2017年12月04日

フランケンシュタインの誘惑「麻酔 欲望の医療革命」

フランケンシュタインの誘惑「麻酔 欲望の医療革命」

先週やってたんですけど、いろいろあってみるのが遅れた。
今回は麻酔の話でした。

麻酔っていうと、
昔「華岡青州の妻」というドラマをやっていたのをたまたま見たんですけど
(たしか有吉佐和子さんの小説が原作で、
青洲の奥さん役が和久井映見さんでした)

青州は世界で初めて麻酔薬(服薬)の開発を成功させた人で、
妻がその実験台になるも、薬の副作用で失明してしまった…
とか言う話を伝記かなんかで読んだことがありましたが、

ドラマでは、
この世紀の発明の裏には彼の奥さんと義母さんとの嫁姑争いがあり、
どちらが青州の実験台になるか足の引っ張りあいをしていた…
とかいう話になっていました。

華岡青州の奥さんって献身的なイメージがあったのに
こんなドロドロしてたんかぁ…
ってけっこう衝撃でした。
(でもドラマでは、和久井さん演じる奥さんは
 実はきれいで凛とした義母さんに憧れていて認められたくて…
 という複雑な心理があったとかいう描かれ方で
 ドラマとしては素晴らしかったですが)

 なので外国にもそういうドロドロがあったんかなぁ…とか思っていたんですが、
 見てみたら、金と名誉の争いの話でした。
 日本だと嫁姑だけど、アメリカは金と名誉、ってのがなんかお国柄ですね。

 現在、先進医療は高価なのは当たり前のように感じますけど、
 それは特許の存在があるから、なのだそうです。
 そして、この特許の概念を最初に医学に持ち込んだのが、
 今回出てくる科学者だった、とのことです。

 今回主に登場する科学者は
 歯科医のホレス・ウェルズとその弟子のウィリアム・モートン。

 ウェルズは、華岡青洲が服用の麻酔薬を発明してから40年後に
 今では主流の吸入による麻酔法を発明した方だそうです。
 (ちなみに今では、吸入麻酔と静脈麻酔が使われ、
  薬品もいろんなものが開発され
  鎮痛、筋肉の弛緩、鎮静など色んな役割を持つ薬物をミックスして行うのが主流みたいです
  http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/analg-anes.html
  (滋賀医科大学の麻酔についてのページ))
  
 ウェルズはその発明の名誉にこだわり、
 一方モートンはその発明で特許を取り、お金儲けをしようとし
 どちらも悲劇的な人生を過ごしたのだそうです…

というわけで内容から。
〇ホレス・ウェルズの経歴
 ウェルズは1815年、バーモント州の大地主の息子として生まれる
 21歳の時に、歯科医として開業したそうです

 彼は新しいものをどん欲に取り入れ、発明するのが好きな青年で
 義歯なども発明した
 しかもそれをほかの医師にも積極的に教えてあげていたそうです
 
 吸入麻酔法の歴史に詳しいジャーナリストによると
 「彼は正直で誠実で、そして野心家でもあった。
  彼は自分の名前を残すことにこだわっていた」
 誠実なのはいいけど、名前を残したかったんですね…
 
〇ウェルズの麻酔法の発明
 そんな彼が取り組んだのは、痛みに対する対処
 当時の医学界では麻酔法はなく、外科手術は地獄のような治療法だったそうです
 ひもで患者をベッドに縛り付け、
 メスで皮膚を切り、のこぎりで骨を切断する…

 痛みをなくすため、アヘンや酒を使ったり、
 血抜きで失神させる医者もいたそうです。
 あまりの痛さを悲観して、自殺してしまう患者もいたらしい
 たしかに拷問に近いですね…

 その当時、ウェルズはあるチラシに目を止める。
 それはその時流行していた「笑気ガス」の大実演会
 笑気ガスとは亜酸化窒素のことで
 これを吸うとハイになったり失神したりするが、
 当時はそれを見て楽しむショーがあったそうです

 彼はショーを見た時、ハイになった人たちが
 大けがをしても全然痛がっていないのに気が付いた
 そしてこれを治療に使うことを思いつく

 そして、革袋とチューブを組み合わせた簡単な吸入器を作り
 自分を実験台にして抜歯手術をしたそうです
 自ら亜酸化窒素を吸って仲間の歯科医に抜歯してもらう。
 全く痛みもなく、10人の患者に行っても痛がる人はいなかった

 彼はこの方法を、周りの医師たちに教えて回る
 麻酔法の歴史に詳しいジャーナリストの解説によると
 「彼は発明を誇りと思っていて、
  ほかの人も試してくれるのがうれしかった。
  とにかく、抜歯の痛みに苦しむ人たちを助けたかった」

〇ウェルズの失敗 
 そして彼は1845年、アメリカの医療先進地ボストンに行く
 この麻酔法をほかの医師にも広めようと、公開実験を行った

 この実験の時同伴したのがウィリアム・モートン
 彼はウェルズに歯の治療法を教わり、ボストンで開業していた

 ウェルズの実験は、ハーバード大学の学生や、名だたる医師たちの目の前で行われた
 しかし、これらの権威ある医師たちは、
 皆を悩ませてきた痛みを一介の医師が解決できるはずがない、と思っていて
 ウェルズを嘲笑した

 ウェルズはこれに動揺し、麻酔実験を失敗してしまう
 麻酔薬の亜酸化窒素がわずかに足りず、麻酔が効かなかった
 このため、ウェルズはさんざん詐欺師呼ばわりされる

 彼はこのときの苦痛がトラウマとなり、歯科医をやめてしまう

〇モートンの登場
 その後半年して、ウェルズのもとにモートンが訪れる
 借金を返すためだが、
 彼の真の目的は麻酔法を教えてもらうことだった
 これを商売に使おうともくろんでいたらしい

 ジャーナリストさんの解説によると
 「彼は、麻酔法がとてつもない利益を生み出すことに気づいていた。
  というのは、実はモートンは若いころ詐欺師だったんです」
 モートンは歯科医ではあったが、
 生まれながらのペテン師だったそうです

 モートンは13歳のとき、両親が事業に失敗して一家は破産してしまう
 彼は家計を支えるため酒場に働きに出たが
 店のお金を使い込み、店も町も追い出された
 そのあとは各地で借金を重ね、踏み倒す人生だったらしい

 しかしウェルズはそんなモートンの過去を知らないので、懇切丁寧に麻酔法を教える
 無痛抜歯の方法の実演もしたそうです

 モートンは、このウェルズの発明を自分のものにしようと、
 少しオリジナリティを加えることにする
 亜酸化窒素の代わりに、ジエチルエーテルを使うことを思いついた
 エーテルは、呼吸困難や吐き気を抑えることが当時すでに知られていたそうです
 また、吸入器も改良を加え、見栄えも良くする

〇モートンの公開手術
 そして1846年、モートンが公開手術を行う
 場所は当時医療の最先端だったマサチューセッツ総合病院

 彼はウェルズの二の舞にならないように、周到に用意をしていたそうです
 例えば、自分は麻酔だけをかけ、執刀は名高い外科医にしてもらった
 こうすれば失敗はないし、
 権威ある医師と共同で行えば信用度も増す
 また、吸入器はガラス製にして、
 中にスポンジに浸した薬品を入れる
 こうすれば見栄えもよく、被験者も確実に蒸気を吸い込める

 こうして公開手術は成功し、彼の名はアメリカ中に知れ渡ることになる
 ラテン語で無感覚を意味する麻酔(anaesthesia)はここから生まれたそうです
 
 医学界の歴史に詳しい歴史家は
 「麻酔法は、医療の歴史上最大の成功の一つ」と話していました。
 「有史以来、人々を悩ませていた痛みが、
  ついにコントロールできるようになった、
  まさに革命だ」

 一方麻酔法の歴史に詳しいジャーナリストさんは
 「誠実なウェルズがペテン師呼ばわりされて、
  本当のペテン師であるモートンが偉大な天才、と呼ばれたのは皮肉なことでした」
 と話していました

 実際、ウェルズはモートンの行いに怒りを隠さず
 「本当の発明者は私だ、
  名誉を与えられるべきは誰か、世間に判断してもらいたい」
 という投稿を新聞に寄せたそうです

〇スタジオでの解説
 司会は武内陶子アナ、
 解説は我孫子東邦病院の麻酔科医、菊地博達氏と
 横浜市立大医学研究所の谷口英樹氏でした

 菊地氏は
 「いろいろ言われていますけど
  私がモートンの公開手術の場にいたら、ものすごく感動しただろう」
 と吸入麻酔法の誕生については評価していました。
 谷口氏も
 「その後何十年、今も行われている麻酔法を
  この時作ったのは革命的」と話していました

 菊地氏はウェルズの発想について
 「よくぞ気が付いたと思う」
 と話していました
 エンターテインメントに使われていたものを、医学に使おうという発想がすごい、と。
 これは、彼が日ごろから何かいい方法はないか、ないかと探していたからこそのものだろう、
 とのことです。

 一方谷口氏は
 「麻酔法を発見したのはウェルズだが、
  改良して、より高い効果をもたらしたのはモートン」
 と両者の功績をたたえていました

 武内アナが
 「モートンはペテン師と言われていましたが…」と聞くと
 谷口氏はこれはよくあること、と言っていました。
 「先行研究はたしかに前任者の功績だが、
  さらにその上に積み上げる、というのは悪いことではない。
  それを盗んだと言っちゃうと、科学の世界は混乱してしまう」
 菊地氏も
 「科学ってのはみんなそうで、
  例えばノーベル賞では、新しい分野を切り開いた人もそれを発展させた人も、
  共同で賞をもらっていますよね」
 改良、発展させたということ自体は評価されてもいいとのことです。

 武内アナ
 「モートンは自分が麻酔して、ほかの高名な医者に執刀してもらっていましたね」
 菊地氏
 「彼はどのようにすればインパクトを与えられるかを知っていた、
  それは詐欺師の鋭い勘だったんでしょうね。 
  レベルの高い病院で、有名な外科医の先生にやってもらえばいい
  そこはセンスがありますね」
 谷口氏も
 「彼はビジネスセンスや、マネジメント能力があるんでしょうね、
  モチベーションはいろいろあるんでしょうけど、
  彼のしたことが、麻酔法を発明として前に進めた意味はあると思います」
 モートンの作戦勝ち、みたいなところがあるんですね。

〇麻酔法開発者の名誉争い
 モートンがエーテルの吸入麻酔法を公開で行ったニュースを受け、
 我こそがこの発明者だ、と名乗り出る人が何人かいたそうです

 その一人がチャールズ・ジャクソン
 彼はハーバード大学医学部卒のエリートで
 当時医療の最先端だったパリに留学し、
 その後化学分析の研究所も設立していたそうです
 彼は吸入器の発明は自分が行った、と主張したそうです

 というのは、モートンは公開実験の1か月前
 ジャクソンのもとを訪れ、アドバイスを受けていたのだそう
 
 そこでモートンはこの麻酔法の特許を取り
 特許料をジャクソンと折半することで話を付けた
 モートンは、すでに名の知れたジャクソンを共同開発者とすることで
 この発明に箔をつけ、たくさんの人が使うことも期待していた
 
 (ちなみにウィキによりますと、
  ほかにエーテルを最初に手術に使った方がいるそうです。
  ジョージア州のクロフォード・ロングさんという方は
  1842年にはこれを使って麻酔手術をしていたそうです
  ただし公表はしていなかったので、公認はされていないようだが
  この方も当時自分が先だ、と主張されたんでしょうか…)

〇麻酔法の特許取得、論争が巻き起こる
 1846年、アメリカ特許庁は、モートンに対しエーテルの吸入麻酔法の特許を許可する
 この特許は3つのポイントがあり
 ・エーテルという医薬品への特許
 ・吸入器という医療機器への特許
 ・吸入法という医療方法への特許
 この特許は14年間有効とし、その間この麻酔法を使うすべての医師は
 特許料を払わねばならなくなったそうです。

 しかし、医療行為に特許を取る、という行為が論争を巻き起こしたそうです
 医学史の専門家の解説によると
 「当時、医師が医療に関する発明で特許を取るのは
  倫理に反する、とされていた」

 古くをさかのぼると、エドワード・ジェンナーが天然痘の予防接種を考案したとき
 あえて特許を取らなかったそうです
 これは、多くの人にワクチンを届けるためで、
 この前例により、医療にかかわる特許は取るべきでない、という暗黙の了解があった
 
 ジャーナリストさんは
 「特許を取るのは、医学界では衝撃的なことだった
  それまでは特許を取る人はいなかった」
 また、医学史の専門家によると
 「特許に対する倫理的な抵抗は、エリート医師にはあった。
  しかし当時一介の医師だったモートンには、それがなかったのだろう」

 当時、ボストンメディカルアンドサージカルジャーナル、という雑誌では論争となり
 賛成意見「医師の貢献したなら、特許を求める権利がある」
 反対意見「医師はお金や権力ではなく、賞賛や感謝の言葉を求めるべき」
 賛成意見「特許は研究者のモチベーションにつながる」
 反対意見「よく知られた薬品に特許を与えるのは、太陽や月の光に特許を与えるようなもの」
 など、いろんな医師の賛否双方からの意見があったそうです。

〇モートンのお金儲けは思惑通りにいかず…
 モートンは医学界の論争をよそに、金儲けにまい進する
 彼はエーテルとオレンジの成分を混ぜた「リーセオン」という商品を開発する
 当時アメリカメキシコ戦争が勃発し、これで一儲けできると考えたらしい

 しかし政府は、エーテル麻酔を兵士への治療に無断で使うようになる
 戦争時では特許なんぞ言ってられない、という状況だったらしい

 ジャーナリストさんの解説によると
 「政府は、エーテルの特許使用を許可した張本人なのに、それを無視した。
  大病院も特許を無視するようになったため、
  開業医もこれに追従し、
  全米の各地で勝手に使われるようになった」

 こうしてモートンの特許は崩壊し、彼のもとにはリーセオンの在庫の山が残った…

〇名誉を取り戻したウェルズ
 一方本来の発明者であるはずのウェルズについては、
 1846年にボストンメディカルアンドサージカルジャーナルで
 「麻酔法の発明の栄誉はウェルズのもの」
 と投稿してくれた医師がいた

 この医師はハートフォードの医師で、
 公開手術よりも前にウェルズから麻酔法を教わっていた人だそうです
 
 ジャーナリストさんによれば
 「ウェルズは無償で亜酸化窒素の麻酔法を広めた、
  その寛大さが彼を救った。
  彼の発明が初めて証明された」

 この記事は、モートンの特許が認められたアメリカではあまり話題にならなかったが、
 当時医療の先進国だったフランス、パリでは、ウェルズが発明者として認められたそうです
 当時のウェルズの手紙によると
 「パリにいると、みな私に礼儀正しく「あなたは偉大な人物」と言ってくれる」
 と書いているそうです

 そして名誉を取り戻した彼は、再び麻酔の研究にとりかかる
 彼が新たに取り組んだのはクロロホルム
 これはエーテルよりも効き目が早く、少量で麻酔ができたそうです
 彼は自分を実験台にして実験していたそうです

〇スタジオでの解説
 再びスタジオでの解説。
 谷口氏は
 「ウェルズが先に発明したからモートンが改良し、ウェルズはさらに改良した。
  これは研究開発の場面で、今でも起きていることです」

 武内アナは
 「医療特許は大論争になりましたが」
 菊地氏は
 「普通は栄誉を得ようと思う人は発明したものに自分の名前を付ける。
  名前を付けることが栄誉だったんですね」
 名誉をお金に変える行為が、否定的な評価をされたようです。

 一方谷口氏は
 「モートンはサイエンティストとみるとNGなことをしていますが、 
  起業家とみれば、
  自分が発見したものを世の中に行き渡らせて人々を助けようとしたわけで、
  そういう意味ではモートンのしたことは決してネガティブではない、
  見方により評価が分かれる」
 とモートンを擁護していました

 武内アナは
 「それにしてもモートンはアイデアマンですね、リーセオンとは…」
 菊地氏は
 「アメリカは当時、西部劇なんかを見るとそうですけど、
  幌馬車に怪しい看板を付けて、「特効薬」
  とか言って売り歩くとかいうのがあったんですね」
 谷口氏は
 「アメリカは同時成熟していなくて、ルールもない、
  いろんな人が雑草のようにどんどん出てくる、
  そういうパワーが新しいものを生み出していった」
 合理主義、資本主義
 悪く言えば何でもお金に変えちゃうアメリカならではの発想なんでしょうね。

 武内アナ
 「国も特許を無視しちゃったんですね…」
 菊地氏は
 「モートンの発明は利用価値が大きすぎたんですね」
 谷口氏は
 「モートンの特許が強力すぎたんですね…
  重要な発見すぎて、あまりにも侵害して使う人が増えちゃった」
 武内アナ
 「モートン、ちょっとかわいそうですね…」
 菊地氏
 「まあ、欲をかきすぎたんだね」(笑)
 戦争という時代、というのもあったのかもしれません。
 まあ自業自得ともいえるんだけど。
 
〇ウェルズの悲劇
 1848年1月
 ウェルズはハートフォードからニューヨークに移り住む
 そして広告を出した
 「私は、3年以上も前に痛みを消す治療法を発明したことで知られています」
 「この治療法で体調を崩した人はいない」
 「麻酔の感覚は極めて愉快」
 というようなことを書いていたらしい

 麻酔が愉快?
 …というのは、クロロホルムには依存症があり
 彼はこのとき、すでにクロロホルム依存症に侵されていたらしい

 彼がニューヨークに到着して3日後、事態が急変する
 彼はクロロホルムを吸入後、錯乱状態になり
 女性に硫酸を浴びせて回る事件を起こす
 このため彼は投獄され、有罪判決を受ける

 彼は判決を受けた日
 監獄の中で明かりを消し、隠し持っていたクロロホルムを取り出し、
 吸入した後に、自分の大動脈をカミソリで切断する…
 
 こうして彼は自ら死を遂げる。享年33歳。
 (ちなみに、クロロホルムについては、一時期麻酔薬として使われたが、
  ウェルズがかかったように依存症の副作用があり、
  不整脈も起こすとかで、今は使われていないようです)

〇モートンの悲劇
 一方モートンは、特許が侵害されまくったので
 政府に特許は要らないから、代わりに褒賞を与えるよう政府に要求する
 その額は10万ドル(3億円以上)
 彼は訴えて却下され、また諦めず訴え…
 を繰り返していたが、そのうち特許が切れてしまう

 さらに1862年のニューヨークの裁判では
 「エーテルは以前から知られた薬品で、モートンはその効き目を確かめたにすぎず、
  そもそも特許は認められない」
 という判決が下されてしまう
 つまり、特許はもともとなかったと言われたのも同じだった
 
 彼はその6年後、脳卒中に倒れ、失意のうちに亡くなる。享年48歳。

 ジャーナリストさんによると
 「結局モートンが残したものは、
  医者は金持ちになれ、という掛け声だけだった。
  彼は医学界に呪いをかけたのです」
 
 医学史の専門家によると
 「麻酔法の発見は、医学界もビジネス化していく始まりとなった、
  医療は人助け以上に、利益追求に使われることになった」
 
 モートンは、麻酔法という偉大な発明以上に 
 金儲けという負の遺産を医学界に残してしまった、ということだそうです

〇スタジオでの解説
 武内アナ
 「二人とも非業の死を遂げました、こんな最期になるとは…」
 菊地氏は
 「モートンは金儲け、ウェルズは名誉を求めた。
  二人とも医学界に何らかのバックグラウンドがあれば
  それなりのことをやれたはずなんですけどね…」
 それだけ、当時は一介の開業医師というのは学者に比べて、地位が低かったのかな。

 谷口氏も
 「今同じことが起きたら、二人がタッグを組んで、
  もっといい方法を広めて共同受賞、ということになっていたかもしれない。
  当時はそうなっていなくて、俺が俺が、となってしまった」
 と、社会が成熟していない状況を原因にあげていました
 
 武内アナ
 「モートンは、特許が認められないなら褒賞をください、と」
 菊地氏は
 「ジェンナーは、特許は取らなかったんですけど、
  素晴らしい発明をしたということで政府から報奨金をもらっているんですね。
  モートンはそれを知って、自分もそれに値する、もらうのが当然だと考えたのかもしれない」
 谷口氏
 「そもそも、国が特許を認めておいて、
  後で違うというのは一番おかしいんですけどね。
  モートンはその被害者だったんですね」

 武内アナ
 「ウェルズとモートン、どっちが功労者だと思いますか」
 菊地氏は
 「私はウェルズだと思いますね、ウェルズが考案したから
  モートンはほかにないか、と考えたんですから」
 谷口氏は
 「僕はそもそも論になっちゃうけど、
  誰が最初かはどうでもよくて、
  サイエンスとしてはウェルズが最初だけど、
  麻酔とし手の効果をもたらしたのはモートンだと思います」
 と両氏を評価していました

〇モートンが残した呪い「特許」
 医療は今や巨大ビジネスになっている
 アメリカでは、新薬や医療機器は、開発した会社が値段を決めている
 特許を持っていれば企業も強気に値段設定をして、
 これが医療費の高騰につながる

 医学史の専門家は
 「特許が薬の値を上げているのは明らかで
  これが世界で薬の買えない人が多くいる原因になっている。
  製薬会社は重要な薬を開発しても、
  患者がそれを使うことができない。
  あるいは、保険会社や政府が莫大な支払いをしないといけない状況になっている」
 と、特許の負の面を指摘していました
 
 日本ではこの特許にからむ高額医療が問題になったことがあるそうです。
 2016年、がん治療薬のオプジーボが発売された
 これは免疫機能を高めてガンを退治する画期的な薬で、
 外科手術や放射線治療にとってかわる治療として注目されている

 しかし会社はこの薬の特許を取得したので
 この薬は非常に額が高い
 最初に国が認めた価格は、100㎎あたり173万、
 1年に3500万円かかる計算だそうです

 現在の医療保険制度により、患者の自己負担は年間200万円までで、
 それ以上は健康医療保険組合や国が負担することになるが
 このままだと国の財政が破たんする、、ということで
 政府は価格を見直すよう審議会に提案したそうです
 今年減額が認められ、半額になったそうです
 
 しかし医療が高度化し、開発費もかかっている
 企業が開発費の回収ができないと、
 次の医療が生まれない、という問題もあるそうです

〇スタジオでの解説
 武内アナはオプジーボの値段を聞いて
 「がんの治療薬高くないですか?」と驚いていました。
 菊地氏は
 「今年半額になりましたね」
 谷口氏は
 「薬などを開発するとき、多くは失敗する
  実際に使える薬になるのはごく一部なので、
  失敗分のコストをどうしても成功した分で補わないといけなくなる」
 と話していました
 
 しかし菊地氏は
 「例えば手術支援ロボットは3億円するなど、医療機関には負担が大きい。
  この機械はあと2,3年で特許が切れるので、
  同じようなもので、もっと優れた機能を持つものを今開発中です。
  それだと2000~3000万円で開発できる」
 特許があるために値段が10倍になる事実を指摘していました
 武内アナ
 「それだけ高いんですね…」
 
 それでも谷口氏は
 「特許があると薬が高くなる、というのは分かるんですが、
  特許というのは期間が限定されている」
 と話していました
 特許を取るまでにも、開発に十年、治験に数年、特許が下りるまでさらに数年…
 実際に売られるまで時間がかかるので、その間のコストを回収しないといけない。
 特許が無くなったら薬や機器が出てこなくなるかもしれない、とのことです。
 武内アナ
 「そういう事情もあるんですね…」
 菊地氏は
 「お金なしでは生きていけない、怖い時代ですね」

 武内アナは
 「聴診器1つで、という時代が懐かしいですね」とも言っていましたけど
 谷口氏は
 「赤ひげの医者とかは、日本人が好きな理想像ですけど、
  現実にはそれだけで成り立つ状態にはもうなっていないんですね」
 もはや後戻りはできないようです。

 菊地氏
 「昔は感染症で死ぬのは当たり前だったけど今はそうではない、
  そのうち何であの人ガンで死んだんだろう、
  って言う時代が来るかもしれない」
 という医療の進歩の速さを話しつつ
 
 「特許はある程度必要だけど、
  でも行き過ぎるとお金儲けの道具になってしまう
  そこは研究者や企業がモラルとして持っておくべき」
 と話していました
 谷口氏は
 「そこは社会が監視していかねばならないんでしょうね。
  一人一人が監視できるよう、社会が成熟していかねばならない」
 治療法、機械などの開発にお金がかかるのは分かるが、
 必要経費を回収するだけにすべきで、
 金儲けの道具にしてはいけない、ということなんでしょうね。

〇結局、名誉は誰のものでもなく…
 最後は吉川さんのナレーションです
 ウェルズとモートン、
 痛みを取り除くはずの麻酔が、二人にとっては苦悩のもととなった。
 二人がこだわり続けた発明の名誉とは一体何だったのか…
 
 ボストンのパブリックガーデンには、
 麻酔法誕生をたたえる石碑があるそうです
 これはウェルズが亡くなった年に建設の話が出たそうです
 そのとき、建立の計画を聞きつけたモートンは、
 自分の名前を刻むよう主張したらしい

 結局、碑文には
 「吸入麻酔法により、人類の苦悩を取り除いたことの感謝の碑」
 とだけ刻まれたのだそうです。

 「個人の名は、そこにはない」
 と吉川さんは締めくくっていました。。

〇感想など
この番組を見ていると、金と名誉が結局科学者の身を亡ぼすのね…
と思ってしまいます。
でもそういうので身を滅ぼした人たちって、
差別があったり、生まれや身分だけで評価されたりしていた時代の人たちが多い。
成熟していない社会だからこそ歪んじゃった、かわいそうな人たちなんかな~とも思います。

そういう意味では、ノーベル賞など、
功績を、身分に関係なくたたえる賞がたくさんできている現代は
いい時代だなと思います。

それにしても、医療費が高いのは当たり前に感じていたけど
特許の存在だというのを改めて知りました。
でも報酬や競争があるからこそ、科学者も頑張れる。
そうして開発が進む一面もあるので
一概に悪いとも言えず、難しい問題だなと思います。

その辺はやっぱり国とか世論が
「ちょっとやりすぎじゃないですか」
「貧しい国の人たちには寄付してもらえませんか」
と企業に言って話し合う必要があるのかな~…

使う人の収入別に値段を変えるとか
ある程度補助を出すとかいうことも必要になってくるのかもしれません。

(まあ個人的には、できればそんな高い薬とか治療には
 お世話になりたくはないけど…)
 
なんにしてもお金、の時代だろうけど
そもそもは困っている人たちを助けるための研究なんだ、という精神だけは
医学、科学の世界にはいつまでも残ってほしいなと思います。

というわけで今回はこの辺で。

posted by Amago at 10:31| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年11月21日

「インターネットは自由を奪う <無料>という落とし穴」アンドリュー・キーン

「インターネットは自由を奪う <無料>という落とし穴」アンドリュー・キーン

 題名にひかれて借りた本ですが、
 読んでみて個人的にはけっこう衝撃を受けました。
 というか、インターネットを使うそこのアナタも知っておくべきですよ、
 と言いたいくらいの内容です。

 内容はシリコンバレーのIT長者への批判、
 インターネット文化への批判、
 と書いてしまえばそれまでで、極端な表現も散見されますが、
 極論だけどあながち間違いじゃないよね、と言いたくなるような指摘が多かったです。

 筆者はもともとシリコンバレーで音楽関係のIT企業「Audiocafe」を起業された方ですが
 今はデジタル革命について鋭い批判論を書く作家さんだそうです。
 彼自身も「インターネットの無限に見える可能性に魅了されていた」
 つまりシリコンバレー側の考え方もよくご存じであるし、
 シリコンバレーの方々とも交流があるような記述も見られるせいか、
 ただの感情的なインターネット文化バッシング本ではないです。

 私が特に印象的だったのは
 「我々ネットサービスの利用者は、タダ働きしている」
 という意見です。

 筆者によると、
 GoogleとかFacebookみたいなIT系の企業の経営者が
 めちゃんこ儲けているのはなぜかと言えば、
 従業員を減らして効率化しているため、だが、
 それがなぜ可能かと言えば、
 「利用者も無償で労働力を提供しているから」なのだそうです。

 というのは、Googleの検索アルゴリズムもFacebookの広告もAmazonの書籍推薦も、
 利用者の使用履歴や個人情報を利用している。
 我々が使えば使うほど、
 それらの企業のサービスの質が良くなり、企業価値も高まり、株価も上がる仕組みになっている。

 それって利用者にとっても企業にとってもいいことで、ウィンウィンじゃないの?
 と思うかもしれないが
 その結果彼らが何をしているかと言えば
 少ない従業員でサービスを提供できるので(利用者を労働力として使うからね)価格破壊をおこし、
 既存の実在店舗を市場から排除して、
 結果として雇用の機会を世の中から減らしている…

 つまりですよ、
 彼らは我々利用者をタダ働きさせて
 それで儲けているのに
 見返りをくれるどころか働き口を奪っている、
 というわけです。
 そして彼ら経営者は、信じられないくらいのスーパー億万長者になっている。

 格差が広まる理由が何となくわかりました。
 なんで最近こんなに株価上がってるのに一般市民は実感ないんだろう~
 と思っていたんだけど
 それは我々がただで働いているからなんですね。
 ネットサーフとか、フェイスブック、ブログなどに時間を取られているアナタ、
 その時間も彼らに労働力として取られているのですよ。お金はないのに(私もそうですが)

 そして筆者によれば、
 これは産業革命と変わらない構図だと言います。
 大資本家が手織業者から雇用を奪い、
 労働者階級から搾取していたのと同じだ、とのこと。

 しかしその時代とは違うのは、
 我々はそれに対してラッダイト運動を起こすどころか、
 喜んでタダ働きし、喜んで個人情報を提供している、ということです。

 それはなぜかと言えば
 1つはIT企業の経営者たちは
 自分たちだけが儲かろうと考えていたんじゃなくて、
 むしろ、みんなのためにより良い世界を作ろうとしていたからで
 Google検索も、より正確で使いやすい検索を追求してあの形になったわけだし
 Facebookも、みんなでアイデンティティを共有すればより幸福になれるはず、
 と思ってシステムを考えた、
 そしてそれらのサービスを無料で提供してくれています。

 しかしこの構造が落とし穴だ、と筆者は言います。
 無料、というのは高くつく。
 無料で利用する代わりに、我々は無限の情報や労働を提供しているわけです。

 もう1つの理由は
 我々も「インターネットは善き世界を作ってくれる」と信じているからです。

 筆者は、我々の「インターネットは善、自由、民主的、平等」という考え方は
 一種の宗教、狂信みたいなもので事実は違う、と言います。

 いや、正確に言うと、初期のコンピューター開発を公的機関がしていた時代にはそうだったが、
 ネットが商業利用されてからは変わってきてしまった、
 むしろ偏見を助長し、多様性を失わせ、勝者と敗者の格差を増やすというのです。

 例えば、ネットのおかげで
 無名な人がユーチューバーとして有名になるチャンスは(理論的には)産まれたが
 実際は、視聴者は情報や選択肢が多いほど、有名人、ビッグネームを選ぶ傾向にある。
 なので、「大多数はいつまでもインターンのまま」なのだそうです。

 また、ネットで言論の自由が産まれた、というが、
 見る人は、自分が見たい情報を選んで見る傾向にある。
 このためむしろ自分の意見に凝り固まる人が増え、差別は増えている、と。

 この理由については、筆者はそんなに細かくは分析していないが、
 要するに人間の脳の限界なんだろう。
 理論的には選択肢や自由が増えるほど幸せになりそうな気がするが、
 人間の脳は、選択肢や自由度が多くなると逆に混乱して、選ぶのがめんどくさくなる。
 なので、逆によく知っているものしか見なくなってしまう。
 つまり、選択肢が増えすぎるがゆえに、自分の考えに凝り固まるし、勝者独り勝ちも起きるのだろう。

 筆者は、なのにシリコンバレーの人たちは
 いまだに「インターネットは善」と主張している、彼らは偽善者だと言います。
 我々の「インターネットは良きもの」と信じる気持ちに付け込んで儲けている、と。

 では筆者は、こうした現状へどうすべき、と思っているのか?
 この本では、筆者自身の解決策についてはあまりページを割いていなくて
 政府による規制、企業による自己規制が必要、
 企業自身が「ノブレス・オブリージュ」
 (特権階級の人が特権に伴う責任感を持つこと)
 のような自覚を持つことが必要、というようなことを書いています。
 
 この時代にネットサービスを使わない、てのも現実的ではないし
 民主導で発展してきたネットを、今更公的機関のものに戻すことも現実的ではない、
 ということかな?と思うのだが、
 筆者も、1年後のあとがきで
 規制は自分の希望的なもので、実現するかは執筆当時自信がなかった、
 と書いており、筆者自身にもまだ答えは見いだせていないのかもしれません。

 (一応1年後の後書きでは、
 最近は現実世界でもオバマ大統領やEUが規制を口にするようになった、未来は明るい…
 みたいなしめになっていたけど)
 これからみんなで議論していくべきことなのかもしれません。

 ただ私個人の意見を言うと
 規制もあんまり期待できないかな…とも思うのですよね。
 我々が無自覚にネットサービスを喜んで使っている限り、格差はどんどん開いていくのかな~、と。
 IT長者などのお金持ちが政府と結びついて、
 規制を骨抜きにしちゃうことだって可能でしょうし。
 実際、トランプさんになってからは逆行していそうです。

 一番理想的なのは
 ネットサービス提供者、ネット企業の経営者が
 利用者にも働いてもらっているから自分たちが儲かっているんだ、
 という自覚をもってもらうこと、
 そしてもっと社会に貢献してもらうことかなと思います。
 税金たくさん払って、ベーシックインカムに貢献するとかね。

 筆者の指摘によれば
 「シリコンバレーの連中は労働者階級には冷酷」
 らしい。
 「俺たちは自分の力で儲けてきた、人を雇ってやってる、サービスを提供してやってる」
 と思う人が多い、ということなのかな?
 もしそうなら、考えを改めてほしいなあと思います。

 あともう一つは、我々利用者も自覚が必要だということ。
 利用者みんなでちょっとずつ労働力を提供しているから、ネットサービスが成り立っているのに
 それを構築した一握りの人たちだけに富が集中する今の構造はなんかおかしい、
 と私はこの本を読んで思いました。

 そして、そう思う人が増えれば、
 インフラサービスみたいに、ネットのサービスも
 公的な機関にゆだねる、あるいは規制や監視を厳しくしよう、
 という機運が高まる可能性もあるのかなと思います。
 
 筆者の言葉が結構批判的なので、あんまり話題に上らないのかな~
 経済学者さんとかにも読んでもらいたいな~、っていう本です。

 一応メモ程度に内容を書いておくと
 〇第1章はインターネットの歴史その1。
  コンピューターやワールドワイドウェブ(WWW)が公的機関で開発されていった時代の歴史です。
  第二次大戦中から1990年代くらいの話。

 〇第2章はインターネットの歴史その2。
  コンピューターのサーバー管理が民間に委託された時代のことで
  これはさらにウェブ1.0時代とウェブ2.0時代に分けられるようです。

  ウェブ1.0は、無償で提供されていたWWWが民間の手に渡り、商売道具になった時代。
  WWWを使いやすいソフトにして売ったNetscape社が大儲けしてしまったことから、
  ネットはお金になる、という認識が広まった。
  そこからIT企業がたくさん生まれたそうです

  ウェブ2.0は、利用者参加型のサービスが産まれた時代です。
  NetscapeやYahooなんかは、収入源をスポンサー広告で賄っていたそうですが
  それを変えたのがGoogleだそうです。

  Googleは画期的なアルゴリズムを発見したそうです
  これは、あるページの重要性を、そのページとリンクを張っているページの数と質でランク付けする、
  というもので、
  これにより、検索を使えば使うほど精度が上がる仕組み、というのができたのだそう。

  またGoogleは最初の画面での広告をやめて、
  検索結果のところに、検索結果に合わせてカスタマイズされた広告が示される仕組みにした。
  これにより、最初のごちゃごちゃした画面がすっきりして使いやすくなり、
  一方で広告収入は確保できるようになった、とのことです。

  また、Facebookも、参加者が増えるほど便利になる仕組み
  広告も、参加者が増えるほど有益なものが提示される仕組みになっている。

  Amazonの推薦図書や書評の仕組みも、利用者参加型の仕組みを利用しているし
  フェイスブックの写真版みたいなインスタグラムも出てきている。

  利用者参加型のウェブサービスは、無料で提供され、
  また使うほど便利なので、ますます利用者が増えている、
  とのことですが、
  この構造が落とし穴で、利用者をタダ働きさせ、企業の雇用を減らし、格差拡大を助長していく。

  また、この「利用者参加型」というビジネスモデルはほかの経済にも影響を与え、
  シェアサービス(ライドシェア、民泊など)、 
  ブロックチェーンシステム、
  クラウドファウンディングなどのサービスももたらしている、とも書いています。
  筆者によれば、これらはシュンペーターの言う創造的破壊をもたらしている、とのこと。
  しかもそれは本当の意味での大きな破壊で、
  既存の産業の雇用を奪い、労働条件を悪化させているそうです

 第3章から8章までは、インターネットの負の面について論じています。
 〇第3章は、インターネットが既存の雇用や経済システムを破壊した、という話。
  デジタルカメラの普及で衰退を余儀なくされたコダックの話が軸になっていました。
  コダックは、現像サービスなどで稼いでいたが、
  みんなが手軽に写真を撮れるようになってしまった、
  つまり機械と利用者が労働するようになったために衰退したのですが

  ほかの産業でも、人工知能や機械により人の労働が奪われている。
  また、IT企業などに見られる効率化で、
  従業員が少ないのに収益を上げる企業が台頭してきている、とのことです。
  「今後は、高スキルの富裕層だけに雇用がもたらされ、
   中間層は壊滅的になる」
  という経済学者たちの予想も紹介されています。

 〇第4章は、インターネットが文化の破壊をもたらしたという話。
  Facebookの画像版のようなサービスを提供するインスタグラムの話が軸になっていました。
  筆者は、インスタに代表されるような自撮り文化は
  現代文化を聞きに追い込む、としています。

  自撮りや投稿などの行為は、ナルシシズム、自己愛を増大させ、
  他人に対するのぞき趣味を助長する、とのこと。
  つながりたい人とだけつながることで、他人への信頼感もむしろ減るそうです
  ある調査では、自撮り世代(2000年以降生まれ)は、
  ほかの世代に比べ他人への信頼感が薄い、
  という結果があるそうです。
  
  また、インスタなどのサービスは、
  利用者は、無料で楽しめる代わりに無償労働をするシステムになっており、
  それは既存の雇用を破壊する。
  また、ユーザーのプライバシーもさらけ出してしまう問題もある。
  筆者によるとその構図は
  「ユーザーの自己愛につけこみ、非常にわかりにくく隠された
   利益を得る手段として企業が利用している」としています
 
 〇第5章は、インターネットが音楽などのクリエイティブ産業の空洞化をもたらした、という話。
  楽曲データがユーチューブやナップスターなどで
  誰でも無料で入手できるようになった結果
  失業するミュージシャン、アーティストなどが急増したそうです。
  (筆者はインターネット上の海賊行為、経済レイプ、泥棒などと
  結構過激な表現をしていますが)
  
  これは、インターネット経済が広まりだしたころ
  インターネットは平等、自由という理想のもとに
  ウェブ上で配るものはすべて無料で提供していた文化にも原因があるそうです

  筆者はこれを「サンタクロース経済」と表現していますが
  確かにウェブ上のものって無料が当たり前、有料のものは敬遠されてしまいますよね…
  (ウェブライターの収入もかなり低いし)
  これは立ち上げの時期に、
  きちんと労働に対する対価を取ってこなかったツケが来てるのでしょう
  
  同様の理由で、電子新聞の普及でジャーナリストも仕事の場を失っている。
  若いクリエイターたちが。低賃金の労働でこき使われる構造になっているそうです

 〇第6章は、インターネットが格差や分離、差別をもたらし、多様性を失わせている、という話。
  筆者は、インターネットの民主化(ウェブ2.0)で、
  一般の人たちも平等に発言できる場ができる、
  選択肢も増えて多様性も増す、
  と思われていたが
  むしろますます不平等になり、
  多様性が無くなっている、としています。

  これは
  「楽曲オンラインストアの独占と、
   消費者が選択肢の過多という横暴にさらされているため」
  と筆者は書いていますが、
  つまり人が多すぎるので、無名なものは選ばれず、安パイだけ選ばれる、とのこと
 
  この状況はオンライン教育の分野でも起きている
  ネット授業は限られたカリスマ教師だけが選ばれ、
  その授業を受けられるのも一握りの金持ちである。
  また、ジャーナリズムはスポンサー企業の広告手段となり
  独自性、質の良さはおろそかになっている、とのことです
 
  また、心理学者によると
  「我々は喜びより怒りを分かち合いたがる」(被害を受けた仲間を求める)そうで
  ソーシャルメディアでは、怒りが最も拡散されるのだそう
  その結果、差別的な言葉や憎悪を伴う言葉が広がっていく
  「ネットは弱い人、不幸な人の味方と言いながら
   経済格差を増やし、無防備な人たちに向けられる憎悪を増やす」としています。

  さらにたちが悪いことに、ネットは匿名性があるので
  悪意や間違った情報を出す人たちが隠れることもできる
  情報の改ざん、不正確な情報も広まってしまう、としています。

 〇第7章は、インターネット企業は個人を丸見えにさせる、という話。
  Googleは、グーグルマップとかストリートビュー、Gmailなどで
  個人情報を集めているし、
  最近ではウェアラブル端末で何もかもがネットワークされる
  自動運転車も、走った経路がデータとして収集されるのだそうです

  筆者はこの状態を皮肉って
  旧東ドイツの「シュタージ」(個人の情報を監視する秘密警察)
  と同じようなもの、としています
 
  さらにこれらの企業のデータは
  NSA、CIAなど国の機関に提供されている可能性もある
  企業が国の言いなりになっているかもしれない、とのことです
  (アメリカの場合、個人が国家もあんまり信用していないところがあるので
   これが問題視されるのだろうと思われる)

 〇第8章は、シリコンバレーの人たちの考え方への批判ですかね。
  これは筆者の偏見も入ってるかも?で、かなり辛辣でした。
  筆者によれば、シリコンバレーの人たちは失敗を自慢したがるんだそうです。
  どんどん失敗して挑戦せよ、既存権力を破壊せよ、それがイノベーションだ、みたいな考え方です。
  しかし筆者によれば、それは彼らが雇用や経済を破壊して独占するための方便だ、としています。

  この章の後半はシリコンバレーでの格差増大についてで、 
  儲かっている企業の従業員はプライベートバスを使って公共機関のバスを妨害しているとか、
  貧困解決の答えは「インターネットだ」と主張し
  自分たちの儲けになるような慈善事業をしている、
  という感じの批判をしています。
  
 〇第9章は、筆者なりの解決策を述べています。
  コンピューターをたたき割る、
  ネットワークから離れる、
  マグナカルタみたいな決まりを作る、
  公共的な対抗商品の開発、
  匿名コメントの規制、
  オンラインの商品に相応の値段をつける
  「どうせ解決しない」とあきらめる
  …などの各人の解決案?を紹介しつつ

  筆者自身は「歴史に学べ」と述べています。
  産業革命が起きて、労働者は苦しい立場に置かれたが
  政府の規制がバランスよく働いて、世界の繁栄を築くことができた
  同じように、政府の規制をしたり、業界で自主規制をしたり
  シリコンバレーの人たちが「ノブレス・オブリージュ」(特権に伴う責任感)を持ったり
  などをすべきだ、として終わっています。


ネット社会のことについては、
以前読んだ「アマゾノミクス データ・サイエンティストはこう考える 」
(データサイエンティストのアンドレアス・ワイガンド氏)
という本で

「個人データをネットやウェアラブル端末などで使われるのは、
 もはや時代の流れなのだから受け入れろ、
 その代わり個人がそのデータを管理する権利を主張せよ」

…って感じの考え方を目にしたけど、
その本を読んだ時は、それが時代の流れなのかな~と思いつつ、
なんか横暴というか、違和感がありました
(シリコンバレー側の人たちの思想ですね)

なので、今回、ネット社会の「個人データの危機、格差の拡大」
などについてズバズバ指摘してくれた今回の本は気持ちよさも感じたのですが
しかし、解決策としては両者はかなり似ているのかな、と思います。

我々ネットの利用者が
「我々の個人データや時間、労働力を利用されている」
ということをそろそろ自覚して、
相応の権利を主張すべきだ、
という点では同じなのかな、と。

まあでも、現実としてはそういう運動は起き無さそう…
と個人的には悲観的に思っています。
個人データの利用とか
ユーザーによる無償労働、それによる雇用破壊、雇用の減少は進みそう。
ベーシックインカム導入論もあながち夢物語ではないかな、と。

無償労働については
これだけたくさんの人がブログを書いていて
しかも仕事じゃないのに、マニアックで素晴らしい内容を書く人もいる。
プロよりも情報が多いかもしれなくて
そういう時代に、プロの書き手って存在意義あるのか?という話にもなってしまうと思われる。

それに対して、個人としてできることとしては
あんまりネット依存にならないこと、
ネットに使う時間をそんなに多くしないこと
「タダ働きを減らす」「働いてもいいくらいのタダ働きを提供する」ことなのかなあと。
私もブログ書くのに時間かかるので、
そろそろ引退しようかな~と最近思ってたとこです。

それから、ネット上の海賊行為、
ネット上の憎悪の拡散、などは
ある程度はこのまま進むんじゃないかなぁ、と思います

それに対しては、
違法の音楽コピーを使わないとか
悪意のある意見、間違った意見を見抜く力を身につける、
いろんな意見、特に自分とは違う考え方を見るようにすること、しかないのかなあ。
(それこそ、間違った情報、悪意のある情報を
 自動的に見つけて削除してくれるAI開発してくれんかな)

 そういえば最近、上の子が
 「隣の席の子が、「2年後に地球が滅びる、ってグーグル検索で出た」って言ってた」
 と本気で心配そうに言ってきたので
 「ほっとけそんなの」って言った記憶があります(笑)
 「2000年になる前にそんな話いっぱいあったわ」と。
 正しいか分からん情報に、子供も振り回されないことが大事ですね。


…ネットは便利だから、たぶん廃止されることはないだろう。
私自身もネット社会はどうあるべきか、答えが出ていませんが
いろいろ今後の世の中について考えさせられました。

というわけで、今回はこの辺で。
posted by Amago at 15:03| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年11月20日

NHKBS「シリーズ医療革命 新アレルギー治療~カギを握る免疫細胞~」

NHKBS「シリーズ医療革命 新アレルギー治療~カギを握る免疫細胞~」

先週放送されていた医療革命シリーズ。
その中で一番びっくらぽんだったのがこのアレルギーの話だったので
メモとして書いておきたいと思います
(ちなみにこのシリーズ自体は放送が2015年のもの、
 ほかは腸内細菌の話と、糖尿病スパイク、腰痛の話でした)

何が驚いたって、
アレルギーを防ぐには幼少期の環境が大事、という話が多く
しかもそれは、子供の健診の時、保健所とかで習ってきた「常識」とは真逆のもの。
まあまだ研究段階で、国の指針はそれに追いついていないんだろうけど、
養育者、親などが見ておくべき内容ではないかと思いました。

番組全体の主役となるのは「Tレグ」という免疫細胞。
20年前、阪大の坂口志文さんが発見されたもので、
制御性T細胞、といって、
免疫反応が過剰に働くのを防ぐ機能を持つのだそうです。
しかしこれがアレルギーに関係する、というのは最近分かってきたそうです

内容としては
〇家畜との触れ合いがTレグを増やす
〇幼少期の食事が食物アレルギーを防ぐ
〇幼少期の皮膚炎クリームが食物アレルギーの原因?
〇新しいアレルギー治療法

〇家畜との触れ合いがアレルギーを防ぐ
 ・アーミッシュの人たちの生活
  このTレグがアレルギーを防ぐ役割がある、と分かったのは
  アメリカのアーミッシュと呼ばれる人たちの研究でした。

  アーミッシュの方々はヨーロッパからアメリカに移住してきた人たちで
  宗教上の理由により、原始的な生活をしているそうです
  (文明を嫌う、というので、
   一瞬以前何かの番組でみた、黒ずくめのユダヤ教超厳格派の人たちかと思ったのですが
   アーミッシュはそれとは別で、キリスト教の一派みたいです。
   http://dte-amish.com/19
   ではアーミッシュの方と暮らされた経験が書かれていて、
   あえて文明と交わらない彼らの考え方にも一理あるな、と思わされました)

  彼らは文明のものを好まないので、カメラに映されるのも嫌がるそうですが
  オハイオ州のアーミッシュさんたちは地元の医師たちとは交流があり、
  彼らのつてで取材が許可されたのだとか
  
  アーミッシュの人たちはアレルギーが少ない、
  というのは知られていて、
  その原因を調べるため、ミュンヘン大のムティウス博士が調査したそうです

  彼女は最初、アレルギーを防ぐ特別な遺伝子があると考えたそうですが
  (アーミッシュの人たちは地域内での結婚が多いため)
  
  原因はそうではなく、生活環境にあったそうです。
  彼らは馬車に乗り、食料は無農薬のものを自給自足、
  毎日家畜の世話をする生活。
  この家畜小屋の埃に含まれる雑多な菌が、
  彼らの血液中の「Tレグ」という免疫細胞を増やしていた、とのこと

  アーミッシュの人たちの血液中のTレグは、
  都会に暮らす人より35%も多いという結果が分かったらしい

 ・Tレグの機能
  Tレグを発見した阪大の坂口氏によると
  このTレグは、免疫細胞が活発になった時、
  敵ではないものを間違って敵として無駄に攻撃していたら、
  それを鎮める働きをするのだそうです
  
  彼によると、都会の人にアレルギーが多いのは
  このTレグが鍛えられていないので、十分に働かないためと考えられるそうです

 ミュンヘン大のムティウス氏によると、
 免疫細胞は3歳くらいまでに作られるので、
 この時期に家畜と触れ合うとTレグがたくさん作られるらしい

 じゃあ大人になってからじゃダメなの?と思っちゃいますが、
 デンマークの研究では、
 大人になってからも、長い間家畜の世話をする生活をすればTレグが増える、
 という結果もあるそうです
 ただし、10年20年単位で長い間家畜と触れ合わないといけないのだそうで、普通の人には難しい…

〇幼少期の食事が食物アレルギーを防ぐ?
 次は食物アレルギーについてです

 子供の食物アレルギーに悩むオハイオ州の女性が紹介されていました
 彼女は、夫がピーナツアレルギーだったので
 子供はそうならないようにと、
 妊娠、授乳、離乳食の段階ですべてアレルゲン食品を避けていたそうです

 しかし、2人の子供は夫よりひどいアレルギーになってしまった
 「できるだけのことはしたのに、何を食べさせたらいいのか」
 と話していました
 (私も離乳食の時悩んだので、よくわかります)

 アメリカの指針では
 「母親は妊娠中、アレルギー食品を避けること
  子供には乳製品を1歳まで、卵は2歳まで、魚は3歳まで与えてはいけない」
 とあるんだそうです
 
 しかしハーバード大で、それと真逆の研究結果が発表され話題になった
 妊婦さんについて、アレルギー食品を食べた回数と
 子供のアレルギーの発症の関係を調べたところ、
 食べた回数が多いほど、アレルギーの発症が少ない、という結果だったらしい

 また、2015年、アメリカアレルギー学会で発表された
 ロンドン大のラック博士の研究では
  600人余りの生後6~11か月の赤ちゃんについて
  ・半数は医師の指導のもと週3回、少しずつピーナツを食べさせ
  ・もう半数は徹底的にピーナツを避け、
  両方のグループの5歳時のピーナツアレルギーの発症率を調べたそうです

  すると、徹底的に避けたグループは17.3%
  しかし、少しずつ食べさせた方はわずか3.2%だったらしい

 ラック博士によると
 動物実験では、生後間もないネズミにピーナツを食べさせると
 Tレグの発現が大幅に増えた、という結果があるそうで
 幼少期にあえてピーナツを食べさせることで
 ピーナツ専門のTレグの発現が誘導されるのではないか、
 同様に、卵専門のTレグ、小麦専門のTレグがあるのでは、とのことです

 これはちょっとびっくりしました。
 だって指導されてきたことと真逆じゃないか。
 私も肉とか魚はいつ食べさせようか迷ったし
 ピーナツなんて子供はいまだ食べてないんじゃないかと思われる。
 しかしさらにびっくりな内容が、次にありました

〇幼少期の皮膚炎用クリームが食物アレルギーの原因?
 イギリス、ロンドンの大学生が紹介されていました
 彼は重度のピーナツアレルギーで
 症状が出た時に刺す注射を常に携帯しているそうです

 彼の母親によると、
 ピーナツアレルギーが出たのは3歳ごろだったそうですが
 生後8か月くらいから湿疹があり、クリームを塗って治していた
 それが治ったと思ったらピーナツアレルギーが出たのだそう

 実はこのクリームが曲者だそうで
 先ほど登場していたラック博士によると
 スキンケアクリームに使われるピーナツオイルが、
 アレルギーの原因となっている可能性があるそうです
 ピーナツアレルギーの方45人への聞き取り調査によると
 9割あまりがピーナツオイルをスキンケアに使っていたのだそう

 普通、皮膚はバリアとなって異物を抑えるが
 皮膚炎などでバリアが弱くなっているところにクリームがすりこまれると
 皮膚のすぐ下にある細胞が「これは異物だ」と認識してしまい、
 免疫細胞の所に持って行っていくのだそうです
 そうなると免疫細胞が活発化し、
 Tレグの抑制作用より大きくなってしまう

 先ほどは、腸から取り込めばTレグが増える、といったが
 皮膚から入ると、逆に免疫細胞が活性化してしまうらしい
 
 ラック氏の研究によれば
 これは動物実験でも確かめられているそうです
  ネズミの皮膚の傷の所にアレルギー性物質を刷り込み
  そのあとたんぱく質を食べさせると、アレルギー様の反応を示す
  (体温が下がり、動きも鈍くなる)
 
  しかし、先にこのたんぱく質を食べさせた後、
  皮膚の傷の所に刷り込み、またたんぱく質を食べさせても
  アレルギー様の反応は弱くなるのだそうです
  (元気なままで、体温も低下しない)

 つまり、アレルギー性物質は、
 先に腸で取り込ませ、皮膚から入るのは後からにすれば、
 食物アレルギーを防げる可能性があるのだそう

 今までの親への指導は
 「食物アレルギー性の食品はなるべく後から食べさせましょう」
 「赤ちゃんの肌は弱いので、クリームを塗ってスキンケアしましょう」
 でしたけど、これがかえってアレルギーを助長させていたのかもしれない、
 ということらしい。
 近年アレルギーが急増しているのもそのためなんだろうか…

〇新しいアレルギー治療法
 Tレグの働きが分かってきたところで
 最近新しい治療法が出てきているそうです
 ・舌下免疫治療法
  一つは、舌の裏に少しずつアレルギーの原因物質を垂らしていく治療法
  これは割と前から行われているようですが
  治療に長期間の通院が必要なのと、
  3割は効果が出ないなど、体質により差が出る
  (最近では、この治療で重篤なアレルギー症状を起こす人もいる、
   という話ニュースになっていました)

 ・お米を食べてアレルギーを防ぐ
  そこで考えられたのが、特別なお米を食べる治療法
  これはつくばの農業生物資源機構(もとは農水省の研究機関、今は独立行政法人)
  で開発されたお米だそうです。

  このお米はスギ花粉の成分を含むが、
  花粉の中でもアレルギー反応を起こす危険なたんぱく質は除去し
  免疫と関わる部分だけ残しているので
  アレルギー反応を起こさないまま、免疫力をアップさせる効果が期待できる

  50人に、毎日1食、2か月このお米を食べてもらったところ
  花粉の攻撃細胞は50%低下した、という結果が見られたそうです
  
  この実験に参加した女性がいましたが
  食べる分には普通のお米と変わらない、
  2か月食べたら攻撃細胞は1/3になり、
  毎年ひどい花粉症だったが、今年は何の症状もなかった、と話していました

  (このお米は
  http://biosciencedbc.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=2006&number=5115&file=FQYHYz6OIo5/UQqFWnIDKA==
  (「蛋白質 核酸 酵素 という雑誌の記事)
  によると、アレルギーというのは、
  スギ花粉のアレルギー物質に対し、体のT細胞が過剰反応して起きるものだが、
  その際T細胞がスギ花粉を認識するとき、目印となるペプチドがあるそうです
  そのT細胞抗原決定基、と言われるペプチド断片だけを入れ
  アレルギーの原因となる物質は要れないので大丈夫なのだそうだ。
  また、なぜお米かというと、稲の胚乳組織はもともと貯蔵組織なので
  たくさんのタンパク質を貯蔵できるから、なんだそうです

  また、http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/077693.html
  によると、今年は東京慈恵医科大学と大阪はびきの医療センターに
  臨床治療用として提供されるのだそうです

  まあ、このお米自体は遺伝子組み換え作物なので
  作り方自体に賛否が分かれるところはあるようで、そんな論調のサイトも散見されますが
  アレルギー対策ならいいのかなあと個人的には思います)

 ・Tレグをリンパ節に直接注射する治療
  これはデンマークのオークス大学で行われている研究で
  Tレグが作られるのはリンパ節なので
  ここに直接Tレグを注射して増やす、という治療法だそうです
  3回刺すだけなので負担は少ないそうですが、
  リンパ節は小さいので、注射を刺すのには高い技術がいるらしい
 
  ただ、実験を受けていた男性は「今のところは症状が出ていない」とのことでした
 
〇感想など
・赤ちゃんのスキンケアクリームが食物アレルギーの原因かも、
 という話は一番印象的でした。
 というのは、下の子は生後8か月かそこらから首や額などに湿疹ができていて
 健診などに行くたびに「治療しているか」と聞かれた記憶があるのです。

 私は個人的には、皮膚に薬を塗る、という治療法はよくないと思っています
 (あくまでも個人の見解で、他人に勧めはしませんが)
 というのは、私自身が若いころ、おしりから太ももにかけてひどい湿疹になったことがあったんです。
 汁も出て、パッドがないとズボンがダメになるくらいでした。
 (お恥ずかしいですが生理用パッドをひそかに張り付けていました)

 そのときは、何を塗ってもダメでした。
 色んなサイトを見たり本を読んだりしたんですけど
 結論に至ったのは「何もしない、できるだけかかない」
 ってのが一番ではないか、ということでした
 
 どうしてもかゆい時はかけばいいと思う。
 ただ、ひっかいて傷をつけないようにだけは気を付けねばならないけど、
 かゆいものは体がかゆいって言ってるんだからしょうがないと思う。
 そうしてそのうち汁が出てかゆくて、乾いて、皮膚ができて…
 それでまだ破れて汁がでてかゆい…
 てのを繰り返していたんですけど
 そのうちほっといたらだんだん良くなってきたんです。
 (っていっても半年くらいはかかったけど)

 ほかにも数年後、左の耳の中がやたらかゆくなって、
 汁も出て…というときもあって、
 こいつも頑固で、数か月治るまでかかったんですけど、
 パッドとかつけて何とかかかない(かくとしても、なるべく引っかかないようにして)
 ってのをしてほっといたらだんだん良くなりました。

 この耳の湿疹、指の湿疹なんかは時々なるんですが
 薬をつけてもあんまり役に立たないし、
 自然に任せた方がいいなあと思うようになりました。
 体が健康なら、自分で皮膚を再生できる治癒力はちゃんと体に備わっている、と感じました。

 …話が脱線しましたが、
 下の子が湿疹出た時も、どうしようかな~と思ったのですが
 どうしてもかゆくて寝られない、って感じでもないし
 そんなにガシガシかいている雰囲気も見られないし、
 単に周りの大人が状態を見て「かゆそう」って言ってるだけのように見えたので 
 あえて何も塗らずに放置していました。
 (義父母さん、医者など周りからの圧力もあったがスルー(笑))

 なんかのサイトでは「2,3歳までにステロイドを使うと後々大変」
 とかいう情報もあったこともあり
 (科学的根拠はないので真偽は何とも言えませんが)
 薬を塗ることで後悔するようなことにはなりたくないな、と思ったし
 自分自身も放置して治っている、っていう実績があったので…

 そうしたら、2歳かそこらには勝手に治っていたと思います。
 もちろん今は顔などには湿疹はないです
 (たまに手首とかかゆそうな時はあるが、それもほっといたら治る)

 ステロイドの影響については賛否両論いろんな意見があるし
 私も何とも分からないなと思っていますが
 ステロイドが無くても、クリームの成分が
 食物のアレルギーの原因になってしまう恐れがある、
 というのはちょっと怖いな…と思います。

 もしかしてそのとき子供にクリームを使っていたら
 何かのアレルギーになっていたのかも…とか思うとぞっとしました。

・子供の時にあえてアレルギー的なものを食べさせる、
 という話もちょっと驚きました。
 私はあんまりアレルギーには神経質ではなく、
 飲酒はしなかったけど、卵も牛乳も食べてたな。
 下の子のときなんかは、なぜかがっつり肉を食べたくなって食べていました…
  
 ただ子供に食べさせるときは
 卵などは1歳前くらいまでは黄身だけにするとか、気は使っていたかもです。
 でもアメリカの3歳まで魚なし、というのは初めて知りました。
 じゃことか白身魚とかは普通に食べさせていたような…

 もちろん生ものとかハチミツとか、細菌感染の恐れがあるものはダメだろうけど
 あんまり神経質にならない方が逆にいいのかなと思ってしまいました。

・スギ花粉のお米は興味深いなと思いました。
 ただ遺伝子組み換え作物なので、栽培は限定的かもしれないですね…
 もし実用化したら、医薬品扱いになるんだろうか?
 それとも特別保健食品、みたいな扱いになるのかな?
 あんまり知られてないですけど、
 遺伝子組み換え作物の問題とか
 法整備などの問題とか、議論は呼びそう…

アレルギーにならないように、と気を付けた結果が
逆にアレルギーを増やしていたかもしれない…
という事実が何よりも驚きでした。
(指導する国の方も大変そうだけど)
人間の体って複雑ですね~

へえ~が多くて面白かったです。
というわけで今回はこの辺で。



 
 
 
posted by Amago at 12:29| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする