2017年05月15日

NHKBS「エマニュエル・トッドが語るトランプ・ショック~揺れる米中関係~」

NHKBS「エマニュエル・トッドが語るトランプ・ショック~揺れる米中関係~」

米中関係の今後について、
歴史人口学者、家族人類学者のエマニュエル・トッド氏に
インタビューした番組です。
彼はソ連崩壊、イギリスのEU離脱など、数々の「予言」をされているそうなんですが、
それを抜きにしても、彼の独特な世界の見方が個人的には好きですね~
今回の米中についても、経済学者にはない視点からの分析をされていました…

というわけで内容から。
○第1章 自由貿易に疲れはてたアメリカと中国
 最初に中国の現状から。
 ・中国企業の危機感
  松江経済技術開発特区というところで開かれた
  地域の企業200以上の経営者によるシンポジウムが舞台でした。

  主催者は、中国の下請体質からの脱却を呼び掛けていました
  「中国は製造業から、クリエイティブ産業に生まれ変わらねば」

  参加者は、保護主義を掲げるトランプ氏を意識した発言が多かったそうです。
  「トランプ氏は製造業に力を入れているから、我々と競合するだろう」
  「我々は休まずに働いて対抗せねば」

  下請けが多い中国は、自由貿易による競争激化で苦しんでいるそうです。
  生産が世界の2割を占めるという靴下メーカーを取材していましたが、
  多くは海外企業のデザイン、つまり受託生産がほとんどとのこと

   責任者の方は、
   「中国人は苦しみや辛さに耐えられるから、
    長時間働いても休みたいとは言わない」

  こうして中国は、安い長時間労働力を武器に、
  欧米向けに安いポリエステル製品を作ってきたが、
  インドやパキスタンとの競争が激しくなり、
  売り上げは2年前から落ちているらしい
  「コストダウンをしたいが、生産効率は限界にきている」

 ・トッド氏の見解
  トッド氏はこの状況をどう見ているか?

  「米中は1つのカードの表裏のようなもの、
   しかし中国には主導権はなく、
   実質的にはアメリカが中国を支配していた」

  彼によれば、
  中国は目覚ましい経済成長を遂げた、と世界に称えられているが、
  それは違う、とのこと。
  実際は中国が日米欧に安い労働力を提供し、
  日米欧はそれを利用して莫大な利益を得てきた

  これについては誰も指摘しないが、
  「中国自身の努力により成功した」
  と言っておく方がこれらの国にとって都合がいいからなのだそうだ
  「中国は彼らにとって夢の国だ」

  彼はさらに、
  アメリカは中国を「支配」してきたが
  自由貿易で負の影響を受けているのはどちらも同じと指摘している

  グローバル化はあらゆる社会に歪みをもたらした
  彼のいう「グローバリゼーション・ファティーグ」

  これはアメリカも中国も同じで
  中国では近年、成長鈍化や人口減が見られるが、
  アメリカでも中国の競争のあおりを受けて国内工場が閉鎖、
  失業が増え、45~55歳の白人の自殺率が上昇しているとのこと

  これは2001年の中国のWTO加盟について書かれた本にあるそうで、
  トランプ氏の勝利にはこのような背景がある、と述べていました。

  そして、
  「米中は補完的な関係を築いてきたが、
   今はどちらも自由貿易がもたらした危機に面している、
   だからこそ互いに交渉せねばならない」と述べていました。

  しかし現状では、アメリカが一方的に保護主義を掲げている
  中国の経営者はそれを憂えているようです

 ・アメリカの保護貿易を憂える経営者
  上海のGMの部品代理店経営者の方がいました。
  彼はトランプ氏の保護主義政策の影響を考えると、夜も寝られないらしい

  彼はGMにも何度も表彰されたことのあるほどの優秀なディーラーで、
  アメリカの商品を売って生活してきた、
  自分達がアメリカ商品の中国での販路を開拓してきた、
  という自負があるようでした。

  「中国とアメリカで貿易戦争になったら確実に私は被害者になる、
   しかしアメリカの企業も工場も労働者も被害者になるはず。
   厳しくなるのはどちらも同じ」

  仲間の経営者も
  「トランプ氏は政治家ではなくビジネスマン、影響はあるだろう。
   今はまだいいが、具体的な政策が出てきたら大変だろう」

  そこで米中首脳会談では、この問題を話し合うことが期待されたが、
  双方の合意には至らず、
  貿易不均衡を是正するための計画を100日かけてたてる、ということだけ決められた

  この会談では、それよりもシリア空爆や北朝鮮問題があったので
  次はそちらに話題が移っていました。

第2章 北朝鮮危機、軍事行動の狙いは何か
 アメリカはシリアを攻撃、
 また北朝鮮近くに空母を派遣するなど、各方面に軍事圧力を強めている

 トランプ氏の決めた軍事行動についても、トッド氏に尋ねています

 彼は、アメリカのシリアへの軍事行動については
 「トランプ氏がシリアにしたのは、
  古い軍事工場を破壊し、トマホークを飛ばしただけ」
 
 彼にはトランプ氏の狙いは分からないそうですが、
 軍事行動によりアメリカの強さを世界に見せつけた、とは思わないらしい。
 「本来、本当の力があれば、軍事行動の必要はない」
 軍事行動はむしろ自国の弱さをさらけ出すようなもの、と話していました。

 また北朝鮮政策についても「感心しない」と述べていました
 アメリカは北朝鮮に働きかけるよう中国に圧力をかけているが、
 これは中国の意向を無視している、とのこと

 中国が本当に望むのは北朝鮮を破壊しないこと、
 この地域の安定を保つことで、
 それは理性的な判断に思えるそうです。 
 「私は経済的な視点からは中国の指導者を批判しているが、
  政治的には中国の方を信頼している」
 「そもそもトランプ氏が、
  この地域の地勢学的なバランスを理解しているか疑問」
 とも話していました。

 また、米中の軍事行動を見るときは、
 国内向けなのか対外の利益のためなのか、を見極める必要があるそうです。

 そして、今回のトランプ氏の軍事行動は、
 国内向けには効果があっただろう、と指摘しています。
 トランプ氏が軍との緊密さを国内の知識階級に見せることで
 彼に批判的な人たちも、トランプ氏を評価するようになったのだそう。

 しかし今後についてどうなるかは分からないので、
 「とにかくトランプ氏や周りの人たちには落ち着いてほしいと願う」
 と話していました

 次は米中関係についてです。
第3章 アメリカと中国 対立を乗り越える可能性は?
 中国人ビジネスマン何人かの街頭インタビューでは
 「中国とアメリカはうまくやっていけるはず、やっていくべき」
 というような意見が多い。

 そこで米中はそもそもうまくいく可能性があるのか、トッド氏に質問していました。
 トッド氏は、家族制度がその国の思想や制度などに影響する、と考えており
 家族制度から米中関係を分析していました

 それによると、
 アメリカは両親と子供が基本の絶対的核家族システム
 アメリカでは、子供は成長して結婚すると、子供の家族は親から独立する

 一方中国は大家族制度
 両親の元に生まれた子供は、家族ができても兄弟みんな親の元に留まる
 このため両親の権力は強いが、
 そのもとに兄弟はみな平等と考える傾向がある

 トッド氏によれば、こうした家族システムはものの見方にも影響するそうで
 アメリカの場合、個人の自由を認める社会。革命は起こりにくい
 一方中国は、強い権威者のもとでみんな平等な社会。
 権力者が強いうちはまとまるが、権力者が弱くなると革命が起こりやすい

 「この2つの社会の相性は?」
 との質問には
 「それぞれ理論的には反対の社会だが、話し合いは可能」
 というのは、アメリカの考え方では、他者のいろんな国家を認める
 中国は世界の人はみんな平等、と考える
 つまりどちらも他者をフラットに考えるという共通点はあるので、
 話し合う余地はあるそうです。 

では具体的に何について話し合いをすべきか?
次はその話をしています
第4章 新たな保護主義に向かうことを恐れてはならない
 「米中対立を解消するためにはどうすべきか?」
 という質問に
 トッド氏は
 「私は神ではないからこうすべきとは言えないが…」
 という前置きをしつつ
 「若い経済学者が、
  トランプ氏やその支持者と共にもっと保護貿易を研究し、
  賢明な政策、新しいコンセンサスを作ること」
 と述べている

 自由貿易を守るべきだ、と思う人がほとんどだと思うのですが、
 トッド氏は「アメリカがもっと保護貿易を研究し、進めるべきだ」と述べています。
 
 「保護貿易は世界にとってはマイナスではないのか?」
 との問いにトッド氏は
 「まず、自由貿易の反義語が保護貿易と考えるのは間違いだ」

 自由貿易は単一の空想、イデオロギーだが、
 保護貿易は複数の形があるそうです。
 保護貿易は必ずしも悪いものではなく、
 実際ビスマルク時代のドイツでは、保護貿易がむしろ貿易を増やした、
 と指摘しています。
 当時のドイツでは、
 産業革命の成功したイギリスから自国産業を守るために
 ビスマルクが保護貿易を行ったが
 ドイツの機械業は復興し、賃金が上昇、内需が拡大した

 「高い関税があっても、どんな国でも耐えられるんです。
  特にアメリカなら問題ないはず」
 アメリカでも多少の軋轢や消費の落ち込みもあるかもしれないが
 次第に国内産業が復活するだろう、とのこと

 トッド氏は
 「中国への影響は分からない」としつつ、
 世界の経済学者は保護貿易を頭から拒否し、まともに研究すらしない、
 と批判しています。
 そして、アメリカ単独ではなく
 中国との調整による
 「協調された保護貿易」
 を提案しています。

 これは、どの品目、どのタイミング、どの程度保護貿易にするかを
 双方が決め細やかに話し合うこと、
 それも産業だけではなく、
 将来の社会像も見据えながら考えることだ、
 と述べています

 今後はアメリカの動向に注目すべきで、
 トランプ氏が保護貿易を諦めないかどうか、
 上下院が保護主義を採択するかどうか、を見極めねばならない
 とも話していました。

 (別の本では、アメリカ、イギリスなどアングロサクソン系は改革の国なので
  期待している、とも話していました)
  
しかし、保護貿易にはまだ考えるべき問題がある。
それは「人材の流出」なのだそうです。
〇第5章 どうなる米中関係 鍵を握るのは保護貿易のパラドックス
 トッド氏は
 「保護貿易は物の移動を制限するが、
  人の交流や移動は制限できない。
  そこが中国にとってのアメリカ保護主義の真の問題になる」
 と指摘していました。

 彼によれば、
 既に中国では人材流出の問題は起きていて、
 移民や留学生がアメリカはたくさんいるが
 (アメリカに来る留学生の28%くらいは中国人)
 その多くは母国に戻らず、優秀な人材が流出している
 保護貿易は、その流れを加速するのだそう。

 というのは、アメリカが保護貿易をして国力を上げれば、
 アメリカは優秀な人材が必要になるので、優秀な学生を引き留めようとする
 また、優秀な人材は、お金や物がある方に引き寄せられる
 このため、中国からアメリカへ、
 資本だけでなく人材も流出する

 それでもトッド氏は
 「少数ではあるが帰ってくる人がいる、
  私は彼らに期待している」と話していました。
 自由貿易から保護貿易へ、
 世界の枠組みの変化に対応するためには、
 彼らエリートの役割が重要なのだそう。

  実際、上海の松江経済開発特区では
  新技術を開発している研究所がいくつかあるそうで、その紹介もされていました。
  これらの研究所は、海外企業との共同研究が土台となって生まれたそうで
  3Dプリンターの研究所では、人口骨、義歯の開発、
  生物系の研究所では、新薬開発などもされていました。
  ここで働いている人たちは、
  海外で留学して帰ってきたエリートが多いそうです。
  習近平主席もこれには期待しているそうです。
 
 また、トッド氏は
 「人口学的には中国の将来を悲観している」と言いながらも
 「中国は助けるべき、アメリカも変化すべき
  両国のエリートが交流すれば、
  アメリカにとっても助けになる」
 と述べていました。
 
〇米中の今後にとって大切なこと
 トッド氏は
 「米中が協調した保護主義に向かえるかどうかは
  経済だけではなく、両国の全体の関係を決める鍵になる」
 と話していました。

 アメリカ社会は今、2つの勢力の対立により不安定な状態なのだそう。
 1つは保護主義によりアメリカを再建しようとする勢力
 もう1つは自由貿易に留まり、グローバル化を推奨する勢力
 アメリカ大統領選挙で一応保護主義勢力は勝利したが、
 完全な勝利ではなく、世論はまだ分断している

 しかし「トランプ氏個人を問題にするのはやめたほうがいい」
 とも述べています。
 というのは、
 オバマ政権でも一定の保護主義政策をしていたし、
 サンダースも保護主義を主張していた。
 政権に関係なく保護主義の流れができている、とのこと

 また、米中は今トランプ氏の起こした「革命」で不安定な状態だが
 戦争のような事態にはならないだろう、とも話しています。
 「どちらの国も、他国への侵略や覇権の拡大は考えていないはず、
  両国の首脳とも、関心を持っているは自国の再編成だけ」
 トッド氏は
 「私の関心があるのは、トランプ氏の保護主義がうまくいくかどうかだけ」
 だそうです。
 
アメリカが本当に保護貿易を進めていくのか、
米中が新たな時代のコンセンサスを作れるのか、
それが世界の将来にもつながる、
という感じで締めくくられていました。

感想など
・中国の成長については、海外主導によるものだが海外はそれを隠したがる、
 という指摘がありましたが、
 中国の指導者たちも、自国主導と言いたがる傾向にあるように思いました。
 それはおそらく、トッド氏の家族制度的に分析すれば
 「中国はうまくいっている、指導者も安泰」と大衆に知らせることで
 革命を起こされないようにするためなのだろう。
 
 トッド氏はまた、別の本で
 「中国は「平等社会」なので、ほかの資本主義国よりも格差には耐えられないはず」
 とも指摘していました。
 
 であれば、中国の教育普及が進み、海外で学ぶエリートが少数ではなく大多数になったとき、
 今の指導者の矛盾に気づいて、革命が起きる可能性はあるのかしら…

 中国って、今は格差が大きいせいか、
 何とかして少数のエリートになりたい、ほかの人を押しのけて前に行くぞ、
 みたいな感じで競争が激しい気がする。
 なんか殺伐としたイメージがあるのですよね。
 もうちょっと余裕ができる社会になって、
 「平等社会」らしく、お互い助け合う
 中国独自の制度が生まれるといいなと思いました。

 まあでもそのためには、真実を学ぶより、
 愛国心を育てることが主眼となっている現在の教育から改革しないといけないから
 なかなか難しいのかなあ…
 その辺も海外で教育を受けたエリートが改革してくれるといいのだが。
 共産党に都合のいいことに関してだけ、海外の人材を活用するようでは
 中国もこれから厳しいのではと思いますが。。

・自由貿易の限界については、
 以前ほかの本でトッド氏が
 「自由貿易は最初はいいが、
  人件費がコストとみなされ、賃金低下の圧力が強まり、内需も縮小する」
 と指摘されていてなるほどと思いましたが、
 (実際、デフレスパイラル、低価格競争は起きている)

 しかし保護貿易を研究すべき、という彼の意見は
 いまだにほとんどの経済学者の中では議論に上っていない気がする。
 保護貿易ってどうしても、
 第二次大戦前のブロック経済の忌まわしい記憶と重なってしまうのだろうか。
 
 それとも、理論的に本当に無理があるのかな?
 以前安田洋祐氏が別の番組で
 「保護主義的な政策は、成長段階の国なら有効(戦後の日本も同じ)だが、
  成熟した国が採用してもうまくいくかどうか」
 と話していたのですが、理論的にはそうなのかな?

 トランプ氏もあんまり学者を採用したらがないし、
 トッドさんの期待はあんまり実現しないように思えますが
 可能性があるなら学者さんに何でも議論してほしいかなとは思います。

・「中国にとって、保護主義の真の問題は人材流出」
 という指摘はなるほどと思いました。
 ただ、中国の人材流出は、経済力の違いだけではなく、
 特殊な政治システムとか思想などによるものも大きいとは思うのですが…
 なんとなく、自由に意見を言いたい人が生きにくい社会、だと思う。
 (住んだことないし、イメージですけど)
 もう少し、共産党とか思想が柔軟になれば
 母国のために頑張ろう、という人が増えるのではと思いました。

彼の視点は毎回面白いな~と思います。
いろいろ勉強になりました。
というわけで、今回はこの辺で。
続きを読む
posted by Amago at 13:13| Comment(0) | テレビ(お金) | 更新情報をチェックする

2017年04月04日

NHKスペシャル「マネーワールド 資本主義の未来 「“トランプ経済”は世界を変えるのか!?」」

NHKスペシャル「マネーワールド 資本主義の未来 「“トランプ経済”は世界を変えるのか!?」」

 爆笑問題がMCで資本主義の問題について話し合うシリーズ。
 今回はアメリカのトランプ大統領の政策についての話でした。
 もうちょい切り込むかなと思っていたけど、
 わりとマイルドな内容だったかも…

〇トランプ氏の相反する政策
 最初はトランプ氏の相反する政策についての話でした。
 トランプ氏の政策の特徴は
 ・政府の介入による雇用創出
 ・法人税などの減税
 ・規制緩和
 ・保護貿易主義な政策

 しかしこれは
 ・政府の介入による景気刺激(ニューディール政策に似ている)
 ・政府の放任による景気刺激(レーガノミクスに似ている)
 が同居しているとのこと

 ニューディール政策は歴史の教科書でもおなじみなんですけど、
 公共投資により、雇用を産み出すもの。
 ケインズ理論を実践した、と言われる

 一方レーガノミクスは、
 減税、規制緩和により経済を刺激するもので
 フリードマンの「新自由主義」を実践した、と言われる

 これを実行したらどうなるか?
 アメリカの大手調査会社での予測では
 GDPは2017年で3.7%に上がるが、
 その後マイナスにまで下がるらしい

 これはなぜかというと、
 公共投資するには普通、増税しないといけない
 しかしトランプ政策は減税するので、財源がない
 国債を発行することになるが、
 国債を買う人がいないと長期金利が上がる
 家のローンや、企業の借り入れがしにくくなり、
 経済が冷え込む

 これについてローレンズ・サマーズ氏
 (クリントン政権時の財務長官)
 「トランプ政策は経済理論に基づいてない、
  深刻な不況をもたらす」
 と述べている

 ・スタジオでの議論
  ゲストは経済学者の安田洋祐氏、
  三菱総研の武田洋子氏、
  丸三証券の安達誠司氏でした。
  安田氏は
  「レーガノミクスとニューディール政策の相反する政策が
   うまくいくか、混乱するかで
   専門家の間でも評価が分かれている」とのこと

  実際、株価は上がっている一方、
  経済学者370人ほどが
  「これから大変なことになる」
  と警告しているとのことです。

  武田氏と安達氏でも意見は分かれていました

  安達氏は
  「うまくいけば大化けするかも」
  という楽観的な考え方。
  彼によると、
  公共投資により雇用が増え、
  減税により投資が増えれば、
  景気が良くなるのでは、とのこと。

  また、景気が良くなり、急激に金利が上がると消費は冷え込むが、
  FRBとトランプ氏の仲はあまりよろしくない
  FRBがトランプ氏に反して金融緩和を行う方向なら、
  段階的に金利が上がるのでちょうどよくなる、とのこと

  一方、武田氏はトランプ氏の政策は危ない、という考え方でした。
  彼女によれば、
  アメリカでは、すでに完全雇用に近いので、
  公共投資しても雇用投資はそんなに増えない
  (https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-07/O5ADD66K50YO01
   によると、
   アメリカの失業率は2016年くらいには5%以下になり
   この程度の水準なら、アメリカでは完全雇用に近いらしいです)
  また、安達氏はFRBが金融緩和を行うというが、
  すでに完全雇用に近いので、
  金融緩和したら、投資が増えるよりもインフレが強まるのではないか、とのこと
  また、公共投資の財源がないと、
  長期金利が上がる可能性がある、とのこと

  爆笑問題の太田さん
  イエレンさんとトランプさんの仲は悪い、
  (「トランプさんはイエレンのおばちゃんクビにしたい、って言ってる」
   という表現でしたけど(笑))
  中央銀行と政府が連携しない状況では
  経済の常識が通用しなくなる、ということは起きるのか
  というような質問をしていました。

  中央銀行と政府の仲についてはコメントしづらいんでしょうけど(笑)
  安田氏は
  トランプ氏は、経済学者のいうことはあまり聞く気は無さそうだ、
  という話をしていました

  例えば、大統領経済諮問委員会の委員長は
  歴代、優秀な経済学者が勤めるポストで、
  閣僚と同じ時期に決まるそうなんですが
  いまだに決まっていないらしいです。
  しかも今回は実業家がなるんじゃないか、という話もあるとか…
  ほかの閣僚にも学者さんはほとんどいないですね。
  安田氏は
  「僕も経済学者として悲しいんですけど」だそうです(笑)

 サマーズ氏は
 「経済学の理論からしたらトランプ氏はメチャクチャだ」
 と言うけど、
 本人は敢えてスルーというか、経済学の理論なんてあてにならん、と思っているのかもしれないですね。

〇保護主義の問題
 次は、トランプ氏の掲げる保護主義政策の問題点です。

 トランプ氏は「国境税」を掲げる。
 輸入する外国製品に税金をかけ、自国の産業を守る政策

 これについては批判の意見がある
 1つは世界が既に自由貿易の恩恵を受けて、もはや後戻りできないというもの
 アメリカはむしろその推進役だったそう
 ・WTOの元事務局長パスカル・ラミー氏
  「トランプ氏は、貿易政策と成長について全くの間違った認識をしている」

  自由貿易は、16世紀のデビッド・リカードの理論にさかのぼるらしい
  それまではどの国も、必要なものは自国で生産していた
  しかし、リカードは
  各国で得意分野に特化した商品を作り
  それをお互い売り買いすれば全体として効率が上がる
  という理論を唱えた
  (経済学的には「比較優位」)

  その後、世界の貿易総額は急激に伸びた
  今でもアメリカはそのけん引役で、
  スーパーの製品の7割は生産コストの低い外国で作ったものだそう
  大手企業アップルでは、
  27の国から数百の部品を輸入しているらしい

  このようにもはや世界はグローバル化してしまっており、
  保護主義は成功しない、とのことです。

  もう1つは、保護主義合戦が起こり、戦争になるかもしれないというもの
 ・経済学者のジャグディシュ・バグワディ氏
  「アメリカが保護主義をとれば、ほかの国も報復措置に出る」
  歴史的には保護主義合戦が第二次世界戦争を起こした、
  歴史から学ぶべきだ、とのこと

  これまた歴史の教科書でおなじみのように
  1929年、世界恐慌が起きたあと
  アメリカに始まり、イギリス、フランスに広まったブロック経済で
  経済的に追い詰められたドイツ、日本が第二次大戦を起こした

 一方保護主義を擁護する人もいる
 ・人口歴史学者のエマニュエル・トッド氏
  「トランプ氏の政策は、自由主義を進めてきたエリートに
  国民がノーを突き付けた、というのが現実」

  彼は自由貿易の限界を指摘している
  今は「グローバル疲れ」
  中間層の没落、格差を生み出しているとのこと

  彼が注目しているのが
  アメリカの白人中高年(45~54歳)の死亡率の上昇
  雇用がなくなり、自殺したり薬物中毒になる人が増えた、とのこと

  「今までは自由貿易が、理想の世界を作り上げてきたと思ってきた
   しかし、それがアメリカで終わりを告げた。
   ほかの国にも広がっていくだろう」
   新しい資本主義の始まりなのだそう

 ・スタジオでの議論
  武田氏は保護主義が危険な根拠として、
  アメリカの関税が上がったらどうなるか、の試算を出していました

  アメリカのGDPが1%上昇した場合、
  アメリカが輸入品に10%関税をかけると
  世界の輸出額が、全体として7.5兆円減少する結果になった
  (関税がそのままなら、プラスになっていました)
  「国境税は、アメリカの経済にも影響する」

  「安達さん、保護貿易ダメじゃないですか」
  って突っ込まれていましたけど(笑)
  安達氏によると
  トランプ氏はガチガチの保護貿易は考えてないんじゃないか、とのこと
  彼によると、トランプ氏は直感で動く人
  自国に有利な産業(自動車、薬品、ハイテク)
  を何とかして自国に持ってきたいだけで、
  ほかの産業については自由貿易を容認するのでは、とのこと

  また、安田氏は
  「保護貿易はメリットがあるときもある」
  とも言っていました。
  未熟な産業を保護する場合はいいそうです。
  (「幼稚産業保護論」)
  ただし、それは発展途上の段階に限ることで
  成熟段階の国がやっても効果があるかは疑問だとのこと

〇日本の対策
 ・トランプ氏の日本批判
  トランプ氏は日本と中国を名指しして
  「為替操作をして自国の通貨安に誘導している」
  と批判している

  過去にも1980年代、円安ドル高を批判され、
  ドル安に誘導する合意がされた
  「プラザ合意」(1985)

  当時交渉にあたった大蔵省の方によると、
  関税引き上げなどをアメリカにちらつかされ、
  合意せざるを得なかったそうです。
  「報復措置が取られたら、
   当時の日本は致命的な打撃を受けただろう」

  しかしどのみち打撃は受けたらしい
  プラザ合意のあと、
  1ドル240円から150円台になり
  日本は輸出産業が振るわず、不景気となった

 ・日本政府の対策
  今回も、ドル安誘導が起きたら日本の政策が影響を受ける恐れがあるそうです

  今のアベノミクスは、日銀が金融緩和を行い、経済を活性化する狙いがある
  結果的に円が余って円安となったが
  トランプ氏の言うとおりに金融緩和をやめたら
  投資が減り、消費が冷え込み、デフレとなる恐れがある

  そこで、先月のG20で開かれた日米実務者トップ同士の会談では
  「今の日銀の金融緩和は、
   為替操作ではなく、日本の景気回復のため」
  と説明し、誤解を解くことに腐心したそうです。

 ・日本企業の対策
  日本企業も対策を迫られていいる
  トランプ大統領と自動車メーカーとの対談
  トランプ氏が北米トヨタのCEOに
  「アメリカに工場を作れ、いいか、分かったな」
  と強く求めていました
  ほぼ命令ですね(笑)

  部品メーカーの住友理工では
  戦略の練り直しをしているそうです
  アメリカに工場を移した場合
  生産力、設備、土地などがあるかどうか、
  人件費、原材料のコストはどうなるか、
  などを検討しているらしい

  また、自動車だけでなく
  電車用の部品も作って鉄道会社に売り込みを図るなど
  やれることはやるみたいです

 ・スタジオの議論
  「この状況は日本企業にとってピンチかチャンスか?」

  安達氏はアメリカの公共投資に食い込む余地はある、とのこと
  「インフラ投資は日本の技術が生かせる」
  ところで、いち早く売り込みに行ったソフトバンクの孫さんはすごいねーって話もしていました。

  武田氏は、日本が自由貿易の旗振り役となるべき、とのこと
  「日本は政治も安定している、世界で重要な位置にいる」
  対米投資でも、フローでは世界1位、キャッシュでも2位
  それをアメリカに説明し、
  パートナーとして交渉していく姿勢が大事だ、とのこと

  太田さんは
  「今まで日本はアメリカになんでもついてきたけど
   アメリカが日本知らねーよ、ってなったらそうもいかないでしょ。
   これからは日本オリジナルも打ち出していかないといけないんじゃないの?」
  と言っていましたが
  安田氏は
  「オリジナルも大事ですけど、
   いろんなシナリオを考えて準備しておくことが必要と思います」と話していました

〇今後どうなっていくか
 アメリカでは、ラストベルトの雇用を失った人たちなどが
 トランプ氏の政策に期待している
 一方で大統領令がとん挫するなど、
 実行力に疑問符も見え始めている

 さてこの状況で今後どうなっていくのか、という話について
 安達氏は
 「収入格差があるのが問題、
  これはある程度政府が介入しないといけない
  ただ、今は振り子がふれている状態で
  トランプ氏は極端なことを言っているだけなので
  今後は現実的な路線になるんじゃないか」
 というような話をしていました

 武田氏は
 「トランプ氏に批判はあるが
  アメリカ国民自身がトランプ氏を選んだという事実がある
  低所得の方も問題だが
  中間所得の人が大きく減っている
  マイノリティや移民だけではなく
  教育政策などでこの辺を解消していかないといけない」

 安田氏は
 「トランプ氏の登場は、今までの経済運営にノーを突き付けられたということ
  この現実を踏まえて、望ましい政策をとっていかなくてはいけない
  トランプ氏がうまくいけばいいが
  いかなかったときどうするか、人類の英知が試されている」

 田中さんは
 「いいように考えれば
  みんなが考えるきっかけになったってことですよね」
 とまとめていました

 結局のところ、
 結果がまだ出てないので何とも言えない感じですね…
 トランプ氏の型破りなやり方が、安達氏の言うようにほどよい結果に転ぶことを期待しつつ、
大コケのときは被害を影最小にするための準備をしておかなきゃいけない、
ということになりそうです。

感想など
・経済学者さんたちがみんな保護貿易を批判するなか
 保護貿易は悪くない説を唱えるトッドさん、やっぱり出てきたか、という感じでした(笑)

 彼は自由貿易の問題点を指摘していましたが
 ここをもう少し掘り下げて欲しかったかなぁとも思います

 彼は「グローバリズムは世界を滅ぼす」という本で
 自由主義のシステム上の問題点を指摘していました

 彼も自由貿易は、最初の段階では素晴らしいシステムだと認めており、
 だからこそ評価は難しいと述べていました

 しかし自由貿易が行きつくと、
 賃金が単なるコストと見なされ
 賃下げ圧力が強まってしまうのだそうだ
 賃金が下がると需要が減り、全体として経済が縮小する
 格差の拡大、ワーキングプアもここから来るようです

 また、ほかの本では
 彼の文化的な理論からすると
 グローバル化は世界を画一化する方向に力が働く。
 しかしそれぞれの国には文化がその土地に染み付いていて
 無理に一緒にしようとすると拒絶反応が起きる。
 今の移民排斥の問題もそこにあるのではとのことです。

 なので保護貿易を批判するより前に
 こういう自由主義の問題点を何とかしないといけない気がします

 例えば安達氏も指摘していたとおり、
 企業に賃上げしていくよう、ある程度政府が誘導する、
 所得の再分配を促す税制にする、
 あるいはその国の伝統的な産業などはある程度保護主義的にし、ブランド価値を高める…
 など。

 暮らしさえ良くなれば
 あと正当な理由や制限があれば、保護貿易も認めあえるのではないかとも思います

・トランプさんの保護主義で気になるのは
 出口戦略が見えてないことです。
 いつまでやるのか、永遠にやるつもりなのか。
 保護貿易に頼らずに自国の競争力を鍛える気はあるのか。
 アメリカの自動車などの産業が振るわないのも、
 厳しい言い方をすれば
 生産コスト以外で、他国に勝てる材料が無かったからではないか、と思うのですよね…。

 戦略が無いと、保護されてきた日本の農業みたいになってしまうかも…
 日本の農業も、最近では自由化とかTPPとかに押されて、
 付加価値を高めたり、海外やネットでの売り込みを頑張っている人もいますね。

 あと、アメリカに工場を作ったところで、
 生産性の高い人材がいなければ企業が困る。
 そこは国も教育政策で、能力のある人材を育てていくようにしないと、結局世界との競争に負ける。
 また、低賃金なら結局ワーキングプアになるかもしれない
 (途上国は低賃金競争で
  バングラディシュとかは悲惨なことになってる、
  と前のシリーズで言っていたような)
 企業を呼んだらおしまい、ではなく、先々も考えて欲しいものです

・今は自動車メーカーとか企業も、トランプさんの脅し?に黙っている感じなんですが
 アメリカに工場を移したところで採算が取れるのか?
 アメリカに工場作ってもいいけど、コストが上がって製品が売れなくなったら補償してくれよ、
 と交渉する企業も出てくるんじゃないかなぁと思ったりします

・ただ、前のシリーズで、
 格差の拡大に若者や貧困層が無力感を抱いていると言っていました
 トッドさんも、今の格差問題は、
 中間層がそれを変えられない
 (フランス革命などは、中間層が格差に怒りを爆発させたもの)
 のが問題だと本で指摘していました

 なので、まずは若者や、ある程度収入のある層が、
 未来は変えられる、と思うことが重要なのかもしれません
 そういう意味では、
 トランプ氏はそれらの層に希望を持たせた、
 という功績はあるのかもしれないですね。

まあなんにせよ、はっきりしない世界では投資もしにくい。
トランプさんの政策がどうなるのか、
先行きがある程度見えるとありがたいな~と個人的には思いますが…

というわけで今回はこの辺で。

posted by Amago at 16:48| Comment(0) | テレビ(お金) | 更新情報をチェックする

2017年01月23日

NHKBS「欲望の資本主義2017 ~ルールが変わる時~」

最近、数日間家のネットが繋がらず。
どうも同じ不具合がたくさん出ているようで、
NTTに電話しても繋がらず、何ともなりませんでした。

今日やっとNTTと電話がつながり、
原因は家の有線用のルーターが、
無線用のルーターのIPアドレスを間違って認識していたことみたいで、
無線ランをいったん切断してからIPアドレスの認識をやり直したらうまくいきました。

テレビあるから無ければ無いで何とかなるのだが、
これだけネット使うようになるとちょっと不便ですな。

それはさておき。

NHKBS「欲望の資本主義2017 ルールが変わる」

 正月放送なんで今さらって気もするんですが、
 資本主義のこれからについて考える番組。トランプさん就任に合わせて興味深かったので書いてみたいと思います。

 1/3放送だったのを知らず、
 1/11再放送されていたものを録画しましたが、
 なんせ内容が濃くて4、5回に分けて見ました。

 前半、後半50分ずつで
 前半はホームページの感想を見る限り、半年前に放送されたものなのかな?
 後半はトランプ大統領誕生などの後に製作された模様。

 どちらも、
 経済学者の安田洋祐氏
がいろんな専門家に行ったインタビューを編集したもの
 (後半戦は二人の専門家の対談もある)
 なんですけど、
 編集の仕方が叙情詩的というか…
 ナレーションも詩的で、
 見る人に解釈を委ねるような構成になっていました。

 なのでざっくりまとめにくいのだが、

 資本主義ってそもそも、みんなが欲望を実現すれば社会もハッピーになる、
 というシステムだったはずなのに、そうなっていない。
 それはなぜか、これからどうすればいいのか。

 という疑問を
 前半は資本主義の成り立ちとか本質から探っている内容、
 後半は金融危機後、世界で起きている反グローバル化のうねりをどう見るか、という視点から探っている内容でした。

 どちらかと言えば後半の方がホットな話題が多いので見ごたえがあったけど、
 どちらも紋切り型的な切り口ではなく、発見がある番組でした。

 一応、章に分けてあります。
<前半>
 第1章資本主義の現在
 第2章成長は、至上命題?
 第3章魔術の誕生
 第4章幻想が、幻想を生む
 第5章欲望の果てに

<後半>
 第6章サイレントフォース
 第7章危機後の世界
 第8章グローバルか、ナショナルか
 第9章数、リスク、不確実性
 第10章不確実な世界へ
 最終章未来へ

まずは前半から。
第1章 資本主義の現在
 アメリカの経済学者ジョセフ・スティグリッツ氏(ノーベル賞受賞者)、
 チェコの経済学者トーマス・セドラチェク氏への安田氏のインタビュー
 (二人とも別々にインタビューされています)

 スティグリッツ氏
 「近年、低成長に苦しむ国が多いが、それでも経済は成長するのか?」
 「今の経済の問題は、需要不足にある」
 この原因として
 ・中国の減退、
 ・EU統合による経済活動の制限、
 ・世界的な格差増大
があるとしている

 中でも格差は
 貧困層から富裕層へお金が流れ、
 一方富裕層は貧困層ほど消費しない問題がある

 そしてこの貧富の差は、
 30年ほど前のルール変更(自由競争、規制緩和)にあるとし、
 富の分配を促すような新しいルールが今こそ必要、
 と述べている

 一方セドラチェク氏は、
 そもそも需要の拡大は必要なのか?という視点から話をしている
 「今の資本主義は「成長」資本主義だ」
 今の資本主義は成長を前提としすぎている、と述べている
 成長は望ましいものではあるが必須ではないはずだし、
 世界がいつも成長するとは限らない。

 資本主義は成長を産み出す土壌だったが、
 今は逆に、成長のための資本主義になってしまっている、と。

 また、彼は「CUBE」という映画を引き合いに出している
 これは、四角い空間になぜか閉じ込められてしまった人たちがそこから逃げ出そうとする話

 「物語の最後で、この空間は彼ら自身が作ったものだと知ることになる」

 これは資本主義社会のようだ、
 専門化されすぎた世界では、
 自分が何をしているか分からなくなる、とのこと

第2章成長は、至上命題?
 スティグリッツ氏へのインタビューの続き。
 そもそも「成長」とはなにか?
 彼は
 「成長を表すのに、GDPはいい指標ではない」
 GDPは今までの消費中心的な資本主義の指標としてはいいかもしれないが、
 環境破壊、資源の枯渇、利益の分配などは反映していない。

 これからは、資源を潰さない、
 持続可能な新しい繁栄の形が必要、

 そしてそのためには、
 新エネルギー、新しい都市構造へ転換する政策が必要、
 そのためにテクノロジーやインフラ、教育への投資が必要。
 と述べている

 しかし、新しい分野への投資は既存のビジネスを壊す。
 例えばUberは
 ライドシェアという新しいビジネスモデルを産み出したが、
 一方でタクシー業者の需要を奪った

 Uberへ多額に投資している
 スコット・スタンフォード氏にもインタビューしていました。
 (元ゴールドマンサックス社員だが、今はベンチャー企業のCEOだそう)

 彼は
 「新しいビジネスが、雇用を産み出すのか、
  既存の雇用を奪うのかは、
我々の考えることではない」

 彼によれば
 彼の投資しているお金は彼のものではなく、
 いいと思った企業への投資である、
 我々はリターンがあるときしか利益は得ていない、
 我々は資本主義のルールにのっとってビジネスしている、
 いい事業があれば自分でも会社を作る、と述べている

 ここで再びスティグリッツ氏へのインタビュー。
 安田氏の
 「今は低利率なので、
  投資をしても利益が得られないという意見もあるが?」
 という質問に対して
 「経済学者は、低利率の役割を強調しすぎている」
 
 貸し出しで必要なのは信用であり、低利率ではない
 利率は単なる政策の結果で、投資の要因にはならない、
 インフラ、教育など、
これから必要な分野に投資すれば利率は上がるさ、とのこと

 一方セドラチェク氏も、
 利子率の効果に懐疑的な見方をしていました。
 「経済学の、利子率を低くすれば景気がよくなり、借金が返せる、と言う理論はおかしい」

 さらに、
 利子率を低くしたところで借金は借金、
 その借金でどんなにいい施設や産業に投資しても、いずれは返済しないといけない。
 そしてその負債に苦しむ国は多い。
 我々は借金をして成長し、
 その引きかえに安定を失っている、
 と述べている

 安田氏「利子率への期待が「成長」資本主義の正体かもしれないのですね」

 セドラチェク氏はうなずきながら、
 「利子はアルコールのようなものだ」
 お酒を飲めば陽気になるが、次の日二日酔いに苦しむ。
 次の日のエネルギーをお酒で移動させているだけ。

 お金も、利子つきの借金という形で数十年単位で移動させられる。
 そして必要な時に無くなってしまう、
 と述べている
 (日本の赤字国債のようですね…)

第3章 魔術の始まり
 セドラチェク氏によると
 利子率は各宗教で、
 否定的なニュアンスで言及されてきたらしい
 「利子率は禁断の果実だ、我々を休むことなく働かせる」

 利子率は時間を超えた移動だが、
 為替も空間を超えてお金を移動させる
 どちらもお金の移動を利用した錬金術

 「お金は交換の手段だったはずなのに、
  それ自体が目的になってしまった」(アリストテレス)

 これを突き詰めたのがアダム・スミス
 「人々が利益を追求すれば、
  神の見えざる手により
  社会も富み栄える」
 人々がお金への欲望を追求すれば、市場が調整してくれる、という考え方を広めた

 「市場」

 ここで、市場の専門家アルヴィン・ロス氏(2012ノーベル経済学賞を受賞)へのインタビュー

 「資本主義の原動力とは?」
 「需要と供給についての情報を集めること」
 彼によると、
 需要と供給が分かれば値段は決まる。
 情報は拡散するから誰にでも集められる訳ではないが、
 市場に情報が集まれば最適な結果が得られる、
 とのべている

 一方スティグリッツ氏へのインタビューでは、
 市場について
 「市場は自然に出来たわけではなく、進化してきた」

 彼によると一番の進化は産業革命で、
 これにより、科学と技術の2つの力で、規模による効率化を追求できるようになった、
と述べている

 投資家で経営者のスタンフォード氏へのインタビューでは
 「我々は労働の効率化を追求している」
 利潤を上げるため効率化し、
 創造的破壊を行い、
 非効率的な古い産業を駆逐していく
 それこそがイノベーション、消費者をハッピーにする、
と述べている

 つまりアダム・スミスの
 「市場が個人の欲望を調整してくれる」という思想と、
 イノベーションによる効率化、市場の進化で、
 人々は欲望を解放させていき、
 資本主義は成長が欠かせないシステムになった

第4章 幻想が、幻想を生む
 更に、市場のデジタル化や株式投資の登場により、
 お金から現実感が失われていく

 セドラチェク氏が東証で
 「ここには何もないが、全てがある」と述べている

 市場はデジタル空間にうつり、
 お金はシンボリックなもの、
 欲望はバーチャルなものになった

 ピカソの絵も、それ自体が欲しいのではなく、
 みんな価値があると同意するから値段がつく
 価値は労働の結果ではなく、欲望と満足の交わりで決まる、
 と述べている

 セドラチェク氏によると
 ケインズは株式市場を美人コンテストに例えた
 ただし、賞金は一番の子に投票した人に贈られるコンテスト

 この場合、みんな自分の好みではなく、
 他人の好みを予想して投票する

 その結果、誰の好みでもない子が一番になる
 株式市場も固定観念が価値を決め、
 しかもその固定観念はこだまする、と述べている

 安田氏「サブプライムローンのことかもしれませんね」
 セドラチェク氏
 「数学的なはずの経済学なのに、神話めいている」

 さて、スティグリッツ氏へのインタビューの続き。
「経済学で、現代の問題を解決できるか?」

 「経済学者は、自由放任主義は万能だ、バブルは心配するなと喧伝しすぎた」
 さらに、
 「アダム・スミスは間違っていた。「神の見えざる手」は存在しない」
 「経済学者はアダム・スミスに頼りすぎている

 とも。

 利益の追求(経済学でいうインセンティブ)はたしかに市場を動かしてきたが、
 現代の経済学ではそれが全てではない。
 イノベーションや研究が、社会に及ぼす影響の大きさも考えねばならない、としている

 一方市場の研究者アルヴィン・ロス氏は少し違う見方をしています。
 「「神の見えざる手」は概念に過ぎない」

 「自由」市場は何でも自由なわけでなく、ルールがある
 それは、長い年月をかけてみんなで磨きあげてきたもの。
 そして経済学者も、市場の役割に気付き始めており、
 有効なルールを見つける手助けができていくのでは、と話している

第5章 欲望の果てに
 スティグリッツ氏へのインタビューの続き。
 先程の話を受け
 「新しいイノベーションは、経済を変えるのではないか?」
 という問に対し

 「テクノロジーは社会に利益をもたらしたのは事実」
 とした上で
 「だからといって社会にも価値があると考えるのは危険」
 と述べている

 イノベーションの結果、
 新しいプラットフォームが仕事を減らし、
 賃金を減らす恐れもある、とのこと
 実際、マクロ経済学の統計では、イノベーションによる生産性の上昇は見られない、
 とも述べていました。
 「これは誇大広告か、さもなければ統計の間違いだ」

 しかし経営者であるスタンフォード氏は、
 イノベーションによる社会の変化には前向きな発言をしていました。

 彼によると、
 例えばシリコンバレーの起業家には、
 自動車の自動運転技術により「自分で運転することが違法になる世界が自分の生きているうちに来る」
 と言う人もいるらしい
 (人の脳は考えすぎるから危険なんだそうな)

 これが進むとどんな世の中になるか?
 彼は、
 自動化が進めば、雇用が奪われ失業率は30~40%になるだろうが
 悲観することはないかもしれない
 と述べている

 世界の半分の人間が働かないなら、
 全く新しい社会のシステム、
 例えば今までの資本主義と自動化とのハイブリッドシステムが生まれるかもしれない、と。
 「物の見方を変えたら新しい景色が見える」

 彼は、
 お金よりも名声のために働く人もいる、
 だからこそFacebookの「いいね!」を欲しがる。
 お金ではなく、声援を受けた人が報われる社会が生まれればいい、
 動機付けができるシステムが生まれればいい、
 と話していました。

 セドラチェク氏も
 「人間の本質はお金への欲望だけではない」と話していました。
 ただしこれはアダム・スミスが指摘していたとのこと。

 アダム・スミスは
 「国富論」で人間の欲望について書いたことが注目されがちだが、
 「道徳感情論」という別の本では
 「人は他人に対して善行を施す性質を持っている」
 と書いていたそうです。

 アダム・スミスは、
 人には「利己主義」と「共感」の2つがあると示した、
 どちらか片方だけでは倒れてしまう、とのこと。

 経済学は本質的には人の心理と結び付いた「物語」だ、
 アダム・スミスはそれに気づいていた、
 というような言葉でしめくくられていました。

後半

第6章 サイレント・フォース
 最初に登場したのが安永竜夫氏(三井物産社長)
 グローバル化の歴史を解説している

 グローバル化はアメリカが牽引役となり、
 ヨーロッパ、日本へと広まり、
 自由貿易を進めて富をもたらした
 アメリカでは、富は一部の富裕層に流れる一方、
 製造拠点が他国へ移動したことで雇用の空洞化が起きた
 「空間を超えた競争」
 それにより不平等を受けた人がトランプ氏に投票した

 次に、前半にも登場したチェコの経済学者トーマス・セドラチェク氏と、
 ルチル・シャルマ氏
 (モルガン・スタンレー・インベストメントの方で、25年にわたり世界情勢を分析している)の対談

 シャルマ氏
 「今、世界は選挙ひとつ取っても反現職だ」
 セドラチェク氏
 「スターウォーズの「フォース」の目覚めのようなものが起きている感覚がする」
 そのフォースは、
 言葉にも主張にもならない「反知性的」な、静かなフォースらしい

 シャルマ氏
 「ロシアの諺に
  「歴史を無視すると自由を失う、歴史を見すぎると両目を失う」とある」
 歴史からは学ぶ必要があるが、
 歴史に囚われすぎてもいけない

 彼の分析によれば、
 グローバル化、反グローバル化は波のように周期的に繰り返している
 しかも、この波はすぐ消えずに長く続く
 例えば100年前からグローバル化の時代で、その後反グローバル化が30年続いた

 さらに、今の反グローバル化の流れは強まっているという
 グローバル化では
 貿易、資本、移民の3つが移動するが、
 これらの減少は金融危機後から始まっており
 この流れはなかなか止まらないだろう、とのこと

 次の場面はフランス。
 フランスでは今、ルペン氏率いる極右政党、国民戦線が勢力を伸ばしている
 (反自由貿易、反移民の考え)

 そのフランスのエリート校「パリ政治学院」の学生が議論している
 「今、国民主義への回帰が起きている。
  フランスも他国も、
  国民は現状では何も変わらないと気づき、
  政治や経済を解決する力を取り戻そうとしている」
 「今のシステムのままでは資源が枯渇する。
  資本主義が富の蓄積を許し、
  プロテスタントの禁欲の精神を破壊した」
 「富のため働くか、慎ましい生活をするかはその人の自由だ。
  しかし何億もの役員報酬は行きすぎだ。
  社会の信頼を守るには、
  欲望に限度をもうけるべきだ」

 欲望の行き着いた先が
 2008年のリーマン・ショックに始まる金融危機

第7章 危機後の世界
 セドラチェク氏とシャルマ氏の対談の続き。

 シャルマ氏の分析では
 「世界経済のスローダウンはしばらく続く」
 というか、彼によるとダウンではないらしい
 金融危機前のレベルと比べれば低成長だが、
 そもそも金融危機前の成長が突出していたらしい

 彼によると、
 1950年~2008年では年平均4%の成長
 1870年~1914年の高度成長時代でも年2~2.5%で
 それ以前の歴史で3%を超えたことはなかった

 更にシャルマ氏は
 「1950~2008年の成長を支えた要因は戻ってこない」
 労働人口、負債の問題がある

 金融危機後は中国、インドでも人口増のスピードが急速に低下
 また、負債総額はピークに達している
 (セドラチェク氏は冗談めかして
 「GDP=「Grouth Dept Product」、国内総生産ではなく国内総借金だね」)

 世界の負債は1980~2008年で増大している
 これは、金融機関の規制緩和、低金利、低インフレ
(つまり自由貿易の推進)のためだそう。

 セドラチェク氏
 「現在の問題の解決には、新たな経済モデルが必要だ」
 デフレ、マイナス金利…教科書に載っていることが使えない時代になってきた、とのこと

 (原丈人氏(デフタ パートナーズ グループ会長)の話
 彼はアメリカ、ヨーロッパを拠点に、
 ベンチャー企業の育成や新技術を用いた途上国支援などを行っている
 日本にいなかったので、日本的な経営を一歩引いて見ているそうです。
 「1970~80年代の日本では、
  経営者は「軽、薄、安、小」を目指せばよく、
  判断する必要がなかった」
 しかし90年代以降は
 自分達で方針を決めねばならなくなったが、
 日本ではそこの教育がなされてこなかった、とのこと)

第8章 グローバルか、ナショナルか
 エマニュエル・トッド氏
 (歴史人口学者で、ロシア崩壊、イギリスのEU離脱、金融危機などを予言した方)
 彼は反グローバル化現象を独特な視点で見ています。

 安田氏
 「あなたは経済学がお嫌いなようですが…」
 安田氏も経済学者なんですけど率直に
 「そうだね、基本的には嫌いだね」(笑)
 シンプルな原理で全てを説明できる、
 という考え方がお気に召さないらしい。
 人の歴史はもっと複雑、
 教育、宗教、心理などもからんでいる、とのこと

 「多くの経済学者はグローバル化や自由貿易に賛成ですが、
  あなたはどうやらグローバル化には疑念を持っているようですね」
 彼の書には
 「グローバル・ファティーグ(疲労)」とある

 彼の考えによれば、
 今、世界が需要不足なのは
むしろ自由貿易が収入を減らすためで、
 保護主義には問題を感じないらしい

 「保護主義は給与を上げ、成長を促す。
  いずれは貿易が活発になる、未来はポジティブだ」

 経済学者とは真逆の意見に、さすがに安田氏は反論してました。
 「しかし自国の利益のみを追求した保護主義は、世界経済に悪影響が出るのでは」

 トッド氏は意に介さず
 「分からないじゃないか、
  経済学者はあまり歴史を知らない」

 彼によると
 19世紀末のヨーロッパではドイツ発の保護主義が各国で始まったが、何も悲劇は起こらなかった
 むしろ需要は増え、国は豊かになり、貿易は加速した、という

 さらに彼は
 「アメリカのエコノミストは「世界の」需要しか頭がない、
  自由貿易が需要を押し潰していることを見ていない、
  これはケインズの法則を全く無視している」

 これはどういうことか。
 彼によると、
 「エコノミスト誌」の
 世界の貿易収支を見るとほとんどの国が黒字。
 各国が黒字を求めれば需要の奪い合いになり、
 需要が不足するのは当たり前、と指摘する。
 「ケインズが見たら「世界はクレイジー」と言うだろう」
 とのことでした。

 ナレーションによれば、
 「社会の安定のため、
  ケインズが最も恐れていたのは失業者の拡大で、
  借金をしてでも人を雇い、
  お金を市場に巡らせようとした」

第9章 数、リスク、不確実性
 シャルマ氏、セドラチェク氏の対談が続く。
 先ほど話していた、世界的な負債の増加はこのケインズ主義の悪用のせいだ、と話しています。

 「金融危機から時間が経ち、
  経済は回復しているのに財政赤字は放置されている。
  成長するために、ケインズの名前を利用して負債を増やしている」
 「ケインズ理論の悪用だ」
 GDPを上げるため、
 借金して負債を増やしている。
 その最たる姿が中国だそう。

 シャルマ氏
 「中国は6%の成長を続けている、と言っているが、
  毎年6%成長なんてあり得ない。
  実際はそのために莫大なお金を投入している
  2007年のアメリカでは、1ドルの収入のため3ドルの借金をしたが
  中国は今、1ドルの収入のために4ドル借金だ」

 シェルマ氏の関心は今、アメリカより中国にあるらしい
 だのに
 「ウォールストリートの関心は短期的過ぎる
  今はトランプ氏にしか関心がない」

 その中国人は資本主義をどう考えているのか?
 街頭インタビューでは
 「資本主義は経済市場が活発になるからいいと思う」
 「10年前から月収は変わらないのに、不動産価格は4~5倍になった」
 「この国は、国の政策が行き詰まるといつの間にか方針が変わるので、先が読めない」
 (危うい成長、という印象を受ける)

第10章 不確実な世界へ
 セドラチェク氏によると
 ケインズは
 「私たちの未来についての知識は不確実」と言っていた、という

 サイコロの目の出る確率など、論理的なことは確率で予測できるが、
 現実世界は予測できないことが多い。
 サイコロの形も決まっていないし面の数も分からない。
 「我々は、科学的な根拠がないものは知りようがないのだ」
 (「雇用の一般理論」ケインズ)

 セドラチェク氏は
 「我々は未来は不可知、という自然な感覚を失っている」

 世界は不確実なのに、我々は年2.4%の成長を信じて投資している
 経済学で言うリスクは計算できるが、
 不確実性は計算できない
 不確実性とリスクを混同したら危険だ、
 と話しています。

 また二人の対談に戻ります。
 セドラチェク氏
 「金融危機のあと、格差が拡大した。
  そういうものが、不確実性とリスクの違いを分からなくしてしまう」

 シャルマ氏
 「今は禅の思想に惹かれるね」

 彼によると、
 禅の思想で大事なのは、
 いつでもいい精神状態でいること、だそうです。
 投資でも人生でも同じ。

 また、彼の執筆する新書の一行目は
 「永遠のものなど何もない、
直ぐに過ぎ去ってしまう」
 つまり、「儚さ」が心に留めている第一のルールだそう。

 セドラチェク氏
 「「禅的資本主義」、
  今はそういうものが求められているのかもしれない」

 既存の理論、支配層が壊れつつある現在では
 地動説やアインシュタイン理論のようなパラダイムシフトが必要なのかも、とのこと。
 「禅的思想はもしかしたら世界を統合するかもしれない。
  少なくとも攻撃的ではないよね」

最終章 未来へ
 いろんな方々の、未来への展望です。

 三井物産の安永竜夫氏
 「欲望の資本主義の先には
持続的で、人に優しい資本主義があるかもしれない」
 彼は
 「ジャングルガイド」として新しいマーケットを切り開くのが商社の醍醐味だ、と話す。
 「これから成長に向かっていく国に、日本はどう貢献していくか。
  日本の中に閉じ籠っていても資本主義は進化しない」

 また、起業や途上国支援を行う原丈人氏によると
 「これからは「公益資本主義」があるべき資本主義ではないか」
 「公益資本主義」とは
 株主だけでなく、
 株主、社員、仕入れ先、顧客、地域社会…
 などを含めた「社中」に会社の利益を還元すること、だそう。

 更に
 「お金を回しているだけでは変わらない。
  日本は、科学技術によりイノベーションを起こし、
  人類に対し必要なものを作る力がある。それは日本も豊かにする。
  世界の人を幸せにしながら、日本の中産階級も豊かになっていく国作りができる、
  それだけの底力が日本にはあると思う」

 セドラチェク氏
 「ケインズは
  マネーは交換手段であるだけではなく
  それ自体が欲望の対象物であることに気づいた。
  お金はいろんなものと交換できるので、人はお金を貯めたがる。
  貯めること自体が目的化し、
  そのために効率的にお金が回らず大問題が起きる」
 「アインシュタインは物理学をひっくり返し、世界の見方を変えた。
  経済学でも同じようなものが求められている」

 安田氏の言葉
 「いろんな方々と対談させていただく中で、
  自分の普段の研究が、
  別の世界から経済を見通している方々と
  どこかでフィットする部分があると感じた、
  (ケインズの次の)グランドセオリーを見つけられるんじゃないか、という期待が少し芽生えた」

 前半にも出てきた、投資家で経営者のスタンフォード氏
 「情熱の源は、お金ではない。
  テクノロジーへの愛だ」

 スティグリッツ氏の言葉
 「皮肉なことに、
  資本主義はお金に支えられているのに、
  お金だけでは前進しない」

 セドラチェク氏の言葉
 「私たちは神を産み出した。
  しかし私は言いたい、
  「神は死んだ」
  私たちが生きているのは、
  今まで信じていたものが信じられなくなった世界だ」
 「だが神は、
  私たちの手のなかにある」
 「欲望は満たされることを望まない、
  欲は無限である」

感想など。
・一番印象に残ったのはエマニュエル・トッドさんの「保護主義は悪くない」という意見でした。
 保護主義が経済の非効率化を招き、第二次世界対戦を起こした…てのが定説のはずなんだが。
 それならトッドさんの考える第二次対戦の原因は何なのだろうと興味が沸きました。

 でないと、今の流れが危険なのかハッピーに繋がるか、全然話が違ってきますからね。

・経済学ってまともに習ったこと無かったけど、
 ケインズが人の欲望にゴーサインを出し、
 市場が進化して錬金術がどんどん発達し、
 イノベーションがその欲望を具現化し…
 という資本主義社会の歴史は何となく分かりました。

 でも、現在あまりハッピーでない人が多い(とされている)原因については、
 人それぞれの意見なのが興味深かった。

 スティグリッツさんは正当派経済学者的に、富の分配と必要分野への投資がうまくいってないからだ、としているし、

 セドラチェクさんは
そもそも背伸びしすぎじゃない?無理矢理欲望作ってない?って意見だし、

 スタンフォードさんは欲望はお金だけじゃないんだからそれを極めちゃったらいいんじゃない?みたいな意見だし、

 トッドさんは悲観的な意見が多いけどほんとにそう?というし、

 シャルマさんは、状況を読んで波に乗れ、って感じですね。

 個人的にはシャルマさんの達観した姿勢がなんか好きですね。
 下手にもがくより良さそう…

・スタンフォードさんの
 「失業者が半分の世界も悪くないかも」
 という意見もびっくりでした。

 前何かのセミナーで、
 人間の幸せを左右する要因は、仕事、人間関係が大きく
 学歴などはそんなに影響しないとか。役に立ちたいという欲求が、人には根元的にあるみたいなんですよね。

 なので、仕事が無いなら何をするのだろう、と思っていたけど、
 スタンフォードさんの意見は
 お金にはならないけど、人に喜ばれることをする人が増える、
 ということを意味しているようですね。

 んー、でもそれ衣食住足りてるお金持ちの意見、って気もしなくはない。
 失業者が半分の世界って想像できない。
 もしそれでも生きていけるなら働くのがバカらしくなるだろうけど、
 実際問題貨幣経済が続く限りは稼がないと食べていけないのでは…

・後半の最後の安永氏、原氏の言葉には勇気づけられました。
 日本にはまだ世界に通用する底力がある、
 世界をハッピーにしながら自分も豊かになれる道がある。
 そのためには、日本人のよさ
 (勤勉、思いやり、技術力など)
 を地道に磨いていく努力、
 世界に売り込んでいく営業力が必要なのかもしれません。

・禅的資本主義、というのも面白いと思いました。
 日本とかアジアの思想が、外国の経済学者の大御所に取り入れるってのは新鮮ですね。
 (サイエンスの世界でも、量子力学などはかなり東洋宗教の思想に近づいてますね)
 中庸の道というか、あんまりガツガツしない資本主義がいいのかも知れないですね。

 これからは、「成長」資本主義を放棄して、「身の丈でいい」資本主義になるのかな。個人的にはその方が好きだけど。
 そうなると、がんばって成長資本主義を維持しようとしている中国などは
 もしかして沈没しかかった船に乗っているのかもしれない。
 現に今、バブルが弾けそうだとかゾンビ企業がのさばってるとかいう話も…
 中国はメンツあるから破綻はしないだろうけど、
 どう辻褄合わせようとするかは要注目かもですね。

トランプさん就任がやたら大騒ぎされていますが、
(個人的には、80年代の日米貿易摩擦をいまだに持ち出してるあたり、やっぱり70歳の頑固じーちゃんなんかなぁと思ったりしますが…)
今年も経済ニュースには敏感になっていきたいと思います。

というわけで長くなりましたが今回はこの辺で。

posted by Amago at 16:37| Comment(0) | テレビ(お金) | 更新情報をチェックする