2017年11月11日

Eテレドキュランドへようこそ「ロボットがもたらす“仕事”の未来」

Eテレドキュランドへようこそ「ロボットがもたらす“仕事”の未来」

 2016年スウェーデン制作のドキュメンタリー、
 以前BSで放送されていて、私もその記事書いたんですが
 ざざっとメモした感じで、自分で読んでも分からん(笑)
 復習がてらまた書いてみました。

 以前見た時はふーん、って感じだったんですが
 今回までの間
 人工知能の進歩のすさまじさを実感したり
 経済格差の拡大がべき関数的だということを知ったり
 ドキュメンタリーで言われていることがホントに実現されるんじゃないか…
 とも思えてきました

 しかしながらこのドキュメンタリー、もう一回見たけどやっぱり見にくい…
 出てくる人多すぎ(笑)
 色んな人が織り交ぜられすぎて混乱します。
 というわけで、私なりにまとめつつ書いてみます
 (BSのを編集してあるので、一部内容は省略されていました)

〇機械化は仕事を奪うのか
 最初に、機械化は仕事を効率化するメリットがあるが、
 人から仕事を奪うデメリットがある、という話をしていました
 効率化のメリットを示す例としては
 ・アメリカのニューバーグという街では
  グローバル化でアジアに敗れ、寂れた工場が多い
  これに対抗し、ロボットを導入して効率化を目指す企業がありました
  「この機械で2人必要だった仕事が1人になった」
  「ベストを尽くさないと、中国などとの競争に敗れてしまう」
  と経営者は話していました

  また、ただの効率化ではなく
  「この機会をもう一台導入すれば、
   箱詰めしている従業員は今の仕事をしなくていい。
   そうしたら彼にもっと責任ある仕事を任せられる」
  とも話していました
   
 ・大企業の倉庫で、ロボットを導入して効率化した例がありました
  ここはかなり大きい倉庫ですが
  自動フォークリフトみたいな機械が走り回っている
  この機械は床に書かれたバーコード情報を読み取り、倉庫から品物を持ってくるそうです
  この機械200台の導入で1000人分の仕事をこなし、
  仕事の効率は5倍になったそうです

 一方ロボット化、機械化が仕事を奪う、という意見もある
 ・「ロボットの脅威」という本を書いたジャーナリストは
  「経営者は、機械は人の仕事を奪う、とは言わないが
   今すぐでなくても、いずれ雇用を生み出す場所は減るはず」
  「ロボットで力をつければ、海外に行った工場を取り戻せる、というが
   工場が戻っても働き口はないだろう」

 ・経済学者は
  「経営者は仕事がなくなることについては言わない。
   代わりに再教育すればいい、という。
   しかし、昔は誰でもできる機械だったが
   今の機械を扱うには高等教育が必要で、簡単に切り替えできない」

 ・また、MITの研究者は
  「技術革新は昔から人々にとって脅威だ、
   例えば自動織機ができたときは労働者はそれを壊す運動をおこした」
 ・カリフォルニア大の方は
  「自動織機の場合、影響を受ける人は少なかったが、
   今の機械化は、ほとんどの人が仕事を奪われてしまうので
   危機感のレベルが違う」
 
 …などと不安な意見を言う人たちが多い。

 ・一方、ボストン大の方は
  「自動織機の発明で、布の生産時間が1/50に短縮された、
   しかしこの100年で織物の需要はむしろ高まり、
   雇用も増えている」
 ・経済学者は
  「例えばマクドナルドは成功している、
   主婦の仕事が新たな仕事にとってかわった」

 仕事は時代により変わるので、ある仕事が機械化で失われても
 また新しい仕事ができる、という楽観的な見方も何人かいました
 
〇ロボット、人工知能の発達は目覚ましい
 次にITスペシャリストの方が
 「失った仕事は新しい仕事で相殺される、という人もいるが、
  違う、という人もいる
  技術の進歩はあまりにも飛躍的
  コンピューターの科学者は、進歩には限界がない、止められない、という」
 
 コンピューターの進歩の目覚ましさについての話題でした

 例えば
 ・自動運転の科学者(スタンフォード大学の方)
  「昔は自動運転車を作るのには苦労したが、
   今では公道を走らせるまでになった、
   高速道路も車線変更がないなら可能」
 
 ・文章の自動化(ロサンゼルスタイムスの記者)
  「ここでは記者とプログラマーがタッグを組み、
   構造化データを記事に変換している。
   地震の記事なら、日にちや場所を変えるだけで後は同じ文章で配信できる
   文章ができるのは早いし、内容も人に引けをとらない」
 
 ・サービス業でも自動化が進んでいる
  経理の仕事など、知的労働と言われる仕事でも自動化が進んでいるそうです
  「ロボットの脅威」を書いたジャーナリストは
  「我々は教育を受けてパソコンの知識を学び、知的労働者になるべき、という通念があったが
   それも崩れつつある」
  とのことです  
  このジャーナリストによれば「機械学習」がそれに拍車をかけている、とのこと

 人工知能の発達はめざましい。
 ・未来学者(そういう科学があるんですね)の方は
  「今の機械は、エックス線写真やMRIの診断もするようになった、
   自動化はますます進むはず」

 ・スウェーデン王立大学の方は
  「機械学習は、株価の予測、天候予測にも使われている」

 ・「ロボットの脅威」を書いたジャーナリストは
  「機械学習は世界を征服しかねない、
   さらに多くの仕事を奪うだろう」

 つまり、自動運転、新聞記事、医療、金融などいろんな世界で
 人間の仕事が人工知能にとって代わられている

 さらに心配なのは、この変化が加速度的だということ。
 「テクノロジーの進化は指数関数的で、ムーアの法則にしたがう
  (ムーアの法則とは、1年半ごとに人工知能の性能が2倍になる、という法則)
  指数関数は短期的にはゆっくりなので大したことが無いように見えるが、
  ある時点から急に上昇する」

 ・未来学者の方は
  「2025年にはコンピューターは一人の人間と同じレベルになり
   2050年には、人類すべてを足したのと同じくらいの知能になる」
 
 この早さ故、機械が人間にとって代わる、という危機感を持つ人は多い
 ・カリフォルニア大の方は
  「失業が起きると危惧する人は1950年代以来最も多いだろう」

 ・ルンド大学の方は
  「デジタル化、ロボット化は加速している、
   これは中間層にも影響を及ぼしかねない」

 ・地球規模巨大リスク研究所の方(そんな研究所があるのね)は
  「自動化が仕事を奪う脅威は今に始まったことではない、という意見もあるが
   今の変化は、人間が再教育して再出発できるほどゆるやかなのか?」
  また、彼は
  「今成功している企業は、従業員が比較的少ない。
   コンピューターをうまく使えば、人を使わなくても多くの仕事ができる」
 
 ・MITの方は
  「新しい仕事ができても、賃金の中央値や失業者の人口比率は低下している、
   つまり新しい仕事の増加が追いついていない」

 コンピューター、人工知能の進歩が速すぎて、
 人が無くても仕事は進む、という時代になってきているようです

 いい例がグーグルで
 ウェブでの検索エンジンを作ることで
 少人数で多くのサービスを提供するシステムを作り上げ、従業員を減らした

〇機械化されない仕事、今覚えると有利な仕事
 ではどんな仕事が自動化され、どんな仕事は人間有利のままか?
 ・未来学者によれば
  「教育、科学、芸術分野。その他はすべて機械化する」
 ・ほかの方は
  「医療、看護婦など、コミュニケーション力が求められるもの
   指導力、創造性、起業家精神も重要」
 
〇機械化は雇用の在り方も変える
 次に、機械化が雇用を変える例が紹介されていました
 ・フリーランスでシェアライドの仕事をする男性
  この男性は仕事を解雇された。
  しかし彼は
  「ほっとした、上司とうまくいっていなかった」
  今はサイドカー、という会社?の配車サービスの仕事をしているそうです

  これはシェアライドのウーバーと似たようなシステムで、
  乗り物の利用者がアプリを使って、運転手の呼び出しをする
  呼び出された運転手が利用者を運び、お金をもらう
  運転手は自分の車を使い、空いた時間に仕事ができるメリットがある

  彼は
  「仕事がうまくいかなかったら
   「お前は理不尽な上司に収入や未来を左右されないんだぞ」
   と自分に言い聞かせています
   自由に働けるのが性に合うんです」
  というようなことを言っていました

 ・玩具デザイナーの女性
  彼女は事務員だったが、会社を解雇された。
  しかし彼女はもの作りが好きだったので、自分を売り込み
  今の仕事をしている
 「好きなことは趣味でするものかと思っていました。
  それが仕事になるなんて。アシスタントも雇えるくらい順調で、今はとても幸せです」

 このようにフリーランスで働く人が増えている
 今やアメリカの1/3はフリーランス、
 2020年までにこれが4割になる、という試算もあるとか

  しかし、これはいいことばかりではない

 ・「サンフランシスコクロニクル」紙の記者は
  「フリーランスで働くパートタイマーは増えたが
   多くの人はセーフティーネットから外れてしまった」
 
 ・ITスペシャリストの方は
  「能力があり、好きなことができるならフリーランスがいいが、
   生計を立てるのがやっと、ならストレスになる
   それはその人による」

 フリーランスは自由な点はよく、自分の能力が売れるならいいが
 失敗したときのセーフティネットが無さすぎる問題があるようです

〇ワーキングプア
 次は、仕事があったとしても機械化で賃金低下が起きる、という話でした
 ・ニュージャージー州の失業者のための食堂
  ここは1980年代はじめにオープンした
  当初は利用者には失業者の人が多かったが、今は仕事のある人も利用する
  食堂の方によると
  「最近は2つ3つ仕事を掛け持ちしても生計が建てられない人が多い」
  いわゆる「ワーキングプア」の人が増えている

 ・カリフォルニア大の方は
  「賃金が低いのは不完全雇用と同じだ
   アメリカのような豊かな社会でも、
   2つ3つ仕事を掛け持ちしなくてはいけないなんてひどい話だ」

 ・経済学者の方は
  「アメリカは、社会の成長のために低賃金を黙認してきた」
   これはヨーロッパでも広がっているそうで
  「フランスもイタリアも同じ動き、
   ドイツですら雇用を生み出すために、最低賃金制度を設けた」

 ・ルンド大学の方は
  「最低賃金の雇用は正しいのか?」と話していました 
  「機械化は膨大な失業者を産み、格差の拡大も生む
   ロボットの脅威は経済の障害にもなり、暴動も起きている
   我々は、機械化が経済にとってどんな影響があるかを知り、議論せねばならない」

 つまり、機械化で仕事が効率化され、仕事は減る
 また、賃金も低下する
 これは人にとって大きな脅威となる、とのこと

○ベーシックインカム、仕事をしない社会
 ではこれに対する対策はあるのか?
 一つは「国による規制」
 地球規模巨大リスク研究所の方は
 「機械化を制限するのも1つの手です。
  そうすれば、我々は成長のペースを決めることができる」

 しかし経済学者によればそれはうまくいかない、とのこと
 「国はそんなことをしない、
  機械化を制限すれば、
  国は競争力を失い、むしろ仕事は無くなる」
 成長を意図的に止めるのは、もはや現実的ではないらしい

 そこで出てきたのがベーシックインカム
  カリフォルニア大のかたは
 「国によっては、最低限の生活費(ベーシックインカム)を検討している」

 しかし、ベーシックインカムについては否定的な意見も多いそうです
 ・先の玩具デザイナーの女性は
  「ベーシックインカムがあれば人は働かなくなる」
 
 ・経済学者は
  「国民には、最低賃金は支持されるが
   ベーシックインカムはあまり支持されない
   これは、人には全員働くべき、生産すべきという概念があるため」
 しかし彼は
 「でも実際は、少ない労働時間で生産は可能なのです」とも言っていました

 かつて、ケインズは
 「100年後の世界は、
  機械化が進んだ結果、人々は週15時間の労働になり、
  創造的なことに費やす時間が増えるだろう」
 と予測したらしい
 しかし実際は労働時間も賃金も変わっていない

 ルンド大の方は
 「機械化によりたしかに社会の富は増えたのに、
  その恩恵を国民生活に回してこなかったのが原因」と指摘している

 しかしケインズの言うように、
 仕事をしない社会も現実になるかもしれないそうです
 ・環境保護団体の女性
  この団体はロンドンのヒースロー空港近くのごみ処理場を改装し、環境問題のための活動拠点にしている

  ここで働く女性は
  「昔は空港の受付でフルタイムで働いていた、
   しかし、こんな生活はイヤだ、もっと環境保護にかかわることをしたいと辞めた」
  「今は週一、それも午前しか働いていないけど、それでも生活していけます」

  彼女は賃金をもらわなくても仕事はしている、と話していました
  「私はここで丸太運びなどしているから労働はしている。
  ここにいると自然にふれ合えるし、免疫力もアップする」
  一方ITデジタルスペシャリストの方は、ベーシックインカムには前向きでした
 「ベーシックインカムは
  「みんな働かなくなる」
  「創造的になる」
  両方の意見がある、
  でも憶測でものを言うのはやめて、試してみたらどうか」

 もしかして、機械化が極端に進めば
 必要なことは機械に任せ、
 人にはベーシックインカムを配って創造的なことをさせる、
 という時代も訪れるのかも…

○税金制度も変わるかもしれない
 ここからは色んな人たちの意見が次々と示されていました

 「今後はナノテクをはじめ、少なくとも20の技術が爆発的に発展すると言われている」
 「その影響はあらゆる産業に及ぶ」
 「我々は今こそ議論すべき、
  科学者は技術の進歩が社会に与える影響を知らせるべき」
  
 テクノロジーは税制も変えるかもしれない。
 「自動化により仕事が失われたら、社会のあり方も変えねばならない、
  働いて給料を得る仕組みも変わるかもしれない」
 「ロボットが仕事をこなすようになれば、どこから税を徴収するのか」
 「1つの機械で100人の雇用を奪ったら、所得税100人分を失うことになる。
  そうなると、政府は課税のためだけに雇用を産み出すことになるかもしれない」

 そして、貧富の格差などの問題を解決するには、
 我々がこれからどんな社会でどんな人生を送りたいのかにかかっている、とのことです
 「自動化で仕事は機械に代わり、社会の富は確実に増えていくだろう。
  給付金を支給するなどして、仕事からあぶれた労働者にもその恩恵を分けねばならない。
  自動化で増えた富を1%の富裕層に集中させるのか、
  みんなで分かち合って、みんなで自由な時間を楽しみ、より良い社会にしていくか、だ」

 最後にはこの言葉で締め括られていました。
 「テクノロジーは道具、我々はかつてない強力な道具を手にした。
  その力をどう使うかは我々次第だ」
 「私たちは機械化に適応していくしかない、前に進むしかない」

○感想など
・ベーシックインカムについてもう少し調べました

 ベーシックインカムって実際採用されてるの?と思ったんですが

 実は2017年の1月から、フィンランドで試験的に導入されているそうです。
 国家レベルでは世界初らしい。

 http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/01/post-6733_1.php
 「ベーシックインカム、フィンランドが試験導入。国家レベルで初」
 (Newsweek Japanの2017年1月17日の記事)

 フィンランドのこの試験では、
 2000人の失業者に対して、月に560ユーロ(日本円にして約6万8000円)を支払い、
 2年間の実験で、失業率の低下にどう影響するかを調べるのだそう

 それからそもそもベーシックインカムとはどういう制度かというと、
 https://fincle.jp/tax/basic-income-1
 などによりますと

 ベーシックインカムは、
 衣食住を満たすための最低生活費を国から支給するもので、
 それ以上稼いでもその収入は自分のものになる、
 という制度みたいです

 ヨーロッパの場合、社会保障制度が複雑で
 失業者は、低所得でも仕事を始めると
 社会保障が打ち切られるシステムなのだそうで
 失業者の労働意欲がわきにくいらしい。

 ベーシックインカムならば、収入があっても支給されるので
 失業者が積極的に就業できる、ということが期待されているようです。

 ただ、否定的な意見もあり
 ・財源確保が難しいのでは
 (代わりにほかの社会保障が削減されれば、福祉水準が低下する)
 ・労働意欲が減るのでは
 などの懸念があるようです

 しかし過去には、カナダで5年試験的に導入されていた歴史もあるらしい。
 それは1974年から1979年の間に導入された「Mincome」というもの。
 そんな昔に既にされていたんですね。

 さらにはその結果を分析した研究もあり、
 それによると
 「ベーシックインカムは労働意欲の低下にはならないのでは」という結果なのだそうです

 「Mincome」は国民の最低限度の生活を保証するための給付金で
 (ただし正式に導入する前に政権交代し、実現はしなかったらしい)
 その研究は2011年、
 マニトバ大学の経済学者エヴェリン・フォゲット氏により発表され
 それによると、
 ・ベーシックインカムにより、ワーキングプア層の生活が安定した
 ・ベーシックインカムがあっても、働く時間に大きな変化はなかった
 などの結果があり、
 懸念されている労働意欲の低下はない、とのことです

 このほか、実は世界にはベーシックインカムみたいな制度を既に導入している国や自治体は
 いくつかあるんだそうです

 例えば
 ・アメリカのアラスカ州
  ここでは、住民への税もなく、1 年につき1000~2000ドル支給される

  アラスカの場合、石油資源が豊かなので実現できるようで
  州営のパイプラインがあり、
  そこが運営するファンドを通じて支給されるらしい。

 ・カタール
  ベーシックインカムという名前ではないが、
  ここは消費税や所得税がなく、
  病院の診察、大学までの教育費、電気代と水光熱費が無料らしい
  (そう言えば昔「行ってみたらこんなトコだった」という番組でやってた)

  カタールは石油輸出により、
国の財政が豊かだからできる政策だそう。

 ・ブラジル
  限定的ではありますが、
  ベーシックインカムのような制度が国家レベルで導入されているそうです

  これは「ボウサ・ ファミリア」という所得制限つきの児童手当で、
  ベーシックインカムの最初の段階として導入されているそうです
  全面的な導入は国家レベルで認められているものの、
  実際行うには財政問題がネックなのだそう。

  しかしながら限定的ではあるものの、
  この手当のおかげで、夢をかなえる意欲を持った子供が増えているのだそう

 その他、ベーシックインカム検討中の所もいくつかあるらしい
 ・オランダのユトレヒト
  2016年1月から、300人を対象に試験的に導入
  (一人900~1300ユーロ支給)

  2017年からは実験対象が拡大、
  最大25の自治体の2万人あまりが実験対象になっている

 ・スイス
  2016年6月にベーシックインカム導入についての国民投票が行われ、否決されている

  やはり、財源確保、労働意欲低下の恐れなどが理由だそう

  スイスの場合、
  成人は2500フラン(約27万円)未成年は625フラン(6万8000円)
  に足りない人には足りないぶんだけ配る、という制度が提案されていたそうです。

  なので月収2500フラン以上の人は恩恵を受けられず、
  2500スイスフラン未満の人でもそんなにたいしたお金を貰えないので
  労働意欲が低下する問題があったとのこと

 意外にベーシックインカムっていいのかも?という結果ですね。

 ただ、国民性など配慮した制度設計が必要そうだな、とは思います。

・前にこの番組をみたときは、
 ロボット出てきても新しい仕事ができるんじゃないの…と思っていたが、
 最近の人工知能やネットの進歩はほんとに半端ないです。
 仕事が無くなる可能性、貧富の差の拡大はあながち嘘ではないのでは、
 ベーシックインカムはもしかしてありなんじゃないか、
 将来的に実現するかも、と個人的には思うようになっています。。

 富裕層にならなくても
 ベーシックインカムをもらってそこそこの趣味でくらす…
 てのも悪くないかな~、とも思ったりもするんですが
 ただ、ベーシックインカムを配る側ともらう側の間、
 あるいは人工知能を操る側と人工知能に任せる側の間で
 差別とか、支配、被支配の関係ができなければいいなと思います。

個人的には、人工知能や機械に任せきり、とかいうのも気持ち悪いので(笑)
利用するにしても、その原理とかメカニズムは分かっていたい。
そのために、新しいテクノロジーには敏感でいよう、
と思った次第です。

勉強になりました。
というわけで今回はこの辺で。


posted by Amago at 14:08| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年11月06日

NHKスペシャル「人体 神秘の巨大ネットワーク 第2集 脂肪と筋肉が命を守る」

NHKスペシャル 人体 神秘の巨大ネットワーク「第2集 驚きのパワー!”脂肪と筋肉”が命を守る」

タモリさん、山中伸弥さん司会の全8回シリーズの「人体」
今回は脂肪と筋肉についてでした。

今回のシリーズは、
「脳が体に指令を出す」というのが今までの常識だったが、
実は、「脳は社長ではなく、臓器どうしは対等に指令しあっている」
 各臓器がメッセージ物質を放出し、血液を介してそれらの物質のやり取りをして
 お互いにコミュニケーションをとっている…
という事実をいろいろと紹介していますが、
今回は、臓器とすら思われていなかった脂肪と筋肉も、
メッセージを発している、という話でした。

最近分かってきた事実なので、
メカニズムとか理由はまだこれからですが、
まだまだ人間って自分の体についてほとんど知らないんだな、と思わされました。

〇今回のゲスト
 今回のゲストは、松岡茉優さん、お笑いコンビオードリーの春日さん、お笑い芸人の宮川大輔さん。
 松岡さんは
 「脂肪はつけちゃいけないもの、筋肉はつけたほうがいいもの、というイメージでした」
  と話していました。

 春日さんはボディビルダーであることをアピール。
 タモリさんは「そうだったの?」と知らなかったみたいですが
 「先生も鍛えられてるそうですよね?」
 「そうですよ」
 山中氏も学生時代から体を鍛えていたそうで、本人によれば今もムキムキだそうです(笑)

 宮川さんは「最近太ってきましたねえ」
 20歳のころから比べると15㎏太った、と話していました。

〇橋本マナミさんの脂肪と筋肉
 最初に、タレントの橋本マナミさん(スタイルもいいし、きれいですねえ)のご協力で
 彼女の体全体をMRIでスキャンし、
 脂肪と筋肉の全体像を映像で再現していました。
 両方とも、体全体に張り巡らされているので、
 ほぼ体の姿を示しているといってもいいくらいでした。
 タモリさんは「ここまで見ちゃっていいんですかねえ」

 また、彼女の全身の筋肉、全身の脂肪の重さの重りがスタジオに置かれていて、
 松岡さんが筋肉を担ぐと「重くて持ち上げられない」
 春日さんは脂肪を持ち上げて「でもこれも、筋肉と同じくらいじゃないですか?」
 全体重が56㎏、筋肉は21㎏、脂肪は18㎏だそうです。
 スタイル良さそうな橋本さんでも、これくらいの重たさなんですね。

 山中氏は
 「筋肉と脂肪を合わせると、体の7割くらいを占めていると言われていて、
  最大の臓器とも言えます」と話していました
 それから
 「僕が学生だった30年前は、脂肪のことはほとんど学んだ記憶はないんですが、
  今の学生は試験が山積みですね…」

 では脂肪と筋肉は一体どういう働きをするのか?
 今回紹介された話をざっくりまとめると
 ●脂肪はレプチンを放出し、「エネルギー十分です」と脳に知らせ、食べすぎを予防する
 ●筋肉はミオスタチンを放出し、「もう成長するな」と周りの細胞に知らせる
  筋肉は運動するとカテプシンBを放出し、記憶力を高める
 ●メタボの体だと、脂肪のメッセージが暴走し、生活習慣病を引き起こす
  しかし運動すると筋肉がIL-6を放出し、この暴走を止める

 …しかし、これらは分かっていることのごく一部で、
 脂肪も筋肉も、もっとたくさん、何百ものメッセージ物質を放出しているのだそうです。

〇脂肪は脳に指令する
 さて最初は脂肪細胞についてです。
 ・食べ続けてしまうジュリアンくん
  最初に、コネチカット州に住むジュリアンくんの例が紹介されていました。
  彼はまだ1歳半ですが、
  生まれつき脂肪がない「脂肪萎縮症」という病気で、
  筋肉だけなのでだいぶやせて見えます。
 
  彼は普通の子供なのですが、
  食事時になると異常な食欲を示すそうです
  食べるときは飢えた子のようにいっぺんに食べようとし、
  自分の分を十分に食べても、親の分も欲しいと言って泣き叫ぶ。
  やせている子がほしい、と言って泣いているからなんか気の毒にも見える…
 
  しかしこれは、彼の体に脂肪がないことが原因なのだそうです。
  脂肪がないと「もうエネルギー十分です」というメッセージが脳に行かないのだそう。

  普通、食べたものに含まれる糖分、脂肪は血液に入り、
  脂肪細胞に運ばれてそこで蓄えられる。
  しかし彼のような患者さんだと脂肪細胞が無いので、
  血液中に糖分や脂肪がたまったままになってしまう。
  ジュリアンくんの血糖は160mg/dl(正常値の1.5倍)、
  脂肪の量は3480mg/dl(正常値の20倍以上)にもなるのだそうです

  彼のような患者さんは、血中の高血糖、高脂肪、抑えられない食欲、
  などにより、生活習慣病を発症し、30年ほどしか生きられなかったのだそうです
  
 ・食欲をコントロールする脂肪細胞
  脂肪細胞がないと異常な食欲になってしまうのはなぜか?

  それを説明するために脂肪細胞の映像が出ていましたが(3D電子顕微鏡の映像だそう)
  真ん丸でとてもきれいです。
  わずかな核の周りに、脂肪がぱんぱんに入っている。
  脂肪組織では、この真ん丸粒々の細胞が寄り集まっている感じでした。

  普通、食べ物が体に入ると、
  血流を通じて脂肪、糖分が脂肪細胞に送り込まれ、脂肪細胞に蓄えられる

  脂肪細胞の中にはレプチン、と呼ばれる物質がカプセルに入っているが、
  脂肪細胞に脂肪がため込まれてパンパンになってくると、
  このカプセルが破れてレプチンが血中に放出され、
  やがて脳に運ばれる
  
  脳ではこのレプチン受容体にレプチンが結合し
  「もうエネルギーは十分ですよ」
  というメッセージを脳に伝える
  こうしてもうお腹いっぱい、と感じ、食べなくなるのだそうです。

  ジュリアンくんのような患者さんに対して、
  3年前、アメリカではレプチンが医薬品として認可されるようになり、
  レプチンの投与で異常食欲が抑えられるようになったそうです。
  ジュリアンくんも、もうすぐこの治療を受ける予定、とのことです。

 ・スタジオでの解説
  山中氏は
  「これはびっくり仰天の発見でした、脂肪が脳に命令するなんて…」と話していました。
  松岡さんも
  「レプチンが教えてくれるなんて、食べながらそんなこと考えたことなかった」
  そりゃそうだ(笑)

  さてスタジオには、脂肪細胞を2万倍にした大きさの丸い球がありましたが
  ここにはたくさんのメッセージ物質がありました
  分かっているだけでも600種類はあるそうです

  しかもこの丸い球、押すとメッセージが表示されるとかで
  (相変わらずNHK、無駄に芸が細かい…(笑))
  松岡さんが押してみると「血管作って」
  山中氏によると
  「酸素や栄養がほしい細胞がいるとき、
   その細胞が発するメッセージらしいんですが、まだよくわかってない」
  
  春日さんが押してみると、赤くなってビービー、なんかやばそう…
  「敵がいるぞ」というメッセージでした。
  山中氏によると
  「細菌やウイルスが入ってきたときに、免疫細胞に発するメッセージ」
  だそうです
  「外敵と脂肪と何の関係があるの?」というタモリさんの質問に
  「脂肪は全体に広がっているので、もしかしたら見回りの役をしているのかも」
  とのことでした

  春日さんの体験談によれば
  「ボディビルディングの減量中は体の調子が悪くなって、風邪をひきやすい」
  免疫と関係があるのかな?
  
  しかしこれらはまだ一部で、脂肪が出すメッセージ物質のことは分からないことが多いそうです

〇筋肉もメッセージを発する
 さて次は筋肉の話です。
 筋肉の細胞の顕微鏡画像を、NHKお得意の8Kカメラにつないだ映像がありましたが
 細長い笹かまぼこみたいな形の細胞が、きちんと積み重なっている感じの細胞です。
 この細長い細胞はトレーニングにより太くなるのだそう。

 ・筋肉ムキムキの牛
  筋肉の細胞が発するメッセージが分かったきっかけは
  ベルギーのナミュールというところで発見された、筋肉ムキムキの牛だそうです
  (歩いてましたが、なんか強そう(笑))

  この牛は、普通の牛の2倍の筋肉を持つそうですが
  それはミオスタチン、という成長をコントロールする物質が働かないのだそうです
  ジョンホプキンズ大学の研究者によれば
  「筋肉を作りすぎると、体のエネルギーを浪費してしまうので、
   ミオスタチンは「もう筋肉を作りすぎるな」という指令を出す」
  
  そして、このミオスタチンの発見をきっかけに、
  筋肉が出すメッセージ物質の研究が進んでいるそうで、
  去年だけで関連論文が100本以上あるそうです。
  中には「うつの改善」「がんの増殖を抑える」などの報告もあるとか。

 ・運動が記憶力を改善する
  これらの研究の中で、アメリカ国立老化研究所の研究では
  「運動が記憶力を改善する」という結果を発表しているそうです

  運動すると、体にカテプシンBという物質が放出される
  カテプシンBの量と記憶力テストの相関関係を調べると、
  ばらつきはあるものの、カテプシンBが高いほどテストの点がいい、
  という傾向がみられたそうです

  メカニズムははっきりわかっていないものの 
  カテプシンBが脳の海馬に作用する可能性がある、とのこと

 ・スタジオでの話
  春日さんは「筋肉凄いですね、春日が褒められてる気がします」(笑)
  タモリさん「頭良くなった実感あるの?」
  春日さん「漫才の練習が減ったんで、忘れることが増えましたけど」(笑)
 
  山中氏によると
  「まだまだ分かっていないことが多いですね、
   でもそうだといいなと思って毎日僕も走っています」

〇メタボは脂肪細胞のメッセージ異常を起こす
 山中氏は
 「生物の長い進化を考えると、肥満を経験しているのは今の人類が初めてじゃないかと思います」
 タモリさん
 「食べたいものが食べられるようになったのもごく最近のことだもんね」
 山中氏
 「想定されていないことが起きてるんだろうと思います」

 宮川さんは
 「僕、最近大盛が多くて、レプチン出ているはずなのに食べちゃうんですよね」
 山中氏
 「それが今まさに、研究が追い求めているところなんです」

 太っている人が食べすぎてしまうのはなぜか?
 食べすぎを続けたらどうなるのか?
 という話が次にされていました

 ・肥満の人が食べ続けてしまう理由
  肥満の人は、脂肪細胞がパンパンに膨らんでいて、レプチンはたっぷり出ているはず…
  しかし現実は逆なのだそうです。
 
  肥満の人の血管の中を見ると、
  たくさんの油脂が邪魔をして、レプチンが脳に入っていかない、
  あるいは脳の中に、たくさんのレプチンを受け取る受容体がない…
  つまり脂肪が多すぎて邪魔をして、
  脳にメッセージが伝わらなくなってしまっているのだそうです

 ・肥満を放置するとどうなるか
  メッセージが伝わらないだけならまだいいが、これが体に深刻な状態をもたらすそうです

  アメリカミズーリ州のメタボの女性は
  心筋梗塞を3回起こし、
  さらに心筋梗塞、脳梗塞、腎臓病、高血圧、糖尿病の恐れがあるとのことで
  毎日15種類の予防薬を飲む必要があるのだとか…

  ではなぜ脂肪がこれらの生活習慣病を起こすのか?
 
  脂肪細胞では糖分や脂肪がいっぱいになると
  脂肪細胞がたくさんの脂肪を敵と勘違いし
  「敵がやってきた」というメッセージを出してしまうそうです

  そうなると、免疫細胞がそのメッセージを受け取り
  活性化して戦闘モードになる
  戦闘モードになるとさらに分裂し、
  自身も「敵が来た」というメッセージ物質を放出する

  この活性化免疫細胞が、
  パンパンの脂肪細胞の周りをぐるぐる回っている映像がありました。

  そして、この免疫細胞は敵とみなした脂肪を次々と食べだすが
  脂肪が多すぎるので自分がパンパンになり、やがて破裂する
  すると、敵をやっつけるため持っていた毒素が血管内部に放出されてしまい
  これが血管の壁を傷つける
 
  …こうして、心筋梗塞、糖尿病、腎臓病などを起こすそうです

  山中氏によると、日本人だけでも糖尿病は1000万人を超えているとかで
  メタボ予防は重要になってきているようです

 ・体を動かせば免疫細胞の暴走を止められる
  肥満により暴走する免疫細胞ですが
  これを体を動かすことで予防する研究もあるそうです

  コペンハーゲン大学の研究者によると
  体を動かすことでIL-6というメッセージ物質が放出されていることが分かっており、
  8人の被験者に、運動をしたとき放出されるのと同量のIL-6を注射すると
  「敵がいるぞ」というメッセージは半分に減ったのだそう

  IL-6は放出されると免疫細胞に伝わり
  「戦うのはやめて」というメッセージを発する
  すると免疫細胞の戦闘モードも収まるのだとか

  研究者によれば
  「我々の体は、動くことが前提に作られている、
   動かなくなると、大切なメッセージが体に伝わらなくなる」
  おそらく人類の歴史で、食べたいものを食べ、運動しない、
  というのは想定外の事態であり、
  昔の生活のように体を動かせば脂肪、免疫の暴走を食い止められる、とのことです

 ・スタジオでの話
  山中氏は
  「もともとIL-6は日本人が発見したもので、免疫を活性化するものとされてきたんです。
   状況により働き方が変わる、という報告もされています」
  まだまだ分かっていないことが多いようです。
  
  松岡さんは「人の体は本当に緻密にできているんですね…」と感心していました。
  脂肪と筋肉からはかなり重要な物質が放出されており、
  なくてはならない臓器、なのだそうです。。

〇感想など
 体の中に脂肪がたまりすぎるとレプチンが受け取れなくなるのは何でだろう?
 免疫細胞が暴走しちゃうのは何でだろう? 
 運動したら治るのは何でだろう?と私なりに考えてみました。

 たぶん、今までそういう事態がなかったので
 脂肪が血液中にドロドロしててレプチンが動けなくなる…
 ということがあり得なかったのだろう。
 あと、脳でレプチンを受け止めきれないのは、 
 たくさんのレプチンを受け取ることにもまだ脳が対応しきれていないのだろう、と思われる。

 それから免疫細胞については、
 脂肪がこんなに体にたくさん存在することが今までなかったので、
 免疫細胞が「なんか危険だ」と感じてしまうんだろうと思います。
 ただ敵が脂肪細胞だったことは今までなかったので、
 免疫細胞も処理しきれないのだろう。

 体が、脂肪たっぷりの環境にまだついていってないんでしょうね。

 しかし、体を動かしたらそれが治る理由はよくわからないですね…
 体を動かすためにエネルギーが必要になるので、
 免疫細胞にエネルギーを使っている余裕がなくなるのかもしれない。

 あるいは、運動をきっかけにIL-6がたまたま出て、
 免疫細胞が適切に動くようにコントロールしているだけなのかもしれない。

 もしくは、運動することで脂肪が消費されるので
 免疫細胞が「敵」と思い込んだ脂肪がいなくなって、
 活性化する理由がなくなるのかもしれない。
 
 まあでもとにかく
 我々の体にとっては
 「適当に体を動かして、脂肪がたくさん過ぎない状態」ってのが普通、
 脂肪が多いのは体にとっては異常事態なんでしょうね。

 まあ、今回の話の結論としては
 「適度に食べて、適度に体動かしなさいよ」
 「筋肉と脂肪はどっちも少なすぎても多すぎても駄目よ」
 ってことなんでしょうけど、
 肥満の人にとっては
 レプチンが出にくいから食べちゃうし、体が重いから動かすのもおっくうになる。
 実際食べないように、運動しないようにするにはどうすりゃいいの?とも思います。

 でも情報を知る、というのは結構重要なのかなと思います。
 昔肥満についてのドキュメンタリーを見ていたけど
 「肥満になりやすい遺伝子」ってのがあるんだそうですが、
 (ふつうの人よりも余分に食べないと、満腹感が得られにくいのだそうです)
 「あなたは肥満になりやすい遺伝子を持ってますよ」
 とその人に知らせると、
 「自分はなりやすいんだ」と自覚して、行動を変えるそうです。

 なので、今回の情報は結構重要なのかも。
 メタボって言われたけど食べたい、食べるのやめられない、って人は
 「ああ、自分の体、レプチン効きにくくなってるのかも」
 「異常事態に体がついていってないのかも」
 と自覚してみるのもいいのかなと思います。

 私としては、個人的に
 免疫細胞が脂肪吸い込んで膨れ上がってパーン、ってなって、
 毒素を周りにまき散らす…
 という画像が結構コワかったよ~
 自分の戒めにしようと思います(笑)

毎回画像がきれいなので楽しみです。
次回もまた見てみたいと思います。

というわけで今回はこの辺で。
 
 
 

 
 
 
 
  
  
  
  
  
  
posted by Amago at 15:07| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年10月30日

NHKBSプレミアム「フランケンシュタインの誘惑「ザ・トゥルース 世界を変えた金融工学」」

NHKBSプレミアム「フランケンシュタインの誘惑「ザ・トゥルース 世界を変えた金融工学」」

 闇の科学史を暴くこの番組、
 今回は金融工学についてで、
 金融の世界に数学理論を持ちこむことを最初に考えた数学者エドワード・ソープや、
 「ブラック・ショールズ方程式」を考えたノーベル経済学者マイロン・ショールズなどの話でした。

 バブル期くらいから、金融取引がマネーゲームと揶揄されるようになってきたけど
 そこには科学者も大きく加担していたのだ、という事実を初めて知りました…

○カジノに確率論を持ち込んだ数学者
 最初に吉川晃司さんのナレーションで、
 ギャンブルの世界に確率論を持ち込んだ数学者、エドワード・ソープの話が紹介されていました。

 エドワード・ソープは1932年8月、シカゴに生まれた
 時代は世界恐慌、
 彼は子供の頃から、数学というか商売の才能を見せていたそうです

 例えば5セントの粉末ジュースを買い、6杯のジュースを作り
 1杯1セントで労働者に売り歩き、差額で儲けていた

 彼を取材していたウォールストリート・ジャーナルのジャーナリスト、スコット・パターソン氏によれば
 「彼にとって自立とは経済的な自立を意味していた」
 とのことで、
 ソープは子供の頃から数学の知識でお金を稼いでいたそうです

 ソープは1949年、奨学金でカリフォルニア大学に入学、数学を学ぶ
 しかし生活は苦しく、
 彼はギャンブルで生活費を稼ぐことを考えた
 それも数学者らしく、数学の理論でギャンブル必勝法を考えたそうです

 行ったギャンブルは「ブラックジャック」
 このゲームはプレイヤーがディーラーの前に掛け金を起き、
 ジョーカーを除く52枚のカードを使う

 最初にディーラーとプレイヤーは束から2枚ずつカードをもらう
 一つのゲームが終わるまで、同じ束からカードを引いていく
 ゲーム終了時に合計が21以内のときは得点の大きい方が勝ちになるが、
 22を越せばバーストといい、負けになる。

 絵札は全て10とカウントし、
 プレイヤーが「ヒット」と言えばもう1枚要求できる。
 (「ステイ」とか「スタンド」とか言うと「もう引きません」ということらしい)

 ディーラーは、カードの合計が17を越えるまではカードを引き続けないといけない。
 (ディーラーが17以上になったらその時点でゲーム終了で、
  そのときにプレイヤーとディーラーどちらが21に近いかで競うのだそうです
  また、どちらかが22以上であればその人がバーストで負けになるが、
  両方バーストならディーラーの勝ちになる
  プレイヤーが勝つと、基本的には掛け金の倍額をもらえるそうです)

 つまりディーラーは17~21の範囲でカードの合計をおさめないといけない、
 これはディーラーにとってしんどい、とソープは考えた

 (ブラックジャックのルールがいまいちわからんので調べましたが、
  だいたいこんな感じみたいです。
  ちなみに一番わかりやすかったのは
  https://casino-kingdom.com/blackjack-rules/のページかな?
  プレイヤーは7人まで参加できるが、勝負はプレイヤー対ディーラーで、
  ほかのプレイヤーの手は関係ないらしい。
  また、ほかにもプレイヤーが選択できる手(スプリットとかダブルとか)はいくつかあるし、
  エース(1)は1とも11ともカウントできる、という特殊ルールもあるが
  ここではあんまり必要ないし、話が複雑になりそうなので割愛します)

 彼は
 「ディーラーをバーストさせれば勝てる」と考え、
 そのために10のカードを「ディーラーをバーストさせるカード」として注目した

 一組のトランプのなかで、10のカードは16枚。
 そこで彼は10のカードが出てくるたびにカウントした

 残ったカードの中で10のカードが多いほど
 ディーラーがバーストする可能性が高くなる

 彼は大学のコンピューターを使い、
 残ったカード全部の枚数と、その中の10のカードの枚数に応じた勝率はいくつかを計算した
 例えば残りのカードが48枚で、うち10のカードが13枚のときには勝率は48.5%、
 28枚のうち10のカードが12枚なら勝率56%、など

 賭け金についての公式もあるそうで
 ケリーの公式といい
 f={(R+1)P-1}/R
 (Pは勝つ確率、Rは勝ったとき掛け金の何倍もらえるかの倍率
  fは手持ちの資金の何倍賭ければ儲かるかの倍率)
 とかいうものだそうです
 
 (ケリーの公式についての数学的な解説は
  http://www.geocities.jp/y_infty/management/k_formula_1.html
  に書かれていました。
  この式はブラックジャックに限らず、かけ事全般に使えるみたいで
  fは要するに期待値(儲けの平均)を示していて、
  期待値と同じだけ賭けておけば少なくとも大負けはない、という理屈なのかなと思われます)

 これらを使い、
 カウントして残ったカードのうち10の枚数が少ないときは、
 勝率も低いので賭け金は最低額にしておく
 こうすればプレイヤーは負けても損失は少ない

 負けそうな時は低い賭け金で耐え忍び、チャンスを待つ
 そして残りの10のカードが多い、つまり勝率が高くなったら、
 ケリーの公式で導かれる賭け金をドンと賭けて勝負に出れば勝てる

 ジャーナリストのパターソン氏によれば
 「ソープが採用したのはカウンティングという手法で、
  この方法なら長い時間ゲームを続けるほど確実に儲けられる。
  これは当時革命的なアイデアだった」

 また、数学や物理学の歴史に詳しい社会科学者ジェイムズ・ウェザーオール氏によると
 「確率論をギャンブルに応用することは、実は16世紀頃から行われていたが、
  人々の多くはカジノ側に有利になると諦めていた。
  ソープはプレイヤーにも有利になることがある、ということを示した」

 ソープはこの必勝法を本にして出版し、
 この本は世界的ベストセラーとなったそうです

○金融の世界にも確率論を持ち込むソープ
 1964年、ソープはウォール街へ進出した

 当時、株価など金融商品の価格は予測不能と考えられていた
 水の中に落とした1滴のインクの粒子は、
 ブラウン運動という不規則な動きをしているが、
 株価もこのような自然界の不規則な動きと同じ、と考えられていた

 一方科学者たちは、地球上に存在するこのようなランダムな動きにも数式が存在すると考え、
 その数式を「the Truth」真実、と呼んで探していた

 パターソン氏は
 「Truthは、科学者たちが自然界の全てを統一できると考えて探した数式。
  科学者たちは金融商品にも公式があると考え、
  探し出せば大金持ちになれると信じていた」

 ソープが注目したのは「ワラント」と呼ばれる金融派生商品
 この商品は、株そのものではなく「株を前もって決めた期間に買う権利」を売買する
 (いわゆる先物取引の一つ)

 これを購入すると、
 例えば100ドルの株を1年後に同じ価格で買える権利を買えば、
 1年後に株価が上がっても、安い価格のままで買えるので得をする

 そこでソープはまず株価の予測をした
 過去の値動きから株価の平均値を確率論から求めると、今より低い価格になった
 「値上がりは期待できないのか…。割りにあわない商品だ」

 しかしそのあと、ソープは画期的な案を閃いた
 「値下がりするなら、値下がりする方に賭ければいい」
 それは今で言う空売りで、
 値下がりしそうな株のワラントを借りてきて、今の価格で売ってしまう
 そして実際の株価が値下がりしたら低い値段で株を買い戻し、
 ワラントの貸し主に返せば差額で儲けられる

 しかしこの方法だと、株がもし値上がりしたら損をする
 そこで彼は、同じ銘柄の株自体も買っておき、株価が上がったら売るようにした

 ソープはワラントと株の比率を絶妙に調整する数式を出し、
 運用会社を立ち上げる
 当時5%出せば御の字だった時代に、年率20%という数字を出したそうです

 彼は投資家を募り、その手法を本にして出版したが
 当時はウォール街には見向きもされなかった

 ウェザーオール氏によれば
 「当時は数学的理論で取引する人はいなかった」とのこと
 当時は財務状況を見て重役の話を聞き、
 企業の価値を判断して株を取引するのが常識だったそうで、
 数式の答えだけに注目する戦略は馬鹿馬鹿しい、と考えられていたようです

○スタジオでの解説
 次はスタジオでの解説。司会は武内陶子アナ、
 解説は法政大学経営学部の山嵜輝氏と、総合研究大学院大学の池内了氏。

 山嵜氏は元銀行員、という経歴を持つ研究者だそうで
 「10兆円規模の資金を債権に投資して運用する仕事をしていました」

 武内アナは10兆円、という数字にのけぞって
 「10兆円って、何でそんな普通に言うんですか…(笑)」
 しかし山嵜氏は
 「でも私にとっては、資産運用よりも営業で新しいお客さんに接する方が緊張します」(笑)

 武内アナ
 「金融工学って私たちも恩恵を受けてるんですか」
 池内氏は
 「生命保険の値段を決めるときにも使われますね」
 山嵜氏
 「今は金融ビジネスのほとんどで金融工学は使われていますが、
  目に見えないので一般の人は意識することがないでしょうね」

 武内アナ
 「ソープの評価についてはどうですか」
 山嵜氏は
 名前は知っていたが、詳しくは知らなかった、とのこと。
 しかし論文を読んでみると、
 1960年代にしてかなり高度な金融工学を考えていたのが驚きだった、とのこと

 武内アナ
 「それにしても、金融の世界を数式で表すとは…」
 でも池内氏は分かる、という感じで
 「科学者てのは、何かある種の法則で表したいという欲求があるんやね」

 武内アナ
 「でもソープの理論は全然相手にされなかった…」
 山嵜氏
 「当時は企業や経済の情報を集めて、
  後は勘と経験と度胸で判断、という世界だった
  そういう人たちからしたら、たぶんソープの数式自体も理解できなかっただろうし、
  考え方も理解を越えていたんでしょうね。
  株式を数式で表せるはずがない、と考えていた」

 いわゆるウォーレン・バフェットさんみたいなやり方が主流だったんですね。

○金融の世界を変えたブラック・ショールズ方程式
 ソープの理論はウォール街には理解されなかったが、科学者たちは注目した
 理論で投資運用できるなら、
 金融の世界にも画期的な式を見つけ出せるんじゃないか、と考えたそうです

 ソープが本を出してから6年後、金融界を変えた数式
 「ブラック・ショールズの式」(記号が示せないので書きませんが) が生まれる
 これは数学者のフィッシャー・ブラックと、経済学者のマイロン・ショールズが考えた方程式

 この式を使うと、
 全ての金融派生商品の適正価格を出せるそうです
 ジャーナリストのパターソン氏は
 「この式は、株式市場に革命をもたらした」とのことです

 というのは、この式を使うと金融商品に適正な価格をつけられるので、
 「売り手にとって」有利なのだそう
 「ソープはいかに買い手に有利かという視点だったが、
  こちらは売る側の視点だった。
  このため次々と金融商品が生まれ、市場は大きく成長した」

 さらに、この時代は金融市場にロケットサイエンティストが参入した
 というのは、1960年代からアポロ計画が始まり宇宙開発が盛んになったが
 1980年代頃になると衰退
 このため大量の科学者たちが失業してしまったので、
 彼らは職を求めてウォール街へ押し寄せたそうです

 当時金融業界に就職した物理学者エマニュエル・ダーマン氏も
 「科学者としての道は無かったので金融業界で働いてみた」そうです
 彼は、ブラック・ショールズ方程式を利用した金融商品を開発したそうです

 「物理学者としては変わらない、
  仕事はエキサイティングだったし、
  年俸も15万ドル(1500万円くらい?)、医者や会計士並みの高待遇だったよ」

 彼は、
 「私はいつも「truth」について考えていた、
  物理学のような公式が金融界にもあると信じていた」
 そして、コンピューターを駆使する科学者たちは
 銀行や証券会社で中心的な役割を担ったそうです

○LTCMの成功と失敗
 1994年、経済学者のマイロン・ショールズが運用会社
 「ロングタームキャピタルマネージメント(LTCM)」の共同経営者になった
 彼は共同経営に乗り出した理由として
 「自分達の理論を確かめたかった」
 と話していました

 LTCMはブラック・ショールズの方程式を武器に、
 年率40%、という驚異的な利益を挙げたそうです

 さらに1997年、ショールズはブラック・ショールズ方程式の功績によりノーベル経済学賞を受賞
 LTCMに投資する人がさらに増え、
 当時の運用額は12兆円、日本の国家予算の1/6にも及んだそうです

 ジャーナリストのパターソン氏は
 「この頃のLTCMは飛ぶとりを落とす勢いだった、自信過剰だったとも言える」
 自分達の投資は絶対安全、損はあり得ないと思い込んでいたそうです

 しかし1998年からLTCMの勢いに翳りが見える
 ライバルの銀行などが、
 公開されたブラック・ショールズ方程式を使った新商品を真似し始めたからで、
 このためLTCMは新たな投資先を探した

 そこで白羽の矢が立てられたのがロシア国債
 ブラック・ショールズ方程式では割安と出ていたそうです

 しかしロシアは財政危機に陥っており
 国債価格は暴落していた
 当時大手証券会社で金融商品を開発していた物理学者のダーマン氏は
 「市場はパニックに陥っていた。
  こういうときは人々は安全な商品に逃げ、リスクのあるものは買いたがらない」

 しかしLTCMはこの暴落も一時的なものと判断し、さらにロシア国債を買い増しした
 方程式では、ロシア国債が破綻する確率は百万年に3回の割合、と言っていたそうです

 しかし1998年8月、
 ロシアのエリツィン大統領(当時)はロシア国債のデフォルトを宣言
 LTCMの保有するロシア国債は無価値になった

 ジャーナリストのパターソン氏は
 「ショールズたちの判断は明らかに間違っていた。
  市場は予想通りに動くはず、と信じていた。
  彼らは現実を見ず、数式に頼りきっていた」

 物理学者のダーマン氏も
 「LTCMの人たちは知識も豊富だったし戦略もしっかりしていたので、
  彼らの失敗はショックだった」
 そして
 「私はこのとき、物理学と金融の世界は似て非なるものだ、と悟った」
  人々がパニックになるとどう行動するか、
  株式の値動きはどうなるのかは、
  物理学や数式などでは分からないのだ、
  と思い知ったそうです

○スタジオでの解説
 武内アナ
 「ノーベル賞をとった科学者が間違えたということは、欠陥があったんでしょうか」
 山嵜氏
 「ブラック・ショールズの方程式は平常時を想定したもので、
  ロシア危機のような緊急事態には対応できなかったんですね、
  そこは数学の限界だったと言えます」
 池内氏も
 「数式が成り立つためには前提が要る、
  その前提から大きく外れちゃうと方程式は適用できない。
  たぶん彼らは、ロシア危機みたいなことは滅多に起きない、
  大丈夫だと思っちゃったんでしょうね」

 武内アナ
  「ブラック・ショールズ方程式はそんなにスゴいものなんですか」
 山嵜氏
 「この式自体はシンプルで美しい、
  しかも条件を変えれば色んな解が出る。
  色んな商品の価格が出せる素晴らしい式です」
 武内アナ
 「これでシンプルな式なんですか…(笑)」確かに素人にはシンプルに見えないわね。
 池内氏
 「物理屋からしたらシンプルですね(笑)」
 
 「ブラック・ショールズは今まで説明できなかった株式の変動を見事に説明している、
  価格差を利用したら儲けることもできるなかなか素晴らしい式」
 そして
 「物理屋は法則が好きだから、
  理論を試して儲けてみたくなるやろね」と話していました

 武内アナ
 「でもそれって怖くないですか…」
 山嵜氏は
 「金融工学は実験ができないんです。
  実験するには取引しないといけない。
  だからいきなり実践になるんですけど、そこが金融工学の危険な所ですね」

 武内アナ
 「理論は、試したくなるものですか?」
 山嵜氏は
 「科学者としては2つの欲があるんですね、
  1つは理論を実証したい気持ち、
  もう1つは貪欲に儲けたい気持ち」
 
 理論を実践したら本当に大金持ちになった、
 そこで有頂天になっちゃって暴走した…というのはなんか分かる気はします。

○それでも続く金融工学
 LTCMの破綻で金融工学の危うさは露呈されたはずなのに、
 科学者たちは懲りなかったそうです

 吉川さんのナレーション曰く
 「ひとたびマネーゲームに参加した者は、その魅力にとりつかれる」

 ジャーナリストのパターソン氏によると
 「多くの科学者たちは、LTCMは頭が悪かっただけ、
  自分たちは彼らの二の舞にはならないと考えていた」
 そして
 「金融会社も科学者たちを雇い、利益をあげようとした。
  市場はまるでカジノのようなマネーゲームになってしまった」

 科学者たちは次々と新しい金融商品を作り出し、
 原油価格、天候などあらゆるものが金融商品、投資の対象になったそうです。

 しかしその根拠となる式は、表には出されなかった。
 というのは、公表したらライバルに真似されてしまうからで、
 ジャーナリストのパターソン氏によると
 「科学者たちは「Truth」なんて考えてない、と否定した。
 しかししつこく取材すると、
  彼らが「Truth」を探していたことはわかった」

 こうして市場は500兆円規模となり、膨れ上がっていく…

 しかし2008年、リーマンショックが起きた
 大手証券会社のリーマンブラザーズを始め、各金融機関が破綻。
 影響は世界中に広まり、
 アメリカだけでも800万人が家を無くし、1000万人が職を失った。。

○スタジオでの解説
 武内アナ
 「山嵜さんは、正にリーマンショックのときに銀行にいましたよね…」
 山嵜氏
 「当時は銀行でも、複雑な商品は危ないとされていましたね」

 池内氏は
 「リーマンショックは、住宅投資、ローンの金利が同じように続いていくという前提だったけど、
  その条件はそろそろ壊れるんじゃないか、と金融工学者は思うべきだった」
  科学者たちも、壊れることを想定して、対策を立てておくべきだった、と批判的でした。
 しかし山嵜氏は
 「当時は、多数の住宅ローンを束ねて販売するために複雑な数式が使われていて、
  この計算は当時は技術革新と言われていたんですよね。
  金融工学の新たな段階だ、と言われていた」
 ただ
 「あとから考えれば見落としていたこともあり、問題はあった」
 そして
 「当時はそれをいいものとして、熱狂して販売していた」

 池内氏は
 「「Truth」を求めるのは科学者としては面白いなとは思うんですけど、
  金融工学者としてトレーディングに関わっている人にとっては
  やっぱり金儲け前提なのかな…」
 山嵜氏は
 「売れれば売れるほど儲かったから、金融工学者も暴走してしまったんですね」

 また、当時開発された金融商品の前提となる数式を
 科学者たちが隠していたことについては、
 山嵜氏は
 「企業秘密なので隠していたんですね、
  商品なら特許が取れるけど、数式そのものは特許が取れないんです」
  特許では守られないので、隠すしかなかった、と話していました

 池内氏はしかし、
 「隠すとなると、もはや科学ではないと思う」と話していました
  科学は議論しあうことで、いいところも悪いところも現れる、
  秘密が当たり前のものは科学ではない、とのこと

 山嵜氏は
 「彼らは儲けるのが仕事なので、損を出したら首になる、
  だから金融商品を作って販売し、利益を上げることを考えるんです」
 池内氏は
 「ある意味アメリカらしいな、とは思いますね。
  成功はしたの?」
 山嵜氏
 「一部は成功しました、
  でも粗悪な商品でいずれ破綻すると分かっているものもありました…
  さらに問題なのは、
  破綻すると分かっていて、そちらに賭けてもうける金融機関もあった」
 と恐ろしい話も。

 池内氏は
 「それは問題やね、ある程度管理する必要はあるね」
 山嵜氏は
 「ですからリーマンショック以降は様々な規制が金融業界にかけられているんですが、
  またこの規制を、逆にチャンスと考えている科学者もいるんですよね」
 池内氏
 「障害があったら、なんぼでも乗り越えようとするのが科学者の性(さが)やからね」(苦笑)

○人工知能の参入
 最近では、金融業界も機械化が進み、さらに変化が激しくなっているようです。

 4年前に、カナダのトロントに投資運用のベンチャー企業が現れた
 この会社は、AIを専門とする科学者たちが関わっている

 この会社が使う投資運用機械「クリスタル」は、
 AIを搭載しており、
 過去20年の市場データからパターンを学習し、
 有利な取引ができると分かれば、自動的に売買してくれるのだそうです

 しかしまだ開発途上のようで
 「今日はうまくいってないようです、
  でも今日の失敗が明日のデータになります」
 とはいえ、AIが投資に勝つ日も近そうです。

 また、コンピューターによる高速取引を
 HTF(高頻度取引)というそうですが
 これに伴う問題も出てきている

 例えば2010年5月6日、
 主要企業の株価が4秒の間に急降下、20分後に戻った
 原因は不明、コンピューターの暴走だと考えられている

 ジャーナリストのパターソン氏は
 「もはや何が起きているのか誰にも分からない、原因も特定できない
  数秒のうちに起きたなにかが、
  とんでもないことを引き起こす可能性がある」
 と話していました

○スタジオでの解説
 武内アナ
 「なんか知らないうちに、とんでもないことになってますけど…」
 池内氏は
 「基本の数式は銀行の人が入れて、
  その計算の速さはAIの方が優れてるから、どんどん計算するんでしょうね」
 山嵜氏は
 「人工知能は、将棋や囲碁などでは人間だけのトーナメントにするとか、分けることはできますが
  金融市場は分けられない、
  知らないまにAIが競争相手になっていることはありうる」

 武内アナ
 「リーマンショックみたいな金融危機はまた起こりますかね?」
 山嵜氏は
 「それはあり得ます」と即答。
 「いつの時代でも、技術の限界というのはある。
  限界を越えるものには対応できないでしょうね」

 池内氏は
 「過去のデータを入れたところで、知らないことは起こる。
  人間は複雑系なのでそういうことはある、
  それはコンピューターになっても同じでしょうね」
  過去から分析はできても、未来の予言はできないのでしょう。

 武内アナ
 「そもそも金融工学って必要なんですか?」と率直に訪ねていましたが
 山嵜氏は
 「必要です」と断言していました
 「今さら勘と経験と度胸の世界には戻れない、
  金融工学の否定は、現代の金融自体の否定になってしまう。
  それは電気を使うな、というのと同じです」
 それだけ、我々の社会には必要不可欠になっている、ということなのですね。

 武内アナ
 「改めて、科学の責任とは…」
 山嵜氏は
 「重大ですね」
  特に金融工学は知識の格差は大きく、ブラックボックス化させてしまうことはたやすい、
  だから倫理観をしっかりもって、
  正しいこと、やってはいけないことを考えていかないといけない、
  とのことです

 池内氏は
 「金融工学は、実際に被害を受ける人もいるし、社会的な影響が大きい。
  今の世界は、どの分野でも科学者の倫理が問われるけど
  特にブラックボックスになりやすいところこそ、
  山嵜さんみたいに金融の世界の経験がある人に
  こういう状況は危ない、といってほしい」
 と話していました

 池内氏は山嵜氏に、
 「僕ら100万円くらいなら分かるけど、
  それ以上はお金の価値と実際の感覚がずれちゃう。
  その辺はどうですか?」
 山嵜氏は
 「んー、強欲な面もないと金融工学者にはなれないですね…」(笑)
 武内アナ
 「池内さんは向いてそうにないですね」(笑)

〇科学者たちのその後
 エドワード・ソープさんはそのあと、2つの投資会社立ち上げに関わる
 2002年に引退、現在は84歳でカリフォルニアで悠々自適の生活をされているそうです

 ショールズさんは74歳、
 自分の経営する会社は、リーマンショックで2度目の破綻を経験したそうですが、
 今も複数の投資運用会社の顧問をしているそうです

 2017年、トランプ大統領から大統領令が出された
 それはリーマンショック以降強化されていた金融業界の規制を緩和し、
 取引の自由度を高める、というもの

 最後の吉川さんのナレーションがしびれました…
 「近代科学の父、ニュートンは言った
  「星の動きは計算できるが、
   人々の狂喜は計算できない」。

  数学、物理学者は追い求める、
  真の数式、「Truth」を。
  これは、人間の狂気さえも計算できる、というのか?」

〇感想など
・たぶん日本人って、投資って言うとかけ事のイメージがあって、
 勤勉さとは程遠い感じがする、
 だからおそらく日本に投資文化が広まらないんだろうと思うのだけど、
 それは何でだろう…と思っていたのです。

 でも今回、それはバブル期くらいからの金融工学の考え方から来ていたんだな、
 ということが分かりました。

 金融工学自体が、賭けと企業への投資を同等と見てしまったのだろう。
 そこには、その企業の個性とか、経営者の思い入れを見るとか、そういうものはない。
 というか、たぶん感情とか入れだしたら余計な判断になっちゃうから
 逆にそういうものは排除してきたのだろうと思う。

 その無機質合理的な考え方はいかにもアメリカン、って感じなんですが
 日本の場合、バブル以前には投資、という文化が一般市民には無かったから、
 (もちろん江戸時代から先物取引はあったが、それは商売人だけのことで庶民とは関係ない)
 バブル期の土地買うとかが庶民の投資の入り口になっちゃって、
 そこから入った人からしたら「投資=マネーゲーム」というイメージなんだろうと思います。

 私もここ数年で、投資というのはその会社を応援すること、
 ということをようやく知ったところです。
 今の政府は投資を普及したがっているけど、
 本当に普及させたいのなら、
 NISAとか整備するだけではなくて、
 そういう精神的なアプローチもした方がいいんじゃないかなあと思ったりします。

 ただ、そもそも株式投資とかを普及すべきかどうか、というのも疑問符が付く…
 山嵜氏の話ではないが、金融業界は今やブラックボックス化しすぎていて、
 知識とか興味があってめっちゃ勉強できる人にとってはいいかもしれんけど、
 そうでもない人、そんなに金融の勉強に時間をかけられない人にとっては
 やけどを負うだけにもなりかねない気がする。
  
 お金の余裕ある人が、好きな投資AI選んで勝手にやってもらう、
 てな時代になるんだろうか。

 それとも、マネーゲームしたい人は投資ゲームに加わるけど、
 本当に誰かや企業を応援したい人は、
 クラウドファウンディング、ふるさと納税などにあるように
 自分の目に見える形、自分の手が届く範囲で
 金銭的な支援、応援をする形になっていくのかな…
 という気もします。
 
 それにしても、お金が絡むと偉い科学者だろうがなんだろうが、
 性格変わっちゃうのだろうか…
 「儲からないと分かってる商品」をわざと開発して
 それを売りつけて、破たんしたら儲ける、
 というのはほぼ詐欺なんじゃないかと思うのですが…
 (現在のトランプ景気も、「いずれは落ちる」と見て
  そっちに逆張りしてる人もいる、と聞いたこともある)
 そういう、明らかに悪質なものに対してはちゃんと取り締まってほしいものです。

 最近は行動経済学の研究とか本とか良く聞く気がしますが、
 (今年のノーベル経済学賞もこれでした)
 これも、金融工学、物理学、数学だけではだめだ、
 人間の感情や合理的でない行動も経済に大きい影響がある、と気が付いて
 研究されてきたのかな、と思いました。
 「自分だけは大丈夫、と思っちゃう心理」
 「ロシア危機など、起こる確率の低いものは想起しにくい」
 などというのも人間心理の合理的でない反応なんだろうな…

 しかし、個人的には、いくら科学が発達しても
 人間の狂気はたぶん計算では出ないんじゃないかな…と思います。。
 (テグマークさんなんかは、それも数式で出るんだ、とか言いそうだけど…(笑))

というわけで今回はこの辺で。

 
 
posted by Amago at 12:33| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする