2018年01月26日

NHKBS フランケンシュタインの誘惑 科学史闇の事件簿「モンスター・スタディ 史上最悪の心理スキャンダル」

NHKBS フランケンシュタインの誘惑 科学史闇の事件簿「モンスター・スタディ 史上最悪の心理スキャンダル」

 今回は心理学実験の話でした。
 心理学実験というと、ミルトンの服従実験、
 ドイツの囚人役、看守役の実験、
 などがショッキングな実験として有名で、
 今回はそれに比べたらインパクトは少ない印象。
 しかし、被験者の子供たちの人生にも影響を与えた、
 しかも実験者はその実験を隠し通した、という点では最悪なものでした。

 登場する科学者はアイオワ大のウェンデル・ジョンソン氏。
 吃音治療の権威と呼ばれる方だったが、
 過去に子供に吃音を植え付ける、という実験をしていたそうです

○ジョンソンの生い立ち
 ジョンソンはカンザス州の農家の次男として生まれる
 活発でおしゃべりな子だったそうです

 しかし小学校に入ってから
 先生から朗読の時、吃音を指摘される
 指摘されてから吃音が余計に酷くなったそうです

 言語学者のジェリー・ハルバーソン氏によると
 「ディベート社会のアメリカでは、吃音はバカにされ、差別の対象にもなる」のだそうです

 彼は中学になると、喋らなくてもいいスポーツに打ち込み
 大リーガーになる夢を持つ
 しかし、利き腕を怪我してその夢を絶たれる

 大学に入り、言語心理学の教授リー・トラヴィス氏の元で勉強する
 その教授は吃音は脳の異常が原因、と考えており
 ジョンソンを被験者にして色んな実験をする

 しかしどれも効果は出ず、
 ジョンソンは脳が原因という説に疑問を持つ

○吃音の診断起因説
 そして46人の吃音の子供とその親を対象とした面接を行う
 その結果
 ・親が吃音を否定的に捉えると、子供は吃音になる
 ・指摘されると吃音はますます悪化する
 という結果を導きだす
 自分も教師に指摘されてから吃音がひどくなった経験があった
 これは「診断起因説」というそうです

 そして彼は1938年、その結果を学会に発表

 ジョンソンの孫弟子である言語病理学者、エフド・セイリ氏は
 「当時は吃音は脳が原因、という考え方が主流だった、
  診断起因説は新しいアイデアだった」
 しかし亜流の考え方のため、彼は相手にもされなかったそうです

○孤児院での「人体実験」
 そこでジョンソンは、
 実証すれば自分の説を認めてもらえると考えた
 その実験所として選んだのがアイオワ州のダルバート孤児院
 孤児院は子供たちが24時間同じ環境で過ごすので、
 心理学の実験にはうってつけの場所だったそうです

 そこで当時の院生だったメアリー・テューダーに実験を指示する
 彼女は尊敬する教授の研究に協力できる、と喜んで引き受けたそうです

 1939年、テューダーは孤児院にいく
 最初は普通のIQテストをしたり絵を描かせたりした
 そして、言語聴覚士に吃音の程度を調査させる
 子供たちに音読をさせ、
 流暢さ、中断や繰り返しの有無、音の引き延ばしなどを細かくチェックした

 そして256人の子供から22人を選抜
 4つのグループに分けて実験した
 1A吃音あり、ポジティブ評価
 1B吃音あり、ネガティブ評価
 2A吃音なし、ネガティブ評価
 2B吃音なし、ポジティブ評価

 例えば吃音のある子にポジティブな言葉かけする、など。

 ジョンソンの真の狙いは2Aのグループで、
 彼らが吃音になれば自分の説を証明できると考えた
 要するに、人為的に吃音にさせようとしたそうです

 被験者の一人、メアリーさんは今、91歳で老人ホームにいる
 彼女はインタビューに答えていましたが
 「テューダーは優しそうで綺麗な人だった、でも何をされるか分からないから怖かった」

 テューダーは彼女に対し、吃音を意識させるような会話をしたそうです。そして、
 「あなたは吃音になりかけてる、治さないとひどくなる」
 メアリーさんはそんなことを言われたのは初めてなのでびっくりしたそうですが
 テューダーは
 「私が治してあげる」と優しく接した

 しかし方法としては、
 ・普段の会話で吃音になるたび「ストップ」と言い、わざわざ指摘する
 ・「息を吸って、歯の裏に舌を当てるといい」とわざと吃音になるよう仕向ける…などひどいもの

 テューダーは
 「彼女はアドバイスをすると、簡単に影響を受けた」と書いているそうです

 先の言語学者ハルバーソン氏は
 「テューダーは、心理学的に計算された言葉を使って、本人に吃音だと思い込ませた」
 これは「評価的ラベル付け」
というそうですが、
 感受性の高い人ほど影響されやすいのだそうです

 メアリーさんは口数が減り、喋らなくなってしまった
 91歳の今でも
 「普段の会話はいいけど、怒ったり慌てたりすると吃音が出てしまう」
 といい
 「ごめんなさいね」と謝っていました

 ジョンソンはさらに、
 テューダーに
 「施設には実験の目的を知らせず、
  寮母や教師にも吃音を注意させるように」
 とも指示していたそうです
 こうして四六時中、無いはずの吃音が子供たちに注意されるようになる

 そして、被験者たちの行動に異変がみられるようになった
 吃音が出ると指をならす子、
 体を揺する子、
 目をぱちぱちさせる子、
 頭を壁に叩きつける子供も…

 ハルバーソン氏によると
 「これはフラストレーションの行動です」
 うまく話せない恥ずかしさ、もどかしさを隠すための行動なのだそうです

 ジョンソンはこの結果に満足していたそうですが
 ハルバーソン氏は
 「ジョンソンは孤児院というだけで、子供たちを動物実験のモルモットと同じように扱った。
  これは許されることではない」
 と話していました

○スタジオでの解説
 司会は武内陶子アナウンサー、
 ゲストは総合大学院大学の池内了氏と広島大教育研究科の川合紀宗氏(専門は音声言語病理学)でした

 川合氏は
 「吃音になりそうになったら歯の裏に舌を当てて、とか
  吃音を意図的に起こそうとしていたのは悪意を感じますね」

 武内アナ
 「ジョンソンは吃音治療の父、と呼ばれていたそうですが」
 川合氏
 「吃音研究ではかなり有名です」
 川合氏によると、吃音は人種に関係なく1%くらいの割合で存在するそうです

 「診断起因説とはどんなものですか」
 川合氏
 「発達期の子供には流暢でない会話は珍しくないんですが、
  保護者など周りの人がラベリングすることで吃音になる、という説です」
 しかし
 「この説は後々否定され、今は研究者の中で信じている人はいない」そうです

 武内アナ
 「評価的ラベル付けとは?」
 川合氏によると
 「吃音は評価的ラベル付けで引き起こされる訳ではない」
 そうで、メアリーさんのケースについては
 「おそらく、発話することに恐怖を感じてしまうようになったのではないか」とのことです
 池内氏も
 「子供は環境にかなり影響を受けるから、
  段々話すのが嫌になって、考えるのも嫌になったんじゃないか」
 頭を打ち付ける行動などでしか気持ちを発散できなくなったのではないか、
 と話していました
 つまり吃音の症状ではなく、ストレス反応だった、ということらしい

 武内アナ
 「それにしても、孤児院で実験とは…」
 川合氏によると
 「当時は孤児院を使って研究することは、割と多かったんですね」とのことです
 おそらくアイオワ大も、孤児院と契約みたいなのを結んでいたんじゃないか、と。
 「もちろん今では許されないことですが」

 池内氏は
 「人道的な感覚が失われていたのが問題」と指摘していました
 孤児院にいる子は、他に行き場が無いので指示に従わざるを得ない、
 そこで実験したのは非人道的だ、と。
 昔はあんまり社会的弱者への人権意識がないというか、何でもありだったのね。

○葬られた論文
 さて実験の話に戻ります。
 テューダーの5ヶ月の働きかけ後、被験者は音読の流暢さのテストを受けた

 しかし吃音ではないのにネガティブ指導された6人の被験者のうち、
 流暢さが下がった子供は二人。
 メアリーさんはむしろ流暢さは上がっていたそうです

 また、言語聴覚士の判定を受けると、被験者全員が「吃音ではない」という判定

 ジョンソンの孫弟子のエフド・セイリ氏
 「結論から言って、この実験から得られるものは何も無かった」
 ジョンソンは自説を支持する結果を期待していたはずだが、
 結果は逆だった、と話していました

 そのためジョンソンは、
 これらをまとめたテューダーの論文を黙殺し
 大学の図書館に放置したそうです

 しかし、被験者の子供たちにとって実験は終わっていなかった
 ジョンソンは実験の目的を施設に知らせなかったため、
 教師や寮母たちは吃音を注意し続けた

 そして実験から4年後、
 孤児院からジョンソンの元に
 「被験者の一人が口をきかなくなってしまった」
 という苦情の手紙が来たそうです

 ジョンソンはやはり目的は知らせないまま、
 吃音を指摘しないよう伝えたそうです

 ジョンソンはその後も論文を隠し続けた
 というのは、当時ナチスのユダヤ人に対する毒ガス実験が行われ
 「人体実験」に対する拒否反応がアメリカに広がっていた

 ハルバーソン氏によると
 「ジョンソンは、上司から、今後の仕事のためにはあの実験とは無関係だと言った方がいい、と助言された」
 しかし
 「あの論文を公表しなかったことは、
  実験した罪よりも、被験者をケアしなかった罪よりも重い」

○最期まで診断起因説を信じたジョンソン
 ジョンソンはテューダー論文に触れる代わりに、
 8年前に面接した46組の親子の追跡調査をする
 そして「吃音は指摘されたらひどくなる」という結論を出す
 また、先住民族について、根拠は少ないのに
 「先住民族には吃音がない、
  吃音を気にしないから指摘されない」と主張

 これらの結果を
 1946年「葛藤する人々」という本にして出版したそうです
 この本は専門書にも関わらず分かりやすかったため、ベストセラーになった

 エフド・セイリ氏によると
 「診断起因説は、キャッチーで分かりやすいために
  その後20~30年、時代を席巻していく」
 この説に基づく治療法も世界に広まったそうです

 この間テューダーの論文は闇に葬られたまま。
 知っている人は密かに「モンスター・スタディ」と呼び
 大学ではタブーとなっていった

 ハルバーソン氏によると
 「同級生にこの実験を知っている人がいて聞いたことがある」そうです
 しかし
 「実験については話すことができない」と言われたらしい

 その後、ジョンソンは1965年、59歳の時に心臓発作で急死する
 最後まで診断起因説を信じていた

○スタジオでの解説
 武内アナ
 「ジョンソンは最後まで診断起因説を信じていたんでしょうか」
 川合氏は
 「揺れ動きはあったかもしれないが、
  データが間違っていたと思っていたならば最後まで信じていたでしょうね。
  本当のことは誰にも分かりませんが」

 池内氏は
 「科学者には理論付加説、てのがある」 と話していました
 科学者が、理論から結果はこうだろうと思って実験すると、
 理論に適したデータしか使わなくなってしまうそうです
 「ズレたデータこそ、理論を正しく説明するかしないかを明らかにしてくれるんです。
  そこを読み取るのが科学者なんですよ」

 川合氏も
 「仮説は否定されるときもある。
  否定されることがあるからこそ新しい発見やブレークスルーもある、
  そこが醍醐味ということもあるんですけどね…」

最近も論文捏造の問題がいくつかありますが、
期待に添わない写真とかを削りたくなるのも分からなくはない。
しかし失敗から生まれる大発見もある。
青カビの薬ペニシリンも、シャーレにあり得ない菌が生えていたことから発見された、
と聞いたことがあります。

 武内アナ
 「ジョンソンは実験の目的を伝えなかったんですね」
 川合氏はこれについて
 「目的を施設にも伝えないのは倫理的に問題があった、
  フォローアップも無かったのも問題」
 池内氏は
 「そもそも何のための実験だったんか、というのがある」
 吃音を良くするための実験ならその後こうするといい、という助言があるべきで、
 原因だけ探るならモルモット扱いに過ぎない、と話していました

現在も臨床試験に行くまでには動物実験から入るのが普通ですよね。

 武内アナウンサー
 「テューダーの論文は隠されていましたが…」
 池内氏
 「ここは科学者の第一歩を踏み外していますね、失格です」
 どんなデータもオープンにして、
 色んな人の意見を反映させることが科学の進歩につながり、
 みんなのためにもなる、と。

 武内アナ
 「診断起因説はその後、30年以上広まったんですね」
 川合氏
 「言語聴覚士からすると、脳が原因と言われると手出しができないと考えてしまう、
  学習によるものなら何かできる、と一筋の光のように感じたんでしょうね」
 池内氏は
 「我々は育ちの部分は努力で変えられるけど、
  遺伝は努力で変えられない、と思ってしまう。
  変えられることだけに注目するのは、
  悪いことではないがそれが万能、と思うのは問題」
 まぁでも、言語聴覚士もなんとか治してあげたい、と思う気持ちから信じてしまうのかなぁ、と思うと切ないですね。

 川合氏は
 「本人に対する治療が行われなかったのは問題」と話していました
 「吃音は生まれながらで、3歳くらいからだいたい出てくるんですが、
  この説で「ひょっとして私がきつく言ったからではないか」と親が思ってしまう、
  今はそこは違うと指導しています」
 親が勝手に判断して思い込むのが危険、とのことでした

○公表されたテューダーの論文
 現在、アイオワ大の図書館ではテューダーの論文を見られるそうですが、
 この論文が世に知られたのは2001年のこと、
 カリフォルニアのマーキュリーニュースがスクープしたそうです

 被験者のメアリーさんもこの記者さんに教えてもらい、初めて真実を知ったそうで
 「吃音でないのに無理矢理作っていただなんて…
  私には考古学者になる夢があった、
  あの実験は私の夢も将来も踏みにじった」
 と話していました

 被験者たちはその後、アイオワ州と大学に対し、慰謝料を請求する裁判を起こした
 2007年和解が成立、請求額よりはかなり少ないが、1億円あまりの慰謝料が支払われたそうです

 ハルバーソン氏は
 「70年以上も前に起きたことを明らかにするのは難しいが、
  彼らが苦しんだことは事実だ」
 と話していました

○スタジオでの解説
 武内アナ
 「冒頭で、被験者の方が言葉に詰まってごめんなさい、と言っていたのが心に残っています」
 川合氏
 「吃音があるときにいけないと言われてきたから謝ってしまうんですね。
  彼女は舌を当てなさいなど、テューダーに言われたことを守ってきた。
  こういうことは習慣になってしまって、そうじゃないと分かった後もなかなか戻せるものではない」

 池内氏も
 「人間は言葉を通じて相手と付き合うのに、
  言葉に問題があると言われたら、
  自由に発想することも自由にものを言うこともできなくなる。
  それは辛いですよね…色々諦めざるを得ない。
  言葉は玄関口なんですね、
  玄関口なんだけどそこだけじゃなくて全体にも行き渡る。
  彼女は大変な人生だったと思います」

 武内アナ
 「このニュースがあったとき、川合さんはアメリカに留学されていたんですよね」
 川合氏
 「かなり衝撃でしたね。
  ジョンソンはかなりビッグネームの人でしたから。
  我々は言葉に困っている人を助けたいと思っているのに、こんなことをしていたのかと…」

 武内アナ
 「この実験が明らかになって、変化はあるんですか」
 川合氏
 「倫理的により厳しくなったのはあると思います」
 実験の際は第3者を入れ、倫理的に問題がないか検討すること、
 科学者への倫理教育を行うことなどが義務化された
 また、自分だけでは判断できない年齢の子供については、なぜその実験が必要かを明確にすること、
 8歳以下の場合はデータ秘匿厳禁、などが決められたそうです

 池内氏は
 「科学者はどうしても実験をやりたくなるから、
  1つの大学とか学会だけじゃなくて様々な大学が関わったり、
  市民の目も関わる必要があると思います」

○ニュージーランドの人体実験計画
 テューダーの実験後も、被験者の心に傷を残す心理学実験は行われた
 例えば1963年、スタンレー・ミルグラムの服従実験
 人は、権威ある人から威圧的に指示されると、
 致死的な量の電気ショックも他人に与えてしまうことを示した、とされる実験
(ちなみにこの実験はドキュメンタリーで紹介されていまして、
実際は被験者は権威者に盲目的に従ったのではなく、
応援者がいるなど、条件によっては権威者に反抗する、
という結果だったそうです)

 1971年、フィリップ・ジンバルドによる監獄実験
 これは看守役、囚人役に分かれて演じる実験
 看守役の人が予想以上に虐待を繰り返したため実験は中止になる
 (これは「es」など映画化されています)

 ハルバーソン氏は
 「心理学の人体実験に対する規制はかなり遅れた、
  ジョンソンの実験が公表されていたら、このような実験は無かったかもしれない」
 と話していました

 その後1972年、アメリカ心理学会は倫理綱領を策定
 被験者との実験についての合意、
 被験者への結果についての通知などを定めた

 しかし2014年、ニュージーランドで人体実験が行われそうになったそうです
 これは、新生児が虐待を受けたら、成人になるまでどのくらい犯罪を犯すかを調べるもの
 このため、被験者に対する虐待の通告があっても、実験のために放置される危険性があった

 しかし当時の大臣がそれを知って激怒、実験は中止された
 川合氏は
 「人体実験は過去のものと思っていたのに、今でもありうるのはショッキング」
 と話していました
 池内氏は
 「これは社会的なものもあるかもしれないね」
 我々は虐待を受けた子は自らも虐待するなどの思い込みがあり、
 マイナス要素の人間を見つけて退治しておきたいという欲求があるのかも、
 「それは怖い」
 と話していました

 また、川合氏は
 「先進国は規制が広まっているが
  規制の無い国で抜け道的に実験することはありうる、
  国際的な規定を定めていかないと悲劇は無くならない」

 最後は吉川さんのナレーション。
 ニーチェの
 「信念は真実にとって、嘘よりも危険な敵である」
 という言葉で締め括られていました

○感想など
・結局吃音の原因や対応法は何なのか、てのがモヤッとしていましたが
 おそらく発達障害などと同じで、
 ある程度先天的、遺伝的な要因ではあるが、
 接し方によりある程度対処は可能、ということかなと思います。

 我々は遺伝的なものはもう変えられない、と思いがちだけど、
 最近では脳は過疎的なものだと分かってきている。
 ある程度は訓練可能なんだろうと思います。

 というか生まれつきなら本人のせいじゃないんだし、
 なおさら周りが配慮すべきなんじゃないかなぁと個人的には思う。
 ゆっくり聞いてあげるとか、
 あんまり気にしないとか、
 接し方次第で対処できるのかなと思います。

 それから、そもそも吃音が問題になる社会ってどうなんかなぁとも思う。
 私は日本人だからかもしれないが
 吃音でもアナウンサーでない限りは、話の内容が良ければいいんじゃないのと思うんですけど…
 アメリカみたいなディベート社会ではそうもいかないんですかね…

・自分の期待するデータだけを選びたくなる誘惑、てのはどの分野でもありがちなことで
 でも科学者も人間、欲があるのは止められないので、
 そこは良心に頼るよりもシステムで防ぐ方が(行動科学的には)有効なのかなと思います。
 最近も論文捏造とかあったけど、
 複数人で確認しあう、結果はオープンにするなどの仕組みが必要なのかなと思いました

・実験は終わっても被験者のこどもたちにとっては終わっていなかった、というナレーションは印象的でした。
 メアリーさんの「ごめんなさいね」も…

 どの分野のどんな実験でも、被験者にはなんらかの影響が残るリスクはずっとあると思う。
 倫理規定ができて、それに沿って「本人の同意」が得られたとしても、
 予想できなかった悪い影響が残る可能性もある。
 いい影響ならいいけど、悪い影響が出ない実験を考えるのも科学者には必要だと感じました。

posted by Amago at 22:19| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2018年01月15日

NHKスペシャル「シリーズ人体「第4集万病撃退!腸が免疫の鍵だった」」

NHKスペシャル「シリーズ人体「第4集 万病撃退!"腸"が免疫の鍵だった」」

NHKスペシャル人体の新シリーズです。
司会はタモリさん、山中伸弥氏。

今回は腸の働きについて。
腸がメッセージのやりとりにさより腸内細菌と免疫細胞の2つを利用し、
体の免疫システムをコントロールしている、
という話でした

大まかには
・腸内の色んな細菌を腸が認識し、それらをやっつける、あるいは味方にするよう、
 腸内の免疫細胞を鍛えている
・体の免疫システムが暴走すると、アレルギーなど深刻な害が出るが、
 腸は腸内細菌からメッセージを受け取り、
 免疫細胞の暴走を防ぐ細胞を作り出している
…という話でした

○今回のゲスト
 ゲストは大リーガーの田中将大選手、小島瑠璃子さん。
 今回は田中選手の腸に注目が集まっていました。

 田中選手は
 「食あたりとかはあまりなったことがない」
 とのことで、大リーグの4年間でも風邪などで休んだこともないそうです
 山中氏によれば
 「一流のスポーツ選手は、腸も一流なんです」

 ここで出てきたのが
 「腸大丈夫!CGマーくん」(笑)
 田中選手のCGらしいんですけど
 腸の長さを伸ばすと8.5m、腸の絨毛を広げても畳20畳分
 タモリさん「畳20畳って、大宴会場くらいあるよ」
 山中氏「ひだがたくさんあるので、広げるとこうなるんですね」

 腸は、食べ物を最初に受けとる所でもあり
 同時に細菌やウイルスに一番さらされやすい場所でもある。

 進化の過程で、腸はこれに対抗する力を身に付け、
 それは体全体の免疫力に重要な働きをするようになったのだそうです

〇腸が免疫力を鍛えるしくみ
 自分が小人になって、腸の内部にどんどん入ったらどう見えるか…の映像がありました。
 胃の奥に穴があり、ここをたどると腸がある
 腸の表面は粘液で覆われ、粘液部分を拡大すると腸の表面に絨毛がある
 この絨毛に特殊な光を当てると、中に毛細血管がびっしりあるのが見える
 この毛細血管を通して、腸から吸収された栄養物が体全体に送られていく

 さて、この腸の表面を染色し、特殊な顕微鏡で撮影すると
 周りに腸内細菌がたくさん漂っているのが赤く見える。その数100兆個。

 また、絨毛の内部を輪切りにし、これもまた特殊な染色と顕微鏡を使うと、
 中には免疫細胞がたくさん赤く染まっている。
 絨毛の裏側にはさらに真っ赤になっている。
 免疫細胞は体内2兆個あり、そのうち7割が腸に存在するそうです

 腸はこれらの腸内細菌と、免疫細胞を使って免疫システムを管理しているんだそうです。
 例えて言うと腸は水戸黄門、腸内細菌は助さん、免疫細胞は角さん。
 黄門さまが体内の悪い細菌をみはり、やっつけている

 具体的には、ウイルスや細菌がやってくると
 壁の中の助さん、免疫細胞がそれを関知、
 「攻撃して」というメッセージを出す
 それを壁が受け取ると、壁から外へ殺菌物質が放出される

 この反応が出来るようになるため、
 日頃から免疫細胞の訓練をする仕組みもあるそうです

 絨毛の立体写真にはわざと一部絨毛が無いところがある

 ここが訓練場で、ここに腸内細菌がはまると内側に引きずり込まれる
 壁の内側では、トゲトゲの細胞がこの細菌を免疫細胞に運び、
 免疫細胞は「これは味方」「これは敵」と見分け、
 敵に対しては攻撃するような学習をしている

 そして、学習した免疫細胞は腸内から身体中に運ばれていく
 こうして、インフルエンザや食中毒など、
 いろんな細菌からの免疫力が身に付く

 山中氏によると
 「腸はわざわざ細菌を取り込んで、敵か味方かを訓練するんですね」
 そしてこのメカニズムはまだ発見途上で
 「腸はホットな研究分野で、日々新しい発見がされています」

○免疫細胞の暴走と腸内細菌
 一方、免疫細胞が働きすぎて
 自分の正常な細胞まで攻撃してしまう場合もある
 これがアレルギーや病気を起こすのですが
 「この原因に腸の異常がある、と最近では考えられています」

 ・原因不明のアレルギー
  イギリスの体操選手、ナタシャ・コーツさんは
  4年前から原因不明のアレルギーに悩んでいるそうです

  自分の汗、髪の毛、涙などにも反応してしまうそうで
  ショック症状で倒れ、250回運ばれたこともある
  髪の毛もすべて抜けてしまい、
  食べられるものも限られている
  毎日25錠の薬を飲むが、
  いつでも生命の危険を感じるそうです

  彼女の便を調べたところ
  クロストリジウム、ラクトバチルスなど
  特定の種類の細菌が極端に少ないことが分かったそうです

 ・多発性硬化症の女性
  もう一人、日本人の女性で4年前から多発性硬化症に悩む方も紹介されていました

  彼女は手足の震えやしびれが止まらない
  この病気は、免疫細胞が自分の脳を攻撃してしまうことで起きるのだそうです
  進行すると失明や失語症の恐れもあるのだそう

  彼女の腸内細菌も調べると、
  バクテロイデス、クロストリジウムなど
  特定の種類の細菌が少ないことが分かったそうです

 山中氏によると
 「腸内細菌の異常がこれらの原因の1つ、と考えられる」

 アレルギーも同じ免疫疾患なのだそうです
 タモリさんは
 「若い頃ビールアレルギーだったけど今はないね」
 田中選手は
 「僕は無いけど、妻が最近、アメリカンチェリーとかリンゴの皮とかに反応する
  今までなかったんですけど急に…」

 山中氏によると
 「アレルギーは突然発症することが多いですね」
 「突然なのは、腸内細菌が急に変わるのが関係しているのかもしれないですね」

 さて、腸内細菌は腸の中でたくさんの種類が住んでおり、
 数百兆、数千兆とも言われるそうです
 山中氏
 「腸は有益なものを選んで住まわせています」
 有名なのはビフィズス菌
 ほか「バクテロイデス」という菌は脂肪の吸収を押さえ、肥満を防いでいる
 と分かってきたのだそう

○免疫細胞の暴走を防ぐ腸内細菌
 そして最近、免疫システムに重要だと分かってきたのが
 「クロストリジウム」

 山中氏によれば
 「この菌だけで100種類以上あって、悪さをする種類もある」そうですが
 特定のクロストリジウムは免疫を制御するそうです

 その仕組みで鍵となるのは
 アレルギー研究者の坂口志文さんが発見した
 「Tレグ」という免疫細胞でした

 Tレグの発見はノーベル賞もの、と言われているそうです
 というのは、Tレグは過剰に反応しすぎている、
 つまりアレルギーなどを起こす過剰な免疫細胞を
 「落ち着け」となだめる免疫細胞なのだそう
 Tレグは普通の免疫細胞から作られる

 (別の番組(BSの「シリーズ医療革命」)では
 花粉症などのアレルギーのある人はTレグが少ない、という結果があり、
 Tレグを増やすための研究もされているとありました)

 さて、腸の壁の外に漂う腸内細菌のクロストリジウムは、
 食べ物を食べながらメッセージを発するそうです
 「落ち着いて!」
 すると腸の壁の中にメッセージ物質が入り込み
 壁の内側の免疫細胞がそれを受け取り、Tレグに変化する

 つまり、クロストリジウムのメッセージがTレグを産み出し、
 腸内で作られたTレグは体内に運ばれ、免疫の暴走を防ぐ

 このシリーズでは、臓器どうしのメッセージのやり取り、がテーマでしたが
 腸は臓器ではない、細菌からのメッセージも利用している、とのことです

○食生活が重要
 さてクロストリジウムなど、有益細菌を増やすにはどうすればいいか。
 結論からいうと、細菌が好む食物繊維を摂ること、だそうです

 ・お寺の修行僧さん
  神奈川の曹洞宗総本山のお寺では、
  修行を始めてからアレルギーが無くなった、という僧侶たちがいるそうです
  早稲田大学の服部正平教授が彼らの腸内細菌を調べると、
  クロストリジウムが十分あったそうです
  僧侶の食生活は基本的に精進料理。
  キノコや海草、野菜などの食生活が良いのでは、とのことです

 ・マウスでの実験
  理化研の研究では
  クロストリジウムを腸内にもつマウスに食物繊維あり、なしの食事を与えると
  食物繊維があるほうが、Tレグの量が大きく増える
  クロストリジウムが餌とする食物繊維を摂ることでTレグが増える、
  と考えられるそうです

 ・日本人の伝統的な食生活
  日本人は昔からキノコ、海藻、根菜、野菜を多くとる生活
  先の服部氏の研究によると
  腸内で酪酸などを作る能力が、
  日本人は他の十か国の平均に比べて高いそうです

 しかし最近では食の変化が起きている
 アレルギーやアトピー、ぜんそくの増加はこれが1つの原因では、
 と考えられているそうです

 タモリさん
 「食生活変わったのってここ60年くらいだもんね」
 山中氏
 「腸内に細菌を住まわせる仕組みは、長い時間をかけて進化して来たもので、
  多分食生活の急な変化に、腸がびっくりしてるんじゃないですかね」

 さて田中選手の毎日の食生活を見ると
 「家にいるときは妻の手料理」だそうで
 写真を見ても根菜、キノコなど繊維がたっぷりで
 修行僧の1日平均が20g、
 田中選手は1食で17gもとっているそうです

 小島さん
 「愛だ、愛」(笑)
 田中選手
 「感謝しないといけないですね」

○Tレグを増やす試み
 途中で紹介されていた多発性硬化症の女性は
 Tレグを産み出すメッセージ物質を飲む臨床試験をしているそうです
 動物実験では、この物質で脳細胞への攻撃がおさまる、と分かっているらしい
 そして臨床研究では、
 今のところ彼女を含め11人中9人がTレグが増加しているのだそうです

 「難病の根本的治療ができるようになるかもしれない」と研究者は話していました

 腸内細菌は生まれ持ったものではなく、
 食べるものにより育っていくもの、だそうです。
 最初の出発点は赤ちゃんが飲む母乳で、そこからビフィズス菌がまず増える
 そのあとは日々の食べ物を餌にして、腸内にメッセージ物質を与え、
 我々に健康と命を与えてくれる…という言葉で締めくくられていました

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2018年01月09日

NHKスペシャル「人体「第3回骨が出す!最高の若返り物質」」

NHKスペシャル「シリーズ人体「第3集骨が出す!最高の若返り物質」」

人体の新シリーズ、
今回は臓器どうしがネットワークを作り、メッセージをやり取りしている、
というのが全体のテーマだそうですが

今回は骨についてでした。
(当初の予定より1ヶ月遅れのオンエアですが)

骨は全身で200個、
この骨は中身はスカスカですが
中では色んな細胞があり、そこからメッセージ物質が放出され
他の臓器にメッセージを送っている、
というのが今回の内容でした

ざっくりまとめると
・骨は骨格を作るだけではなく
記憶力、免疫力、筋力、精力もコントロールしている、
・骨の量も骨自身が調整している
・骨を作るには、骨に衝撃を与える運動をするのがいい

○今回のゲスト
 今回のゲストは「骨折芸人」の石田明さん、
 元祖「骨折芸人」の藤井隆さん、
 女優の木村佳乃さんでした。

 石田さんは12ヶ所、藤井さんは7ヶ所骨折したことがあるそうです。
 人体模型「いしだくん」(笑)で折った部位が示されていましたが
 肋骨とか手先とか…

 なんでそんな骨折するの?と聞かれていましたけど
 肋骨は「振り向いて、て言われて目一杯振り向いたら折れた」
 手先は「デコピンをやっていたら折れた」そうです。弱すぎ…(笑)
 ちなみに山中氏もラグビーなど運動部をされていたこともあり、
 10ヶ所骨折されているそうです。

 「折れやすいとかあるんですかね?」
 と聞いていましたけど
 石田さんは
 「24歳の時に70代の骨年齢と言われました」だそうです。つまり骨がボロボロなのね…

○骨が弱いアスリート
 石田さんと同じく骨が弱い人は、
 トップアスリートにもいるんだそうです

 コールドウェルさんというアメリカの自転車競技の方で
 19歳でデビュー後、好成績を残し、
 全米で準優勝した経験もあるそうです

 しかし彼は20代半ばで大腿骨を骨折
 「雨で滑って転んだ」
 そうですがかなりの痛みだった

 そして調べると骨量が極端に低く、
 まだ25歳なのに80代の骨だと言われたらしい
 このため彼は引退を余儀なくされた、とのこと…

 なぜ体が強靭なトップアスリートなのに骨がボロボロなのか、
 治療法はあるのか、という話は後半で
 その前に骨が弱いとヤバイよという話が次に紹介されていました

○骨が弱いと老化が進む
 実は骨が弱いと老化が進むらしい
 高齢者で骨折すると亡くなる人が多いとかいう研究もあるそうです。

 「骨は骨格を作るだけではなく、
  全身に向けて様々なメッセージ物質を送っている、
  それが無くなると老化が進んでしまう」
 では何が問題か?具体的には

 ・記憶力が弱くなる
  コロンビア大のジェラール・カーセンティ博士は
  骨が出す
  「オステオカルシン」
  というメッセージ物質の研究をしているそうです

  遺伝子操作によりオステオカルシンが作れないマウスを作製し、
  このマウスと普通のマウスを水槽の中で泳がせ、
  中にある島にたどり着かせた

  島にたどり着くまでにかかる時間を測定すると、
  1回目はどちらのマウスも80~90秒かかった

  普通のマウスは泳がせる回数を増やしていくと3回目くらいから時間が短くなり
  12回目には4秒でたどりつく、つまり学習する

  しかしオステオカルシンのないマウスは何回やっても90秒くらいかかったそうです
  つまり学習ができていないことになる

  博士がこのマウスの脳を調べると、
  なんとオステオカルシンなしのマウスは海馬が小さくなっていたそうです

  おそらく、骨から放出されるオステオカルシンが
  「記憶力を上げよう」
  というメッセージを出し、
  これが血液を介して脳にたどり着き、
  海馬の大きさを保っていた、と考えられるそうです

 ・免疫力
  ドイツ、ウルム大のハームット・ガイガー氏によると
  年老いたマウスは、
  骨からのメッセージ物質である
  「オステオポンチウム」
  が少ないことが分かっているそうです

  このオステオポンチウムを年老いたマウスに外から与えると
  免疫細胞の量が倍に増えることが分かったそうです
  つまり病気への抵抗力が高くなる

 山中氏の解説によると
 「いずれも今はマウスだけの結果なので人間についても研究中」だそうです

○骨の出すメッセージ色々
 スタジオでは、初回(プロローグの回)で出てきたタモリさん型の人体呟きマシンが再登場。
 木村さんが「ちょっと骨の細胞を…」と取ると、
 タモリさんが「イタッ」(笑)
 んなわけないわね。

 さてこの骨細胞を会話機械?に置くと
 「筋力アップ、たのんますばい!」
 メッセージを受け取った筋肉細胞は「頑張るばい!」

 (タモリさんが「博多弁はなんでも語尾にばい!つけるわけじゃないのよ」と突っ込んでたけど(笑))

 山中氏の解説によると
 「オステオカルシンは、筋肉ではエネルギー効率を高める働きをするんです」

 つまり同じメッセージ物質でも、
 臓器によって違う働きをするらしいです。

 また、この骨細胞は
 「精力アップ、たのんますばい!」とも呼び掛けている
 すると精巣の細胞が
 「みんな気合いいれるばい!」

 そこで出てきたのが、糸が絡み合ったような顕微鏡写真。何これ?とみんな言ってましたが
 木村さんがザクッと
 「これ、精子でしょ?」
 あまりにあからさまなので(笑)アナウンサーさん困惑しつつ
 「さすが、お詳しいですね…」

 同じメッセージ物質が
 精巣ではテストステロンという男性ホルモンを増やすそうです

 タモリさんは
 「まさか骨がメッセージ出すとは思わなかったねえ」
 山中氏によれば
 「記憶力、免疫力、筋力、精力、実はいずれも若さに関係があるんですね」
 骨は若返りの鍵を握っているとのことです。

 「じゃあ、骨を増やすにはどうしたらいいんですか」
 「カルシウムを取るのは大事なんですけどそれだけではなくて、
  骨自身が自分の強さを決めるメッセージを出していることがわかってきました」

○骨の量を調整するメッセージ物質
 最近では、骨自身から骨の量を調整するメッセージ物質が出されることが分かってきたそうです

 それが分かったきっかけは、
 南アフリカの特定の地域に見られる病気
 「硬結性骨化症」(こうけっせいこっかしょう)という病気で
 この病気の人は骨がどんどん増えてしまうらしい

 27歳の男性の患者さんがいましたが
 彼は頭蓋骨がどんどん増えて分厚くなってしまい
 脳が圧迫され、聴力や視力がどんどん低下してしまう
 このため4年に1度、頭蓋骨を開いて内部の骨を削る手術を8歳の時からしているそうです
 この手術はかなり辛くて
 「毎回、2度とやりたくないと思う」らしい

 この病気を研究している
 ハーマン・ハメルズマ博士によると
 この病気の患者さんは、
 「スクレロスチン」
 というメッセージ物質が欠如していることが分かってきたのだそう

 この物質は骨の量を調節するそうで
 この患者さんのようにスクレロスチンが全く出ない人は、
 骨が増えすぎてしまう
 一方、先程の骨が弱いアスリートの場合は、この物質が多すぎると考えられるらしい

 「コントロール物質が見つかったのは画期的なこと」と博士は話していました

○骨を調節するメカニズム
 山中氏の解説によれば
 「骨は3年~5年で入れ替わる」
 骨は固そうですが、破壊と再生を繰り返しているのだそうです。

 この理由としては
 ・骨は毎日衝撃がかかるので、疲労骨折しないよう常に作り直している
 ・骨はカルシウム貯蔵庫でもあるので、血液へのカルシウム補給のため分解される

 骨の破壊と再生には2つの細胞、
 「破骨細胞」と
 「骨芽細胞」が関わっているそうです

 骨を作れ、というメッセージ物質がくると骨芽細胞が骨を作る
 一方スクレロスチンは骨芽細胞の働きを止める

 これはなぜかというと、
 あまり骨ができても重たくなりエネルギー的に非効率なので、
 必要以上に作らないようにしているらしい
 山中氏は
 「人体は良くできています、無駄な所が何一つない」

 この様子をCGで再現していました
 骨の中を良く見ると、
 カルシウムの柱があり、柱の間で血管が絡み合っている

 柱の表面にはアメーバみたいなのが這っていて、
 これが破骨細胞らしい
 破骨細胞は骨にくっついて骨を壊し、カルシウムを血液に放出する

 一方骨芽細胞は両端に2つのとげが出ている感じの細胞?
 骨を増やそうというメッセージ物質を受けると、自分自身で丸い細胞を分裂して増え、
 増えた細胞が骨の穴に集まってドロドロした液体状のものを出し、骨を増やすそうです
 セメント固める感じです。

 このとき、スクレロスチンが
 「骨を作るのを止めよう」というと
 この集まっていた骨芽細胞が消えるんだそうです

 このように破壊と造骨を繰り返す建設現場になっている

 また、骨のカルシウムの柱のなかには骨細胞、というものが別に存在している
 これは楕円のものからたくさんの糸のようなものがのびたような形で、直径0.02ミリという小さいものなんだそう
 この細胞は数億個もあり
 メッセージ物質の量を調節している。
 いわば建設の現場監督の役割をしているのだそうです

 骨を作るメッセージ物質が増えれば骨芽細胞が増え、
 この骨芽細胞から記憶力、免疫力、筋力、精力アップ、などの若返りのメッセージ物質が出され、
 血液を介して全身に流れる

 山中氏によれば
 骨からのメッセージ物質は、骨折など骨が壊れると弱まるようで
 「私の母が、2年くらい前までは元気だったのに
  大腿骨を骨折してからスイッチを押したように弱くなった。
  高齢者も骨折をきっかけに、認知症が一気に進むと最近では考えられています」

 上田さんは
 「骨折が多い人はどうしたらいいんでしょうか」
 山中氏は
 「打つ手はあります」

 最近は対策法も研究されているようです。
 というわけで先程のアスリートの再登場です

○骨を増やすには、骨に衝撃がかかる運動をすることが必要
 ミズーリ大学のパメラ・ヒントン氏は骨量と運動との関係を研究しているそうですが、
 骨に伝わる衝撃を関知すると、
 骨の量を増やす指令が骨から出るのではないか、と話していました

 彼女によると、冒頭のサイクリング選手コールドウェルさんが骨が弱くなった原因は
 「おそらく幼少から自転車をしていたことが1つの原因」なんだそう

 コールドウェルさんは、
 7歳くらいのときから自転車一筋で、
 余分な筋肉で体が重くならないように他の運動をしなかったそうです

 しかしヒントン氏によれば
 「重要なのは骨への衝撃を与える運動で、
  自転車をこいでも骨にかかる衝撃は弱く、座っているのとあまり変わらない」
 つまり運動にはなるけど
 骨への刺激にはならないらしい

 彼女は運動習慣が骨量に影響するかを調べたそうですが
 20~50歳の男性で、
 健康を保つために週6時間以上ランニングする人では、骨量が低い人は19%
 しかし同じ時間自転車する人では、骨量が低い人は63%に上がるそうです
 (ただし
 「全く運動していない人に比べれば、自転車する方が骨量が多いだろう」とのことですが)

 そして、彼女の研究では、
 骨量の低い人19人に、
 ジャンプなど骨に衝撃を与える運動を1日30分、週3回を1年間続けてもらうと
 18人、つまりほぼすべての人が骨量が増え、
 スクレロスチンが減少したそうです

 彼女によれば、
 「骨に衝撃がかかると、骨細胞がそれを関知すると考えられる。
  いわば骨細胞が衝撃のセンサーとなり、骨芽細胞を増やす」

 骨細胞は糸のようなものがのびているが、
 その糸のようなものでたくさんの骨細胞はネットワークを作っている
 このネットワークにより衝撃を関知しているのだそうです

 骨の衝撃を関知すると、
 骨細胞は
 「骨を作るのを止めよう」というブレーキ役の物質を減らし
 「骨を作ろう」というアクセル役のメッセージ物質を増やして骨芽細胞を増やす
 骨芽細胞は若く保つメッセージ物質を出し、全身に送り出す

 これは進化論的に考えると、
 ・骨に受ける衝撃の有無で、活動的に動く個体かどうかを判別する
 ・そして活動的な個体を有利に生き残らせるよう、若返り物質を全身に送る
  逆にあんまり動かない個体は若返りは必要ないと判断される、

 …ということらしい
 若返り物質がもたらす筋力、記憶力は狩りをするために必要だし
 精力は子孫を残すため必要
 免疫力は生き延びるために必要
 つまり「活動的な個体」により多くの資源が行くようになっているわけです
 「骨細胞は、若さを保つかどうかを判断する門番」なんだそう

 藤井さんは
 「もう今すぐにでもジャンプしたいです」(笑)
 タモリさん
 「車輪が三角の自転車にのったら?」(笑)
 めちゃんこ効果ありそう、だけどお尻痛そう(笑)

 「自転車が悪者扱いされていますけど」
 という質問に山中氏は
 「自転車も決して悪いわけではない、
  メタボ予防とか心肺機能アップはできる、
  ただ骨にはあまり刺激にならないんですね」

 上田さんは
 「僕、骨折したときお医者さんに日光を浴びて歩いて下さいと言われました。
  だから歩くようにしていたら少しずつ増えてますよ。
  今は50代くらいに戻ったと言われています」
 山中氏も
 「歩くのはとても良いです、
  階段の登り降りも非常に良い、降りるだけでもだいぶ効果あります」
 ただ高齢者など膝が悪い人は無理せずに、とのこと
 水中ウォーキング、ヨガ、ストレッチもやらないよりは効果あるそうです

 また高齢者は特に、
 寝たきりになると一気に老化が進むので、
 骨折しても1日でも早く手術して起き上がるようにすること、だそうです

 タモリさん
 「ブラタモリやってる間は大丈夫そうだね」(笑)
 ジョギングとかウォーキングなどの運動を続けるのが若返りの秘訣、なようです
 座ったままの生活はダメだね。

 アスリートの方も毎日骨に衝撃を与える運動を少しずつしており、
 その結果骨量が上がっているそうです

 彼は
 「病気を経験して、
  人生は必ずしも前に進み続ける必要はないと思うようになりました。
  骨と同じように、人生もいつでも立ち直れるんです。
  何かを失っても、また取り戻すチャンスはあると信じています」と話していました

 また、南アフリカの硬結性骨化症の男性は
 今は分子生物学を勉強し、
 スクレロスチンの研究をする製薬会社で働いているそうです
 骨粗しょう症などの骨が脆くなる難病を治したい、
 それができれば自分の辛い経験も報われる、
 科学の限界を押し広げて骨のパワーを解明したい、
 人生を意味あるものにしたい
 と話していました

・骨のアクセル役の物質は名前が出ていなかったので、
一応何かを調べましたが
シグナル伝達によりたくさんの物質がカスケード式に関係しているようで複雑でした…というわけで割愛。
CGはかなり分かりやすかったです。
おそらく前回のシリーズと同じく、
主役でない細胞(破骨細胞とか)も顕微鏡写真から忠実に再現しているんだろうな。
その丹念なやり方には頭が下がりますね~

・走る、歩く、活動することが若さを保つ秘訣なのだと分かりました。
座ったままってのは恐いのね。

・骨が多すぎても少なすぎてもかなり大変なんですね。
病気になってしまった方々が取材されていましたが
みんなすごく前向きなのが逆に元気付けられました。
辛さをそれを次に役立てよう、
それで自分の辛さが報われる。
本題とはズレるけど、
自分が辛いことがあってもこんな生き方をしたいと思いました

次回は腸内フローラとアレルギーとの関係について。
BSで見た「シリーズ医療革命」とかぶってるんかなと思いつつCGに期待して見てみたいと思います。





posted by Amago at 20:47| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする