾う行動を見せる
  ・勉強…ご褒美をあげるより、勉強時間を増やす、学校の時間を増やす
  ・ダイエット…教育より、少量ずつの商品を売る、お皿を小さくする

○第六感とうまく付き合うには
 ・身体言語(しぐさ、表情の変化など)は当てにならない
  研究はたくさんされたが、ウソのしぐさと本当のしぐさは見分けにくく、効率が非常に悪いらしい

 ・「相手の立場になる」「相手の気持ちを想像する」のも落とし穴がある
  自己中心的な解釈、ステレオタイプによる弊害
  などで想像そのものが間違うと逆効果

 ●パートナーの行動を想像する実験
  A直感で答えさせる
  Bパートナーの一日の行動を考えさせてから答えさせる
  Cパートナーに直接聞く機会を与え、そのあと答えさせる(ただしメモはだめ)

  結果は、
  Bが一番当たらない
  Cが一番当たる
  BCはAより自信があり、BCの自信は同程度

  つまり
  ・相手に直接聞くのが一番正確
  ・想像するのは一番当たらないのに自信だけはあり、過信してしまうので直接聞こうとしない
   政府の政策でも、有識者の想像の意見を聞くよりも、
   実際に当事者にアンケートを取ってから実施する方が効果が上がっているらしい

  ただし、相手に聞くときも問題が起こることがある。理由は三つ
  1相手が本当のことを言わない
   本当のことを言うと罰せられる恐怖などがあると、話してもらえない。
   部下や子供など、話せる雰囲気を作ることが大事
   例
    ・悪いことをした子供が告白しやすくするためのルール
      ・しばらく時間を置いてから話を聞く
       (悪いことをした直後より、時間が経ってからの方が話しやすいらしい)
      ・本当のことを話しても怒らない、と伝えておく
    ・話しやすい雰囲気を作ると、職場の事故や事件の防止、医療訴訟の減少などにもつながる
  2相手が自分の気持ちを分かっていない
   答えやすいように質問する
    yes、noで答えられる質問
    未来のことではなく今の気持ちを聞く、など
  3相手が答えてくれたとしても、言っていることがこちらに正しく伝わっていない
   こちらが相手の話を繰り返して、相手が納得するまで確認する

 ・自分も心をオープンにすること
  他人が心を開きやすくなるし、
  自分も人に助けてもらえて幸せ感が強い

まとめると、
●第六感を過信しないこと
 以下の間違いがあるかもと自覚しておく
  ・自己中心的な解釈…人と違うものを見ている、人と違うレンズでものを見ている
  ・相手をステレオタイプ化することによる偏見…ステレオタイプそのものが間違っている、相手との違いを大袈裟に捉える、ステレオタイプ化で行動を縛る
  ・行動バイアスによる思い込み…実際は人の行動はその人の思いよりも状況や立場などに左右されやすい

●他人に関心を持つこと
 ・他人をモノ扱いしなくなる
 ・相手の状況、立場を理解でき、より正しい解釈に近づける
 ・相手をステレオタイプ化するのでなく、その人個人として接することができる

●他人に直接聞く方が正確
 ・ただし、相手が話しやすい雰囲気をつくること
 ・相手が答えやすい質問をすること
 ・相手の言ったことを本人が納得するまで確認すること

●自分も心をオープンにし、知らない人とでも話してみること

感想です。
・人はけっこう自意識過剰で、思い込みが強い生き物なのね、と思いました。 
 そういえばだんなによく言われたのですが
 「「私は絶対そんなことしてない」「絶対そんなこと言ってない」
  などとは言わない方がいい。
  記憶なんてあてにならないし、どっちが正しいなんてどうでもいいことなので
  「そうかな、そんなん言ったんかいな」
  くらいで流しておくのがちょうどいい」と。

 たしかにこれ、自分がしたことを覚えてない可能性もある。
 もちろん相手がこちらの言葉を曲げて解釈した可能性もある。
 いずれにせよ、自分に都合のいいように解釈していることで起きることです。
 けど、あとからになったらどっちが正しいか分からないし、どっちも正しいのかもしれない。
 誰にも分からないんだから、無駄な争いはやめた方がいい。

 それを言われてから、自分を主張するのをやめたら、なんとなく人間関係もうまくいくようになりました。
 会話が柔らかくなるというか。
 自分は思い込みが強い、記憶が間違ってるかも…と謙虚に思っておくくらいがうまくいくような気がする。

・相手の非人間化というのは心につまされるものがありました。
 テロリストも、自分とは違う冷酷な人間だと片づけがちだけど、本当はそうではない、と。
 私も、第三者だからなのかもしれないけど、いつも戦争とかテロとか見ていると、
 どこかでボタンの掛け違えがあって、両者がいつまでもそれにこだわっている、
 という印象があって、いつももどかしく思います。
 お互いを人間と思って、趣味の話でもしてみたらどうなのかなあ。理想的すぎるのかもしれないけど。

・いじめとか子供の虐待などもこの非人間化にかかわっているのでしょう。
 いじめっ子もいじめられっ子をモノのように扱う言葉をかけたりする。
 親が子供の虐待をするのも、子供を「得体のしれない動物」みたいな捉えかたをしてしまっている。

 しかし、そういうことをする加害者も生身の人間だったりするわけで。
 ニュースを見て「ひどい人間だ」で片づけるのは簡単だけど、それでは解決しないでしょう。

 なぜそういう風に考えるようになってしまったのか、そこまで掘り下げないといけない。
 何かわだかまりや恨み、劣等感などがあるなら、その棘を抜いてあげないといけない。
 そのうえで、「あなたがモノ扱いしている相手も、あなたを助けてくれるかもしれない仲間なんだよ」
 と同情心に訴えるようなことをしていかないといけないのだろうと思います。

・通勤電車の話は意外でした。
 私も知らない人と話すのは苦手なので、苦痛なのではないかと思っていました。
 まあでもドラマとかの始まりは、隣り合わせた人とたまたま話が弾んで…みたいなのが結構ありますね。

・アドラー心理学で、「他人や集団への貢献感」「人とかかわること」が幸福の源だ、
 みたいなことが書いてありましたが、
 今回の本でもまさに
 「相手と直接交わろうとすることが、誤解や問題を防ぐ一番のやり方」
 「自分の心を開いて、知らない他人と交わると幸せになれる」
 ということが書いてあり、なんか違うジャンルの本なのに結論が似ているのは面白いと思いました。

 私も他人と交わる勇気を出してみよう、という気になれました。
 その方が誤解とか問題が起きなくて済むならそれに越したことはないですしね。

なんかまとまりないですが、今回はこの辺で。
 
 

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2016年04月01日

「生きづらさからの脱却: アドラーに学ぶ」岸見 一郎 (筑摩選書)その2

「生きづらさからの脱却: アドラーに学ぶ」岸見 一郎 (筑摩選書)

前回の続きです。
後半はアドラーさんの考えから発展して、哲学的な話になっています。

第6章 メメント・モリ 老い、病気、死
「生きづらさ」につながる、老い、病気、死への不安などへの向きあい方について述べています。
私も、先日上の子が「死んだらどうなるか」と聞いてきたこともあり、興味深く読みました。

筆者は小学校のとき、祖父、祖母、弟を亡くし、死について考えたらしい。
(小学校でそんな経験したら、たしかにショックだったでしょうね…)
答えを探して医学を学ぼうとしたが、
高校で哲学に会い、今につながっているそうです。

 ●老いについて
  ・老いは逃れられない
  ・老いると自分の価値がなくなる、と思う人は老いを受け入れられない
   仕事ができるか、若くて美しいか、などに人間の価値を置く人など
 
  ・年を取っても幸せでいるには、何かの形で周りに貢献することが大事
   アドラー「年寄りに仕事をやめるようすすめてはいけない」
   若い人に張り合う必要はない、与えられるものをどう使うか

 ●病気について
  筆者は心筋梗塞で倒れた経験があるそうで、それを踏まえた話です。

 ・人は自分だけは病気にならないと思いたい傾向がある
  そのため前兆があっても大丈夫と解釈する
  病気にはいつでもなりうると思っていれば、手遅れにならない

 ・病気自体には意味はない、良いことでもない
  「病気になって良かった」と言えるのは本人だけ
  そのうえで、筆者が病気になって得た気付きも書いています。
  ・リハビリは単なる回復ではなく、体に新しい能力を与えること。
   元通りにならなくても意味はある
  ・見舞いの人々がいて、仲間がいることを再認識できた
  ・他人に貢献してもらうことで、貢献感を得てもらうことができた
  ・自分が元気になるだけ、存在だけでも価値があると思えた
   (これは赤ちゃん、介護される人なども同じ、としています。)
  ・明日が来ない可能性を知り、今日を精一杯生きようと思えるようになる

 ●死について
  ○自殺願望
   死にたいという人は、課題から逃げるために死を口実にしてしまっている
   ここまで来てしまった人を救うのは難しい。
   その前に自分に価値があると思い、課題に立ち向かう勇気を持たせる援助をせねばならない

  ○先立たれた人の苦しみ
  ・生まれ変わり、死後の世界を信じようが、残された者の悲しみは癒えない。
  「死は悲しむべきことではない、早く立ち直れ」とは言えない
  「死は悲しい、にもかかわらず立ち直ろう」と言いたい
   いつまでも悲しむことも、死者が生きていたら喜ばないだろう

  ・災害で家族を救えないなど、不可抗力はある
   仕方がないとは言わないが、不可抗力はあると認め、自分を責めないこと

  ・亡くなっても、一人でも覚えていてくれればその人は生きている。
   ただ他人にずっと覚えていることを強要することもできない

  ○死にゆく苦しみ
  ・死は課題の一つ、特別な課題ではない
   死への態度は生き方が現れる。
   承認欲求がある人は、死に際しても来世の罰などを考えて恐れる

  ・死はよきものかもしれない、と述べている書物もある
   いたずらに恐れなくてもいいのではないか。とも思う
   しかし再び発作が起きたら冷静にいられる自信もない

  ・死は他人との永遠の別れを意味するので、生きている限りは生き続けなければならない

  死は結局分からないが、
  少なくとも「生き方」(生涯を通じて伝えたい何か)を残すことが重要
  アドラー「不死を約束するのは全体の幸福に貢献すること(こども、仕事など)」

第7章 生きづらさの克服
どうすれば生きづらさを克服できるかの筆者からの提言です。

 ●人のせいにしない

 ●自分に価値があると信じる、自分の短所は長所と考える

 ●共同体に貢献する
  アドラーによれば「自分への価値を感じられるのは共同体に貢献したときだけ」
  共同体に貢献する(赤ちゃんなど、存在だけの貢献も含む)と、
  自分に価値があると思え、
  更に人間関係に入る勇気が持てる

 ●他人に勇気づけする
  他人にも貢献感をもってもらう「助かった」「ありがとう」
  ただし他人からのこの言葉を期待しない

 ●他人の価値観で生きない、承認欲求を持たない
  他人の価値観で生きると、
  ・ほめられないと動けない、
   評価のない活動(子育てなど)が苦痛になる
  ・自分を他人にあわせることになり、不自由
  ・自分を無能としてしまう
  ・うまくいかなかったときの言い訳にしている
 しかし、
  「自分は他人に貢献している」
  と自分で思えれば、他人にほめられたいと思わなくなる

 ●自分の理想に向かって努力する
  ・劣等感は成長への刺激、努力へのモチベーション
  ・努力しないのは、うまくいかなかったときのいいわけのため
   「やればできる」は結局何もしていないのと同じ
  ・努力すれば何でもできる
  ・努力も好きなことなら苦痛ではない。新しいことを学ぶ喜びになる

 ●ちょっとの勇気を持つ アドラーの言う勇気
  ・失敗する勇気
   失敗からこそ学べる
   失敗を気にするのは、課題でなく他人の評価を気にしているだけ
  ・不完全である勇気(失敗することもあると認める勇気)
  ・普通である勇気
   人より特別であろうとしない
   自分が特別でなくてもいいと思えれば、他人のこともありのまま認められる
  ・間違いを謝る勇気

 ●他人を信頼する
  ・信頼できない理由
   「親が子供を信頼しない理由」
     親が子供のありのままを見ていない
     評価を押し付け、先に信頼できない(できる)と決めて、その理由を探している

   「子供が親を信頼してない理由」
    1注意を引くためあえて問題行動を起こしている
    2大人の現行不一致(説教するくせに親ができていないなど)
    3大人が子供の課題に踏み込む(親の価値観を押し付ける)
    親の言葉が信頼できず、その裏の心理を気にするようになってしまう

  ・信頼が重要な理由
   誰も信頼できないと、世界は敵と思ってしまう
   他人と関われず、貢献もできず、結果自分に価値があると思えない、勇気のない人間になる

  ・信頼を築くために
   ・子供をありのまま受け入れること。過小評価も過大な期待もしない
   ・言葉でのコミュニケーションを中心にする
   ・相手の言動について、いい方向に意図を受けとる

 ●課題の分離
  ・他人には介入しない(対人関係のトラブルのもと)
  ・自分のことは自分で決める(他人に責任を転嫁しない)
  ・介入してほしくないときは、言葉で断ればよい
   不登校、節食障害など、自分に不利益な手段を取る必要はない

 ●依存せず、援助しあう
  課題の分離といってもなんでもかんでも分離しない
  他人には依存せず、
  他人に頼まれたら援助する

 ●人目を気にしない
  ・他人がどう評価するかは他人の課題、愛と尊敬は強制できない
  ・人はそれほど自分のことを見ていない
  ・人目を持ち出すのは、自分がうまくいかなかったときいいわけにできるからに過ぎない

 ●空気を読まない、言葉での理解を重視する

 ●みんなとは仲良くなれない、と割りきる
  ユダヤ教の教え
   「10人のうち好意を持ってくれるのは2人
    7人は場合により態度を変える
    1人は敵意を持つ」
  好意を持ってくれる2人と仲良くなれればよい

 ●過去から自由になる
  ・人は自分のライフスタイルに合う出来事だけを取りだし、合わない出来事は忘れる
  (「犬に噛まれた」記憶
  「そのあと、知らないおじさんが病院に連れていってくれた」記憶
   「世界は危険だらけ」のライフスタイルの人は、おじさんの記憶を忘れてしまう。
   「助けてくれる人もいる」ライフスタイルに変われば、おじさんのことも思い出す)
 ・過去が作られることもある
  アドラーは、小さい頃墓場が怖くて通れなかった
  あとで聞いたら「墓場なんかなかったよ」

  過去の記憶なんて、いい加減なものなんですね…

第8章 即時的に生きる
 生きづらさを少しでも減らして生きるための筆者の思索です。
 ここは本当に哲学的で、
 読む人それぞれで受けとるものが違うと思います。

 「全ての悩みは人間関係からだが、生きる喜びも人間関係からしか得られない」

 「どんな過酷な現実も受け止めて、人のせいにせず、やれることをやろう」

 「どんな環境でも過去でも、そこからの決断は本人次第」

 「ありのままの自分、他人、世界を見る。
  かけ離れた理想は、現実から逃げるためのいいわけになる」

 「仮定ばかり口にして実現を先伸ばしにしない」

 「人生の価値は終わるとき決まるもの(キーネーシス)ではなく、
  生きる姿そのもの(エネルゲイア)が生きる価値である」

 「生きる価値を高めるには
   よく生きること、
   一日一日を大切に生きること、
   生きる過程を楽しむこと」
  深刻にではなく、真剣に楽しんで生きようと言っています。

 「他者への貢献を理想とし、
  他者と協力しながら理想に向かって生きること」

 ○楽観主義、悲観主義、楽天主義の人
 ・楽観主義
   困難を深刻にとらえず、しかし逃げずに真剣に立ち向かう
   自己評価が高く、自分には能力があると信じている
   誤りは償うことができると確信している
   (勇気、率直さ、信頼、勤勉、忍耐強い)

 ・悲観主義
   自分は不完全と考え、課題から逃げる
   何かの困難にあったから悲観主義になるのではなく、
   課題に直面しないために悲観主義的ないいわけをする

 ・楽天主義
   運命に守られているからなんとかなると考え、何もしない
   しかし挫折には弱い

 アドラーは「悲観主義」「楽天主義」は子供に教えるべきでなく、
 「楽観主義」であるべきとしている

 「人生はチャンスや創造的な課題を提供してくれる。
  世界は仲間、自分は全体の一部。
  自分の貢献がみんなの幸福につながる」

 「自分が自分の運命の主人である」

感想です。
・老いについて、先日読んだ介護の本にも「介護される人に役割を与えてあげる」とあったと思います。
 「貢献感」が生きがいにつながるのですね。
 私も、年をとってもなんか人にしてあげたいな。

・死については、私のなんとなく考えていた死についての考え方と通じるものがあって、納得しました。
 死んだとき何を残すかが重要、
 生を受けた以上は生きるしかない、 
 死は良きものかもしれない、など。
 まあ、私も筆者と同様、死を前にして冷静にしていられるかは、自信がないですね…

・「自殺願望のある人」に対する視線が温かいと思いました。 
 「課題から逃げるな」と言うのではなく、
  ここまで追いつめられたかわいそうな人なんだ、
  そうなる前にみんなで救ってあげよう、と言われている。
  また、不慮の死を前にした人にも、
  「自分を責めないで」
  大切な人の死から立ち直れない人にも
  「悲しんでもいいよ。でもまた立ちあがろう」と言われているのが温かく感じました。
 
・「信頼」についてはちょっと耳が痛い感じでした。
 上の子には言葉通り受け取ってもらえないことがあったりする。
 「自分で選びなよ」と言っても、「これでいいの?」と聞いてきたりとか。
 私が言行不一致のせいなのかなあ。
 「好きにしなさい」と言いながら怒って、こちらに従わせようとしたりしてしまうことがあるのかなあ、
 と反省しました。

 まあ、もともと雰囲気を読みとるのが苦手な子なのですが…
 学校でも、からかわれているのに気づかなかったり、
 逆に相手が困っているのに気づかない、ということがあるらしい。
 こういう子は余計に、言葉でのコミュニケーションを徹底させないといけないな、と思います。

 私もなるべく「怒っているように聞こえたのかな?怒ってないよ」と言ったり、
 「お母さんはこう思う、だけど従う必要はない」ということは言っているつもりなのだが…
 
・人目を気にしない、空気を読まない、みんなと仲良くなろうと思わなくていい、
 というのは、かなり気楽になれる言葉ですね。
 ユダヤ人の教えはすごい。2人と仲良くなればいいや、くらいの方が逆にみんなとうまくいくのかも。

・どんな過酷な現実でも、受け入れて前に進むしかない。
 それをどうにかする力が私たちにはある。
 どう決断するかは自分次第。
 今からだって変えられる。
しんどいとき、励まされそうな言葉です。

・アドラーの言う「楽観主義」は、
 以前から読んでいた本何冊かでよく目にした、幸福な成功者に共通する考え方と同じだなと思いました。
  人のため世のために何かをするのが幸せ、
  自分には何でもできると信じられる、
  人生は課題やチャンスを提供してくれると考えている、
  失敗からこそ学べる、と考えている …など。
 アプローチの仕方は違っても、幸福への結論は似てくるのですね。
 私もこういう生き方をしよう。
 どんな些細なことでも、何かを他人にシェアできたらいいな。

・誰もが生まれてきた以上、生きている価値がある。
 いいわけなんかしなくていい。
 あなたが生きている姿勢そのままが、あなたの生きる価値なんだよ、
 という言葉にも、温かいものを感じました。
 生きていてよかった。


また何か節目があるときに読みたいなと思う本でした。
ボリュームはあるし、読みやすくはないですが、
読む人により色々な発見があると思います。


というわけで、今回はこの辺で。
 
 
posted by Amago at 20:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 本(人間関係) | 更新情報をチェックする