2018年02月20日

Eテレ ダイアモンド博士のヒトの秘密「第4回~第6回」

Eテレ ダイアモンド博士の人間の秘密「第4回~第6回」

カリフォルニア大学のジャレド・ダイアモンド博士が、
高校生に人間の進化の歴史を教えつつ、
これからの人間の未来について考える番組。
野外授業形式になっていて、きっと参加する高校生にも刺激になるんだろうなぁと思います。

ダイジェストになっていて1回1回がコンパクトなので
数回分まとめて内容をメモっておきます。

第4回「性と出会いの不思議」
この回はパートナー選び、要するに恋の話でした
この恋の相手選びが、人間に人種という多様性を持たせたのだそうです
●自然淘汰と性淘汰
 進化論のダーウィンは
 有名な「自然淘汰」のほか、
 「性淘汰」も唱えていたそうです

 性淘汰は、自然淘汰に反するようなパートナー選びを説明する

 例えば孔雀は派手な羽のオスの方がモテるが、
 自然淘汰からすると目立つ方が殺されやすい
 そこで性淘汰が働く、と考えられている

 性淘汰と自然淘汰との関係については3つの説がある
 1実は自然淘汰と連動している説
  例えば、派手な羽の遺伝子が、実は別の生存にかかわる未知の遺伝子と関係している…など
 2自然淘汰とは無関係説
 3ハンディキャップ説
  自然淘汰的には不利なのに生き残れるんだから、
  とても強い生存力があることを示していることになる、という説

 動物の世界では性淘汰が自然淘汰を上回る場合もある
 たとえばコウホウジャクは、オスが長い尻尾を持つ
 繁殖のとき伸びるので繁殖に関わると考えられるが

 この尻尾を長くしたり短くしたりした研究がなされたそうです
 すると尻尾が長いほど有利に生き残ったらしい

 「性淘汰が自然界に多様性を産み出しているのかもしれない」そうです

●互いに似ているけど似すぎないパートナーを選ぶ
 1962年の研究では、
 結婚10年以上経過したカップルを調べたところ
 中指の長さ、耳たぶの大きさ、背の高さなどは似ているカップルが多かったそうです

 一方博士の経験談では、
 自分の妻とは目の間の広さなど、似ていない所もあるが、
 考え方や趣味は合うので結婚できたのでは、と。

 つまり人はパートナーに容姿が似ている人を選ぶ傾向にあるが、
 最終的なパートナーを決めるものではないとも言える

 また、似すぎている相手もパートナーにならないらしい
 例えばニッポンウズラについてのケンブリッジ大学の研究では
 雛を家族から離して育て、再び家族に戻してパートナーを選ばせたところ
 教えてないのに兄弟は選ばず、
 従兄弟など血縁が遠い鳥を選んだ

 つまり似すぎないパートナーを選ぶことで、近親相姦を避けているらしい

●人種の起源
 博士によれば、パートナー選びは人種の起源にもつながったらしい

 ヒトの祖先はみなアフリカ生まれ、
 6万年ごろから各地に移住し、様々な人種に別れた

 同じ祖先なのに、肌や目の色が人種ごとで多様なのはなぜか?

 肌の色は「自然淘汰説」と考えられている
 赤道に近い国は強い紫外線を防ぐため、メラニンを増やして色を濃くした
 一方極に近い国は太陽光が弱いため、ビタミンD不足にならないよう肌の透過度を高めた

 しかし博士によれば例外もあり、
 例えば南極に近いはずのオーストラリアのタスマニア原住民は肌の色が比較的濃い
 また、赤道付近のアマゾンにも比較的色白の民族がいる
 いずれも1万5千年前から問題なく暮らしている
 この理由は分かっていない

 一方髪の毛や目の色の理由は、いまだ分からないそうです

 博士が注目しているのは「性淘汰」と「創始者効果」

 創始者効果、とは
 ある民族が移住したとき、
 最初に移り住んだ人間の特徴がそのまま優勢になってしまう効果
 また、似た人を選ぶ性淘汰も、優勢な特徴を維持させる後押しになる
 欧米で金髪、青い目がモテるのも創始者効果、性淘汰かもしれないらしい

 ただし、
 「人種の起源は繊細な問題を含むので、注意を払う必要がある」とも話していました

 生物は、似ているけど似すぎない人を選ぶらしい。
 あなたも誰か好きになったとき、少し科学的に考えてみるといいかも…だそうです

第5回「夫婦の起源 性の不思議」
 この回は生殖の話。
 なぜ人間は一夫一妻制か、なぜ浮気するのか、なぜ年中行為ができるか、などの話でした
●動物の夫婦の形は様々
 生物の世界では、一夫一妻制とは限らない
 例えば霊長類だけでも、
 ゴリラはオス1匹にメス数頭のハーレム状態
 チンパンジーはグループ内で自由に交尾する

 また、ほ乳類はほとんどメスが子育てするが、ヒトは夫婦で行う

 ちなみに、一夫一妻制かどうかを見分ける方法として、体の大きさがあるそうです
 例えばハーレム状態のゴリラはオスの方が体が大きい(強いオスが選ばれるので)
 一夫一妻制のオスとメスはだいたい同じ傾向にある

●なぜヒトは一夫一妻か
 ヒトは子育てに20年など時間がかかるため、夫のサポートも必要
 しかし夫にとっては、自分の子でなければ割に合わない
 このため夫婦のペアをはっきりさせておく必要があると考えられている

 ちなみにチンパンジーはグループ内でペアがはっきりしないが、
 グループみんなで子育てするためサポートは受けられるらしい

●なぜヒトは浮気をするのか
 浮気の生物学的なメリットは
 ・男性側の浮気は、自分由来の遺伝子をたくさん残せる
 ・女性側の浮気は、夫を騙して他の男との子を育てさせられる

 デメリットは
 ・パートナーと別れるリスク
 ・男側の浮気では、妻が他の男とに取られ、自分の子かわからない子供ができる危険がある

 (浮気に関する生徒からの質問)
 ・ヒト以外にも浮気はあるか?
 →あるらしい。
  一夫一妻制のスズメの研究では、
  ヒナのDNAの5%が夫以外由来だったそうです

 ・避妊が浮気に与えた影響は?
  →婚前交渉も可能になり、影響を与えたと思う

 ・避妊したら遺伝子を残す本来の目的と違うのに、浮気するのはなぜか
  →潜在意識に残るのではないか
   我々は自分の行動について、心理的な現象しか説明できないものである
   それと進化的なふるまいとは別物と考えられる

●なぜヒトの排卵時期は分からないのか
 動物の中で、排卵時期つまり妊娠可能時期がわからないのはヒトくらいらしい

 他の動物では、チンパンジーはお尻が赤くなる、など変化が起きる
 このためこの時期だけ交尾すればいいようになっている

 しかしヒトは年中行為が可能。
 これはなぜなのか?謎ではあるが4つの説があるらしい
 主に妻側の戦略と考えられ、
 1性行為と引き換えに、男性に育児参加させるため
 2排卵時期が分からないと男性は常に一緒にいるしかなくなる、つまり一夫一妻を維持させるため
 3できた子供が誰の子かわからないようにし、子供の命を守るため(動物では、オスが自分の子でない子供を殺す行為がある)
 4女性が妊娠を回避し、体への負担を減らすため

 ヒトの男女関係は、
 他の動物と違い、子育てを共同で行う目的があるそうです
 子育てへのサポートが必要なので、他のカップルとも仲良くやっていく必要もあるようです

●モラル
 モラルは、進化生物学者にとっては不可思議なものらしい
  進化論で考えれば浮気は合理的なはずだし
 女性も権力のある金持ちと浮気すればいい
 殺しあいで資源を奪い合うのも合理的になる

 しかしヒトは道徳を持つ
 博士によれば、道徳は遺伝子を超える存在なのかもしれない、とのこと

 罪悪感は後天的なものか?
 遺伝や自然な環境で生まれたのか?
 殺すのは進化に反しているから止めろということか、
 倫理に反しているから止めろということか?

 道徳観を持つのは人間だけで、これはなぞらしい

第6回「不思議いっぱいヒトの寿命」
 この回はなぜ寿命があるのか、なぜヒトは途中で子作りを引退するのか?という話でした
 不老不死は幸せなのか?と考えさせられました
●寿命はなぜ決まっているのか ヒトの寿命はだいたい120歳、
 亀は170年以上、ネズミは2年など寿命は動物により異なる

 なぜ寿命が決まっているのか
 博士によれば、
 生物学者は染色体のテロメアの長さで決まるというが
 進化生物学的に見れば違うと感じるそうです

 博士の説では自分の体の再生に費やすカロリーと、
 生殖に費やすカロリーとのバランスで決まるのではないか、とのこと

 例えば動物には死ぬまで交尾し続けるマウスがいる
 この種類の死ぬ前は食べるのもやめて子供を作り続けるらしい
 このマウスは一年しか生きない
 つまり再生より生殖を優先する

 また、再生するかどうかも、生物はコスト対効果を考えているらしい
 人間の体は骨や皮膚などはある程度は再生するが、
 トカゲのように体の一部は再生しない
 これはヒトは腕を失ったら死ぬ確率の方が高いためで、
 壊れたところを再生させるかは、再生にかけるコストが見あうかで決めている

●ヒトにはなぜ閉経があるか
 ヒトの女性には閉経があるが、他の動物にはないらしい
 これはなぜかと言えば
 子育て、出産にかかるコストやリスクが高いからと考えられる
 このため子供をたくさん生むより、
 生んだ子の面倒を見るようになった

 また、フィンランドとカナダの研究によれば
 祖母が長生きする家ほど、孫の数が多い傾向にあるらしい
 お祖母ちゃんの助けが子供を作りやすくしているのかもしれない

 つまり閉経は
 女性が自分の体を守り、同時に
 子供の養育にエネルギーを注げる働きがある
 お年寄りの知恵が社会全体を良くする効果もあるのだろう、とのこと

●老化の原因
 最後に老化について。
 生物学者はホルモンバランスや免疫力の低下が老化の原因というが、
 博士によればそんな単純なものではなく、
 老いは体の各パーツで同時進行する

 これは落ち込むことではあるが、進化生物学的に考えると
 ある程度年を取ったら人間の体が再生をやめるよう、プログラムされているために起こるもの。
 それは我々が能力を最大限発揮できるよう、
 進化の過程で備えられた知恵と見るべきだ、
 と博士は述べていました

 博士は老いや寿命は受け入れるべき、としています
 老いや寿命とは、何をどのくらい修復すべきか、進化の過程で定まった結果で、
 そういった、進化で培われた生老死の仕組みを受け入れるべきだ、と。

 生理学的な分析では、全てを理解することはできない、とも話していました

○感想など
・恋愛、パートナー選びでは、
なぜ似ている相手を選ぶのだろうと思いました。
遺伝子の多様性を保つなら、全然違う相手を選べばいいと思うのですが…

とはいえ、友人の写真つき年賀状など見ていると、夫婦で似ている人もいますね。
一緒にいたら似てくるのかなと思っていたのだが、本当に似ている相手にひかれるのかな?

ちなみに私の場合、だんなと私とはあんまり似ていないです。
もしかして選び方にも多様性があって、
似ている相手を選ぶカップルもいれば、
全く正反対の相手を選ぶカップルもいるのかもしれないですね。

ほか、フェロモンとか臭いでパートナーを選ぶ説も聞いたことがありますが、
ホルモンとか目に見えないものも、似てる似てないの手がかりになっているのかな。

・性についての話も興味深かったです。
人間だけ排卵期が分からない、てのは知りませんでした。

排卵期が分からない理由のうち、
「妊娠を避ける」説については、発展途上国では子沢山の人が多いので疑問に感じましたが

その他の説は、みんなで子育てする「共同保育」のため、
という点では方向性がだいたい同じなのかなと思います。

他の番組や本などを見ていても、
人間はみんなで子育てするように進化してきたし、
そのために(その結果?)共感力とか社会性を身に付けるようになって、
それがさらに人間という種を生き残らせてきたのかなと思います。

例えば昔NHKスペシャル「ママたちが非常事態?」という番組では、
産後うつの原因が紹介されていました

それによると、産後うつは、
母親が他の大人に子育てを手伝ってもらうため、
わざと気分が不安定になるようなホルモンを出しているために起きるもの、なんだそうです

産後うつになるホルモンは、子育てを手伝ってもらうため
進化の過程で産み出されたものだ、と解説されていました

また、共感力についての本では、
思春期の子(特に女の子)が群れたがるのは
その子たちが出産期に共同保育するための準備のためという説がある、
と書かれていました

つまり人間は、子育てのヘルプを得るためや、
人と協力しあえるようになるために
進化のなかで色々体を変化させてきたわけで、
女性が排卵のサインを隠すようになったのも、その一環なのかなと思いました。

・寿命、老いについての話は一番面白かったです。
最近ではAIと人間をハイブリッドさせ、不老不死の体を得ようとする人もいるというのに
「老いは進化の過程で培われた仕組みなのだから、受け入れるべき」
という真逆の意見は新鮮でした。

私自身も、不老不死は反対です
(そりゃ、本能的には死にたくはないけど)
同じ個体が生き続けるのは進歩がないと思うからです。
ですので、同じ個体の再生より生殖し子孫へ受け継ぐ方が合理的、
と判断した進化のメカニズムはしっくりきました。

だとすれば、AIとの融合で不老不死の体を得る試みはあんまりうまくいかないのかも?
いくらAIで補充しても、ほかの所が壊れてくるんかなと思います。
全部AIになるのかな?そしたら人間の定義はどうなるんだろう?
…なんてことを考えてしまいました。

進化論や生物史、地球の歴史っていうと、
何万年、何億年の単位なので扱ピンとこないなというイメージだったんですが
たまにはそれくらい長期的な視点で人類を見るのも大事なのかな、と思わせてくれる番組でした。

posted by Amago at 22:25| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

Eテレ「ダイアモンド博士のヒトの秘密」 第1回~第3回

Eテレ「ダイアモンド博士のヒトの秘密」 第1回~第3回

カリフォルニア大学のジャレド・ダイアモンド博士が高校生への講義形式で進行する番組。
ヒトの進化、ヒトの謎に迫り、
そこから現在人類が抱える問題を考えていくそうです

12回に分けて行われ、
前半6回は人類の進化、後半6回は人類の問題についての話だそうです

私実は進化論とか生物史って、身近ではなさすぎてあんまり興味無かったんですけど、
「欲望の経済史」の前枠でやっていたのでついでに見てみました。
そしたら初めて知ることも多く、
高校生向けなので話も分かりやすかった。

3回目までのおさらいをメモとして書いておきます

○エピローグ
 ダイアモンド博士は元々生物学の方みたいですが
 子供の頃からバードウォッチングに興味があり
 鳥の調査のためパプアニューギニアに行ったのが人生の転機になったそうです

 パプアニューギニアで触れた現地文化、気さくな人々たちとの会話から、専門外の文化人類学にも興味を持ち、
 そこから学問のジャンルを越えた研究をするようになったそうです

 人類の進化と文化についての著書も書かれており
 この番組シリーズでは彼の本「第3のチンパンジー」を元にしているらしい。
 地元の高校生を対象にした特別授業という形式を取っています。
 ダイアモンド博士はかなり好奇心旺盛だそうで、
 若い子達と人類の進化を振り返り、今後人類はどうしていくべきかを共に語り合いたい、
ということらしい

○第1回「第3のチンパンジー ヒトはどこまで動物なのか」
 この回は、動物からヒトへの進化の歴史全般を振り返っていました

●動物から人への進化
 歴史的に見ると
 ・45億年前に地球が誕生
 ・35億年前に生命が誕生
 ・2億2500万年前、は虫類が誕生
 ・3000万年前、類人猿が誕生
 ・500万年前、ヒトが誕生

 また、霊長類の枝分かれを進化的に分類すると
 1つの共通の祖先から
 ・テナガザル
 ・オランウータン
 ・ゴリラ
 ・類人猿類
 などに枝分かれし
 類人猿類はさらにボノボ、チンパンジー、ヒトに枝分かれした

●ヒトと他の類人猿とのDNAの違い
 1984年、ヒトとヒト以外の類人猿のDNAを調べた研究では、98.4%が一致していた。
 つまり違いは1.6%しかない

 他の動物と比較すると
 見た目よく似たアカメモズモドキとシロメモズモドキでは、DNA的には2.9%の違い。
 ヒトとチンパンジーはそれより近い

 「ヒトとチンパンジーはほとんど変わらない。 
  人類は第3のチンパンジー」だそうです

●500万年前のヒトへの進化

 骨盤の形から推定すると、ヒトの祖先は300~200万年前に二足歩行を始めた

 進化的にヒトに近い類人猿は20種類くらいあるが
 代表的なのは
 ・アウストラロピテクス(猿人)
 ・ネアンデルタール人、
 ・ヒトの直系の祖先であるホモ・サピエンス

 アウストラロピテクスは脳が小さく、ヒトの3分の1
 ネアンデルタール人の脳はホモ・サピエンスよりは少し小さい

 7万年になるとホモ・サピエンスの大躍進が起きる
 ホモ・サピエンスはアフリカが起源だが、
 7万5千年前くらいの遺跡には、アート、宗教、言語など
 人間に特徴的な文化の痕跡が見られる

 例えば貝殻、ダチョウの卵などに穴を開けたもの(首飾り)
 航海技術も進歩、大陸間で移動した
 死者の埋葬、アートも見られる

 移動の結果、他の類人猿との交流もおきる
 5万年前くらいには中近東には移動、
 その頃すでに存在していたネアンデルタール人
 (40万年前くらいからヨーロッパ~中近東で生存、3万2千年前に絶滅)
 との交配もあったようだ
 アフリカ以外のヒトのDNAのうち3%ほどはネアンデルタール人由来らしい

 (生徒からの質問)
 ・ボノボにも同性愛があるのか
 →あると思う
 ・ネアンデルタール人にも言語は発達していたのか
 →名詞だけの言語はあった(第2回の内容)
 ・人はこれからも進化するか
 →可能性はあるが、問題は100万年後にヒトが生存しているかだ
 これはこの番組のテーマにも通ずる話です

○第2回「動物のコトバ、ヒトの言語」
 この回はヒトのみが持つとされる言語の発達についてでした

 ヒトの言語の進化は
 ・400年前くらい前
  アウストラロピテクスの時代、名詞だけのやり取り
 ・20万年前
  ネアンデルタール人の時代、名詞、動詞を使う
 ・4万年前
  クロマニヨン人の時代、今のヒトに近い言語になった

 動物のコミュニケーション方法と
 人間の初期の単純な言語との比較をしていました

●動物のコミュニケーション
 ・ベルベットモンキー
  敵により鳴き声を変えて仲間に知らせている
  ワシ、ニシキヘビ、ヒョウなどでそれぞれ鳴き声が違うらしい

  そして、仲間もそれぞれの鳴き声の違いを聞き分けて行動を変えている
  ワシ用の鳴き声を聞くと空を見上げる
  ニシキヘビ用の鳴き声を聞くと立ち上がって下を見下ろす
  ヒョウ用の鳴き声では木上にジャンプする、など

 ・プレーリードッグ
  これも敵により鳴き声を変えるらしい
  実験によると、人間の服の色によっても鳴き声を変えるのだそう

 これらの鳴き声でシグナルを変える、というやり方は、
 人間の言語初期の、名詞だけを使ったやり取りと似たようなものと考えられるらしい

●人間のシンプルな言語
 ・ピジン語
  商人同士の言語
  交易の際、違う国の人どうしが、売り買いの交渉するために使われた単純な言語
  これは色々あるが
  例えば「ルセノルスク」は
 19世紀、ロシアとノルウェーどうしで使われた
  300の単語の組み合わせからできているらしい
  語順は決まっておらず、
  複雑なことは伝えられない

 ピジン語の進化形が
 ・クレオール語
  これは、ピジン語を使う親たちから生まれた子供が、
  より複雑なコミュニケーションをするために産み出した言語

  例えば、イギリス人がハワイに移住、サトウキビ栽培をしていた時代、
  交易に来ていた日本やフィリピン人とのコミュニケーション手段にピジン語を使った

  これらの人たちがそこで結婚すると子供が生まれる
  彼らはピジン語で育つが、
  ピジン語では複雑な感情は伝えられない
  このため彼らは独自の言語、クレオール語を編み出した

  ほかには、
  ハイチのトク・ピシン
  インドネシアのバハサなどがある

  これらのクレオール語は、名詞、動詞、形容詞、副詞、助詞など共通の構造を持つそうです
  これはトム・チョムスキー氏が「普遍文法」と呼ぶもの

  このことから、言語とは、
  人の脳の構造由来のもの、
  生まれつき遺伝子に備わったプログラムから自然発生的に生まれたものではないか、とのことです

 まとめると
 ・動物には鳴き声でのコミュニケーション手段があり、
  それはヒトの初期の言語、名詞だけのコミュニケーションと似ている
 ・ヒトの言語は、複雑な感情などを伝えるため、
  名詞プラス動詞、
  さらに副詞、助詞も使う複雑な体系に次第に進化している
  これは、遺伝子にプログラムされた、脳の構造から自然発生している可能性がある

 「自分の気持ちを伝えたい」
 という思いがこれらの言語を進化させたのだろう、と博士は話していました

○第3回「芸術(アート)のジョーシキを疑え!」
 この回は、言語と共に人間の特徴となる文化、アートについてでした
●アートの定義
 最初に「アートの定義とは」と博士は聞いていました
 美しい夕日はアートなのか?
 形のきれいなワイシャツはアートなのか?
 どこからどこまでがアートなのか?

 博士の定義だと
 ・生きていくのに必要な機能は持たないもの
 (実用的なものはアートと言わない)
 ・美的欲求を満たすもの、感情を刺激するもの
 ・生まれてから後天的に取得するもの
 (鳥の鳴き声などは美しいが、アートとは言わない)

 しかし生きていくのに必要ではあるが、意図的に美しく加工されたものもある
 それがグレーゾーン的なアートになるかもしれない、とのことです

 言語と同じく、動物のアートと人間のアートとの比較により
 アートの誕生を探っていました

 ●動物のアート
  普通、動物はアートは作らないと考えられているが
  どう見ても芸術作品だ、と思うものを作る動物もいるそうです

 ・アマミホシゾラフグ
  これは奄美大島の近くに住むフグだそうですが
  このフグのオスは、メスを誘い出すために、同心円状に広がるミステリーサークルみたいな模様をヒレで描く

  メスはこの模様に誘われてやって来て、
  交尾したあとサークルの中心に卵を産み付けるそうです
  このサークル模様は、卵を潮の流れから守るためのもの、
  と考えられているらしい

  また、このサークル模様は、フグにとっては
  オスは、「自分は優秀なオスだぞ」とアピールし
  メスは、「これだけきれいな模様を作るのはイケてるオスね」と判断するシグナルになっている

 ・アオアズマヤドリ
  この鳥は、メスを誘い出すため、
  小枝を集めてあずまやを作り、
  その周囲に青いものを並べる

  しかしこのアズマヤは住むためには使われない
  オスの能力アピール手段のためのもの、と考えられているらしい
  
  つまり、オスがたくさんの小枝を集めて持ってくる能力、
  ものを計画して組み立てる能力、
  色のセンス、などをアピールするもの

  このように、動物にとってアートとは
  優秀なDNAを見分け、なるべく優秀な子孫を残すための基準となるもの

 ●ヒトの初期の芸術
  一方、ヒトの初期のアートはどうか?
  世界史の教科書的には
  14000年前のラスコーの壁画や
  4万年前のホーレ・フェレスのビーナス、と呼ばれるつぼみたいなもの
  なとが世界最古の芸術、と言われる

  しかし博士によれば、30万年前の石器がアートの起源だ、とのこと

  この「アート」の石器とは
  左右対象で形は美しく、
  しかも大きいので実用には向かない
  一方実用的な普通の石器は石を割っただけで、
  片方だけ鋭利で美しくもない

  このアート石器は、作った人の技術の高さを示すもので
  その人のステイタス、能力を示すものだったのだろう、とのこと

  つまりこの初期のヒトの「アート」は
  動物のアートと役割がよく似ている、ということだそうです

 つまりまとめると
 ・動物のアート的な作品は、生殖のためのアピール、という実用的な目的がある
 ・初期のヒトのアートも、自分の技術をアピールする目的から始まっている

○感想など
1回から3回までの内容では、
人間って動物と根っこは同じなんだと改めて気づかされました。

言語やアートなどは、人間特有とされてきたことなので、
脳科学的に言えば、大脳新皮質などの知性的な部分が担う、と私は今まで思っていました。

しかし言語は「餌をさがす」「敵から身を守る」「仲間に危険を知らせる」、
アートは「より良いパートナーを探す、生殖」
など、いずれも本能に根差したものだったのですね。

人工知能でもアートや文章を創る試みがありますけど
やはり欲求、感覚、行動など、
本能に関わるものも伴わないと、
本当に人の心を動かすものはできないのかもしれない、と思いました。

posted by Amago at 22:23| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2018年02月14日

BS世界のドキュメンタリー「プリ・クライム~総監視社会への警告~」

BS世界のドキュメンタリー「プリ・クライム~総監視社会への警告~」

2017年、ドイツ製作のドキュメンタリー。

番組の冒頭では
映画「マイノリティ・リポート」に出てくる「犯罪予防局」
の話が出ていました。
一般に、警察の仕事は罪を犯した人を逮捕することですが、
「犯罪予防局」では、犯罪が予測される人を前もって逮捕するのだとか。
 こんなSF映画の話が、アメリカやイギリスの一部では現実になってきているのだそうです…

このドキュメンタリーでは
実際にそのシステムで監視対象にされている人たち、
監視システムを作った人たち、
使用している警察、など
いろんな立場の人たちの話が紹介されていました。

話としては色々混ざってごちゃごちゃしてたので私なりにまとめながら書いてみます

●シカゴ警察の人物評価アルゴリズム
●カリフォルニア警察の「ビーウェア」システム
●ロンドン警察の「マトリックス」システム
の話でした

○シカゴ警察の人物評価アルゴリズム
 ・危険人物のリスト
  シカゴ警察では、
  イリノイ工科大学と共同開発した人物評価アルゴリズムにより、
  市民一人一人の犯罪に関わる可能性を数値化しているそうです
  例えば200なら、一般市民より200倍関わる可能性がある、とされる
  警察では、その数値が高い人物のリストを作り、監視対象にしているそうです
  (「戦略的対象者リスト」「ヒートリスト」という)

  2012年から試験運用され、
  その1年後から本格採用されているらしい

  判断基準としては、
  その人に犯罪歴があるかどうかより、
  誰と一緒にいるかが重視されるらしい
  というのは、暴力事件と関わる人物と交遊関係があれば、
  次の事件にも巻き込まれる可能性が高いから、だそうです

 ・対象者
  対象者になったマグダニエルさんという方の話によれば、
  ある日突然、警察とソーシャルワーカーが家に来て
  「あなたはリストに載っている」
  と言われ、質問されたり行動を監視されたんだそうです

  マグダニエルさんは高校を中退、
  そのあと仕事を探しつつドラッグの密売もする生活、
  高卒認定試験も受けたがうまくいかなかったらしい

  「たしかに素行の悪い連中とも付き合っていたが、
   シカゴで最も危険な人たちのリストに載せられるなんてひどい」と怒っていました

 ・情報はデータベース化される
  シカゴ警察の方によれば
  このシステムでは、事件が起きた15分以内にリストが作成される
  リストには、その人の犯罪歴が時系列的に示され、
  被害や逮捕の履歴、交遊関係も記載される
  その人が別の事件の被害者になったとき、
  警察官はこのデータベースを直ぐに読み出せる仕組みになっているそうです

 ・データベースシステムを導入する理由
  データベースシステムについて
  コロンビア特別区大学のアンドリュー・ファーガソン氏は
  「政府があらゆる手段で手に入れたデータは、技術的には結合可能」
  そのデータは、逮捕歴だけではなく連絡先、メンタルヘルスの履歴、社会給付金の額なども含まれるそうです

 警察はなぜデータを使うようになったのか?
  パリ東大学のビレル・ベンブジド氏によると
  1970~80年代から犯罪が急増、取り締まりがが追い付かなくなり、
  警察は犯罪検挙よりも防止に力を入れざるを得なくなった、
  その結果情報テクノロジーに頼るようになった、とのことです

 ・数値化の怖さ
  先のマグダニエルさんは215という数値を勝手に付けられたそうですが
  それについて先のファーガソン氏は
  「本当に怖いのは、国民が数値化されていることではなく、
   それを政府が手に入れていること」
  と話していました

  アメリカでは、民間企業が作る個人のデータを、
  民主党も共和党も購入しているそうです
  我々は、企業に個人情報を提供することはためらわない。
  しかし、それを政府も手に入れているのが問題だ、と話していました

  一方ドイツのIT企業CEOのイボンヌ・ホッシュテッター氏は
  「自分達が数値化されるのは誰も合意していないはず。
   なのになぜ数値化が行われているのか?
   それは人々が経済成長を望むから、つまりお金もうけのためだ。
   銀行や金融機関、IT企業が人々のデータで稼げると気付き、ビジネスモデルを作った」

  中国では、2020年までに全ての国民が数値化され、
  よき国民か、二人目ができそうな夫婦か、などもわかってしまうのだそうです

○カリフォルニア警察の「ビーウェア」
 ビーウェアは警察が使用できるソフトで、
 金融機関や銀行などからの個人情報を集めたデータベースがあるそうです。

 双方向からの通信も可能で、
 例えば犯罪が現在進行中で切羽詰まった状況のとき、
 通信指令室に電話すれば、
 リアルアイム犯罪センターのオペレーターに、データベース情報を提示してくれるそうです

 情報は、過去の入居者やその電話番号、
 今の入居者やその人の過去の住所、関係者など…

 ビーウェアではソーシャルネットワークの検索も行い、あらゆる情報を収集できるそうです

 警察のソーシャルメディアの情報利用について、
 先に出ておられたコロンビア特別区大学のファーガソン氏は
 「なるべくたくさんの情報を知りたいのかもしれないが、
  データブローカーからの情報は信頼できない」
 と問題点を指摘していました
 ブローカーはあくまで情報を売るのが目的で、
 正確さは重要視していない、と。

 しかしカリフォルニア警察署長は
 「民間企業が利用するアルゴリズムがセールス対象者を絞りこめるなら
  同じアルゴリズムを警察も、犯罪防止のために利用すべきだ」

 一方、カリフォルニアの弁護士マーク・W・キング氏もファーガソン氏と同様、
 ビーウェアは完璧ではない、と危惧していました

 彼がビーウェアの開発会社から聞いた話によると、
 このソフトが情報源とするのはFacebookやTwitterなど。
 しかしある日誰かがTwitterで
 「レイジ(rage、怒り、暴力)」
とつぶやいたとき
 このソフトはその人を問題だと見なしたそうです
 しかし、この人は「レイジ」というカードゲームを指していて、暴力とは関係なかった

 「このようにコンピューターも誤解することもある。
  警察がその情報を元に無実の人を撃ってしまう悲劇もありうる」

○ロンドン警察の「マトリックス」システム
 ロンドンの個人判定システムは「マトリックス」は、
 交遊関係のパターン認識をして、統計上の可能性を出すのだそう

 このシステムで、ギャングとのつながりがあると判定された人には警察から手紙が送られる
 「ロンドン警察は、あなたがギャングとのつながりがあるという情報を手にいれました。
  ジョイントエンタープライズの考え方に基づき、
  今後は犯罪の場にいながら止めようとしなかったり、犯罪者と一緒にいたりするだけで逮捕される可能性があります」

 「ジョイントエンタープライズ」
 は200年前、決闘を止めさせるために考えられたシステム
 具体的には、
 当時の決闘には介添人がいたが、
 決闘でどちらかが亡くなると介添人も罪に問われる、というもの
 法律で決まっていたわけではないが、法廷で採用されたものだそうです

 黒人の元ロンドン警察官は
 「データ入力している警察官を誰がチェックするのかが問題」
 犯罪に全く関わりない人間が、
 警官のミスでシステムに組み込まれる危険がある、
 と指摘していました

 ロンドン市民で手紙を実際に送られた人は
 「俺はギャングのメンバーじゃない、
  なんでそんな風に言われるのか。
  俺が入ってるのはサークルだ。やつらは疑ってるけど」
 と怒っていました

○監視対象者が人物リストに載せられた理由
 どのシステムでも、人物評価理由は明かされていないようです。

 最初のシカゴシステムのリスト対象者のマグダニエルさんは
 「警察に居住地を尋ねられて答えると、
  あそこはギャングが多いからお前も同類だろうと言われた」そうです
 「自分の収入じゃここしか住めないんだ。
  だけどやつらは住んでる場所だけでどんな人間か決めつける」

 そして今回リストに載った理由について
 「親友が2か月前に殺された。
  警察はギャングの抗争だと言ってたけど、
  俺は殺されたやつとすごく仲がが良かったから同類扱いされたんだと思う。
  それ以外に考えられない」
 と話していました

 シカゴの弁護士のカレン・シュリー氏は
 「警察は人物を特定するアルゴリズムを公表していない、
  リストから削除されるのも不可能だとしている。
  これが本当なら恐ろしいことだ、
  アルゴリズムは数学と科学で作成したというが、それが正しいとは限らない」
 と話していました

○警察の予測システムを作った会社への取材
 ではどんなアルゴリズムで判断されるのか?

 パリ東大学のベンブジド氏は
 シカゴ警察などで使われている犯罪予測システム「ハンチラブ」を開発した会社を訪ねていました

 製作会社のCEOの方は
 「警察のデータは特殊なバイアスがかかる可能性があり、
 バイアス自体は消せないが、他のデータと組み合わせて相殺することは可能」
 「ハンチラブは、用途別の幾つかの部分から構成されているのが特徴」
 「警察署で使うことを想定している「プランニングコンポーネント」と、
  パトロールの車内で使う「携帯用コンポーネント」とがある」
 など技術的な説明をしていました

 この会社のデータアナリストは
 車に乗って携帯用コンポーネントのシステムを操作していました
 タブレットをもってタッチしています
 「今、タブレットのGPSで位置情報をトラッキングしている」
 画面上のエリアやボックスをタッチすると、
 事件の起きやすい場所の最新情報が提示される
 こうして効率的に警官を配置することができるのだそうです
 しかし、可能性が高いというだけなので何も起きないことも多いし
 これで示されているからといって、犯罪がないのに逮捕することはできない、
 と彼は話していました

 ベンブジド氏は
 「ハンチラブのアルゴリズムは、
  複数のデータ、例えば気象や環境、社会などのデータ、を取り入れている。
  ハンチラブのプログラムはオープンソースのものなので、
  アルゴリズムも現在は公開されている」

 CEOの方は
 「我々は、個人に関わるデータをシステムに組み込むことには慎重な立場だった」
 プライバシーの問題、正確さへの懸念もある。
 いかなるときこのデータを使うのを許されるべきかは、社会に問うべき問題だ、
 と話していました

 会社は「開発には慎重」「オープンソース」と説明するが、本当に透明性あるシステムなのか?
○新たな人種差別の始まり?
 ロンドンのソーシャルワーカースカント・チャンダン氏は
 警察によるテクノロジー利用を憂慮していました。

 彼が援助する若者たちは、
 どうしても荒れた環境にいたり、黒人であったり
 警察と関わる傾向のある人たちが多い。
 このため予測機能を持つテクノロジーが、
 彼らにとって不利な状況を産み出すのではないか、と。

 ロンドンのある公園には、監視カメラがいくつも設置されていました
 この公園では昼間は子供たちの遊び場だが、
 3件殺人事件が起きたため
 設置されたようです…

 チャンダン氏と公園のカメラを見て回っていた、
 黒人の人権活動家アーニー・ヒル氏は
 「監視カメラのシステム改良を口実に、
  黒人のコミュニティや政治団体を監視している、という話がある。
  それは、黒人だからという理由の職務質問や、予告なしの取り調べが行われているのと無縁ではないはず」
 とぞっとする話をしていました。

 更に、先に出ておられた黒人の元ロンドン警察の方は
 「私がロンドン警視庁にいて黒人警察環境会の会長をしていたとき、
  ロンドン警察が制度的な人種差別をしていた事実を諮問会に提出した。
  私に言わせれば、マトリックスは新たな制度的人種差別だ。
  仕組みが分からない、人種差別的なプロファイリングだ。

  DNAデータベースであれマトリックスであれ
  システムから削除できる方法や、
  警察の責任が問える仕組みを設けるべきだ」
 と主張していました

○プログラマーの方の意見
 一方、シカゴのゲーム製作会社プロデューサーのドミニク・グアイ氏は
 彼が作ったハッカーが主人公になるゲームについて話していました

 彼はまず、あらゆることにテクノロジーが使われ、
 その中でハッカーは何でもできる自由を持っている社会を考えたそうですが
 「これは既に現実に存在していることが分かった、
  そこで現実をベースにしたフィクションを作った」

 彼のゲームでは、
 個人情報が電子機器に保存されていて、
 ハッカーである主人公はバーチャルなシカゴ市民の情報が読める
 しかし主人公はゲームの中の犯罪予測システムで不当なプロファイリングを受ける
 コードの気まぐれで犯罪者にされてしまう…

 彼は
 「ビッグデータはただのデータの集まりで、それ自体は善悪はない」

 「プログラミングのコード自体には善悪はない。
  コードを書いた人も、プログラミングには手に負えないこともあり、
  完全に全てのことを把握できるわけではない。
  このため、結果についての責任所在が曖昧になることはありうる」
 とプログラミングの危うさを指摘していました

○今後は?
 ・黒人の人権活動家アーニー・ヒル氏
 彼は、警察による市民監視がさらに進むのでは、と危惧していました
 「ソーシャルデータは諸刃の剣、と警察は分かっているはずだが、
  彼らはもう一歩を踏み出すかもしれない」

  警察がデータを監視し、
  投稿者の特定を行ったり、投稿停止措置をとったりするかもしれない。
  個人データを見られても構わないというかもしれないが、
  警察がどんなアルゴリズムで監視し、
  個人情報をデータベース化するか分からない、と話していました

 ・ソーシャルワーカーのチャンダン氏
 彼は、予測システムでは犯罪者の更正の可能性を考慮していないと指摘していました
 「ある犯罪の経歴がある人が、同じことをする前提で予測されている。
  しかし人は周りから助けられ考えを変えることもある、
  そもそも警察は、検挙し懲罰するのが仕事のはず」

 ・マグダニエルさん
  彼の言葉は切実でした
 「殺されたやつは兄弟みたいだった、
  あいつはまだ17だった、子供もいて俺が代わりに面倒を見てる。子供は俺が本当の父親と思ってる、どうかしてる」

 「400人だったリストが2か月で1500人になった。そのぶん犯罪者が作り出されたんだ。
  それで誰が得するんだ、治安は良くなるのか?
  得するのは警察かもな。犯罪が増えれば予算が着く」

 「みんな他人のことだから真剣に考えないんだ。
  自分の子供や自分自身だったら、と考えてみたらいい。
  でも自分の家のドアをノックされるまで、誰も考えないんだ」

 ・コロンビア特別区大学のファーガソン氏
  彼は社会での議論が必要、と訴えていました
 「人々は進んで情報を提供している。
  今後IoT、モノのインターネットが進めば、家のセンサーや車が勝手に情報を集めてくれる社会になるだろう。
  しかし、あなたは情報を提供することがどれだけ怖いかを知らない」
  
 「モノのインターネットで市民を監視できることが
  法に触れることなのか、
  新しい情報についてどう考えるのか、
  我々は常に社会に問いかけていかねばならない」

・ドイツIT企業CEOのホッシュテッター氏
 彼女は技術の未熟さを指摘していました
 「一人一人を数値化してリストに載せるのは、まだ初歩の段階に過ぎない」
  アルゴリズムでは、Facebookの「いいね!」の数でその人が判断される
  例えばあるものにいいね!した人の73%がテロリスト、と判断されたとしても
  残りの27%はそうではなく、機械は必ずしも正確ではない

 それからIT企業さんのせいか、今後については少し楽観的?でした
 「アルゴリズムは社会の監視だけではなく、正常化にも向かうだろう
  監視だけなら、人々の未来を方向づけ規制していくだけになってしまう」

ドキュメンタリー監督は、このドキュメンタリーで、
時々出てきて色々ボヤいていたんですけど
最後に
「そろそろ帰るときが来た。
ようこそ、総監視社会へ」
と締め括っていました

○感想など
 説明があったシステムについて少し調べました

・シカゴ警察のシステム
 http://japanese.engadget.com/2017/08/11/hunchlab/
 https://www.technologyreview.jp/s/5775/chicagos-experiment-in-predictive-policing-isnt-working/

 によると、
 今回は触れられていませんでしたが、
 2013年から運用された人物評価システムと、
 企業の作ったハンチラブ(Hunchlab)とは別物だそうです

 2013年のシステムは
 銃器犯罪に関わりそうな人を予測しリスト化し、本人に危険を通知するシステムですが、
 結局あまり犯罪防止にはつながらなかったようです。

 この原因としては、
 警察官にリストの使い方があまり指示されていなかったこと、
 使ったとしても、警察はリストにのっている人を優先的に逮捕してしまうので、
 犯罪を防ぐことにはならなかったそうです

 それから、米司法省は2017年、
 シカゴ市警に対して
 「体系的な欠点がある」
 人種差別的な捜査を容認している、
 などとした報告書を発表し、捜査のやり方に問題があるよとチェックを入れたようです

 ハンチラブはそれらの反省から、シカゴ警察が予算をつぎこんで導入した犯罪予測システムだそうです
 このシステムはベンチャー企業Azavea社が開発し、
 番組でも紹介されていた通り、
 1日内の時間や季節、天候や地域経済、過去の犯罪データ、
 …など様々なデータをもとに、アルゴリズムで犯罪パターンを見出し
 地図上に表示する、
 というもの

 米ロイターによればハンチラブの方は効果を挙げているそうで、
 シカゴ市でも治安が悪いサウスサイド地区での地域では、
 2017年の1月から7月の間で、
 発砲事件が39%、殺人事件が33%減ったそうです
 何と比べて減ったのか書いてませんが、前年比かな?

・カリフォルニア警察のシステム
 https://www.washingtonpost.com/local/public-safety/the-new-way-police-are-surveilling-you-calculating-your-threat-score/2016/01/10/e42bccac-8e15-11e5-baf4-bdf37355da0c_story.html?utm_term=.e6f579c5d2e1
 などによると、
 紹介があった「ビーウェア(Beware)」というソフトはIntradoという会社が作っており、
 カリフォルニアのフレズノ市が使用しているそうです

 このソフトは、
 容疑者が挙がると、その人の逮捕記録、財産記録、ウェブ検索の記録、ソーシャルメディアへの投稿などを精査し、
 その人の脅威度をスコア化して赤、黄、緑の3つの脅威レベルで示すそうです。
 危険だと分かれば交渉などして、犯行を告白させられる可能性がある、ということです

 また、フレズノ市にはリアルタイム犯罪センターがあり、
 アメリカのハイテク警察のお手本なんだそうです
 (ニューヨーク、ヒューストン、シアトルにもあるそうです)
 そこでは街中や学校などに設置されているカメラ画像が写し出されていて、
 リアルタイムに画像を見ることができる。
 街中には、マイクロホンで銃声の発生場所を三角測量できる機械、などもそこら中に設置されているとか。

 また、オペレーターは911の電話をうけとると、
 車両免許証の記録、車のナンバーの記録、ソーシャルメディアの記録などのデータベース情報を提示できる。
 事件の発生場所を告げれば、そこの住人の名前が返され、
 その人の脅威度のスコアも出されるそうです

 ただこの人物スコアリングの根拠などについては
 Intradoが「企業秘密」として明かしていないそうで
 一部の弁護士や市議会、住民などが懸念を示している、とのことです。

 ちなみにカリフォルニアでは、ハンチラブのような犯罪予測システム「プレドポル」も導入しているらしい
 https://forbesjapan.com/articles/detail/19706
 http://iot-jp.com/iotsummary/iottech/bigdataanalysistool/%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E4%BA%88%E6%B8%AC%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0/.html

 などによると、プレドポル(PredPol)という会社が開発したもので
 犯罪予測を地図上に示すもの(ハンチラブと似たようなもの)
 ハンチラブと似ていますが、
 こちらはカリフォルニア大学の地震の予測システムから開発されたもので、
 地震予測と同じく不変的な要因(見通しが悪い場所など)と
 変動的な要因(その日別の場所で銃撃事件があった、など)を組み合わせて予測する、
 というものらしいです

 カリフォルニアだけではなく、他のいくつかの州でも採用されている、とのこと。
 このシステムの効果ですが、ロサンゼルス市警によれば
 強盗事件を33%、暴力事件を 21%、空き巣被害を12%削減させたのだとか。
 (これもいつと比べての減少なのかは書いてないが、前年比かな?)

・ロンドンのシステム
 https://gigazine.net/news/20141031-software-prediction-crime/
 BBC News - London police trial gang violen ce 'predicting' software http://www.bbc.com/news/technology-298 24854
 https://www.axc.ne.jp/column/news/2016/0315/7403.html

 などによると
 ロンドン市警が採用しているのは、総合コンサルティング会社Accentureの開発したソフトウェア、だそうです(ソフトの名前は出ていませんでした)

 これは今回紹介があったのと同じかわかりませんが、
 ロンドンの過去4年間の犯罪データ、犯人の行動やSNSの投稿データなどを集め、
 その収集データを解析する。
 そして、4年間の次の年での、ギャング組織やそのメンバーのSNSデータなどを解析データと照らし合わせ、
 次に犯罪しそうな人を予測するというもの。

 2016年から5年契約している、という報道もあります。

 その他、IBMも犯罪予測システムを開発し、ニューヨーク市警察で導入されているそうです
 ドイツにもプリコブス、というシステムが検討されたことがあるとか…
 そして日本でも、京都府警が2016年10月に犯罪予測システムが導入されているんだそうです

・上記の内容はネットニュースなので
 IT企業に有利な報道がされている可能性もあるかもしれないですが、
 ハンチラブやプレドポルのような「犯罪場所」を予測するシステムなら、
 実績もあるようですし、IT技術はそれなりに効果的なのかなと思いました。

 たしかに今回紹介されていたとおり、
 ビーウェアみたいな「人物」の予測については、
 間違いがあると怖いと思うが

 今回のドキュメンタリーはこの2つが一緒くたになっていて、分かりにくかったのがちょっと残念。
 
・今回怖いと思ったのは以下4つでした
 ・科学は正しいと信じてしまう怖さ
 ・決めつけられる怖さ
 ・やり直しできない怖さ
 ・情報を差し出す怖さ

 1つめについては、たぶんこれからAI技術が進んで人間より賢くなったら、
 それがさらに顕著になるのかなと思います。

 少し前にAI関係の本を読んだとき、将棋の羽生善治さんも似たようなことを仰っていましたけど、
 科学とか数字って何となく絶対正しいと思ってしまう。

 でも今回プログラマーの方が話していたように
 アルゴリズムを作っているプログラマーでさえ予測不可能な結果が起きることもあるわけで、

 我々人間も、アルゴリズムが間違いかもという予見を持つこと、
 間違いをチェックしたり直す機能をシステムに組み込むことが大事だなと思います。

・決めつけられる怖さとは、
 データベースの情報を元にいったん犯罪者、とか黒人、とかレッテルを貼ってしまうと
 その人の言動もすべてバイアスをかけて見てしまうことです。

 特に警察官だと、犯罪者とかギャングの一味などと思い込むと、その人の扱いがぞんざいになったりする。
 それは人権上も問題があるが、
 他にも、例えば何か事情があるかもしれないとか別人かもしれない、など、
 真実が見えにくくなり、事件の真相がねじ曲げられる恐れがあると思います。


・やり直しができない怖さに関して、
 ソーシャルワーカーの方が指摘していた
 「人間は間違いを犯しても、周りの助けにより変わることもある」
 という言葉は重かったです。

 今のシステムだと、過去凶悪事件を起こした人は
 いつまでたっても脅威レベルが「危険」とされてしまう

 その人が心を入れ換えて頑張っても、いつまでも警察に容疑者扱いされていたらやる気を無くしてしまう。

 そうなると「善」「悪」のラベリングで二分された世界になってしまう。
 排除された悪は集まって、今起きているようなテロリストのような憎悪の集団を作ってしまうと思います。

 敗者復活、忘れられる権利を保証するシステムも必要だと思いました。

・最後に情報を差し出す怖さ。
 ファーガソン氏が何回も言及していましたけど、
 我々は、企業に情報を無頓着に差し出している。
 というか、今のシステムだと差し出さないとサービスが使えないから、出さざるを得ないんですよね。
 そこは差し出す情報を選ぶ権利を主張していかねばならないのかなと思います。

データの誤りを正す権利、削除する権利、
人生をやり直す権利。
企業に提供する情報を選ぶ権利、情報の使われ方を知る権利。

これらの権利が法律で定められる世の中になるといいと思います。

色々勉強になりました。
というわけで今回はこの辺で。

posted by Amago at 10:56| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする