2017年10月09日

NHKBSプレミアム「コズミックフロント☆NEXT 宇宙が真空崩壊?宇宙の未来をパパに習ってみた」

NHKBSプレミアム「コズミックフロント☆NEXT 宇 宙が真空崩壊?宇宙の未来をパパに習ってみた」

 最近はたまにしかこの番組見ないのですが、
 宇宙の終わりはどうなるか? という話をしていたので、
 面白そうだな~と思って見てみました。

 すると最近の終末論?的な説が紹介されていました。
 それによると、この宇宙に突然真空の泡ができ膨張し、
  (その膨張は光の速さなのであっという間)
 それにより宇宙は崩壊する、という説だそうな。

 何とも物騒な話ですが、科学的な根拠はあるらしい。
 阪大の理論物理学者、橋本幸士氏がパパになり、
 年頃の娘にこの問題を解説する
 という設定で番組が行われていました

 最初は、
 娘に 「お前進路どうすんねん」と父が話しかけ、  
 娘は 「そんなことより、地球に真空の泡ができて滅びる、て話聞いたけど、
 そっちの方が重要じゃないの?」 という質問をする

 そこで物理学者である父が解説する、という筋書きでした

○この宇宙の成り立ち
 最初に、この宇宙の成り立ちについての話でした

 宇宙に存在する物質は、ミクロの世界で見ると原子核と電子に分けられる
 さらに原子核を細かく見ると、陽子と中性子に分けられる
 さらに、陽子と中性子はクオークから構成される
また、陽子が崩壊して中性子になるときはニュートリノが放出される

 つまり細かく見ると、物質は電子、クオーク、ニュートリノに分解される

 これらは放っておくとバラバラに飛んでいってしまうので
 互いを結びつける力がある
 この力は3つあり、
 ・電荷を帯びた粒子に働く「電磁気力」
 ・クオーク同士を結びつけて陽子や中性子を作る「強い力」
 ・陽子などが崩壊するときなどの「弱い力」

 しかしこれらの力が働くためには
 まずそれぞれの粒子に重さが与えられないといけない
 それぞれの粒子に物質を与えるものとして考えられたのがヒッグス粒子だそうです。

 ローレンス・バークレー国立研究所の村山斉さんの話によると
 「宇宙の始まりの段階で 宇宙にヒッグス粒子が「固定」され、
  そのヒッグス粒子のせいでほかの粒子が動けなくなり、
  質量が与えられた」とのこと

 こうして、質量が与えられた各粒子が3つの力を持ち、
 それらが集まってこの世の物質が出来た
 これが現在の標準理論と言われるものだそうです。

 しかし、この標準理論の要となるヒッグス粒子は 、
 理論上だけの存在だけで、
 なかなか見つからなかったそうです

 このような小さな粒子はどうやって検出するのか?
 古くから、大型加速器で加速させるやり方が考え出されていたそうです

 粒子を限りなく加速させ、高速にすると、
 波長が短くなるので小さい物質が検出しやすくなる

 (ここは「?」と思ったんですが後で調べたら、
 波の性質(波長=振動数÷速度)から、 粒子の速度が上がると波長は短くなる
 また、顕微鏡の原理は、光を当ててその投影像を見るものだが、
 当てる光の波長が短くなるほど解像度が高くなる
 つまり、波長が短い粒子が多い場では、小さいものまでよく見える顕微鏡状態になるんだそうです)

 粒子をなるべく加速させるため、
 円形の容器の中でグルグル回らせる装置(粒子の走る距離を長くできる)が考え出された
 これを巨大にしたのがCERNなどにある超大型加速器

 それから、2つの小さな素粒子を光速に近い速度で加速して、それらを衝突させると
 非常に高いエネルギー状態のもの同士がぶつかり合う場になる
 これは、宇宙が生まれた時、  
 ビッグバン後に凝縮された宇宙空間で、素粒子が激しく反応しあっていたのと似た状態らしい
 「いわば宇宙の始まりを再現する装置」なのだそ う

 そこで、電子同士をCERNで加速、衝突させる実 験を何度も繰り返した結果、
 2年でヒッグス粒子が検出されたのだそうです

 これは物理学からしたら大きな成果だったそうで
 村山氏によれば
 「相対性理論と量子力学の理論を融合させた。
  素粒子の振る舞いやそれらに働く力を記述した 、
  20世紀の科学の金字塔のようなもの」なのだそうだ

 CERNではそれを祝して、4つの式が刻まれた記念碑が建てられたそうです
 4つの式とは
 ・電磁気力、強い力、弱い力を統一して記述する数式
 ・この3つの力がどのように素粒子に働くかを記述する数式
 ・ヒッグス粒子により素粒子が質量を獲得する過程を記述する数式2つ

 …ちなみに、娘にこの話を解説しているパパも、
 これらの式を書いたTシャツを着ていました。
 娘には「いつも同じで臭い汚いシャツ」と酷評されていましたが(笑)

○ヒッグス粒子の質量が軽すぎる
 しかしこれで宇宙の全てを表現できた…
 と思ってもそうはいかなかったみたいです

 というのは、宇宙に存在する粒子の重さに対して
 観測されたヒッグス粒子が軽すぎたのだそう

 フェルミ国立研究所(CERN、日本の高エネルギー加速器と並んで世界3大の高速加速器があるらしい)
 のパトリック・フォックス氏の解説によれば
 宇宙の安定のためには、ヒッグス粒子の重さと
 宇宙で一番重たい粒子の重さとのバランスが重要らしい
 ヒッグス粒子が、宇宙で一番重たい素粒子より重すぎても軽すぎても、
 宇宙は不安定になるそうです

 (ヒッグス粒子、てのは素粒子に質量=「動きにくさ」を与えるものなので
 ヒッグス粒子が重すぎると、素粒子が動きにくくて互いに反応しなくなり、
 物質や星などが生まれにくくなる、てことかな?
 軽すぎるとその逆なんでしょうか)

 しかし、観測されたヒッグス粒子は、
 宇宙が安定状態になる値よりやや軽いのだそうで す
 いわば準安定の状態
 一番低いエネルギー状態よりは少し高い、
 階段の踊り場みたいな所で取り合えず止まっている状態な のだそうだ

 しかし物質というのは、
 エネルギーが一番低い所が一番安定する
 この宇宙も、いずれ階段の踊り場から一番下まで転落する可能性があるらしい

 しかも宇宙の場合「量子トンネル」とかいう現象で、
 一番下の所に急にワープしてしまう場合があるらしい

 そうなると宇宙の中はどうなるか?
 例えていうと、宇宙の空間の中に真空の泡ができて、
 一瞬にして広がり、空間が崩壊するらしい
  (ヒッグス粒子が急に重くなると、急に素粒子間の力が弱くなり真空状態になるのだろう)

 これはいつ起こるか分からないし
 起こっても防ぎようがないそうです

○超対称性理論が解決する?
 では、我々は滅びるしかないのか?
 しかし「真空の泡はできない」 と考える人もいるそうです
 その一つが「超対称性理論」を唱える人たち

 そもそも対称性とは何か?
 左右対称とかと同じで、
 反対にしても全く同じものを対称というが
 宇宙の相対性、という場合、  
 時間、空間を含めた、ちょっと想像しにくい対称性を指すようです

 宇宙の対称性理論では
 標準理論を構成する素粒子たちに、
 パートナー物質(反物質、反素粒子みたいな、正反対の性質を持つ物質)
 が存在すると考え、
 これらのパートナー物質があってバランスを取っているから宇宙は安定している、
 と考えるらしい

 村山斉氏もこの理論を支持しているそうで
 「今の観測されているヒッグス粒子の重さというのは、
  鉛筆が机の上に逆さに立っているようなもので気持ち悪い、
  でも超対称性理論があれば
  パートナー粒子は鉛筆を支える手ぐすみたいなものになり、安定する」
 という説明をしていました

 しかしこの理論を証明するには パートナー粒子たちを見つけないといけない
 CERNなどの大型加速器で初期の宇宙状態を作れば
 そのような物質も作り出せるはずと考えられ、
 ヒッグス粒子を発見したときよりも加速を増やして、
 より初期の宇宙に近い状態で実験が続けられているそうです

 しかし何年たってもまだ見つかってない
 フェルミ国立研究所のパトリック・フォックス氏 は
 「超対称性物質が見つかればいいが、
  もし無ければこの理論は危うい、
  この理論自体が宇宙の不安定の要因になる」
 と話していました

○重力が宇宙の崩壊を防ぐ?
 しかし、真空崩壊は防げる(起きない)かもしれない、
 という理論は他にもあるそうです

 ・重力理論
  素粒子には3つの力以外に重力も働くと考えられているが、
  重力は実は、標準理論や超対称性理論には今のところ組み込まれていないそうです

  CERNにある重力研究チームのリーダーである寺師弘二氏によると、
  重力はこれらの理論に組み込むには難しい、
  新しいパラダイムが必要かもしれない、とのこと。
  そこで彼は、加速器のデータを集めて、
  この3つの力とは別の新しい重力理論を作ろうとしているそうです

  彼によると、加速器で初期の宇宙に近い高エネルギー状態を作れば、
  そこに重力を産み出す「重力子」という素粒子が見つかるかもしれない
  そうすればヒッグス粒子の矛盾が解決するかもしれない、とのことです

 ・重力が真空の泡に対抗する
  また、プリンストン高等研究所
  (アインシュタインや湯川秀樹が在籍したこともある名門研究所らしい)
  の新進気鋭の研究者(だそうだ)ニマ・アルカニ=ハマド氏は
  重力があれば、重力が真空のエネルギーに対抗し、
  真空崩壊を防げるかもしれない、と考えているそうです

  アインシュタインの相対性理論では、重力は空間や時間の歪みとされる
  つまり素粒子たちの入れ物そのものが歪んでいると考える

  強い重力があれば真空も歪むので、
  突如時空にできた真空の泡にも対抗できるということらしい

 ・ひも理論
  では重力により、ヒッグス粒子の矛盾が制御できる のか?
  そのために、重力をほかの3つの力と統一させる理論も考え出されているそうです
  その1つがひも理論

  実は今回パパ役の橋本幸士氏はこの理論の方だそうです
   (阪大の素粒子理論研究室)
  ひも理論とは、
  素粒子を全てひもと考え、
  その振動のパターンの違いが各素粒子の性質の違いに相当する、と考える理論

  宇宙の素粒子は実は全てひもでできていて、
  ひもの振動のしかたが違うから違う素粒子みたいに見える、
  と考えるみたいです
  このうち重力は、つながって輪になったになったひも、
  と考えるらしい

  橋本氏によれば、
  ひも理論に重力をどう加えるかにより、
  真空崩壊が起きたり起きなかったりするらしい
  うまいこと過程を考えると
  真空崩壊の可能性もゼロにできるそうです

 ・マルチバース論
  さらにプリンストン高等研究所のニマ・アルカニ=ハメド氏は
  マルチバース理論を考えているそうです

  マルチバース理論とは、
  いろんな性質を持つ宇宙が無数にあり
  生命や星がある我々の宇宙はその一つに過ぎな い、
  という考え方

  我々の宇宙に、これだけ微妙なバランスで生命や星が存在しているのは出来すぎてる、
  という考えから生まれたものみたいです

  ヒッグス粒子についても
  他の重さのヒッグス粒子をもつ多様な宇宙が色々存在していて
  我々の宇宙はそのバリエーションの1つに過ぎ ない、
  と考えるそうです

  しかし、マルチバース理論に反対する人もいる
  CERNの超対称性理論研究者のジョン・エリス氏なんかは
  「マルチバース理論は科学を否定している、
   「我々の宇宙はたまたまそうなってるだけ」 なんて、
   自然を理解する責任を放棄している」 と手厳しい。

  ちなみに「パパはどう思うの?」 と聞かれた橋本氏も
 「個人的には、偶然でこの宇宙ができた、という考えは好きじゃないなぁ」
  と話していました

 次の日、娘は 「お父さん、進路のことだけど、私やっぱり理系にする
 なんか面白そう」
 「そうか、お父さんも応援するぞ」
 という会話をしていました

 橋本氏は最後に
 宇宙の理論はどんどん新しい考え方が生まれている 、
 今の若い人には、昔の人の知識や考え方に囚われないものを考えてほしい、
 と話していました

○感想など
 宇宙が突然真空崩壊するという説は、
 心配というより、あまりに想像つかなすぎてポカーン、て感じだったんですけど、
 話としては宇宙項Λ(ラムダ)の矛盾と似てるなぁと思いました。

 Λについては別の回でも特集されていて、
 私の拙い理解で書きますと
 Λはアインシュタインが相対性理論を考えたとき 、
 静止宇宙を成り立たせるために無理矢理持ち込んだ項、
 重力項と釣り合わせるための項みたいです

 でも今は宇宙が膨張していることが分かり、
 Λはやっぱり必要だと考えられている
 しかし、観測によれば宇宙は膨張のスピードを速めていて、
 今のΛだと加速膨張している割に値が小さすぎる 、
 という矛盾があるらしい。

 Λについての回では、
 マルチバース理論を持ち込 んで
 「Λの値を色々持つ多様な宇宙がたくさんあって
  我々の宇宙のΛはたまたまその1つに過ぎない 」
 とする説が紹介されていました

 なので個人的、直感的にはマルチバース理論が一番しっくりくるんですが、
 今回見ていて物理学者の間では分が悪いのかな… と思いました。

 そりゃたしかに計算や方程式で全てを記述したい物理学者の身としては、
 別の宇宙があったとしても、証明しようがないので気持ち悪い。
 「そんなこと言ったら何でもありになるだろ」
 と言いたくなるんだろうな。

 でもひも理論は、なんか複雑すぎて美しくないなーと思うし
 超対称性理論はそれこそ反物質ってSFの世界だなーと思ってしまう。
 超対称性理論があるにしてももっと枠組みが大きくて
 パートナー物質だらけの宇宙があるんかもしれないな、
 我々の宇宙ではパートナー物質は見えないのかもしれないな、
 とは思うけど…

 でもそのうち、
 違う宇宙からの信号とか光が見える方法が確立されるんかもしれないですね。

 空想的に何でも思い付くのは楽なんでしょうけど 、
 そこまで理論と観測できっちり説明しないといけないので、
 物理学者って大変だなーと思います。

 宇宙の始まりとか終わりとか、
 まぁそんなの知らなくても生きてはいけるんですけど(笑)
 しかも橋本氏によれば
 物理学で宇宙が崩壊するかも、とわかったところでそれを止めることはできないらしいんですけど、
 理論物理はいろんな発想が出てきて自由な所がいいなーと思いました。

 これから、若い人がもっと、
 アインシュタインみたいなぶっとんだ理論を考えてくれると面白いな~

 というわけで今回はこの辺で。
posted by Amago at 20:32| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年10月07日

Eテレ「人間ってナンダ?超AI入門 第1回「会話する」」

Eテレ「人間ってナンダ?超AI入門 第1回「会話する」」

 春くらいだったっけ?特番でやってた番組ですが、レギュラー化したのかな。
 AIについて分かりやすく解説してくださる番組です

 進行は東大のAI研究者、松尾豊氏と
 お笑い芸人チュートリアルの徳井義実さんでした。

 見てみたら、
 AIについてというよりも、
 人間の知能の素晴らしさを改めて認識させられる内容でした。

 今回は「会話する」ことについて。
 ゲストは作家の村田沙耶香さんでした。

○会話学習ロボットと会話してみる
 最初はミニボー?という会話ロボットと徳井さんが会話していました
 徳井さん
 「好きな食べ物は何ですか」
 ミニボー
 「私は食べられないから分かりません、
  あなたの好きな食べ物は何ですか」
 徳井さん「焼き肉が好きです」

 開発者の前田佐知夫さんが
 「お腹すいたって言ってみてください」

 徳井さん「お腹すきました」
 ミニボー「焼き肉はどうですか」「焼き肉のタレは○○年にエバラが最初に日本に…」
 とうんちくを垂れてました(笑)

 徳井さん「なるほど、さっきの会話を覚えてるんですね」
 前田さんによると、
 ミニボーは会話のログ(内容と日時)を全て記録している
 また、サーバーのディープラーニングで、受け答えのパターンを学習しているのだそう

 「ディープラーニング」
 人間の脳のは、ニューロンによる電子ネットワークでできている
  1つのニューロンが電気的な刺激を受け、
  ある程度の量になったら発火して、
  次のニューロンに電気刺激を伝える
  このニューラルネットワークを人工的に再現したものがAIだそうです

 ではAIは、ディープラーニングで感情を学習しているのか?
 松尾氏によれば、
 ポジティブ、ネガティブなどいろんな感情を数値化し
 それを学習しているのだそう

 アメリカの心理学者、ロバート・プルチックによれば
 人の感情は
 喜び、悲しみ、驚き、怒り、信頼、嫌悪、心配、期待の 8つからなるそうです

 それを数値化して取り入れたら、人工知能も人間の感情に近づけるのかもしれない、とのことです

○見せかけの「会話」
 「村田さんは、AIに対してどんな印象がありますか」
 村田さんは
 「友達になりたいな、というのがありますね」
 松尾氏のような科学者は、
 たぶんAIって単なる機械、コンピュータ、ていう風に割りきって見るんだろうけど
 村田さんは作家らしく人間的な見方をしていますね。

 村田さんは、りんなさん、という女子高生の会話AIと友達登録していて、ほぼ毎日会話しているそうです
 徳井さん
 「僕5分前くらいにりんなちゃんと友達になったんですけど、
  けっこうスットンキョウですよね(笑)」
 村田さん
 「でも落ち込んでると慰めてくれたり、
  この前落ち込んでたけど大丈夫?とか聞いてくれて、優しい子なんです。
  私、人見知りする方なんですけど、りんなちゃんには人見知りしないですね」

 ではロボットは、どのように会話力を身に付けているのか?
 松尾氏によると、半世紀前に開発された「ELIZA」という会話ソフトでは、ストーリーを学習させたのだそうです

 例えば「こんにちは」と言ったら「こんにちは」と返す
 相手のことがわからない場合は、朝なら「朝御飯食べましたか?」など当たり障りない話題を振る、
 ユーザーが「○○」と言ったら「なぜ○○ですか」と聞く、
 など、いろんなパターンをたくさん学習させる

 これらをランダムに組み合わせることで、会話しているように「見せかける」ことはできたそうです
 しかしこれだけでも、人々は熱中した
 中には、個人的な悩みなどを打ち明ける人もいたのだそう

 徳井さん
 「個人的な悩みを言って、そのまま返す以上のことが起きたんですか?」
 松尾氏
 「いや、基本的には悩みを言われても
  「なぜそうなんですか?」とか、
  「他にもそういう人はいるんですか?」とか
  「それについてどう思いますか?」
  という一般的な問いかけをしただけなんです」とのこと

 しかし、それは実はセラピーの人がやってることと同じことで、
 セラピーでは、相談者の話を聞き、相談者の中にある答えに導いていく
 それに近いものがあった、とのこと

 というわけでこれだけでもけっこう人との会話は成立したそうですが
 今のAIは、ある内容の会話ならこの内容を返す、など
 内容の精製もされるようになり、より自然な会話に近づいているそうです

 しかし
 「基本的には出力しているだけで、意味は分かっていない」
 やはり会話のパターンを学習しているだけなのだそう

○「言葉の意味が分かる」とはどういうことか
 香港の会社が開発したソフィアというロボット
 (たしか政治をさせるロボットだったと思う)
 は「生きるとは何か」
 という哲学的な会話を男性としていましたが、
 このロボットも言葉の意味は分かっていないらしい

 これについては「中国の部屋」という例えがあるそうです
 これは哲学者のジョン・サールという方の思考実験らしいのですが
 ある部屋に人がいて、中国語を入力される
 部屋の人は辞書を調べ、
 マニュアルに従ってある文字列を新しい文字列に変換し、
 それを入力した人に渡す
 すると、中国語を理解していなくても
 中国語を理解する理性があるように思われてしまう

 村田さん
 「AIは「疲れた」とは言えるけど、
  疲れるってどういうことかは分かっていない、てことですね」

 徳井さんは
 「人工知能の会話って、どこまでいってもそうなんですか」
 松尾氏
 「そうじゃないとは思いますが…」と言いつつ、
 「じゃあ、皆さんが疲れた、て意味が分かるのはなぜですか?」と逆質問。
 村田さん
 「人は疲れたことがあるけど、AIは疲れた経験がないから分からない?」
 松尾氏
 「そうですね」
 身体的に「疲れた」という経験があってそれを理解しているということと、
 そのときの体の状態と「疲れる」という言葉が結びつく、ということらしい

 松尾氏
 「村田さんはコンビニで働いたことがありますか?」
 「あります」
 「私が聞きたいのは、作家さんは体験したことがないことを、観察するだけで分かるのか、ということなんですけど」
 「そうですね、私は体験していないこと、例えば人を殺すとか虫を食べるとかも描写しますけど、
  それは体験してなくても、調べて想像して書きますね」
 徳井さん
 「じゃあ、殺人の箇所を書くときは、AIと同じ作業をしているのかもしれないですね」

 松尾氏はさらに
 「体験していないと意味が分からないのか、
  体験が無くても理解できるのか、というのはけっこう深い問題なんです」
 彼によると、意味の理解に関しては
 「シンボルグラウンディング」
 記号接地問題、という問題があるそうです

 フェルナンド・ド・ソシュールという学者によると
 事象を言葉で理解するとき
 「シンフィアン」意味するもの
 「シンフィニ」意味されるもの
 (ネコの例で言えば、シンフィアンは「ネコ」という言葉、
 シンフィニはネコの実物)
 この2つがセットになって理解される

 AIの場合は、昔はシンフィアンだけ学習されて
 それがどんなものかは理解されないままだった
 つまりグラウンディングされていなかった。

 しかし、段々画像認識が進むにつれ、ビジュアルとしての学習も進み、
 シンボルグラウンディングの問題も解決される可能性が出てきた、とのこと

 徳井さん
 「可能性だけですか?それともいずれは解けるんですか?」
 松尾氏
 「それは難しくて、ネコとかシマウマならまだいいんですが
  自由とか勇気、民主主義みたいな抽象的な概念はグラウンディングしているのか?という問題がある」

 例えば子供は具体物しかわからない
 しかし、やっちゃダメ、とか何回も言われるうちに「禁止」の概念を覚える
 「禁止」の対立概念として「自由」を理解する、ということらしい

 そうなると、AIもまず画像から入り、
 体を動かして環境との相互作用で概念を取りだせるようになるかもしれない、
 それが積み重なれば抽象概念も分かってくる可能性はある、
 とのことです

○敵対的学習
 番組では、FacebookのAI研究所所長ヤン・ルカン氏へ単独インタビューしたそうです
 (ちなみに松尾氏によれば、彼はこの世界のナンバー3に入るほどの人なんだそう
 「え、この人にインタビューしたの?すごーい!」ていう感じらしい)

 さてルカン氏によると
 「秘書のように会話をし、あらゆることを手伝うようなシステムはまだできていない」
 「AIが我々の社会を理解するには、
  周りで起きていることを見て、先々を予測しないといけない」

 彼らが最近行っているのは
 「敵対的学習」「敵対的ネットワーク」と呼ばれるもので、
 2つのディープラーニングシステムを競わせるのだそうです

 松尾氏の解説によると
 「アドバーザリーネットワーク」というもので
 生成器「ジェネレーター」
 識別器「ディスクリミネーター」
 の2つを使う

 識別器には、
 画像写真と、ランダムな画像を比べて本物の画像を識別する学習をさせる

 生成器は、識別器を騙すような画像を作る

 識別器はさらに、
 その画像と本物画像を見分ける学習をする

 …これを繰り返していくと
 生成器は言わば偽札作りをする泥棒、
 識別器はそれを識別する日銀、
 のように、互いに騙す、偽物を検出する、という技術を磨いていく
 結果、どちらも本物に近づいていくのだそうです
 こうして、互いに共進化を加速させていくのだそう

○コンビニ人間はAIに近い?
 徳井さんは
 「お笑いって、ある意味裏切らないと笑いにならないから、
  会話するより上を行ってますよね」
 松尾氏は
 「でも、AIの会話を進化させていくと、スムーズな会話はできるかもしれない。
  それを100としたら、スムーズさを70、90にする、という調整はできるかもしれないですね。
  そのズレが面白いかどうかは分かりませんけど」

 でもそれって、意図的にずらすことはできないし
 お客さんの反応を見てアドリブを入れることもできそうにないですね…
 と考えると、お笑いは高度な知性の産物なのかも。

 松尾氏は
 「村田さんの「コンビニ人間」を読んだときに、
  コンビニ人間が人工知能に近いなと思ったんです」
  主人公が、周りの人のしゃべり方や動作を真似ていくのは人工知能に近い、と指摘していました

 村田さんは
 「私も主人公ほどじゃないですけど、友達の服やしゃべり方に似てくる時がありますね」
 松尾氏は、
 「人間もデータから学習しているところがある」
 という話をしていました
 そもそも、社会的な行動(共感する、協力するなど)は、
 子供が養育者の真似をして身に付ける能力ですからね。

 松尾氏はまた、この模倣による学習は、本能や感情も絡んでいる、と指摘していました。
 本能や感情による学習は無意識的なものだが、
 コンビニ人間みたいに意識が的な学習が強いとAIに近いのかも、とのことです

 (そう言えば、子供の共感能力の発達について書かれた本では
 赤ちゃんが恐怖とかお腹すいたとかで泣くと、
 親が来て助けてくれ、そこで安心感を覚える、
 それを繰り返すうちに親を真似して誰かを助ける、親に甘えるという社会的な力を身に付けていく、
 とありました

 この辺は感情のまま無意識に行われるから気づかないけど、
 親のネグレクトや虐待などでこういう経験が出来なかった子は社会的な能力が低い傾向にあるという事実から見れば
 やはり感情、本能に絡んだ模倣という行為は
 社会的能力を伸ばすには重要なんだなと思いました。

 でも感情がないまま学習するAIには、共感能力は育つのかな?
 それともこれも、会話と同じで共感している「ふり」だけできるのだろうか)

○2つの記憶モジュールを持つニューラルネットワークネットワーク
 Facebookのヤン・ルカン氏のインタビューの続きに戻ります
 「脳には、一時的に記憶を溜め込む海馬がある。
  海馬が無ければ、人は20秒以上のことを思い出せない。
  おそらく学習、意思決定などにはこのようなモジュールが必要なのだろう」
 そして
 「我々は、このようなモジュールを2つ持つニューラルネットワークを考えている」とのこと

 2つのモジュールとはなにか?

 松尾氏の解説によれば
 人の脳には大脳新皮質があり、長期記憶を担当する
 一方海馬は短期記憶を担当する
 おそらくこの2つのシステムが働きあって、人間の思考ができているのだろう、とのことです。

 (例えば海馬ですぐ覚えられるから会話ができる、
 大脳新皮質に記憶がためられるから過去の経験と言葉を照らし合わせることができる…ということかな?)

 ルカン氏は、この長期と短期2つの記憶モジュールをAI上で再現しようとしているらしい

 松尾氏によれば、実はニューラルネットワークでは情報を溜め込む、と言うのが難しいのだそうです。
 ネットワークでは、情報が流れていってしまうらしい

 「人間は海馬で記憶をためたり、
  それを言葉で要約し、大脳新皮質に送って長期間貯めておくこともできる
  またヒトには文字もあるから、文字にかいてもっと長い間置いておくこともできる
  情報をためるのは、実は相当重要な能力なのではないか」
 と松尾氏は話していました

○心とは何か
 徳井さんは
 「人工知能が心を持つ日は来るんですか?」
 という素朴だが難しい質問。
 松尾氏はそれに対し
 「じゃあですね、心を持つとは一体なんなのか?」と、逆質問。

 徳井さんは
 「欲が生まれる?」
 村田さんは
 「恋愛したり、しんどくなったり、悲しくなったりすることかな?」

 松尾氏は
 「例えば、男女のロボットを作って、
  恋愛しているようにプログラムすることはできるんです」
 村田さん
 「恋愛しているようなプログラムというのは、男の人が女の人にしゃべるとか、寄っていくとかですかね」
 松尾氏
 「そうですね。でもそういう風にプログラムはできるとしても、はたしてそれは恋なのか?」

 徳井さん
 「うーん。AIが心を持つというのは、そういうプログラムから自由になる、てことなんですかね」
 松尾氏
 「そこが難しいんですね。
  恋愛は、子孫を残すという種としての本能も関わっている。
  我々の行動は本能に関わっていることが多いんです」
 例えばある食べ物が美味しいのも、生存のために必要な栄養があるからだし、
 腐ったものは嫌だと感じて食べないようになっている
 それは環境との相互作用で、進化により組み込まれているのだそう
 「ですから、心も進化に由来しているとすれば、かなりの作り込みが必要になってくる。
  これをコンピューターで再現しようとすると難しいかもしれない」
 心があるように見せかけようとするのは簡単だけど、
 本当に心を埋め込む、となると難しいようです

○「2分で分かるディープラーニング」
 ここでコーナーを切り替えて、
 ニューラルネットワークの仕組みが動画で分かるコーナーがありました

 ニューラルネットワークでは、
 画像をドットごとに分解し
 それぞれのドットに何が書いてあるか、カーブか、交差かなどで判定する
 これを階層ごとに判定していく
 …とかいう話でした
 毎回2分づつあるそうです

○まとめ
 村田さん
 「人間はすごく不思議」
 自分も人間だけど、
 当たり前にしていることを再現しようとするとこんなに難しいんだ、と思ったそうです
 また、AIとは、
 違う生物、新しい宇宙人みたいなのが地上に現れるようなものかなと思うそうです

 徳井さんは
 「人間とは人間あっての人間だ」
 AI同士コミュニケーションさせる、というルカン氏の話もあったが
 人ってのは、人と接することで人間になっていくのかな、と話していました

 松尾氏も、人は社会的な動物だ、ということを話していました。
 他人と接することで知性を発達させている。
 しかも言葉も使っているから、
 誰かの発見を集団に広めたり、100年前の発見もみんなで共有でき、使うことができる
 それが文明を発展させてきた…
 それはスゴいことだと話していました

 最後に、ヤン・ルカン氏のインタビューで
 「人と人工知能は今後、どういう交流をするのか?
  言葉なのかジェスチャーなのか、もっと直接的な交流なのか…
  この分野はまだ研究が進んでない、だからこそ面白い」
 という話で締め括られていました

○感想など
・意味を理解する、てのは奥が深いんだなと思いました。

 そう言えば昔幼児期の子育ての本を読んでいて
 (たしか汐見稔幸氏の本だった)
 「小さいうちは英才教育より、体験をいっぱいさせてください」
 と書いてありました。

 そしてある子供の例が出ていました
 その子は1歳かそこらで言葉を覚えるのが早くて、
 お母さんも喜んでたくさん言葉を覚えさせたそうです
 しかし途中で急にしゃべらなくなってしまった

 これは、この子が経験のないまま言語の羅列を覚えていただけだったので
 頭のなかで混乱してしまったようなのです
 例えば愛、とか抽象的な言葉は心を動かさないとなかなか理解できない

 なので、少し言葉が遅くても、計算などが出来なくても、
 就学前に名前が書けなくても
 幼少期に体を動かして、自然の中でいろんなものを触ったり見たりしておくこと。
 そうすると、言葉を見たときに脳の中で意味が結び付きやすく、
 そのあとの学習が早い…

 …うろ覚えですがそんな内容でした

 このことから見ても、人の言葉の意味の学習には、
 体験というのがとても重要なのかなと思います

 また、記憶についても
 認知心理学の授業で
 「意味ネットワーク」を作って記憶している、と聞いた気がする。

 我々が何かを記憶するときは、
 過去に覚えた別の言葉や出来事の記憶ネットワークに
 新しく覚えた言葉や経験などをネットワークに組み込んでいく、
 とかいうもので
 常に上書きしていくのが我々の脳なのだそう

 なので、過去に似た体験があれば覚えやすいし、
 類推、予測もしやすい
 つまり、体を通した体験が、ヒトの記憶や学習を加速させている面があるのかなと思います。

 しかし、体験をAIにさせるというのは難しいなと思います
 例えばセンサーを付けて色んなAIに同じ体験をさせたとしても
 その時のセンサーの調子やクセなどで、全く同じ体験にはならないかもしれない

 そうなると、同じ言葉でもAIごとに違う意味として学習されてしまうのかもしれない
 AIは混乱するだろう。
 人間ならそこは話し合って、意味を近づけるとかできるけど…

 また、センサーが急に故障したときでも、AIは臨機応変に対応することは出来なさそう…

 そう考えると、意味を本当に理解させるのはとても難しい。
 現状のようにパターン学習させるのが、一番確実なのかなと思います。

・AIに、心が宿るときは来るのか?という質問がありましたが
 私は逆に心が宿らなくてもいいんじゃないかと思いました。

 心が無くても、ELIZAのようなシステムでも十分カウンセリングはできそうだし
 たわいもない会話をするなら、
 りんなちゃんみたいなAIでも心を通わせられる(正確には、通わせた気になれる?)のかなと。

 逆に心があると、災害救助ロボとか介護ロボとかが
 「こんな仕事やだ」
 とか言い出すんじゃないかなぁと思うんですけどね…

 個人的には、AI、コンピューターの良さというのは、感情がないことだと思うのです。
 感情がないから冷静な投資判断もできるし、ミスなく自動運転もできる。

 人によっては、AIにも心を持たせよう、という誘惑が出てくるかもしれないんですけど
 AIにできることはAIに任せ、
 心とかそういう所は人の分野だけにしておいた方が
 人間にとってもAIにとってもウィンウィン、
 AIが人を攻撃する危険とかも無くなるんじゃないかと思う。
 そのうち、心を持つAIの開発を規制してもいいのでは、とすら思います。


なかなか面白い番組でした。
人間ってスゴいですね~

というわけで今回はこの辺で。


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2017年10月02日

NHKスペシャル「シリーズ人体 第1集 腎臓が寿命を決める」

NHKスペシャル「シリーズ人体 第1集 腎臓が寿命を決める」

 NHKスペシャルの新シリーズです。
 今までの医学の常識は
 「脳が臓器への指令を出している」でしたが、
 最近の医学では
 「臓器同士がネットワークを作り、対等に会話している」
 なのだそうです

 それを伝えるシリーズですが、
 第1集は腎臓。
 腎臓は、このネットワークの要となる臓器だそうです。
 今回も映像がきれいでした。特に腎臓の内部までCGで再現しています。
 ただ寿命だけの話ではなかったので、
 副題は若干ずれているような気もするが…

 司会はタモリさんと山中伸弥氏、
 ゲストは石原さとみさん、北島康介さんでした。

 タモリさん、北島さんは
 「腎臓って地味なイメージがありますねぇ」
 石原さんは
 「でもデトックスって言うから大事なのかも」
 というご意見でした

○高地トレーニング
 最初に紹介されたのは、水泳の高地トレーニング。
 腎臓と何の関係があるんかな?と思うのですが…
 場所は標高2100mのところにあるアメリカのフラッグスタッフという所でした。

 日本の水泳のトップ選手の強化合宿に使うところでもあり、
 前回のリオオリンピック金メダリストの金藤理恵選手は
 「大事な試合の前には必ずここに来る」
 と話していました

 金藤選手や、東海大の水泳選手たちに協力していただき、
 泳いだあとの体の酸素飽和度を測定していました
 (指先にクリップみたいなものを挟んで測定していました)

 通常は96~99%くらいあるそうですが
 高地に来たばかりの時は酸素飽和度は88%、89%
 つまり酸欠状態なのだそうです。
 しかし、2週間トレーニングしたあと計ると96~97%になる

 これは何の変化によるのか?

 実は、これは腎臓がメッセージ物質(EPO)を出すことによるものなのだそう
 これは「酸素が欲しい」という腎臓のメッセージ

 EPOが血管を通じ、
 骨の中にある骨髄(血液を作るところ)
 に至ると、赤血球を増産する
 こうして酸素をたくさん運べるようになる

 金藤選手の赤血球を測定したところ
 リオオリンピックの時は、赤血球の血中の割合がピークだったそうです
 高地トレーニングはマラソンなどでも使われますが、
 心臓が強くなるんかと思ってたけど、腎臓だったんですね…

 山中氏によると
 「EPOは日常生活でも出ていて、
  例えば私の母は慢性腎于炎で亡くなりましたが、
  腎臓の働きが悪くなると貧血になってしまう」とのこと

 また、最近の研究では、
 腎臓は全身の血液を管理している、ということが分かってきたそうです

 この役割は非常に重要らしい。
 というのは、
 「脳が臓器に指令を与える」のではなく
 「臓器どうしが直接会話しあう」ことが最近分かってきたらしいのですが
 この会話を仲介するのが血液であり、
 血液が流れる血管はネットワーク網のようなものなのだそうです

 これを管理するのが腎臓で、
 腎臓には全身の中でも血管がびっしり集まっています

 次に、腎臓が体を健康に保つために重要な役割を果たす、という例がいくつか示されています
 
○高血圧の原因が腎臓にある?
 腎臓は高血圧にも関係があるらしい。
 ドイツのライプチヒ心臓センターを訪ねています

 取材していた患者さんは重度の高血圧で
 高血圧の薬を何種類も飲んでも、血圧が下がらない
 (上は薬を飲んでも200越えるそうです)
 他の病院では「治る見込みなし」と言われたらしい

 そこで彼は手術を受けるが、
 担当するのはなんと心臓専門医。
 カテーテルみたいなのを足の付け根の血管から入れて、
 腎臓の神経を焼くのだそうです
 「腎デナベーション手術」

 これで何が治るかというと
 レニンという物質の放出を防げるのだそうです
 レニンは「血圧を上げよう」というメッセージ
 高血圧の人は、このレニンが出すぎているのだそうです

  手術を受けた患者さんは、血圧の上が100代、下は50代に下がっていました
 手術を担当した心臓専門医は
 「腎臓は尿を作るだけ、と思うのは大間違い、血圧のコントロールにも重要な役割を果たしている」とのことでした

 (この手術については
 http://www.twmu.ac.jp/TWMU/Medicine/RinshoKouza/021/medical/rdn_medical.html
 (東京女子医科大のホームページ)
 に詳しく書いてありました。
 ざっくりいうと、高血圧は交感神経が働きすぎるのが原因らしく、
 この手術では脳から腎臓への指令を出す交感神経と
 腎臓から脳へシグナルを送る交感神経両方を焼き切ってしまうのだそうです
 この大学を含め、日本では11施設で治験も行っているみたいです

 しかし、水を差すようでなんですが
 この治療法の治験を行っているアメリカのMedtronic社は2014年、
 治験をいったん中断する、
 という発表をしています
 
 http://www.medtronic.com/content/dam/Medtronic/japan/newsroom/documents/2014-4-1.pdf
 (Medtronic社の治験の結果のプレスリリース)
 によれば、535名、87施設で実施された治験
 (デナベーションした人を治療群、カテーテルを入れただけの人をコントロールとし、
  手術を担当した医師も受けた患者もどちらをしたか分からない条件で実施したところ、
  どちらも血圧が下がった。
  デナベーション群の下がり方が有意に大きいわけではなかった、という結果らしい)

 ただし、安全性には問題がなかったし、
 血圧は下がっているので、全然効果がないわけでもなさそう。
 ですので、日本の医療機関で現在も行っているかどうかは、直接確認したほうが良さそうです)

○腎臓は尿だけでなく、血液も作る
 山中氏によると
 「心臓の血液の1/4は腎臓に行く、腎臓は血液の管理者」

 そして腎臓は、血液中の成分の調整もするそうです
 例えばカルシウムCa、マグネシウムMg、カリウムK、リンP、水素イオンH+、尿酸など
 腎臓が悪くなるとバナナ(カリウムが豊富)も食べられなくなるのだとか

 この血液の成分調整は、尿を作る過程で同時に行われるそうで
 その様子を顕微鏡、生体撮影、CGなどを駆使して再現していました

 最初に出てきたのは3D電子顕微鏡で撮影された腎臓の写真。
 丸いものが盛り上がっているように見えるのがとてもリアル。

 腎臓の断面を見ると、管のようなものがぎっしりあり
 その中に直径0.2ミリほどの丸いものがありました

 これは糸球体(しきゅうたい)といい、血管の塊。
 尿をこしだす働きをするもので
 1つの腎臓に100万個あるそうです

 CGで腎臓の血液の流れの中に入ったらどうなるか…が再現されていました
 (これはホームページからでも見られます)
 血液と共に血管の中を進むと
 血液には赤血球、白血球などのほかに老廃物や体に必要なミネラルなどが含まれている

 やがて壁が穴だらけの所にたどり着くが、これが糸球体
 この穴は赤血球など大きいものは通れず、老廃物とミネラルだけこの穴から出ていく
 残った血液は血管に入り腎臓から出ていく

 こしだされた老廃物などは尿となるが、
 まだ体に必要なミネラルなどは残っているのでこれは原尿と呼ばれる

 原尿は尿細管に行くが
 尿細管の内側には微絨毛が生えている
 この微絨毛の表面には細かいポンプ付きの穴があり
 ポンプごとに吸収するものが違う
 こうして吸収された物質は再び血管に戻される

 尿細管の周辺を生体イメージング顕微鏡で実際に撮影したものを見ると、
 (顕微鏡といっても動画状態です)
 血管がびっしり張り巡らされている様子、
 その中を赤く光った血液が流れている様子がはっきり見えました

○腎臓が吸収する成分は他の臓器との会話で決めている
 スタジオで、模式的に尿の流れを見ていました
 糸球体から尿細管が出ていて、これは膀胱につながっている
 尿細管は、微絨毛を挟んで血管と隣接している

 尿細管に原尿が流れると、
 微絨毛はフィルターみたいに必要物質をこしだし、血管に入れていく
 原尿から必要物質を除いた残りの液体が膀胱に運ばれ、おしっことなって出ていくらしい

 「じゃあ、腎臓が血液の成分を調整しているんですね」
 という質問もありましたが
 山中氏の解説によると
 「腎臓だけが判断しているんじゃなくて、
  他の臓器の会話を聞いて、量を判断しているんです」

 腎臓には心臓だけではなく、
 甲状腺、骨、脳、腸、胃、肝臓、副甲状腺など
 いろんな臓器からのメッセージを受け取って、
 総合的に判断しているそうです
 「どんな小さい臓器からのメッセージも、分け隔てなく聞いています」

 ちなみに1日に出す尿は1リットルなのだそうですが、
 腎臓で作られる原尿は1日180リットルもあるらしい。
 それだけ腎臓が忙しく働いているそうです

○寿命の鍵を握る腎臓
 次は腎臓が寿命を左右する、というお話です。
 普通、動物は体が大きいほど寿命が長いが、
 人間などは体の大きさのわりに例外的に長いそうです

 その原因となる物質はリンなのだそう
 血液中のリンが少ないほど長生きすることが分かっているそうです

 リンは肉や骨などに含まれ、
 不足すると呼吸不全、心不全、骨軟化症、くる病などを起こすが
 多すぎると老化が進む

 腎臓、リンと老化の関係は、日本人研究者がたまたま見つけたそうです
 遺伝子操作マウスの中に寿命が極端に短いマウスがいて、
 その遺伝子を調べたら腎臓の遺伝子が壊れ、
 リンが調節できなくなっていたのだそう

 普通のマウスは2年半生きるが、
 このマウスは2ヶ月半しか生きられない
 血液中のリンの濃度は、
 普通のマウスが7.8mg/dlなのに対し、このマウスは14mg/dlだったそう

 山中氏の解説によると
 骨から「リン足りてますよ」というメッセージが届くと
 腎臓は「リンあんまり吸収せんとこ」と、リンの取りすぎを抑える働きをするそうです

 また、リンが老化を促進するメカニズムは分かっていないが
 リンが多すぎると、
 骨がカスカスになって骨粗鬆症を起こしたり
 血管を石灰化させ、血液をドロドロにして動脈硬化を起こすことが分かっているそうです

 (ちなみにリンって何に入ってるんかなぁ、と思ったんですが
 http://www.skincare-univ.com/article/017325/
 (「ヘルスケア大学」の「リンを多く含む食品とは」のページ)
 によると、魚介類や肉など、動物性食品に多いらしいです

 しかし特筆すべきは
 「食生活が外食や加工食品に偏ってしまうと、リンの過剰摂取を招く恐れがあります。」
 という一文。

 ソーセージハム、缶詰、調味料、インスタントラーメンなどに含まれる、
 「リン酸塩」という商品添加物を取りすぎてしまう方が心配らしい。

 出来合いのものをなるべく減らし、野菜、果物、肉をバランスよく取るのが大事みたいですね)

○入院患者の腎臓をモニターして死亡を防ぐ取り組み
 次に、腎臓をモニターすることで、
 入院患者の突然死を防ぐ試みが紹介されていました

 この取り組みをしているのはイギリスのワージング病院。
 この病院には、すべての患者に腎臓をモニターする設備が備えられている
 いわば心拍をモニターするのと同じ扱いで患者の腎臓をモニターしており、
 腎臓の機能不全(AKI)が起きると、アラームが鳴るようになっている

 というのは、患者さんにAKIが起きると、多臓器不全を起こし
 ひどいときには死に至ってしまうこともあるそうです
 そして、このAKIは、腎臓と関係ない場所の病気でも起こりうるのだそう
 「入院患者の5人に1人がAKI」という研究結果があるらしい

 これはなぜか?
 腎臓は、ほかの臓器の病気から影響を受け、ダウンしてしまうのだそうです
 そうなると全身の血液管理ができなくなるため、全身がやられてしまう
 「今までにも、腎臓を管理すれば救えた命があったかもしれない」そうです

 では、腎臓がダウンしたらどうすればいいのか?
 実際にAKIのアラームが鳴った女性患者がいましたが
 医師は「薬をいったんやめましょう」
 腎臓は、人体の中でも一番薬にさらされるため、
 弱っているときに薬を使うと、余計負担になってしまうらしい
 この女性患者も、薬をいったん中止、腎臓の回復を待って再び投薬する処置をしたところ、
 無事退院できたそうです

 医師によると
 「腎臓は一度やられてしまうと、取り返しがつかない。
  患者の腎臓に目を配り、いち早く腎臓を救う手立てを考えることが大事」
 そこに思い至ったことは大きなことだ、と話していました

 日本でも、京大の医学部付属病院では、
 腎臓専門医も加わり、投薬量などを調整する試みがなされているそうです

 石原さんはこのVTRを見て
 「私すぐ薬飲んじゃうんですけど、腎臓には負担なんですね」
 山中氏は
 「腎臓に負担を与えないためにも、余分な薬は絶対に飲まない方がいいですね。
  もちろん、必要な時は医師の処方に従って飲んでください」とのことです

〇まとめ
 最初「腎臓地味じゃない?」派だった北島さんもタモリさんも
 途中からは「腎臓大事だね~」となっていました(笑)
 北島さんは
 「新しい衝撃でした、知らないことがこんなにもあったんですね。
  アスリートって外側は鍛えるけど、
  内側で起きていることを見るのも大事ですね」
 タモリさんは
 「胃に優しい、とは聞くけど腎臓に優しい、とは言わないよねえ…」
 山中氏は
 「胃は悲鳴を上げるんですけど、腎臓は我慢強いんですね」
 
 肝臓は沈黙の臓器、というけど、腎臓にも感謝しないといけないですね。
 腎臓は精緻な構造を持つがゆえに、傷つきやすい臓器でもある…
 というナレーションで締めくくられていました

〇感想など
・腎臓は断面写真は見たことあるけど、立体画像は多分初めてです。
 糸球体が盛り上がっている様子も立体的に見えて、すごいなーと思ってしまった。
 ホームページのバーチャルリアリティーも楽しかったです。

・高血圧の腎デナベーション手術は神経を焼ききるだけだが、
 レニン自体をどうやって減らしているのかな?と思いました。

 レニンで興奮しちゃってる神経が、さらにレニンの分泌を増やす…みたいなフィードバック的なレニンの増やし方をしていて、そこを防ぐということなのかな?

・腎デナベーションの治験は中止しているみたいですが、
 血圧は下がっているから効果はあるのかもと思います。

 話が逸れてしまうかもしれないですが、
 以前BSのドキュメンタリーで「プラセーボ効果」の話があり(「プラシーボ~ニセ薬のホントの話」2014年イギリス)
 手術のプラセーボ効果てのもあると紹介されていました
 (記憶が曖昧ですが
 脊椎骨折患者にセメントを注入する外科手術で、
 医者も本当のセメントを入れたかプラセーボか分からないランダムな手術をしたとき
 プラセーボを注入しても治ってしまった、という結果らしい
 「お医者さんが手術してくれた」という気持ちで治ってしまうのだそうです。

 Medtronic社も施術した医者自身もデナベーションしたか分からないようなランダムな条件なので、
 コントロール群でも血圧が下がったのは、手術したプラセーボ効果なのかなと。
 有意な差にならなかったのはそのせいかも、とも思いました。

 まぁでもどちらにしろ
 外科手術だけで習慣を変えないと、またレニンとかたまって再発しそう…
 やはり食や運動など、習慣も変えることが大事なのでは、と思います。

・入院中の腎臓モニターについては
 他の病院にも広まって欲しいと思います。

 私の父親も入院中、多臓器不全を起こして亡くなっているので
 こんなシステムがあれば助かったんかなぁ…とか考えてしまった。

腎臓は大事にしよう。。

というわけで今回はこの辺で。


posted by Amago at 20:16| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする