2018年02月09日

NHKBS世界のドキュメンタリー「猟奇的犯人の素顔」

NHKBS世界のドキュメンタリー「猟奇的犯人の素顔」

イギリス2017年のドキュメンタリー。
サイコパスと呼ばれる人たちについてです。

案内役はサイコパス研究の心理学者。
アメリカ、インディアナ州の4人の受刑者のインタビューについて、
様々な専門家の話から彼らの心理を分析していました。

「共感能力」に関わる話なので既視感はありましたが…

○サイコパスの心理
 サイコパスは、自分の悪事を他人事のように話すようです

 最初にインディアナ州の受刑者4人へのインタビュー映像を見ました

 彼らは懲役30年とか50年とか、途方もない量の刑罰を受けていますが
 どの人も、自分の犯行を冷静に語っていました

  女性の首を絞めたあと、心臓や首をナイフで何度も刺した、

  警察官を意識不明になるまで叩きのめした、

  女性を殺害したあと遺体にレイプした、など…

 また、進行役の心理学者は
 5人の女性を拷問、殺害した犯人と手紙のやり取りをしていたそうですが、
 その犯人の手紙を普通に読んだらマトモな人間に思えたそうです

 むしろシェイクスピアを引用したり、詩人の全集を読みこなすなど
 知性は高そうだった、とのことです

○サイコパスの特徴
 司法精神学者のジェレミー・コイド氏によると
 サイコパスの診断と治療は難しいそうです
 サイコパスだからといって殺人犯になるとも限らず、
 犯罪者がみなサイコパスでもない
 犯罪の種類も多種多様らしい

 精神学的には、20の診断基準があるそうです
 ・口が達者でうわべだけの弁が立つ、
 ・自己中心的で自尊心が強い
 ・刺激を求めたがる
 ・良心の呵責、罪悪感が薄い
 …など
 「傾向がない」を0点、「ややある」1点、「間違いなくある」2点、
 としてスコア化するのだそうだ

 しかし、レッテルを貼ることになりかねないので診断は難しいそうです

 この基準からインディアナ州の受刑者のインタビューを見ると
 「車を盗むとアドレナリンが出る」
 「けんかが唯一の癒し」
 「相手が邪魔だから取り除いた」
 と、刺激を求める、自己中心的、罪悪感が薄いなどの特徴が見られました

 それからこのインタビューでは、ある受刑者は
 「他の人は感情に動かされすぎだ、
  相手を人間と思ったら動けない。感情は邪魔だ」
 と発言していた人もいました。
 なぜ彼らは無責任、無感情になれるのか?
 次は、この答えを子供の時からの精神発達に求めています

○サイコパスは、子供の時から共感能力が弱い
 ユニヴァーサル・カレッジ・ロンドンのエッシ・ヴィディング氏は
 子供が追いかけっこをして遊ぶ様子を観察していました
 子供が相手の感情を読み取っているかを観察するには、遊びはいい素材なのだそうだ
 例えば遊びで相手が怯えていれば、自分が嫌がられることをしていると自覚し、やめる
 相手が楽しそうなら、自分がいいことをしていると分かるそうです

 ヴィディング氏は、
 子供に色んな表情の写真を見せ、
 感情を言い当ててもらう実験をしたそうです

 すると他人の感情に冷淡な子、つまり共感能力が弱い子供もいて、
 そういう子は特に、相手の怯えている顔の意味が分からないそうです

 彼女によると、サイコパス的な受刑者も同様で、
 ある人なんかは
 「そう言えば、人を刺すときみんなこんな顔をしていた」
 と言っていたらしい

 ヴィディング氏によれば
 サイコパスには遺伝的な要因がある、と研究では分かっている
 しかし共感能力には遺伝、環境両方の要因があり、
 「生まれながらのサイコパスはいない」そうです

 この点についてインディアナ州の受刑者たちは
 「子供の頃からモラルがないと言われた。
  人付き合いが苦手で、溶け込もうとしてもいつも一人だった」
 「いつも疎外感を感じていた。
  成績は良かったが、人より速く終わるのがつまらなかった、だから問題を起こした」
 など、もともと人付き合いが苦手で、
 共感能力が弱いことが示唆されていました

 ウィスコンシン州のメンドーサ少年矯正施設は、犯罪を起こした子供を保護する施設だが
 ここの所長も
 「子供たちの多くは感情が希薄、
  対人関係にも問題があり、他人の痛みや苦しみを感じにくい。
  善悪の判断はできるが、悪いことをするのをためらわない」
 と話しています

 しかしヴィディング氏が話していたように、
 犯罪を犯す人間はもともと共感能力が弱いだけではなく、
 育ちの要因もあるようです

 インディアナ州の受刑者の一人は
 「お袋は精神障害で、生まれて数ヵ月の俺を階段から突き落として殺そうとした。
  俺はいとこが頭をぶち抜かれて死ぬのも目撃した。
  親父は性的にも物理的にも俺を虐待した、
  俺がこうなったのも親父のせいだ」
 と話している

 しかし虐待を受けたからといってサイコパスになるとも限らず、
 暴力的な父親の遺伝子を受け継いだ、という見方もできる

 どちらの要因もあるのだろうが、
 サイコパスは脳に原因がある、
 とする研究もあるそうです
○サイコパスの脳は特定部位の活性が弱い
 ヒール博士という方は、可動式のMRIスキャナーを車に載せ、
 8箇所の刑務所の5千人以上の脳を撮影したそうです

 普通の風景の写真、KKKのような反社会的な写真を見せたり
母親を殺すことをどう思うか、などの質問をして
 そのときの脳画像を調べたそうです

 その結果、サイコパスに特徴的なのは
 「眼窩前頭皮質」「扁桃体」
 それからこれらと「辺縁葉」を含めた「傍辺縁系回路」
で、
 サイコパスは「眼窩前頭皮質」の灰白質が少なく、
 傍辺縁系回路の活性が低いのだそう

 脳が原因なら、人格を変えることは難しいのか?
 実際、インディアナ州の受刑者たちは、
 セラピストの心理療法は受けているが
 「自分の中に別の人格がいる」
 と表現していて、
 あまり効果は感じていないようでした

 では薬物で治すことはできないのか?
 次はその研究についてです
○投薬治療の効果
 神経伝達物質で心理を変える研究が紹介されていました

 これはオックスフォード大学のモリー・クロケット氏の研究で、
 実験では、被験者に、お金を払って他人(協力者)に痛みを与えてもらうが、その際
 ・ある程度の額で痛みを与える
 ・額を増やして与える痛みを減らす
 この二つからどちらかを選んでもらう

 被験者を2つのグループに分けて
 一方はセロトニン、一方はプラセーボを投与してこの選択をさせたところ
 セロトニングループの方が額が多い(痛みが少ない)方を選ぶ人が多かったそうです
 (平均金額プラセーボ44ペンス、セロトニン73ペンス)

 セロトニンは精神安定、社会的行動に関与するホルモンだそうです

 しかし
 「セロトニンでサイコパス治療できるか」という質問に対して
 「これは利益と他人に痛みを与えることとどう折り合いをつけるか、の実験に過ぎない」
 「これでサイコパスの過激な行動を変えられるとは思わない」
 とクロケット氏は答えていました

 一方インディアナ州の受刑者には、
 向精神薬の投与を受けている方もいて、
 彼は
 「薬は行動を思い止まらせてくれる、
  飲むとぼんやりした感じになる」
 と、ある程度の薬の効果は認めている。

 しかし、これは行動を抑えるだけで根本的に治すわけではないともいえる。

 しかしそもそも、サイコパスを治す必要があるのか?
 彼らの能力は社会に必要、という見方もあるそうです

○大統領はサイコパスが多い?
 ジョージ・ブッシュ氏までのアメリカ大統領について
 サイコパスの特徴があるかを調べた研究があるそうです

 それによると、
 サイコパスの持つ特徴は、大統領になる資質と類似しているらしい

 ユモリー大学のスコット・リリエンフェルト氏によれば
 それは危険への適応力、ストレスに耐える力、情緒面の回復力、などの能力で
 これは企業の役員、ウォール街の成功者、優れた裁判官などにも見られる資質らしい

 他人を支配することで満足感を得る政治家と
 他人に暴力をふるって満足感を得るサイコパスは、
 根っこは同じで、別の枝に分かれているだけなのかもしれないそうです

 そこで、サイコパスの
 「認められたい、見返りが欲しい」
 心理を利用して、彼らを社会に共存させられないか?
 その試みが、先程のメンドーサ少年矯正施設でなされているそうです

○メンドーサ少年矯正施設の行動療法
 「プレイ・トゥモロー・プログラム」
 これは、毎日の行動に対し、賞罰を与えるもので
 いいことをしたら次の日に許可されることが増える。
  例えば食事、電話、娯楽室の使用など。
 表彰状も与えたりするそうです

 このプログラムで賞をもらう子は誇りを感じると話していて
 「これはごほうびをもらいたい、認められたい欲求の現れで、
  この経験は彼の将来の支えになるはず」
 と所長は話していました

 このプログラムのポイントは
 「人格を変えるのではなく
  行動が改善すればいい、と考えている」
 彼らの欲求、脳の仕組みを生かして将来の犯罪を抑える、
 というやり方なので無理がない。

 それからもうひとつ
 「十代のうちに受けることが大事」
 柔軟性があるうちに行動を変えることが重要なのだそう

○まだ解決策は見えない
 サイコパスの人たちは、
 遺伝的にも環境にも恵まれない人たちが多いそうです
 そこで、子供の時にその兆候が見えたら、社会がすぐ介入すべし、という人もいるそうです

 インディアナ州の受刑者のインタビューでは、
 「子供の頃に間違った教育を受けたせいで俺はこうなった」
 「俺はなりたくて殺人鬼になったわけじゃない」
 「自分はサイコパスじゃない」
 「はやくこの人生を終わらせたい」
 …などと話しており、
 悪事を抑えられない自分が、
自分でも嫌になっている様子が伺えます。
 「どちらかというと彼らが気の毒になってくる」
 と進行役の心理学者は話していました

 さらに、サイコパスは統合失調症など、
 精神的な疾患やパーソナリティ障害の兆候を併発している人が多いそうです

 (この辺話の流れがいまいち分からんかったが、
 子供のうちに適切な介入があればサイコパスにならなくても済んだかも、ということか?)

 最後に心理学者は、5人の女性を殺害したサイコパスとやり取りしていた手紙を紹介して終わっていました

  殺人犯は、自分をいい人と主張したがり、
  人を助けた話、表彰された話などはしていたが
  事件についてなど都合の悪いことは何も言わない

  それから自分のいうことが通らないと怒り狂う

  法律や警察は信頼せず、
  「特権階級は、法律を都合のいいように変えている、
   大統領が人を苦しめるなら自分も人を殺していいはず」
  「法律はくもの巣ににている、
   小さなハエは捕まるが、スズメバチは軽く通り抜ける」
  と書いていた

 つまり何事も、自己中心的な解釈をしたがる人間だったようです

 心理学者はまとめとして
 ・サイコパスは犯罪に直結するとは限らない
 ・サイコパスになるかは育ちの環境にも左右される
 ・サイコパスは脳にも関わりがある
 ・サイコパスは、罰するよりも特定が大事で、罪を犯す前に治療できれば希望が持てる

 …と述べつつも

 しかし手紙を送った殺人犯については
 「彼のような人物は、警察に収監するしかないのかもしれない」
 と呟いて終わっていました

○感想など
・子供のうちから、他人に対して冷淡な兆候があったら早めに介入すべき、とあったが、
どんな介入をすればいいんだろうと思いました。

私は自分がサイコパスかどうか分からんけど、
他人のことに興味がない部分もあるし
子供のときは人付き合いが苦手だったので、
サイコパス的な要素はあったのかもしれない。

思春期の頃は母親に
「ほっといて」と言うくせに、
本当にほっとかれて
「愛されてない」
と思い込むややこしい人間でした(笑)

その経験から考えること、
あんまりベタベタして欲しくはないけど
要所要所で見守って欲しいな、と思います。

日常の些末のこと、
例えば何着るとかどんな本読んでるとか言うことは
あんまりゴチャゴチャいってほしく無いけど
進路とか大事なことはズバッと相談にのって欲しい、みたいな。
(私の母親は完全に逆だったのでうっとうしかった)

距離感が難しいけど
いざというときに相談できる、信頼できる人ができれば
だいぶ人生が変わるんだろうと思います。

・受刑者たちが
「自分はサイコパスじゃない、悪い人格がやっている」
「心のなにかがやれと言っている」
「法律は偉い人が自分達の都合で作ったものだから破っていい」
自分は本当は悪いことをしたくない、と言ったり
自分に都合のいい言い方をしていたけど
その心理がよく分からんなと思っていました

しかし色々考えてみて
これは自分を認められたい気持ちの現れだと気づきました。

私がたまに見る番組に
科学の悪の歴史を紹介している「フランケンシュタインの誘惑」という番組がありますが、
ヤバい実験をしてしまう科学者さんも、まさにサイコパス。

この番組に出てくる人の大体の典型パターンとして
優秀だけど対人関係が苦手な科学者が、
功績を認められず、差別や不当な扱いを受けてどんどん暴走していく…てのが多い。
(自惚れすぎてたしなめる人がいない、ていうパターンもあるが)
このとき彼らがたいがい嘆くのは
「なんで俺を認めてくれないんだ」

受刑者たちの不可解な表現も
自分を認めてくれよ、という心の叫びなのかなと思います。

例えば悪事を「悪い人格」のせいにしてしまうのは、
本当は自分はいい人なんだ、それを認めてくれよ、
という気持ちからではないかと思う。

法律が悪いんだ、俺は悪くないというのも
だれも自分を認めてくれない。
誰も認めてくれないのは、現実が間違っているからに違いない、と考えるのだろうと思う。
(心理的なバイアスですね)

さらに掘り下げれば、
彼らの「認められない」不満の根っこは子供時代にあるのかも。
共感能力が薄い子供だと、
大人から子供らしくない、と否定的に評価されがちになるからかもしれない。

そして子供時代認めてもらえないと
認めてもらうために悪いことでもなんでもしてしまう。
もしくはどうせ俺はワルなんだと自棄になり
ならばワルを完璧に演じてやろう、と考えてしまうのかもしれない。

でも共感能力が薄いのは悪いことではないはずで、
例えば大統領とか優秀な経営者、医者にもサイコパスが多いと言っていたけど、
これらの職業では、
共感能力が強すぎると、
みんなのことを考えすぎて決断出来なくなってしまうから、
共感能力が薄いのはむしろ有利なのだろう。

だから大人の関わり方って重要だと思います。
大人もこの子、子供らしくない、可愛くないと偏見もったらいかんなと思います。
それだけに、彼らの良さを生かそうとする少年矯正の取り組みは興味深い。

サイコパスの人たちは競争に強く、優秀な人が多いので
彼らの能力をほめて、何かチャレンジを与えることだと思う。
認められたいエネルギーを別の有益なことに回すことだと思う。
さらにそこで何か達成できれば、自己肯定感も高まっていい方向に回る。
それから彼らは認められるためなら悪もためらわないので
貧困とか差別、暴力から遠ざけることはもちろん大事だろう。

ただ、あの手紙の主のように、大人になると矯正は難しそう…
自分以外の世界は信用しないどころか、見下していそう。

せめて若い人たちに対しては、
彼らを受け入れて、能力を生かすように持っていくことかなと思いました。

今回はこの辺で。
posted by Amago at 08:11| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2018年02月07日

NHKBS世界のドキュメンタリー「透明人間になった私」

NHKBS世界のドキュメンタリー「透明人間になった私」

フランス、2015年のドキュメンタリー。

「監視社会」がテーマです。

IT技術の進歩は我々の生活を便利にしたが、
同時にIT技術は、我々から個人情報が抜き取られるのを可能にした、
という問題があります。

例えば我々のネット通販の買い物履歴、サイトの閲覧履歴などは、サービスと引き換えに企業に利用される。
ウェアラブル端末も同じで、血圧測定し、健康管理アプリに送るサービスでは、企業は我々の健康情報を利用できる。

エドワード・スノーデンによれば
「アメリカ国家安全保障局NSAは、世界中のインターネット情報を監視している」
とのことなので、サービスを提供する企業だけではなく
国家も我々の個人情報を閲覧している可能性がある。

それから街中の監視カメラもネットに繋がれば、誰がどこにいるか追跡可能になってしまう。

つまりは現在、いつでもどこでも個人が監視される社会になっている。

そこで、アレクサンドラさんという女性ディレクターが
ネットや監視カメラなどから遮断された生活は可能か?
を体を張って試しています。

彼女は
「隔離された生活はイヤ、旅行も友人との交流も買い物も今まで通り楽しみたい」
と最初には話していました。

○ネットに流す情報に注意する
 彼女は最初、CNIL
 (個人情報保護をする独立法人)
 で話を聞き、
 「サイトに書き込む情報を慎重に選ぶように」
 とのアドバイスを受け、
 ・ネット上のパスワード設定を頻繁に変える
 ・ネットではプライベートモードで見て、履歴を残さない
 ・携帯をパスワードでロックする

 つまり、ネットは使うが使い方に気を付ける、という対策を取っていました

 その他、アレクサンドラさんが行った行動は
 ・ネット上の自分とのつながりを把握するため
  今までネットを通じて個人情報を提供してきたお店、銀行、サービスに
  自分の履歴を照会する手紙を書く

  あとからその記録が送られてきて
  「デジタルパートナーの相関図」
  つまり自分の個人情報とつながる企業、サービスを洗い出していました

 ・悪い情報を削除してくれる会社に情報削除を依頼する
  マルセイユにある情報削除サービスの会社によると、
  見られたくないサイトを削除、あるいは検索不能にすればいいのだそうです
  また、この会社はSERPスカルプティングという、
  肯定的な情報を検索の上位に来るようにする技術も持っているのだとか

○ネットのツールを透明性の高いものにする
 次に、ベルサイユの「プライバシーカフェ」の経営者は、
 GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)
が提供するサービスを使うとそれらの企業にデータが送られてしまう、
 オープンソースのフリーソフトウェアを使うべき、と指摘していました

 そこでアレクサンドラさんは
 ・インターネットブラウザを「firefox」にする
 (「Chrome」を使うとGoogle、
 「インターネットエクスプローラ」を使うとMicrosoftに利用者情報が送られるが、これはそれがない)
 ・パソコンのOSを「ウブントゥ」にする
 これはウブントゥという会社が提供しているオープンソースのOS

○位置情報が追跡される
 次に、フリーソフトを作っているアメリカのプログラマー、リチャード・ストールマン氏に
 「あなたが心がけていることは」と聞くと
 ・乗り物にはICカードを使わない
 ・買い物もカードではなく現金で行う
 ・携帯電話は、居場所が追跡されたり盗聴の恐れがあるので持ち歩かない

 それから彼は、
 ・街のカメラは無くすべき
 と主張していました

 カメラがネットに繋がればデータが保存されるし、
 顔認識ソフトがあれば個人がどこまでも追跡される、と。

 そこで、アレクサンドラさんが実際に町を自転車で走ると、
 カメラはパリの町中に50個以上ありました。

○我々は喜んで監視されている?
 一方カナダのクィーンズ大学の教授デイヴィッド・ライアン氏の話によると
 「我々は、メディアを使うたびに知らない間に監視されている。
  さらに我々は監視されているだけでなく、自ら監視に関わっている」
 パソコン、スマホのサービス、ウェアラブル端末のサービスを使うたび、
 我々は気づかない方法で提供先の企業に監視されている、と。
 Facebookの情報も、政府機関に提供されているそうです

 さらに教授は
 「これは民主主義への脅威になるか?」ときかれ
 「国民を分類したがる傾向は以前からあるが、
  問題なのはそれがある集団にとってリスクを増やすこと」
 個人が追跡されるだけではなく、
 例えば欧米におけるイスラム系の人たちなど、一部の人たちへの監視や差別を助長する、
 と指摘していました

 同様に、ボストンの情報セキュリティ専門家のブルース・シュナイアー氏は
 「政府により常に監視されている社会は危険」と話していました
 国が国民を監視するのは反発されるが、携帯を持っていれば居場所がわかる。
 手紙を当局に出すのは抵抗されるが、メールのリストはプロバイダから手に入る。
 友達リストは当局に出しされないが、Facebookのデータでわかる
 監視はこうして起こる、と。

○個人情報追跡への対策
 これらの意見を聞き、アレクサンドラさんは
 「なんだか常に監視されている気になってきた」と、
 ・Facebookやリンクトインのアカウント削除
 ・クレジットカード解約
 ・ポイントカード、ICカードも捨てる
  これらのカードは買い物記録、金銭の状態や好みを知らせてしまうため。

 さらに、追跡を防ぐ携帯電話についても取材していました
 ・スイス、ジュネーブ在住のフィリップ・ジマーマン氏
 (彼はスイスはデータ情報保護が法律化されているため、アメリカから移住したらしい)
  彼が作った「blackphone」という携帯電話は
  暗号化技術を使い、通話やメールが全て暗号化される
  ただしこの携帯電話同士でないと使えない(他の電話と通信できるアプリはある)

 ・フランス、レンヌの企業が作った携帯電話
  この電話では回線が保護され、プライバシーが守られる、
  GPSの位置情報を撹乱できるモードが選べる、
  などの機能があるらしい
  ただしこれはビジネス専用電話だそう

 アレクサンドラさんはどちらも使いないため
 次善の策として特定のアプリ、GPSの位置情報を削除していました

 ・Torのブラウザ
  これはパソコンのブラウザアプリで、
  ブラウザに接続するときIPアドレスを保護し、
  接続先に自分のアドレスを分からなくしてくれるらしい
  セキュリティレベルも選べるそうです(ただし速度は遅くなる)

○最終的には、インターネット通信から遮断するしかない?
 次に、フランス政府から「暗号テロリストグループの首謀者」と言われている方に話を聞くと、
 彼は
 ・当局に狙われるので、重要なデータはネットに繋がっていないパソコンに保存
 ・e-mailは重要なやり取りには使わない
 つまりネットは基本的に遮断していると話していました

 ちなみに彼の話によれば
 NSAの提供するサイトでは、監視ツールが買える(彼も購入していた)
 例えば
 ・ターゲットのパソコンの画面を離れたパソコンに写し出す部品
 ・キー入力記録を収集するチップ
 ・ウィルスを感染させ、データを抜き取るUSBメモリ
 ・ターゲットの携帯電話といれかれられる偽の携帯電話
 「NSAはどこまでやるのか」と話していました

 それからベルリンで行われたハッカーの集会で、
 情報ネットワーク企業の方の話を聞くと
 「モバイルネットワークは個人情報を保護してくれない、
  例えば電話番号から位置情報はわかる」
 つまり携帯は守れても、ネットワークからは情報が漏れると話していました

 彼によれば、どんなに携帯を安全なものにしても、
 同じウェブサイトを何回も訪れると、
 使用言語やキー入力方法で同じ人が来たとわかってしまう、
 そこから個人を推測するのは可能、と。

 携帯電話を手放さないと完全に身は隠せないらしい

 アレクサンドラさんは
 「まるで旧東ドイツのシュタージ」
 シュタージ経験者は「あの頃は悪夢だった」
 そして彼女はインターネット環境からの遮断を行うことにする
 ・携帯を解約、連絡は公衆電話で行う
 ・パソコンもタイプライターとゲームだけに使う
 ・電車は切符を使う
 ・飛行機はチケットから情報がもれるからあまり使わない

 こうして友人とは連絡がつきにくくなり、
 ヨーロッパ旅行も、飛行機をなるべく使わないため
 二時間で行けるところが二日かかっていました

 こうなると、社会から隔離された形になる
 ある専門家は
 「スマホやメールを使うのをやめたら社会ののけ者になる」
 と話していました

 しかし、それでも残っている監視ツールがあるんだそうです。
 それは街中のカメラ。

○カメラをごまかす技術
 監視カメラは逃れようがないが、
 それへの対抗手段を考える芸術家たちがいました
 ・フランスのファッションデザイナー
  彼は、顔認証システムを撹乱するヘアメイク、ファッションを考えているそうです
  顔に市松模様みたいなメイクをするので余計目立ちそうですが(笑)
 アレクサンドラさんなんか「これでカメラから自由~」と踊ってました(笑)

 ・ニューヨークのアーティスト
  彼はアート作品で対抗していました
  例えばLEDライトをつけ、監視カメラを惑わす傘、
  予想外のルートを出すナビのアプリ、
  個人情報が監視されていることを警告するアプリ、など…

 ・仮面を作ってくれるサイト
  シカゴのアーティストが作ったサイト(ユーアーミー)では
  仮面をダウンロードできるらしい
  これを顔につければ顔認証システムを撹乱できる?

○政治に意見を反映させるべき
 しかし、彼女がそんなささやかな抵抗をしている間に
 フランスでは監視を合法化する法律が可決されたそうです

 スイス在住のジマーマン氏は
 「我々は情報を隠すことを強要されてはならないのです。
  個人で情報を隠しても意味がない。
  解決するには政治の場で抵抗することだ」

 シュナイアー氏も
 「法律を変え、社会を変え、生活を変えねばならない。
  監視より安全、プライバシー保護を優先させるよう行動に移すべきだ」
 と話していました

 実際、ドイツではハッカーの集団「デジタルの勇気」が
 行きすぎた監視をやめろ、とデモ活動をしているそうです
 代表の方は
 「武器がない戦い、敵の見えない戦いだから難しい」
 としながらも
 「しかし未来の世界をGoogleに支配されてはいけない」
 「我々が勝てると信じている、でなければ人間らしく生きられない」

 アレクサンドラさんは最後に
 「私は数ヵ月の間、なんとか透明人間にはなれたが、
  普通の生活は諦めざるを得なかった」
 「私は全てを自分で決めたい、監視されるのは嫌だ。
  しかし私一人では何もできない。
  あなたも自分で決断してください。
  これからどんな世界で生きていきたいのかを」

というメッセージで終わっていました

○感想など
アレクサンドラさんの体を張った取材には脱帽(かなり労力かかってると思うよ)。
もはやインターネットなどのITサービスから逃れられない現実が、
クスっとさせられながらもありありと分かりました。

しかしドキュメンタリー全体としては
IT技術で、我々の情報が監視され放題だよ…
という面が強調され過ぎかな?
(まぁ、今回のドキュメンタリーは、監視社会をコメディタッチに描く趣旨なので仕方ないが)

この点に関しては
便利さのためなら、ある程度の個人情報が漏れたってしょうがないでしょ、別にいいじゃん
と思う人もいるはずで、
私もそう思っていました。

しかし真の問題は、途中で専門家が触れていた
「ネット上での分類化が、差別を助長する」こと、
「それなのに、我々は喜んで個人情報を提供している」ことかなと思います。

ここはあんまり詳しく取り上げられて無かったのが少々残念ですが
(次次回の内容ですかね)

カナダの教授が話していたのは、
例えばある人が、ネット上の検索履歴とか交遊関係で
「この人はアラブ系」
と分類されてしまうとする。
そうすると当局は「こいつは要注意人物」と監視対象にしてしまう
何かあれば入国拒否、テロリスト、犯罪人にされてしまうかもしれない。

あるいはネットにその情報が拡散したら
ありもしない話を作られたり
色んな差別を受けたりするかもしれない、
…という話だと思います。

これは日本にとっては遠い話に思えますけど
最近読んだ本に恐ろしいシナリオがありました

例えば誰かが若気の至りで、
うったりネット上に過激なことを書いてしまったとする。
するとネットの記録から人物査定をするAIがあるとして、
「この人は過激な思想の持ち主」
という評価を下す。

そして、その評価が就職の時に使われ、
「あなたは採用できない」
と言われる。
なぜですか、とたずねても
「分からないがAIがそう評価している」となる

そしてその評価は別の企業でも使われ、
自分でも理由が分からないままいつまでも仕事に就けない。

そうなると、その人にはやり直すチャンスもあったはずなのに、
自分は無能者だと無気力になってしまうかもしれない。
もしくは自暴自棄になり、本当に過激思想の持ち主になってしまうかもしれない。

…もちろんこれは現実には起きていないが、
ネットの交遊記録から、ローンなどの信頼度を調査するシステムは、
海外の会社では実用化が検討されているそうです
また、就職の人物評価にAIを使う試みも行われつつあるので
全くの絵空事でもない。

つまりネット上に自分が無防備に流す情報により、
自分が勝手に分類され、ランク付けされ、評価されて
気づかないまま社会地位を決められている社会になるのかもしれない。
自己評価さえ、誰かに作られてしまうかもしれない。

その危険性を認識しないまま、
我々はサービスを喜んで使い、
そのバーターとして個人情報を提供し、
進んで企業や国家に監視されている可能性があるわけです。

なので、法規制を求める必要はあると思う。
自分や家族が、ネットの記録から勝手に何かの烙印を押され
一生好きなことが自由にできない人生になったらたまらんなと思います。
ネットでどんな情報が誰に使われているか知る権利、
使われなくない情報を削除、拒否できる権利、
などが必要だと思います。

まぁ、それには自分で自分の情報を管理しなきゃならないめんどくささもあるんですけどね。

ここまで来ると、
近代技術を拒否しているアーミッシュやユダヤ教の厳格派の人たち
(なんせ、彼らはテレビも車も拒否している!)
の方が幸せなのかなーとも思えてきます。

しかしながら、ネットでの検索は便利だし
後戻りはできないんだろうな。
GAFAM、のIT企業も国家も、
個人を監視してやろうとか支配してやろうとかいう悪意?野心?はないのだろうと思う。
できればみんな対等に、平等に、仲良くテクノロジーの恩恵を預かりたいもんだと思います。

色々考えさせられました。
今回はこの辺で。



posted by Amago at 16:47| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2018年02月06日

NHKスペシャル シリーズ人体「第5集 脳はすごいぞ!ひらめきと記憶の正体」

NHKスペシャル シリーズ人体「第5集 脳はすごいぞ!ひらめきと記憶の正体」

人体を、臓器どうしのネットワーク、メッセージのやり取りから捉えるシリーズ。
司会はタモリさんと山中伸弥氏。
今回は脳についてでした。

脳科学については他でも色んな話を見ていたりしたこともあって
個人的にはそんなに新しいことはないかなーという内容でしたが、
やはり映像やCGの綺麗さ、分かりやすさはこの番組ならではでした。

ゲストはお笑い芸人の又吉直樹さん、女優の菅野美穂さんでした

内容を軽くまとめると
●脳は神経細胞の集まりだが、
 それぞれの神経細胞どうしは、メッセージ物質を介して電気信号を伝えている
●脳のひらめきはボーッとしているときに起きる
●記憶を高めるには食事、適度な運動などで臓器を健康に保つこと
●脳血管の手前では、受けとる物質が選別されるため薬が届きにくいが
 この仕組みを利用して認知症の薬を脳に届ける研究がされている

○又吉さんの脳をMRIで見る
 最初に、又吉さんの脳を世界最高性能のMRIで撮影していました
 (人類代表、だそうです(笑))

 その画像を見て菅野さんは
 「きれいな白子ですね」(笑)って言ってましたけど、
 又吉さんの脳は
 「緑上回」
 というところが普通の人の3割増しなんだそうです
 (2万人に一人、なんだそうです!)
 ここは言葉を司るところで
 又吉さんのひらめきや文学的才能はここから来るのかも、とのこと
 又吉さんは謙遜?なのか
 「逆にほかの人よりめっちゃちっこいとことかもあるんでしょうね(笑)」と言ってましたけど…

○脳のネットワーク
 又吉さんの脳の画像から白子を取ると、
 タワシみたいな針金の塊のような物が見えました

 山中氏によると
 「これは神経細胞の細い繊維」
 神経細胞は1000兆(億?)個ある、と言われているそうです

 ・脳の素早い情報伝達
  脳ではこのネットワークを使った電気信号により、情報を素早く伝えている

  例えば誰かの顔を見たときの脳画像を見ると、
  まず視覚野が活性化し、
  その反応はわずか0.2秒で脳全体に伝わる

  伝わり方を詳しく見ると
  脳の視覚野→側頭葉→前頭前野の順に活発になる
  視覚野では、ぼんやりした輪廓を認識し、
  側頭葉では、誰の顔かを認識、
  前頭前野ではその人にまつわる感情を思い出す

 ・ネットワーク物質の関与
  この情報伝達はどのように行われているのか?

  神経細胞を拡大すると、線のような神経細胞が連なった形になっている

  神経細胞の末端どうしはわずかな隙間があり、
  活性化した神経細胞の末端(シナプス)ではメッセージ物質が放出されている

  この物質は
  「電気を起こして」というメッセージをだし、
  これにより次の細胞も電気信号をだして活性化する

  このメッセージ物質は10種類以上あり、
  それらを使い分けることで、伝え方を変えていることが最近分かってきたそうです

  つまり情報は
  電気信号→物質→電気信号…と伝えられている
  電気信号が火花みたいにバチバチ出ている映像もあって
  菅野さんは「キラキラ光ってる~」と驚いていました

 山中氏によると
 「神経細胞が1000兆個、
メッセージ物質が10億とも100億とも言われ、
  その組み合わせは無限」

 菅野さん、タモリさんは
 「神経細胞も一直線で行けば効率良さそうなのに…」
 と言っていましたが、

 山中氏によると
 この無限の組み合わせが
 脳に柔軟性を持たせているそうです
 この柔軟性がトライアンドエラーも可能にし、
 人類の発見や発明、科学技術の進歩ももたらしたのでは、と話していました

 今までのこのシリーズでは
 臓器同士がメッセージをやり取りしている、という話でしたが
 (例えば脂肪が脳に「エネルギー十分よ」とメッセージを伝える(第2集?の内容、など)
 「脳は内部でも、メッセージのやり取りをしているんですね」
 とのことです

○脳のひらめきの秘密
 次に、ひらめきはどこで起きるのか、について。

 ・又吉さんのひらめきの瞬間
  又吉さんにネタやストーリーを考えてもらい
  いい考えが閃いた、というときにボタンを押してもらう
  その瞬間の脳画像を調べる実験を行った

  10分のうち又吉さんがボタンを押したのは3回。
  その画像を分析すると、
  うち2回には特徴が見られたそうです

  いわば「ひらめき」の瞬間を可視化した画像ですが、
  そこでは脳全体を通る太いネットワークができていたそうです

  なにかに集中している時は、もっとネットワークが細切れらしい
  むしろひらめきの時は、何も考えていないときの画像に近い

 ・デフォルトモードネットワーク
  実は、ドレクセル大学の   ジョン・クーニオス氏の研究によると
  「脳でひらめきが起きるのはボーッとしているとき」
  なのだそうです

  「ひらめきは関係ないことをしているときに起きる、
   この状態を我々は
   「デフォルトモードネットワーク」
   と呼んでいる」

  デフォルトモードネットワーク、とは何もしていないときの脳の状態で、
  意識の上では何もしていないが、
  脳はこのとき忙しく働き、
  大脳皮質に残る記憶の断片を繋ぎあわせ、
  新しいアイデアを作っているそうです

 ・脳科学のパラダイムシフト
  又吉さんはこの研究を聞いて
  「頑張りかたが今後難しくなってきますね」(笑)と言っていましたが
  山中氏によると
  「これは脳科学のパラダイムシフト」だそうです
  ボーッとしているときは脳はなにもしていないと考えられてきたが、
  今では、脳のエネルギー消費の7割がデフォルトモードネットワークに使われていることが分かっているらしい

  タモリさんは
  「昔、「逍遙学派」てのがありましたけど…」
  古代ギリシャで、ぶらぶら歩きながら思索する人たちがいたそうです

  又吉さんも行き詰まったら夜中に散歩することが多いそうですが
  「先輩芸人さんにネタが思い付くのはいつか聞いてみたんですけど、
   又吉調べでは散歩とお風呂が多いですね」

  山中氏も
  「20年くらい前、アイデアが浮かばなくて困っていて、
   家に帰って子供をお風呂に入れて、シャワーを浴びていたら
   急にアイデアを思い付いたんですね。
   そこから10年くらい続けて、あのiPS細胞につながりました」
  ノーベル賞へのひらめきもデフォルトモードネットワークのおかげ、とのことです
  「僕の人生で、今まで一度しかないのが残念ですけどね」(笑)

  (ちなみに私も文章書くときは、
   お風呂入っているときによく全体の構成が浮かびます)

  しかし、ひらめくにはその題材である記憶の断片が必要、
  というわけで次は記憶の話。
○記憶を高める方法
 ・驚異的な記憶の持ち主
  次は驚異的な記憶力を持つ
  「スーパーレコッグナイザー」の話。
  一度顔を見たら2度と忘れないそうです

  そのうちの一人ケネス・ロングさんは
  イギリス警察に協力し、指名手配犯を群衆から見つける仕事をしている

  彼は2011年のイギリスで起きた暴動の犯人検挙で一躍有名になったそうです
  警察の方によれば、当時はAIも活用したが、
  4000人のうちわずか一人しか検挙できなかったのだとか
  まぁAIも驚異的に進歩しているので、今はもっと精度が高いのかもしれないが、
  それでも人間の記憶ってスゴいですね。

 ・記憶に重要な「歯状回」
  ケネスさんの脳を調べると、
  顔を記憶するとき
  脳の海馬のなかにある「歯状回」というところが活発だったそうです

  歯状回は海馬の中にゆるい「の」の字に並んだ細胞で
  この並び方が歯みたいなのでこの名前なんだそうだ

  これはどんな働きをするかというと、
  記憶するとき、海馬には電気信号の新しいルートができる
  記憶1つがルート1つに対応しているが、
  このとき、歯状回の細胞の1つが経由地となり
  1つ1つのルートを取り分けているのだそうです
  (記憶を1個ずつ分けて保存している、というイメージ?)

  ソーク研究所のフレッド・ゲージ氏によると
  歯状回は細胞が生まれたばかりであるほど活発で、わずかな刺激にも反応できるそうです
  そして、歯状回が生まれる人ほど記憶が増やせるのだそうです

 ・臓器の健康も重要
  また、臓器が脳に送るメッセージ物質も歯状回を増やすそうです
  例えば食べたときすい臓に分泌されるインスリン、
  筋肉の出すカテプシンB、という物質も記憶力をアップさせる、
  と分かってきているそうです

  菅野さんが
  「なんでこんな仕組みなんですか?」と聞いていましたが
  山中氏によると
  「生きていくのに食べることは必要、
   食べたときに出るインスリンで脳の能力が上がるのは理にかなっていると思う」
  食べられる元気な個体が脳みその能力を上げ、生き残っていくのは、
  その種にとっても有利な戦略、というわけです

  ですから、食べられること、筋肉が衰えていないことが脳、記憶にも重要で
  そのためには
  バランスの取れた食事、
  適度な運動、
  などが必要だとのことです

○認知症の薬を脳に届ける研究
 次は認知症の問題。
 山中氏はお母様が晩年認知症になられたそうですが
 「最後は僕の顔も分からなかった」
 これは、記憶細胞が死んでしまい
 中の記憶も消えてしまったからなのだそうです

 認知症の多くを占めるアルツハイマー病では
 この脳細胞の死滅をもたらすタンパク質が「アミロイドβ」だと分かっている

 そこで、このアミロイドβを分解する薬剤が考えられているが
 脳は薬が効きにくいそうです

 というのは、脳は血管に入る前に壁があり
 一部の物質しか入ることができない

 これは、脳には色んなメッセージ物質が各臓器からやって来ることに関係している
 脳が色んなメッセージ物質をのべつまくなしに受け取ってしまうと
 メッセージが多すぎて混乱してしまうからではないか、とのことです

 ・脳の壁をすり抜ける物質
  カリフォルニア大学ロサンゼルス校の
  ウィリアム・パートリッジ氏は
  壁がある脳の血管になぜインスリンが入ることができるのか、
  その仕組みを研究してきたそうです

  CGで再現されていましたが
  まずインスリンが毛細血管に入る
  脳の血管には壁があり、そのままではインスリンは入り込めないが
  壁の表面に突起があり
  その突起にインスリンが結合する
  すると壁が陥没し、インスリンは特殊なカプセルに覆われて脳の血管に入りこむ…というもの

  そこで、パートリッジ氏はこの突起に結合するタンパク質と似たタンパク質を人工的に作り、
  それを薬と結びつけて脳に送り込むことを考えたそうです

  彼はアルツハイマー病によくにた「ハーラー病」の治療で
臨床実験を行っているそうです

  ハーラー病は子供に起きる病気で
  GAGというタンパク質が脳にたまり、
  運動機能や認知機能に障害が出る病気なのだそう

  パートリッジ氏は、
  ブラジルの患者の子供について、
  脳の壁に結合するタンパク質とGAGを分解する薬を結合させた治療薬を
  点滴により注入する臨床試験を行った

  すると8人のうち7人に認知機能の改善が見られた
   顔の表情も豊かになってきたのだそうです

  「この研究は多くの製薬会社から注目されている、
   アルツハイマーについても研究資金が集まり、臨床試験も行われるだろう」とのことでした

○人間の脳は新しく生まれ続けている
 最後に、スウェーデンのウプサラ大学で。
 この大学の質量分析器で、脳の細胞を分析し、脳がいつ生まれているかを調べているそうです

 その結果、カロリンスカ研究所の研究者によると
 「人間の場合、健康状態に問題がなければ
  歯状回は90歳くらいまで新しく生まれる」
 ことが分かってきたらしい

 マウスでは高齢になると脳細胞は減っていくが、
 人間はそうではない。
 人間は、高齢になっても高い認知機能を保つために進化してきたのではないか、
 とのことです

 健康でいさえすれば、いつまでも記憶が鍛えられる?と思うと希望が持てますね。

 山中氏は
 「脳はネットワーク中のネットワーク、
  全身のネットワーク物質を取捨選択して届けているスゴい存在」
 タモリさんは
 「このシリーズでは脳はそんなにスゴくないって言ってたけど、やっぱりスゴいのね。
  お飾り社長じゃないのね…」
 と話して終わっていました

○感想など
・以前読んだ「脳が認める勉強法」(ベネディクト・キャリー)にはひらめきについて、他にも興味深いことが書いてありました。

 それによると、ひらめきは1熟考、2孵化、3ひらめき、4検証、という過程を経るのだそうです。
 このうち2の孵化が、ボーッとする、散歩や風呂に相当するんですが、

 脳はこのとき、解決の手がかりになりそうな情報を周りから無意識に拾っているのだそうです。
 (又吉さんも散歩の風景からひらめく、と話していましたが、
 風景から脳が何らかの情報を受けとるのでしょう)

 それから、問題からいったん離れることで、一歩引いて、課題を全体的、統合的に分析できる効果もあるのだそう。

 ですのでデフォルトモードネットワーク時は、
 脳は休んでいるどころか情報を探す、情報を分析、再構成する、など
 積極的に動いている、と言えそうです。

 ちなみにこの本は
 「場所を変えながら勉強すると覚えられる」
 「一夜漬けより、忘れても何度も思い出す方が覚えられる」
 「途中で中断させられることの方が覚えやすい」
 など、けっこうへえ~と思うネタが多かったのでお勧めです。

・記憶には食べる、運動するなどの身体的活動が関わる、というのは面白いと思いました。
 
 脳はやはり臓器の1つ、特別ではなく
 メッセージ物質のやり取りをする身体ネットワークの一部で、
 ネットワーク全体があるからこそ人間の知性が保てているのだな、と。

 だからこそ人間だけが年老いても能力が伸びる、熟成されていく。

 人工知能での議論で、AIに身体は必要なのか、という議論がありますが
 古くなったら衰え壊れる機械と人間はやはり違う。
 そこまで人工的に再現するのは難しいだろうと思いました。

・認知症の治療薬は期待が持てますが、
 脳を通過する薬てのは悪用も心配だなと、少し思ってしまいました。
 これを使えば何でも脳の血管に入っちゃうんじゃ?考えすぎかなぁ。

また次回も楽しみにしています。
posted by Amago at 11:16| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする