2017年10月16日

Eテレ「人間ってナンだ?超AI入門「第2回 感じる」」

Eテレ「人間ってナンだ?超AI入門「第2回 感じる」」

全12回シリーズでAIを感覚的に理解する番組。

今回は「感じる」というお題だったので、感覚器官の話かと思っていたのですが、
動く、試すなどの能動的な行動も含めた
「身体を通じた経験」
の話でした

人工知能云々より、人間の知性って何なんだろうと考えさせられる内容でした。

出演はチュートリアルの徳井さんと東大のAI研究者松尾豊氏、
ゲストは元陸上選手の為末大さんでした

○なぜ人間は荷物だけを運べるのか
 最初に、テーブルの上に荷物が置いてあり
 松尾氏が
 「荷物を取ってもらえますか」と二人にお願いする

 よく見ると、段ボールの荷物の上にダイナマイトみたいなのが置いてあり、
 徳井さんはそれを取り除いて荷物を運ぶ
 為末さんも同じ

 松尾氏は
 「スゴいですね~」

 「何がですか?」
 「荷物のことしか言っていないでしょう?
  でもお二人はダイナマイトを取り除いて荷物だけを取った、それはなぜですか?」
 と尋ねました

 徳井さんは
 「うーん、我々は普通、爆弾を荷物として認識していないから?」

 松尾氏は
 「ロボットの場合はですね、
  何も言わないと上の爆弾も一緒に運んでしまいます。
  では荷物だけを運ぶようにするにはどうしたらいいですかね?」

 為末さんは
 「荷物以外のものを運んじゃダメ、て命令すればいいんじゃないですか?」

 しかしそうすると、AIは目に入る全てのものについて
 これは荷物かどうかをいちいち判断するのだそうです
 よくよく見たら、机の上にはペンとか他のものも置いてある。AIはこれらもいちいち検討する。
 また、もし荷物が机に貼り付いていたら、どうしたらいいか、
 などの可能性も含めて考えてしまうらしい。
 現実には、そうして全て計算しているうちに爆弾が爆発してしまう

 これは「フレーム問題」と言うもので
 ある哲学者が提唱した問題らしい

 例えば荷物に爆弾が仕掛けられたら、
 人間なら何も言われずなくても爆弾を外すが、ロボットは一緒に運んでしまう
 かといって、爆弾が爆発するかも、
 など想定できる事態を全てインプットしてしまうと
 今度は
 「天井が落ちたらどうしよう」「窓が割れたら…」
 とか起きそうな確率の低いことまで考えてしまう

 つまりAIは、全てのことについて同等の重要性で考えてしまい、
 問題解決に必要なフレームを持てない、という問題があるそうです

 では何が重要かを、我々はどうやって判断するのか?
 為末さんは
 「うちに今2歳の子供がいるんですけど、
  あれは荷物だ、あれは爆弾だとか名前付けして教えている
  それと同じなのかな」

 松尾氏も「そうですね」
 子供は遊んだりものを投げたり触れたりして
 物に対し何をしたらどうなるかを学んでいく

 つまり我々は周囲との相互作用を繰り返し、
 五感を通した経験を通じて物事を学んでいくのだそうです

 なので最近は、感覚が知性の発達には重要ではないか、
 体のない知性はあるのか、
 という話が出ているそうです

○五感を備えたロボット
 今年の7月、名古屋で、ロボットが箱の中から決められたものを出す動作を競う大会が開かれたそうです

 参加した日本のチームのロボットは
 視覚センサーを使って箱の中のものを認識し、
 物の中で掴みやすい場所(平坦かどうかなど)を数値化するのだそうです
 そうしてスコアの高い場所にアームを持っていきつかむ、ということを行っているらしい

 日本チームの方によれば
 今後は触覚センサーも着け、
 物に触れた部分の情報で、状態が分かるようにすることを考えているそうです

 これからは、五感を備えたロボットが生まれるかも、とのことです

○動作を学ぶには経験、試行錯誤が大事
 カリフォルニア大学バークレー校で、
 ロボットに物をつかむ学習をさせる研究をしていました

 この研究の代表者ケン・ゴールドバーグ氏によると
 ロボットがものを掴むとき、
 まずつかむ対象について三次元的なイメージを作る必要がある
 重心はどこか、摩擦はどれくらいかなど色んな力学をまなばねばならない

 さらに、そのあと膨大な面の中から、ペアになれる面の組み合わせを探し、
 その2つの面で挟んだときの微妙なバランスのズレなども調べ、
 兆単位の組み合わせから最適なものを選ばねばならない、
 とのことです

 松尾氏の解説によると、
 人がこういう選択を瞬時にできるのは、
 赤ちゃんの時にものをつかむことをたくさん練習しているからなのだそうだ
 赤ちゃんは何回もつかんで落としてを繰り返し、どこをどうつかめば落とさないかを学習していく

 徳井さん
 「赤ちゃんって、ある年齢になると何でも触りたがるけど、
  それはデータを収集しているんですね」

 人工知能も赤ちゃんと同じで、
 何をしたら何が起きるかを学ばねばならない
 ものをつかむには、色々試して、色々失敗しなければならないのだそうです

 つまり学習にはたくさんの経験、失敗が必要なのですね。

○形容詞的な概念
 他に、経験や五感がもたらすものとして
 「副詞、形容詞」の概念があるそうです

 松尾氏は机の上のものについて
 「このロボットは大きいですか」
 「このペンは大きいですか」
 と二人に尋ねていました

 「このロボットは小さいですね」
 「このペンは太い」
 などと二人が答えると
 「じゃあなんで大きい小さいが分かるんですか?」

 「うーん、ロボットって普通もっと大きいし…」
 「色んなペンを知っていて、
そのなかで見たら太い方だから」

 松尾氏によると
 つまり大きい小さいが判断できるのは、他にも色々な物を見た経験があるからで、
 我々は経験を積んでこれは大きい、小さいを学び、
 知識を蓄積していくのだそうだ
 逆にいうと、人は経験の積み重ねがないと判断ができない

 「例えば、お客さんがよく笑う方かどうかも経験で分かりますよね」
 と徳井さんに聞いていました

 徳井さんによれば、芸人さんの間では「重い客、軽い客」といって、
 なかなか笑わないお客さんには
 「今日のお客さん重いなぁ」
 と感じて、
 「本題に入る前にこっちから寄っていって、お客さんを起こしてから本題に入る」
 のだそうです

 松尾氏は
 「そういう風に、いつもと違うことをするとか、
  行動に対しての相対的な評価が副詞的な概念なんです」

 人工知能、ロボットの場合も、
 自分で歩く、あるいは歩くのを見るなどの経験がないと
 速い遅いの判断もできない
 つまり体の経験が知性の本質ではないか、とのことです

 松尾氏は
 「体がない知性、例えば脳だけの人間、ていうのがいるとして、
  その人間が理解できる世界はどういうものだと思いますか」
 為末さん
 「全部記号みたいになりそうですね」
 歩くとはこうだと言われてるからこうすることなんだと判断する、
 みたいな、情報のコピーだけする、
 理解のない知性みたいなもの…
 「知能としてはお粗末な感じですね」

 体験がないと判断の尺度が自分の中にできない、己の尺度ができない、ということなんですね。

○経験を模倣学習する
 先のケン・ゴールドバーグ氏の話によると
 掴む過程の学習は難しいが、
 他の人の動作を分析することで、
 動作の仕方を学ぶことはできるそうです

 例えば手術ロボット
 縫合の作業は患者が変わってもだいたい同じで
 この作業を観察することでやり方が学べる

 これは「模倣学習」といい
 ディープラーニングでも行われているらしい
 この模倣学習では、
 ・動作のデータを集め、
 ・動きを部分(セグメント)に分け、
 ・セグメントごとに動きを学ぶ、
 ・それを後から一連の動作に統合していく
 という手順で学べるのだそう

 徳井さん
 「ハードルも、為末さんのやり方を見ることで、為末さんの経験が受け継げるってことですね」
 松尾氏は
 「ただ、模倣は最初からはできないですよね。
  真似するには何が必要なんでしょう」

 為末さんは
 「うーん、こうすると自分の体がこう動くと分かることと、
  あとはあんな風に動かせば体の動きがこうなる、と頭の中でシミュレーションできることですかね」
 つまり自分の身体感覚と、
 人の動作を見て頭の中でイメージする動作、
 この二つの関連付けができないといけない

 これは脳にとっては難しいそうで
 猿にはできるが犬、猫にはできないそうです

 松尾氏によると、
 模倣は脳が短時間で効率よく学習するための仕組みで、
 人間の脳はこのように効率的に学習する仕組みをたくさん持っているそうです

 そう言えば昔BSの番組で
 (NHK BS世界のドキュメンタリー「勝てる脳の秘密~完璧なアスリートを目指して~」)
 スポーツ選手の能力をイメージトレーニングやシミュレーションでアップさせる、
 という話をしていましたけど
 あれも「模倣学習」ができる人間だからこそなんですね。

○チャンク化
 為末さんは
 「大人は考えなくても物を掴むなどができるけど、それはいつ頃からなのか」と聞いていました

 松尾氏によると、
 人間の脳は、何回も経験を重ねていくと、
 こういうことをするとこんなことが起きそうだ、
 というような予測や計画が立てられるようになるのだそう

 そして、その際脳の中では、
 行動の「チャンク化」が行われている、という。

 チャンク化とはなにか?

 例えば赤ちゃんは、物を持つとき
 「手を近づける」「手を広げる」「手を閉じる」「腕を上げる」
 など色んな作業をいちいち考えないといけないが
 大人は全部をひとかたまりで「持ち上げる」作業と捉える
 そこから、「持ち上げて」「ここに置く」という、より複雑な作業ができるようになる

 為末さんは
 「これはスポーツでも同じ感じですね」
 スポーツでも最初は個々の動きをバラバラに考えるが
 そのうち感覚的に「シュッと投げる」という風にできるようになるそうです

 自転車や車の運転など、
 体と結び付いた記憶(手続き記憶)は衰えにくい
 という話を聞いたことがありますが
 チャンク化されているからなのかな?

○「感じる」と「考える」の関係
 松尾氏は為末さんに
 「為末さんにとっては、頭の中で動作を考えることと
  身体を動かすことは、どういう関係ですか?」
 と聞いていました

 為末さんは
 「ハードルの練習をするときは、
  最初は思いきり飛ぶ練習だけで、その時は腕の動きとかは考えない。
  それから止まった状態で腕の動きを学ぶ。
  それから動きをつなぎあわせて、最後はイメージだけで跳ぶ、という感じです」

 松尾氏
 「じゃあ感じることと、考えることの関係は?」
 為末さん
 「??感情は受け身、考えるのは自分から、て感じですよね…」
 松尾氏
 「バラバラですかね」

 徳井さんは
 「でも野球で打つときは、瞬間的に撃ち方を判断しているようで
 実際は何キロのボールが来てます、腰の回転はこうです…とか判断している、
 そうなると考えるのと感じるのとどこに境界があるんか分からなくなりますね」と話していました

 松尾氏も「そうですよね」
 例えば野球選手は球を撃つとき、
 ランナーがいるから右に飛ばそうとか、カーブだからタイミングをずらそうとか瞬時に考える
 「その時の考えるタイミングと、無意識に撃つ動作との関係はどうなんでしょう?」

 為末さんは
 「うーん、スポーツ選手の場合、
  「考える」は後から来ることが多いんじゃないですかね」
 やってるときは感覚的にやって、
 後から何でうまくいったんかな、こうしたからかなとか考えて
 次にじゃあこうしてみようと考える、
 感じるのと、考えるのには時間のズレがあるのでは、
 と話していました

 (そう言えば、昔一流スポーツ選手はどう身体を動かしているか、
 という本を読んだことがありますが
 (「一流選手の動きはなぜ美しいのか からだの動きを科学する」小田 伸午)
 「スポーツでは、科学的に分析した客観的な動きと、実際動かす本人との感覚にはズレがある」
 と書かれていました。
 スポーツの場合、動作をバラバラに考えてそのまま動かすと、
 タイミングが遅すぎてしまうのだそうです。
 つまり1つ1つの動作を考えて動いていると遅すぎになってしまう。
 (例えば野球の外野の人が、ボールを投げるタイミングを気持ち早めにした方が遠くに投げられた、という話。
 ただし早めにするのはあくまで主観的な感覚の方で、実際の体の動きはそれとは別)
 これは、考えるという行為は、感覚とか動くより時間がかかる、ということなんだろうと思います)

○感じる、行動するのが先、考えるのは後?
 松尾氏は
 「「考える」は「感じる」ことをブースト、加速させるという考え方があります」

 最近の脳科学では
 「脳が考えて体を動かす」のではなく
 「体が動くから、脳が動かした、と感じる」
 という考え方があるそうです

 神経科学者のベンジャミン・リベットの実験によると
 人は、動作をする0.2秒前に意識的な決定をするシグナルが脳に出ているが
 さらにその0.3秒前には、意思決定に関わる無意識的な脳の活動があるのだそう
 つまり、我々が意識する前に無意識の領域で行動は決まっている

 松尾氏は
 会社の取締役と現場の従業員、という例えをしていました
 脳は取締役、体は現場
 取締役は、だいたい大雑把な方針を決めるだけで
 現場が細かいことを決めている
 なので現場のことは取締役は詳しくは分からない
 ほとんどの行動が無意識なのはこのため

 しかし問題があったら上に上がってくる
 だから意識的な行動とは、よっぽど大きな問題が起きている時ではないか、とのことです

 為末さんは
 「反射系のスポーツ、バトミントンとかだと、
  考え出すとうまくいかなくなった、ていう話があるんです」
 これは先の例えでいうと、
 社員だけでうまくいってたのに
 取締役が出てきてゴチャゴチャ言うから現場が混乱する、
 というのと同じことではないか、と話していました

 うまくいっている会社なら現場が何も言わなくても適切に働いてくれる。
 これは現場をちゃんと訓練しているからそうなっている。
 一流のスポーツ選手の体でも現場は勝手にうまいことやってくれている、ということなのかな?

 それから為末さんは
 「考えなくてうまくいっていた選手が
  考え出すとうまくいかなくなる
  でもそこを乗り越えて考えたらまた強くなる、っていうのはよくある話なんですよね」

 いわゆる、天才がスランプに陥るパターンですね…

 これは脳科学的にはどういうことか?
 松尾氏の分析では
 考える、言葉にする、
 というのは抽象化し、要約すること、
 つまりいったん情報を削ぎ落とすことなのだそう
 しかしその代わり、保存性はよくなる

 情報を落とすのは一見効率が悪いが、
 知識を保存しやすくすることで、
 細かく情報を分解して効率的な方法を考えられるし、
 経験を蓄積したりできるのだそうです

 だから、スポーツ選手も
 感覚的にやってたことをうまく頭で要約できれば、
 改善もできるし、再現もしやすくなるのだろうけど
 その過程で間違って必要な情報も落としてしまったらうまくできなくなる、
 ということかなと思います

 為末さんは
 「じゃあ人工知能で、動きのまま削ぎ落とさずに保存できたら、また違う動きができるかもしれないですね」
 松尾氏は
 「そうですね、それは面白いかもしれないですね」

○テレポーター
 次に、番組の冒頭からずーっと置いてあったロボットについて。

 徳井さんがこのロボットと会話していましたが
 会話の仕方がなんか人間臭い。

 このロボットは、実はネットとつながっている
 つながった先の端末を使っている人は、ロボットの経験を体験できる

 例えばロボットの目に当たるところにはセンサーがあるが、
 端末の使用者はゴーグルのようなものを被り
 ロボット目線のものを同じように見ることができる

 また、ロボットに握手すると、使用者の所にも対応するセンサーがあってその感覚が分かるのだそうです

 開発者の方によれば
 「使用者がどこにいてもロボットが身代わりになって色んな人に出会える」とのこと
 テレポーテーションしているみたいなので、このロボットは「テレポーター」と言うのだそう

 今はロボットが体験したものを使用者が遠隔で感じられるだけだが、
 使用者がロボットに自分の動作や思考などを学習させ、それを蓄積していけば
 自分の身代わりロボットにできるのでは、とのことです

 極端な話、自分がいないときや、死んだあとでも自分のアンドロイドみたいに振る舞えるかもしれない、
 そうすると死ぬことに意味が無くなるかもしれない、
 とのことです

○2分で分かるディープラーニング
 毎回動画でやってる、ディープラーニングについて学べる動画です。
 今回は重み付けのことで、
 情報の重み付けが強いほど次の層に太い線で伝わり、
 太い線ほど次の層を強く活性化する、
 とかいう話でした
 (ホームページからも見られます)

○まとめ
 最後、「人間ってナンだ?」
という質問に
 為末さんは
 「自分を知らない生き物」
 自分は自分のことを知っていると思っていたけど、大きな勘違いだった
 知能は、体が無意識にやっていることに支えられているけど、
 そのやっていることを自分は何も知らないんだ、
 と思ったそうです

 徳井さんは
 「データの集合体プラスアルファ」
 人工知能は人間に似ているけど、
 人間が作るからそれは当たり前で、
 でも人工知能に加わるプラスアルファがあるから人間になるのかな
 …という感じの感想でした

 松尾氏は
 人間が意識しているのは得ている情報の一部に過ぎない、
 我々を構成するほとんどは、
 無意識で感じていることだ、
 と話していました

 今まで人間は考えることが知性、と考えられてきた
 人工知能の分野でも、考えることがクローズアップされてきた

 しかし、「考える」は
 たくさんの無意識的な「感じる」に支えられているんだ、ということだそう

 為末さんは
 「「感じる」とは「データを集めること」
  「考える」とは「データを編集すること」
  でも元のデータがないと、考えることも何もできないんですね」
 と話していました

○感想など
・人工知能って体要らなくない?と個人的には思っていたのですが
 (ロボットは人間が安心するするためのものくらいに考えていました)
 それだと、いつまでも人間がデータをいれてあげないと判断できない子になっちゃうんだなぁと思いました。体って大事なのね。

 でも人工知能が感覚を感じ始めたらどうなるんだろう。
 大きい小さいみたいな、
客観的な程度の判断だけできるならいいけど、
 善悪とか快不快とか、好き嫌いが出来てくるのかな。
 そうなると「こんなことしたくない」とか言い出しそうでめんどくさそう…
 主観的な好き嫌いの判断とか感情も感覚から来るんだろうか?と思いました。

・最初のフレーム問題でも、後半のスポーツ選手の感覚を言語化するのも
 「情報を減らす」
 というのがキーになっているなと思いました。

 フレーム問題では、重要度の高い情報だけを見抜かねばならない。
 言語化の段階でも、色んな人の感性の中で、
 共通して理解できるような概念を抽出して共通の記号で表さねばならない。

 となると、情報を減らす、というのは人間特有の高度な知性の働きなのかなと思いました。

 というか、単に減らすだけなら誰でもできるんだろうけど、
 ポイントを押さえて要点だけ抽出するというのはとても難しい。

 人間でも文をだらだら書くのは誰でもできるが
 要点だけ押さえて簡潔に書くのは難しいですからね…

 それからフレーム問題を見ているときに思い出したのですが
 心理学や経済学に出てくる
 「ヒューリスティックス」というのも、
 情報を減らす行為なのかなと思います。

 ヒューリスティックス、は、
 (私の理解で書きますと)
 経験とか常識、感情で物事を判断する我々の心のクセみたいなもの、ですが
 ヒューリスティックスによると
 我々人間は、
 「よく見聞きするもの」とか
 「ありそうなこと」を選ぶとか、

 強い恐怖など不快な体験をしたものは避ける
 (逆に快いものは選ぶ)
 などという傾向があるようです

 これも、膨大な情報の中から必要そうな情報を選び、
 ほかの要らない選択肢は削ぎ落とす脳の働きの1つなのだろう、と思います

 ただ、ヒューリスティックスに見られるように
 人間の脳が削ぎおとした情報は、本当に要らない情報だったのかは怪しい所がある

 ここにAIの能力が入り込む余地があるのかもしれないですね。
 為末さんが言うように、
 落とさない情報も保つことができればまた面白いかもしれない。

 ちょっと前にNHKで、マツコデラックスさんとAIの番組があって、
 AIに情報を入れて社会問題を解決させる
という少々無茶ぶりした企画だったんですが

 番組を見ていたら、AIの出してくる答は人間の常識からしたら「??」というものがありました。
 これも、人間が常識とかで要らない、と勝手に判断したものを
 AIが削ぎ落とさずに持っていた結果なのかもしれない。

 人間とAIが補いあう、ていうのはこういう活用法もあるのかなと思いました。

 個人的にはAI自体にはそんなに興味がないんですが、
 (将来必要かなと思ってAI関係の情報は集めていますが)
 AIの研究を通じて、人間の脳や進化、発達などについてあぶり出されるのが面白いなーと思います。
 また次回も見たいと思います。

というわけで今回はこの辺で。
posted by Amago at 07:28| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年10月13日

NHKBS世界のドキュメンタリー「オーダーメイド・ベビー」

BS世界のドキュメンタリー「オーダーメイド・ベビー」

2017年フランス制作のドキュメンタリー。
生殖医療の問題を扱った番組で、
現在どこまで技術が進んでいるのかの紹介と、
命を選別していいのか、障害者の権利はどうなるのかなどの議論についてでした。

予想できる展開ではあったんですけど
SF小説のようなセリフを真面目に言っている人たちが
既に存在している事実には改めて驚きを感じました。

○生殖医療の現在
 体外受精は1978年、イギリスで初めて行われたそうです。

 それ以来、西側諸国では100人に3人が体外受精により生まれ
 それ以外の国でも1000人に3人が体外受精により生まれている。
 生殖医療の市場は年間200億ドルとも言われているそうです。

○インドのクリニック
 最近生殖医療で注目されているのはインド
 技術も高く、値段もお手頃だそうで、海外から不妊治療を受けに来る人が多い

 取材されていたクリニックでは
 レーザーにより着床を促したり
 卵子や精子を凍結保存するなど
 色々な治療法が選べるそうです

 普通卵子は一回の排卵周期で1つ排卵されるが、
 人工受精の場合は6個か7個1度に行う

 このクリニックでは、エンブリオスコープ、という顕微鏡があり
 全ての受精卵の胚分裂の様子をいっぺんに見られる。
 モニターにもつながっていて、
 全ての受精卵の生育状況が同時にリアルタイムで見られるようになっており
 育ちのいい受精卵を子宮に移植するのだそうだ

○デンマークの精子バンク
 この精子バンク(クリオス社)では、
 精子ドナーの履歴が見られるカタログがあるそうです

 カタログ(といっても電子カタログです)には
 ドナー男性の子供の頃の写真、
 親の国籍、心の知能指数、
 筋肉質かなどの体質、靴のサイズなんかも見られる
 ドナーの肉声も聞ける

 高い料金を払えばこのような詳しいプロフィールが見られるそうです
 40~1000ユーロまで値段設定があり
 安い料金の場合はドナーの情報は基本的なものだけらしい
 精子は液体窒素で保存されており、永久に持つとのこと

 代表の方によれば
 最高品質の精子を所有するため、
 ドナー希望者の中でも採用するのは10人に一人なのだそうです

 不妊カップルだけではなく
 独身女性、レズビアンカップルからの問い合わせもあり
 「需要と供給のバランスで、これは1つのマーケットです」
 だそうだ

 1つのマーケット、と言い切るのがすごいですね…

○ロスアンゼルスの卵子バンク
 精子バンクがあるなら卵子バンクもあるそうですが、
 アメリカのロスにある卵子バンクは
 経営者である女性の辛い体験から生まれたそうです

 彼女は子供を授かったが、早くに亡くなる
 そのあと授かりたかったが叶わなかったそうです
 彼女は自分のように子供が欲しいと願う人たちの手助けになりたい、
 と考えているそうです
 「親の経験がある女性として、
  子供を持つ喜びや、ドナーへの感謝の気持ちも分かる」
 と話していました

 ドナーとなった女性に話を聞くと
 「最初は病院で検査を受け、
  超音波で卵胞や生理周期のどのあたりかなどを調べる。

  そのあと、排卵誘発剤の注射を受ける
  たしか1日2回を7日間、
  そのあと1日3回を3日間だったと思う。
  効き目によってはトリガーショット、という注射を自分で打つこともある。

  卵子を取り出したあとは、回復するまで1日はかかる。
  人によっては2、3日。
  ヒリヒリするだけだけどね」

 このドナーの女性は3人子供を持つシングルマザーで、
 ありていに言えば金銭目的で卵子提供を行ったそうです
 3人の子供を持ちながら学校を出て、仕事を始めるくらいの時期だったので
 経済的には苦しかった。
 報酬で学業ローンの支払いができ、
 子供のための貯金もできた、と話していました

 また、別のドナーの女性は
 「ドナーになるときは、自分の子供、という意識を持たないこと」
 と話していました
 卵子を渡したらあくまでも生まれた子はその人の子供、
 自分は彼らが子供を持つお手伝いをしただけ、
 と割りきることが大事だそうです

○赤ちゃんの性別、瞳の色も選別できる
 カリフォルニア州の生殖医療研究所では、
 早くから受精卵の性別を選べる事業を行ってきたそうです

 この研究所の男性が説明してくださいましたが
 手法としては、受精卵から細胞を1つ取りだし、染色体を調べる
 胚は傷つきやすいので取り出す作業は神経を使うそうです
 性染色体を染め、XYなら男性、XXなら女性

 最近では瞳の色も選べられるそうですが
 それを発表したとき、バチカンから電話がきたらしい
 「彼らはとても丁寧な話し方で
  「瞳の色の選別はまだ社会が受け入れられていないから、慎重に進めてください」
  と話していました」

 しかし、彼によれば、瞳以外の選択は難しいそうです
 肌の色、知性などはまだ仕組みが解明されていないらしい

○天才精子バンク
 しかし1980年代には、ドナーの知能指数で精子を選別する試みがなされていたそうです

 カリフォルニアにあったこの精子バンク「天才精子バンク」は
 ロバート・グラハムという方が設立したそうで
 実際にこのバンクから精子提供を受け、自分が産まれた、
 という女性もいらっしゃいました

 彼女の父親は不妊体質だったそうですが、
 テレビでこのバンクが紹介されていたのを祖母が発見し
 提供を受けたのだそうです

 ドナー男性のことも分かっていて、
 名前、知性が高いこと、卓越した運動能力があること
 などは知っているそうです

 彼女がそれで優秀な方なのかどうかは番組で触れられていなかったので分かりませんが、
 彼女自身は
 「両親は私が小さい時からそのことを正直に話してくれた、
  でも自分にとっては奇妙でも特別でもない、
  私が存在するにはこれしかなかった」
 と話していました

 この精子バンクは、グラハム氏の死後は閉鎖されているらしいのですが
 グラハム氏へのインタビュー映像は残っていました
 
 この精子バンクには3人のノーベル賞受賞者や、
 20人ほどの優秀な遺伝子を持つ人たちの精子が凍結保存されていたらしい
 グラハム氏によると
 「若手リーダーの住所録から目ぼしい人を探し、
  その人に手紙を書いてドナーになってくれるようお願いした、
  1、2%の人は快く引き受けてくれた」とのこと

 彼は
 「建設的な生殖を進めていくことが、我々の使命だと思っている。
  優秀な遺伝子を残していくことが大事だ」
 と話していました

 「建設的な生殖」「優秀な遺伝子を残す」
 というのは、かつての「優生学」の考え方をほうふつとさせる

 生物学者のジャック・テスタール氏によると
 「優生学は、ダーウィンのいとこのフランシス・ゴールトンが提唱した考え方で
  「悪質な遺伝形質」を淘汰し、「優秀な遺伝子」を残すという考え方。
  この考え方は古代からあったにはあったが、
  1910年から30年代ではとくに盛んだった。
  このころの生物学者はみんな優生学者で、
  彼らの目的は人類を向上させること、
  遺伝子疾患のある子供が生まれないようにすることだった」

しかし、その「優秀な遺伝子」の選別はすでに始まっているのかもしれない…
という話が次になされていました
○受精卵の出生前診断
 スペインのバイオメディカル企業では、
 体外受精の受精卵を移植する前に、遺伝的な検査を行っている
 これはPGE(出生前診断)と呼ばれる

 1人の人間のヒトゲノムは、8時間あれば解析できるそうです
 この研究所の研究者は
 「38歳を超えたら胚の遺伝子診断をする必要がある。
  流産や染色体異常の恐れがあるためです」
 と話していました

 産婦人科医のカルロス・シモン氏は
 「昔は、出征前診断は不妊患者の妊娠のために使われていたが、
  現在は、健康な赤ちゃんを産むためのもの」
 と話し
 「専門家を頼れば健康な赤ちゃんが産まれる、
  セックスは楽しみのためのもの」とまで言っていました
 小説の世界のような話ですね…

○選べる医療が現実になってきた
 フランスでは、120あまりの遺伝子疾患がPGEで発見可能、
 イギリスではこの5倍なのだそう
 しかも外観の欠陥も遺伝子検査で分かるのだとか

 パリのデカルド大学の医学者グレゴリー・カッツ氏は
 「自分が子供を作るときは、家族限定に限って優生学を取り入れるつもりだが
  社会全体が優生学を受け入れられるかは自信がない、
  命の選別や修正をするのは映画の「ガタカ」そのものの世界」
 (「ガタカ」は1997年の映画で
  遺伝子操作で子供を作るのが当たり前の社会、
  生まれた瞬間に子供の将来の疾患の可能性が%で分かる世界、
  という設定の作品らしい

  一応あらすじを調べますと、
  遺伝子操作で生まれた子は「適正者」、普通の性交渉で生まれた子は「不適正者」
  とされる社会で、
  不適正者として生まれた主人公が、
  宇宙飛行士になるために困難を乗り越えていく話だそうです)

 生物学者のジャック・テスタール氏は
 「重い障害を持つ子供が産まれることは、もちろん親は望まない
  しかし問題はどこまでが障害か、の線引きだ」
  現実的にはそれは線引きできない、
  障害をすべて取り除こうと思ったらきりがない、
  許された限界を突き進んでしまったら人間は自尊心を失う、
 と話していました

 しかし産婦人科医のカルロス・シモン氏は
 「自然に任せるのが本当にいいのか?
  もし介護が必要な子供が産まれたら、両親は苦労する。
  それでもそれが一番だというのか?
  我々のような医者がいるのは、自然が完ぺきではないからだ」
 と話していました

○3人の親を持つ子供が生まれる?
 2015年、イギリス議会では「3人の親を持つ子供」が法的に認められたそうです。

 これはどういうことかというと、
 ミトコンドリア異常の女性が、それを子供に伝えないための治療方法ができたとのこと

  ミトコンドリアは細胞の内部に存在し、
  核(主な遺伝子が詰まっている所)とは別に存在している
  エネルギー生成などの重要な役割をしていて、
  女性側の卵子に含まれるため、子供にはそのまま母親から受け継がれる
  このため母親にミトコンドリア異常があると、子供にも引き継がれてしまう

  そこでニューカッスル大学では、
  女性の卵子から核を取りだし、
  別の女性の卵子(核を取り除いたもの)に入れる
  そのハイブリッド卵子で普通の体外受精を行う、
  という治療研究を行っていたそうです

  つまり「3人の親」というのは、
  卵子の核、卵子の核以外、精子がそれぞれ別の人間由来、という意味です。

  ただしこれは少々誤解を招く表現で、
  実際は卵子の核以外の部分にはほとんど遺伝子はなく
  ミトコンドリアにも遺伝子はあるけど、
  割合としては体内の遺伝子の1%以下だそうですが…
  (そもそも、ミトコンドリアのDNA自体が細菌由来ですしね…)

  この方法を使えば、
  今までは母親にミトコンドリア異常があったら
  それが子供に引き継がれ、その次の代にも異常が引き継がれる恐れがあったが
  この方法を使えば、それが防げるようになるそうです

 アメリカの研究では、この方法によるベビーがすでに誕生している
 ただし、行われたのはアメリカより法律が緩いメキシコだそうです
 イギリスでは2015年にこの治療法が合法になり、
 まもなくこの方法でベビーが誕生するだろう、とのこと

 イギリスではこの法案を審議する際、
 専門家による助言なども受けていたそうですが
 そのうちの一人マンチェスター大学のジョン・ハリス氏は
 「人間が、安全を確定できないレベルまで、
  科学技術を発展させるのは
  いいことなのか、災いをもたらすことなのか?
  これを常に考えなければならない」
  と話していましたが、

 この法案については
 「3人の親、という表現は誤解を招く。
  ミトコンドリアの遺伝子は全体の1%以下、それも意味がないもの。
  3人が関わるのはたしかだが、それが何だというんだ」
 という話をしていました
 
〇人工卵子、人工精子
 最近では、卵子や精子を人工的に作る、という研究もされているそうです

 アメリカのボストンにある企業では、
 女性の体内の卵子を若返らせる薬の開発を目指しているらしい
 この企業の遺伝学者によれば、実現は間近だそうです

 この企業では、女性の卵子を、幹細胞から育てることもしているのだとか
 今は2年育てていて、もうすぐ赤ちゃんを産めるくらいになる、と話していました
 人工的に卵子を育てられれば、
 オーダーメイドの卵子を作ることも可能になるそうです

 また、フランスのリヨンにあるベンチャー企業では
 人工的な精子を作った、という発表がされたそうです

 この研究者によれば
 生殖細胞から精子を育てるのだそうですが
 この技術を開発するのに23年かかったのだとか

 ネズミの精子が成功し、次にヒトの精子を育てた
 今後は、生殖機能があるかどうかを確認する必要がある、とのこと
 
 ほかの研究者は、育てるのはヒトなので
 慎重に進める必要がある、と話していました

 しかしこの成果の発表後、男性不妊に悩む方々からの問い合わせが多いそうで
 「カップルの写真を送ってくる方もいる、
  彼らが親になる手助けができればうれしい」
 と研究者は話していました

 先ほど優生学の解説で出てきた生物学者のジャック・テスタール氏は
 「人工的な受精卵を沢山作ってスクリーニングする、
  そういうやり方は優生学の思想そのもの」と話していました

〇ゲノム編集技術
 最近では、「ゲノム編集」の技術も進んできている
 医学者のグレゴリー・カッツ氏は
 「受精卵を処分するかどうか、は昔の話だ。
  今は低コストでDNAにはさみを入れて編集できる。
  これは遺伝学者の遺伝子組み換え技術に利用されている」
 
 最近ゲノム編集で話題なのは、クリスパー・キャス9というシステム
 (確かちょっと前にサイエンスゼロでもやってましたが
  http://neuro-educator.com/crisprcas9/
  (【図解:3分で解説】クリスパー・キャスナインとは|遺伝子改変、ゲノム編集技術
  このページが一番ビジュアル的にわかりやすいかも)
  http://www.cosmobio.co.jp/product/detail/crispr-cas.asp?entry_id=14354
  (コスモバイオ社のホームページ)
  http://www.japanprize.jp/data/prize/2017/j_2_achievements.pdf
  (「CRISPR-Casによるゲノム編集機構の解明」これは発見の経緯です)

  などにもありますが
  私の理解でざっくりいうと、
  クリスパーとキャス9という2つのたんぱく質からなるシステムで、
  クリスパー(たんぱく質とRNAとの複合体)により、体の中の標的遺伝子を見つけてくっつき、
  キャス9という切断酵素でその標的遺伝子をカットする、というもの)

 このクリスパーキャス9システムは、今までの遺伝子組み換え技術よりも、
 標的遺伝子を正確に確実に見つけ、切断できる技術なのだそうです

 このシステムを発表した研究者の一人エマニュエル・シャルパンティエ氏は
 「この技術は病気を治療するためのもので、
  望ましくない目的には使われるべきでない」
 と話しています
 
 しかし中国では、ヒトの胚に遺伝子改変を行った受精卵を誕生させた、
 という発表がされた
 血液の病気の原因となる遺伝子を組み替えたそうです
 子宮への移植は行われなかったそうですが
 オーダーメイドベビーへの第一歩だとして大きな問題となったそうです

 (最近では、アメリカでも行われたそうです
  http://gigazine.net/news/20170803-first-us-human-embryos-edited/
  によりますと、
  「2017年8月2日に科学誌Natureで発表されたMitalipov博士らの本研究」
  で、米韓中の共同研究チームによるものだそう
   内容としては、
   ・肥大型心筋症の原因遺伝子を持つ精子
   ・正常な卵子
   を体外受精させる際、精子の心筋症原因遺伝子をクリスパーキャス9システムで切り落とし
   正常な卵子の遺伝子で補わせる、
   というもので
   成功率は約72%だったそうです
   (ちなみに、受精卵は3日後に廃棄されたらしい))

 外科・泌尿器科医のローラン・アレクサンドル氏は
 「まだ発展途上だが、2025~35年にはオーダーメイドベビーは実用化するかもしれない、
  ただこの技術は、生まれてくる子供の能力を変えることになる。
  我々はそこを考えないといけない、
  我々が完成させようとしている技術はとてつもない力を秘めている」
 と話していました

 クリスパーキャス9システムを発見した、エマニュエル・シャルパンティエ氏は
 「個人的には、ヒトの生殖細胞の遺伝子をいじるべきではない、と考えている」
 とのこと
  生殖細胞の遺伝子組み換えは
  いったん許されるとどんどんエスカレートし、一線を越えてしまうからで
  遺伝子組み換え技術は制限されるべき、と話していました

 一方、泌尿器科医のローラン・アレクサンドル氏は
 「一線を越えるべきではない、という人もいるが
  一線というのは時代とともに変化する」
  体外受精も出生前診断も人工心臓も、
  数十年前には受け入れられなかったが、
  今はむしろなくてはならないものになっている
  遺伝子組み換え技術だってそのうち日常的になるかも、とのことです

 また、医学者のグレゴリー・カッツ氏は
 「突然変異を排除するのはリスクがある」
 そもそも選別するのは果たしていいことなのか、と疑問を投げかけていました
 「突然変異を排除してしまったら、
  我々人類は、ある日突然環境の変化に対応できなくなるかもしれない」
 それから
 「ベートーベン、モーツアルトも遺伝子変異に苦しめられたが
  彼らから変異遺伝子を取り除けばよかったとは思わない。
  あの素晴らしい音楽は、体の不具合を乗り越えるために生まれたものだ。
  たとえ人間に欠陥があっても、それが人間を人間らしくしている要素だ」
 と含蓄ある意見を述べていました

もし遺伝子変異が悪い遺伝子、というのなら、障がい者などの存在はどうなるのか…
と次の方は問いかけています
〇車いすのアーティスト
 ロンドンの科学博物館には、
 車いすのアーティストの作品があるそうです

 その名も「パンドラの箱」
 遺伝子検査をテーマにした作品だそうです
 アーティストの女性によると、
 人間の価値とは何なのか、
 人間は後戻りできない道を突き進んでいるのでは
 という気持ちから作られた作品だそう

 彼女は遺伝子検査すべてに反対しているわけではない、
 と話していました
 ガンなど、命に関わるような病の治療のためなら賛成だと。
 ただ問題なのは、
 遺伝子疾患があるだけで価値が低い、
 と勝手に決められることで、
 特に医療機関の人たちは勝手に価値を決めている、
 と話していました

 彼女は
 「私は、障害があっても結婚もし、
  忙しく、充実した生活を楽しんでいる
  制約があっても質が低いとは思わない」

 「でも他人から見れば、
  私の姿は親が子供に望む姿ではないかもしれない。
  でも、だからこそ、もっと話をしたい」

 また、
 「もし誰かが、
  あなたの病気は治る医療はあるが、今の自分でなくなるかも、
  と言ってきたら、私は危険を冒すことはしない」
 
 そして、
 「苦しいのはこの体の状態ではなく、
  周りの人たちの態度など、ということも多い。
  遺伝子疾患などをなくすよりも、
  バリアフリーの精神を大切にする方が先ではないか、
  そうすれば住みやすい社会になるのではないか」
 と話していました

〇感想など
 最初は単に、最近の生殖医療の紹介かなあと思っていたのですが、
 だんだん話が哲学的というか、根が深いものになっていって
 見ごたえがある番組でした。

 最後の方で
 「欠陥は、人間が人間らしくあるためのものだ」
 という言葉がありましたが
 実際問題、欠陥のない人間っているのかな?と思います。
 同時に、いいところが一つもない人間もいないと思う。
 凸凹があるから個性が産まれるんでしょうね。

 途中で医療関係者が
 「自然に任せて、親の介護の必要な子が産まれたとして、それは幸せなのか?」
 という問いがありましたけど
 そりゃたしかに、物理的肉体的には、毎日介護しなきゃいけない、
 ってのはきれいごとでは済まされないだろう。
 でもそういう状況だからこそ味わえる喜び、ってのもあるんじゃないかなと思う。
 同じ状況の人を分かってあげられる優しさも芽生えると思う。

 一方で「優秀な遺伝子」を持つ人生は本当に幸せなのか?とも思う。
 それも分からない。
 もしかして人を馬鹿にする子供になっちゃうかもしれないし
 挫折から這い上がる達成感も味わえない、
 それも味気ない人生かもしれないなと思います。

 それに、何らかの事故が起きたり、あるいは精神的にダメージを受けたりして
 途中から障害を持つ場合だってあるわけで…

 だから、最後にアーティストさんがおっしゃっていましたけど、
 障害を完全になくすよりも、
 多様性を認める社会、
 どんな人でも暮らしやすい社会を実現する方が
 本当はみんなが幸せになれるんじゃないかなと思います。
 
 たしかに、医療の発達は素晴らしい。
 子供が欲しいけど得られない人、
 不治の病でももっと生きたい人のために治療法を確立させてあげたい、
 という医療関係者の気持ちもよくわかる。
 でもクリスターキャスパー9の科学者さんの言葉のとおり
 歯止めはかけた方がいいのかなと思います。
 
 どんだけ科学が発展したとしても、すべての望みをかなえることはできないし
 望みがかなっても幸せになるかどうかは分からない。
 望みを諦めたから、めっちゃ幸せになれた、って場合もあるから
 人生はわからない。

 ある程度はあきらめるというか、
 運命を受け入れるというか、
 ないものを追うよりも、目の前の幸せを喜ぶ、
 そういう心のトレーニングをした方が
 結局は幸せになれるのかもしれないな、と思いました。

 個人的には、
 出生前診断とか、オーダーメイドベビーとか
 選択肢が増えるほど悩みも増えるような気がする…
 これからの人たちは選ばねばならない分、ある意味大変かも。。

いろいろ考えさせられました。
というわけで、今回はこの辺で。

 
 

 
  


posted by Amago at 13:47| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年10月12日

NHKBS世界のドキュメンタリー「私の周りはサイボーグ」

NHKBS世界のドキュメンタリー「私の周りはサイボーグ」

 フランス・スペイン制作の2017年ドキュメンタリー。
 義肢、脳チップなど、体の中に端末を埋め込む人たちの話です。
 これらの人工物は、今までは病気や怪我などで失った機能を補うためのものだったが、
 最近は人間を超えた機能を追加するためのものも出てきているそうで、
 倫理面など、これから議論が必要な分野になりそうだとのことでした。

 技術がスゴいというより、それらを本気で応用しようとしている人たちにビックリな内容でした。

 ただ番組としては、いろんな話がゴチャゴチャして見にくかったかなぁ…
 海外のドキュメンタリーにありがちなんですが
 いくつもの話を同時並行的に進めるので混乱してしまいました。
 NHKのドキュメンタリーみたいに1個1個順番に紹介してくれる方が分かりやすいなぁ
 (これは好みの問題だろうけど)

 なので整理しながら内容を少し紹介したいと思います

○義手をつけるトラック運転手
 最初に紹介されたのはスウェーデン、
 義手を着けたトラック運転手マグナスさん。

 彼は13年前腫瘍が見つかり、右腕を失ったそうです
 そこで彼は骨と金属を接合する最新のインプラントを着けた
 3つの接触点があり、その接触点が触れた場所に応じて感覚を伝えるため、
 触感も感じることができるそうです

 彼は研究対象にもなっているみたいで
 電球をつかむことを試したり
 チューリヒ(スイス)で開かれた「サイバスロン」という大会に出ていたりしました

 この「サイバスロン」は、
 平たく言うと「サイボーグのオリンピック」
 障害者の生活を支援する装置、技術などを競い、磨き合うもので
 2016年の10月に第1回が開かれたそうです
 部門がいくつかあり、
 ロボットスーツ、義手、義足、車イスレース、
 脳とコンピューターをつなげたインターフェイスでのテレビゲーム
 などだそうです
 (サイバスロンについては
  http://www.sensors.jp/post/cybathlon.html
  http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/091200067/101100004/
  などに少し説明がありました
 (「世界が注目する"人機一体"テクノロジーの祭典「サイバスロン」とは?」
  「サイバスロン」を知っていますか?」
  などの記事)

  この大会は、リハビリロボットを研究するロバート・リエナー氏
  (スイス工科大学チューリッヒ校)
  の呼びかけによって始まったそうです。
  「サイバー義体」技術を前進させるためで、
  パラリンピックは、障害のあるアスリートが中心ですが、
  サイバスロンは、テクノロジー自体が注目されるのだそうです。

  一応正式種目を書いておくと
  「ブレイン-マシンインターフェース」「機能的電気刺激自転車」「パワード義手」「パワード義足」「パワード外骨格」「電動車いす」
  2020年に開催が予定されている第二回大会の候補地には、日本の名前も挙がっているのだとか…。オリンピックあるからそんな余裕無さそうだけど)

 これらの技術は最近発達してきて、
 足りない機能を補うだけではなく、
 人間にない能力を付加するもの、という意味合いのものも出てきているそうです
 例えば、手首が360度回るという義手など
 また、マグナスさんの義手は力が強いので、
 危険防止のために自分の手は握れない設定になっているそうです

 ただ、マグナスの使う義手を作った研究者は
 「今は失った機能を補うのが精いっぱい」と話していました

○人工内耳
 次はベルリン、人工内耳を着けるプログラマー、エノさん。
 彼は20歳で聴覚を失ったが、
 人工内耳により音のある世界を取り戻したそうです

 この人工内耳は30万人が使用、一般的になっているみたいです
 2つのパーツからなり、
 1つは脳に埋め込み、もう1つは耳の後ろに補聴器みたいな感じで着ける
 補聴器パーツが捉えた音の情報を、
 頭の中のパーツに電気信号として送る
 その信号で聴覚神経を刺激し、
 音を聞いたときと同じ効果を出すのだそう

 この装置は脳手術が必要なのでリスクはあるし、
 周波数の問題、電池交換の手間などデメリットはあるそうです

 しかし彼によると便利な面もあるらしい
 補聴器パーツは音響機器や携帯電話などに差し込んで、直接接続できる
 そのまま信号が脳に伝わるのでクリアに聞こえる

 また、音をオフにもできるので
 うるさい音を聞かなくても済むらしい

 それから、周りがうるさいときモードもあるので
 人混みなどでは健常者より人の会話が聞こえやすいらしい

 彼はプログラマーなので、
 自分でもこの装置をプログラミングして色々試したいそうです
 ただ、悪用される恐れがあるので、
 現段階では個人ではプログラムをいじれないようですが…

○アンテナを脳に埋め込んだアーティスト
 次はイギリスのニールさんというアーティスト。
 彼は11歳のときに色覚障害と診断されたそうですが、
 色には興味を持ったそうです

 白黒の世界は嫌ではないが、
 ほかの人には色が分かるのに自分には分からないから、
 世界から取り残された気分になるらしい
 そこで彼は脳にセンサーを埋め込み、
 色を音として認識できるようにしたそうです

 具体的には、アンテナの光を波長としてとらえ、
 脳に埋め込んだチップに伝える
 それを振動として耳に伝え、音として認識するみたいです。

 彼によれば黄色のポストはソ、緑色の木はラ、
 白いビルはCメジャーやAフラットとかに聞こえるそうです
 彼は音も色も同じように認識するので
 電話の音は緑色だし
 人の肌の色はいろいろ言われるが
 彼はどの人も濃さが違うオレンジだと言っています

 彼の頭からは、センサーとなる曲がった棒が頭から出ていて、
 「私はサイボーグです」と自分で言っていますが、
 時代によって呼ばれ方が変わるらしい
 最初のころは「読書灯?」と聞かれ、
 そのうち、マイク、携帯電話、小型カメラ
 最近はウェアラブル端末、
 この前子供には「自撮り棒?」と聞かれたんだそうです(笑)

 しかし本気で馬鹿にしたり反対したりする人もいるそうで
 エイリアンとかテレタビーズ
 (イギリスの子供向け番組で、電波をとらえてお腹の画面に映す謎のキャラクター。私はあのシュールさがけっこう好きですが)
 とか言われたこともあるし
 神の教えに背いていると批判されることもあるらしい

 彼はこのアンテナをつけるために手術を4回したそうで、
 結構大変だったと話しています
 1回目は色の波長を振動に変える装置、
 その次2回はシステム全体を制御する装置、
 最後の1回はインターネットと接続するための装置
 を脳に埋め込んだ

 手術を引き受けてくれる医師も少なく、
 匿名でなら、という方により実現できたのだそう

 周りの理解も少なく、
 映画館では「撮影されるかもしれないから」と入場を断られることも多い
 また、パスポートの写真を作るとき、
 イギリス当局からアンテナ付きの写真が許可されなかったそうですが
 交渉で認められたそうです
 「これは私の一部、取り外しできるデバイスとは違う」と話していました

○内蔵チップ
 次に紹介されたのは、アメリカの体の中にチップを埋め込むティムさん
 彼はピッツバーグの生まれで、
 鉄鋼やハイテク産業が停滞していくのを見て育つ
 「人間がロボットに乗っ取られる」という人もいたそうですが
 彼自身は「人間も機能を追加し、ロボットになっちゃえばいい」と考えたそうです

 彼はバイオハッカーという団体を立ち上げた
 自分から端末を体に埋め込み、違う感覚を身に着けるのだそうです

 彼はたくさんの端末を体に埋め込んでいます
 例えば手の甲の真ん中へんにはBluetooth接続したソフトウェア、
 これでネットの世界にもつながるらしい
 また、親指の付け根には電子チップが埋まっていて、自宅のデータがすべて入っている
 小指や耳には磁石が埋め込まれ、今までよりも感覚が鋭くなるのだそうです

 また、昔は肘の内側に四角い端末を埋め込む実験をした
 生体デバイスとして体温などを測定し、外部にデータを送る端末で、
 彼はこのプログラムのコードを公開し、
 個人が好きなように使えるようにしたそうです
 実験は成功し、彼は3か月してその端末を取り出した

 彼はなぜそんなことをしているかというと、
 埋め込み端末を科学者だけのものにしたくないからだそうです
 実験室の中だけではなく
 友達同士が路地裏とかに集まってみんなで変えていくテクノロジーを見たいのだそうだ

 彼に言わせると、パソコンはみんなに普及したからこそ発達した
 こういう技術も、研究機関の外で革新を起こしたい、
 人々の創造性を解き放ちたい、と話していました

○その他
 ほか、最近ではいろんなテクノロジーが進んでいて、例えば
 ・3Dプリンターで気軽に義手が作られる
 ・手にチップを埋め込み、かざすだけでロック解除や支払いができる
 ・脳の信号を送り、考えるだけで機械の手を動かす装置
 ・脳に刺激を与えて学習機能を挙げる機械
  (頭に電極のついたベルトみたいなものを巻くもの)

 ・専門機関で行われているものとしては「脳深部刺激療法」
  これは、パーキンソン病の治療法として1990年代から行われているもので、
  脳に電極を埋め込み、電気刺激を与えることで 
  異常な働きをしてる部位を正常に直すもの
 
  これは「フランケンシュタインの誘惑」でも紹介されていましたが

  パーキンソン病は進行性の病で、
  手足のこわばり、震えなどが起きるが
  これが劇的に改善するのだそうです

  この治療法はうつ病など、ほかの病気の治療に応用するための臨床研究がまだ行われていて、
  40か所以上の部位が試されているそうです
 
  しかしこの方法にも問題があり
  装置がかさばること、
  数年たつと効果が薄れ再発すること、などがあるそうです

 ・脳に電子チップを埋め込むインプラント
  ほかには、電子チップを埋め込み
  病気で体の筋肉が動かせない人が体を動かす、ということもされているそうです
  ピッツバーグ大学では、患者さんがチョコレートを食べることに成功していました
  ただし、これは頭のチップとコンピューターをつなげるケーブルを
  頭につなげないといけない問題がある

  しかし、カリフォルニア大バークレー校の研究者は
  1ミリ以下のケーブル不要なチップを開発していて、
  5年、10年先に臨床研究を行う予定だそうです
  
  チップは脳の信号を機械に送って動かすだけではなく、他にも応用できる
  内臓器官や神経の動きがモニターできるチップも将来的には埋め込めるかもしれない、
  とのことです

  ただ、脳はまだ研究途中、謎が多い。
  脳に刺激を与えて、新しい機能を追加してもそれに対応できるのか、制御できるのか?
  脳に影響はないのか?

  マサチューセッツ工科大学の研究者や、
  スペインのポンペウ・ファブラ大学の研究者は
  そんなに影響はないのでは、と話しています 
  (マウスによる実験ではそういう結果だそう)

  ポンペウ・ファブラ大学の方は、
  アルツハイマー病の人が記憶が衰えてしまう問題を
  この技術で解決する方法を探っているそうです
  具体的には、アルツハイマーの方の記憶を外部デバイスにコピーして
  記憶のバックアップを取る研究だそうです
  
後半は新たな課題として、倫理面、安全面に関する議論についての話でした
 
〇ピッツバーグのティムさんの団体の場合
 例えばピッツバーグのティムさんの団体では
 メンバーは電子チップなどを埋め込む手術をするが
 それを頼むのは医療機関ではなく、タトゥーを彫る人たちなんだそうです

 普通体に穴をあける行為は医師免許を持つ人に限られ
 彼らのやっていることは違法スレスレのことらしい

 しかし彼らは、これは医療行為とは思っていないようです
 ティムさんの仲間たちは
 「知り合いの形成外科が、我々の装置を政府に認可するよう働きかけてくれる、
  と言っている」
 「でも医療装置と思われると厄介だ、
  規制なんてごめんだ」
 「我々は権力嫌いの天才だ、力を見せてやる」
 というような話をしていました

 彼らは、どちらかというと規制されるくらいなら認可は要らない、
 という感じですね…
 しかし体に穴をあけるのは間違いないし、
 どこまで自由を許すべきか、危なくないのか、という問題がある。

〇アンテナ人間、ニールさんの場合
 ニールさんは、アンテナをつけるとき、医師の倫理委員会の許可が下りなかったそうです
 理由としては
 ・治療目的ではない
 ・安全性が確保できない
 ・病院側のイメージダウン(アンテナ付けた人間を作る病院はよろしくない)
 などがあった

 パスポートや映画館を断られるなど、
 昔は理解されないこと、批判されること、笑われたりすることが多かったが、
 それでも世の中はだんだんと変わってきたようです

 彼には手術などで新しい感覚や能力を身につけたい、という問い合わせは多かったそうで
 彼は2010年、「サイボーグ財団」を設立
 専門機関や医師を紹介しているそうです

○人工内耳のプログラマー、エノさんの場合
 また、ベルリンのプログラマー、エノさんは
 定期的に主治医の所に通い、
 主治医は彼の話を聞きつつ内耳の端末を調整している
 エノさんは主治医に、人工内耳のプログラミングを自分で変えたいと申し出ましたが
 「脳神経に作用するものだから、
  メーカーはプログラムのコードを公開しないだろう」
  と主治医はやんわり断っていました

 エノさんも
 「私の医者も私の望みには気づいているけど、
  悪用などの恐れがあるので個人でプログラムを変えることには同意しないだろう」
  みたいなことを言っていました

  彼はEU議会の公聴会で
  (人体と機械を結びつける装置についての倫理観について話し合う会)
 「患者も自分で設定を変えられる権利をもつべき」を主張していました

 しかし技術をどこまで制限し、
 どこまで個人の自由を認めるかは難しい

 ハッカーに乗っ取られたらどうするのか、
 警察はデバイスを押収できるのか
 などの問題も出てくる

 EUでは専門のプロジェクトを立ち上げ、
 これらの技術が社会に及ぼす影響や、
 倫理面の問題などについて議論し始めているそうです

 ニノさんはベルリンで、サイボーグを推進する団体を設立したそうです
 サイボーグの文化や技術について話し合う機会をもうけたり
 技術者、医療者向けの紹介サイトなどを作っている
 心臓のポンプの力で発電するシステム?とかいうのも話していました

ニールさんやニノさんは、
個人の権利として、サイボーグを自由に選択できる世の中を願っているようです。
ピッツバーグのティムさんもそうですけど、
彼の場合はどっちかというとテクノロジー自体に興味がある、という感じですね。

○サイボーグ技術の是非を話し合うイベント
 デンマークの高校では、
 これらの抱える問題を扱うイベントが開かれたそうです
 脳に刺激を与え、能力を高めるという機械はすでにネットで販売されているそうで
 手に入る前に、それらの機械を手に入れるメリット、デメリットを考える必要がある、
 とイベント関係者は話していました

 イベントでは、生徒たちが
 ・脳に刺激を与え、学習能力を高める機械を着けて、どの程度刺激があるか確かめる
 ・聴力アップの機械でどの程度強化されるかを確かめる
 ・ゴーグルをつけ、他人のスマホで撮影した画像が流される機械
 などを実際に体験できたのだそうです

 そのあと生徒たちはディスカッションしていて
 「私はこんな装置いらないわ」
 「私は賛成、みんな平等になると思う」
 「いつかはこれらは現実になると思う」
 「こういう装置は世の中を二分する、
  賛成する人は身に着けて能力を高めて、反対の人と対立するだろう」
 「もっとオープンな議論が必要」
 など、いろんな意見が出ていました

〇シリコンバレーの人たちの意見
 アメリカのシリコンバレーの人たちは
 テクノロジーが人間や社会の問題を解決する、
 と考える人は少なくないらしい

 テスラモータース、スペースXなどを起業したイーロンマスクは
  「人類はサイボーグになるかもしれない」
 フェイスブックを創業したザッカーバーグは
  「AI、テレパシー、仮想現実」
 投資家のピーター・ティール
  「死を免れることは使命」
 などの言葉を残している

 これらは簡単に実現できる、という人もいれば
 そんな簡単ではない、という科学者もいるのだそうです

〇トランスヒューマニスト党
 アメリカではゾルダン・イシュトヴァンという方が
 「トランスヒューマニスト党」
 なるものを立ち上げ、
 この前の大統領選に立候補していたらしい

 彼は人間の生物学的な能力には限界があるので、
 それをテクノロジーで解決すべき、
 強く完璧な人間になりたい人は応援すべき、
 と考えているそうです
 つまり、サイボーグ的な技術はどんどん推進すべきだと。

 彼は選挙運動期間中、
 棺の形をしたバスに乗り
 「25年以内に死なない社会は実現できる」
 と主張して回ったそうです

 このキャンペーンでは、途中で
 墓地や、永遠の命を信じる宗教団体、
 ロボット研究施設を訪れたり
 デバイスを埋め込む公開手術に挑んだりしたのだそう

 更にはホワイトハウスに
 「人体を改造する権利」
 をうたう条項を乗せる憲法案を書いた紙を貼ろうとして捕まりかけたらしい

 ちなみに、ゾルダンさんによれば
 この「改造の権利」は
 人だけでなく、AIみたいなのも対象にしているんだそうだ

 彼の支持者は
 「今のところ、ヒューマントラスト党は変人の集まり扱いになっているが、
  いずれは古い政治を塗り替える勢力になるだろう。
  今の政治は保守対革新だが、
 いずれは保守対トランスヒューマニストの戦いになる」
 と話していました

 アメリカとかイギリスってこういうぶっとんだ人、たまにいますねえ…
 
 (ちなみにゾルダンさんについては
 https://www.gizmodo.jp/2015/05/post_17193.html
 には本人の寄稿があります
 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/070700053/070700003/
 にはインタビューもありました
 (いずれも大統領立候補時のものです)

 それによると、
 トランスヒューマニスト、というのは
 「サイエンス、テクノロジーを生活や肉体に取り入れ、
  人類を肉体的に改善して死を免れよう、と社会に働きかける人たち」
 みたいです。
 具体的には
 「人工心臓、脳インプラント(脳チップ)、人工四肢、外骨格スーツを使ったり、
  無限の長寿を追求する」
 ということらしい
 
 ほかにも、宇宙への移住、海上の開発で人類が暮らせるようにしたり、
 人工知能などを開発してさらに文明を発達させること、
 そして、宗教とか思想の対立を超えた思想にし、
 戦争、疫病などをなくすことも目指しているそうです
 また、経済的にはベーシックインカムを配り、
 ロボットに仕事をやらせて人々は余暇を楽しむ、という世界にしたいらしい。。

 ただ、アメリカではキリスト教が主な宗教なので
 「神を冒涜している」と言われ、
 逆に争いの種にされるんだとか…

 あまりにユートピア的な思想で、
 一昔前の共産主義にも似てなくもないかなあと思いました。。
 人間の感情とかやりがいはどうなるんだろう、と思ったりするんですが…)

○まとめ
 これらの倫理面、安全面などの問題は、継続して議論が必要なようです。

 しかし最後にスペインの科学者が言っている言葉も含蓄がありました
 「このような装置を頭に埋め込むのが、本当に我々の未来なのか?
  今の教育システムは破綻していて、
  自分達の能力を活かしきれていない、そこをまず心配すべき。
  先にすることがあると思う」

 それからアンテナ人間のニールさんは、
 「できればサイボーグがもつ否定的なイメージを変えたい。
  笑い者やSFの世界だけのものにしたくない。
  でもみんなだんだん分かってきてると思う、
  これは現実の世界に役立つ技術、
  宇宙や地球で、私たちの活動に新たな地平線を開いてくれるものになるはず」
 と話して締めくくられていました

〇感想など
 うーん、個人的には外科手術さえやりたくないな、と思うので
 (若い時、ピアスしてたけどそれすらもう空けたくない)
 病気でもないのに積極的に体に穴をあけて、体に異物を埋め込む人たちにはびっくりでした。
 
 ましてや脳とか、障害が残ったらどうしよう…と思っちゃうのは
 私が小心者だからでしょうかね(笑)

 まあでもそういうことを積極的にしたい、という人にはさせてあげればいいんじゃないの、
 とも思います。

 もちろん自己責任で、危険とかめんどくささを覚悟でするのであれば、ですが。。
 そもそも科学って、そういう勇気とか好奇心のある人たちのおかげで進展してきたんじゃないかね、と思うし。
 (麻酔だって命がけだし、発酵食最初に食べたい人、すごいと思うよ)

 ただ怖いのは悪用されることかなぁ…
 脳とか心臓とか、生きるのに大事な機能を乗っ取られたら
 ほぼ奴隷状態になるだろう。

 まあでも、かといって政府とか大きな機関に任せたら安心か、と言われれば
 長い歴史を見たらそうでもないんじゃないかなと思います。
 だって政府が国民を支配する可能性だってなくはない。
 (特に、アメリカなどは国民が国家を信用していなさそうだ)

 安全性とか合理性などは、市場に任せた方が実は監視の目が多くていい、
 という場合もあるはずだと思うので
 みんなの目で監視できるシステムができたらいいのかもしれない、
 そういうシステムの方こそを先に作るべきなのかもしれない、
 とも思います。

 最後のスペインの科学者がおっしゃっていた言葉はそれに似ているのかもしれない。
 ロボットとかテクノロジーに頼る前に、
 人間が自分の頭で考えるべきことは考えるべきなのかな、と。
 それが人間の知性であり、テクノロジーを生み出した人間の責任なのかもしれません。
 
いろいろ考えさせられました。
というわけで、今回はこの辺で。

 
posted by Amago at 16:26| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする