2017年10月16日

Eテレモーガンフリーマン時空を超えて「宇宙人も神を信じるのか?」

Eテレモーガンフリーマン時空を超えて「宇宙人も神を信じるのか?」

前回のゾンビはスルーしてしまいました汗
今回は、宇宙人がいるなら宗教や信仰心も持つのか?
というテーマに沿っていましたが
本質的には、
 宗教は必要なのか、
 宗教は何のためにあるのか、
 宗教はいつかは必要なくなるものなのか、
 宗教と科学の関係は、
という問いになっていて興味深かったです。

○我々は本能的に、神のような存在を信じたがる?
 最初はボストン大学の児童心理学者デボラ・ケレメンさん。
 ショートカットでキリッとして綺麗な方ですねぇ。
 彼女は子供の「なぜ?」について研究しているそうです

 3、4歳くらいになると子供は質問攻めになる
 彼女は、
 「多くの子供には説明を求める衝動が存在する
  私は子供が自然に考える答え、好む答えに興味がある」
 と述べていました

 彼女は色んな年齢の子供たちに
 「尖った岩が出来ているのはなぜだと思う?
  1長い年月を経て、石のかけらが積み重なった
  2痒いと感じる動物が体を掻けるように」

 「池が静かなのはなぜ?
  1動物が流されずに体を冷やすため
  2水が池に流れ込まないから」
 などの質問をした

 するとどの年代の子も、
 先の質問は2、2番目の質問には1、と答えるそうです
 子供は、自然現象には目的があってそうなっている、
 という考え方を好む

 自然は意思のあるもののために存在する、
 という考え方は宗教に通じる考え方だそうです
 多くの宗教では、神聖なる存在が万物を作った、と考える

 大人になると、岩がとがっているのは地質学的な理由だ、とか科学的な答えが分かる
 しかし彼女は、
 大人でも、本能的には目的論的な考え方を好むのでは、と考えたそうです

 そこで、大人に対し、
 自然現象を目的論に基づいた説明する文章を読ませて、
 正しいと思うか素早く押してもらう実験をした
 すると正しいと考える人が多かったそうです

 彼女によれば、直感的に判断せねばならない場面では、我々は目的論を好む
 物事には目的がある、という考え方を元に推察することに慣れているのだそう

 そして、宇宙人も我々と同じような進化をし、同じような文化を持っているとすれば、
 目的論的な考え方、宗教的な考え方をする可能性はある、
 と話していました

○ゾウやイルカにも信仰心がある?
 次の舞台はタイ北部。
 この比較心理学者は、
 シンク・エレファント・インターナショナル
 という施設でゾウの心理学を研究しているそうです
 ゾウの心理学専門の施設があるんですねぇ…
 (Think Elephants International
 ホームページはthinkelephants.org/
 ゾウの知能の研究とともに、
 ゾウ保護のための子供たちへの教育活動なども行っているそうです)

 ゾウは動物のなかでもトップクラスの知能を持っているので、
 行動と知能の進化を見るにはいいのだそう

 彼がしたのは、ゾウに鏡を見せる実験
 鏡を見るのは人間にとっては当たり前だが、
 自己認識、という複雑な能力が必要なのだそう

 彼はオスの20歳のゾウ、ソムジャイに初めて鏡を見せた
 すると不思議そうに後ろを見たりした
 普通の動物は鏡を見ると、無視するか他の生き物と思って見つめたりするそうです
 しかしソムジャイは、映っているのが自分だと気づいたようで、
 口を開けたり足を上げたり、
 自分では普段見られない場所を見ていたそうです
 「これはゾウにも自己認識があることを示しているのではないか」 とのことです

 彼は、ゾウに自己認識があるということは
 ゾウにも心の理論があるはず、と考えているそうです
 心の理論とは、他者の気持ちを推し量ったり理解して行動できること

 そこでこの科学者は
 ゾウは他のゾウと協力できるかを実験したそうです

 部屋のなかにはゾウの好物が入っているケージがあり、
 その前に台が置いてある
 台の回りにはロープがぐるりとまかれ、両端が出ている

 片方だけ引っ張るとロープが抜けてしまうが
 両端を同時に引っ張ると台が動き、ケージが開くようになっている

 ゾウはパートナーと協力して ケージを開くことができたそうです
 「このことから、ゾウは、他のゾウの考えていることを理解している、
  つまり心の理論をもつと考えられる」

 心の理論は他人の存在を意識することなので、
 神のような存在を信じる信仰心にもつながるらしい

 実際、この科学者によれば
 「野生のゾウは家族が死ぬと、その場所に戻り、思いに耽っているような様子を見せている
  ゾウは社会的な動物なので、家族が亡くなったことを理解しているのだと思う」
 とのことです

 他の動物でも、例えばバンドウイルカは
 死んだ子供を背中に乗せて何日か泳ぐこともあるそうです

 動物でも死を悼む気持ちがあるのかもしれない
 宇宙人も、死を悼む気持ちがあるなら宗教心もあるかもしれない、とのことです
 (動物が死を悼むような行動を見せる、という報告はほかにもなされているようです
  http://karapaia.com/archives/52207459.html
  ゴリラ、ゾウ、チンパンジーのほか
  アシカ、イルカ、ヒヒ、オオカミ、ラマ、
  ほかカササギ、ハイイロガンなど鳥などにもそういう行動がみられるんだとか…
  昔、この番組でタコも知性があるとか言ってましたけど
  タコはどうなんでしょう?)

○人は社会を成り立たせるために宗教を必要としている
 次の科学者はカナダのクイーンズ大学の心理学者。

 彼は、宗教は進化の過程を妨げることもあるのに、
 なぜ必要とされるのか疑問だったそうです
 例えば宗教の儀式の間は狩りや採集ができない
 これは何か必然的な理由があるのでは、と考えたそうです

 彼は人に自制心を持たせるためではないか、と考えた
 そう考えたきっかけは、彼が誘惑に負けたことだそうです

 彼はチーズバーガーを食べたかったが、我慢してサラダを食べた
 (ダイエットのためか理由は不明、
 でもこの方そんな太ってない、ていうかたくましそうな体ですけどね…)

 しかし誘惑に負け、アイスクリームを食べてしまった
 その時彼は、宗教の役割は自制心を持たせることではないか、と考えた
 自制心がないと、浪費や奪い合いにより文明は滅びてしまう

 彼はこれを確かめるため実験を行った
 被験者に単語を5つ提示し
 1つを外して4つで意味のある文を作らせる

 この際、2つのグループに分け、
 片方のグループは一般的な単語、
 もう片方のグループは神とか宗教的なイメージを起こさせるような単語を混ぜた

 このあと、不味い飲み物をのんでもらう
 オレンジジュースとお酢を混ぜたものだそうで
 吐きそうなほど不味いんだそうな。

 これを飲ませた時の違いを見ると、
 宗教的な単語を混ぜた方が不味い飲み物を2倍飲んだそうです

 これは宗教的な言葉が自制心を起こさせたからではないか、とのこと

 自制心がないと他人に攻撃的、反社会的な行動を取るようになってしまう
 宗教は社会を作るために必要なのではないか、と彼は述べていました

 (個人の信仰心や道徳心に訴えかけると不正は減る、
 という結果は他にも聞いたことがあります

  経済学者のダン・アリエリーさんの実験なんですけど
  (NHKBS世界のドキュメンタリー「(不)正直な私たち~“ウソ”を巡る“本当”の話」
  で紹介されていました)

  この実験は
  被験者に簡単なテストを受けさせて、
  採点は自分にさせ、点数も自己申告する。
  点数に応じてコインを持っていってもらう
  答案はシュレッダーにかけるので、点数をごまかしてもバレない、
  というもの

  ただしこれはダミーの実験で、
  実際は答案はシュレッダーされてなくて、
  後から答案を回収して誰が不正したかを調べる、というのが真の実験です。

  この場合普通は不正を働く人が多いそうですが
  このテストの前にモーゼの十戒とか、
  信仰心を思い起こさせるものを書かせると不正は減るのだそうです

  この実験では、
  倫理規定に従います、という誓約書を書かせても同様に不正が減るという結果でした。

  ですので自制心を持たせるのは宗教じゃなくてもいいのかも、
  とも思います。
  良心を起こさせるもの、
  例えば他人への同情とか、
  しない方が合理的と判断する知性、
  などでもいいのかもしれません)

○数学的には宗教はいずれ無くなる?
 次の方はノースウェスタン大学の応用数学者、ダニエル・エイブラムスさんでした

 彼は最初、メトロノームをたくさん、
 キャスターつきの台の上に乗せて動かした

 メトロノームの振り方は最初はバラバラ、
 しかししばらくそのまま放置すると、
 全てのメトロノームが同じリズムになる、つまり同期する

 これはなぜか?
 しばらくしていくつかのメトロノームが同じ動きになっていくと、
 その動きは、キャスターを通じて他のメトロノームに伝わる
 そうなると他のメトロノームの動きもそれに従うようになる

 こうして同期するものが大多数になると、
 少数派もその同期に加わらざるを得ない瞬間が訪れるそうで、
 それを転換点といい、そこからは後戻りできず、雪崩を打って全部同期するのだそう

 (メトロノームの同期については、少し前に又吉さんの番組「ヘウレーカ!」で紹介されていました
  数学的には、同期モデルを式で説明した蔵本予想、という式があって
  (京大の蔵本さんという方が昔予想した式)
  それを九州大の若き研究者、千葉さんが解いたそうです

  やり方などはhttp://www2.math.kyushu-u.ac.jp/~chiba/paper/sugaku2016.pdf
  などに書いてありますが、さっぱりわかりません(笑)

  平たく言うと、
  それぞれのメトロノームが下の台車で連結している場合は、
  お互い少しずつ影響しあい、引力が働く
  その力がどんどん大きくなって動きを合わせていく、みたいなんですが
  数式にするとかなりめんどくさいですね(笑))

 さてエイブラムスさんによると、人間社会にも転換点があるそうです
 例えば言語。

 彼はホットドッグ屋さんで、
 謎の言語で注文していました
 これは滅びかけている古代インか帝国のケチュア語だそう
 しかしホットドッグ屋さんは誰も理解できない

 インカ帝国はスペインに征服されたが、
 スペイン語が多数になると、転換点が訪れると考えられる
 彼によると、
 みんな多数派になりたがるのはそれが楽だから、だそうです

 彼の予測によれば、
 ケチュア語は既に転換点を越えており、今世紀末には滅びるだろう、とのこと
 (ケチュア語がほろんだのは、文字を持たない、というのも大きかったのかもしれません。
  しかしこのケチュア語について詳しく書いてくださっている方もいました
  http://quechua-japanese.blogspot.jp/2011/08/blog-post.html
  (「ケチュア語講座」←発音などもアルファベットに対応して表記してくれています。
    最近更新されていませんが))

 エイブラムスさんは、
 宗教にも同じようなことが起きるのか興味を抱き、
 色んな国の国勢調査を分析したそうです

 すると世界85か国を調べた結果、
 どの地域でも無宗教の人が急速に増大しているそうです

 9か国
 (オーストラリア、カナダ、フィンランド、アイルランド、スイス、チェコ、オーストリア、オランダ、ニュージーランド)
 を数学的に分析しただけでも
 どの国も2050年には世界で無宗教が大多数になり
 宗教はなくなっていく、という推測結果になったらしい

 彼はこの理由として
 人々が宗教から得られる利益が減ったからではないか、と述べていました
 かつては教会などに属していないと生活しにくかったが
 今は所属しなくても生活できる

 彼によれば、
 「物理の法則は宇宙のどこでも成り立つはず」
 従って
 「宇宙人がいたとしても
  とっくの昔に転換点を迎えて宗教はなくなっているのかもしれない」
 とのことです

○人工知能も宗教心を持つ?
 次に出てきたのは香港に住む人工知能の研究者
 彼は瞑想が好きだそうですが
 (ベン・ゲーツェルさんという方で、ちりちりの長髪でがっちりしているので、
 瞑想姿は何となくサイババを思い起こさせる…(笑))

 テクノロジーは精神性を無くすのではなく
 むしろ増大させるのでは、と考えているそうです

 今のテクノロジーは新たな連帯感を産み出している、
 人々は多くの人と繋がり、精神的に豊かになっている。
 テクノロジーは精神性には重要、と話していました

 彼は人間と同じやり方で、
 人工知能が周りを理解していくプログラムを考えたそうです

 具体的には、 
 バッテリーを手に入れるために階段を作るロボットキャラクターと、
 そのキャラクターを見て、階段の作り方を学ぶ少女キャラクターを作った
 主人公たちは世界を巡りつつ新しいものを作っていく

 これらのキャラクターは
 世界を巡りながら自分や世界について学んでいくそうです

 このようなやり方なら
 人工知能も我々と同じようなやり方で意思や精神性を獲得するかもしれない、とのこと

 さらに、人工知能は情報をメール交換のようなやり方で共有できるので、
 彼らのやり方で精神的な体験を他の人工知能と共有しあえるかもしれない、
 それは独自の宗教を産み出すかもしれない、
 とのことです

 彼は更にボディを持つロボットを作り、
 現実世界でもこれを人工知能に体験させることを考えているそうです

 彼は、
 テクノロジーは神の概念を弱めるのではなく、
 むしろ強くするのではないか、と話していました

 テクノロジーは人と人との結び付きを弱める、温かみを奪うと心配されているが
 ロボットが精神性を獲得し、
 そういうロボットと交流すれば、
 我々はむしろ豊かになれるのではないか、
 とのことです

 高度な文明を持った宇宙人も、既に人工知能と互いに交流しているのかも、
 宇宙人と人工知能が結びつき、考えられないような高度な文明ができているのかも、
 そうして宇宙の謎を解明しているのかも、
 と話していました

○数学が宗教に代わる?
 次に出てきたのは理論物理学者のマックス・テグマークさん。
 この人よく出てくるんですけど、私はこのおじさん好きです(笑)
 独特なワールドがあるのよね…
 (ただ数学が世界のすべて、という彼の考え方には賛同できないけど)

 彼は科学の力で、全てを解き明かしたいと考えているそうです

 彼はスウェーデン出身で、
 スウェーデンにはトール(僧侶)がハンマーで巨人と戦う神話があるそうですが、
 彼によれば現代の神話は数学に基づく、とのことです
 このため我々はたくさんの数値を計測し、計算して予測し、問題を解決する

 彼のハンマーはマックスウェルの方程式なんだそう
 「あらゆる電気的な事象を説明するだけでなく、
  新たなテクノロジーを与えてくれるんです」
  よほど好きなのか、立派な額縁に入れて飾ってありました。
  やっぱりこの人おもしろい…(笑)

 彼によれば、数式で科学の全てを解明できれば
 宗教は要らなくなるだろう、とのことです

 宇宙はチェスの駒のようなもので
 真っ直ぐしか進めない駒とか
 斜めにしか進めない駒とか
 それぞれの駒にはルールがある

 宇宙のものも数学というルールが全てで、
 これは宇宙の全ての構成要素に当てはまる

 宇宙の構成要素は、電子やクオークなどの素粒子
 この素粒子は、数学的な特性に従うだけであり
 それを完全に説明する方程式を発見したら
 宇宙の全ての謎が消滅する
 そうなると、宗教は必要なくなる、とのことです

 しかし、次の科学者であり哲学者である方は
 人類はそのような数式にたどり着けないのではないか、
 と考えているそうです
○人が知ることができることには限界がある
 次の科学者は、マルセロ・グライザーというダートマス大学の方。
 テグマークさんは何となくギラギラしてますが、この方は穏やかな雰囲気でした
 (私の勝手な印象ですが(笑))

 彼は科学による宇宙の解明をフライ・フィッシング(フライ(偽の魚)を使った川釣り)に例えています

 フライ・フィッシングはフライを投げないと何があるか分からないが、
 投げれば分かる
 科学も同じで、観測機器などを使うことで見えない世界が見えてくる、と彼は言います

 しかし、科学でいつか宇宙の全てを解き明かせる、という人もいるが、
 彼は科学では永遠に解き明かせない、と考えているそうです

 その根拠となるのはクルト・ゲーデルという数学者の定理
 ゲーデルさんは最高の数学者の一人だそうですが
 彼は1931年に
 「不完全定理」
 というものを発表しているそうです

 「これは簡単に言うと、
  自己完結的な論理の形式体系では、
  可能な主張は体系内では説明できない」

 …全然簡単じゃないんですけど(笑)、
 金魚鉢の中の金魚は、
 金魚鉢の中にいる限り、
 金魚鉢の中のことを全て説明できない
 という感じの意味みたいです

 彼はゲーデルの思考実験を紹介していました
 真理マシーンがいるとする
 この真理マシーンは私が真実を言えばそれをおうむ返しに言い、
 真実でないことを言えば黙る

 この真理マシーンは
 「2+2=5」というと、
 これは嘘なので沈黙する

 「「2+2=5」を私は2回言えない」
 というと、これは真実なので繰り返す

 しかし
 「「2+2=5」を私は2回言えない」
 「「2+2=5」を私は2回言えない」
 というと、困惑してしまう
 「「2+2=5」を2回言えない」は真実だから返さねばならないが
 「2回言えない」と言いながら2回言っているからこれは真実ではない

 グライザーさんは
 「このように、真理マシーンが発見できない真理をいくつか知っている」
 と述べていました

 このように、数学、物理学などどんな知識体系も
 定義上全ての法則は不完全なのだそうだ

 マトリョーシカの中に知識の領域があるとして
 その中の紙を知識とすると
 全てを理解するとはできない。
 もっと大きなマトリョーシカの中になら
 説明できる原理があるのかもしれない。 

 これを繰り返してさらに領域を増やすと
 最終的に、宇宙の全てを理解するには
 宇宙の外の領域に出なければならなくなる。
 しかし、我々は宇宙の外に出ることはできず、それは不可能

 つまり我々が知ることができることには限界があるのではないか、
 とのことです

 そして、我々がどうしても知り得ないところに
 神の領域、概念が入り込む余地があるのではないか、とのこと

 他のいかなる星にもそれは当てはまるので
 宇宙人にも、すべてを知ることはできないのではないか、とのことです

モーガンさんは
知識の追求には永遠にゴールがない、とすれば
どんなに高度な宇宙人にも、我々にも永遠に埋められない空白がある、
そこに神が存在する余地があるのかも、
という感じで締めくくっていました

〇感想など
・最初の「人は理由ある説明を好む」
 というのは、どちらかいうと心理学、脳科学的な心の働きではないかと思いました。
 ヒューリスティックスと呼ばれるものの一つ?

 人間って目的があって何かすることが多い、というか、
 何かをするときに目的があった方がやる気が出やすいから目的を探すけど、
 モノとか現象に対しても、擬人的な解釈をしたくなるんでしょうね。
 例えば「雷さんが怒っているから雷が鳴る」
 という解釈をした方が、なんとなく自分と似たものを感じて恐怖が和らぐし、
 「怒ってるならそのうち機嫌が直るだろうから、待とう」みたいに我慢の心も出てくる。

 つまり感情や本能的なものが暴走しないように、
 そういう心の動きが反作用的に生まれたのかなと思います。
 宗教ができたのも、人間が感情などで暴走しないように、
 ということなのかもしれない。

 しかし知性が発達してきて、
 科学や理性が感情をコントロールできるようになったら、
 宗教も要らなくなるのかも…
 とも思います
 ただ緊急時、理性が動きにくい瞬間には信仰心がよりどころとなるのかもしれないが。

・テクノロジーと精神性、人工知能の話は興味深かったですが
 人工知能が精神性を獲得していく過程をもう少し知りたかったです。

 最近やっていたAIの番組(「人間ってナンだ?超AI入門」)で
 人工知能も、モノをつかむなどの行為は
 練習、体験を繰り返して学習していく、
 という話をしていましたが

 意思とか精神性(善悪?)とかいう抽象的なものについては
 体験を通じてどういう風に学習するんだろう?
 と思います
 もちろん人間でも、子供は最初具体的な概念しか分からないけど、
 小学校3、4年くらいから抽象概念を覚えていく、と聞いたことがあるが
 (算数の「10歳の壁」ってやつですね)

 善悪、好き嫌い、意欲などは人それぞれ、
 同じ経験でも善人になる人もいれば、悪の道へ行く人もいる
 その違いがどう生まれていくのか、知りたいです。
 まだそこはブラックボックスなのかな?偶然の産物?

 高度な精神性を持つテクノロジーは、すべて善の道に歩んでいくのか?
 神の世界とかだったらそうなんだろうけど、
 実際は悪用の恐れもある。
 そこを解明しないまま進んでいくのは危うい気がするのですが…

 それとも、そこを善の道に戻すのが信仰心なのだろうか。
 信仰心、宗教心は、
 テクノロジーがどんなに発達したとしても、
 良心の砦として、どこまでも知性に必要とされるのかもしれないですね。

・最後のテグマークさん、グライザーさんの対照的な考え方が印象に残りました。
 数式ですべて説明できるはずだ、
 というテグマークさんの考え方は物理屋、数学屋らしい考え方だなと思います。
 ある意味野心的というか…
 でも個人的にはグライザーさんが言うように
 「我々がすべてを知ることはできない」という考え方に同意してしまいます。

 まあ科学者からしたら「そんなの科学の放棄だ」かもしれないんですけど
 たぶんこの地球上にいるとか、肉体を持っているとか
 そういう時点で我々には制約がかかっている気がするのですよね。
 光より早いものはどうしても見られないし
 量子力学の「同時に存在している複数の粒子」は見ることができない。
 (なぜなら、自分が観察した時点でほかの粒子が消えてしまうので)
 そうなると妄想の世界(宗教?)だけど、妄想の世界は証明できない…

 宗教というか、神や大いなるものを感じる世界、神秘体験の世界、てのはどちらかいうと「主観の世界」
 科学は「客観の世界」だと思うのですが、
 最近の量子力学とか見ていると、
 科学も主観的な視点が加わってきた気がします。
 っていうか、そういう視点を持たないと理解できない科学の領域が出てきたのだろうと思います。

 そうなると、今までのやり方ではどうしても証明できない科学の領域を理解するのに、
 神や大いなるものを感じる感性、みたいなものが必要になるのかもしれない、 
 とも思いました。

・原始的な「神様が救ってくれる」考え方とか、神様によりかかる宗教、
 てのは社会に秩序をもたらすために生まれただけで、
 文明が高度になれば廃れるのかもしれない、と思います

 でも、「自分たちを超えた大いなるものが確かに存在する」とか、
 「目に見えない世界、あの世みたいなものもある」というような感性や
 人類みな兄弟、みんなつながっている、という善なる心、
 などというものは、(宗教という名前なのかは分からないけど)
 文明が高度になればむしろ強まるのかもしれない、とも思います。

いろいろ考えさせられました。
というわけで、今回はこの辺で。

 
 

 
 

Eテレ「人間ってナンだ?超AI入門「第2回 感じる」」

Eテレ「人間ってナンだ?超AI入門「第2回 感じる」」

全12回シリーズでAIを感覚的に理解する番組。

今回は「感じる」というお題だったので、感覚器官の話かと思っていたのですが、
動く、試すなどの能動的な行動も含めた
「身体を通じた経験」
の話でした

人工知能云々より、人間の知性って何なんだろうと考えさせられる内容でした。

出演はチュートリアルの徳井さんと東大のAI研究者松尾豊氏、
ゲストは元陸上選手の為末大さんでした

○なぜ人間は荷物だけを運べるのか
 最初に、テーブルの上に荷物が置いてあり
 松尾氏が
 「荷物を取ってもらえますか」と二人にお願いする

 よく見ると、段ボールの荷物の上にダイナマイトみたいなのが置いてあり、
 徳井さんはそれを取り除いて荷物を運ぶ
 為末さんも同じ

 松尾氏は
 「スゴいですね~」

 「何がですか?」
 「荷物のことしか言っていないでしょう?
  でもお二人はダイナマイトを取り除いて荷物だけを取った、それはなぜですか?」
 と尋ねました

 徳井さんは
 「うーん、我々は普通、爆弾を荷物として認識していないから?」

 松尾氏は
 「ロボットの場合はですね、
  何も言わないと上の爆弾も一緒に運んでしまいます。
  では荷物だけを運ぶようにするにはどうしたらいいですかね?」

 為末さんは
 「荷物以外のものを運んじゃダメ、て命令すればいいんじゃないですか?」

 しかしそうすると、AIは目に入る全てのものについて
 これは荷物かどうかをいちいち判断するのだそうです
 よくよく見たら、机の上にはペンとか他のものも置いてある。AIはこれらもいちいち検討する。
 また、もし荷物が机に貼り付いていたら、どうしたらいいか、
 などの可能性も含めて考えてしまうらしい。
 現実には、そうして全て計算しているうちに爆弾が爆発してしまう

 これは「フレーム問題」と言うもので
 ある哲学者が提唱した問題らしい

 例えば荷物に爆弾が仕掛けられたら、
 人間なら何も言われずなくても爆弾を外すが、ロボットは一緒に運んでしまう
 かといって、爆弾が爆発するかも、
 など想定できる事態を全てインプットしてしまうと
 今度は
 「天井が落ちたらどうしよう」「窓が割れたら…」
 とか起きそうな確率の低いことまで考えてしまう

 つまりAIは、全てのことについて同等の重要性で考えてしまい、
 問題解決に必要なフレームを持てない、という問題があるそうです

 では何が重要かを、我々はどうやって判断するのか?
 為末さんは
 「うちに今2歳の子供がいるんですけど、
  あれは荷物だ、あれは爆弾だとか名前付けして教えている
  それと同じなのかな」

 松尾氏も「そうですね」
 子供は遊んだりものを投げたり触れたりして
 物に対し何をしたらどうなるかを学んでいく

 つまり我々は周囲との相互作用を繰り返し、
 五感を通した経験を通じて物事を学んでいくのだそうです

 なので最近は、感覚が知性の発達には重要ではないか、
 体のない知性はあるのか、
 という話が出ているそうです

○五感を備えたロボット
 今年の7月、名古屋で、ロボットが箱の中から決められたものを出す動作を競う大会が開かれたそうです

 参加した日本のチームのロボットは
 視覚センサーを使って箱の中のものを認識し、
 物の中で掴みやすい場所(平坦かどうかなど)を数値化するのだそうです
 そうしてスコアの高い場所にアームを持っていきつかむ、ということを行っているらしい

 日本チームの方によれば
 今後は触覚センサーも着け、
 物に触れた部分の情報で、状態が分かるようにすることを考えているそうです

 これからは、五感を備えたロボットが生まれるかも、とのことです

○動作を学ぶには経験、試行錯誤が大事
 カリフォルニア大学バークレー校で、
 ロボットに物をつかむ学習をさせる研究をしていました

 この研究の代表者ケン・ゴールドバーグ氏によると
 ロボットがものを掴むとき、
 まずつかむ対象について三次元的なイメージを作る必要がある
 重心はどこか、摩擦はどれくらいかなど色んな力学をまなばねばならない

 さらに、そのあと膨大な面の中から、ペアになれる面の組み合わせを探し、
 その2つの面で挟んだときの微妙なバランスのズレなども調べ、
 兆単位の組み合わせから最適なものを選ばねばならない、
 とのことです

 松尾氏の解説によると、
 人がこういう選択を瞬時にできるのは、
 赤ちゃんの時にものをつかむことをたくさん練習しているからなのだそうだ
 赤ちゃんは何回もつかんで落としてを繰り返し、どこをどうつかめば落とさないかを学習していく

 徳井さん
 「赤ちゃんって、ある年齢になると何でも触りたがるけど、
  それはデータを収集しているんですね」

 人工知能も赤ちゃんと同じで、
 何をしたら何が起きるかを学ばねばならない
 ものをつかむには、色々試して、色々失敗しなければならないのだそうです

 つまり学習にはたくさんの経験、失敗が必要なのですね。

○形容詞的な概念
 他に、経験や五感がもたらすものとして
 「副詞、形容詞」の概念があるそうです

 松尾氏は机の上のものについて
 「このロボットは大きいですか」
 「このペンは大きいですか」
 と二人に尋ねていました

 「このロボットは小さいですね」
 「このペンは太い」
 などと二人が答えると
 「じゃあなんで大きい小さいが分かるんですか?」

 「うーん、ロボットって普通もっと大きいし…」
 「色んなペンを知っていて、
そのなかで見たら太い方だから」

 松尾氏によると
 つまり大きい小さいが判断できるのは、他にも色々な物を見た経験があるからで、
 我々は経験を積んでこれは大きい、小さいを学び、
 知識を蓄積していくのだそうだ
 逆にいうと、人は経験の積み重ねがないと判断ができない

 「例えば、お客さんがよく笑う方かどうかも経験で分かりますよね」
 と徳井さんに聞いていました

 徳井さんによれば、芸人さんの間では「重い客、軽い客」といって、
 なかなか笑わないお客さんには
 「今日のお客さん重いなぁ」
 と感じて、
 「本題に入る前にこっちから寄っていって、お客さんを起こしてから本題に入る」
 のだそうです

 松尾氏は
 「そういう風に、いつもと違うことをするとか、
  行動に対しての相対的な評価が副詞的な概念なんです」

 人工知能、ロボットの場合も、
 自分で歩く、あるいは歩くのを見るなどの経験がないと
 速い遅いの判断もできない
 つまり体の経験が知性の本質ではないか、とのことです

 松尾氏は
 「体がない知性、例えば脳だけの人間、ていうのがいるとして、
  その人間が理解できる世界はどういうものだと思いますか」
 為末さん
 「全部記号みたいになりそうですね」
 歩くとはこうだと言われてるからこうすることなんだと判断する、
 みたいな、情報のコピーだけする、
 理解のない知性みたいなもの…
 「知能としてはお粗末な感じですね」

 体験がないと判断の尺度が自分の中にできない、己の尺度ができない、ということなんですね。

○経験を模倣学習する
 先のケン・ゴールドバーグ氏の話によると
 掴む過程の学習は難しいが、
 他の人の動作を分析することで、
 動作の仕方を学ぶことはできるそうです

 例えば手術ロボット
 縫合の作業は患者が変わってもだいたい同じで
 この作業を観察することでやり方が学べる

 これは「模倣学習」といい
 ディープラーニングでも行われているらしい
 この模倣学習では、
 ・動作のデータを集め、
 ・動きを部分(セグメント)に分け、
 ・セグメントごとに動きを学ぶ、
 ・それを後から一連の動作に統合していく
 という手順で学べるのだそう

 徳井さん
 「ハードルも、為末さんのやり方を見ることで、為末さんの経験が受け継げるってことですね」
 松尾氏は
 「ただ、模倣は最初からはできないですよね。
  真似するには何が必要なんでしょう」

 為末さんは
 「うーん、こうすると自分の体がこう動くと分かることと、
  あとはあんな風に動かせば体の動きがこうなる、と頭の中でシミュレーションできることですかね」
 つまり自分の身体感覚と、
 人の動作を見て頭の中でイメージする動作、
 この二つの関連付けができないといけない

 これは脳にとっては難しいそうで
 猿にはできるが犬、猫にはできないそうです

 松尾氏によると、
 模倣は脳が短時間で効率よく学習するための仕組みで、
 人間の脳はこのように効率的に学習する仕組みをたくさん持っているそうです

 そう言えば昔BSの番組で
 (NHK BS世界のドキュメンタリー「勝てる脳の秘密~完璧なアスリートを目指して~」)
 スポーツ選手の能力をイメージトレーニングやシミュレーションでアップさせる、
 という話をしていましたけど
 あれも「模倣学習」ができる人間だからこそなんですね。

○チャンク化
 為末さんは
 「大人は考えなくても物を掴むなどができるけど、それはいつ頃からなのか」と聞いていました

 松尾氏によると、
 人間の脳は、何回も経験を重ねていくと、
 こういうことをするとこんなことが起きそうだ、
 というような予測や計画が立てられるようになるのだそう

 そして、その際脳の中では、
 行動の「チャンク化」が行われている、という。

 チャンク化とはなにか?

 例えば赤ちゃんは、物を持つとき
 「手を近づける」「手を広げる」「手を閉じる」「腕を上げる」
 など色んな作業をいちいち考えないといけないが
 大人は全部をひとかたまりで「持ち上げる」作業と捉える
 そこから、「持ち上げて」「ここに置く」という、より複雑な作業ができるようになる

 為末さんは
 「これはスポーツでも同じ感じですね」
 スポーツでも最初は個々の動きをバラバラに考えるが
 そのうち感覚的に「シュッと投げる」という風にできるようになるそうです

 自転車や車の運転など、
 体と結び付いた記憶(手続き記憶)は衰えにくい
 という話を聞いたことがありますが
 チャンク化されているからなのかな?

○「感じる」と「考える」の関係
 松尾氏は為末さんに
 「為末さんにとっては、頭の中で動作を考えることと
  身体を動かすことは、どういう関係ですか?」
 と聞いていました

 為末さんは
 「ハードルの練習をするときは、
  最初は思いきり飛ぶ練習だけで、その時は腕の動きとかは考えない。
  それから止まった状態で腕の動きを学ぶ。
  それから動きをつなぎあわせて、最後はイメージだけで跳ぶ、という感じです」

 松尾氏
 「じゃあ感じることと、考えることの関係は?」
 為末さん
 「??感情は受け身、考えるのは自分から、て感じですよね…」
 松尾氏
 「バラバラですかね」

 徳井さんは
 「でも野球で打つときは、瞬間的に撃ち方を判断しているようで
 実際は何キロのボールが来てます、腰の回転はこうです…とか判断している、
 そうなると考えるのと感じるのとどこに境界があるんか分からなくなりますね」と話していました

 松尾氏も「そうですよね」
 例えば野球選手は球を撃つとき、
 ランナーがいるから右に飛ばそうとか、カーブだからタイミングをずらそうとか瞬時に考える
 「その時の考えるタイミングと、無意識に撃つ動作との関係はどうなんでしょう?」

 為末さんは
 「うーん、スポーツ選手の場合、
  「考える」は後から来ることが多いんじゃないですかね」
 やってるときは感覚的にやって、
 後から何でうまくいったんかな、こうしたからかなとか考えて
 次にじゃあこうしてみようと考える、
 感じるのと、考えるのには時間のズレがあるのでは、
 と話していました

 (そう言えば、昔一流スポーツ選手はどう身体を動かしているか、
 という本を読んだことがありますが
 (「一流選手の動きはなぜ美しいのか からだの動きを科学する」小田 伸午)
 「スポーツでは、科学的に分析した客観的な動きと、実際動かす本人との感覚にはズレがある」
 と書かれていました。
 スポーツの場合、動作をバラバラに考えてそのまま動かすと、
 タイミングが遅すぎてしまうのだそうです。
 つまり1つ1つの動作を考えて動いていると遅すぎになってしまう。
 (例えば野球の外野の人が、ボールを投げるタイミングを気持ち早めにした方が遠くに投げられた、という話。
 ただし早めにするのはあくまで主観的な感覚の方で、実際の体の動きはそれとは別)
 これは、考えるという行為は、感覚とか動くより時間がかかる、ということなんだろうと思います)

○感じる、行動するのが先、考えるのは後?
 松尾氏は
 「「考える」は「感じる」ことをブースト、加速させるという考え方があります」

 最近の脳科学では
 「脳が考えて体を動かす」のではなく
 「体が動くから、脳が動かした、と感じる」
 という考え方があるそうです

 神経科学者のベンジャミン・リベットの実験によると
 人は、動作をする0.2秒前に意識的な決定をするシグナルが脳に出ているが
 さらにその0.3秒前には、意思決定に関わる無意識的な脳の活動があるのだそう
 つまり、我々が意識する前に無意識の領域で行動は決まっている

 松尾氏は
 会社の取締役と現場の従業員、という例えをしていました
 脳は取締役、体は現場
 取締役は、だいたい大雑把な方針を決めるだけで
 現場が細かいことを決めている
 なので現場のことは取締役は詳しくは分からない
 ほとんどの行動が無意識なのはこのため

 しかし問題があったら上に上がってくる
 だから意識的な行動とは、よっぽど大きな問題が起きている時ではないか、とのことです

 為末さんは
 「反射系のスポーツ、バトミントンとかだと、
  考え出すとうまくいかなくなった、ていう話があるんです」
 これは先の例えでいうと、
 社員だけでうまくいってたのに
 取締役が出てきてゴチャゴチャ言うから現場が混乱する、
 というのと同じことではないか、と話していました

 うまくいっている会社なら現場が何も言わなくても適切に働いてくれる。
 これは現場をちゃんと訓練しているからそうなっている。
 一流のスポーツ選手の体でも現場は勝手にうまいことやってくれている、ということなのかな?

 それから為末さんは
 「考えなくてうまくいっていた選手が
  考え出すとうまくいかなくなる
  でもそこを乗り越えて考えたらまた強くなる、っていうのはよくある話なんですよね」

 いわゆる、天才がスランプに陥るパターンですね…

 これは脳科学的にはどういうことか?
 松尾氏の分析では
 考える、言葉にする、
 というのは抽象化し、要約すること、
 つまりいったん情報を削ぎ落とすことなのだそう
 しかしその代わり、保存性はよくなる

 情報を落とすのは一見効率が悪いが、
 知識を保存しやすくすることで、
 細かく情報を分解して効率的な方法を考えられるし、
 経験を蓄積したりできるのだそうです

 だから、スポーツ選手も
 感覚的にやってたことをうまく頭で要約できれば、
 改善もできるし、再現もしやすくなるのだろうけど
 その過程で間違って必要な情報も落としてしまったらうまくできなくなる、
 ということかなと思います

 為末さんは
 「じゃあ人工知能で、動きのまま削ぎ落とさずに保存できたら、また違う動きができるかもしれないですね」
 松尾氏は
 「そうですね、それは面白いかもしれないですね」

○テレポーター
 次に、番組の冒頭からずーっと置いてあったロボットについて。

 徳井さんがこのロボットと会話していましたが
 会話の仕方がなんか人間臭い。

 このロボットは、実はネットとつながっている
 つながった先の端末を使っている人は、ロボットの経験を体験できる

 例えばロボットの目に当たるところにはセンサーがあるが、
 端末の使用者はゴーグルのようなものを被り
 ロボット目線のものを同じように見ることができる

 また、ロボットに握手すると、使用者の所にも対応するセンサーがあってその感覚が分かるのだそうです

 開発者の方によれば
 「使用者がどこにいてもロボットが身代わりになって色んな人に出会える」とのこと
 テレポーテーションしているみたいなので、このロボットは「テレポーター」と言うのだそう

 今はロボットが体験したものを使用者が遠隔で感じられるだけだが、
 使用者がロボットに自分の動作や思考などを学習させ、それを蓄積していけば
 自分の身代わりロボットにできるのでは、とのことです

 極端な話、自分がいないときや、死んだあとでも自分のアンドロイドみたいに振る舞えるかもしれない、
 そうすると死ぬことに意味が無くなるかもしれない、
 とのことです

○2分で分かるディープラーニング
 毎回動画でやってる、ディープラーニングについて学べる動画です。
 今回は重み付けのことで、
 情報の重み付けが強いほど次の層に太い線で伝わり、
 太い線ほど次の層を強く活性化する、
 とかいう話でした
 (ホームページからも見られます)

○まとめ
 最後、「人間ってナンだ?」
という質問に
 為末さんは
 「自分を知らない生き物」
 自分は自分のことを知っていると思っていたけど、大きな勘違いだった
 知能は、体が無意識にやっていることに支えられているけど、
 そのやっていることを自分は何も知らないんだ、
 と思ったそうです

 徳井さんは
 「データの集合体プラスアルファ」
 人工知能は人間に似ているけど、
 人間が作るからそれは当たり前で、
 でも人工知能に加わるプラスアルファがあるから人間になるのかな
 …という感じの感想でした

 松尾氏は
 人間が意識しているのは得ている情報の一部に過ぎない、
 我々を構成するほとんどは、
 無意識で感じていることだ、
 と話していました

 今まで人間は考えることが知性、と考えられてきた
 人工知能の分野でも、考えることがクローズアップされてきた

 しかし、「考える」は
 たくさんの無意識的な「感じる」に支えられているんだ、ということだそう

 為末さんは
 「「感じる」とは「データを集めること」
  「考える」とは「データを編集すること」
  でも元のデータがないと、考えることも何もできないんですね」
 と話していました

○感想など
・人工知能って体要らなくない?と個人的には思っていたのですが
 (ロボットは人間が安心するするためのものくらいに考えていました)
 それだと、いつまでも人間がデータをいれてあげないと判断できない子になっちゃうんだなぁと思いました。体って大事なのね。

 でも人工知能が感覚を感じ始めたらどうなるんだろう。
 大きい小さいみたいな、
客観的な程度の判断だけできるならいいけど、
 善悪とか快不快とか、好き嫌いが出来てくるのかな。
 そうなると「こんなことしたくない」とか言い出しそうでめんどくさそう…
 主観的な好き嫌いの判断とか感情も感覚から来るんだろうか?と思いました。

・最初のフレーム問題でも、後半のスポーツ選手の感覚を言語化するのも
 「情報を減らす」
 というのがキーになっているなと思いました。

 フレーム問題では、重要度の高い情報だけを見抜かねばならない。
 言語化の段階でも、色んな人の感性の中で、
 共通して理解できるような概念を抽出して共通の記号で表さねばならない。

 となると、情報を減らす、というのは人間特有の高度な知性の働きなのかなと思いました。

 というか、単に減らすだけなら誰でもできるんだろうけど、
 ポイントを押さえて要点だけ抽出するというのはとても難しい。

 人間でも文をだらだら書くのは誰でもできるが
 要点だけ押さえて簡潔に書くのは難しいですからね…

 それからフレーム問題を見ているときに思い出したのですが
 心理学や経済学に出てくる
 「ヒューリスティックス」というのも、
 情報を減らす行為なのかなと思います。

 ヒューリスティックス、は、
 (私の理解で書きますと)
 経験とか常識、感情で物事を判断する我々の心のクセみたいなもの、ですが
 ヒューリスティックスによると
 我々人間は、
 「よく見聞きするもの」とか
 「ありそうなこと」を選ぶとか、

 強い恐怖など不快な体験をしたものは避ける
 (逆に快いものは選ぶ)
 などという傾向があるようです

 これも、膨大な情報の中から必要そうな情報を選び、
 ほかの要らない選択肢は削ぎ落とす脳の働きの1つなのだろう、と思います

 ただ、ヒューリスティックスに見られるように
 人間の脳が削ぎおとした情報は、本当に要らない情報だったのかは怪しい所がある

 ここにAIの能力が入り込む余地があるのかもしれないですね。
 為末さんが言うように、
 落とさない情報も保つことができればまた面白いかもしれない。

 ちょっと前にNHKで、マツコデラックスさんとAIの番組があって、
 AIに情報を入れて社会問題を解決させる
という少々無茶ぶりした企画だったんですが

 番組を見ていたら、AIの出してくる答は人間の常識からしたら「??」というものがありました。
 これも、人間が常識とかで要らない、と勝手に判断したものを
 AIが削ぎ落とさずに持っていた結果なのかもしれない。

 人間とAIが補いあう、ていうのはこういう活用法もあるのかなと思いました。

 個人的にはAI自体にはそんなに興味がないんですが、
 (将来必要かなと思ってAI関係の情報は集めていますが)
 AIの研究を通じて、人間の脳や進化、発達などについてあぶり出されるのが面白いなーと思います。
 また次回も見たいと思います。

というわけで今回はこの辺で。
posted by Amago at 07:28| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年10月13日

NHKBS世界のドキュメンタリー「オーダーメイド・ベビー」

BS世界のドキュメンタリー「オーダーメイド・ベビー」

2017年フランス制作のドキュメンタリー。
生殖医療の問題を扱った番組で、
現在どこまで技術が進んでいるのかの紹介と、
命を選別していいのか、障害者の権利はどうなるのかなどの議論についてでした。

予想できる展開ではあったんですけど
SF小説のようなセリフを真面目に言っている人たちが
既に存在している事実には改めて驚きを感じました。

○生殖医療の現在
 体外受精は1978年、イギリスで初めて行われたそうです。

 それ以来、西側諸国では100人に3人が体外受精により生まれ
 それ以外の国でも1000人に3人が体外受精により生まれている。
 生殖医療の市場は年間200億ドルとも言われているそうです。

○インドのクリニック
 最近生殖医療で注目されているのはインド
 技術も高く、値段もお手頃だそうで、海外から不妊治療を受けに来る人が多い

 取材されていたクリニックでは
 レーザーにより着床を促したり
 卵子や精子を凍結保存するなど
 色々な治療法が選べるそうです

 普通卵子は一回の排卵周期で1つ排卵されるが、
 人工受精の場合は6個か7個1度に行う

 このクリニックでは、エンブリオスコープ、という顕微鏡があり
 全ての受精卵の胚分裂の様子をいっぺんに見られる。
 モニターにもつながっていて、
 全ての受精卵の生育状況が同時にリアルタイムで見られるようになっており
 育ちのいい受精卵を子宮に移植するのだそうだ

○デンマークの精子バンク
 この精子バンク(クリオス社)では、
 精子ドナーの履歴が見られるカタログがあるそうです

 カタログ(といっても電子カタログです)には
 ドナー男性の子供の頃の写真、
 親の国籍、心の知能指数、
 筋肉質かなどの体質、靴のサイズなんかも見られる
 ドナーの肉声も聞ける

 高い料金を払えばこのような詳しいプロフィールが見られるそうです
 40~1000ユーロまで値段設定があり
 安い料金の場合はドナーの情報は基本的なものだけらしい
 精子は液体窒素で保存されており、永久に持つとのこと

 代表の方によれば
 最高品質の精子を所有するため、
 ドナー希望者の中でも採用するのは10人に一人なのだそうです

 不妊カップルだけではなく
 独身女性、レズビアンカップルからの問い合わせもあり
 「需要と供給のバランスで、これは1つのマーケットです」
 だそうだ

 1つのマーケット、と言い切るのがすごいですね…

○ロスアンゼルスの卵子バンク
 精子バンクがあるなら卵子バンクもあるそうですが、
 アメリカのロスにある卵子バンクは
 経営者である女性の辛い体験から生まれたそうです

 彼女は子供を授かったが、早くに亡くなる
 そのあと授かりたかったが叶わなかったそうです
 彼女は自分のように子供が欲しいと願う人たちの手助けになりたい、
 と考えているそうです
 「親の経験がある女性として、
  子供を持つ喜びや、ドナーへの感謝の気持ちも分かる」
 と話していました

 ドナーとなった女性に話を聞くと
 「最初は病院で検査を受け、
  超音波で卵胞や生理周期のどのあたりかなどを調べる。

  そのあと、排卵誘発剤の注射を受ける
  たしか1日2回を7日間、
  そのあと1日3回を3日間だったと思う。
  効き目によってはトリガーショット、という注射を自分で打つこともある。

  卵子を取り出したあとは、回復するまで1日はかかる。
  人によっては2、3日。
  ヒリヒリするだけだけどね」

 このドナーの女性は3人子供を持つシングルマザーで、
 ありていに言えば金銭目的で卵子提供を行ったそうです
 3人の子供を持ちながら学校を出て、仕事を始めるくらいの時期だったので
 経済的には苦しかった。
 報酬で学業ローンの支払いができ、
 子供のための貯金もできた、と話していました

 また、別のドナーの女性は
 「ドナーになるときは、自分の子供、という意識を持たないこと」
 と話していました
 卵子を渡したらあくまでも生まれた子はその人の子供、
 自分は彼らが子供を持つお手伝いをしただけ、
 と割りきることが大事だそうです

○赤ちゃんの性別、瞳の色も選別できる
 カリフォルニア州の生殖医療研究所では、
 早くから受精卵の性別を選べる事業を行ってきたそうです

 この研究所の男性が説明してくださいましたが
 手法としては、受精卵から細胞を1つ取りだし、染色体を調べる
 胚は傷つきやすいので取り出す作業は神経を使うそうです
 性染色体を染め、XYなら男性、XXなら女性

 最近では瞳の色も選べられるそうですが
 それを発表したとき、バチカンから電話がきたらしい
 「彼らはとても丁寧な話し方で
  「瞳の色の選別はまだ社会が受け入れられていないから、慎重に進めてください」
  と話していました」

 しかし、彼によれば、瞳以外の選択は難しいそうです
 肌の色、知性などはまだ仕組みが解明されていないらしい

○天才精子バンク
 しかし1980年代には、ドナーの知能指数で精子を選別する試みがなされていたそうです

 カリフォルニアにあったこの精子バンク「天才精子バンク」は
 ロバート・グラハムという方が設立したそうで
 実際にこのバンクから精子提供を受け、自分が産まれた、
 という女性もいらっしゃいました

 彼女の父親は不妊体質だったそうですが、
 テレビでこのバンクが紹介されていたのを祖母が発見し
 提供を受けたのだそうです

 ドナー男性のことも分かっていて、
 名前、知性が高いこと、卓越した運動能力があること
 などは知っているそうです

 彼女がそれで優秀な方なのかどうかは番組で触れられていなかったので分かりませんが、
 彼女自身は
 「両親は私が小さい時からそのことを正直に話してくれた、
  でも自分にとっては奇妙でも特別でもない、
  私が存在するにはこれしかなかった」
 と話していました

 この精子バンクは、グラハム氏の死後は閉鎖されているらしいのですが
 グラハム氏へのインタビュー映像は残っていました
 
 この精子バンクには3人のノーベル賞受賞者や、
 20人ほどの優秀な遺伝子を持つ人たちの精子が凍結保存されていたらしい
 グラハム氏によると
 「若手リーダーの住所録から目ぼしい人を探し、
  その人に手紙を書いてドナーになってくれるようお願いした、
  1、2%の人は快く引き受けてくれた」とのこと

 彼は
 「建設的な生殖を進めていくことが、我々の使命だと思っている。
  優秀な遺伝子を残していくことが大事だ」
 と話していました

 「建設的な生殖」「優秀な遺伝子を残す」
 というのは、かつての「優生学」の考え方をほうふつとさせる

 生物学者のジャック・テスタール氏によると
 「優生学は、ダーウィンのいとこのフランシス・ゴールトンが提唱した考え方で
  「悪質な遺伝形質」を淘汰し、「優秀な遺伝子」を残すという考え方。
  この考え方は古代からあったにはあったが、
  1910年から30年代ではとくに盛んだった。
  このころの生物学者はみんな優生学者で、
  彼らの目的は人類を向上させること、
  遺伝子疾患のある子供が生まれないようにすることだった」

しかし、その「優秀な遺伝子」の選別はすでに始まっているのかもしれない…
という話が次になされていました
○受精卵の出生前診断
 スペインのバイオメディカル企業では、
 体外受精の受精卵を移植する前に、遺伝的な検査を行っている
 これはPGE(出生前診断)と呼ばれる

 1人の人間のヒトゲノムは、8時間あれば解析できるそうです
 この研究所の研究者は
 「38歳を超えたら胚の遺伝子診断をする必要がある。
  流産や染色体異常の恐れがあるためです」
 と話していました

 産婦人科医のカルロス・シモン氏は
 「昔は、出征前診断は不妊患者の妊娠のために使われていたが、
  現在は、健康な赤ちゃんを産むためのもの」
 と話し
 「専門家を頼れば健康な赤ちゃんが産まれる、
  セックスは楽しみのためのもの」とまで言っていました
 小説の世界のような話ですね…

○選べる医療が現実になってきた
 フランスでは、120あまりの遺伝子疾患がPGEで発見可能、
 イギリスではこの5倍なのだそう
 しかも外観の欠陥も遺伝子検査で分かるのだとか

 パリのデカルド大学の医学者グレゴリー・カッツ氏は
 「自分が子供を作るときは、家族限定に限って優生学を取り入れるつもりだが
  社会全体が優生学を受け入れられるかは自信がない、
  命の選別や修正をするのは映画の「ガタカ」そのものの世界」
 (「ガタカ」は1997年の映画で
  遺伝子操作で子供を作るのが当たり前の社会、
  生まれた瞬間に子供の将来の疾患の可能性が%で分かる世界、
  という設定の作品らしい

  一応あらすじを調べますと、
  遺伝子操作で生まれた子は「適正者」、普通の性交渉で生まれた子は「不適正者」
  とされる社会で、
  不適正者として生まれた主人公が、
  宇宙飛行士になるために困難を乗り越えていく話だそうです)

 生物学者のジャック・テスタール氏は
 「重い障害を持つ子供が産まれることは、もちろん親は望まない
  しかし問題はどこまでが障害か、の線引きだ」
  現実的にはそれは線引きできない、
  障害をすべて取り除こうと思ったらきりがない、
  許された限界を突き進んでしまったら人間は自尊心を失う、
 と話していました

 しかし産婦人科医のカルロス・シモン氏は
 「自然に任せるのが本当にいいのか?
  もし介護が必要な子供が産まれたら、両親は苦労する。
  それでもそれが一番だというのか?
  我々のような医者がいるのは、自然が完ぺきではないからだ」
 と話していました

○3人の親を持つ子供が生まれる?
 2015年、イギリス議会では「3人の親を持つ子供」が法的に認められたそうです。

 これはどういうことかというと、
 ミトコンドリア異常の女性が、それを子供に伝えないための治療方法ができたとのこと

  ミトコンドリアは細胞の内部に存在し、
  核(主な遺伝子が詰まっている所)とは別に存在している
  エネルギー生成などの重要な役割をしていて、
  女性側の卵子に含まれるため、子供にはそのまま母親から受け継がれる
  このため母親にミトコンドリア異常があると、子供にも引き継がれてしまう

  そこでニューカッスル大学では、
  女性の卵子から核を取りだし、
  別の女性の卵子(核を取り除いたもの)に入れる
  そのハイブリッド卵子で普通の体外受精を行う、
  という治療研究を行っていたそうです

  つまり「3人の親」というのは、
  卵子の核、卵子の核以外、精子がそれぞれ別の人間由来、という意味です。

  ただしこれは少々誤解を招く表現で、
  実際は卵子の核以外の部分にはほとんど遺伝子はなく
  ミトコンドリアにも遺伝子はあるけど、
  割合としては体内の遺伝子の1%以下だそうですが…
  (そもそも、ミトコンドリアのDNA自体が細菌由来ですしね…)

  この方法を使えば、
  今までは母親にミトコンドリア異常があったら
  それが子供に引き継がれ、その次の代にも異常が引き継がれる恐れがあったが
  この方法を使えば、それが防げるようになるそうです

 アメリカの研究では、この方法によるベビーがすでに誕生している
 ただし、行われたのはアメリカより法律が緩いメキシコだそうです
 イギリスでは2015年にこの治療法が合法になり、
 まもなくこの方法でベビーが誕生するだろう、とのこと

 イギリスではこの法案を審議する際、
 専門家による助言なども受けていたそうですが
 そのうちの一人マンチェスター大学のジョン・ハリス氏は
 「人間が、安全を確定できないレベルまで、
  科学技術を発展させるのは
  いいことなのか、災いをもたらすことなのか?
  これを常に考えなければならない」
  と話していましたが、

 この法案については
 「3人の親、という表現は誤解を招く。
  ミトコンドリアの遺伝子は全体の1%以下、それも意味がないもの。
  3人が関わるのはたしかだが、それが何だというんだ」
 という話をしていました
 
〇人工卵子、人工精子
 最近では、卵子や精子を人工的に作る、という研究もされているそうです

 アメリカのボストンにある企業では、
 女性の体内の卵子を若返らせる薬の開発を目指しているらしい
 この企業の遺伝学者によれば、実現は間近だそうです

 この企業では、女性の卵子を、幹細胞から育てることもしているのだとか
 今は2年育てていて、もうすぐ赤ちゃんを産めるくらいになる、と話していました
 人工的に卵子を育てられれば、
 オーダーメイドの卵子を作ることも可能になるそうです

 また、フランスのリヨンにあるベンチャー企業では
 人工的な精子を作った、という発表がされたそうです

 この研究者によれば
 生殖細胞から精子を育てるのだそうですが
 この技術を開発するのに23年かかったのだとか

 ネズミの精子が成功し、次にヒトの精子を育てた
 今後は、生殖機能があるかどうかを確認する必要がある、とのこと
 
 ほかの研究者は、育てるのはヒトなので
 慎重に進める必要がある、と話していました

 しかしこの成果の発表後、男性不妊に悩む方々からの問い合わせが多いそうで
 「カップルの写真を送ってくる方もいる、
  彼らが親になる手助けができればうれしい」
 と研究者は話していました

 先ほど優生学の解説で出てきた生物学者のジャック・テスタール氏は
 「人工的な受精卵を沢山作ってスクリーニングする、
  そういうやり方は優生学の思想そのもの」と話していました

〇ゲノム編集技術
 最近では、「ゲノム編集」の技術も進んできている
 医学者のグレゴリー・カッツ氏は
 「受精卵を処分するかどうか、は昔の話だ。
  今は低コストでDNAにはさみを入れて編集できる。
  これは遺伝学者の遺伝子組み換え技術に利用されている」
 
 最近ゲノム編集で話題なのは、クリスパー・キャス9というシステム
 (確かちょっと前にサイエンスゼロでもやってましたが
  http://neuro-educator.com/crisprcas9/
  (【図解:3分で解説】クリスパー・キャスナインとは|遺伝子改変、ゲノム編集技術
  このページが一番ビジュアル的にわかりやすいかも)
  http://www.cosmobio.co.jp/product/detail/crispr-cas.asp?entry_id=14354
  (コスモバイオ社のホームページ)
  http://www.japanprize.jp/data/prize/2017/j_2_achievements.pdf
  (「CRISPR-Casによるゲノム編集機構の解明」これは発見の経緯です)

  などにもありますが
  私の理解でざっくりいうと、
  クリスパーとキャス9という2つのたんぱく質からなるシステムで、
  クリスパー(たんぱく質とRNAとの複合体)により、体の中の標的遺伝子を見つけてくっつき、
  キャス9という切断酵素でその標的遺伝子をカットする、というもの)

 このクリスパーキャス9システムは、今までの遺伝子組み換え技術よりも、
 標的遺伝子を正確に確実に見つけ、切断できる技術なのだそうです

 このシステムを発表した研究者の一人エマニュエル・シャルパンティエ氏は
 「この技術は病気を治療するためのもので、
  望ましくない目的には使われるべきでない」
 と話しています
 
 しかし中国では、ヒトの胚に遺伝子改変を行った受精卵を誕生させた、
 という発表がされた
 血液の病気の原因となる遺伝子を組み替えたそうです
 子宮への移植は行われなかったそうですが
 オーダーメイドベビーへの第一歩だとして大きな問題となったそうです

 (最近では、アメリカでも行われたそうです
  http://gigazine.net/news/20170803-first-us-human-embryos-edited/
  によりますと、
  「2017年8月2日に科学誌Natureで発表されたMitalipov博士らの本研究」
  で、米韓中の共同研究チームによるものだそう
   内容としては、
   ・肥大型心筋症の原因遺伝子を持つ精子
   ・正常な卵子
   を体外受精させる際、精子の心筋症原因遺伝子をクリスパーキャス9システムで切り落とし
   正常な卵子の遺伝子で補わせる、
   というもので
   成功率は約72%だったそうです
   (ちなみに、受精卵は3日後に廃棄されたらしい))

 外科・泌尿器科医のローラン・アレクサンドル氏は
 「まだ発展途上だが、2025~35年にはオーダーメイドベビーは実用化するかもしれない、
  ただこの技術は、生まれてくる子供の能力を変えることになる。
  我々はそこを考えないといけない、
  我々が完成させようとしている技術はとてつもない力を秘めている」
 と話していました

 クリスパーキャス9システムを発見した、エマニュエル・シャルパンティエ氏は
 「個人的には、ヒトの生殖細胞の遺伝子をいじるべきではない、と考えている」
 とのこと
  生殖細胞の遺伝子組み換えは
  いったん許されるとどんどんエスカレートし、一線を越えてしまうからで
  遺伝子組み換え技術は制限されるべき、と話していました

 一方、泌尿器科医のローラン・アレクサンドル氏は
 「一線を越えるべきではない、という人もいるが
  一線というのは時代とともに変化する」
  体外受精も出生前診断も人工心臓も、
  数十年前には受け入れられなかったが、
  今はむしろなくてはならないものになっている
  遺伝子組み換え技術だってそのうち日常的になるかも、とのことです

 また、医学者のグレゴリー・カッツ氏は
 「突然変異を排除するのはリスクがある」
 そもそも選別するのは果たしていいことなのか、と疑問を投げかけていました
 「突然変異を排除してしまったら、
  我々人類は、ある日突然環境の変化に対応できなくなるかもしれない」
 それから
 「ベートーベン、モーツアルトも遺伝子変異に苦しめられたが
  彼らから変異遺伝子を取り除けばよかったとは思わない。
  あの素晴らしい音楽は、体の不具合を乗り越えるために生まれたものだ。
  たとえ人間に欠陥があっても、それが人間を人間らしくしている要素だ」
 と含蓄ある意見を述べていました

もし遺伝子変異が悪い遺伝子、というのなら、障がい者などの存在はどうなるのか…
と次の方は問いかけています
〇車いすのアーティスト
 ロンドンの科学博物館には、
 車いすのアーティストの作品があるそうです

 その名も「パンドラの箱」
 遺伝子検査をテーマにした作品だそうです
 アーティストの女性によると、
 人間の価値とは何なのか、
 人間は後戻りできない道を突き進んでいるのでは
 という気持ちから作られた作品だそう

 彼女は遺伝子検査すべてに反対しているわけではない、
 と話していました
 ガンなど、命に関わるような病の治療のためなら賛成だと。
 ただ問題なのは、
 遺伝子疾患があるだけで価値が低い、
 と勝手に決められることで、
 特に医療機関の人たちは勝手に価値を決めている、
 と話していました

 彼女は
 「私は、障害があっても結婚もし、
  忙しく、充実した生活を楽しんでいる
  制約があっても質が低いとは思わない」

 「でも他人から見れば、
  私の姿は親が子供に望む姿ではないかもしれない。
  でも、だからこそ、もっと話をしたい」

 また、
 「もし誰かが、
  あなたの病気は治る医療はあるが、今の自分でなくなるかも、
  と言ってきたら、私は危険を冒すことはしない」
 
 そして、
 「苦しいのはこの体の状態ではなく、
  周りの人たちの態度など、ということも多い。
  遺伝子疾患などをなくすよりも、
  バリアフリーの精神を大切にする方が先ではないか、
  そうすれば住みやすい社会になるのではないか」
 と話していました

〇感想など
 最初は単に、最近の生殖医療の紹介かなあと思っていたのですが、
 だんだん話が哲学的というか、根が深いものになっていって
 見ごたえがある番組でした。

 最後の方で
 「欠陥は、人間が人間らしくあるためのものだ」
 という言葉がありましたが
 実際問題、欠陥のない人間っているのかな?と思います。
 同時に、いいところが一つもない人間もいないと思う。
 凸凹があるから個性が産まれるんでしょうね。

 途中で医療関係者が
 「自然に任せて、親の介護の必要な子が産まれたとして、それは幸せなのか?」
 という問いがありましたけど
 そりゃたしかに、物理的肉体的には、毎日介護しなきゃいけない、
 ってのはきれいごとでは済まされないだろう。
 でもそういう状況だからこそ味わえる喜び、ってのもあるんじゃないかなと思う。
 同じ状況の人を分かってあげられる優しさも芽生えると思う。

 一方で「優秀な遺伝子」を持つ人生は本当に幸せなのか?とも思う。
 それも分からない。
 もしかして人を馬鹿にする子供になっちゃうかもしれないし
 挫折から這い上がる達成感も味わえない、
 それも味気ない人生かもしれないなと思います。

 それに、何らかの事故が起きたり、あるいは精神的にダメージを受けたりして
 途中から障害を持つ場合だってあるわけで…

 だから、最後にアーティストさんがおっしゃっていましたけど、
 障害を完全になくすよりも、
 多様性を認める社会、
 どんな人でも暮らしやすい社会を実現する方が
 本当はみんなが幸せになれるんじゃないかなと思います。
 
 たしかに、医療の発達は素晴らしい。
 子供が欲しいけど得られない人、
 不治の病でももっと生きたい人のために治療法を確立させてあげたい、
 という医療関係者の気持ちもよくわかる。
 でもクリスターキャスパー9の科学者さんの言葉のとおり
 歯止めはかけた方がいいのかなと思います。
 
 どんだけ科学が発展したとしても、すべての望みをかなえることはできないし
 望みがかなっても幸せになるかどうかは分からない。
 望みを諦めたから、めっちゃ幸せになれた、って場合もあるから
 人生はわからない。

 ある程度はあきらめるというか、
 運命を受け入れるというか、
 ないものを追うよりも、目の前の幸せを喜ぶ、
 そういう心のトレーニングをした方が
 結局は幸せになれるのかもしれないな、と思いました。

 個人的には、
 出生前診断とか、オーダーメイドベビーとか
 選択肢が増えるほど悩みも増えるような気がする…
 これからの人たちは選ばねばならない分、ある意味大変かも。。

いろいろ考えさせられました。
というわけで、今回はこの辺で。

 
 

 
  


posted by Amago at 13:47| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする