2017年09月17日

NHKBS世界のドキュメンタリー「“楽園”に渡った異邦人たち」

NHKBS世界のドキュメンタリー「“楽園”に渡った異邦人たち」

オランダ2016年製作のドキュメンタリー。
ヨーロッパ南部の難民収容所で、
難民の方々に難民審査官みたいな?感じの人がヨーロッパ社会の率直な意見をぶつけた番組。

うーんでもこれ、やり方がどうなんだろう…と思いました。
ネタバレになってしまうんですが、
移民たちに質問をぶつける役の人が、
役人とかではなく、何の権限もない役者さんなんです。

しかし聞かれている移民の側は多分難民審査官かなにかと思い込んでる(騙されている)
という感じ…

まぁそうでもしないと本音を引き出せないのかもしれないが、

本来は役人とか、しかるべき立場の人だけに打ち明けるような、個人的な話もさせている感じで、
ここまで聞いていいのかと思ってしまった。

移民だからって何をしてもいいわけじゃないですし、
出演者に後でテレビですよ、と説明して了承してもらえたのかな?と気になる番組でした。

とはいえ、緊迫したやり取りは見ごたえがありました

「第1幕 ヨーロッパ人の1つの本音「祖国を建て直せ」」
 舞台は教室のようなところ。
 白人の中年男性
 (ちょっと細身?の少し神経質そうな感じの人)
 が教壇のような所に立って話をしていて、
 彼の話を聞いているのはアフリカ、中東系の難民たち10人くらいでした。

 白人男性は眉間にシワを寄せた権威的な雰囲気で、
 おそらく難民たちは彼が誰かは分かっていない。

 彼は移民たちに
 「みなさんようこそ」と話しかけていました。

 「みなさんは若くて、野心と希望がある。
  あなたがたは異国で新しい運命を切り開こうとやって来た、そうですね?」

 しかしそのあと、
 「少し話をしたいと思います。
  あなた方には、真実を知る権利があるからです。現実をね」
 そして白人男性はこのあと、彼らに厳しい言葉を投げ続けました

 彼はまず
 「なぜ祖国を出てきたのですか」とみんなに聞く

 「仕事を得るため」
 「庇護を求めるため」
 「ヨーロッパがどんなところか知りたかった」…など

 男性は
 「ここで知っておいて欲しいことがある」と言い、
 ・去年1年のヨーロッパへの移民が150万人
 ・移民1人に対し、初期の1年で2万6千ユーロ(312万円)の経費がかかる
 ・つまり150万人で年間390億ユーロ(4兆7000億円くらい)かかる
 と話す

 そして
 「集団での移住は楽園ではないのだ、
  とんでもないこと、破滅につながる」と厳しい言葉。

 難民たちは
 「分かります、私も常にその事を考えています
  私たちはどうしたらいいんでしょうかね?」と聞く。

 白人男性はそれに対して
 「私の父の話をします」
 第二次対戦時に子供だった父親の話をし、
 ヨーロッパが戦争の悲惨さから復興したのは
 自分の父親のような若い世代が逃げずに国を再建したからだ、と話す
 そして
 「あなたがたも、我々の父親世代のように頑張ってみたらどうかと提案したいのです」

 しかしアフリカから来た人は
 「アフリカがそんな風になれると思っているのですか、アフリカは…」
 男性
 「もちろんです、これはあなた方の問題です」
 驚く難民たちに
 「もちろんそれをするなら革命を起こして、
  指導者を暗殺せねばならないかもしれない」と畳み掛ける

 しかし難民は
 「150万の移民の人たちはヨーロッパに来たくて来てるわけじゃない、
  それでも来ているのは助けが要るからなんです」

 男性は
 「しかし制度で助けられる人には限りがある、
  みんなを助けていたらどうなりますか?
  この制度が破綻してしまったら、私の子供も親も、君たちも救えなくなる、
  あまりに多くの移民が、我々の制度にすがるだけで貢献しないからだ」と厳しい

 難民は
 「私はその考えには反対だ。
  アフリカからの移民は高い能力の人たちが多い、
  その能力であなた方の社会に貢献できる」

 しかし男性は
 「ではあなたはなんの仕事をするんですか?」と聞く。
 「私は木工職人だ」
 男性
 「ヨーロッパでは手作りの家具は少ない、
  機械化が進んでいるからです」

 また、電気技師という難民には
 「隣の電線が壊れて修理が必要だとします、
  あなたと私がいたら、どちらが雇われると思いますか」
 「僕だ」
 「いや、私です。
  あなたはヨーロッパの電気を知らないから信用されない」
 電気技師の難民は
 「あなたは分かってない、頑張って仕事をすれば…」
 しかし男性は
 「私の言うことは必ず正しい、それが現実です」
 他の難民が
 「移民を訓練すれば…」といいかけても
 「訓練する費用を誰が出すんですか?」

 そして男性は、
 「あなたがたは素晴らしい話をお持ちのようなので、私の統計の話をしますが、
  アフリカからきた人のうち55%は仕事をしない、
  あなたがたが残りの45%に入れればいいが、そうでなければ一生働くことはない」
 と突き放すようにいう。

 難民が苛立って
 「その話は誇張ですか?何が言いたいんですか?」
 男性は
 「私が言いたいのは、責任はあなた方にないということだ。

  責任は、ヨーロッパの夢想家、理想主義者、社会主義者にある。
  あなたがたに誤った希望を持たせ、簡単に移住できるという幻想を植え付けた

  そして君たちは危険な地中海を渡る。
  連れてこられた小さい子が命を落とすことになる」

 難民は
 「嘘だ、そんなの不公平だ」
 男性は
 「そうだ、世界は不公平だ」
 難民
 「私たちはあなたに助けてほしいんだ」
 男性
 「私には助けられない、あなたがたが自分達で助け合うべきだ」

 男性はなおも続く反論を遮って「次の話にいきます」
 「あなたは信仰心がありますか?」
 キリスト教徒も数人いるが、難民にはイスラム教徒が多い
 男性は
 「では、あなたがたは自分の信じる神と、社会の決まりとどちらが重要ですか」
 イスラム教徒は
 「アラーの教えは重要です」

 すかさず男性は
 「問題はそこだ、
  ヨーロッパでは神の教えはおとぎ話だ、クリスマスと同じなんだよ。
  我々は神よりも自分の力で議会を作りたいんです」
 そして、
 「しかし毎年150万人押し寄せる難民は法よりも神の教えに従えという、
  そういう人たちが我々を指図する日が来るかもしれない」

 イスラム教徒は
 「あなたの言うことはおかしい、
  150万の難民が2000万になって、ヨーロッパの法を変える権利を受けられる日がいつ来るのか?」
  男性は
 「たくさん押し寄せれば、いつかはなるだろう。
  ヨーロッパのイスラム教徒が何をしたか話しましょう、
  2015年11月、パリでテロが起きて129人が犠牲になった…」

 イスラム教徒たちは口々に
 「犯人はヨーロッパ人だ」
 「あなたはおかしい、本当のイスラム教徒は、同胞である他人は攻撃しない」
 「あいつらは本当のイスラム教徒じゃない」
 と反論するが

 男性は
 「私には本当のイスラム教徒とテロリストの違いがわからない、
  君たちにはヨーロッパには来てほしくない」
 と断言していました

 緊迫した空気でこの1幕は終わりました

(…見ていて気分は良くなかった。
 何なんでしょう、この時間?
 難民がどう思うか。自分達は差別的な言葉を浴びせられるために集められたのか?と思ってるんじゃないかなぁ…と思ってしまった。
 まぁ、あとでこれは演技だと分かるのだが) 

「第2幕ヨーロッパ人の別の本音「豊かさを分配すべき」」
 次も教室みたいな所で、
 同じ白人男性が教壇に、
 難民たち(違うグループ)が生徒のように話を聞いている

 男性は
 「ようこそ皆さん」と呼び掛ける。
 「皆さんは探求者、冒険者、先駆者に見える。勇気ある人たちです。
  世界の歴史は勇気ある人たちが切り開いたのです」

 そして男性は
 「2015年9月、私は1枚の写真に心を痛めた」
 シリア人の3歳の男の子が、地中海を渡ろうとして溺れ、海岸で遺体で発見されたときの写真を貼る

 そして「この子の死は誰に責任があるのか?」と話していました
 シリア政府が、国の状態を悪化させたから…?
 この子の親が、小さな子に危険な旅をさせたから…?
 しかし彼は
 「私も責任を感じます」
 自分が選んだヨーロッパの政治家が、出身国で渡航を制限しているからだと指摘。
 「ヨーロッパには違う意見の人もいるが、私はこんな状況は許せない」

 彼は、誰もが生まれる国は選べない、と述べ、
 難民が生まれながらに貧しく、ヨーロッパが豊かなのは
 そもそもヨーロッパの植民地政策にある、と話していました
 「我々の祖先が皆さんの祖国を利用し、搾取し、奴隷同然の扱いをして
  ヨーロッパは富を築いた」

 そして
 「ヨーロッパ人5億に対し、難民はたったの100万人。
  それだけの難民は脅威にならない、
  過去の植民地政策を考えれば、今こそ我々がお返しするときだ」と話していました。

 また彼は、ヨーロッパの7つの大学のケーススタディをもとにした試算では
 国境を無くすと世界経済は70%上昇する、という結果を話していました。
 「それには皆さんの協力が必要です、
  ヨーロッパのために働き、貢献してもらう、
  その見返りに我々は福祉や老後の生活を保証する…」

 すると難民は
 「そうだ、我々は見返りが欲しい」
 男性も
 「私たちはウィンウィンの関係にならねばならない、
  ヨーロッパの福祉制度を誰でも使えるように拡大すべきだ」

 そして男性は
 「そこで君たちに聞きたい、
  ヨーロッパに何を求めてきましたか?」

 難民たちは
 「私はいい暮らしをしたいんです。自分の家もほしい、仕事するためのお店も欲しい」

 「国に戻って家を建てたい、子供も欲しいしいい教育も受けさせたい」
 などの夢を語っていました

 「いいですね。いい生活、教育も大切です。
 「皆さんの夢は手放してはいけない、国境のない世界でいつかつかむべきものです」と励ましていました

 (こちらは1幕よりは穏やかに見られましたが
 何だろ、逆に違和感?気持ち悪さ?を感じました。
 国境を取り払うって現実離れしすぎているというか…
 ひねくれた見方かもしれないが、ここまで難民に好意的な人ってどのくらいいるのかなぁと思ってしまった)

第3幕「難民認定ルールの適用がもたらす現実」
 次に、
 「収容所の難民たちは居住許可を求めている
  許可を得るには入国ゲームに参加せねばならない」
 という字幕が示されていました

 教壇に立つ白人男性は
 「この収容所はここ(地図でイタリアの付け根あたり)ですが
  あなたがたがオランダに行ったとき、
  より豊かな生活を得られるかを調べたいと思います」

 難民たちに
 「どこから来ましたか」
 「来た理由は」
 と聞いていく

 ・出国理由
 「より豊かな生活」
 「お金を稼いで仕送りしたい」
  「よりよい教育を受けたい」
  などの答えの人には、
  「経済移民」とし
  「経済移民は、ヨーロッパでは絶対に居住許可は得られない、これは決まりです」
  「退出してください」と命令する

 ・出身国
  ガーナ、インド、モロッコ、モンゴル…といった国の名前を黒板に書き、

  これらは安全な国とされる国のリストだとし、
  「これらの国から来た人たちはオランダでは絶対に居住許可は得られません」

  ただし1つだけ例外があり、
  LGBTの人たちはOKらしい
  「そうでなければ退出してください」

 しかし他にも、許可を得られるための条件がある
 男性は
 「この中で既に指紋登録をした人は?」
 これに手を挙げた人に対し

 「難民希望者は、最初に到着した国に保護申請する義務がある」
 これをダブリン規則というそうですが
 指紋登録した人は既にその国で保護申請してしまっているので
 オランダでは居住許可は得られないらしい
 「あなたたちも退出してください」

 つまり
 ・安全とされていない国からの出国
 ・身の危険を感じる差し迫った理由がある
 ・指紋登録をしていない
 に該当する人が居住許可を得られる可能性がある

 次に、男性は残った数人に面接をし
 「なぜ出国したのか」
 「祖国の状況は」
 などの話を聞いていました
 (この辺は個人的な話なので省略)

 そしてそのあと、一人一人に対して
 「あなたは○○だから居住許可が得られる」
 「あなたは○○だから居住許可は得られない」
 とジャッジしていました

 基本的には、
 祖国が戦争などで逃げないと生きられないような状況が公の認識になっていて、
 その根拠とする本人の話に一貫性、信憑性がある場合の人は、
 居住許可は与えられていて、

 夢を叶えるためとか、
 国内に安全な場所がある場合や、
 祖国の脅威が漠然としている、
 と判断される場合、などはダメらしい

 けっこう厳しくやっているんですね。
 お金を稼ぎたい人が多いのかなと思っていたけど…

 しかし、この講義したりジャッジしてる男性、一体何者?
その種明かしで終わっていました

「エピローグ”彼“の正体」
 最後に男性は外でアフリカ系の難民たちと話していました

 さきほどの神経質そうな学者風の雰囲気とは変わって、Tシャツ短パンのリラックスした感じ。

 男性の会話のなかで
 「僕は俳優だ、映画を撮っているんだよ」
 「ドキュメンタリーで、見た人が難民に対する気持ちが少し変わるかもしれない」
 などの言葉から、彼の素性と番組の意図が分かる感じになっていました

○感想など
・うーん、正直、見た人に何を感じて欲しいのかよくわかりませんでした。

 なんだろう、特に1幕。
 難民側の発言機会が少ないのと
 白人男性と難民が対等な討論をしていないのが気になった。(そもそも最初から正体明かしてないし)

 1幕は、難民が反論しても白人男性は抑え込み、難民を黙らせている。
 お互いの討論になっていない。

 たぶんこれは、ヨーロッパの難民受け入れ反対の人の立場そのままで、
 反対の人はこれを見て胸がすっとするかもしれない。

 でもこの構成では、
 反対派が自分の意見のおかしい部分に気付くことはないのでは、と感じました

 冷静な反対論者や良心のある人なら
 男性の移民への高圧的な態度を見て嫌なものを感じるかもしれないし、
 次の第2幕との対比で
 「年間150万人の移民は多くないかもしれない」
 「移民も働かせてみれば社会に貢献してくれるかもしれない」
 と考えを改めるかもしれない。

 しかし本気で1幕のような意見を持つ人は
 2幕を見ても
 「国境無くす?なに夢物語言ってるんだ」
 くらいの気持ちにしかならないんじゃないかなぁ、
 と思いました。

 これは何でかな?と思ったんだけど
 んー、2幕の方が訴えかけが弱いのよね。

 1幕は「お前ら人に頼ってないで、自分で何とかしろよ」
 みたいな怒りがあるからかな?なんかストレートに来たんだけど、
 2幕は話が抽象的過ぎて弱い。
 溺れた男の子の話も
 (さすがに遺体の写真は画面に出ないので)
 かわいそうだけどピンと来ないし、
 植民地政策とか言われても昔話に聞こえるし…

 アフリカ系の方が実際にヨーロッパを経済成長させたストーリーでもあれば、
 説得力があったのかな~と思いました。

 でもアフリカとか移民の方が ヨーロッパで活躍できない理由の1つは
 彼らの能力云々よりも
 「あいつらにできるわけない」
 という社会の思い込みなのかな、というのは感じました。

 そう思う人がいる社会だから、
 彼らは活躍の機会を与えられない。
 あるいは不利な立場で勝負させられる、
 あるいは重圧につぶされて彼らがベストを尽くせない…

 そして、こうした差別が原因で彼らが失敗しようものなら
 「やっぱりあいつらはだめだ」
 という思い込みがより強くなる…
 という悪循環なんだろうな。

 なので、国境を取るとか大きなことは難しいけど、
 「彼らにまずやらせてみる、機会を与える、彼らに機会を与えられるよう助ける」
 だけでもできることなのかなと思いました。

・それから第3幕では、
 移民受け入れ審査の厳しさを感じました。

 難民、移民受け入れ反対派の意見だと
 「あの人たちは我々の仕事を奪う」
 があるけど違うのね。
 仕事目的の人は、申請の段階で除外される。
 難民が仕事ができるようになったとしても、それは彼らの努力の賜物であり、仕事を奪うために来ているわけではない。ただの誤解だったんだなと知りました。
 (もしかして就労目的でビザとか取って来る人はいるかもしれないが
 そういう人たちと混同されているのだろうか、
 あるいは「やつらは仕事を奪う」というのは政治家のロジックに騙されているだけなのかも)

・イスラム教徒への誤解も気になりました。
 
 本当の心優しいイスラム教徒の人は、
 ISみたいな過激組織は嫌いだし、迷惑なんだろう。

 でも実際テロをみているヨーロッパの人が、
 町でうろうろするイスラム教徒をみて
 「あの人が突然テロを起こすかも」と思ってしまう恐怖も分からなくはない…
 彼らと直接話してみれば分かるんだろうけど
 もし本物のテロリストなら、話す前に撃たれちゃう可能性もあるわけですし。

 たぶん、ヨーロッパの人も頭から「イスラム教イコール危険」と考える人ばかりではないと思うのです。
 ただ1幕で言うように「過激派と本当のイスラム教徒の違いが分からない」から、怖がらざるを得ないのだろう。
 ここは教育で誤解を解いてもどうしようもない。見分ける方法があればいいのに、と思う。難しい。
 
番組の設定自体は少々モヤモヤしたが
(難民とヨーロッパの人が対等に討論しあえると良かったのだが)
色々考えさせられました。

というわけで今回はこの辺で。

2017年09月11日

NHKBS世界のドキュメンタリー「フランスで育った”アラーの兵士“」

NHKBS世界のドキュメンタリー「フランスで育った”アラーの兵士“」

ISシンパの組織に潜入取材した方の記録です。
再放送もの、しかも数日前にやっていたドキュメンタリーなので今更感はありますが、
命がけの取材には手に汗を握ってしまいました。
というわけで内容を紹介。

〇「私」の紹介
 主人公「私」は、イスラム教徒のジャーナリストだそうで、
 キリスト教徒が入れない場所にも入れると話していました。
 ただイスラム教徒といっても民主的、穏健なイスラム教徒で、
 ISからはニセモノと嫌われているらしい。

 彼は本来平和的なイスラム教を歪曲するISが許せないそうで、
 ISの裏で何が起きているかを知るため
 IS志願の若者になりすましてISシンパの団体に近付き、
 半年間潜入取材したそうです。

 このため彼は現在
 「お前の命はない」と脅されているそうで
 この番組でも、名前、顔、声は伏せています。

○「導きの書と救いの剣」
 フランスにはISシンパのグループがいくつかあるそうですが
 「私」はその中で「導きの書と救いの剣」というグループに決め、
 Facebookで友達を募る
 プロフィールは偽のものを使ったそうです

 すると何人かから友達リクエストが来た
 積極的だったのはアブ・オサマという男で
 彼は「テレグラム」というメッセージアプリに加わるよう誘ってきた

 そこを覗くと、過激派も本音を言っていた
 (この「テレグラム」は
 元々ロシア人科学者が政府の監視から逃れるために作ったアプリで
 秘匿性がとても高いらしい。
 見たところおしゃべりアプリみたいな感じだけど
 音声データも使えるみたいでした)

 過激派たちはモスクの指導者(イマーム)と対立していて、
 穏健派イスラム教徒を「ニセモノ」といい、
 民主主義、政教分離、選挙などを激しく批判していました

 アブ・シャヒードという男も話しやすく、
 アラビア語の隠語も教えてくれたらしい
 「私」はアブ・ハムザと名乗ることにしたそうです

〇シャヒードの仲間に会う
 「私」はシャヒードと会うことにした
 どれくらい本物のテロリストかを見たかったそうです

 「私」は隠しカメラをしのばせてモスクで落ち合う
 礼拝の後、シャヒードは仲間の所に「私」を連れていく

 話を聞くと、信仰よりFacebookの話が多く、普通の若者でした
 しかし、みんな警察に「国家に脅威を与える恐れがある」としてマークされているらしい

 ジョゼフという男はシリアに行こうとして空港で捕まり、
 シャヒードは目出し帽をかぶってナイフを振り回していたため捕まったとか
 みんな名前を名乗っていたが、本名は分からないそうです

○アブ・オサマに会う
 次に彼はアブ・オサマと連絡を取ることにした
 オサマは警戒心が薄く、刑務所に入っていたことを自慢してきたらしい

 彼は2015年に刑務所に入り、5ヶ月で出所
 今は警察の環視下にあり、アンドル県から出るだけで捕まるそうで、
 会うならこちらに来てほしい、と言われたそうです

 約束の場所で待ち合わせ、車に乗せられる
 ISの戦闘音楽を大音量で鳴らしながら公園につれていかれたそうです

 オサマはお祈りをしたあと、湖で頭を清めていました
 そのあと、
 「俺たちはこれから頻繁に会うことになる、アラーの思し召しで」
 と言っていました

 彼はまだ20歳ですが、
 シリアをシャームと呼び、
 シャームで戦いたい、シャームへ一緒に行こう、
 アラーのためならいつ死んでもいい、
 みたいなことを言っていたそうです

 「私」は「君はまだ若い」と言ったが
 神のご意志なら神の元へ喜んで向かう、と反論していました

 オサマによれば
 天国では女たちが待っていて、
 アラーの祝福を受けられる…
 天国には金や馬があり、天使たちなどがいて、兄弟たちにも会える…。
 と、幸福に満ちた天国に行けると信じているようでした

 そのとき、彼の父親から電話がかかってきていましたが
 彼は素っ気ない返事をしていました

○オサマの父親
 オサマは職を転々とする母親と
 トルコ人の瓦職人の父親がいて
 「私」は父親に取材を申し込んだそうです

 父親は
 「この1年半は悪夢のようだった」
 と話していました
 盗みなど犯罪に手を染める若者はいて
 息子はそっちに行かなかったのは良かったが、
 過激なイスラム教徒になってしまった、と。

 父親は息子がネットで何をしているのかは知ることができないが
 交遊関係には目を光らせ、時々電話しているそうです
 「大変だが仕方ない、心配だから」
 と話していました

○「アラーの兵士」結成
 オサマはしばらくして、グループの司令官(アミール)になるように言われたそうです
 グループ名は「アラーの兵士」
 メンバーは9人か10人くらい
 メンバーは様々で
 チュニジア出身のもの、
 コートジボワール出身のもの、
 ベルギー人、フランス人、
 それから「私」がモスクで会ったアブ・シャヒードもメンバーの一人
 シャヒードは16歳と若いそうです

 全員、テレグラムで連絡を取り合う
 オサマはみんなにジハードを呼び掛け、天国の夢物語を語る
 シャヒードは若いせいか、天国の女の話に食いついてきたそうです

○ISの使う「テレグラム」
 連絡には「テレグラム」を使っているそうですが
 おしゃべりだけではなく
 二回クリックすると別画面が出てくる機能もあるそうです

 別画面では、ISが人質に斬首刑をしている動画、
 ISが殺人をする動画などの宣伝動画、

 ほかに自爆ベルトの作り方、
 爆弾の作り方、
 車に爆弾を仕掛ける方法などの
 マニュアル動画もあるそうです
 ほとんどはアラビア語だが、英語バージョンもあるとか

 この「テレグラム」はロシア人科学者アベル・デュロフが
 ロシア政府からの環視を逃れるために作ったもので、
 「私」は彼にも取材を申し込んだが断られたそうです

 しかし、アメリカのイベントで受けたインタビューで
 「ISがテレグラムを使うことについてどう思うか」
 という質問を受けている動画がありました
 彼は
 「いい質問だ。
  テロリストが使っていると聞いて熟睡できますか?」
 と言い、しばらく考えたが、
 「プライバシーを保つ権利は、ISに利用される危険性よりもはるかに大きい。
  我々は罪悪感を感じる必要はない」
 と自分に言い聞かせるように答えていました

○テロの呼び掛け
 しばらくして、オサマが緊急連絡を呼び掛けてきた
 「シリアから兄弟が帰国した、
  彼らはフランスで大きなことをするらしい」

 彼はシリアから帰国したというアブ・スレイマルという男から指令を受けているようですが
 「彼はどこに?」
 と聞いても分からないという

 スレイマルは用心深く、ネットでも顔も出さない
 パリ郊外に住むらしいが、ほとんど自宅から出ない
 フランスの若者に指令を出すのが仕事らしい

 オサマは危険な任務を遂行するため、
 「私」との連絡に使う携帯電話の新しい回線を作る、と言ってきた
 電気屋で安いSDカードを買い、
 ウェブから盗みだした他人の名義を使って
 回線を開通する

 オサマはこの携帯が重要だ、と言っていました
 「もし俺が戻らなかったら、この携帯を壊せ。
  中のカードも重要だ、
  カードを抜いてトイレに流せ、そのあと電話を壊せ」
  そのあとはとにかく逃げろ」
 と「私」に言っていました

 オサマは「父親にも警戒が必要」
 と話していました

 彼が警察にマークされるようになったのは
 父親の通報がきっかけだったそうです
 オサマは「父親は「ムルタッド」(棄教者、信仰を捨てた人)」
 と批判していました

 父親は警察に息子のことで相談したが
 警察は「お子さんは大丈夫」と言われたらしい
 しかしそのあと、オサマはトルコ経由でシリアに行こうとして捕まり
 フランスに強制送還された

 そのあと
 「俺は殉教者になるチャンスがあれば、それを使う」
 など、過激な発言をしていたためマークされていたみたいです

 そのあと2015年に捕まったが
 そのとき監獄の隣室にいたのが司令官役(アミール)のイスラム過激派だったそうです
 (警察は知らないようだったが、と話していました)

 彼はその人に教えられたのか、
 過激思想を捨てたふりをして5ヶ月で出所したそうです
 信仰を捨てたように見せかけている人を「タキーヤ」というそうですが
 髭をそったり嘘をつき、過激派と悟られないようにするのが手口だそうです

○2015年11月、パリのテロ
 さて、オサマはテロのターゲットを決めようとしていた
 彼が話していたのは軍隊だそうです
 「食堂で並んでる隙にダダダダ!てのはどうだ?」
 などと話していました

 「その次は新聞やテレビを狙う」
 「ジャーナリストは言葉により戦争に加担している」
 「シャルリ・エブドみたいにしてやる」
 とジャーナリストを批判。
 
 「私」が「あの時はたくさんの人が悲しんだ」
 というと
 「あれ以上の血を流さないといけない、
  何千人ものフランス人が死ぬのを見たいんだ」
 と話していました
 ISの動画にも、「何千人ものフランス人が死ぬのを見たい」
 という曲があるみたいです。
 
 そんななか、2015年11月13日、
 自宅にいた「私」の元にニュースが飛び込んできた

 パリで6ヶ所の同時多発テロが起きた
 テレビ局などが中継していたが
 「レストランの内外から発砲したようだ」
 「現場では何が起きているかまだよく分からない」
 と混乱した様子。
 血まみれで倒れている人の側で泣いている人たちもいました

 死者は120人、重傷を負った人も数十人いたそうです

 「私」は3日後、オサマに会ったそうです
 さすがに動揺したが、それを彼に見せるわけにはいかない

 彼は「俺のバースデーに攻撃だぜ」と喜んでいました
 「どう思った?」と聞くと
 「アラーは偉大なり」
 そして、
 「意気地無しの棄教者に会った」
 あのテロのせいでフランスのイスラム教徒に影響が出る、
 と言った人たちを批判していました

 「私」はオサマに、
 テロを首謀したベルギー人はバーを経営し、麻薬を密売していた、
 イスラム教徒のすることじゃない、
 という話をしたそうです

 しかしオサマは
 「あれは言いがかりだ、ISの評判を落としたい人間のいうことに耳を貸すな」
 と切り捨てていました

○次なるテロの計画
 パリのテロの後、警察の捜査が一層厳しくなった
 128ヶ所に家宅捜査が入り
 「アラブの兵士」メンバーのアブ・シャヒードの家も狙われたそうです
 シャヒードはその様子をテレグラムで語っていましたが
 「やつらは朝4時にうちの玄関のドアを壊し、俺の部屋のドアを叩き壊した」
 「俺はベッドから引きずり出され、頭を叩かれベッドに引き倒された」

 オサマはさすがに焦りを見せ、
 緊急会合を開きました
 「作戦を早く進めないと」
 「オランド大統領が激怒してる、あの男はイスラム教徒には容赦ない」
 「だが、俺たちはゴールの天国を目指す」
 次のテロを早く実行しようとしていたようです

 グループの結束も乱れてきた
 アブ・シャヒードは作戦実行直前になり
 「武器を扱うには訓練が必要」
 とか何とかいって渋り出す
 オサマはこれに対して
 「一人で行動したいならさっさと抜けろ」
 とテレグラムで怒っていました

 また、以前モスクの前で出会ったジョゼフという男は「私」を疑いだしていた
 「お前の正体はばれている、職業を変えろ」
 と言ってきたそうです
 「私」は彼が何を知っているのか分からなかったので
 「?」
 というメッセージを返し、
 他のメンバーにいくつかメッセージを送ったが、誰も脅してこない
 恐らくジョゼフがカマをかけたのだろう、とのこと

〇スレイマルから手紙をもらう
 そのあと、スレイマルが「私」に会いたいと行ってきた
 ある駅のホームで合流するという約束だったそうです。

 しかし当日、彼は来ない
 すると電話がかかってきて
 「どこにいる」
 「ホームに向かっていくところだ」
 するとホームで、ニカブを被った女性が近づいてきた
 彼女は手紙を渡して消えていったそうです

 手紙を読むと、テロの作戦手口が書いてありました
 中身を読んで手紙は燃やし、
 オサマに口頭で伝えることになっていたそうです

 具体的な作戦は
 「ターゲットはパリのナイトクラブやキャバレー、
  「不信心もの」が集まるところ
  人が混み合うのを待ち、1、2人が自爆テロを仕掛ける
  店の外にも武装した仲間が1人か2人待機しておき、
  残った「ブタども」を撃ちまくる
  そのあと警察や軍隊が来るまで待機し、
  彼らが到着したら1、2人が自爆テロをおこし、最後まで撃ちまくる」

 「私」はなるべくオサマに詳細を伝えないようにしようと考え、
 待ち合わせ場所で
 「詳細な話は無かった」と言ったそうです

 しかし「自爆する人間が必要だ」と彼は言ってきた
 そこで「私」は「続けて」と先を促すと
 オサマは
 「一人は自爆、もう一人は残りの客を撃つ、
  そのあと警察が来るまで隠れ、警察が来たら撃ちまくる」
 と計画の大まかな話を知っていた

 「知っていたのか」と聞くと
 「今日少し話したからね」

 つまり「私」がスレイマルに呼ばれたのは
 スレイマルが「私」を使える人間かどうかを試すためだったらしい
 このことで、より危険な任務を任せると判断されたらしい

 そのあと、スレイマルが武器を手にいれたようです
 「私」は、「アラーの兵士」メンバーの二人に、
 武器を埋めてある場所に案内してもらう
 (「私」はこのうち一人の結婚式の証人にもなったそうです)

 「私」は、埋めてある場所を携帯に地図登録した
 ほかの二人はそれが気に入らない感じだったそうです

 「私」は、別の日にまた一人でその場所に行った
 武器があれば警察に通報しようと考えていたそうです
 しかし武器は無かった
 「私」は完全には信用されていなかったようです

〇「アラーの兵士」メンバーが逮捕される
 「その後の数日間は加速度的に時間が過ぎた」

 まずオサマが、メンバーにテロ実行の呼び掛けをしたそうです
 彼は武器を手に入れたようだった
 テレグラムで集合場所を確認していました

 しかし、実は警察は「アラーの兵士」を環視していた
 12/23に別の過激派組織が捕まっていて
 この組織はオサマと通じていたらしい

 そして、その4日後オサマは父親の家で逮捕される
 父親の話によれば
 「朝の5時に警察が部屋になだれ込んできた」とのこと
 父親も手錠をかけられたそうですが
 「私はテロリストじゃない」と叫んだそうです

 「アラーの兵士」のうち、何人かは刑務所に行き、
 何人かはジハードを諦めたそうです
 グループは崩壊した

〇グループから手を引く「私」
 しかしそのあと、スレイマルが「私」に手紙を取りに来るよう連絡してきたそうです
 落ち合う場所はイスラム学校、
 最初の手紙をくれた女性が、また手紙を渡してきたそうです

 手紙には
 「君と私だけが残った、武器が手に入れば攻撃できる」
 先の女性の自爆ベルトがあるので3ヶ所は攻撃できる、とか書いてあり、
 スレイマルは「私」に自爆ベルトを作る材料を買うよう言っている。
 (つまり、女性の自爆ベルト、武器、「私」の自爆ベルトで3か所、ということなのだろう)

 「彼は私に死ねといっている、
  私はこれ以上、この組織に関わるのは止めることにした」

 また、最初にモスクで会ったジョゼフは
 「私」が警察の捜査に引っ掛からないことに不信感を抱いていて
 「お前の命はない」
 と書いてきたそうです

○取材を通して「私」が感じたこと
 「私」は、半年に渡る潜入取材を通し、
 ISの発する悪に対し、魅力も恐れも感じなくなったそうです
 「彼らは、簡単に操られる自暴自棄の若者に過ぎない」

 ISの宣伝用の動画には、ケビンという人物が出ています
 モスルの豪邸で楽しそうに過ごす映像、
 笑いながら自爆テロのトラックの車窓から手を振っている映像、
 そしてそのトラックが突っ込んだ建物が爆発している映像
 がありました
 楽しいテロ、楽しい生活を見せかけ、こうしてISは若者を自爆テロに誘い込む

 しかし「私」は
 「私が見たのは、テロリストではなくただの道に迷った若者だった」

 そのあとに
 「アラーの兵士」の若者が天国の夢物語を語りあい、
 「俺たちのゴールは天国だ」
 と話している映像で締め括られていました

〇感想など
 全体的に暗い話だったのですが、
 唯一彼らの顔が輝いたのが「天国の話」だったのが印象的でした。
 現実の世の中に天国がないから、あるか分からない死んだ後の天国を夢見るのかな、
 と思うとちょっと物悲しい気がしました。

 テロリストを捕まえるのはもちろん重要だが
 オサマのように、
 監獄で司令官に出会って、過激思想がより強化されてしまう
 つまり監獄が「テロリスト養成学校」になっている事実もある
 というのは何か皮肉な話に思える。
 
 それから根本的には、ISシンパをたたくよりも
 精神的に不安定な若者とか、
 社会低に不安定で先行きを見失っている若者のエネルギーを
 テロではなく、もっと建設的な方向に向かわせる手段を提供すること、
 彼らが所属できるコミュニティを作ってあげるのが必要なのかな、と思う。

 「アラーの兵士」メンバーを見ていても他国出身者、移民が多くて
 彼らの社会的、精神的な不安定さにISがつけ込むんだろうなと思いました

 そういえば最近のスーパープレゼンで
 ディーヤ・カーンさんが「知られざるヨーロッパ・イスラム社会」という話をしていて、
 ヨーロッパの移民2世が置かれている複雑な立場を初めて知りました。

 彼女はノルウェー産まれ、
 アフガニスタン人の母親、パキスタン人の父親、祖父は敬虔なイスラム教徒
 という移民の家系で育ったんですが、
 彼女が7歳のとき、父親が
 「お前は白人ではないから、この社会で成功するには何か秀でることをしろ」
 みたいなことを言ったそうです

 そこで彼女は音楽を選び、歌手としてキャリアを積んでいく
 しかし最初は良かったが、二重の差別を受けるようになり、それに苦しんだそうです

 一つは移民であるための差別
 唾を吐かれ「国に帰れ」と言われたそうです
 そこまでは想像がつくが、
 もうひとつは祖国のコミュニティからの攻撃
 「お前がこんなことをしているから、うちの娘も好き勝手にやりたがるようになった」
 と「褐色の肌の人」に言われたのだそうです
 
 移民の親世代は、その土地の宗教や文化に縛られていることが多く
 移住先の国でもそれを守るよう子供に強要し
 自分たちや家の名誉を守ることに一生懸命になってしまうそうです。
 
 しかし子供たち世代は、欧米などで「自由」「平等」の文化を受けて育つ
 思想ではそうなのに、現実社会では自分のしたいことをしようとすると、非白人なため差別を受ける
 そしてそこを守ってくれるべきは親や家族なのに
 親や家族は「一族の恥」としてその子のふるまいを責める

 こうして追い詰められた子たちはコミュニティ、家族、と感じられるよりどころがなく、
 結果ISなどの組織で「初めて優しくしてくれた」と感じ
 そこに忠誠を誓ってしまうのだそうです。

 カーンさんの場合は、音楽は親の望むことであり自分のやりたいことではない、
 と音楽をやめ、
 アメリカに移住して、苦しむ移民2世を助ける活動をしたそうです
 そして自分だけが苦しんでいるわけではない、と気が付き
 彼らの現実を映画にして伝える活動に行きついたそうです。

 こういう2世たちの苦悩を解決するにはどうしたらいいのか…
 理想としては、移住した親世代が
 何があっても子供を守ってあげることなんだろうけど、
 親の文化とか宗教を変えろというのもなかなか難しいものがある。
 であるとすれば、
 建前では「自由」と言われながら、本当は差別を受ける移民2世たちの苦しみを
 どこかで拾ってあげることなんだろうと思う。

 特に子供たちは、自分の意志で移民の家に生まれたわけでもないし、
 自分の意志で欧米に来たわけでもない。
 せめて子供達には、平等に機会を与えてほしいなと思う。
 
 そういえば最近アメリカでもDACA
 (不法移民の子供で、子供のころアメリカに連れてこられた人は
  在学中で犯罪歴がなければ、2年間滞在許可を与えられる…というもので
  オバマ大統領のとき導入)
 を廃止する、という決定が下されましたが
 子供達が大人の都合で振り回されることはあってほしくないな、と思います。

いろいろ考えさせられました。
というわけで、今回はこの辺で。

2017年08月27日

NHKBS世界のドキュメンタリー「最高の組み合わせ~ユダヤ教徒の結婚事情~」

NHKBS世界のドキュメンタリー「最高の組み合わせ~ユダヤ教徒の結婚事情~」

数日前にやってたもの。
イスラエル2014年製作のドキュメンタリー、
2016年5月に放送されたものの再放送らしいです。

ユダヤ教の中には超正統派と呼ばれる方々がいるそうで、
彼らは男性は全身黒ずくめ、口の回りには長い髭。
女性も長いスカートをはいた独特ないでたち。

そう言えば「地球タクシー」のニューヨークの回で、ブルックリン地区に同じいでたちの方々がいました。
彼らはテレビもネットも使わない、ある意味文明から遮断された生活を送っているとか。

そして彼らの結婚のしかたも独特で、
わずか3回ほどのお見合いで決めるのだそうです。
そんなお見合いに初めて密着したドキュメンタリーでした。

何となくぼーっと見てましたけど、
こういう世界の人たちもいるんだ~とけっこうびっくりでした(笑)

この番組は、3つのケースのお見合いが交互に進行する構成になっていました。
分かりにくいので整理して書いてみます

○厳格な男性信者
 最初は超正統派を学んでいる20代の男性イェヘスゲルでした

 ・いとこからの紹介デート
  最初はいとこから「美人よ」と紹介された女性とお見合いしているところでした

  彼の持論によれば、
  「アドリア海と地中海のどちらが好きか」
  という質問で性格が分かるらしい。
  アドリア海がいいと言う人は穏やか、
  地中海がいいという人は奔放な人なんだそうだ

  最初のデートでは、女性に
  「君はどんな人」と聞いていて
  「海が好き、出掛けるのが好き、活発で社交的」
  そこで彼は
  「アドリア海と地中海どっちか好き?」
  「地中海ね、荒い波がわくわくするわ」
  どうやら奔放な女性らしい。

  彼はこの女性からは
  「どんな生活してるの」と聞かれ
  「半分勉強して半分働いてる」と答えていました。
  別にこれは珍しくはなく、
  超正統派では、1日中トーラーというユダヤ教の法を勉強して、働かない男性もいるそうです

  彼女は
  「1日中勉強している人は   ちょっと…
   質素な生活は想像できないわ」
  それなりに働いてほしい、とのことでした

  彼は
  「19歳からお見合いしてるけど、今まで理想の人に出会ったことがないんだ。
   恋愛は感情に惑わされたくない、
   良縁だと判断する前に感情に振り回されるのは良くない」
  と結婚への考え方を話していました

  お見合いのあと、紹介してくれたいとこに
  「どうだった?」と聞かれ
  「彼女は自己主張が強い、僕たちは合わない」
  と気乗りでは無さそう。
  「一回会っただけなのに?彼女はいい印象だった、って言ってるわ」
  といとこは言うが
  「彼女は快楽主義、好きになるかは分からない」

 ・友人に相談
  そのあと友人にも相談していて
  「迷ってるんだ、彼女は美人だけど、どうしたらいいんだろう」
  3回で決めなきゃいけないから、
  安易に次のデートの誘いができない、
  と話していました

  友人には
  「急いで決めることはない」と言われてました。

  彼は
  「自分は焦りとか、義務感とか、親にすすめられたとかで結婚を急ぎたくない」とのこと

  彼の妹が、3回のお見合いで結婚を決めたが
  3回目のお見合いのとき、既に祝宴が用意されていて、
  自分の意思もなにもなく、
  デートが終わったら親戚がすでに集まっていて、おめでとうと言われたそうです。
  「妹は泣いていた、既に結婚が決められていたと分かったんだ、
まるで芝居だ」
  彼はそんな結婚の仕方はしたくない、納得して選びたいと話していました

  友人は
  「君は育った家よりも自由な考え方なんだね」
  「君が納得できないなら、まだ結婚を決める時期じゃないのかも」
  と話していました。
  雨が降ってきたから話は中断になってましたが…

 ・友人の妻のアドバイス
  そのあとイェヘスゲルは、友人宅を訪れていました。

  「理想の相手って何か分かる?
   自分の中の何かがこれ、と示してくれる。
   それはなんの前触れもなく突然感じる」
  「神の思し召しで相応しい相手は必ず現れる、それも相応しい時期がある」
  とかいう話をしていました
  (私からしたらそんなんあるわけ無いわと突っ込みたくなりますが(笑)、、
  白馬の王子さまの逆バージョンですかねー…)

  友人は
  「僕の妻が君に紹介したい人がいるらしいんだ、
   相手の女性も君に興味を持つかも」
  と話していました

  友人の妻は
  「あなたは結婚に何を求めているの?」
  「120年でも話せる相手」
  友人の妻は
  「愛情ってのは相手と親しくならないと生まれないのよ、
   結婚するまでの姿はお芝居、
   結婚して最初の1ヶ月たって見せかけの期間が終わる、
   そこでやっと愛情が生まれるの。
   私たちが結婚したときもそんなものよ」
  と現実的な話。

  イェヘスゲルは
  「君たちは結婚までに何回デートしたの?」
  「8回だ、君は多いと思うだろうけど、
   離婚経験者なら普通だ」

  「結婚経験のない僕にとっては3回でも多すぎる」
  「彼のような正統派ユダヤ教徒なら3回は多すぎるね、30分以内のデートで決める」

  イェヘスゲルは
  「君たちは十分相手を分かったの?」
  「いいえ、ある意味賭けだった」
  イェヘスゲルは
  「なんでそんな風に決められるんだ?」
  と聞いてましたが
  友人妻は
  「結局24時間一緒になってからじゃないと、相手の本当の姿は分からないわよ」
  そこは割りきらないと、という話でした

  そして話題はイェヘスゲルの見合いに移ります。
  「私はよく分からないんだけど、私の友達に興味があるの?」
  「いくつの人?」
  「19か20よ」
  「美人なの?」
  「かわいいわよ」
  うーん。美人で若い子くらいしか判断基準がないんでしょうね。

 ・友人の奥さんの紹介した女性
  さて新しい相手とのデート。
  今度は彼は、相手の女性にはピンと来たんだそうです

  彼は
  「彼女は完全に打ち解けてくれた、なんでもきちんと話してくれたんだ」
  友人
  「彼女は君の結婚相手だと思う?
   もしそうなら、次のデートでもう少し真剣に話し合ってみたらどう」
  「そんなに早く?でもそうすべきかもしれない、3回しかない大事なデートだからね」

  あせる彼に、友人は
  「これは始まりに過ぎないよ」と笑い、
  「婚約したらもっと話し合いを重ねないといけないからね」

  イェヘスゲルはしみじみと
  「こんなに確信を持てるなんて思わなかった
   でも天からの声が聞こえたんだ、彼女は僕の結婚相手だと」

 ・友人妻の紹介女性と3回目のデート
  イェヘスゲルは思いきって
  「君のお父さんと話したい」と思いをぶつける。 
  「3回会っただけだけど、僕は結婚したいと思ってる」
  とストレートに求婚。

  彼女は
  「なんと言えばいいのか…」

  「君も同じ気持ちでいてほしい」
  「私はゆっくりと着実に物事を勧めるのが好きなの」
  「君は確信が持ててないんだね、僕は確信がある、君と絆を感じる」
  「私も少しは感じるけど、自分の選択肢が正しいと信じたい」
  二人には少し温度差があるようです

  「多分君はそういう気持ちになってないんだ、
   もしそうならそういう風にはならない」
  「そうかもしれないわね」
  「あと2回くらいはデートできる、
   もし君の気持ちを変えるための手助けができるなら
   今すぐにでもラビの承認をもらいたいくらいだ」
  「あなたは確信があるのね」
  「そうだ、僕は感じる、君は僕のもの、僕は君のものなんだ、て」

 イェヘスゲルくん、最初
 「感情に振り回されたくない」
 って言ってたけど
 今の状態が感情に振り回されてるんじゃ…
 という突っ込みはさておき(笑)
 彼の恋やいかに?

○離婚歴のある女性
 次に出てきたのは、結婚相談所みたいな所を訪れる女性2人。

 一人は未婚の24歳、もう一人は離婚歴のある25歳のメラヴという女性。

 後で分かったけど、
 この宗派の人たちは、
 仲人と呼ばれるオバサンたちが結婚の斡旋をするらしい。
 仲人さんたちが、色んな未婚男女について、どこの生まれとか仕事、身長、性格、美人かどうかなど、
  情報を集めて経歴を紹介しているそうです
 3回のお見合いで済むのは、仲人さんたちの情報ゆえらしい。
 仲人のおばさんたちは、
 成立したら謝礼をもらい、
 それで生計を立てているらしい。

 ・仲人との面談
  メラヴは大学在学中に結婚し、半年で離婚したそうです
  今は大学院に通い、メディアと起業について勉強しているそうです
  「離婚歴があると、いい条件のお見合いは持ってきてもらえなくなる」
  と話していました

  「なぜ離婚したのか」と仲人に聞かれ、
  「性格の不一致」
  「結婚までにデートは何回?」
  「8回した、最初に出会った人だった」
  でもいい経験になったそうです

  ただ、そのときの仲人については
  「相手の男は何て言ってたかたか、しつこく聞いてくる」
  「年齢や身長のサバを読んでた、相手は28歳って言ってたけど33だった」
  「離謝礼は2000ドル払った、
   次結婚するときの仲人にも払わなきゃいけない」
  と若干不満そう。
  それでも、
  「離婚したのは仲人のせいじゃないからしょうがない」
  のだそうだ。

  彼女は
  「相手に望む条件は」
  と聞かれ、
  賢い人、東欧系のユダヤ人、
  相手に離婚歴があってもいいけど子供はいない方がいい、
  と話していました。

 ・既婚者女性の経験談
  別の日に、
  メラヴは別の結婚間近の友人と話していました
  その友人は離婚歴があるそうです
  「子持ちの人は嫌」
  と言う彼女に対して
  「私は離婚歴があるけど、子供は一人いる、
   婚約者も二人子供がいる。
   でも子供にこだわる必要はない、と悟ったの。
   問題は相手との相性よ」
  と話していました

  しかしメラヴは
  「30歳まではこの条件にこだわると思う」とのこと
  「30歳になったら年齢的なプレッシャーがあるし
   家庭を持ちたい思いが強くなれば考えは変わるかも」
  とのことです

  この友人はまた、
  「例えば24歳の人が結婚するなら相手は25、6よね、
   その年頃の男性は世間なれしている。
   彼らは24歳より19歳の子の方がいいと思うはず」
  という話をしていました

  若い女の子の方が受け身で、男性の思うようにしやすいし、
  子供をたくさん作るなら若い方がいい、と考える人が大部分だ、と。

  メラヴも
  「24くらいになると女性も自分の生き方を自分で何とかしようとする、
   それに男性は怖じ気づくのよ」
  友人は
  「同じスタート地点にすら立ててないのよ、
   私達は高校で勉強するから未来を考えられる
   男の人は宗教しか勉強してない」
  と話していました。

  そのあとは結婚間近の女性の式の段取りの話などして、
  それによれば、
  正統派では結婚式をしたら、
  新婚夫婦はイフード・ルームというところで二人きりになるのだそうだ、
  伝統では10分くらい。
  男性はベッドがあるとか思ってるけどそういうところではないらしい(笑)

  聞いてると、男の方が戒律に縛られ過ぎて夢を見ている。
  女性の方が現実的で強い感じですね(笑)

 ・仲人オバサンたちの会合
  さてメラヴはそのあと、
仲人さんに条件を聞かれていました
  いっぱい条件を言っても全部の条件を満たす人はいないわよ、
  とは言われてましたが。
  仲人さんはユダヤ人の宗教の集会で、未婚男性に女性リストを紹介する場があるが、
  そこにいれてもいいかと確認されていました
  「是非お願いします」

  そのあと、仲人のオバサン同士が会合を開いていました
  「私が紹介したいのはこのメラヴという女性、
   話してみたけど美人だし、とても賢くていい人よ、
   ただ離婚歴がある」

  メラヴが賢い人を望んでいるようだ、という話になると
  別のおばさんが
  「いい人がいるんだけど。身長180㎝、実業家よ」
  「ただ、彼が離婚歴のある人をいいと言うかどうかね、確認しないと」
  「彼の母親は離婚してるから、理解はあるかも」
  「まず男性側に聞くわ」
  という段取りの打ち合わせをしていました

 ・お見合いのゆくえ
  そのあと
  仲人が意中の男性に電話し
  「紹介したい人がいるの、
   美しい人で今は法律を勉強していて、事業をしようとしてる」
 
  しかし
  「離婚歴があるの」
  と言った途端、相手の反応が悪そうで
  「そんなに気になる?そんなに?そんなに離婚歴がある人が抵抗あるの?」
  オバサンは
  「一度会ってみて欲しいの」
  と食い下がるが、やがて
  「そう、分かったわ…」
  断られたみたいです

  そのあと、メラヴは仲人さんに
  「あなたはもう少し妥協しなさい」
  みたいなことを言われたが
  メラヴは
  「子供がいたり、正統派でない人、望んでない民族の人を紹介されても
   自分の中では納得できないことは分かってる」
  と譲りませんでした

 さて彼女の将来はいかに?

○意気投合したカップル
 次のケースは二度めのデートですでに意気投合していたカップルです
 男性はアリエル、女性はエスティという方。

  アリエルは現在学生で、戒律に基づく殺の実習を勉強中だそうです
  (正統派の男性は、勉強して働かない人、と殺業など決まった職業に就く人が多いのだそう)

 ・二回目のデート
  彼らは二回目のデートで既に家庭の話をしていました。
  「子供の教育方針は?」
  「正統派の教育を受けさせたいの、教育には最初の数年が重要よ」
   テレビやインターネットのない正統派の生活をさせたい、と話す

  (この宗派は現世的な誘惑から逃れるため?か何かの理由で、
  テレビやネットなどはなしの環境で暮らしているみたいです。
  今の時代に珍しい文化ですね)

  「夫には何を求めてる?」
  「何よりもトーラーの勉強ね」

  アリエルはしみじみと
  「君が紹介されたどおりの人で良かったよ、服装も育ちも」
  二人はうまくいきそうな雰囲気でした

  エスティはそのあと母親と
  「一回目に会ったときよりうまくいった、話していて打ち解けた、心地よかった」
  といい感触と話していました。

  しかし母親は厳しい顔で
  「3回会ったら決めなさい」
  「正しい方向に進んでいるならそれは神の思し召し、
  だらだら続けて半年で別れるケースはみっともない」
  と話していました

 ・アリエルがエスティの父親と会う
  そのあとアリエルはエスティの父親に会いに行く。
  「初めまして」
  「君はと殺の実習中だそうだね。
   と殺業は火星の元に生まれた人がいいんだ、君はいつの生まれだね?」
  「(ユダヤ教の暦で)11月です」
  「水の生まれだな、別の仕事にした方がいいぞ」
  とは言っていましたが
  彼が勤勉な学生であることに好感を持ったようでした

  しかし、この会話短い。彼はあっさり帰りました

 ・アリエル、両親と話し合う
  そのあとアリエルが自分の両親の元を訪れる
  「彼女の父親と話したんだけど、そのあと話し合うって言ってたよね?」
  と結婚の相談を始める
  「あちらのお父さんは、シナゴークの先唱者(祈りを導く人)をしているらしくて
   父さんと似ている人だったよ」
  「そんな人いるとは思わなかった」
  「きれいな人かしら」
  両家ともゴリゴリの正統派なのが良かったようで、二人とも好意的でした

  ただ、彼はまだお見合い3人め。
  父親はそこが気になるようで
  「そんなに急いで決める必要はないんじゃないか」
  「どうして」
  「母さんは決めるまで10回見合いした」
  「僕はラッキーなんだ」
  「相手の民族が同じか、正統派かどうかも気になる。
   別に差別主義者ではないが、お前は長男だ、
   他の兄弟のお手本になるだろう」
  「そこは心配ないよ」
  母親も
  「彼女はどんな人柄なの?」
  と心配そう。
  「それを知るためにデートするんだろ」

 ・エスティの両親
  一方エスティの両親も会話中。
  お父さんは
  「いい青年だ」
  と彼に好印象を抱いたようでした。
  ただ、
  「どのくらい援助をすべきか調べないと
   彼らが結婚したあとどこに住むか聞く必要がある」
  と話していました

 ・3回目のデートでエスティがアリエルの家訪問
  エスティがアリエルの家を訪問していました。

  彼女は緊張した感じで、母親が飲み物を勧めるものの断る
  父親は彼女に、
  「息子は色んな人を連れてきたけど、話した感じや見た印象は君が一番いい。
   今すぐにラビの承認を受けにいってもいいくらい」
  と手放しで喜ぶ。

  それから面接のように、二人で彼女の家族について質問していました。
  「君の家族が正統派かどうかが気になる、
   テレビなどが家にあるのは好ましくない」
  「うちはそういうものはありません」
  「うちの近くに住むことは…」
  「それはすぐにはお答えできません」
  「料理は」
  「します、得意じゃないですけど。教わります」

  そして
  「もう行かなきゃ」とおいとまする。
  「あら、もう帰るの、息子に飲み物もらってね」

  彼女が去ったあと
  「きれいな人ね」「穏やかな人だね」
  と取りあえずは合格点みたいでした

  さっきもそうですが、話し合いがかなり早くて合理的ですね。

 ・母と娘の口論
  それからしばらくして。
  交際は順調みたいですが、
  デートを重ねるのに結婚を決めない娘エスティに、
  母親は苛立ちをぶつける

  この辺感覚がよくわかりませんが
  この宗派?地域?では、結婚をさっさと決めずにだらだら交際するのは良くないというか、神の心に反するみたいです

  「結婚を決めなさい、するなら先に進む、
   しないなら別れる」
  と結婚を迫る。
  「これ以上デートを重ねたら、触れたりこれ以上の関係になる、それはダメよ」
  「彼もあなたも、他の人とお見合いする機会を逃すことになるのよ」
  と諭す。

  娘は
  「彼は結婚するつもりよ。私も彼も他の人とはお見合いはしないわ」
  「だったら先に進みなさい、結婚しなさい」
  「もう一回会って話をさせて」
  「いいわ、でもあと一回で決めなさい」

  そしてなぜか母親は泣き出す
  「私はあなたが気がおかしくなったと思って心配してるのよ」
  「私はまともよ」
  「あなたがデートにいくたびに気がおかしくなりそう、
   もう耐えられないのよ。
   あなたが幸せな結婚をすることを望んでいる」
  「だったら好きな人と結婚させて」
  「ええ、そうしなさい。
   あなたも20年もしたら娘ができる、そしたらこの気持ちはわかるはず」
  「自分に子供ができるまでそんな気持ち分からないわ」

  そして母は神に祈り、泣く
  「神のご加護を、娘が伴侶と共に家庭を築くことができますように」

 ・アリエルも親からプレッシャーを受ける
  一方アリエルも、母親から注意されていました
  「相手のお父さんから連絡があったわ、先方はあなたに誠意がないと思ってる」
  「誠意はあるよ」
  「あなたたちは長いこと付き合いすぎだわ、どんな計画なの?」
  「相手のお母さんと話してみるよ」
  「そうしてちょうだい」

  とにかく恋人期間は短い方がいいみたいです。

 ・アリエルとエスティの話し合い
  エスティは追い詰められているせいか、アリエルに決断を迫る
  「お母さんと話す必要があるわ、私たちの地域では長く付き合うことは許されていないの。
   なんのために先送りするのか分からないわ」
  「僕にプレッシャーがあるのは分かってる、
   でもじっくり進めたいだけなんだ」

  「分かるわ、私も怖い、
   物を衝動買いして後悔するのとは違う」
  エスティは理解を示しつつ、
  「でも神のおかげでお金などは心配ない、特別私たちの結婚が早い訳じゃない。
   一緒に働いて頑張ればいいのよ」
  「僕はいま学生だ、実習中だ」
  「それは分かってるわ、あなたはそれを続ければいい、何かを奪うわけじゃないでしょ?」
  「2、3ヶ月待つくらいそんなに変わりはないだろう?」
  「大有りよ、私は女の子としてのプレッシャーもあるの、
   もうすぐ高校を卒業よ、卒業したら結婚すると思われている」

  エスティはため息をついて
  「これじゃ結婚するときも先が思いやられるわ」
  「できるかどうかだけどね」
  別れ話まで持ち出そうとするアリエルに、エスティが
  「冷静に話し合いましょう、これじゃ混乱したまま母親と会うことになるわ。
   …母親にはせっつかれているの」

  アリエルは彼女をなだめる
  「お母さんにはちゃんと話すよ、
   来週にはラビの承認をもらいにいく、再来週にはもらえるはずだ」

  …相性は良さそうなのに、自分たちのペースで進められないのが何となく気の毒に感じました。

さて彼らの結婚のゆくえは?

○3ケースその後
…さてこれらの3ケース、一体どうなったか?
 最後に字幕でその後が示されていました。

 イェヘスゲルは「こんなに確信を感じたのは初めて」と運命すら感じた女性には断られ
 厳格な宗派の勉強を止める決意をしたらしい。

 メラヴはお見合いは中断し、法律の勉強に励んでいるそうです
 誕生日には
 「相応しい時期に、相応しい伴侶と結婚できますように」
 とお願いしていました

 エスティとアリエルはその後幸せな結婚をし、
 アリエルの実家の近くに住んでいるそうです。

○感想など
・所々に「ラビの承認が…」とあるので、ラビってなんだ?と思い調べましたが
 コトバンクによれば
 「ユダヤ教神学校で教育を受けた教師で、典礼上の事柄を判定し、祭式を司り、説教を行う者をさす」
 とあるので
 神父さんとか牧師さん、神主さんみたいなもんかなと思いました。

 Wikiでも
 ・律法学者
 ・シナゴーグの指導者、コミュニティーの指導者
 「地域で行われる宗教的な行事をとり仕切るなど、どちらかといえば日本の神社の神主や寺の住職に近い。
 また旧約 聖書の研究をするなど、中世キリスト教の神学者にも似ている」

 とあります。
 イスラム教の指導者よりかは権力が緩く、
 地方の偉い人、というイメージなのかなと思います。

・このユダヤ宗派マニア?的な方もいるみたいで
 http://seiwanishida.com/archives/1468
 のページにも詳しく書かれていました。
 この方、イスラエルの彼らのコミュニティをうろついたり
 ニューヨークのブルックリンにも行ったりしているというからかなりの筋金入りファン。
 (たしかに彼らの黒ずくめ長髭のいでたちカッコいい、ってのも何となく分かるが)
 文章も面白かったです。

 今回のドキュメンタリーでも
 この宗派では、トーラーの勉強で仕事を全くしないという男性も少なくない、
 という話がありましたが、

 このページによれば
 2014年の時点で男性の就業率は50%以下、
 一方女性は70%なんだそうです
 (このページでは「ヒモ男子」と称されていました(笑))

 法律の勉強は尊いから、女性は金銭的に稼いでそれを支える、
 ということなのでしょうか。
 正統派で男性側が働かない家は暮らしも質素にしているようで、
 最初の男性なんかはそれをよしとしている感じでしたね。
 (最初のお見合いの女性を「快楽主義」と批判的でした)

 このドキュメンタリーでも、
 女性の方が現実的な考え方の人が多かったけど、
 そういう社会事情が反映されているんでしょうね。

 女性が稼ぐ…。
 女性は家にいろ、的な日本社会にいる私にとってはやや羨ましいが、
 でも働かないだんなのせいで質素な生活、てのは嫌かも…(笑)

・3回の見合いで結婚するシステム、てのは
 昔の日本に似てるなぁと思います。
 親とか世話焼きオバサンが決めて持ってきて
 出会ってから恋愛が始まる…

 しかし考えようによっては、
 素性が分かってから付き合える方が合理的なのかもしれないですね。

 日本でも、「見合い結婚」の時代が終わり、
 「自由恋愛」になったけど、
 最近は結婚サイトという名の「お見合い結婚」に回帰している感もある。

 (実際だんなの職場では、女の子の出会いが少ないとかで
 職場結婚でなければ、紹介所で出会って結婚、てのが多いんだそうです。

 だんなと「それもある意味いいかも」て感じの話をしたことがあります。
 趣味とか趣向がだいたい同じ人を探してくれるんだし、
 紹介してくれたからって結婚しなきゃいけないわけじゃないし、
 出会いを探す手間が省けると思えばいいのかなーと思います)
 
 まぁでも、見合いってよくわからんまま結婚してるのに
 離婚したら傷物扱い、てのは理不尽だなぁと思います。
 メラヴさんとか、綺麗で頭も良さそうなのに勿体ない。
 これも昔の日本と同じですよね。お見合いしても実家帰ったら恥さらしになるとか…

 それでも昔の日本は、
 女性は結婚しないと生活できないから泣き寝入りも多かったんだろうけど、
 ユダヤ教正統派の女性は、
 どっちみち働くために手に仕事を持つから、
 その点強そうだなと思いました。
 再婚同士なら連れ子がいても寛容な雰囲気も感じました。

 さてここからは個々のケースへの感想。
・最初の男性イェヘスゲルくんは
 戒律を守っても自由恋愛みたいなものはできる、と夢見ていた感じだなーと思いました。

 妹のケースを見て、自分は親や周りの言いなりにはならないぞと思っていて、
 でも自分が守ってきた神の教えは守りたい…
 その葛藤に迷っていくうちに、
 ちゃんと神の教えを守っていたら運命の相手と出会えてラブラブになれるはず、
 というある意味都合のいい?解釈になったのかもしれない。

 しかし現実を見て、
 それはよっぽど運に恵まれた人たちのケースだ
 (最後のカップルのように)と悟ったのだろう。
 3回ごときで、運命の相手を見抜くのは無理がありますよね。
 ほぼ運任せのギャンブルみたいなものに近い…
 その結果が「厳格な宗教の勉強を止める」という決断だったのかなと思いました。

 この宗派の中でも、もっと自由に生きたいと、
 親と断絶状態になりフツーの生き方(ネット見たり自由恋愛したり)をする人もまれにいるそうです。
 イェヘスゲルくんはどうなるか分からんが
 現代の世の中、煩悩も自由も有りすぎなので、
 宗教を貫くのも大変なのかもなーと思いました。
 宗教など、ある程度の制限を受け入れてその範囲内で生きるか、
 自由を選択するか。

 まぁでも、自由を選択すれば幸福になれるかと言えばそれは別の話なのよね。
 お見合いを受け入れた方が幸せなこともあるし。
 ゆえに人生は難しい。

・2番目のメラヴさんのケースは、
 宗教を守りつつも、自分をきちんと持って生きる女性の強さ、みたいなのを感じました。
 女性は離婚歴があると大変みたいだけど、
 宗教しか勉強できない男性の方がある意味不自由なのかも?

・3番目のカップルは、自由に結婚のしかたとか決めさせてもらえないのが、
 自分ならイラッとするだろうな~と思いました
 自由に決められる時代に生まれて良かった~

 まぁでも
 「だらだら付き合ってるのはダメ」
 という感覚は、この宗派でない自分には理解できないんですが、
 子供を心配する母親の気持ちは同じなんだろうなーと思いました。

 自分のいるコミュニティの習慣にそこそこ従って結婚して欲しい、
 あんまり変わったことすると目立つし、フツーが一番。
 ていう感覚なのかな。

 でもこれ日本人にも通じると思う。
 家族制度が思想を作るという考え方で言えば、
 この宗派、日本人と考え方が似てるかも。

 世界にはいろんな宗教、習慣がありますねー。
 多分日本のお見合いとかも、欧米から見たら窮屈だと思われていたんだろうなぁ。
 そういう違いを知るだけでも
 世界ってひろーい、人間って面白ーい、と思えますね。

 BSってこの辺自由なのでわりと好きです。
 というわけでだらだら書いてしまいましたが、今回はこの辺で。