2017年08月01日

BS世界のドキュメンタリー「”肉“は健康の敵?~meat~の真実」

BS世界のドキュメンタリー「”肉“は健康の敵?~meat~の真実」

 イギリス2016年製作のドキュメンタリー。
 少し前に菜食主義者の本を読んで以来、肉食が気になっていたので見てみました。

 まぁ、内容としてはやや薄いかなぁと…
 情報よりエンターテイメント性が強いかな~と思いました

 番組は、八百屋さんをしている男性(でも肉が好き)が進行役。
 最近、肉食が健康によくないと言われているが本当はどうなのよ?と思い、
 科学者に取材して回ったそうです。

○肉を食べるメリット
 最初は栄養士さんに、肉の栄養価について聞いてました。

 肉は栄養が豊富で、他の食品で代替しようとすると大変
 230gのステーキ肉に含まれる栄養素を取ろうとすると
 ・亜鉛(エネルギーの生成に必要)は、海老1kg分
 ・セレン(免疫機能に大事)はブラジルナッツ1杯
 ・ビタミンDは卵1個分
 ・カリウムはバナナ2~3本分
 …など、たくさんの種類を食べねばならないらしい

 一番難しいのは鉄分で、
 植物性のものは吸収が良くない。
 肉は栄養を摂るのに効率がいいのだそうだ。

○肉のデメリット
 次は肉のデメリット。
 ここでは
 ・ガンの発症を高める
 ・心疾患のリスクを高める
 という2つの話を取り上げていました

○加工肉の発ガン性物質
 イギリスで一番消費が多いのはハム、ベーコンなどの加工肉ですが
 WHOによればこれらは大腸がんの原因となるそうです

 原因物質は防腐剤の亜硝酸ナトリウム
 これはボツリヌス菌の繁殖を防ぐ効果があるが
 体の胃酸と反応し、発ガン性物質を作ってしまうのだそう

 しかし、レディング大学の研究者は
 この亜硝酸ナトリウムを減らす物質を開発しているそうです

 これは緑茶などの植物から抽出したエキスだそうで、
 亜硝酸ナトリウムを半分におさえ、
 発ガン性物質の生成も劇的に減少させるのだそうです

 この研究者の話によれば
 全ての加工肉に使えるらしい

 味に影響があるか、番組進行役の男性が学生に食べてもらっていましたが
 4人中3人は市販品よりこちらの方が美味しいと言ってました
 (サンプル少なすぎ…(笑))

 まぁまだ開発段階で、市販はされていないそうです

 (ちなみに亜硝酸ナトリウムは、日本では赤みを出すためのもの、という意味合いが強いように思います。
 なので最近は、亜硝酸ナトリウムを使わず、敢えて色が悪い加工肉なんかも出てますね。

 また、大学が開発しているというこの物質については、調べたけど分かりませんでした。
 結果が大きければ出ているはずだし、まだ研究段階なのかな?)

 また、WHOによれば
 800の論文を調査した結果、
 加工肉は大腸ガンのリスクを上げるそうです
 リスク分析の専門家によれば、
 ベーコンの2切れはタバコ4本吸うのに相当するとか

 (WHO(というかその傘下のIARC)のだしたこの結論は
  10カ国22人の専門家が約800本の論文を調べて導き出されたものだそうです。

 https://style.nikkei.com/article/DGXKZO94530680Y5A121C1TZQ001
 この団体は、色んな食品の人への発ガン性を調べ、5段階に分類しているそうで
 加工肉は最も発ガン性が高いグルー プ1、
 赤肉はその次のグループ2Aと判定されたそうです

 グループ1には喫煙やアスベストもあり、
 加工肉がこれらに匹敵する発ガン性がある、ということで
 反響は大きかった、とのこと

 しかし理由はよくわかりません。
 発ガン性物質のせいか、動物性脂肪のせいなのか?
 このときはリスクが高まる仕組みについては示されず、批判もあったので
 WHOはあとで
 「加工肉を食べないよう求めるものではない」
 という追加コメントを出したそうですが…

 また、これは外国の論文が主で、
 肉を多めに食べている国の調査が中心だそうです

 日本は肉の摂取量はドイツの1/4、
 世界でも低い方の国なのだそうです
 確かに食生活の欧米化で大腸がんは増えているので、気を付けねばならないが、
 今のところガツガツ肉を食べ始めない限りは
 敢えて控える必要は無さそうです。

 むしろ肉は良質なタンパク質やミネラル、ビタミンもあり
 高齢者の筋力維持には肉が必要、とも言われるし
 (沖縄の長寿の秘訣は豚肉の摂取…という話もあるし)
 極端に減らす方が問題かもしれません。)

○赤身肉の発ガン性物質
 WHOによれば、赤身も発ガン性物質を作るそうです
 その原因はPAH(多環芳香族炭化水素)
 コゲとかススに多く含まれているそうです

 なのでバーベキューなどの肉はリスクが高くなる
 焼けた所のこげ、滴った油のこげ、それらの出すススなどが危険らしい
 (日本でもサンマの焦げがガンになる、と一時期言っていたので
  それと同じなのかな?)

 しかし番組の実験によれば
 スモークチップで温度を下げればある程度効果があり
 マリネ液に浸してから焼き、膜を作るようにすれば
 発ガン性物質の量は半分以下にできるそうです

 (マリネ液はビールで作ってある僕の特製、とか言ってたんですが
 レシピも教えて欲しかったなぁ…
と思い調べたら、レシピを載せてくれている所がありました。

 http://youpouch.com/2014/04/27/191078/

 「Agricultural and Food Chemistry」という雑誌で公表されたそうですが、
 ビールの中でも「黒ビール」「ピルスナー」「ノンアルコールピルスナー」が最も効果があるそうです

 豚肉を4時間マリネして焼いた結果、
 PAHはマリネなしの肉と比べ
 ピルスナーは13%低下、
 ノンアルコールピルスナーは25%、
 黒ビールは53%低下したそうです

 研究チームはこれはビールの抗酸化作用によるものではないか、と分析しているそうです。

 ちなみにマリネ液のレシピは
 ・オリーブオイル1/2カップ
 ・黒ビール1カップ
 ・レモンジュース 1/4カップ
 ・つぶしたニンニク4片
 あとは塩、こしょう、ローリエ、マスタード、バシル、オレガノなど
 ピルスナーはあんまり日本では見ないけど
 黒ビールなら良さそう。でも黒ビールって高いのよね…)

○心臓疾患のリスク
 次はノッティンガム大学の実験。
 普段から肉をよく食べる人が3ヶ月肉を減らしたらどうなるか?を実験したらしい

 被験者は40人、週5回は肉を食べる人
 肉を減らして食べてもらい
 食べたものを記録してもらう
 減らし方は本人に任せる

 途中経過を取材してましたが
 開始前には4日間で1.3kg食べる人(多いのかよくわからんが、推奨される量の5倍らしい)
 など肉好きが多かったようでした

 研究者によれば
 赤身肉は3種類の脂肪を含む
 ・飽和脂肪酸…悪玉コレステロール(LDL)を増やす
 ・一価不飽和脂肪酸…オリーブオイルなどに含まれ、まぁまぁ健康にいい
 ・多価不飽和脂肪酸…善玉コレステロール(HDL)を増やす、健康にいい

 赤身肉は、飽和脂肪酸が多く、多価不飽和脂肪酸が非常に少ない
 しかも飽和脂肪酸が悪玉コレステロールを上げる力は
 多価不飽和脂肪酸が下げる力の2倍あるらしい

 研究者の予想では、肉を減らせばコレステロールも減る、というもの

 結果は、善玉コレステロールはあんまり変わらないが
 悪玉コレステロールは平均10%減ったそうです
 しかももともと悪玉コレステロールが多い人ほどその減り幅は大きかったそうです

 結果を聞いて、被験者は
 「これからは肉を控えようと思います」
 と話していました

○健康な鶏肉はどれか
 イギリスでは、40年前と比べ
 羊肉や牛肉の消費量が減り
 鶏肉の消費量が増えているらしい(335%アップ、とか、つまり4倍?)

 これは1970年代に効率的な養鶏法が確立され、値段が下がったためだそう

 今ではオーガニックチキンなどいろんな値段のものが出ているが
 実際栄養はそんなに変わるのか?を調べていました

 スターリング大学の栄養学者によれば
 ・1㎏370円の肉
 ・1㎏640円のトウモロコシ飼料の肉
 ・1㎏820円の放し飼いの肉
 ・1㎏950円のオーガニックチキン
 ・1㎏670円の特別飼料の肉
 を比較したところ

 脂肪量に関してはあまり変わりがない
 強いて言えば、飽和脂肪酸は、トウモロコシ飼料の肉が一番多く
 放し飼いが一番少ないそうです
 ω3、ω6脂肪酸の割合で言えば
 一番安いのが一番バランスがいいらしい

 つまり育てた環境にこだわるなら高いのを買えばいいが
 脂肪の量に関しては値段が何でもさして変わらないらしい

 これはモモ肉の比較で
 よりヘルシーなものを求める人は、むね肉で皮を取り除けばいいそうです

○肉の解体現場
 次に進行役の男性はと殺場を訪れています
 ちなみにこの方の妻は菜食主義者だそうで
 この取材で菜食になるのを望んでいるとか…

 と殺する前には、動物たちを落ち着かせる場所がありました
 ストレスがあると分泌されるコルチゾールというホルモンは、
 肉を固くさせ、色も悪くなるそうです

 解体現場は割りとさらっと紹介されていました
 男性によれば
 解体されるのを見て、肉を食べるのが申し訳ないというより
 さらに感謝の気持ちが強まったそうです
 なるべく無駄にせずに食べることが、
 動物への感謝の意を示すことになるのでは、と話していました

○臓物も食べよう
 動物の臓器はあんまり消費されないらしい
 しかしシェフによれば
 臓器は栄養価が高いらしい
 心臓、腎臓もいいが、一番栄養価が高いのは肝臓

 脂肪はほぼゼロだが、タンパク質も豊富、
 ビタミンA、B、D、Eや
 鉄分、セレン、マグネシウムなどのミネラルも豊富だそうです

 シェフが作った臓物料理を、目隠しをしていろんな人に食べてもらってましたが
 知らなければ美味しい、という人が多かったです
 でも物を見て「知っていたら食べなかった」ていう人もけっこういました

 臓物は、値段は赤身の1/10だそうで
 余すところなく食べましょうという話をしていました
 (そこまで言うならレシピ書けばいいのに…と思ってしまった。
  また、この時はバター焼きとかしていて、
  バターも油たっぷりなんじゃ…と若干突っ込みたくなりましたが(笑)

 外国の人って内臓食べないのかな?
 日本人は焼肉屋でホルモンを食べたり、
 焼き鳥でもホルモンがあるし
 モツ煮込みなんかもあるので
 あんまり抵抗はなさそう。

 一応レバーの臭み消しについて調べました

 https://cucanshozai.com/gourmet/2009/09/liver-pretreatment.html
 http://kurashino-hitoshizuku.com/582
 など。他にもありましたけど、
 ・まず新鮮なものを選ぶ
 ・買ったらすぐに脂や血の塊などを取り除き、
 ・流水で濁りがなくなるまで洗う
 ・熱湯にさっとくぐらせ、氷水に漬ける
 てのが基本
 ビタミンがなくなるので長い時間水にさらさない方がいいらしい

 あとは臭みを消すために色々やり方があり
 ・牛乳に漬け込む
 ・ヨーグルトに漬け込む(乳脂肪が臭みを取ってくれる)
 ・出がらしの緑茶(緑茶成分は牛乳より効果があるらしい)
 ・すりおろし玉ねぎ
 ・酒と生姜
 ・お酢につける、という方も…
 鶏レバーの場合は臭みが少ないので塩水(ただし何回か取り替える)
 のもいいらしい。
 漬け込み時間は20分という人もいれば、1~2時間とかいう人もいて様々ですね。

 そのあとの調理法としては
 ・ニンニクや生姜、ハーブを臭み消しに使う
 ・ウスターソースをかける
 など、臭みを消すやり方が多い。
 あと
 ・パイナップルの缶詰を使う
 という人もいました。

 ちなみに私が好きなのは
 豚のレバーを素揚げしたもの。
 これは臭みがなくなっていいです。
 昔父親のつまみになっていたものをよく横取りしてました(笑)

 でも内臓って、買おうと思うとそんなに安くはないかなぁとは思うのだが、 
 牛肉買うよりは安いのかな)


 番組では最後に、
 肉は栄養が豊富といういいところがある
 発ガン性や心疾患のリスクを高めるデメリットもあるが
 食べ方や食習慣次第で防げますよ
 という感じでしめくくっていました。

○感想など
・ドキュメンタリーというし、
 菜食主義者の話が出てきたし、と殺の話もあったので
 もう少し動物愛護的な観点でも突っ込んでくれているのかな~と期待?していたのだが、
 基本的に肉食は悪くないよ、みたいなソフトな内容になっていて、
 そういう意味では少々物足りなかったかなぁと思います。

 ただ、と殺場を見た男性が
 「感謝の気持ち、無駄にしてはいけないという気持ちが高くなった」
 と話していたのは大きいと思いました。
 動物愛護の観点から肉食をしない人もいるけど
 いただく命に対して感謝、尊敬の念を抱くのも
 また動物愛護なのではないかとも思います。

・栄養価や発ガン性物質については、
 昔から話題になっているので
さほど目新しくはないかなーと思いますが、

 亜硝酸ナトリウムを除去(吸着?)させる試薬を開発、というのは初耳でした。
 (使うのを止めるのではなく、薬品で取り除けばいい、という発想が欧米らしい…
 と個人的には思うが)

 ちなみに普段食べる分には、
 亜硝酸ナトリウムはゆでてゆで汁を棄てたらある程度は減らせるそうです。
 食パンなどの防腐剤も、トーストしたら減るのだそうだ。

・赤身肉は脂身を取ればタンパク質だらけなのかと思っていましたが
 赤身肉自体にも脂肪酸が多いというのは知らなかった。
 (霜降りなどは多いのだろうけど)

 鶏肉は脂身がまだ少なく、
 魚は不飽和脂肪酸が多い。
 でも魚や鶏肉に少なくて牛肉、豚肉に多い栄養もあるから
バランスが大事なのでしょうね。

 最近は糖質制限とかいって
 肉ばかり食べる人もいるのでしょうけど
 そのために血液ドロドロになった…という例もあります。
 どの栄養も食べ物も、ほどほどに美味しく食べたいなと思いました。

気楽に見られる番組でした。
というわけで今回はこの辺で。
posted by Amago at 14:13| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年07月30日

NHKBSプレミアム「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 強制終了 人工知能を予言した男」

NHKBSプレミアム「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 強制終了 人工知能を予言した男」

 科学の闇の歴史や、忘れられた天才などを取り上げた番組です。
 今回紹介されていたのは数学者のアラン・チューリング。

 全然聞いたことがない名前ですが、
 70年も前に人工知能の存在を予言していた、
 というか、人工知能を作りたがっていた方だそうです。

 以前この番組で、
 ニコラ・テスラ
 (エジソンと同時代の人で、交流システムを最初に作った人)
 を見て、けっこうエキセントリックな人だなーと思いましたが、今回も似た感じかなぁと…
 やっぱり天才は紙一重なんでしょうかね?

 彼には第二次大戦中、ドイツの暗号を解読し
 戦争終結を早めた功績があるそうですが
 その功績は表にだされず、それが研究者としては仇となったようです

 彼は人工知能を作る構想を持っていただけではなく、
 知性とは?知能とは?心とは?
 それらは人工的に作れるのか?人だけのものなのか?
 という問題へ挑んでおり
 改めて、意識や心って何だろう、と考えさせられました。
 
 さて番組では、彼の生涯を追いかけています
○子供~青年期
 彼はイギリス生まれ、両親がインドに赴任していて
 知人の家に預けられて育ったそうです

 子供の頃から少し変わっていて
 数字に異常な興味を示す

 10歳の頃「自然の不思議」という本に魅せられる
 そこには
 「人間の体は機械のようなもの」とあり、
 脳の仕組みなども科学的に説明できるようになるだろう、
 と書かれていたそうです

  彼の伝記を書いたという数学者は
 「体も機械と同じようなもの、脳も科学的に分析できるという考え方は、
  後の彼の研究に大きく影響した」とのこと

 そのあと全寮制の学校に入るが、
 人付き合いが苦手な科学オタクだったせいか
 友達はおらず、陰湿ないじめを受けていた

 しかし唯一話のあうモーコムという先輩がいた
 学校一の秀才で、難しい科学の話にも興味を示してくれたそうです
 チューリングは淡い恋心すら抱いていた、とのこと

 二人はケンブリッジ大学に入学することを夢見る
 モーコムは入学が決まるが、
 その直後結核で亡くなってしまう

 チューリングは相当ショックを受けたようで
 「今後、彼以外の人間と友達になることは考えられない」
 と手紙に書いているそうです
 同時に
 「彼にはまた会える」とも…
 
 彼の伝記を書いた数学者は
 「彼はモーコムの死を否定した、生きていると思いたかった。
  また、何としても心を知りたいと思ったのだろう
  心を作り出す脳の仕組みとは何か、を。
  これが後に人工知能を考えることにつながったのでは」

○ケンブリッジ時代
 彼は先輩と通うはずだったケンブリッジに入学
 新進気鋭の数学者、マクスウェル・ニューマンなどの講義を受ける
 その中で
 「人間の数学は、将来的には機械が全てこなすようになるだろう」
 という言葉は彼に影響を与えた

 というのは、
 当時は四則演算はそれ専用の機械、
 微分積分はそれ専用の機械、
 と役割ごとに機械があったそうです

 しかし彼は
 足し算、引き算、というやり方や数式も、全て数字に変換できないか、
 と考えたそうです。
 今でいうプログラミング、ソフトウェアの考え方です

 これを発展させれば、人間のあらゆる活動も、全て数字に置き換えられると考え、
 全てを行う機械を「万能チューリングマシン」として論文にして発表した(1936年)

 しかし当時の有名な数学者たちには、そんな考え方は受け入れられなかった
 専門家によれば
 「あらゆることを機械にやらせる、ということを考えたのは彼が史上初だった。
  ある意味気味の悪い考え方だったのでは」
 とのことです

 当時、彼の考える複雑なプログラムを実行する高速演算機械はなく、
 彼はその開発の研究を続けていた

○戦争の暗号解読
 ところが1939年、イギリスは第二次対戦に参戦
 彼は政府暗号学校という所にヘッドハンティングされる
 当時、そこでは若い優秀な数学者を集め、
 ナチスドイツの使う暗号、エニグマの解読をさせていた

 エニグマとはドイツ語で「謎」を意味し、
 解読が不可能とされていた
 ドイツ軍から奪い取った暗号作成用の機械を分析すると

 タイプライターのキー1つ1つに配線がつながれ、
打ち込んだキーが電気信号に変換される
 配線は歯車とつながり、
 歯車は次の配線につながり、
 途中で戻ったりして、
 実際紙に打つキーにつながっている
(原理的には簡単ですが、組み合わせにより複雑にしている感じでした)

 いくつかある配線と歯車の設定をそれぞれ変えることで暗号を作っている
 その組み合わせは1京の1万倍
 しかも毎日設定を変えていたそうです
 イギリスも人海戦術で解読はしたが
 1週間もかかっていて、
 既に作戦は実行されてしまっていたとか…

 さて、チューリングは、当時期待の大型新人として採用されたそうです。

 ただしかなり変わり者だったようで
 知的レベルが自分より低い人とは付き合わないし、
 ぜんそくのためガスマスクを着けてサイクリングしていたり…

 しかし彼の仕事ぶりはスゴかった。
 人海戦術で解読したが役に立たなかった、
 とされた暗号を読み返して徹底的に分析し
 ドイツ軍の文章にはいつも「WETTER」という単語があることを突き止めた
 ドイツ語で天候を意味し、いつも朝6時にに送っていることを発見したそうです。

 エニグマの構造上、あるアルファベットが同じアルファベットに変換されることはないので、
 6文字のならびのうち、
 どれも「WETTER」の6文字と一致しないもの
 (つまり1番目にWでなく、2番目にEでなく、…6番目にRではない、というのを全て満たす6文字の並び)
 を探しだし
 それらの変換パターンを分析した

 しかし機械のパターンの組み合わせも膨大な数
 そこで、彼は36個のエニグマを同時に分析する機械を考案
 「ボンブ」と名付けられた

 1940年には1週間かかっていたものを1時間で解析可能となり
 Uボートの暗号解読にも成功
 (Uボートとはドイツの潜水艦のことで、ドイツの潜水艦隊は華々しい成績を挙げていたそうです。
 ただし戦争後期になると、連合国も対策を立てたために、
 ドイツ軍の中の死亡者は最も多かったそうです)

 ただし専門家によれば
 「これではまだコンピューターの祖先ではない」とのこと
 電子工学の進歩があって初めてスピード化が進んだ、とのこと

○解説
 ここまでのVTRを見て解説がありました。ゲストは
 ・電気通信大学人工知能最先端研究センターの栗原聡氏
 (人と共存する人工知能の開発を行っているそうです)
 ・池内了氏
 (自然科学に関する本を書かれています)

 池内氏は
 「彼は論理を積み上げて、それを機械に置き換えた、
  天才は99%の粘り、というが、その粘りの人」
 栗原氏は
 「彼は当たり前のことに気づいた、
  でもそれを実行に持っていくところがなかなか…イノベーションってのはそこにありますね」
 池内氏も
 普通の人は、アイデアを実行に持っていくのが大変で
 それは「死の谷」とも言うのだそうですが
 そこを乗り越えたところがすごい、と話していました

 栗原氏はまた、
 「しかし彼の研究が、
  モーコムに会いたいという気持ちから、
 と考えると深いというか、複雑というか…
  いずれは機械とも知的なやり取りをしたい、と思っていたのかなぁと考えると、
  ちょっと常軌を逸している?」と。
 池内氏は
 「まぁでも僕の偏見かもしれんけど、
  数学の天才ってそういうところがあるよね(笑)
  抽象的なものを積み上げて、
  独自の世界観を持つ人が多い」

 また彼がエニグマ解読に関わった心境としては
 栗原氏は
 「当時は戦争で、国のためというのもあったんだろうけど
  人が作ったものに負けたくない、とも思ったんじゃないか」
 池内氏も
 「科学者ってのは、難しいものを目の前に出されると、
  よっしゃやったろ、という気持ちになる」
  冷戦時のアメリカでも、研究者は研究を離れて国家に協力していたそうです

○解読成功はウルトラ・シークレット
 チューリングの解読成功により、暗号解読技術はさらに進んだ
 2400本の真空管を使用した新しい機械「コロッサス」の登場で、
 解読の速さが格段に向上したそうです

 しかしイギリス軍は、そのことを伏せていたそうです

 解説ができたとわかれば、またドイツが機械を変えてしまう恐れがあるためで、
 このためUボートの位置が分かっても偵察機をとばし、
 偵察により見つけたように装ったり
 新しい水中レーダーを開発した、というウソの情報を流したりした

 しかしUボートの位置がわかっているのに、
 偵察機を待たねばならず
 その間に攻撃され、命を落とす人もいたのだそうです

 1944年のノルマンディー上陸作戦にも、コロッサスが貢献したそうです
 ドイツは当時、フランスのカレーに軍隊を集中させていた

 そのことを暗号解読により読み取っていたイギリスは
 軍が手薄になっていたノルマンディーから上陸
 その後はベルリンを目指して進軍
 1945年、ナチスドイツは無条件降伏した

 しかし戦争が終わってからも
 エニグマ解読については伏せられたそうです
 イギリスは植民地に
 「解読不能な暗号」
 としてエニグマを配り
 植民地の機密情報を盗んでいたそうです

 このため、解読に関わった科学者たちは苦しい立場に置かれた
 彼らは兵役が免除されていたので
 「兵役逃れ」
 というレッテルを貼られてしまった

 最大の貢献をしていたのに
 そのことは家族にも漏らすことは許されなかった
 チャーチルは彼らについて
 「金の卵を産んでも、
  決してなくことはないガチョウたち」
 と表現していたそうです

○解説
 ここで解説
 武内アナは
 「チャーチル腹立ちますねぇ~「鳴くことはないガチョウ」って…」と言っていましたが(笑)
 池内氏は
 「まぁ政治家ってそんなもんでしょ
  彼らは急所さえ叩いて相手を倒せば、多少の犠牲は仕方ないと考える、
  冷酷な戦争の倫理ですね」

 しかし池内氏も栗原氏も
 「科学者にとって、自分の功績がオープンにできないのはキツい」
 と話していました
 これは自分の私利私欲とか名声のためではなく
 自分の発見発明をオープンにして、
 誰かが引き継いで発展してくれればこそ進歩が生まれる、
 という意味だそうです

 また戦争で失われた8年の空白について、
 栗原氏は
 「20代で戦争に巻き込まれたのは大きいだろう」とのこと
 40代、50代である程度研究を確立していたらまた違ったかも、とのことです
 池内氏も
 「僕ならごめんしてくれと言ったかも」

○戦後のチューリング
 VTRに戻ります
 知能コンピューターの構想を発表してから8年、
 イギリスの国立物理学研究所の数学部門のトップ、
 ジョン・ウォームスリーが彼のもとを訪れる
 彼の論文を読み、その才能を高く評価し
 コンピューター開発の機会を与えると申し出る

 彼は友人に「脳を作るぞ」
と宣言したそうです

 彼が新たに設計したコンピューターは「エース」
 彼の構想としては
 ハードをなるべくシンプルにし
 複雑なプログラムにより能力を補う、というもの
 超高速演算も可能、と考えたそうです

 しかし開発は難航
 戦後のインフラ復興に技術者が取られ、
 夢のようなコンピューターの開発などに回せる人材は少なかった

 専門家によれば
 「彼の戦時の功績は伏せられていたので、
  当時彼は単に優秀な数学者に過ぎなかった」
 彼の功績が知られ、国民的英雄とされていればもっと話が違っていただろう、とのことです

 彼のやり方も批判された
 理解しにくい複雑なプログラムなど使わずに、
 簡単なプログラムで大きな演算機械をたくさん使えばいいじゃないか、と言われたが
 彼は上司に
 「全くスマートではない」
 という意見書を提出した
 パイロット版の製作にも手を貸さなかったそうです

 専門家は
 「取り合えず簡単なものから試作する、というのは賢明なやり方だが、
  それは彼のやりたいことではなかった」
 そんなの時間の無駄だと思ったのだろう、とのこと
 「彼は結局、チームプレーヤーではなかった」

 1947年に、彼はロンドンの数学学会で
 「我々が目指すのは、経験から学習する機械」と宣言

 1948年には「知能機械」の論文を発表
 人間の脳のニューロンをコンピューターの上に再現することを考えた
 脳ではニューロンの接続と解除を繰り返して学習している、
 ということに目をつけ、
 これを機械上で再現して、自ら学ぶ機械を考案したそうです

 「今ではこのような機械の開発に巨額の投資がされているが、
  彼はこれを70年も前に考えていた」

 しかし彼は時代を先取りしすぎたのか理解されず、
 論文は上司に
 「まるで小学生の作文」
 と酷評されたそうです

 1948年、マンチェスター大学で、
 彼の教え子達が世界初のコンピューターを作ると
 彼もマンチェスター大学に移籍したそうです

 彼は「人工知能を作ることは可能」とし、
 知能ができたかを試す試験方法も考案したそうです
 これは後にチューリングテストと呼ばれるもので、

 質問者が何かを質問する
 相手は誰かを伏せたまま、機械と人間の答について
 どちらがより人間らしいか、質問者に選んでもらう
 そこで機械の方が人間らしいと答えれば、
 機械は人間と同等に発達していると考える

 専門家によれば
 「彼は知能とは何かについて問い、新境地を開こうとした
  我々人間も、相手が本当に何を考えているかは分からない。
  行動や話の内容で判断するが
  機械も同じように捉えるべきだと考えた」
 過程は分からなくてもいい、アウトプットが全て、と考えたそうです

 「知能とは何か、について未だに我々は答を出していない。
  彼はそれを今までと違うやり方で提案した」

○彼の晩年
 研究を続けていた1952年、彼は逮捕されてしまう
 容疑は当時違法とされていた同性愛
 有罪判決を受け、12ヶ月の保護観察処分を受ける
 精神科で女性ホルモンを投与され、
 乳房が膨らみ、性的に不能になり
 「私は違う誰かになってしまう」
 と友人への手紙に書いていたそうです

 このため彼は、研究の第一線を離れることを余儀なくされた

 それから2年後の1956年、彼がベッドで倒れているのが発見された
 傍らには青酸カリの塗られたリンゴがあり
 自殺とされたそうです
 享年41歳。若すぎる死でした。

○解説
 栗原氏は「現実は残酷ですね…」と話していました

 武内アナは
 「でも空白の8年間でも、見てくれる人は見てくれてたんですね…
  今でいう「キターーー!」ってやつじゃないですか、脳を作るぞ、ってねぇ」(笑)
 (武内アナ、この辺の進行が面白い(笑))
 栗原氏は
 「どうかしちゃったんじゃないか、と思われてたかも…」
 と言いつつ(笑)
 人工知能の発想については
 「発想はとてもシンプル、
  脳の仕組みをそのままコンピューターに再現すれば、脳のスペックが作れるだろう、
  というのは有りうる発想ですね。
  ただそれを実現するのは普通は難しいですけどね」
 池内氏は
 「僕らは普通、機械って言われたことをやる、て考えるけど、
  経験を学習する機械、という考えは読みが深いと思います」

 また、チューリングテストについては
 栗原氏は
 「人間が人間らしい、と判断すればそれでいい、という割りきりが面白いですね」と話していました
 普通はこれができれば知能がある、という発想になりがちだが
 それでは際限がなくなる
 シンプルに割りきったのが見事、とのこと

 池内氏は
 「ただ、知能と知性は違うと僕は思う」
 とも話していました
 知性とは感情とか感覚、それは人間にしかない、
 人工知能には真似できない、と。

 しかしこれについては栗原氏は
 「僕は人工知能やロボットが意図や意識を感じられるかと言えば、できると思う」
 と含蓄のある意見。
 「例えば機械が笑っていたら、僕らは楽しいんだなと思う。
  でもロボットは、こういう表情をすればどうも楽しいらしい、と学習する
  僕らはそれを見て、ロボットは楽しい「ふり」をしていると考える。
  でも、僕ら人間も、他人が笑っているのを見て、
  楽しいふりをしているのか、
  本当に楽しいかは分からない」

 …そもそも、「感情」や「意識」って何なんでしょう?

○チューリングのその後
 このあとは、ナビゲーターの吉川晃司さんの話でした

 1956年、アメリカのダートマス大学で
 数学、電気工学の専門家10人が集まり
 人工知能についての会議が行われた
 AI、Artificial Intelligenceという概念が初めて登場する
 チューリングの構想に時代が追い付いてきた

 さらにそこから18年後、チューリングの功績が表に出される
 1974年、イギリスの情報部の元大佐が
 「ウルトラ・シークレット」
 という本を出版
 これはイギリス政府の許可を得て
 暗号解読者に関わった科学者たちのことを公開した本で、
 それをきっかけに科学者たちが再評価されるようになった
 チューリングは、コンピューター科学の始祖とされたそうです

 今や人工知能は開発が進み、
 2045年には
 「シンギュラリティ」
 予測不能な爆発的な人工知能の進歩、が起きるとも言われている

 今年、日本人工知能学会では
 人工知能開発者が遵守すべき倫理指針を発表したそうです
 そこには、安全性の確保や社会への責任について言及されているほか
 「AI自身にもこの指針を遵守させる」
 という一文があるそうです

 これについて、栗原氏は
 (この学会の理事にもなっているそうです)
 「そうなる可能性があると思って入れた一文」
 だそうです

 武内アナは
 「守ってくれますかね?AIたちは」
 栗原氏は迷うように
 「…守ってもらうようにしないといけないですね…」
 池内氏
 「AIは、まだ専門家も、将来どうなるか読めてないところがあるんですよね」
 と助け船を出し、
 「僕はこれは、研究者が、自ら作り出したものに対する責任、
  というものを問うて入れた一文だと思います」

 栗原氏は
 「AIの開発は、段階を追っていくとは思いますが…」
 としつつ、池内氏は
 「僕が一番怖いのは、非線形的な効果」
 と話していました
 非線形効果とは、変化が直線的ではく、
 最初はゆっくりでもある点を越えると急に爆発的に変化すること
 AIも急に発達して、あっという間に人間を越えてしまうかもしれない、
 シンギュラリティもそのことを指している、と話していました

 それでも池内氏は
 「考えすぎ、怖がりすぎても良くない」
 「機械との付き合いかたは色々ある、
  人間にできること、機械にできることを役割分担して
  共存していければいいのでは」
 と話していました。

 最後は、ナビゲーターの吉川晃司さんのこの言葉…
 「彼は死の3年前、こんな言葉を残している。
  「機械が自己学習する方法を確立したら
  ひ弱な我々はすぐに追い抜かれてしまうだろう
  機械が実権を握ることを考えねばならない」」

○感想など
・シンギュラリティ、は何となく名前は聞いたことがあるが、改めて調べてみました。
 やはり話題であるせいか、色んな所で解説がされていました。

 巷で理解されている話では
「人工知能が人間の脳を超えるとき」とされていますが、

 正確には機械が人間を超える地点ではなく、これは「プレ・シンギュラリティ」といい、
 「機械の知能が予測不能に発達するとき」
 をシンギュラリティという、みたいな話が多かったです。

 まぁどちらにしても、
 人工知能が、
 人間にとって予測不能な、恐ろしーい存在になりそうなイメージが浮かびますが

http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/ai/080300003/?P=1&ST=mobile
によれば、

 元々は「シンギュラリティ」とは
 AIではなく、「人類の」進化の速さが無限大になるポイントを指すのだそうです

 「シンギュラリティ」の言葉を世間に広めたのは
 レイ・カーツワイルさんという方の本だそうですが
 彼の本(「シンギュラリティは近い」)では
 人間の生物的進化の限界を、AIの力を借りて破る、
 という趣旨の話をしているそうです

 人類の進化は
 狩猟社会→農耕社会→工業化社会→情報化社会、という段階で進んできた。
 この間、道具の発達により進化のスピードも加速してきた。
 シンギュラリティはその次に来るAI社会、
 という進化の流れで捉えるのだそうで
 AIが社会を乗っとる、とかではなく、
 AIを上手に活用し、AIと共に人類が爆発的に進歩する社会なのだそうだ。

 だからAIが支配するわけではなく、
 今スマホの手を借りて情報管理したり
 膨大な情報をコンピューターに管理してもらっているが、
 それと同じ感覚なのだそうだ。

 だから、池内氏がいうように
 「AIを過剰に恐れず、うまく共存する」
 という意識が必要なようです。

・月並みながら、戦争の罪は深いと思います。
 人がたくさん死ぬだけではなく、
 才能ある人材の能力を埋もれさせてしまう。

 まぁ、チューリングさんの場合
 もう少しうまいこと人と仲良くしていたら
 助けてくれる人はいたのかも知れない、てのはありますが…

 今の時代でも、この人大丈夫?てな発想をしている人も
 もしかしたら100年後とかに実現してるのかもしれないですね…

・栗原氏の知性についての意見
 (僕ら人間も、笑うふりをしているのか、本当に笑っているのか分からない、という意見)
 は興味深かったです。

 前に将棋の羽生さんがNHKで人工知能の番組をしていましたが、
 そのなかで紹介されていた、ソフトバンクのペッパーくんは、
 感情を学習して、
 何かの行動にみんなが笑ってくれたら自分も反応したりして、
 見ていたらだんだんペットのように思えてきたし、

 中国では、カウンセリング役の人工知能に恋をする男性もいました。
 その人工知能も、受け答え方を学習して彼の人生相談に乗っていたわけですが
 それだけで彼の心に寄り添えてしまった。
 もしかしたら将来的には、
 AIが人間よりも優秀なカウンセラーになるかもしれない、とも思う。

 そうなると、人間の感情や会話も、
 単に経験を学習して環境に反応した産物なのだろうか?
 それでも人間と機械は違う、と言い切れる点はどこにあるのだろうか?
 と考えてしまいました。

 まぁ、でも、線引きは必要ないのかも。

 こないだのマツコさんのNHKスペのAIひろしみたいに、
 AIとも語り合って友達になれたらいいな、と思います。

 AIの学習能力は、人間と比べて速い。
 いい方向にも悪い方向にも速くなるのだろう、と思う。
 多分世の中に悪い人間がいるのと同じく、
 AIを悪い方向に利用する人も出て来るだろう。
 増大スピードが速いと思うとちょっと怖い気もするけど
 今の世の中でテクノロジーを悪用する人が大多数でないのと同じく
 人類はAIを上手く利用できるんじゃないかなぁ~
 と私は楽観的に考えています。

ソフトバンクの孫さんは
「シンギュラリティが見たい」
と言っていたそうですが、私も見てみたいなぁ。
AIと友達になれる日が来るのかな。

色々考えさせられました。
というわけで今回はこの辺で。
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2017年07月29日

NHKBSプレミアム フランケンシュタインの誘惑「“いのち”の優劣 ナチス 知られざる科学者」

NHKBSプレミアム フランケンシュタインの誘惑「“いのち”の優劣 ナチス 知られざる科学者」」

 この番組はたまに見ます
 (というか、子供が見るコズミックフロント☆ネクストと同じ時間帯なので、勝手に録画されている(笑))
 科学の闇の歴史、黒歴史を暴くという番組で
 吉川晃司さんのナレーションの怪しさもいい味だしてるし
 進行役の武内陶子アナのぶっちゃけた感想もなかなか良い。

 今週は人工知能の話で、それも良かったんですが
 同じ日の別の時間帯に放送されたものがあまりに衝撃的だったんで、
 そちらを書きたいと思います。

 これは1月に放送されたものの再放送らしい。ノーチェックだったな。

 紹介されているのは
 ナチスドイツ時代の人類遺伝学者、オトマール・フォン・フェアシュアーの話でした。

 専門家も知らない、と言ってたから
 彼の行いは伏せられていたようですが、

 彼は「優生学」という学問の研究を進め、
 ナチスドイツの残虐行為に科学のお墨付きを与えたそうです

 でも見ていると、彼だけでなく、時代全体がクレイジーだった、としかいいようがない。

 しかし。

 このクレイジーさは、今の遺伝子診断、ゲノム編集と根本的には何の違いもない…
 という事実に背筋が寒くなりました。

というわけで内容から。

○フェアシュアーがのめり込んだ優生学
 彼は1896年、ドイツ中部のゾルツという町で、
 貴族の息子として生まれたそうです
 自然科学に興味を持ち、大学で医学を学ぶ

 そこで彼が夢中になったのは「優生学」だそうです
 これは19~20世紀に流行していた学問で
 ダーウィンの進化論
 (生物は自然淘汰で進化した、という学問)
 メンデルの遺伝学
 (生物の形質が、遺伝により子孫に伝えられる、という学問)
 が結び付いたもので

 劣った遺伝子を排除し、
 優れた遺伝子を残し、
 人為的に淘汰を起こさせ
 人類の進歩を促し、
 ユートピアを作る…
 という構想だそうです

 歴史家によれば
 「優生学のテーマは、民族全体の健康を守ること」
 病気や障害が民族全体に広がらないよう、遺伝学を利用できないか、
 と考える学問なのだそう

 彼はこの学問に取りつかれ、
 大学卒業後、付属病院で研究を始めた

 対象にしたのは双子
 一卵性双生児と二卵性双生児を比較した
 一卵性双生児は、1つの受精卵が2つに分かれて産まれるので、遺伝的には全く同じものをもつ
 二卵性双生児は、2つの受精卵から産まれるので、遺伝的には少し違う

 そこで、ある病気へのかかりやすさが一卵性双生児の方が多ければ
 その病気は遺伝的なものと判断できる

 彼はこの方法で結核の研究を行った
 結核は当時死の病、と言われたが
 感染しても発症しない人、する人がいた
 そこで127組を対象に研究したところ
 一卵性双生児の方が発症率が45%高い、という結果になった

 医師で歴史家の方は
 「彼の研究は医学的には間違いでなかったことが、最近の研究で明らかになりつつある」
 とのことです
 当時でも、彼の研究は高く評価された

 そして、彼はこの成果を優生学に取り入れるべきだと主張した
 「結核患者は不妊手術をすべき」と言ったそうです
 不妊手術とは、男性は輸精管、女性は輸卵管を切除する手術
 優生学ではこれを「断種」と呼ぶそうです

○「断種法」の実現に働きかけるフェアシュアー
 彼は1931年には、
 「病気や障害の原因となる遺伝子が、子孫に受け継がれるのは望ましくない、
  そういう遺伝子を持つ可能性のある人は中絶や不妊手術をすべき、
  これはキリスト教的な慈愛精神にも合う」と主張した
 キリスト教で禁止されている中絶を正当化したそうです

 歴史家によれば、
 「彼は不妊手術をしないことの方が残酷だと考えていた。
  望ましくない遺伝子は、民族全体の負担になる、
  民族を救うためなら小さい犠牲は仕方ない、と考えた」

 彼は、優生学は、目の前の患者だけでなく、
 民族全体も救えるんだ、と信じていたそうです

 さて、時代は第一次大戦後
 ドイツは多額の賠償金を背負い、
 さらに世界恐慌が起きて財政は火の車だった

 プロイセン州では科学者を呼び、
 財政負担を減らすための方策について意見を聞いていたそうです
 フェアシュアーもこの会議に呼ばれ
 ドイツ全体の障害者の数は20万人と見積もり、
 彼らに回す予算を健常者に振り分けるべきと主張した

 プロイセン州はその意見を受け、「断種法」案を提出
 この法律では
 「本人の同意が有れば不妊手術を行える」としていた
 しかし国の法律では不妊手術が禁止されていたため、成立しなかった

○ナチス政権とフェアシュアー
 ところが1933年、アドルフ・ヒトラーが登場、選挙で政権を勝ち取る
 彼は優生学に共感を持ち、断種法を制定
 しかもこのときの断種法は
 「本人の同意が無くても「強制的に」不妊手術が可能」、
 プロイセン州のものより踏み込んだ内容でした。

 歴史家によれば、この強制、の文字により
 「1933年は優生学者にとって解放の年となった、彼らにとっては満足するものだった」

 彼はさらに「遺伝学の医師」という雑誌を発行
 その中でヒトラーを「優生学を初めて実行した政治家」と称えていたそうです
 ナチスもフェアシュアーを
 「わが党への忠誠心が強く、政治的宣伝にもなる」
 と評価、彼は出世街道をひた走るようになる

 歴史家によれば
 「フェアシュアーにとってヒトラーはユートピアを実現してくれる存在、
  一方ナチスも、政策を実現するためには遺伝学者や医学者の知識が必要だった」

 持ちつ持たれつだったようです。

 彼はフランクフルト大学に新設された、遺伝病理学研究所の所長に就任
 フランクフルト市民の遺伝情報を集めて、
 障害の有無などを調べたカードのリストを作った

 さらに彼の研究所は保健所の資格も取り、直接市民を診察できるようにした

 そして調査結果と診断の結果、
 結婚する夫婦が健常であれば
 「結婚適正証明書」を発行

 しかし遺伝的に問題があると判断されれば「断種」を申請した
 申請先は「優生裁判所」というところ
 これはナチス政権が断種遂行のために設立した裁判所だそうです
 ここでは、断種申請された人へ10分もかからないうちに「断種」の判決が下された

(裁判所もあったという事実にはビックリしました…)

 その裁判記録は現在もフランクフルトに残っているそうで
 判決を下された人たちの写真、診断記録と共に残っている

 実際の記録が映されていました

 ある女性は結婚申請に来たとき
 ドイツの首都やフランスの首都が答えられず、
 字も読めないために知的障害と診断されていました
 彼女は妊娠6ヶ月だったそうですが
 「早急に中絶すべきだ」
 という診断がフェアシュアーにより書かれているそうです

 歴史家によれば
 「彼は、障害のない社会を作るためなら断種は素晴らしいことだ、
  自分達のしていることは人道的だと信じていた」
 そして、1945年までに40万人が強制的に断種させられたそうです

○スタジオでの解説
 ここまでのVTRを見て、解説がありました。
 武内アナが進行役、ゲストは ・仲野徹氏(阪大の生命科学者)
 ・松原洋一氏(国立成育医療研究センター、遺伝学の研究者)
 二人とも、フェアシュアーのことは「知らなかった」と驚いていました

 松原氏は
 「彼は研究だけではなく、実際に自ら判決を下していた、という事実に衝撃を受けた」

 武内アナ
 「人類遺伝学とはどんな学問ですか」
 松原氏
 「研究対象の幅は広くて、進化の起源もあれば、健康や病気に関わる遺伝子の研究もある。
  現在は優生学は遺伝学のタブー、禁句に近い。黒歴史です」

 しかし当時は、世界的に断種の流れだったそうです

 世界初の断種法はアメリカで、
 アメリカが優生学の先進国
 「むしろドイツはアメリカに追い付け追い越せだった、
  日本にもその流れはあった。
  だから彼個人とかナチスだけのことではない」

 武内アナ
 「…そうなんですか?時代の流れ、というのは衝撃的ですね…」
 仲野氏は
 「だから、今の価値観のみで判断するのは正しくないと思います。
  ただ、子孫を残すというのは生物の最大の本能ですから、
  強制的な断種は、根本的な問題を含んでいる」

 松原氏
 「民族を守るとか、言葉の上では素晴らしいことに聞こえるが、
  行為としては悪魔のやり方ですね…」
 仲野氏はこれを
 「地獄への道は善意で塗り固められている」と表現
 「最初に止めさせれば良かったんだろうけど、
  結果的に40万人が断種させられた、
  悪いことでも、一旦その流れになるとそちらに行ってしまう。
  僕らはこれを「滑りやすい坂道理論」というけど、その典型ですね」

 アメリカも日本もその流れだった、というのも衝撃的でした。

○ユダヤ人の根絶
 VTRに戻ります

 やがて、ユダヤ人の根絶にも、優生学理論が使われるようになった

 ヒトラーは「我が闘争」で
 「金儲けするユダヤ人が国際的な不穏因子」と書き、
 フェアシュアーも
 「ドイツに異人種が増えると、ドイツ人の遺伝子が変化してしまう」

 こうしてユダヤ人排除のため
 1935年、血統保護法が制定
 ユダヤ人とドイツ人との結婚だけでなく、性交渉も禁止される

 しかしここで問題となったのは
 「ユダヤ人だ、とどうやって決めるのか」
 ナチスは、実はユダヤ人を特定する方法は無かったそうです
 医師で歴史家の方も
 「ドイツ人とユダヤ人とは外見の差はあまりない」
 とのこと

 そこでフェアシュアーは、ユダヤ人を特定する方法の研究を始めた
 外見の特徴を捜し出し、
 「身長が161~164センチ、鍵鼻、体臭がある」
 「他と比べ、糖尿病、聾、難聴の頻度が多い」
 などと書いている

 さらに、
 「ドイツ民族の特徴を保持できるよう、ユダヤ人を隔離すべき」とも主張
 結婚の禁止だけではなく、
 ユダヤ人の大量虐殺を科学的に後押しする形になった

 そして、研究所にヨーゼフ・メンゲレという新人が入る
 彼は優秀な大型新人として迎えられ
 フェアシュアーもその有能さを認め、自身の後継者と目していた

 1942年、フェアシュアーはベルリンのカイザーヴィルヘルム研究所に移る
 ここで彼は、ユダヤ人を特定するために
 血液のタンパク質を調べることを考えた

 しかしそれには大量の血液が要る
 それもユダヤ人だけでなく、多民族のものも必要になる
 そこでアウシュビッツ強制収容所に入れられた人たちの血液を利用することを考えた
 ここにはユダヤ人だけではなく
 ポーランドやソ連の捕虜もいた

 メンゲレは先頭に立って血液を採取し、フェアシュアーの所へ輸送するようになる
 血を最後まで搾り取られ、倒れる人もいた
 フェアシュアーの証言によれば、採取されたのは200人以上
 しかもメンゲレは眼球や内臓、骨格も研究対象にしようと、
 収容所の人たちの標本を作るため、殺戮も始めた…

 「これは全く科学とは呼べない、
  フェアシュアーの願望に過ぎず、
  倫理的に非難されるべき」
 と医師で歴史家の方は話していました

 ここまで彼らを暴走させたのは、いったい何だったんでしょう?

○解説
 ここでまたスタジオでの解説。
 武内アナ
 「ナチスも、ユダヤ人の特定が曖昧だった、というのは驚きでした…
  実際特定は可能なんですか?」
 仲野氏は
 「実際分からないと思います。
  ユダヤ人は色んな地に散らばっていて、その土地の民族との子孫がいる」
 松原氏も
 「遺伝学的にも難しいですね」
 そして
 「彼は自分の信じていることに暴走していった。
  科学は好奇心がもとですが、その対象が人間になると恐ろしいことになってしまう例です」
 「悪い好奇心ですね」

 武内アナ
 「ナチスとフェアシュアーはお互い利用しあっていたんですね」
 「科学にはスポンサーが要る、
  フェアシュアーの場合ナチスがスポンサーになった
  一方ナチスにとっては科学のお墨付きを与えてくれる方が、政策がやりやすくなった」
 武内アナ
 「反対する人はいなかったんでしょうか…」
 松原氏
 「言いやすい状況では無かったんでしょうね、言えば自分が危なくなる」
 仲野氏は
 「自分もこうなったとき、良心が保てるか自信はないですねぇ…
  抗いたいとは思うけど、実際起きるまでは分からない」

 …たしかに、おぞましいけど反対できない時代だったのかもしれない。

○戦後のフェアシュアー
 VTRに戻ります
 1945年1月、アウシュビッツ収容所は解放される
 5月にドイツは無条件降伏

 フェアシュアーは自分に不都合な書類を破棄、証拠隠滅をはかる

 そのあと連合国により
 戦争に荷担した科学者たちが裁判にかけられる
 連合国軍につかまり、射殺された人、
 死刑判決を受けた人…
 そしてフェアシュアーの愛弟子、ヨーゼフ・メンゲレは
 南米に逃亡、生涯追われる身になり暮らす

 しかしフェアシュアーは、裁判にはかけられたが
 「アウシュビッツでの出来事は一切知らなかった」
 とシラをきりとおし、600ライヒスマルクの罰金のみで放免される

 医師で歴史家の方は
 「彼は手を汚さない犯罪者、
彼も裁かれるべきだった」

 ところがその後の彼は裁かれるどころか、
 ドイツ医学会のトップに上り詰めていく

 1951年にはミュンスター大学の人類遺伝学研究所の所長、
 1952年にはドイツ人類医学協会会長に就任

 1968年、フェアシュアーは故郷で休暇を過ごしていた時に車にはねられ重体になる
 11ヶ月を昏睡状態のまま過ごし、そのまま亡くなった。享年73歳
 家族にも愛された生涯だったそうです

 歴史家によれば
 「彼は自分の行いに反省していたか疑わしい。
  彼はおそらく誇りを持ったまま墓に入ったのだと思う」

 彼の追悼記事には
 「信仰心が厚く模範的な人物」
 と評されていたそうです

○解説
 仲野氏は
 「裁判で知らなかったと言っているが、そんなはずはない」と批判していましたが
 松原氏は
 「彼の道義的責任は大きいが、
  彼が裁かれなかったバックグラウンドもある。
  アメリカ自身が優生学を推進しており、
  連合国も、あまり科学者たちを裁くと自分の首を締めることになるので、
  あまり踏み込めなかったのでは」
 武内アナ
 「なるほど…深いですねぇ…」
 仲野氏
 「こうなると、科学者の良心の問題ですね…」

 松原氏は、彼がトップになった理由として
 「フェアシュアーは、科学者としては優秀だったのだろう。
  それから、この時代は戦後で、医学や科学の人材が不足していたのもあるのでは」とのことです

 また、フェアシュアーの罪については
 松原氏は
 「残虐行為を科学的に推し進めてしまった」
 という点をあげています
 「科学と国家が悪い形で結び付くのは危険だ、ということを教えてくれますね」

 …残虐なことをしながら裁かれないのは納得いかない気もしますが、
 フェアシュアーは人徳はあったのかもしれない。
 これが人間なのかもしれない。

○現在も続く「優生学」
 さてここからは吉川さんのナレーション。

 フェアシュアーの手紙には
 「あの忌まわしい過去について話すのは止めましょう、もう過ぎたことですから」
 とあるそうですが、本当にそうか?

 遺伝の研究は進み、病気や障害の遺伝子の特定は進む
 胎児の出生前診断も容易になった
 次世代シーケンサーでは、一人の人の全ての遺伝子が1日で分かるようになっている

 日本では、胎児の遺伝子情報を調べる検査を受けた人は3万人、
 遺伝子的な疾患がある可能性があると告げられた人のうち、中絶を選んだのは9割に上る

 また、中国では人の受精卵の遺伝子を操作した、
 望み通りの人間を作る時代が訪れつつあると主張している…

○解説、議論
 松原氏は
 「遺伝病の子供を持つ親にとっては、
  次の子を考えるときに、出生前診断を受けるべきかは苦渋の選択になる」と指摘、
 安易な出生前診断、強制的な出生前診断は避けるべき、
 でないと新たな優生思想が生まれてしまう、
 と話していました

 仲野氏は
 「遺伝病の診断を受けられるようになったとして、
  大多数が受けても、受けない選択をする人も少数いるはずだが、
  そういう社会が、障害者を温かく受け入れられるか、という問題がある」

 障害者などが生きにくい社会になる恐れもある。

 松原氏も
 「例えばカリフォルニア州では、妊婦さんに医師がダウン症の出生前検査を勧めなければならないんです」
 武内アナ
 「勧めなければいけない、んですか…?」
 松原氏
 「ダウン症が減れば、医療費を削減できるという考えが、州としてはあるんですね」
 しかしこれはヘタをすると、ナチスの優生思想と結び付く、
 検査を受けないこと自体が非難される時代になるとすれば、それは大きな問題、
 病気の人の差別にもつながる、
 と話していました

 仲野氏は
 「命を選別してもいいのか、という問題もある。
  こういう言い方はいいのか分からないけど、
  どんな子が産まれるか分からないから面白い。
  偶然に左右されているから諦めがつくという考え方もある。
  またどんな子でも、自分の子ならかわいいと思える。
  だから命を選べるのは、果たして幸せなのか…」

 松原氏は
 「多くの遺伝疾患は治療法がないんです。
  そこを変えられるのは、患者にとっては夢のような話です。
  でもそれを越えて、背を高くするとか、望み通りに操作するのは神の領域。
  そこまで踏み込んでいいのか…」

 また、そもそも優れた遺伝子とは何なのか?という問題もある
 松原氏は、ピア・インディアンを例に挙げていました

 ピア・インディアンは飢餓に強い遺伝子を持つが、
 現代の飽食のアメリカでは、彼らは糖尿病に非常にかかりやすいそうです
 しかし、何十年も先に食料危機が起きたら、
 彼らは生き延びられる可能性が高い
 いい遺伝子、悪い遺伝子とは環境に左右される、とのことです

 仮に遺伝病とされる人も、環境によっては、それらの人々が生き延びる可能性もあるわけです
 (そういえば、鎌状赤血球の話を聞いたことがあります。
 これは赤血球がひしゃげている遺伝病で、貧血になりやすい
 アフリカなどにこの遺伝子を持つ人たちがいるそうです
 しかしこの人たちは、マラリアに対して生き延びやすいのだそうです)

 また、松原氏は
 「次世代シーケンサーは、一人のゲノムを隅から隅まで読めるんですが
  どの人を読んでも、どこかしら欠陥が何ヵ所もあるんです」

 つまり極端な話、みんなどこか劣っているわけです
 優れた遺伝子、劣った遺伝子という考え方自体が
 根本的に間違っている、ということ…

 松原氏は
 「だから、多様性を認めることだと思います」

 ナチスは
 「大衆の理解はあまりに小さく
  忘却力はあまりに大きい」と言っていたそうです

 しかし我々は、負の歴史を決して忘れてはならない

 フェアシュアーが血液の研究所をした所は、今は大学の施設になっているそうです

 しかしその壁には銅板?があり
 フェアシュアーはナチスドイツの非人道的行いに荷担した、
 とはっきり書かれています。

 さらにその板には、彼は裁かれることはなかった、とあり、
 「科学者たちは、その学術研究の内容と結果に責任を持たねばならない」
 とあるそうです
 この言葉で、番組は締め括られていました。

○感想など
 この話は、2つのシンプルだけど深い質問を突きつけている、と思います。
 1つは
 「社会や科学が暴走したとき、我々一人一人はそれを止められるのか」
 
 奴隷解放にしろ、戦争にしろ、どこかの国の言論弾圧にしろ
 誰かが勇気を出し、おかしいと声を上げることで世界が変わっていくわけですが
 最初におかしいと声を上げる人たちは、必ずと言っていいほど犠牲になってしまう。

 自分がその一人になれるのか…

 私も自信がありません。

 しかし勇気を出さねばならない、出したいとは思う。

 ミスチルさんの「HERO」を思い出します。
 「誰か一人の命と 引き換えに世界が救えるとして
  僕は誰かが 名乗り出るのを 待っているだけの男だ」
 でも最後には
 「HEROになりたい、ただ一人君にとっての…」

 私も、子供たち、未来のために守るべきものは守りたい。

・もう1つは
 「我々は多様性を認め、どんな人でも受け入れられる社会を作れるのか」

 以前、ダウン症の母親が作ったドキュメンタリー
 「ダウン症のない世界?」
 を見たときにも思ったのですが、

 出生前診断をすること自体が苦しみに繋がってしまう、
 という気がする。

 私は今後子供を産むことは多分ないですが、
 診断を受けられるとしても、受けたくはないですね…

 ですから、
 松原氏、仲野氏の議論にあったように
 出生前診断を受けないことや、
 受けない結果、障害のある子を産んだ人、
 障害をもって産まれた人、など
 にも寛容な社会であって欲しい、と思います。

 「ダウン症のない世界?」では、
 イギリスではダウン症の診断を受けることは義務ではないが、
 妊婦さんには、医師から受けなさい、中絶しなさいというプレッシャーがある、
 と紹介されていたので、世界がこの流れになれば危険だな、と思います。

 差別のない社会、多様性に寛容なを作るには、どうしたらいいか?

 私は、
 「多様性というのは、とても大事なのだ」
 という考え方をみんなで共有することだと思う。

 「欲望の民主主義」の番組でもあったけど
 多様性があり、色んな考え方の人がいるからこそ、
 我々は色々議論して、高めあって、進歩できるし、
 みんな違うから面白い。

 また、考え方の話だけでなく、
 進化論的にもむしろ多様性はとても大事、優生学は敵、
 ということも強調すべきだと思う。
 ピア・インディアンにしろ
 鎌状赤血球にしろ
 現代では劣性と見なされても
 環境が変われば優勢となる。
 浅はかな知恵で、これらの人たちを人為的に淘汰してしまえば、
 何かあったときに人類は滅亡してしまう可能性もあるのです。

 黒い歴史だからと蓋をするのではなく
 そこから目を背けずに学ぶ姿勢が、
 我々には必要だと思いました。

 科学者の方々、そうでない人にも是非とも見ていただきたい番組だと思います。

というわけで今回はこの辺で。
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