2017年08月07日

NHKBS世界のドキュメンタリー「メモリー・ハッカー~あなたの記憶が塗り替えられる~」

NHKBS世界のドキュメンタリー「メモリー・ハッカー~あなたの記憶が塗り替えられる~」

 アメリカ2016年製作のドキュメンタリー。
 記憶に関する研究についての話でした。
 記憶って海馬と大脳皮質の働きちゃうのん?
 と思っていましたが、記憶についてはまだまだ謎が多いのだそうです。
 記憶だけでなく、忘れる能力もなんなんだろう、と思わされる内容でした

○驚異的な記憶力の持ち主たち
 最初に出てきたのは11歳の少年。
 彼は一見普通の少年に見えるが
 実は過去の出来事を全て覚えていられる能力を持っているのだそうです。
 年月日を言えば、その日の出来事をすべて正確に答えられる

 このような人たちは
 HSAM
 (Highly Super Autobiographical Memory、高度に優れた自己再生記憶)
 と呼ばれ
 カリフォルニア大学のジム・マッガウ氏が15年前に発見したそうです
 彼は今まで数千人を調査、そのうち55人が見つかっている

 彼はHSAMたちの脳をスキャンして調べたそうですが
 鉤状束、と呼ばれる所が活発など、
 いくつかの特徴に分けられはするものの、
 共通するパターンは発見されていないそうです

 先の11歳の少年は7歳の頃からこの特異な記憶力を発揮しているそうですが、
 子供で見つかる例は珍しいそうで
 彼が記憶を呼び覚ますときの脳をスキャンし、詳しく研究しているそうです

 ほかの人と何が違うのか、
 人よりを記憶力が優れているのか
 それとも全てを記憶する力は誰にでもあるが、それを取り出す力が特異的なのか…

○てんかん患者の研究
 記憶の研究は、あるてんかん患者により大きく進歩した

 これはあまりにも有名な話ですが、ブレンダ・ミルナー氏によるてんかん患者ヘンリー・モレゾン氏(HM)の研究

 モレゾン氏は子供時代に自転車事故にあい、
 それ以来てんかんに悩まされた
 そこで医者は、てんかんを起こす脳の部位を切除する手術を行う
 ほとんどの海馬を取り除いたそうです

 その後、てんかんの発作は無くなったが
 副作用として、モレゾン氏は新しいことを全く覚えられなくなってしまった

 このことから、長期記憶には海馬の働きが必要と考えられるようになった。

 ミルナー氏がこのときの話をしていました
 「彼は実験には協力的でした、特にパズルが好きでした」
 その一つに手を鏡越しにだけ見えるようにして
 星などの図形をたどってもらう実験があったそうです

 普通の人は何回かやれば学習できるが
 モレゾン氏は新しいことを覚えられないため、学習はできないのではないか
 と予想されていたそうです

 しかし彼は練習するごとに上手になった
 ミルナー氏はとても嬉しかったそうです
 「それが突破口でした、運動機能は学習できることがわかった」

 ここから、記憶にはいくつか種類があると考えられるようになった
 運動、意味など、違う種類の記憶は
 別々の脳の部位に保管されているようだ、と分かった

 それ以来、記憶の研究はさらに進んだそうです
○記憶を脳の変化として捉えた研究
 ノーベル生物学賞を受賞したコロンビア大学のエリック・カンデル氏は
 記憶についての画期的な研究をしたそうです

 彼の研究の原点は子供の時の記憶だった
 彼は誕生日に、オモチャの車を買ってもらったそうです
 しかし、その二日後、
 「クリスタル・ナハト」と呼ばれる
 ナチス兵によるユダヤ人地区の襲撃が行われた

 彼らはアパートを追われ、
 一週間後に帰ってきたときは金目のものは全て奪われ、
 オモチャの車も無くなっていた
 子供心にとても辛かったのだそうです

 彼は「ホロコースト体験者はその経験を一生忘れられない」
 と述べている
 ではなぜ忘れられないのか?
 それを知りたくて精神分析や心理学を学んだそうですが
 記憶の研究が最も大事だと感じたそうです

 記憶が海馬に関係しているのは分かっていたが、
 では意識がどうやって海馬にたどり着くのか?

 彼が研究対象に選んだのはジャンボアメフラシだそうです
 「同僚にはキャリアを捨てるのかと思われた」そうですが
 アメフラシが単純な刺激を記憶するときの脳細胞の変化を見ることにしたそうです
 
 彼はアメフラシの水管という水を吐き出す管に注目した
 アメフラシはここを刺激すると、嫌がってえらを引っ込めるそうです
 そこでここをつつき、電気刺激を与えるとえらを引っ込める
 次第につつくだけでえらを引っ込めるようになった

 つまりつつかれる→電気刺激
 という学習をしたそうです

 このときの細胞レベルの変化を見るため
 神経細胞を取り出して培養した

 これは当時としては画期的だったそうで
 「記憶を生物学上の変化として捉えた最初の研究」だそうです

 培養したのは2つの細胞
 1つは水管近くの神経細胞、
 もう1つは運動神経の細胞で
 それぞれの細胞は樹状突起、と呼ばれる部分の突起をのばしていき
 端っこのシナプスと呼ばれる接合部でつながっている

 記憶を学習させたアメフラシでは、
 この2つの細胞の間に、
 新たなシナプス結合が生まれたことがわかった
 リンクが一本の線だったのが、
 たくさんの線でつながっている様子がビジュアルでわかったそうです

 「最初見たときは仰天しましたよ」

 この実験は、記憶が脳の物理的な変化で起きている
 ということを初めて明らかにしたそうです

 カンデル氏によれば
 2つの細胞の中には細胞核
あるが、それを染めると
 記憶を学習した細胞では、
 そこからメッセンジャー(m)RNAが放出されるのが観察される
 観察を続けていくと、
 このmRNAが細胞末端のシナプスに移動、
 新しい細胞を作るように指令を出し、新たなネットワークを作っていた
 
 学習をするとき、脳にはこのような変化が起きているそうです

 アメフラシは細胞の数が少ないが
 人間でも基本的な変化は同じで、
 もっとたくさんのネットワークが出来ているのだろう、とのこと

 しかし、ネットワークはできても
 記憶はそのネットワークのどこに保存されているのか?

 記憶のありかを示す研究は最近なされているそうです

○記憶のありか
 ニューヨーク大学の研究者によれば
 記憶は1まとまりではなく、符号化されていくつかの場所に保存されている

 例えば
 ・視覚的な記憶は視覚野(頭の後ろ)
 ・臭いは嗅覚野(鼻の上)
 ・運動記憶は運動野(頭頂)
 ・感情は扁桃体(脳の奥)
 そしてこれらを統合して、
 1つの記憶として思い出せるようにしているのが海馬なのだそう

 しかし、記憶が脳に物理的に刻み込まれているとしたら、
 なぜ正確に思い出せないのか?
 どうして記憶は変わってしまうのか?

 最近では、思い出す過程でも脳の構造が変化する、
 と考えられているそうです

○記憶の再固定化
 カリーム・ネイダー氏は
 カンデル氏の講演を聞いて研究の着想を得たそうです
 「カンデル氏は、シナプスのできる美しい映像を見せてくれた」
 彼は、記憶が生まれるときこのような変化が起きるのなら
 思い出すときはどうだろうか、と考えたそうです

 記憶は図書館の本のように例えられる
 思い出すとは、頭の図書館に保存された本を取り出し、また元に戻すようなもの、
 その記録は永遠に存在し、取り出しても変わらない、
 というイメージを持たれがち
 これは「記憶の固定化」という概念だそうです

 しかしネイダーはそうではないと証明したそうです

 彼はラットにある特定の音をきかせ、そのあと電気刺激を与えることを繰り返した
 するとラットは次第に、
 音を聞いただけで怯えるようになった
 つまり音→電気刺激、という恐怖の記憶を学習した

 このラットにその音を聞かせて、
 そのあとアニソマイシン
という、
 タンパク質の合成を阻害する物質を投与したそうです

 「もし記憶が固定化されるものなら、薬物投与によっても変化がないはずです」

 しかし、アニソマイシン投与後は、ラットは普通に歩き始めたそうです
 何も恐怖記憶のないラットと同じになった

 「最初見たときは信じられなかった」

 つまり、記憶を思い出すときにも神経は作られるのだそうです
 思い出すたびに記憶は変えられる、という可能性が示された
 他の研究者の解説によれば
 「記憶とはしまいこんだ本ではなく
  ファイルを呼び出して修正を加え、上書き保存するようなもの」
 脳が新たな記憶を呼び出したとき、新しいタンパク質ができ、過去の記憶と新たな結合ができる
 記憶は再固定化される、と考えられているそうです

○クモ恐怖症の克服
 この結果を治療に応用した方がいるそうです

 アムステルダム大学のメレル・キント氏
 彼女はクモ恐怖症の治療を行っている

 実際のやり方を見ていると
 最初はクモに怯える男性に、虫かごに入っているタランチュラに敢えて触ってもらう
 「毒はありますか?」
 「毒グモだからありますよ」

 男性は触ることができない。
 「…口の中がカラカラです、体が震えます」
 「対象を見ることが大事です」
 クモに触れるまでではないが
手を近づけてもらう

 キント氏によれば、
 こうすることで恐怖記憶を引き出すそうです
 そしてそのあと、プロプラノールを飲んでもらう

 この薬は元々高血圧の薬で
 ノルアドレナリン分泌を阻害するそうです
 ノルアドレナリンは、ストレスに反応して分泌される
 これにより、記憶の再固定化を防ぐのだそうです

 「大事なのは、これは忘れさせる薬ではない、ということです」
 恐怖記憶をまず再活性化させないと効かないのだそうです

 さてこの男性は、
 次に訪れたとき、クモを触れるようになっていました
 最初はピッと触るだけだったが
 次第になでなでするようになり
 「ハムスターのようです」

 キント氏はこの方法で、30人のクモ恐怖症を治療したそうです
 「こんなに効果が出るなんて、私も信じられなかった」

 この効果は1年後も継続していたそうです
 先の男性は
 「怖がっていたときの自分の感じと今の感じは全然違う、
  まるで別人になったみたいだ」
 と話していました

 キント氏は
 「これが元々あった記憶を消した、という証拠にはならない。
  しかし恐怖が甦らないという事実はあるので、
  記憶が消えたという仮説は立てられる」
 これらは、PTSDの治療などにも応用されているそうです

 (ネイダー氏はタンパク質阻害剤、
 キント氏はホルモン阻害剤、
と使う薬が違うので、
 最初「?」と思ったのですが、

 私の理解で書きますと

 何かの記憶を思い出すには
 新しい神経細胞により
 昔の記憶の情報を、
 今の情報(再体験してまた口が渇く、体が震えるなど)
 と結びつけないといけないのだろう。

 タンパク質合成阻害剤は、
 その2つの情報が結びつけられず、結果的に思い出せなくなる。

 一方ホルモン阻害剤は、
 思い出したときの身体状態を変えてしまうことで、
 「思い出しても怖くない」という新しい情報に上書きさせてしまう、
 ということなのかなと思いました)

○間違った記憶を植え付ける
 次に、記憶の再固定化の話から
 「人の記憶はいかにあてにならないか」
 を研究する心理学者がいました

 この心理学者は、記憶過誤(間違った記憶)の実験をしています

 やり方としては
 子供の頃の記憶テストをする、という名目で被験者を集める
 そして被験者に話を聞いていく
 「12歳のとき△△から○○に引っ越してきました、とても嫌でした」

 話をしていくうち
 「ご両親にうかがったんですが、
  あなたは14歳のとき、友人と喧嘩をして警察が来たそうですが…」
 この中には実際の話とウソを混ぜるそうです
 本当なのは、友人の名前と当時住んでいた都市の名前だけ

 偽の話ですので、もちろん被験者は
 「何のことかよくわからないのですけど。覚えていません…」

 ここでテクニックとして
 「目を閉じてください。深呼吸して。
  この記憶を思い出すように集中するのです」
 そして
 「14歳の自分を思い浮かべてください
  場所は○○、季節は秋、あなたは友人と一緒にいた…」
 と誘導していく

 すると、被験者に一週間後に同じ質問をすると
 「私は彼女を押したかもしれない」
 などと言い出したのだそうです

 他の研究者の解説によれば
 「こんなことがあったかもしれない、
  と思いながらイメージしていくと、
  偽の記憶が作られてしまいやすい」
 「こうかもしれない、が、
  こうだろう、
  こうだ、と変わっていく」
 のだそうです

 この心理学者も
 「記憶を取り出すことに集中しなさい、
  というと、大概の人には効果がある」と話していました

 この方法で、7割以上の人が
 していない罪を犯したことを認めてしまうのだそうです。

 もしこれが犯罪の尋問のときに使われたら…
 間違った自白、間違った裁判に導く可能性がある。コワイですね。
 実際、冤罪事件の3/4は、間違った目撃証言に基づく事実の作り替えなのだそうです

 (これは、キント氏が行ったような新しい記憶の上書きを
 イメージングでさせた、ということかなと思いました)

○光で記憶をオンオフにする
 記憶の研究者は
 「トータル・リコール」
 「エターナル・サンシャイン」
 「インセプション」
 などの世界は実現する、
 と話しています

 (私自身は「トータル・リコール」だけ見たことがあります。
  火星にいた記憶を消された主人公(たしかシュワちゃん)
 が出てくる話なんですが、
 どれが本当でどれが嘘の記憶なのかわからなくなってくる話でした。

 「エターナル・サンシャイン」は記憶除去手術、
 「インセンプション」は夢のなかに入り込むスパイ
 の話だそうです)

 コロンビア大学のクリスティン・デュー氏は
 記憶のオンオフを光で操る研究をしている。
 これは光遺伝学と呼ばれる

 マウスを使い、
 楽しい記憶を光で呼び起こす実験を見せてくれました

 彼女は、このマウスの脳のDNAに、
 藻から取り出した光に反応するDNAを組み込んである

 このマウスにある薬品を投与し、その後楽しい経験をさせる
 薬品を投与すると、
 その後1時間以内の間に興奮している細胞と、光を発するタンパク質が結び付くよう指令が出されるそうです

 このように操作したマウスを
 新しいゲージにいれる
 新しいゲージは未知の世界なのでマウスは怯えて動かない

 マウスの脳を光ファイバーでつなぎ、体内の光をオンにすると
 楽しい記憶が思い出され、活発に動き出すようになるらしい
 しかし光をオフにすると楽しい記憶は無くなり、動かなくなる

 つまり彼女は、光をオンオフにすることで
 マウスを操っていることになる。

 記憶のコントロールは将来的に行われるだろう、
 問題はいつかだ、とほかの研究者は話していました

○まとめ
 最後は、色んな研究者のコメントによる、問題提起でした

 ・「記憶の操作は、進化の道を過ったことの証なのか」
  映画のように記憶の消去やコントロールができることは、
  果たして幸せなのか?と問うています。

 ・「どうして我々の体は、
   記憶の変更や修正を受け入れているのか」
  もしかして、記憶の変更、修正は生物として必要があるのかも、と…

 ・「HSAMの人たちの存在は、
  人の脳には、人生の全てを記憶する能力があることを示した。
  しかし、なぜ全員にこのような能力が備わっていないのか」
  ヒントとして、HSAMの少年は
  「良いことばかりじゃない。嫌な出来事も忘れることができない」
  と話しています。
  忘却も必要な能力なのかもしれない。

  ある研究者は
  「忘れるのは重要な働きの1つと考えられる。
   進化は、大事なものだけを保存するシステムを作っているのだ」
  と話していました

 「記憶の究極的な目的はおそらく正確無比な記憶ではない、
  過去の膨大な記憶から、必要なものを見つけるのは至難の技でしょう?」
  と話す研究者もいました

 ・最後に、記憶の意義とはなにか?についての話がありました
 「記憶とは、過去の記録を正確に思い出すためだけのものではなく、
  過去の記録を1つにまとめるクリエイティブなプロセスなのです」

 ナレーションでは
 「細胞は、我々の人知を超えたシステムで記憶を作っている。
 記憶により、我々は過去や未来に、思いをはせることができる。
 記憶は人生の物語をつむぐ、手助けをしてくれている」
 と締め括っていました

○感想など
・光遺伝学の研究は、昔サイエンスZEROとかモーガンさんの番組でも見かけましたが、
 最近はもっと進んでいるのだなぁと思いました。

 光を当てると神経細胞を活性化させるタンパク質は
 チャンネルロドプシン、という藻の遺伝子から作られる
 この遺伝子を特定の脳の部位にだけ発現させて、
 光をオンオフにすれば、狙った細胞(例えば恐怖を感じるとき働く細胞)のスイッチを好きなときにオンオフさせることができる…
 という話は聞いていましたが

 チャンネルロドプシンの発現を薬剤で調節する、
 というシステムがあるのは知りませんでした。

 この方法なら、例えばマウスが楽しんでいるとき、
 脳のどこが活性化しているか正確に知らなくても、
 薬剤を入れて、そのあと1時間以内に楽しませさえすれば
 そのとき活発だった細胞で、自動的にチャンネルロドプシンの発現がされている。
 便利なシステムですね。

 調べたらどうやらClontech社に、
 Tet-Off Advanced / Tet-On Advancedシステム、という商品があるみたいです。

 このシステムでは、ドキシサイクリンという薬剤存在下に限り、
 標的遺伝子の発現を誘導させるシステムがあるらしい
 (逆に、誘導させないシステムもあるらしい)

 これと、神経細胞が活発なときに発現する遺伝子
 (他には影響しないが、その細胞が活発であることの指標になるらしい)
 の調節領域を利用することで
 望みの時間内に活発な細胞にだけ、
 チャンネルロドプシンを発現させられるらしいです。

 このシステムを利用した研究は理科研でも行われているようで
 http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150618_1/
 などには、
 うつ状態のマウスに
 楽しい記憶を光で呼び起こすことに成功しています。

 また光遺伝学では、光をオンオフにするときは光ファイバー(つまりケーブル)を脳につなげていましたが
 http://www.amed.go.jp/news/release_20161011-01.html
 によれば、弱い光、あるいは遠隔の光でもOK、なシステムも
 東大とコロンビア大学との共同研究グループで考え出されているようです。技術の進歩はすごいですね。

・ネイダー氏の研究では
 恐怖記憶を持ったマウスでも、
 タンパク質合成阻害剤を投与されると恐怖記憶を忘れてしまう、という話でしたが

 http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150529_2/
 (これも理科研の研究)によれば、このとき記憶は消えたわけではないようです。

 この実験は、詳しくいうと
 このマウスにあらかじめ、
 恐怖体験(箱の中で電気ショックを与える)時に活発になる細胞にだけ、
 チャンネルロドプシンを発現させておく

 そのあと同じ箱に入れて恐怖を思い出させ、
 タンパク質合成阻害剤を投与すると恐怖は感じなくなる
 (ここはネイダー氏の実験と同じ)

 しかしそのあと、別の箱にこのマウスを入れて、
 光をオンにすると恐怖の反応が甦るのだそうです。

 つまり、思い出すときはシナプス増強は必要だが、
 このシナプス増強を阻害しても、恐怖記憶自体は消えていない、ということになる
 研究者によれば、認知症などの健忘症でも同様のことが起きているのかもしれない、とのことです。

 そう言えば最近、大山のぶ代さんと砂川啓介さんの話をテレビで見ましたが、
 砂川さんが亡くなったとき、
 のぶ代さんは認知症で記憶が無いはずなのに
 最後のお別れの時に
 「お父さん…」
 と言って涙を流した、というエピソードが紹介されていました。

 つまり彼女の中でご主人の記憶はやはり消えていなかった、ということなのでしょう。

 ちなみに他にも理科研では光遺伝子を使った長期記憶のメカニズムの研究、
 などもされているようで
 (http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170407_1/)
 今後も記憶について色々分かってくるのかもと思います

・キント氏のクモ恐怖症治療でも
 彼女は記憶が消えたという仮説を立てていましたが、
 恐怖を感じた、という記憶は脳の中で消えていないのかもしれないですね。

 ただ、過去の自分が感じたことと、今の自分はもう違うものとして記憶し直すのかもしれない。
 子供のとき怖かったお墓が、大人になって全然怖くなくなるのと同じなのかも。

 このクモ治療方法では、
 思い出しているときの体の反応を変えることで脳の記憶を変えてしまう、
 つまり体から感情を変化させるという意味でも面白いなと思いました。

・記憶と言えば「脳が認める勉強法」という本を思い出しました。
 この中でキーとなっていた理論として、
 UCLAの心理学者、ロバート・ビヨーク氏の
 「覚えるために忘れる理論」が紹介されていました。

 彼によれば、人間の記憶容量は無限大だそうで
 覚えたものは忘れることはない、としている
 しかしその情報の洪水に飲み込まれないために、我々は忘れるのだそうだ。

 そして、思い出しにくいものを頑張って思い出したとき、
 記憶はより強く残される、という説を唱えています。

 このため、間隔を空け、忘れた頃に再学習すると効果がある
 勉強するときに場所を変えるなど、手がかりを増やすと覚えられる
 などの方法を提唱しています。

 この方は心理学者ですが、
 「記憶は消えない」てのは先の理科研の研究で証明されつつあるし
 「上書きするときにネットワークがたくさん作られるほど記憶は強く残る」
 というのが、神経細胞の染色などでビジュアル的に示される。
 物理現象として現れている内容とリンクしているのが興味深いと思いました。

・記憶の忘却、上書き、変更も素晴らしいシステムだなと思いました。
 ビヨーク氏は、人が記憶を忘れるのはたくさんの情報から必要なものだけ取り出すため、
 としているけど、
 危険に立ち向かえるようにするため、というのもあるんだろうなと思います。
 嫌な経験、怖い経験をある程度忘れられなければ、次のチャレンジには向かえないですし。

 そう言えばお年寄りほど、辛い経験は感じにくくなり
 幸せなことだけ覚えている、と聞いたこともあります。
 (詐欺に遭いやすいのはそのためだとか…)

 私も若いときより忘れやすくなったんですが
 それはそれで幸せなのかも。うまいことできているのかも。

 将来、これが進んで、もっと年を取って大切な人の記憶が無くなったら辛いな、とも思うんだけど
 「思い出せなくても、記憶は消えずに残っている」
 のが本当だとすれば救われる気持ちもします。

 (そう言えばミスチルさんの歌の
 「あんまり覚えてないや」
て歌も似たような内容だったな。
 おばあちゃん、おじいちゃんになってもちゃんと覚えてるんだ、
 ていう感じの三番の歌詞が好きです。
 地味だけどけっこう名曲かなと…)

色々考えてしまいました。
というわけで長くなりましたが、今回はこの辺で。
posted by Amago at 21:16| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年08月06日

NHKBS世界のドキュメンタリー「ショックルーム~伝説の“アイヒマン実験”再考」

NHKBS世界のドキュメンタリー「ショックルーム~伝説の“アイヒマン実験”再考」

 オーストラリア2015年製作のドキュメンタリー。

 「アイヒマン実験」とは、
 ドイツの心理学者ミルグラムの行った実験で

 人は服従状態になったら、
 他人への電気ショックを致死レベルまで与えることができる、
 ということを示したもの。

 心理学の本を読めば必ず出てくると言って良いほど出てきます。

 この実験は
 「人間は権威ある人に命令されたら、非道なことでも従ってしまう」
 という人間の嫌な面を示す意味合いで出てきますけど
 それは少し違うのでは
 ということを示したドキュメンタリーです。

○アイヒマン実験
 この実験は1960年くらいからミルグラムが行ったそうです
 対象にしたのは1000人以上の一般市民で
 どの方も様々な経歴や職業の方。

 ミルグラムがこの実験を行った動機は
 当時は第二次対戦の後で、
 ナチスによるユダヤ人の大量虐殺の理由を検証する意味合いがあったみたいです

 ナチスの残虐行為に一般市民が荷担してしまったのはなぜなのか?
 人間は命令されたら服従するものなのか?
 を調べるためだったようです

 ミルグラムは3年の準備をかけ、
 実験室も自作したそうです
 実は彼が行ったのは30以上のバリエーションがあるそうですが、
 映像つきで公開されたのはそのうち1つだけなのだそうだ
 彼自身により記録映画として「服従」と名付けられていて、
 人間は権威ある人の命令に従ってしまう、
 ということを示したとされる

 今回はオーストラリアのシドニーで
 映画監督と俳優が、その他のバリエーションも含めた実験を再現しています
 役者は架空の人物を演じていますが
 実験の目的は伏せて撮影されたらしい

○基本的な実験
 最初に、実験の基本バリエーションを再現していました

 実験者は
 「教育への罰の効果を調べる実験を行う」
 という名目で二人を呼び
 一人を先生役、もう一人を生徒訳に指名する
 生徒役は腰をベルトで固定され、
 手首に電気が伝わるベルトを巻かれる

 そして、
 「今から先生役の人には4つ一組の言葉のペアを読み上げてもらいます。
  生徒役はその順番を覚えてください。

  次に、先生役の人がそのうち1つを言いますから、
  生徒役の人は何番目の単語だったかを思い出して、ボタンで番号を押してください。

  間違えていたら、先生役の人には生徒役に電気ショックを与えてもらいます。
  間違うごとに電圧を上げていきます」

 先生役の人は
 「あの、私は健康診断で心臓に問題が…」
 というが
 実験者は
 「安全な電気ショックですから大丈夫です」という

 そして生徒役だけその部屋に残し
 先生役と実験者は別室に移る
 先生役は生徒役にマイクを通じて問題を出し、
 先生役の人の後ろには実験者が座って指示をする

 実はこの実験、生徒役はサクラで
 真の被験者は先生役の人

 生徒役は問題を間違え、
 先生役は電圧を上げていく
 すると途中から生徒役から返答が無くなる

 先生役はためらうが
 後ろにいる実験者に
 「続けなければならない」
 と圧力をかけられる

 先生役が不安になり実験者に抗議すると
 「10秒待って返答が無ければ不正解と見なしてください」
 と続けるよう促される

 結局先生役は、このまま致死的な電圧まで上げてしまう

 ミルグラムの予備実験では、
 このときはすべての人が最後の致死レベルまで電圧を上げたそうです

○第1幕「権力への服従」
 今回、2名の心理学者が解説していましたが、
 「人が権力に従って、他人に危害を与えてしまう心理は
  心理学的には
  「代理人状態」
  という言葉で説明される」
 とのこと

 これは人は権威の前では、
 よき同調者となることに集中してしまうので、
 自分の行為が見えなくなってしまう。
 いわば夢遊病者のようになってしまう、
 というものだそうです

 大量虐殺、刑務所での虐待、タンカー流出事故の隠ぺい、
 などが行われたのはそのせいだと…

 しかしこの心理学者は
 そのように悪い行いをしてしまうのは人間心理の1つなんだ、
 としてしまうのは納得がいかない、と述べています。

 それならば行為者には選択の余地がない、責任がないことになる
 それは加害者が命令されて悪い行動をしても仕方ない、
 という言い訳を与えてしまう…
 それは違うのではないかと。

 ・「音声フィードバック 生徒役の声が聞こえるとき」
  ミルグラムの実験のバリエーションのひとつ。
  このケースでは、
  実験のしかたは先のやり方とほとんど同じですが
  先生役の人に生徒役のうめき声が聞こえるようにする

  ミルグラムさんの実験では、
  たしかこの状況でもほとんどの人が最後までボタンを押し続ける、
  というショッキングな内容でした。
  さて今回は?

  ここはかなり生々しく再現されていました
  (演じている俳優は、役だけ与えられて本当に実験しているのかな?)

  3人の被験者の様子が出ていましたが
  どの人も傾向は同じでした

  最初はうめき声が聞こえるたびに
  「彼は大丈夫なのか?」
  「付き添っている人はいるのか?」
  「責任は誰が取るのか?」
  「なにかあったらどうするんだ」
  と聞く
  女性の被験者なんかは途中から泣いて
  「ごめんなさい、できません」と言っていました

  しかし実験者は
  「大丈夫です」「オモチャみたいなもの」「続けてください」を繰り返すため
  被験者たちはためらいつつ進めていく

  しかし電圧が高くなるにつれ
  被験者の抵抗も高くなっていく
  「もうたくさんだ」
  「金は要らない」
  「何のためにやるんだ」

  すると実験者は
  「続けてください」
  「続けなければならない」
  「絶対にやらねばならない」
  など、言葉がきつくなっていく

  すると、なんと最後は全員断固拒否していました

  女性なんかは、立ち上がって生徒役の部屋へ行こうとし、
  「私はもう無理。ごめんなさい」
  実験者がなにか言いかけると
  「あなたの話なんてどうでもいい、もうやめるわ」

  …沈黙が流れる。

  そこで実験者は
  「分かりました、ではもう中止しましょう」
  そして笑顔で部屋を開けて種明かしする
  「彼は無事です、失礼しました」
  女性はそのとき
  「何て言うか…
   いい気分じゃないわね。
   子供の頃、先生に命令されていた時みたいだった。
   でももう大人なんだから、命令になんて従う必要はない
   無理強いされる筋合いなんかないと思ったの。
   もっと早く止めれば良かった」と話していました

  他の男性も拒否していました
  「続ける必要はない。やっても意味がない」
  「嫌だ、様子を見に行く」
  とか
  「関係ないだって?ロボットじゃあるまいし」
  「何のために続けるんだ」

  最後は種明かしされていました

  (ちなみに私はミルグラムの結果を知っていたので
  ここまで反抗できることが意外に思いました)

 ・本当に「服従」なのか?
  ミルグラムの実験では
  このバリエーションでも65%も服従、35%が拒否したそうです
  このため生徒役のうめき声があったとしても人は命令されれば服従する、
  という結果がクローズアップされてしまった

  しかし心理学者の解説では
  「「代理人状態」がクローズアップされたのは
  当時の時代背景によるもの」だそうです

  当時はハンナ・アーレントの
  「悪の凡庸さ」が話題になっていた
  これは、ヒトラーの部下であるアイヒマンの裁判を傍聴したアーレントが書いたもの
  ミルグラムの実験は、この本が書かれたのと同時期に行われたのだそうです
  (私もうろ覚えですが、
   たしかアイヒマンは凡庸で真面目な公務員だったがゆえに、
  ヒトラーの命令に生真面目に従っちゃった人、
  みたいな扱いだったと思います)
  両者は同じ文脈、つまり人間の服従を示すものとして読み取られてしまった

  多分ミルグラムの実験が
 「アイヒマン実験」
  と呼ばれたのはそのためなのでしょう。

  しかしこの心理学者は、アイヒマンに関しても
  「アイヒマンは単に命令に従っただけだったのか?」
  と疑問を投げ掛けています

  アイヒマンは1944年、ハンガリーで、
  当時のヨーロッパ最大のユダヤ人コミュニティ破壊に荷担したが、
  そのとき、彼の上司はドイツの敗戦が濃厚なのを見て
  連合国軍と取引をしようとしたそうです
  上司は、ユダヤ人の命と引き換えに武器を得ようとした
  (結果的に取引は失敗したが)
  しかし、アイヒマンは上司を無視したそうです

  「アイヒマンは、盲目的に命令に従ったわけでなく
   自分の行為に自覚があり、
   自分の行いを正しいと信じていた」
  とのこと。そして、
  「ミルグラムの実験に被験者が従ったのも
   被験者が「この実験は有益なもの」と信じていたからで
   彼らは積極的な協力者だった」
 
  ほかの心理学者も
  「代理人状態」になるかどうかはその人の置かれた状況による」とも述べています

 ミルグラムの実験でも、服従しない人が多いパターンも少なくない

 では、どんなときに服従しないのか?
 ・「近接性 同室に配置する」
  このケースでは、生徒役の人は別室ではなく先生役の隣に座り、
  直接電気ショックを受ける状況です。

  この場合は先生役の被験者は
  「こんなのおかしい、バカげている」
  「ダメダメ、もうやらない」
  という被験者が多かった
  生徒役の苦しむ様子があまりにも生々しいので良心を動かされるのだろう。

 ・「同僚二人の反逆」
  このケースでは、生徒役の人は別室にいて、先生役の後ろに実験者がいる
  てのは一番最初のケースと同じで

  違うのは、先生役の両隣にサクラを座らせ
  二人のサクラが実験を途中から拒否すること
  「私はもうやらない、抜けるわ」
  と言って席を外してしまう

  そうすると90%近くの被験者は止めるそうです

 では服従する場合、と服従しない場合は何が違うのか?
○第2幕「崇高な目的」
 ミルグラム自身は
 「被験者に、実験が価値あることとして提示したときは協力を得られる。
  それは服従なのか。協調なのか?」
 と書いています

 心理学者たちは
 「ミルグラムの実験では、被験者は板挟みになっていた」
 「被験者は天秤にかけられていた」
 と解説しています。

 つまり、「崇高な目的のために実験に協力している」という信念と
 「生徒役の人がかわいそう」
 という2つの気持ちが葛藤していたと考えられる

 当時ミルグラムの実験では
 被験者は
 「これは社会にとって最も大事な教育の研究なのだ」という意識が高かったみたいです。
 しかし、苦しむ生徒役を目にして良心がとがめる

 バリエーション実験では
 実験者に権威がないとか、
 実験者がうまく被験者を説得できない、
 あるいは生徒役の安否を意識させられる状況では
 反対して止める人が多かったそうです
 逆に、崇高な目的を強調されれば従うことが多かったらしい

 心理学者は
 「人間は、たとえどんな行為でも
  「やる価値がある」「自分が正しい」と信じれば、従ってしまうものなのだ
  ということを示している」
 と述べていました

○第3幕「選択の余地はない」
 ・「権威と距離を置く」
  このケースでは、
  先生役の後ろに座っていた実験者が途中で
  「すみません、しばらく所用で席をはずします」と出ていき、
  それからはスピーカー越しに指示を与える

  するとスピーカー越しの声では、被験者は従わず、反対していました
  (権威が弱まったせいなのだろう)

  このとき、実験者が最終的に
  「いいですか、あなたに選択の余地はないんですよ」
  というと、
  「何ですって?
   あるわよ、私は続けない選択をするわ」
   と止めてしまいました

 実はこの
 「あなたには選択の余地はない」
 という強い命令が、
 服従を拒むカギになっていたそうです

 一連の実験では、どのバリエーションでも、拒む被験者に対して
 「そのまま続けてください」
 「続けてもらわねばなりません」
 「続けることが必要です」
 「あなたに選択の余地はない」
 …など、実験者が次を促すことばをかけている

 心理学者によれば
 これはミルグラムの実験でも同じで、
 しかし唯一命令形なのが
 「選択の余地はない」
 なんだそうです。

 今回の実験では
 この言葉をかけるとみんな反発し、実験をやめている
 そしてミルグラムの実験でも、
 この言葉を聞いた人はみんな実験をやめているそうです

 実際にミルグラムの記録映画でもこのセリフを聞くと、
 「選択はできるさ」
 「私は選択する」
 「選択はある、やめるという選択をするよ」
 とみんな反発していました

 心理学者によれば
 ミルグラムはこの実験で
 「人はある特定の条件下ならば人は必然的に服従する」
 ことを示した、とされているそうですが
 もし本当にそうならば、
 被験者は命令されればされるほど従うはずだ、としています

 しかし、命令形となると被験者はむしろ反発している

 心理学者は
 「この実験が真に伝えたのは、服従だとか抵抗ではない。
  選ぶ権利は我々にある、ということだ」
 と述べています

 人は、自分に選ぶ権利はないと言われるほど
 それを取り戻そうとするものなのだ、と。

 もう一人の心理学者も
 「人には選択肢があり、たてつくこともできる」
 と述べています
 移民問題でも公費削減でも、
 何かの意見を決めねばならないとき
 他人の意見は色々あるが、
 それらをいかに見極めるか、
が決断には必要なのだ、と。
 「選択肢が自分にあるならば
それを使う責任も生まれるでしょう?」

 (この辺のくだりがいまいち分かりにくかったんですが
 私なりの理解で書きますと

  このミルグラム実験では、今まで「服従」が強調されてきたが
  それは戦争や洗脳など、
  「自分は正しいことをしている」と思わされているような特殊な条件下のものに過ぎず、
  人は拒むことができるし
  実際ミルグラム実験でも拒むケースの方がむしろ多かった

  だから権威に服従するかも、と恐れたり
  命令されたから服従しても仕方ないんだ、などと思わず
  自分の頭で判断しなくてはいけない、
  我々にはそういう力がちゃんとあるのだとこの実験は言っている、
  ということなのかなと思いました)

 ナレーションでは
 「ミルグラムの「服従」は
時代とシンクロしたストーリーに過ぎない」
 と述べています

 当時は、暴力の加害者
 (当時で言えば、戦争をした人たちやナチスの中枢部なのだろう)は
 私たち凡人とは違う存在だ、と考えられていた

 そうした中で
 特定の状況では、人間は誰でも他人に危害を加えることがあるんだよ、ということに焦点が当てられた

 つまり、大半の国民がナチスに荷担してしまった理由付けを求めていたのだろう。

 しかし時代は変わった、
 そろそろこの実験の解釈を変えてもいいのでは、と。

 実験全体を見れば
 すべての方法で、大半の被験者は拒否をしているそうです

 「私だったら、あの人だったら、どんな行動を取るだろでしょうか?」
 決めるのはあなたです、という感じで終わっていました

○感想など
・ミルグラムの実験は、人間は役割を与えられたら従ってしまうもんなのかなぁ…
 という負のイメージしかなかったんですが

 私も元の論文とか辿ってないから知らなかったけど
 実は服従しなかった例が多かった、というのは初耳で
 聞いて希望が持てました。

 権威に反抗できるきっかけはいくらでもあるんだな、と。

 今回紹介されたバージョンだけでも
 悪い行いをしたくなければ
 ・権威的な人からなるべく遠ざかる
 (命令してくる人の権威を下げる)
 ・加勢してくれる仲間を見つける
 ・自分の行いで被害を受ける人たちのことを知る

 …などのことを心がけることで良心が保てるのかなと思いました。

 逆に言えば、権力者というのは、
 ・自分を権威付けしたり
 ・服従させたい人を孤独にさせたり(あるいは孤独な人を服従のターゲットにする)
 ・被害者を人間以下の扱いにする、
 ということをして、服従者に悪いことをさせるのでしょう。

 …てこれ、テロリスト集団が若者を引き込む手口と全く同じですね。
 背筋が寒くなりました。

・人は服従するというよりかは、
 正しいと思ったら倫理的に許されないことでもしてしまう、
 という発見は重いなと思いました。

 先日「優生学」についての番組を観ましたが

 優生学では、
 「民族を守るため」に、
 特定の人たちの遺伝子を根絶する、
 という考え方で、
 このため遺伝的疾患と思われるものを抱えている人たちに中絶を迫ったり、避妊手術を強制していました

 この優生学も、倫理的には許されることではないはずなのに
 当時は正しいと真面目に思い、これを法規制にまで広げてしまう人もいた

 考えてみれば、地下鉄テロを行った宗教集団でも
 いい国を作りたいと思っていたエリートたちが事件を起こしている…

 こうした「間違った正義」を防ぐにはどうしたらいいのか?

 私は常に「自分が正しい」を疑うことなのかなと思います。

 自分の考え方と違う考え方、
 嫌だなと思う人、
 の話を敢えて聞いてみる。
 他人の見方で物事を見てみることなのかな、と。

 立場が上の人ならなおさら、
 自分の考えに謙虚にならねばならないのだろう。

 ただ、正しい正義に取りつかれてしまった人に
 別の見方をするよう迫るのはとても難しいのだろうな…

 多様な視点って大事、
 話し合い、受け入れあいが大事だということを
 地道にみんなに伝えていくことしかないのかも。

・科学実験の結果は、時代により解釈が変わる、という事実も興味深いと思いました

 自分の今いる時代の価値観って、
 当たり前みたいな感覚になってしまっているけど
 もう少しスケールを大きく、俯瞰的にものを見なければならないのかも。

 今行われている色んな分野の研究の解釈も
 今の時代の常識みたいなのに縛られていないだろうか、
 と疑う視点も持っておかねばならないのかなと思いました。

実験が生々しすぎて汗かいてしまいました…(笑)
(ちなみに俳優さんたちにはあとで事実を教えたそうです)

というわけで今回はこの辺で。

posted by Amago at 08:15| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年08月02日

NHKBS世界のドキュメンタリー「チョコレートで痩せる?~ドイツダイエット商法のからくり~」

NHKBS世界のドキュメンタリー「チョコレートで痩せる?~ドイツダイエット商法のからくり~」

 ドイツ2015年製作のドキュメンタリー。

 私は知らなかったのですが
 ドイツで数年前、チョコレートのダイエット効果が話題になり、
 しかし後に、それはジャーナリストの嘘だと明らかになった、
 という話があったそうです

 そのでっち上げをした人たちのドキュメンタリーです。

 世の中に、根拠のないダイエット記事がはびこっている実態や、
 そのからくりを暴くのが目的みたいでした。

 個人的には、そもそも健康情報ってあんまり当てにしないのですが(笑)
 データを操作していく過程、
 キャンペーンをどんどんしていく過程が面白かったです。

というわけで内容から。
○健康に関する色んな情報
 世の中には2万8千もの健康情報が出回っているそうです
 色んな学会から、時には相反する説が出されている
 例えば
 ・炭水化物はパワーの源
 ・炭水化物は肥満、病気のもと

 ・加工肉の取りすぎはガンになる
 ・肉の飽和脂肪酸は心配ない

 ・クルミは前立腺ガン、アルツハイマーに効果あり

 ・ベーコンよりフルーツがいい
 ・フルーツの果糖は肥満の原因、中性脂肪を増やす

 ・魚は痩せる

 …などなど。どれがホントなの?

○科学的ではない「科学」
 しかし、これらに批判的な栄養学者ウーヴェ・クノップ氏は、
 「今の栄養学は科学的ではない」
 というような話をしていました

 彼によれば、今の栄養学のやり方は、データを集めて観察するだけで、
 仮説や推測に過ぎない。
 そこに裏付けはないそうです。

 「例えば
  「ネットテレビよりケーブルテレビを見る人が長生きする」
  という結果から
  「ケーブルテレビを見る人は長生きする」
  という結果を導いても
  それを信じる人はいないが、
  それが食物繊維になるとみんな信じてしまう、
  でも原理的には同じ」

 相関関係はあるかもしれないが
 因果関係を証明するものではない、とのことです

○科学を利用したがる人たち
 ではなぜこんな科学が出回るのか?
 研究者で科学ジャーナリストのジョン・ボハノン氏は
 「ダイエット産業に関わる企業などは、
  科学のお墨付きをキャンペーンに利用したがる」
 という感じの話をしていました

 彼によれば
 突拍子もないダイエット法でもほんの少しの科学の裏付け、真実の操作があれば、
 それは「科学的な結果」とされる
 企業は「科学」のスタンプがあれば、キャンペーンを行ってしまう。

 そして彼は、
 「このようなたくさんのいい加減な研究の結果によって、
  真面目な研究者への信頼を損ねるのが問題」
 と話していました

 我々は科学というものに敬意を払うが、
 その科学が正しいかどうかを判断するのは難しい、とのこと

○論文のからくり
 では、そこを利用してウソの科学論文をでっち上げ、
 学術雑誌に載せることはできるのか?

 ここで健康食品に関する著書を書いている医師グンター・フランク氏に
 論文の掲載について聞いています

 彼は、
 「ジャンクサイエンスも掲載の候補になる」とのこと
 論文の掲載は学者にとってキャリアがかかっているし、
 大学にとっては権威やランク付けになる。
 学者にとっては掲載されるのが大事なので、
 お金を払って掲載してもらうことだってある、と話していました

 論文だって金次第、なんですね。

○肥満学会に行ってみる
 これらの話を聞き、
 ライプチヒの肥満学会に潜り込んでいました

 そこには医師、製薬会社、ダイエット企業、食品関係の会社などのブースが…

 この学会は、肥満を「病気」として認識させ
 「肥満が治療できる」
 という意見を出すのが目的なのだそうです

 そうなれば、会員団体たちは
 「肥満という病気」を治すための薬品や食品を売り付けることができる
 学会は、これらの販路を拡大させるビジネスチャンス
 この売り込みに必要なのが「科学」というお墨付き、のようです

 どのブースでも
 「これは9000人を対象にした研究の結果です」
 「2型糖尿病、インシュリン療法の研究をしています」
 「クルミを全く食べない人と比較して、血管の弾力を与えることを証明した」
 など、「科学的な根拠」を話しています

 しかし先の栄養学者ウーヴェ・クノップ氏は
 この「科学的な研究」に疑問符がある、とのこと

 例えば被験者にアンケートをとって何を食べたか聞くとしても、
 それは事実なのかごまかしているか分からない
 しかし研究者たちは、
 その人たちが10年後長生きしているかなどを調べ、
 アンケートを根拠に
 「バナナを食べる人は長寿だ」とかいうような結果を導くそうです

○肥満症ガイドラインはスポンサーの意向も入っている
 ドイツには肥満症ガイドライン、というのがある
 この団体は、
 体の脂肪を減らすためのいいダイエットとは何か、
 の指針を示しているそうです

 この団体について、色々なダイエット療法に批判的な科学者イングリット・ムールハウザー氏(ハンブルク大学)は
 「肥満症ガイドライン作成委員が中立ではない」
 と指摘している

 彼女によれば
 作成委員にはダイエット企業と関わっている人もいて、
 それらの企業に有利な内容をガイドラインに反映させることはありうる、としている

 作成委員は6人からなるが
 うち4人は企業の役員になっていたり、研究費をもらっていたりするのだそうです

 栄養学者も
 「ガイドラインにスポンサーの意向が反映されることはありうる」
 と話していました

 そのうちの一人ハンス・ハウナー氏
 (ミュンヘン工科大学教授、ドイツの栄養学の権威らしい)に話を聞くと
 彼は
 「肥満症ガイドラインには長所も短所もある、それは他のガイドラインも同じ」
 「肥満療法の85%は、厳密な意味では科学的な確たる証拠はない」
 「肥満学会は本来は検証せねばならないが、
  多くは経験に基づく結論なので検証するのは難しい」
 と認めていました

 彼によれば、
 どの療法も、全ての人に有効とは限らない、それは仕方ない、とのこと。
 また、ほとんどのプログラムは、一年で参加者の3、4割が脱落し、
 対象者が減ってしまうので結果に疑いが出てくる
 研究そのものに限界がある、
 というような話をしていました

 また、彼がスポンサー企業からお金をもらっていることについても
 「仕方がない」

 科学者にとって研究費用を出してくれるのは、
 これらスポンサー企業しかないのだそうです

○実験にも意図が入れられる
 さて、このドキュメンタリーのディレクターたちは、
 先のフランク医師やムールハウザー氏に協力をお願いし
 にせのダイエット療法をでっち上げようと考えます

 先のムールハウザー氏は
 「実験の際は、被験者をグループ分けするが
  ここで意図的に分けることができる」と指摘

 被験者には、真面目で指示にちゃんと従う人もいれば怠けたがる人もいる
 しっかり協力してくれる人を介入群(効果を出したい方)に入れれば、効果は出やすいとのこと
 そこで導入期間を設け、被験者候補を見極めるのだそう

 彼女によれば、
 「ダイエット法を挫折する理由は
  お金がかかる、効果がでない、嫌になる…などです。
  やめた人たちは戻ってこないため、その分データは減ってしまう
  そこで研究者たちは、彼らが止める直前のデータを、
  最終データとして使っている」
 つまり脱落者、真面目に参加しない人がいても、研究は成立するそうです

 この方法は、肥満学会の推奨する療法の根拠となる研究でも使われているのだそう

○ダークチョコを使ったにせ実験
 さてディレクターたちは、先のフランク医師の協力のもと、
 にせのダイエット療法を作る実験を行います

 目をつけたのはダークチョコ
 被験者は16人、期間は3週間
 (被験者にはでっち上げだとは知らせない)

 参加した人のなかには、
 本気で痩せたい人もいれば、
 小遣い稼ぎのつもりの軽い気持ちの人もいたそうです

 彼らは被験者を3つのグループに分ける
 A 低炭水化物+チョコ(朝晩カカオ83%の板チョコレート半分ずつ食べてもらう)
 B 低炭水化物のみ
 C なにもしない
 グループ分けは番組ディレクターたちは参加せず、フランク医師が行ったそうです

 被験者には最初に
 健康や精神状態、睡眠の質などについて、
 質問事項に答えてもらう
 体重やお腹回りなどを測定
 毎日尿検査し、
 採血検査も行う

 論文に載せるため、なるべくたくさんのデータを取るそうです

○なぜ痩せたいのか
 ここでコラム的に、人はなぜ痩せたいのか?
 という話をしていました

 フランスにはデュカン・ダイエットなるものがあるそうですが
 その提唱者のデュカンさんに話を聞くと
 「女性はスリムな方が成功しやすい」
 とか言っていました

 スリムな女性は魅力的、
 彼の主観では女らしい方が自然なんだそう

 デュカン・ダイエットというのは厳格だそうで、
 最初の数日間はタンパク質、その後は野菜
 あとは週1でタンパク質をとる
 これを長期間続けるのだそうです。
 体重が少しでも増えたら責められる
 (かなりきつそう…)
 「太りすぎは内臓に良くないから継続せねばならない」とか。

 しかしこの方法で、健康状態を悪化させた上、精神的に追い込まれた人も少なくないらしい
 他の医師は
 「世の中のダイエット至上主義をやめるべき」
 とまで言っていました
 彼によれは、
 ダイエットで痩せたとしても1年くらいしかもたない
 痩せるべきという考え方は、
 人々の心理的な不安を増やし、混乱させるだけ
 とのことです

 たしかに痩せようと悩むより
 人生楽しんだ方がよっぽど幸せかも…

○被験者へのインタビュー
 さて、ディレクターのにせ実験にどんな人が参加しているか話を聞いていました

 ・Bグループに入れられた女性
  彼女はチョコが好きで、
  「チョコが食べられなくて残念」と話していました
  もともと低炭水化物食なので、
  食生活も体重もあんまり変わらないそうです

 ・Aグループに入れられた女性
  彼女は色んなダイエット方法を試したやや年配の方でした
  彼女によれば、何をしてもリバウンドしてしまうのだそう
  同い年の有名人がスリムなのを見て、羨ましく思うそうです

 ・Aグループに入れられた女性
  彼女はそんなに太っているようにも見えませんが
  いつも痩せなきゃと思っているそうです
  今回も、1㎏は痩せたけど満足しないそうです
  朝はチョコだけ、真面目に取り組んでいました

○結果を操作する
 実験開始後、3週間
 脱落した人はいないが、2人脱落したことにしたそうです
 (それらしく見せかけるため)

 またB、Cグループには、体重測定前に水を飲んでもらう
 (体重を文字通り水増しするため)

 また協力した医師の提案で
 2番目の数値を採用する、
 3日ごとの記録にする、
 など統計上の細工をすることにした

 そこで、統計学のエキスパートに嘘にならない程度に細工を頼んだそうです
 (依頼した学者は、本業は金融アナリストだそうですが…)
 「チョコレートに効果があると示せるようにしたい」
 と頼んだら
 「分かった」と言っていました

 1グループ4、5人しかいないのでバラバラなデータになるそうですが、
 しかしこれを統計のマジックで
 「Aは体重が減っている」
 「Cは増えている」
 などと都合のいい結果になるようにして
 (ただし、実際の結果から都合のいいものを選んだだけで、捏造はしていないらしい)

 これを英語の論文にしてプリントアウトしていました

○科学雑誌に掲載する
 これをどう公表したら効果的なのか?

 栄養学者のクノップ氏に聞くと
 「科学雑誌への論文掲載は絶対条件」とのこと

 一度掲載してしまえば、
 プレスリリースに、
 「どこそこの雑誌に論文が掲載された」
 と堂々と言え、何でも書けるそうです
 元論文までいちいち確認する人はいないから
 メディアはプレスリリースをそのまま転載し
 「ダークチョコでダイエット」
 の記事を大々的に書いていくだろう、とのこと

 また、先に出てきたジョン・ボハノン氏
 (ハーバード大学の方だそうです)
 に「ピア・レビュー」の雑誌に載せるにはどうすればいいか相談したそうです

 これは、正式発表前に研究がいいかどうか、
 第三者の専門家に精査してもらうための雑誌

 彼はオープンアクセスジャーナル
 という、ウェブ上で無料でも掲載できる雑誌を提案していました
 無料でも見られるので、色んな科学者の目に留まる確率が高くなる

 そしてお金さえ積めば、いい雑誌にも掲載できるそうです
 また、お金を払えばいい雑誌の共同執筆者にもなれるそうで
 中国では盛んなのだそう

 数年おきに、このような不正は発覚し問題になるが、
 それは氷山の一角だろう、と話していました

 …これらのアドバイスを受け、
 ディレクターたちは
 「ダイエット&ヘルス協会」
 という団体を立ち上げ、シンプルな英語のウェブサイトを作る
 (自称「健康科学シンクタンク」だそうです)
 論文を30のオープンアクセスサイトに送ったそうです

 すると、いくつかの雑誌から掲載の依頼が来たそうです
 なかには100ドル払えば掲載する、という雑誌もあり
 責任者はパキスタンの教授
 どう見ても関係なさそうな分野の方なので
 金儲け目的だろう、と話していました

 結局、
 「International Archives of Medicine」
 という有名なジャーナルに載せたそうです
 ここまで半年かかったらしい
 (大がかりなでっち上げですね…)

○公告作戦
 ボハノン氏に、さらに目立つ方法を聞くと
 「プレスリリースが重要」
 とのこと

 魅力的なタイトルを載せ、
 話題性を持たせること、
 資金があると尚良い。
 見映えのするイベントに参加し、派手な公告を打ち出せば話題になる、
 内容はともかく、いわゆる「科学的なもの」として人々の頭に浸透していく、とのこと

 アドバイスを受け、彼らはblogも立ち上げる
 「チョコレート・トランスフォーメーション」というキャッチコピーを使用
 Facebookやファンのページも立ち上げたそうです

 「科学者が異論を挟まないことを祈るばかり」とは話していましたが…

 彼らは悪ノリ?して
 ビキニ姿の女の子を使った宣伝用の動画も作る
 「健康でスリムって最高!
  それが「チョコレートトランスフォーメーション」」
 みたいな感じのキャッチコピーを言ってました
 (ちなみにこの子は他にも色んな怪しいダイエット商品の宣伝に出ているそうで
  出演料は15ドルだそうです)

 他にも
 「リバウンドにさようなら」と話す女の子たちの動画、
 Facebookにさくらを混ぜる、
 飛行機の機体に宣伝の公告をつけているかのような動画、
 テレビのスポットCM、
 …などなど、あらゆることをやりまくる
 (ディレクター仲間は「彼が予算を使いきらないうちに止めなければ」とボヤいてましたが)

 テーマソングも作る
 バラード調で女性が歌うもの ラッパーの男性が歌うもの
 フランスにも公告を出す

 さすがにメディアのプロだけあって、宣伝作戦は多種多様ですね。

○世間の反応
 …しかし、しばらくは反応なしだったそうです
 一部のblogが取り上げる程度
 ドイツのジャーナリストたちに
 「リバウンドの代わりにチョコを」
 というプレスリリースを送ったが、なにもなかったそうです

 しかし。

 ドイツの一番売れているビルト紙が、
 なんと一面で取り上げたそうです
 タイトルは
 「何という美味しい研究、
  チョコレートで痩せるなんて」
 その後、他の新聞やテレビ、女性誌などでも取り上げられるようになる

 さらに、イギリスやアメリカにも送ったところ
 イギリスの新聞が
 「世界はカカオに夢中」
 と取り上げる

 他、インドでも有力新聞が取り上げ、他のメディアも追随
 オーストラリアでも女性誌で取り上げられる
 ロシアなども取り上げたとか

 アメリカはさすがにしばらく反応が無かったが
 イースターに乗じ、
 ネットテレビ局が取り上げていたそうです

 しかしこれだけでっち上げ記事が広まっても
 協力した医師は
 「害はない、おやつになった程度」と話しています

 画鋲を腕に刺す、とか、危険な話を推奨するなら問題だろうが、
 それでも同じように広まるだろう、と話していました

○被験者に真実を告げる
 これだけ広まって作戦成功、となったところで
 被験者に医師が一人一人に種明かししたそうです

 リバウンドに悩んでいた女性は
 「意地悪ね」とコメント。
 彼女は実はチョコはあまり好きではなかったらしい。
 「カカオ83%のチョコなんか不味いわよ」(笑)

○まとめ
 ディレクターたちは
 「我々の記事は美味しいダイエット、として何百万人が信じてしまった、罪悪感を感じる」

 「そうかな?僕はジャーナリストが一人として真実を調べなかったのが問題だと思う」

 「そんな必要ある?メディアは売れればいいのよ、
  それにそういうことは今までにもあった」

 「ダイエットビジネスは胡散臭い、
  ジャーナリストは売れるからとそれに手を貸している、
  科学者と企業もみんな、それを利用してもうけている」
 と話して終わっていました

○感想など
・このドキュメンタリーで、
 日本はスルーされていたのが納得いかないが(笑)

 それはさておき、
 この番組は最後チョコレートダイエットは嘘でした、
 となっていましたが
 実際はダイエット効果がある、という話は最近出ていますね。

 ただしそれはやり方があって、
 高カカオ(含有率70%以上)、
 砂糖が少ないものを
 食前か食後に少しずつ食べる、
 というもの…

 チョコダイエットのメカニズムは色んなサイトにありますが
 例えばhttp://rakuyase-diet.jp/archives/10266
などでは
 ・血糖値を上げる
 ・食物繊維でお腹が張る
 というものがあるようです。

 チョコに含まれる糖分で、食前にちょっと食べて血糖値を上げて、
 他のものを食べるのを抑えられる。
 あるいは食後にちょっとだけ食べれば、
 食べたりない感を満足させられるのだそうだ。

 また、高カカオ含有率のチョコ50gには、1日に必要な食物繊維の1/3が取れる、
 というほど繊維が多いのだそうだ。

 まぁ、いずれにしろ食べ過ぎは駄目ってことですね。
 しかもカカオ含有率の高いやつって、値段も結構するのよね…

 その他、チョコレートは健康にもいいという話があります。
 というか最近はそっちがメインかな?
 例えばさっきのサイトでは
 ・免疫力アップ
 ・肌を綺麗にする
 ・シミを防ぐ
 (これらはいずれも、
 カカオのポリフェノールの抗酸化作用、炎症を抑える働きによる)
 ・腸内細菌を整える
 ・善玉コレステロールを増やす
 ・血液の酸化を防ぎ、サラサラにする
 ・セロトニンというホルモン(幸福感に関係する)を高める
 …などの作用がある、と書かれていました。

 そのほか、チョコレートが健康にいいことを示す研究が日本で行われた、
 というサイトもありました

 http://www.meiji.co.jp/chocohealthlife/news/research_final.html

 では愛知学院大学と明治の共同研究で、
 蒲郡市の45~69歳の350人くらいに
 カカオ75%のチョコレートを
 1日5g×5枚、4週間食べてもらい
 食べる前と後で血圧や血液検査をして比較した、という研究があります

 (これも企業がらみなので、
 結果がいじられている可能性はありますが)

 それによると
 ・血圧低下、
 ・HDLコレステロール値上昇
 ・「BDNF」(脳由来の神経栄養因子、脳の神経などの再生や新生に関わるらしい)
 が増えた、
 ・動脈硬化の指標となる炎症、酸化の指数が、元々高い人に関しては減少した

 などの結果があるそうです

 他の研究にも、カカオのポリフェノールは
 脳の血流を増やし、認知症を防ぐ、
 などの働きもあるそうです

 最近はダイエットっていうより
 健康効果で大公告を打っている感じですね。
 まぁ、古代ではチョコレートは医薬品だったんだから
 体にはいいんだろうけど。

・しかしそれよりも興味を持ったのは結果の操作の過程です。
 私は雑誌に論文を投稿したことはないが
 論文を書いたことはありまして
 データの中でストーリーに一番合いそうな写真を選ぶ、
とかいうことはたしかにするなぁと思いました。

 薬品会社の治験とかも、データを変えていたという事件もあるし、
 スポンサー、あるいは望む結果に合うように操作する
 というのは珍しくないんだろうなと思いました。

 それにたしかに科学者は研究費を確保するのが大変で
 大学でも先生方が奔走しているのをよく目にしました。

 それにしても、広告の打ち方はやりたい放題?
 信じてしまった人には申し訳ないが、
 見ていてこうして事実は作られるのかー、すごいなーと思ってしまった。

・番組の最後に、ディレクターさんたちが
 「科学を利用して、科学者も企業もジャーナリストも金儲けしている」
 と批判的な言葉を言っていましたが
 私は個人的にはそれで経済が潤うならそれもありなんじゃ、
 と思ったりします…

 消費者もこういう健康に関する研究は絶対なものとして受け止めるのではなく、
 1つの参考、エンターテイメントとして受け止めればいいのでは、と思うのですが。

 その上で、リンゴダイエットだの納豆ダイエットだの出て、
 また面白いの出てるな~とか楽しんで、
 その商品が買いたければ買えばいい、でも買う必要もない。
 それで儲かる人がいればそれはそれでいいんじゃないですかね。

 番組の途中で、
 ガイドライン作成の方が
 「みんなに効く健康法、ダイエット法はない、それは仕方ない」
 と言っていましたが、
 それはそうだと思います。

 なのでそもそも万人に効くダイエット法、健康法、
 あるいは楽して痩せる方法
 なんてのを求める方が間違っているんじゃないかなぁと思うのです。

 自分の体を観察して、
 こういう状態なら何を食べたらコンディションが上向くか
 自分の責任で管理するしかない。
 その上で、新しいダイエット法が合いそうなら試せばいい。
 消費者が冷静になることが
 これらの捏造?が減る1つの手立てにもなるし
 自分の体も健康に保てるようになる近道だと思います。

・まぁとはいえ、楽して痩せたいな~って気持ちもよくわかる。

 こういうダイエット法にすぐ飛び付いてしまう心理は何なんだろう、
 という角度からアプローチしていくのがいいのかもしれない。

 そうしていたら、実はストレスが溜まっていたと気づいたり、
 この前オイコノミアでやってたみたいな、
 行動心理学的な対策(高カロリーのものを近いところに置かない、とか)
 ができるのかも。


 科学は無条件に信頼したくなりますけど、
 情報の受け手も疑うこと、一歩引いて冷静になること、が大事ですね。

 私もネットで調べるとき
 一応元ネタも探しますが
 最後に自分に取り入れるか決めるとき、信じるのは自分の感覚です。
 そんな風に、これからも賢く情報と向き合っていきたいなと思いました。

というわけで今回はこの辺で。



posted by Amago at 21:28| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする