2017年12月26日

NHKBS1スペシャル「いのち爆買い~米中・過熱する不妊ビジネス~」

NHKBS1スペシャル「いのち爆買い~米中・過熱する不妊ビジネス~」

先週やってた番組です。
クリスマス前はなんとなく見る気がわかず、後から見ました。

代理出産ビジネスの話だったんですけど、
その割り切りぶりにはちょっとびっくりでした。
アメリカも中国も合理主義的すぎるというか、
こういう考えの人もいるんだなー…と思うしかないというか…。

内容としては
○不妊ビジネスのシステム
○代理母の生活
○中国人経営者の話
○相次ぐトラブル
○今後のビジネス
日本には関係ないんかなぁと思っていたら
最後に日本の話も出てきました

○不妊ビジネスのシステム
 最初は不妊ビジネスの概要について。

 最近、中国人夫婦が子供を希望し、
 アメリカの女性に代理出産を依頼するケースが増えているそうです。

 その理由は2016年に、中国の一人っ子政策が廃止されたこと。
 このため2人目を希望するも、
 既に40代で自分が産むにはリスクがある…
 という人たちの需要があるのだそうだ。
 1回につき2000万円前後かかるので、
 ほとんどがお金に余裕のある富裕層だそうだ

 以前はインドやタイでも代理出産は行われていたが
 今はそれらの国では代理出産が禁止されているので
 希望者がアメリカに押し寄せているんだそうです

 なかでもカリフォルニア州は代理出産の聖地とされ、
 200ある企業のうち半分がこの州にあるんだそうです

 その1つ、オメガファミリーグローバル、
 という企業を取材していました

 CEOの方によれば
 顧客の9割が中国人夫婦で、
 ここ1年では4倍に増えている
 代理母の数が追い付かず、
 1日100件の問い合わせに対し、20件ほどしか対応できない、とのことです

 実際どんなビジネスをするかというと、
 代理母コーディネーターを交え、代理母候補と子供を望む夫婦のマッチングをする

 最初のマッチングの様子を取材していましたが
 実際はパソコンを通じて、
 中国人夫婦、代理母候補、代理母コーディネーター、通訳の4人で
 テレビ会議のような状態で条件を話し合っていました。

 ここで話し合っていた代理母の方は30代、
 夫と2人の子供で暮らしている
 「夫は代理母出産についてどう思っているか」の質問には
 「最初は驚いていたが、協力すると言ってくれている」

 一方希望する中国人夫婦は、40代で2人目の子を希望
 血糖値が高いのと高齢のため、
 自分での出産にはリスクがあるのだそう

 そのあと夫婦は
 代理母候補の女性に、タバコを吸うか、お酒を飲むか、食生活はどうかと詳しく質問していました
 高い報酬を払う分、注文をつける人も多いらしい

 またこの中国人夫婦は
 「受精卵を2つ移植してもらいたいのですが」
 とも希望していました

 体外受精では、成功の確率を少しでも高めるため、
 2つ同時に移植を希望する人も少なくないらしい
 しかしそうなると早産や流産のリスクも高くなる
 これがもとで揉めることが多いのだそうです
 代理母候補の方は
 「最初はいいと思っていましたが、
  医師の説明を聞くとリスクが高いと分かりました、
  1つずつでお願いします」
 また、障害児の場合は中絶する、という条件にも彼女は同意していました。

 このケースではこうして契約は成立していました

○代理母の生活
 オメガの方によれば、
 代理母の報酬は400万~600万。
 中国人夫婦は、代理母には白人かヒスパニック希望が多いらしい
 アフリカ系の方は肌の色が移りそう、というイメージがあって敬遠されるらしい
 (ほんとにイメージの問題で、生物学的にはあり得ないが)

 代理母には、生活のためなどで応募する人も少なくない
 毎年9000人ほどいるそうですが
 そのなかで今年は120人に絞りこんだそうです

 希望者には健康状態のほか、
 私立探偵を雇い、犯罪歴がないかなども調べているらしい
 以前調べたら過去6回売春婦をしていた人もいたそうで
 そんな人は不採用にするそうだ

 この会社は無事妊娠した代理母の人たちに対しても、
 定期的に集まりを開いているそうです

 コーディネーターは自身も代理母を経験している人なので
 代理母の不安を聞いて体験に基づく助言をしている
 ある代理母は
 「自分の子を奪われる気持ちになるのかしら」
 と聞いていましたが
 代理母の方は
 「自分の子じゃないわ、生物学的にはあり得ない」
 「私は世話役だ、自分は贈り物をしているんだと考えることよ」
 とアドバイス。
 代理母の方は
 「そうね、仕事だもんね」
 と納得していました。

 番組では代理母希望の方も取材していました
 この方はターニャさん、名前からして中南米系の方かな?
 この方は中国人夫婦の受精卵を移植したばかりで、
 妊娠しているか確認するところでした

 彼女は息子と夫の3人暮らし、
 しかし夫とはあんまりうまくいっていない
 夫が定職につかず、家にお金をいれないのでしょっちゅう喧嘩になる
 彼女は自分が暴力的な家庭に育ったので、息子には穏やかな環境で育ってほしいらしい
 このときも飼い犬に夫がピザを食べさせたとかで喧嘩になっていました

 彼女は子供とこの家を出て新しい家を建てたいそうで
 その頭金にと代理母を希望したそうです

 しかし代理母になるのも大変なようで
 例えば食事にも依頼主から希望があり
 最初はオーガニック食材を食べてくれと言われたそうです
 しかしそうなると食費がバカにならない
 (普段の倍以上かかるんだそう)
 フルーツと野菜を多目に食べることで納得してもらったらしい

 彼女は営業の仕事をしているが
 病院に通うために休みも取らねばならない
 また、2か月前にも移植にチャレンジしたが失敗しているため、
 仕事をセーブし、ホルモン剤も増やして生活を切り詰めて来たそうです

 病院では血液検査をして、妊娠の有無を調べる
 このときのhCG、というホルモンの値は1.2
 (hCGはヒト絨毛(じゅうもう)性ゴナドトロピン、という
  胎盤から分泌されるホルモンで、妊娠すると尿中に排泄される
  これは市販の妊娠検査薬にも指標として使われているみたいです)
 妊娠していたら20以上はあるので、
 今回もダメだったと医師に告げられていました
 次のサイクルでチャレンジするそうです

 彼女はその結果をすぐにコーディネーターにメールで送る
 コーディネーターは依頼主に報告し、
 次も彼女に代理母を頼むか判断してもらう

 この依頼主夫婦が作った受精卵は3つ
 今回までに一千万円近く使っており
 次にチャレンジするなら更に120万円の追加費用が必要になる

 ターニャさんは
 「私も悲しいけど、
  でも中国人の奥さんはもっと悲しいだろう、
  申し訳ない気持ちでいっぱい、
  2回も失敗した私にはもう依頼してくれないかも」
 と不安になっていました

 しかし10日後に連絡が来て、
 次も彼女でお願いしますと言われたそうです
 また新しい人を探すのも手間やリスクがあるんでしょうかね。

 コーディネーターの方は自分の体験談から
 「私も最初はうまくいかなかったわ、
  生活を見直してなるべく動かないようにした」
 などと話す
 ターニャさんも
 「何を食べたら妊娠しやすいか、ネットで調べている」
 と話していました

 うーん、これもなかなか難しいですよね。
 自然妊娠でもうまくいかないときはうまくいかないし。
 体を冷やさないように、とかいうのは聞きますけど…

○中国人経営者の話
 一方RSMCという中国人女性が経営する不妊治療会社
 アメリカのサンディエゴにある会社ですが、
 中国5都市にも支部を持ち、今急成長しているそうです
 創立してから3年ですが、なんと年商45億!
 毎日30組程度が渡米し、
 顧客のほとんどは年収3000万円の以上の富裕層だそうです
 (一応ホームページを見てみましたが、
  中国の連絡先は上海だけでした。
  アメリカには5つの系列会社があるそうです)

 しかもこの会社は男女の産み分けもできる
 顧客の8割~9割は産み分け希望だそうです

 というのは中国は一人っ子政策だったので
 2人目に違う性別を希望する人が多いらしい
 担当医師は
 「産み分けはほぼ100%成功する、素晴らしい時代だ」
 と話していました。
 (同じ性別の兄弟もいいんですけどねぇ…)

 この会社を経営する李さんという40歳の女性は
 以前はアメリカの投資会社の中国支社に勤めていたそうです
 しかし4年前、アメリカ人の夫移住し、この会社を始めた

 バリバリの中国人経営者、という感じで
 スタッフが
 「代理母を増やさねばならないが、担当の医師が大変…」
 と話していましたが
 「彼なら24時間働くわ」
 と平然と言っていました。

 (中国人って男女関係なくできる人は出世する、
  その代わり仕事の結果についてはとてもシビア、
  悪く言えばお金儲かるなら何でもやる、というイメージがあったんですけど
  まさにそんな感じでした)

 彼女は今3億の大豪邸に住んでいて
 他にも2軒、
 海が好きな夫のために、海沿いの家と、ハワイにももう1つ家があるんだそうだ
 体外受精で授かった娘さんが1人いて、
 代理出産でもう2人、男の子と女の子1人ずつ子供がほしいと言っていました
 「そうなれば私の家族の理想像が完成するわ」

 彼女は将来的にこの業界でトップになることを狙っていて、目指すはトヨタだそう
 「鉄屑でできた車より、一流企業が作った車が欲しいでしょう?そんな立場になりたい」
 
 (ご自分も代理出産、てのはさすがだなと思ってしまいました。
  個人的には子供は授かりものだと思っているので、
  ここまできちきち人生設計する、てのは賛同しがたいが、
  まあそれは彼女の人生だということで…
  しかしながら、車と子供を同じ生産物とするような表現はさすがにどうかと思いました)

○相次ぐトラブル
 ただしこのビジネス、やはり負の面もあるそうです

 オレゴン州のアリソンさん、という女性は
 代理出産で辛い思いをしたそうです

 彼女は40歳ですが2人の娘、孫もいるシングルマザー
 生活費を稼ぐため代理出産をしたのだそう

 彼女の場合は
 自分にはアメリカ人のエージェント、
 依頼主の中国人夫婦に中国人のエージェントがついていて
 4者での交渉で契約をしていた

 アメリカのエージェントによると
 「中国人側は耳聞こえの良いことばかり言ってきた」らしい
 代理母を大切にする、出産後も赤ちゃんの写真を送る、など
 そして、受精卵2つの移植を希望した

 幸運にもアリソンさんは双子を授かったそうですが
 しかし双子のためか負担があったようで
 24週目に出血があり、25週目(7ヶ月)で早産したそうです

 医師は障害は残るかもしれないが延命治療したら助かる、
 と言ったそうですが、
 中国人夫婦は延命治療を拒否

 何かあったときの治療方針は中国人側が決める、
 という契約になっていたので
 医師は延命治療を続けられず、
 双子の男の子たちはアリソンさんの胸の中で息を引き取った

 アリソンさんは今でも赤ちゃんの泣き声が頭から離れないそうです

 更に中国人夫婦は
 「亡くなった双子は産業廃棄物として処理してくれてもいい」
 とも言っていたそうですが
 そんなことできるわけがない
 アリソンさんは抵抗し、自費で葬儀を行ったそうです

 しかも出産時のトラブルで余分の医療費がかかり
 中国人夫婦はそのぶんも支払った、と言っていたが
 中国人エージェントは「もらってない」と言い張っていた
 アメリカ人エージェントは
 「たぶん出産時のゴタゴタに巻き込まれた手間賃として、自分の懐にいれたのだろう」
 と話していました

 しかもアリソンさんは妊娠中は仕事ができず、
 また出産時のダメージで直ぐに仕事にも復帰できず
 家賃を払えずに追い出されそうになり
 それも辛かったそうです
 しかし、アリソンさんは訴えて裁判をする費用も無く、泣き寝入りするしかない

 この問題について取り組む弁護士のアンドリュー・ボルチマー氏は
 「中国人は28週より前に産まれた子は拒否することが多い」
 と話していました
 これは価値観の差だろう、と。

 米中には生命倫理観の違い、言葉の壁がある
 特に早産は障害が残り、生涯にわたり治療費がかかることが多いので、
 問題になることが多いらしい

 アンドリューさんはエージェントにもライセンス制度を導入すべき、と考えており
 州議会にも働きかけているそうです
 もはやこのビジネスは、個人の管理に任せられないまでに大きくなっている、
 と話していました

○今後のビジネス
 オメガ社では、コーディネーターによる代理母のケアを心がけているそうです
 15年間コーディネーターをしている方は
 「欲望がこの産業を支配している。
  企業は代理母と夫婦をマッチングさせたら
  あとは代理母はほったらかし、というケースが多い
  でも代理母をサポートしてあげないと、
  彼女たちは自分の子なのか他人の子なのか分からなくなってしまう」
 と話していました

 彼女は自分も4回代理母になり、
 一方で代理母がビジネスの食い物にされてきたのも目の当たりにされてきたそうで
 親身になってサポートしている姿が印象的でした

 彼女は自分が担当している代理母の出産には必ず立ち会い、励ましているそうです
 この日も代理母の出産があり、
 受精卵提供者の40代夫婦も渡米して立ち会っていました

 かわいい女の子が無事出産され
 それまで子供が授かれなかった中国人夫婦は
 「長い間の夢がかなった、皆さんのおかげです」
 と本当に嬉しそう。

 出産した方も
 「安心したわ、彼らが幸せそうなのが嬉しい」
 また代理母をやりたいかと聞かれて、
 「やりたい」と答えていました

 一方、RSMCの李さんは新しいビジネスを考えているそうです
 それは卵子の売買
 中国人の間ではアジア系の女性の卵子も人気だそうで
 特に容姿のいい人の卵子などは高値がつくのだそう
 今までで最高クラスの額は1万9千ドル、210万円だそう

 またIQが高い人の卵子しかないそうで
 メンサテストでIQ125以上、
 世界の上位4%の人たちなんだそうです

 卵子提供者の審査も厳格に行っているそうですが
 最も人気が高いのは日本人のものなんだそうです。

 他の国だと嘘をつく人も多いが
 日本人は詐称がゼロなんだそう
 「性格もいいしかわいい子が多いわね」
 今まででで最高は4万ドル、450万円で
 5、6回売れたから家でも買ってるかも、
 と話していました

 日本人の卵子も売買に出されているこんにち、
 これでいいのかという思いをぬぐえませんでした…

〇感想など
・アリソンさんのケースはかなり心にグサッと来ました。
 
 中国人の倫理観はよくわかりませんが、
 障害の残りそうな子供を「要らない」と言ったり
 延命治療を拒否するのは、
 単に自分が直接それを見てないからではないかという気もしました。

 なんだろう、お腹を痛めた感覚とか
 赤ちゃんが泣いて生きたがっている様子とか
 それは遠い中国からは全然分からないんじゃないかな。
 だからモノみたいな扱いになるんじゃないかと思います。
 
 場所が遠いから無理かもしれませんが、
 せめて依頼主、エージェントも、出産くらいは
 立ち会うことを義務付けた方がいいような気がします。
 もし赤ちゃんに障害があったとして、
 赤ちゃんの延命治療を拒否するにしても、
 遠い中国で自分は産む痛みを味わうこともなく、お金を払えば済むんでしょ、ってのはなんか違う気がする。
 その決断の重さを知らないまま、判断しているような気がしてならない。

・自分だったらどうかなぁ、とも考えてしまいました。
 代理母で産まれた子供はどう思うのかな、と心配してしまうのですよね…

 また、私は自分が産んだから分かるけど、
 お腹の中で動いたりしているときから子供だな~と感じるので、
 産んだ人も思いいれがどうしても入ってしまいそう。
 産んだ人にとっても別れが辛そうだと思ってしまいます。

 まあでも、アメリカ人、中国人はそこは割り切るんだろうか。

 昔中国人について書かれた本を読んだんですけど、
 中国人は両親が出稼ぎして祖父母に預ける、ってのも当たり前だし
 離婚したら夫側が子供を引き取るのも当たり前で、
 あんまり血縁にこだわらない、とあった記憶があります。
 その代わり誰の子に対してもみんな優しい、というところもあるそうです。

 それからかなり個人主義で自分を大事にする人たちなので、
 子供が入院していても、観たいテレビがあれば、それ終わるまで見舞いにもいかないとか…
 日本人から見たら自己中にも見えるんだそうだ。
 
 だから自分が誰のお腹から生まれても、
 誰が育ててくれたとしても、あんまり気にしないのかも?

・最後に出てきた卵子ビジネスは、以前デザイナーベビーについてのドキュメンタリーでも紹介されており
 精子の売買もされていると聞いたような気がします
 ただ卵子も採取するとき、薬飲んだり通院したりで、提供者の体にも負担になると聞いたことがありますので
 お金になるからと言うだけで安易に人を集めるのではなく
 リスクや負担などもきちんと説明してほしいなぁとは思います。

・しかしこの番組を見ていて一番気になったのは
 卵子や受精卵、産まれた子供などがモノ扱いされていることです。
 オメガのコーディネーターの方はそうでもないけど
 RSMCの方とか中国人エージェントとか…

 もちろん世の中には代理母とか体外受精がどうしても必要な人もいるとは思う。
 子供がどうしても欲しくて、それでも授からなくて、
 あるいは産めない体質の方もいるとは思います。
 そして、自分たちの血の繋がった子供が欲しい、
 と悩んで悩んで、
 代理母出産を選ぶ人もいるのかもしれないとは思います。

 しかし、単にお金さえ積めば子供ができるんでしょ、
 みたいな感覚で頼んで欲しくはないなと思ってしまいます。

 というのはやっぱり出産とか子供ってのは工業製品ではない、と思うので…

 いくら技術が進んだ現代でも
 子供ってのは授かり物で、妊娠とか出産てのは命がけで、
 (私も産むときはそれなりに覚悟しました)
 思い通りに妊娠できなかったり、
 障害が残るリスクだって誰にでもあるわけで。

 でもそこも含めて人間の営みや人生ってそういうもので、
 想定外があるから後で喜びになったりもするわけで…

 そこを障害があるかもしれないから廃棄物として捨ててくれとか
 容姿が良くてIQが高い卵子だけ選ぶというのは
 命の選別にもなってしまう気がする。

 最後のオメガのケースで
 やっと子供が授かって喜んでいる中国人夫婦とか
 産んで良かったと思う代理母のケースは救われる気がしましたが、
 このケースで早産とか出産時に事故とかになっていたらどうなるんだろうとかも考えてしまいました。
 (あのコーディネーターさんなら適切に対応してくださる気もしますが)

 個人的には、あんまり生殖に関しては人間がコントロールしない方がいいんじゃないかなと思います。
 あんまり進めると迷うことが増えてしまいそうで、逆に人間のためにならない気がする。
 どんな産まれ方にせよ、
 子供に対する愛情や、
 産まれてくる命への敬意を忘れて欲しくないなと思いました。

というわけで今回はこの辺で。
posted by Amago at 14:19| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年12月18日

シリーズ医療革命「認知症を食い止めろ!ここまで来た世界の最前線」「ついに分かった認知症予防への道」

NHKBSシリーズ医療革命「認知症を食い止めろ!ここまで来た世界の最前線」「ついに分かった認知症予防への道」

 先週やってた番組です。
 しかも前者は2014年、後者は2015年の番組なので今さら感はありますが、
 備忘録的に書いてみます。
 認知症を防ぐためにどんな生活をすべきかについては、
 色んな所で聞くのでそんなに新鮮味は無かったんですけど
 それを個人が積極的に取り組めるように国や自治体がどうすべきか、という話は面白かったです。

 さて内容としては、認知症、というか、
 認知症の7割を占めるとされるアルツハイマー症の話でした。

 アルツハイマー症は、
 アミロイドβ、という老廃物が脳に貯まるのが原因で、
 発症の25年前から既に進行が始まっているそうです。

 しかしアミロイドβがたまっても、
 発症を遅らせることができれば
 発症せずに天命を全うできるかもしれない…
 というわけで、早期予防、発見、進行を食い止めるための方法が紹介されています。

 前半の番組は発症した人の進行を遅らせる取り組み、
 後半の番組は発症前、MCI、予備軍と呼ばれる段階での防止、
 についてが主な話でした。

○投薬による進行予防
 まずは薬の話。
 個人的には、認知症の薬って医薬業界の利権が絡んでそうであんまり好きではないのだが
 (イメージです、スミマセン)

 近年では、別の病気の治療薬がアルツハイマー型認知症の発症を遅らせる、
 という研究があるそうで、
 単純にアカデミック的にへぇ~と思ったので書いておきます

 ・シロスタゾール(脳梗塞の薬)
  脳出血の薬がアルツハイマー症の進行を遅らせる、という研究があるそうです。

  メカニズムとしては
  アルツハイマーの原因はアミロイドβが脳内にたまることだが、
  詳しく調べるとアミロイドβは血管の壁にたまっている
  国立循環器センターのマウスを使った研究によれば、
  シロスタゾールは血管の筋肉を動かす
  すると、ポンプのように壁にたまったアミロイドβが血中に押し出され
  血管の壁にたまったアミロイドβが減少するのだそうだ

  また、認知症の方は、発症前から脳の微小血管で少しずつ出血しているそうです
  これがつもり積もると神経細胞に栄養や酸素が行き届かず死んでしまう
  シロスタゾールはこの微小出血を防ぐ、とも考えられているそうです

 ・インスリン(糖尿病の治療薬)
  アメリカのワシントン大学の研究によると、
  認知症では脳内が糖尿病状態になるようです
  血管から細胞へ糖がうまく取り込まれない箇所がどんどん広がっていき、
  細胞が栄養不足になっていく、
  このため細胞が死んでいくらしい

  また、九州大学の研究では、
  アルツハイマーの方は、
  インスリンの働きを良くする遺伝子の働きが弱く
  インスリンの働きを抑える遺伝子の働きが強い、
  つまり全体的にインスリン抑制的だという結果もあるらしい

  そこでアメリカのウェイクフォレスト大学では、
  104人を対象にしたインスリンを鼻から吸入させる研究で
  インスリンありの方が認知機能の低下が抑えられた、という結果があるそうです
  血液中だと、脳の血管に入るまでバリアがあるのでインスリンが通れないが
  鼻からなら神経細胞を通してインスリンが脳に入るそう
  
 ・てんかんの治療薬
  アメリカのジョン・ホプキンズ大学では、
  てんかんの治療薬により認知症予備軍の記憶力が回復した、
  という研究結果があるそうです

 いずれも既に使われている薬なので
 認知症にも効くと分かれば、
 認可がおりやすい利点があるそうです

 私は昔、
 認知症は薬で治らない、発症を遅らせるだけだと聞いて
 それなら飲む意味ないじゃんと思っていましたが、
 自分が年寄りになったらと考えると、
 認知症の場合、寿命が尽きるまでに薬で発症を遅らせられたらそれでもいいんかな、
 という気もしてきました

 ただ、認知症はアルツハイマーだけではない(ほかにも種類がある)ので、
 診断を間違えて薬で認知症が悪化する例もある、と本で読んだことがあるので
 正しく投与して欲しいなぁとは思いますね…

○発症してからの接し方
 これは前半の番組で最も印象に残ったんですが
 認知症の方は徘徊とか暴力など困った行為をしたりするが、
 周りの接し方により改善は可能なのだそうです。

 ・フランスのエマニチュード
  これはフランスのイヴ・ジネストさんという方が提唱している認知症ケアの方法だそうで
  「その人がどんな状態でもあなたは人間ですよ、と伝えること」
  がその哲学なんだそうです

  具体的には
  ・見つめる
  ・話しかける
  ・触れる
  ・寝たきりにしない

  …が行動の基本。
  ・見つめる
   目線の高さを合わせ、真正面からその人を見つめて話しかける。

   目線の高いところから話しかけると、恐怖を感じてしまう
   また認知症の方は、視界の中心にいる人しか認識できていない可能性があるので
   視界の入るところにいてあげるといいそうです

  ・話しかける
   黙ってケアされると不安になるそうです
   認知症の方は、今何をされているのか忘れてしまうので
   実況中継のように説明しながら接してあげるといいそうです

  ・触れる
   手首をつかむと恐怖心を感じるので、
   その人の力を生かすよう、支えてあげるといいそうです
   (実際に介護に関わる方は、ついつかんでしまうそうで、
    やってみると意外と難しいと話していました)

  ・寝たきりにしない
   ジネストさんは来日して、病院の患者さんなどとも接していましたが
   事故のあと寝たきりになった、というかたでも
   主治医の許可を得た上で、その人を支えつつも自分の足で歩かせる、
   ということをしていました

   2年間歩いていなかった、という人も支えがありながら歩いていました

 ・やさしく触れるケア
  シアトル大の研究によれば、アルツハイマー症の方はストレスホルモンが普通の人より多い、
  という結果があるそうです
  普通はストレスホルモンのブレーキ役となる別のホルモンが分泌されるが
  アルツハイマーの方はそれが弱くなっているらしい

  アズサパシフィック大学の研究では、
  やさしく触れるケアをするとこのストレスホルモンが減った、という研究があるらしい

  また、浜松医科大学の研究では
  本人の許可を得た上で、
  週5回、手を握る、背中をさするなどの触れるケアをすることを6週間続けたところ、
  7割の人で攻撃的な行為や徘徊が減った、という結果があるそうです

 認知症の人は、顔の認識が難しくなっても、
 感情を認識する機能は残っているんだそうです。
 また、認知症の人は色んな認知能力が落ちているので、余計に不安を感じやすい。
 暴力や怒りは不安の現れなので、そこを汲み取って
 分かりやすい説明、優しい態度で接してあげるのがいいみたいです。

○MCI(認知症予備軍)とは
 後半では、MCIについてが主な話でした。
 MCIとは軽度認知障害のことで、
 自立した生活には支障がないものの、認知機能の衰えが出ている状態。

 ミシガン大学の研究によれば
 MCIのまま放置すると5割は認知症に進むが、
 4割は現状維持、1割は普通に戻る
 つまりMCIの段階で対応すれば、認知症になるのを食い止めるのも可能なんだそうです

○MCIになっているかチェックリスト
 ではMCIだと気付くにはどうすればいいか?
 アルバート・アインシュタイン医科大学の方によれば、MCIの1つの指標としては
 「歩き方が遅くなる」
 というのがあるそうです
 この大学の27か国2万7千人を対象にした調査では、
 歩く速さが基準より遅い人は認知症のリスクが1.5倍になる、という結果だったのだとか

 普通我々は何か行動するとき、
 脳では色んな部位が活発になり、
 それらがネットワークを作って活動しているそうですが、
 ヘルスサイエンスセンター島根の研究によれば、
 MCI、認知症の方はこのネットワークがどんどん弱くなっていくのだそうです

 歩くときでも、
 視覚で空間を認識したり、バランスを取ったり、足を適切に動かすなど
 脳は忙しく働いている
 しかしMCIになると、これがスムーズにいかなくなるらしい

 目安としては、
 「秒速80センチメートル(時速2.9㎞)」
  歩いていて他人に追い抜かれる、
  信号が赤になるまで渡りきれない、
 などが目安なんだそう。

 その他、MCIや認知症の方は、
 2つの動作を同時進行にしにくくなるそうで
 考え事をしながら歩くとゆっくりになる、
 という人は要注意だそう

 他にはチェックポイントとして
 ・外出するのが面倒になった
 ・服装に気を使わなくなった
 ・同じことを何度も話す、と言われる、
 ・小銭の計算が面倒で、お札で払うことが増えた
 ・手の込んだ料理を作らなくなった
 ・味付けが変わった、と言われる
 ・車を擦ることが増えた
 これが3つ以上の人は専門機関へ行く方がいいそうです

○認知症を防ぐ生活習慣
 MCIの段階、あるいはもっと前の段階で予防するにはどうすればいいか?

 前半の内容でも後半の内容でも紹介されていましたが、
 普段からの生活が一番大事、なのだそう
 生活習慣病を防ぐ生活が認知症予防にもなるんだそうです

 例えば
 ・福岡県久山町の住民の追跡調査
  この町では住民の健康状態状態を20年以上追跡調査しているそうですが
  それによると
  糖尿病、高血糖、高血圧、肥満、喫煙
  などの人は認知症発症のリスクが上がり
  運動、減塩食、禁煙
  などの人はリスクが下がるらしい

 ・イギリスの生活習病予防
  イギリスのケンブリッジ大学の研究によれば、
  イギリスでは20年前よりも認知症になる人が減少しているそうです
  (特に80歳以上)

  イギリスでは20年前から国を挙げて脳卒中、心臓病の予防キャンペーンをしており、
  それらによる死亡率も4割減っている。
  ケンブリッジ大学の分析では、このおかげで認知症も減っているのでは、とのことです

 つまり生活習慣病を防ぐ生活をすればいいわけですが、
 具体的にはどんな生活をすればいいか?

 ・イリノイ大学の研究では
  MCIの人を対象に、
  1回1時間息がはずむ程度に速く歩くことを週3回、
  これを1年続けると脳のネットワークが回復した、
  という結果があるそうです

  これはVEGF、BDNFなど
  血管や神経を増殖させる因子を増やすため、と考えられているそうです

 また、
 ・フィンランドのカロリンスカ研究所の「フィンガー研究」では、
  MCIの人1260人が参加し
  健康的な生活スタイルを4年間続けて影響を調べたらしい
  その結果、参加者は平均25%認知機能が向上した、
  という結果があるそうです

  具体的に行った生活とは
  ・早歩き30分を週3回
  ・軽い筋力トレーニング
  ・肉、塩分を減らし、野菜や魚を増やす、油は植物性にする
  ・血圧管理を定期的にする
  ・記憶力アップのゲームを10分程度

  …などだそうです

 つまり適度な運動、バランスのよい食事、脳の訓練、定期的な健康管理などが良いらしいです。

○国、自治体を挙げた取り組み
 ・愛知県の高浜市
  では、MCIの段階で発見する取り組みを行ったそうです

  60歳以上の人を対象に、
  歩く速さや認知能力などの検診を受けてもらう

  さらに、検診を受けた人には活動計を配り、
  地域に設けたスポットでその活動計を機械にかざすと、平均歩行速度などを出してもらえる
  各スポットにはダンス教室や囲碁教室などが行われ、
  気軽に行きたくなるような工夫をしている
  こうして、継続的に運動をすることができる仕組みを作ったそうです

  ただし課題もあり、それは受診率23%という低さで、
  「認知症とレッテルを貼られたくない」
  「まだ大丈夫だから」
  と恥ずかしがって受けたがらない人が多いらしい
  このため国の健康長寿医療センターと話し合い、
  「認知症」ではなく「健康長寿を目指す」など
  言い方を変える工夫もしていくのだそうです

 認知症は早い段階で発見すれば防げる、という知識を広め、
 認知症への不必要な恐れを無くしていくことが課題のようです

 ・フィンランド
  一方フィンランドでは、2012から「認知症に優しいフィンランド」というスローガンを掲げ、
  認知症予防の政策を国が率先して行っているそうです

  例えば家族で参加できるオリエンテーリング
  参加者は自然の中を歩き回り、
  各チェックポイントでは認知症についてのクイズがある
  子供もどの世代も気軽に参加できるようになっている

  また、学校の保健体育の授業でも、脳を健康に保つための仕組みを学び、
  不必要な認知症への恐れを無くす取り組みを子供のうちから行っているそうです

 ・それから、先程挙げたイギリスの
  脳卒中や心臓病を減らす取り組み、
  というのもユニークでした
  国が経済的なインセンティブを付けています、例えば

  ・お医者さんにポイントをあげる
   お医者さんが生活習慣病予防を促すことをするとポイントがつき、
   それに応じて収入もあがる仕組みを作った
   例えばある年齢以上の人たちの血圧を5年以上記録して管理すればポイントがたまる、
   また高血圧の患者さんの45%以上の人が改善すればポイントがつき、
   改善した人の割合が増えるごとにポイントがアップする、など

   この結果、収入が15%アップした医者もいたそうです

  ・町中からタバコの自販機を撤去し、お店での店頭販売も禁止した

  ・食品ごとに塩分量の目標値を決めた
   このため、大手スーパー、食品メーカー、外食産業などがタッグを組んで
   減塩食品を作る動きが出たそうです

 フィンランドにしろイギリスにしろ、
 国の責任者が
 「社会として取り組めば、国の財政負担も減るし
  個人の人生もより良くなる、
  財政と国民を両方が幸せになる取り組みだ」
 というようなコメントをしていたのが印象的でした。

○感想など
・この番組では紹介されていなかったですが
 たしか睡眠不足もアルツハイマーには良くないと聞いたことがあります。
 (寝ている間に脳から老廃物が洗い流されるためだそうです)

 やはり食う、寝る、遊ぶと言いましょうか
 適度な運動、バランスの取れた食事、良質の睡眠がどの病気予防にもいいんですね。

・イギリス、フィンランドの国を挙げた取り組みはすごいなと思いました。
 イギリスの場合は、経済学的というか合理的というか、
 インセンティブを与えて進んで予防したくなるようにしているのが素晴らしい。

 それからフィンランドについては、教育から変えるなど、
 長期的な視野で制度を作っているのが素晴らしいなと思いました。

 何よりも、将来のために国民に負担を強いるのではなく
 国民にも財政にもウィンウィンなやり方を探る発想、がいいですね。

 日本も年金制度にしても税制にしても教育制度にしてもそうですが、
 もう少し科学的な視点を政策に取り入れたり、
 将来を見据えた気長な政策があってもいいんじゃないかなぁと思いました。

 というわけで今回はこの辺で。
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2017年12月04日

フランケンシュタインの誘惑「麻酔 欲望の医療革命」

フランケンシュタインの誘惑「麻酔 欲望の医療革命」

先週やってたんですけど、いろいろあってみるのが遅れた。
今回は麻酔の話でした。

麻酔っていうと、
昔「華岡青州の妻」というドラマをやっていたのをたまたま見たんですけど
(たしか有吉佐和子さんの小説が原作で、
青洲の奥さん役が和久井映見さんでした)

青州は世界で初めて麻酔薬(服薬)の開発を成功させた人で、
妻がその実験台になるも、薬の副作用で失明してしまった…
とか言う話を伝記かなんかで読んだことがありましたが、

ドラマでは、
この世紀の発明の裏には彼の奥さんと義母さんとの嫁姑争いがあり、
どちらが青州の実験台になるか足の引っ張りあいをしていた…
とかいう話になっていました。

華岡青州の奥さんって献身的なイメージがあったのに
こんなドロドロしてたんかぁ…
ってけっこう衝撃でした。
(でもドラマでは、和久井さん演じる奥さんは
 実はきれいで凛とした義母さんに憧れていて認められたくて…
 という複雑な心理があったとかいう描かれ方で
 ドラマとしては素晴らしかったですが)

 なので外国にもそういうドロドロがあったんかなぁ…とか思っていたんですが、
 見てみたら、金と名誉の争いの話でした。
 日本だと嫁姑だけど、アメリカは金と名誉、ってのがなんかお国柄ですね。

 現在、先進医療は高価なのは当たり前のように感じますけど、
 それは特許の存在があるから、なのだそうです。
 そして、この特許の概念を最初に医学に持ち込んだのが、
 今回出てくる科学者だった、とのことです。

 今回主に登場する科学者は
 歯科医のホレス・ウェルズとその弟子のウィリアム・モートン。

 ウェルズは、華岡青洲が服用の麻酔薬を発明してから40年後に
 今では主流の吸入による麻酔法を発明した方だそうです。
 (ちなみに今では、吸入麻酔と静脈麻酔が使われ、
  薬品もいろんなものが開発され
  鎮痛、筋肉の弛緩、鎮静など色んな役割を持つ薬物をミックスして行うのが主流みたいです
  http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/analg-anes.html
  (滋賀医科大学の麻酔についてのページ))
  
 ウェルズはその発明の名誉にこだわり、
 一方モートンはその発明で特許を取り、お金儲けをしようとし
 どちらも悲劇的な人生を過ごしたのだそうです…

というわけで内容から。
〇ホレス・ウェルズの経歴
 ウェルズは1815年、バーモント州の大地主の息子として生まれる
 21歳の時に、歯科医として開業したそうです

 彼は新しいものをどん欲に取り入れ、発明するのが好きな青年で
 義歯なども発明した
 しかもそれをほかの医師にも積極的に教えてあげていたそうです
 
 吸入麻酔法の歴史に詳しいジャーナリストによると
 「彼は正直で誠実で、そして野心家でもあった。
  彼は自分の名前を残すことにこだわっていた」
 誠実なのはいいけど、名前を残したかったんですね…
 
〇ウェルズの麻酔法の発明
 そんな彼が取り組んだのは、痛みに対する対処
 当時の医学界では麻酔法はなく、外科手術は地獄のような治療法だったそうです
 ひもで患者をベッドに縛り付け、
 メスで皮膚を切り、のこぎりで骨を切断する…

 痛みをなくすため、アヘンや酒を使ったり、
 血抜きで失神させる医者もいたそうです。
 あまりの痛さを悲観して、自殺してしまう患者もいたらしい
 たしかに拷問に近いですね…

 その当時、ウェルズはあるチラシに目を止める。
 それはその時流行していた「笑気ガス」の大実演会
 笑気ガスとは亜酸化窒素のことで
 これを吸うとハイになったり失神したりするが、
 当時はそれを見て楽しむショーがあったそうです

 彼はショーを見た時、ハイになった人たちが
 大けがをしても全然痛がっていないのに気が付いた
 そしてこれを治療に使うことを思いつく

 そして、革袋とチューブを組み合わせた簡単な吸入器を作り
 自分を実験台にして抜歯手術をしたそうです
 自ら亜酸化窒素を吸って仲間の歯科医に抜歯してもらう。
 全く痛みもなく、10人の患者に行っても痛がる人はいなかった

 彼はこの方法を、周りの医師たちに教えて回る
 麻酔法の歴史に詳しいジャーナリストの解説によると
 「彼は発明を誇りと思っていて、
  ほかの人も試してくれるのがうれしかった。
  とにかく、抜歯の痛みに苦しむ人たちを助けたかった」

〇ウェルズの失敗 
 そして彼は1845年、アメリカの医療先進地ボストンに行く
 この麻酔法をほかの医師にも広めようと、公開実験を行った

 この実験の時同伴したのがウィリアム・モートン
 彼はウェルズに歯の治療法を教わり、ボストンで開業していた

 ウェルズの実験は、ハーバード大学の学生や、名だたる医師たちの目の前で行われた
 しかし、これらの権威ある医師たちは、
 皆を悩ませてきた痛みを一介の医師が解決できるはずがない、と思っていて
 ウェルズを嘲笑した

 ウェルズはこれに動揺し、麻酔実験を失敗してしまう
 麻酔薬の亜酸化窒素がわずかに足りず、麻酔が効かなかった
 このため、ウェルズはさんざん詐欺師呼ばわりされる

 彼はこのときの苦痛がトラウマとなり、歯科医をやめてしまう

〇モートンの登場
 その後半年して、ウェルズのもとにモートンが訪れる
 借金を返すためだが、
 彼の真の目的は麻酔法を教えてもらうことだった
 これを商売に使おうともくろんでいたらしい

 ジャーナリストさんの解説によると
 「彼は、麻酔法がとてつもない利益を生み出すことに気づいていた。
  というのは、実はモートンは若いころ詐欺師だったんです」
 モートンは歯科医ではあったが、
 生まれながらのペテン師だったそうです

 モートンは13歳のとき、両親が事業に失敗して一家は破産してしまう
 彼は家計を支えるため酒場に働きに出たが
 店のお金を使い込み、店も町も追い出された
 そのあとは各地で借金を重ね、踏み倒す人生だったらしい

 しかしウェルズはそんなモートンの過去を知らないので、懇切丁寧に麻酔法を教える
 無痛抜歯の方法の実演もしたそうです

 モートンは、このウェルズの発明を自分のものにしようと、
 少しオリジナリティを加えることにする
 亜酸化窒素の代わりに、ジエチルエーテルを使うことを思いついた
 エーテルは、呼吸困難や吐き気を抑えることが当時すでに知られていたそうです
 また、吸入器も改良を加え、見栄えも良くする

〇モートンの公開手術
 そして1846年、モートンが公開手術を行う
 場所は当時医療の最先端だったマサチューセッツ総合病院

 彼はウェルズの二の舞にならないように、周到に用意をしていたそうです
 例えば、自分は麻酔だけをかけ、執刀は名高い外科医にしてもらった
 こうすれば失敗はないし、
 権威ある医師と共同で行えば信用度も増す
 また、吸入器はガラス製にして、
 中にスポンジに浸した薬品を入れる
 こうすれば見栄えもよく、被験者も確実に蒸気を吸い込める

 こうして公開手術は成功し、彼の名はアメリカ中に知れ渡ることになる
 ラテン語で無感覚を意味する麻酔(anaesthesia)はここから生まれたそうです
 
 医学界の歴史に詳しい歴史家は
 「麻酔法は、医療の歴史上最大の成功の一つ」と話していました。
 「有史以来、人々を悩ませていた痛みが、
  ついにコントロールできるようになった、
  まさに革命だ」

 一方麻酔法の歴史に詳しいジャーナリストさんは
 「誠実なウェルズがペテン師呼ばわりされて、
  本当のペテン師であるモートンが偉大な天才、と呼ばれたのは皮肉なことでした」
 と話していました

 実際、ウェルズはモートンの行いに怒りを隠さず
 「本当の発明者は私だ、
  名誉を与えられるべきは誰か、世間に判断してもらいたい」
 という投稿を新聞に寄せたそうです

〇スタジオでの解説
 司会は武内陶子アナ、
 解説は我孫子東邦病院の麻酔科医、菊地博達氏と
 横浜市立大医学研究所の谷口英樹氏でした

 菊地氏は
 「いろいろ言われていますけど
  私がモートンの公開手術の場にいたら、ものすごく感動しただろう」
 と吸入麻酔法の誕生については評価していました。
 谷口氏も
 「その後何十年、今も行われている麻酔法を
  この時作ったのは革命的」と話していました

 菊地氏はウェルズの発想について
 「よくぞ気が付いたと思う」
 と話していました
 エンターテインメントに使われていたものを、医学に使おうという発想がすごい、と。
 これは、彼が日ごろから何かいい方法はないか、ないかと探していたからこそのものだろう、
 とのことです。

 一方谷口氏は
 「麻酔法を発見したのはウェルズだが、
  改良して、より高い効果をもたらしたのはモートン」
 と両者の功績をたたえていました

 武内アナが
 「モートンはペテン師と言われていましたが…」と聞くと
 谷口氏はこれはよくあること、と言っていました。
 「先行研究はたしかに前任者の功績だが、
  さらにその上に積み上げる、というのは悪いことではない。
  それを盗んだと言っちゃうと、科学の世界は混乱してしまう」
 菊地氏も
 「科学ってのはみんなそうで、
  例えばノーベル賞では、新しい分野を切り開いた人もそれを発展させた人も、
  共同で賞をもらっていますよね」
 改良、発展させたということ自体は評価されてもいいとのことです。

 武内アナ
 「モートンは自分が麻酔して、ほかの高名な医者に執刀してもらっていましたね」
 菊地氏
 「彼はどのようにすればインパクトを与えられるかを知っていた、
  それは詐欺師の鋭い勘だったんでしょうね。 
  レベルの高い病院で、有名な外科医の先生にやってもらえばいい
  そこはセンスがありますね」
 谷口氏も
 「彼はビジネスセンスや、マネジメント能力があるんでしょうね、
  モチベーションはいろいろあるんでしょうけど、
  彼のしたことが、麻酔法を発明として前に進めた意味はあると思います」
 モートンの作戦勝ち、みたいなところがあるんですね。

〇麻酔法開発者の名誉争い
 モートンがエーテルの吸入麻酔法を公開で行ったニュースを受け、
 我こそがこの発明者だ、と名乗り出る人が何人かいたそうです

 その一人がチャールズ・ジャクソン
 彼はハーバード大学医学部卒のエリートで
 当時医療の最先端だったパリに留学し、
 その後化学分析の研究所も設立していたそうです
 彼は吸入器の発明は自分が行った、と主張したそうです

 というのは、モートンは公開実験の1か月前
 ジャクソンのもとを訪れ、アドバイスを受けていたのだそう
 
 そこでモートンはこの麻酔法の特許を取り
 特許料をジャクソンと折半することで話を付けた
 モートンは、すでに名の知れたジャクソンを共同開発者とすることで
 この発明に箔をつけ、たくさんの人が使うことも期待していた
 
 (ちなみにウィキによりますと、
  ほかにエーテルを最初に手術に使った方がいるそうです。
  ジョージア州のクロフォード・ロングさんという方は
  1842年にはこれを使って麻酔手術をしていたそうです
  ただし公表はしていなかったので、公認はされていないようだが
  この方も当時自分が先だ、と主張されたんでしょうか…)

〇麻酔法の特許取得、論争が巻き起こる
 1846年、アメリカ特許庁は、モートンに対しエーテルの吸入麻酔法の特許を許可する
 この特許は3つのポイントがあり
 ・エーテルという医薬品への特許
 ・吸入器という医療機器への特許
 ・吸入法という医療方法への特許
 この特許は14年間有効とし、その間この麻酔法を使うすべての医師は
 特許料を払わねばならなくなったそうです。

 しかし、医療行為に特許を取る、という行為が論争を巻き起こしたそうです
 医学史の専門家の解説によると
 「当時、医師が医療に関する発明で特許を取るのは
  倫理に反する、とされていた」

 古くをさかのぼると、エドワード・ジェンナーが天然痘の予防接種を考案したとき
 あえて特許を取らなかったそうです
 これは、多くの人にワクチンを届けるためで、
 この前例により、医療にかかわる特許は取るべきでない、という暗黙の了解があった
 
 ジャーナリストさんは
 「特許を取るのは、医学界では衝撃的なことだった
  それまでは特許を取る人はいなかった」
 また、医学史の専門家によると
 「特許に対する倫理的な抵抗は、エリート医師にはあった。
  しかし当時一介の医師だったモートンには、それがなかったのだろう」

 当時、ボストンメディカルアンドサージカルジャーナル、という雑誌では論争となり
 賛成意見「医師の貢献したなら、特許を求める権利がある」
 反対意見「医師はお金や権力ではなく、賞賛や感謝の言葉を求めるべき」
 賛成意見「特許は研究者のモチベーションにつながる」
 反対意見「よく知られた薬品に特許を与えるのは、太陽や月の光に特許を与えるようなもの」
 など、いろんな医師の賛否双方からの意見があったそうです。

〇モートンのお金儲けは思惑通りにいかず…
 モートンは医学界の論争をよそに、金儲けにまい進する
 彼はエーテルとオレンジの成分を混ぜた「リーセオン」という商品を開発する
 当時アメリカメキシコ戦争が勃発し、これで一儲けできると考えたらしい

 しかし政府は、エーテル麻酔を兵士への治療に無断で使うようになる
 戦争時では特許なんぞ言ってられない、という状況だったらしい

 ジャーナリストさんの解説によると
 「政府は、エーテルの特許使用を許可した張本人なのに、それを無視した。
  大病院も特許を無視するようになったため、
  開業医もこれに追従し、
  全米の各地で勝手に使われるようになった」

 こうしてモートンの特許は崩壊し、彼のもとにはリーセオンの在庫の山が残った…

〇名誉を取り戻したウェルズ
 一方本来の発明者であるはずのウェルズについては、
 1846年にボストンメディカルアンドサージカルジャーナルで
 「麻酔法の発明の栄誉はウェルズのもの」
 と投稿してくれた医師がいた

 この医師はハートフォードの医師で、
 公開手術よりも前にウェルズから麻酔法を教わっていた人だそうです
 
 ジャーナリストさんによれば
 「ウェルズは無償で亜酸化窒素の麻酔法を広めた、
  その寛大さが彼を救った。
  彼の発明が初めて証明された」

 この記事は、モートンの特許が認められたアメリカではあまり話題にならなかったが、
 当時医療の先進国だったフランス、パリでは、ウェルズが発明者として認められたそうです
 当時のウェルズの手紙によると
 「パリにいると、みな私に礼儀正しく「あなたは偉大な人物」と言ってくれる」
 と書いているそうです

 そして名誉を取り戻した彼は、再び麻酔の研究にとりかかる
 彼が新たに取り組んだのはクロロホルム
 これはエーテルよりも効き目が早く、少量で麻酔ができたそうです
 彼は自分を実験台にして実験していたそうです

〇スタジオでの解説
 再びスタジオでの解説。
 谷口氏は
 「ウェルズが先に発明したからモートンが改良し、ウェルズはさらに改良した。
  これは研究開発の場面で、今でも起きていることです」

 武内アナは
 「医療特許は大論争になりましたが」
 菊地氏は
 「普通は栄誉を得ようと思う人は発明したものに自分の名前を付ける。
  名前を付けることが栄誉だったんですね」
 名誉をお金に変える行為が、否定的な評価をされたようです。

 一方谷口氏は
 「モートンはサイエンティストとみるとNGなことをしていますが、 
  起業家とみれば、
  自分が発見したものを世の中に行き渡らせて人々を助けようとしたわけで、
  そういう意味ではモートンのしたことは決してネガティブではない、
  見方により評価が分かれる」
 とモートンを擁護していました

 武内アナは
 「それにしてもモートンはアイデアマンですね、リーセオンとは…」
 菊地氏は
 「アメリカは当時、西部劇なんかを見るとそうですけど、
  幌馬車に怪しい看板を付けて、「特効薬」
  とか言って売り歩くとかいうのがあったんですね」
 谷口氏は
 「アメリカは同時成熟していなくて、ルールもない、
  いろんな人が雑草のようにどんどん出てくる、
  そういうパワーが新しいものを生み出していった」
 合理主義、資本主義
 悪く言えば何でもお金に変えちゃうアメリカならではの発想なんでしょうね。

 武内アナ
 「国も特許を無視しちゃったんですね…」
 菊地氏は
 「モートンの発明は利用価値が大きすぎたんですね」
 谷口氏は
 「モートンの特許が強力すぎたんですね…
  重要な発見すぎて、あまりにも侵害して使う人が増えちゃった」
 武内アナ
 「モートン、ちょっとかわいそうですね…」
 菊地氏
 「まあ、欲をかきすぎたんだね」(笑)
 戦争という時代、というのもあったのかもしれません。
 まあ自業自得ともいえるんだけど。
 
〇ウェルズの悲劇
 1848年1月
 ウェルズはハートフォードからニューヨークに移り住む
 そして広告を出した
 「私は、3年以上も前に痛みを消す治療法を発明したことで知られています」
 「この治療法で体調を崩した人はいない」
 「麻酔の感覚は極めて愉快」
 というようなことを書いていたらしい

 麻酔が愉快?
 …というのは、クロロホルムには依存症があり
 彼はこのとき、すでにクロロホルム依存症に侵されていたらしい

 彼がニューヨークに到着して3日後、事態が急変する
 彼はクロロホルムを吸入後、錯乱状態になり
 女性に硫酸を浴びせて回る事件を起こす
 このため彼は投獄され、有罪判決を受ける

 彼は判決を受けた日
 監獄の中で明かりを消し、隠し持っていたクロロホルムを取り出し、
 吸入した後に、自分の大動脈をカミソリで切断する…
 
 こうして彼は自ら死を遂げる。享年33歳。
 (ちなみに、クロロホルムについては、一時期麻酔薬として使われたが、
  ウェルズがかかったように依存症の副作用があり、
  不整脈も起こすとかで、今は使われていないようです)

〇モートンの悲劇
 一方モートンは、特許が侵害されまくったので
 政府に特許は要らないから、代わりに褒賞を与えるよう政府に要求する
 その額は10万ドル(3億円以上)
 彼は訴えて却下され、また諦めず訴え…
 を繰り返していたが、そのうち特許が切れてしまう

 さらに1862年のニューヨークの裁判では
 「エーテルは以前から知られた薬品で、モートンはその効き目を確かめたにすぎず、
  そもそも特許は認められない」
 という判決が下されてしまう
 つまり、特許はもともとなかったと言われたのも同じだった
 
 彼はその6年後、脳卒中に倒れ、失意のうちに亡くなる。享年48歳。

 ジャーナリストさんによると
 「結局モートンが残したものは、
  医者は金持ちになれ、という掛け声だけだった。
  彼は医学界に呪いをかけたのです」
 
 医学史の専門家によると
 「麻酔法の発見は、医学界もビジネス化していく始まりとなった、
  医療は人助け以上に、利益追求に使われることになった」
 
 モートンは、麻酔法という偉大な発明以上に 
 金儲けという負の遺産を医学界に残してしまった、ということだそうです

〇スタジオでの解説
 武内アナ
 「二人とも非業の死を遂げました、こんな最期になるとは…」
 菊地氏は
 「モートンは金儲け、ウェルズは名誉を求めた。
  二人とも医学界に何らかのバックグラウンドがあれば
  それなりのことをやれたはずなんですけどね…」
 それだけ、当時は一介の開業医師というのは学者に比べて、地位が低かったのかな。

 谷口氏も
 「今同じことが起きたら、二人がタッグを組んで、
  もっといい方法を広めて共同受賞、ということになっていたかもしれない。
  当時はそうなっていなくて、俺が俺が、となってしまった」
 と、社会が成熟していない状況を原因にあげていました
 
 武内アナ
 「モートンは、特許が認められないなら褒賞をください、と」
 菊地氏は
 「ジェンナーは、特許は取らなかったんですけど、
  素晴らしい発明をしたということで政府から報奨金をもらっているんですね。
  モートンはそれを知って、自分もそれに値する、もらうのが当然だと考えたのかもしれない」
 谷口氏
 「そもそも、国が特許を認めておいて、
  後で違うというのは一番おかしいんですけどね。
  モートンはその被害者だったんですね」

 武内アナ
 「ウェルズとモートン、どっちが功労者だと思いますか」
 菊地氏は
 「私はウェルズだと思いますね、ウェルズが考案したから
  モートンはほかにないか、と考えたんですから」
 谷口氏は
 「僕はそもそも論になっちゃうけど、
  誰が最初かはどうでもよくて、
  サイエンスとしてはウェルズが最初だけど、
  麻酔とし手の効果をもたらしたのはモートンだと思います」
 と両氏を評価していました

〇モートンが残した呪い「特許」
 医療は今や巨大ビジネスになっている
 アメリカでは、新薬や医療機器は、開発した会社が値段を決めている
 特許を持っていれば企業も強気に値段設定をして、
 これが医療費の高騰につながる

 医学史の専門家は
 「特許が薬の値を上げているのは明らかで
  これが世界で薬の買えない人が多くいる原因になっている。
  製薬会社は重要な薬を開発しても、
  患者がそれを使うことができない。
  あるいは、保険会社や政府が莫大な支払いをしないといけない状況になっている」
 と、特許の負の面を指摘していました
 
 日本ではこの特許にからむ高額医療が問題になったことがあるそうです。
 2016年、がん治療薬のオプジーボが発売された
 これは免疫機能を高めてガンを退治する画期的な薬で、
 外科手術や放射線治療にとってかわる治療として注目されている

 しかし会社はこの薬の特許を取得したので
 この薬は非常に額が高い
 最初に国が認めた価格は、100㎎あたり173万、
 1年に3500万円かかる計算だそうです

 現在の医療保険制度により、患者の自己負担は年間200万円までで、
 それ以上は健康医療保険組合や国が負担することになるが
 このままだと国の財政が破たんする、、ということで
 政府は価格を見直すよう審議会に提案したそうです
 今年減額が認められ、半額になったそうです
 
 しかし医療が高度化し、開発費もかかっている
 企業が開発費の回収ができないと、
 次の医療が生まれない、という問題もあるそうです

〇スタジオでの解説
 武内アナはオプジーボの値段を聞いて
 「がんの治療薬高くないですか?」と驚いていました。
 菊地氏は
 「今年半額になりましたね」
 谷口氏は
 「薬などを開発するとき、多くは失敗する
  実際に使える薬になるのはごく一部なので、
  失敗分のコストをどうしても成功した分で補わないといけなくなる」
 と話していました
 
 しかし菊地氏は
 「例えば手術支援ロボットは3億円するなど、医療機関には負担が大きい。
  この機械はあと2,3年で特許が切れるので、
  同じようなもので、もっと優れた機能を持つものを今開発中です。
  それだと2000~3000万円で開発できる」
 特許があるために値段が10倍になる事実を指摘していました
 武内アナ
 「それだけ高いんですね…」
 
 それでも谷口氏は
 「特許があると薬が高くなる、というのは分かるんですが、
  特許というのは期間が限定されている」
 と話していました
 特許を取るまでにも、開発に十年、治験に数年、特許が下りるまでさらに数年…
 実際に売られるまで時間がかかるので、その間のコストを回収しないといけない。
 特許が無くなったら薬や機器が出てこなくなるかもしれない、とのことです。
 武内アナ
 「そういう事情もあるんですね…」
 菊地氏は
 「お金なしでは生きていけない、怖い時代ですね」

 武内アナは
 「聴診器1つで、という時代が懐かしいですね」とも言っていましたけど
 谷口氏は
 「赤ひげの医者とかは、日本人が好きな理想像ですけど、
  現実にはそれだけで成り立つ状態にはもうなっていないんですね」
 もはや後戻りはできないようです。

 菊地氏
 「昔は感染症で死ぬのは当たり前だったけど今はそうではない、
  そのうち何であの人ガンで死んだんだろう、
  って言う時代が来るかもしれない」
 という医療の進歩の速さを話しつつ
 
 「特許はある程度必要だけど、
  でも行き過ぎるとお金儲けの道具になってしまう
  そこは研究者や企業がモラルとして持っておくべき」
 と話していました
 谷口氏は
 「そこは社会が監視していかねばならないんでしょうね。
  一人一人が監視できるよう、社会が成熟していかねばならない」
 治療法、機械などの開発にお金がかかるのは分かるが、
 必要経費を回収するだけにすべきで、
 金儲けの道具にしてはいけない、ということなんでしょうね。

〇結局、名誉は誰のものでもなく…
 最後は吉川さんのナレーションです
 ウェルズとモートン、
 痛みを取り除くはずの麻酔が、二人にとっては苦悩のもととなった。
 二人がこだわり続けた発明の名誉とは一体何だったのか…
 
 ボストンのパブリックガーデンには、
 麻酔法誕生をたたえる石碑があるそうです
 これはウェルズが亡くなった年に建設の話が出たそうです
 そのとき、建立の計画を聞きつけたモートンは、
 自分の名前を刻むよう主張したらしい

 結局、碑文には
 「吸入麻酔法により、人類の苦悩を取り除いたことの感謝の碑」
 とだけ刻まれたのだそうです。

 「個人の名は、そこにはない」
 と吉川さんは締めくくっていました。。

〇感想など
この番組を見ていると、金と名誉が結局科学者の身を亡ぼすのね…
と思ってしまいます。
でもそういうので身を滅ぼした人たちって、
差別があったり、生まれや身分だけで評価されたりしていた時代の人たちが多い。
成熟していない社会だからこそ歪んじゃった、かわいそうな人たちなんかな~とも思います。

そういう意味では、ノーベル賞など、
功績を、身分に関係なくたたえる賞がたくさんできている現代は
いい時代だなと思います。

それにしても、医療費が高いのは当たり前に感じていたけど
特許の存在だというのを改めて知りました。
でも報酬や競争があるからこそ、科学者も頑張れる。
そうして開発が進む一面もあるので
一概に悪いとも言えず、難しい問題だなと思います。

その辺はやっぱり国とか世論が
「ちょっとやりすぎじゃないですか」
「貧しい国の人たちには寄付してもらえませんか」
と企業に言って話し合う必要があるのかな~…

使う人の収入別に値段を変えるとか
ある程度補助を出すとかいうことも必要になってくるのかもしれません。

(まあ個人的には、できればそんな高い薬とか治療には
 お世話になりたくはないけど…)
 
なんにしてもお金、の時代だろうけど
そもそもは困っている人たちを助けるための研究なんだ、という精神だけは
医学、科学の世界にはいつまでも残ってほしいなと思います。

というわけで今回はこの辺で。
posted by Amago at 10:31| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする