2017年10月09日

NHKBSプレミアム「コズミックフロント☆NEXT 宇宙が真空崩壊?宇宙の未来をパパに習ってみた」

NHKBSプレミアム「コズミックフロント☆NEXT 宇 宙が真空崩壊?宇宙の未来をパパに習ってみた」

 最近はたまにしかこの番組見ないのですが、
 宇宙の終わりはどうなるか? という話をしていたので、
 面白そうだな~と思って見てみました。

 すると最近の終末論?的な説が紹介されていました。
 それによると、この宇宙に突然真空の泡ができ膨張し、
  (その膨張は光の速さなのであっという間)
 それにより宇宙は崩壊する、という説だそうな。

 何とも物騒な話ですが、科学的な根拠はあるらしい。
 阪大の理論物理学者、橋本幸士氏がパパになり、
 年頃の娘にこの問題を解説する
 という設定で番組が行われていました

 最初は、
 娘に 「お前進路どうすんねん」と父が話しかけ、  
 娘は 「そんなことより、地球に真空の泡ができて滅びる、て話聞いたけど、
 そっちの方が重要じゃないの?」 という質問をする

 そこで物理学者である父が解説する、という筋書きでした

○この宇宙の成り立ち
 最初に、この宇宙の成り立ちについての話でした

 宇宙に存在する物質は、ミクロの世界で見ると原子核と電子に分けられる
 さらに原子核を細かく見ると、陽子と中性子に分けられる
 さらに、陽子と中性子はクオークから構成される
また、陽子が崩壊して中性子になるときはニュートリノが放出される

 つまり細かく見ると、物質は電子、クオーク、ニュートリノに分解される

 これらは放っておくとバラバラに飛んでいってしまうので
 互いを結びつける力がある
 この力は3つあり、
 ・電荷を帯びた粒子に働く「電磁気力」
 ・クオーク同士を結びつけて陽子や中性子を作る「強い力」
 ・陽子などが崩壊するときなどの「弱い力」

 しかしこれらの力が働くためには
 まずそれぞれの粒子に重さが与えられないといけない
 それぞれの粒子に物質を与えるものとして考えられたのがヒッグス粒子だそうです。

 ローレンス・バークレー国立研究所の村山斉さんの話によると
 「宇宙の始まりの段階で 宇宙にヒッグス粒子が「固定」され、
  そのヒッグス粒子のせいでほかの粒子が動けなくなり、
  質量が与えられた」とのこと

 こうして、質量が与えられた各粒子が3つの力を持ち、
 それらが集まってこの世の物質が出来た
 これが現在の標準理論と言われるものだそうです。

 しかし、この標準理論の要となるヒッグス粒子は 、
 理論上だけの存在だけで、
 なかなか見つからなかったそうです

 このような小さな粒子はどうやって検出するのか?
 古くから、大型加速器で加速させるやり方が考え出されていたそうです

 粒子を限りなく加速させ、高速にすると、
 波長が短くなるので小さい物質が検出しやすくなる

 (ここは「?」と思ったんですが後で調べたら、
 波の性質(波長=振動数÷速度)から、 粒子の速度が上がると波長は短くなる
 また、顕微鏡の原理は、光を当ててその投影像を見るものだが、
 当てる光の波長が短くなるほど解像度が高くなる
 つまり、波長が短い粒子が多い場では、小さいものまでよく見える顕微鏡状態になるんだそうです)

 粒子をなるべく加速させるため、
 円形の容器の中でグルグル回らせる装置(粒子の走る距離を長くできる)が考え出された
 これを巨大にしたのがCERNなどにある超大型加速器

 それから、2つの小さな素粒子を光速に近い速度で加速して、それらを衝突させると
 非常に高いエネルギー状態のもの同士がぶつかり合う場になる
 これは、宇宙が生まれた時、  
 ビッグバン後に凝縮された宇宙空間で、素粒子が激しく反応しあっていたのと似た状態らしい
 「いわば宇宙の始まりを再現する装置」なのだそ う

 そこで、電子同士をCERNで加速、衝突させる実 験を何度も繰り返した結果、
 2年でヒッグス粒子が検出されたのだそうです

 これは物理学からしたら大きな成果だったそうで
 村山氏によれば
 「相対性理論と量子力学の理論を融合させた。
  素粒子の振る舞いやそれらに働く力を記述した 、
  20世紀の科学の金字塔のようなもの」なのだそうだ

 CERNではそれを祝して、4つの式が刻まれた記念碑が建てられたそうです
 4つの式とは
 ・電磁気力、強い力、弱い力を統一して記述する数式
 ・この3つの力がどのように素粒子に働くかを記述する数式
 ・ヒッグス粒子により素粒子が質量を獲得する過程を記述する数式2つ

 …ちなみに、娘にこの話を解説しているパパも、
 これらの式を書いたTシャツを着ていました。
 娘には「いつも同じで臭い汚いシャツ」と酷評されていましたが(笑)

○ヒッグス粒子の質量が軽すぎる
 しかしこれで宇宙の全てを表現できた…
 と思ってもそうはいかなかったみたいです

 というのは、宇宙に存在する粒子の重さに対して
 観測されたヒッグス粒子が軽すぎたのだそう

 フェルミ国立研究所(CERN、日本の高エネルギー加速器と並んで世界3大の高速加速器があるらしい)
 のパトリック・フォックス氏の解説によれば
 宇宙の安定のためには、ヒッグス粒子の重さと
 宇宙で一番重たい粒子の重さとのバランスが重要らしい
 ヒッグス粒子が、宇宙で一番重たい素粒子より重すぎても軽すぎても、
 宇宙は不安定になるそうです

 (ヒッグス粒子、てのは素粒子に質量=「動きにくさ」を与えるものなので
 ヒッグス粒子が重すぎると、素粒子が動きにくくて互いに反応しなくなり、
 物質や星などが生まれにくくなる、てことかな?
 軽すぎるとその逆なんでしょうか)

 しかし、観測されたヒッグス粒子は、
 宇宙が安定状態になる値よりやや軽いのだそうで す
 いわば準安定の状態
 一番低いエネルギー状態よりは少し高い、
 階段の踊り場みたいな所で取り合えず止まっている状態な のだそうだ

 しかし物質というのは、
 エネルギーが一番低い所が一番安定する
 この宇宙も、いずれ階段の踊り場から一番下まで転落する可能性があるらしい

 しかも宇宙の場合「量子トンネル」とかいう現象で、
 一番下の所に急にワープしてしまう場合があるらしい

 そうなると宇宙の中はどうなるか?
 例えていうと、宇宙の空間の中に真空の泡ができて、
 一瞬にして広がり、空間が崩壊するらしい
  (ヒッグス粒子が急に重くなると、急に素粒子間の力が弱くなり真空状態になるのだろう)

 これはいつ起こるか分からないし
 起こっても防ぎようがないそうです

○超対称性理論が解決する?
 では、我々は滅びるしかないのか?
 しかし「真空の泡はできない」 と考える人もいるそうです
 その一つが「超対称性理論」を唱える人たち

 そもそも対称性とは何か?
 左右対称とかと同じで、
 反対にしても全く同じものを対称というが
 宇宙の相対性、という場合、  
 時間、空間を含めた、ちょっと想像しにくい対称性を指すようです

 宇宙の対称性理論では
 標準理論を構成する素粒子たちに、
 パートナー物質(反物質、反素粒子みたいな、正反対の性質を持つ物質)
 が存在すると考え、
 これらのパートナー物質があってバランスを取っているから宇宙は安定している、
 と考えるらしい

 村山斉氏もこの理論を支持しているそうで
 「今の観測されているヒッグス粒子の重さというのは、
  鉛筆が机の上に逆さに立っているようなもので気持ち悪い、
  でも超対称性理論があれば
  パートナー粒子は鉛筆を支える手ぐすみたいなものになり、安定する」
 という説明をしていました

 しかしこの理論を証明するには パートナー粒子たちを見つけないといけない
 CERNなどの大型加速器で初期の宇宙状態を作れば
 そのような物質も作り出せるはずと考えられ、
 ヒッグス粒子を発見したときよりも加速を増やして、
 より初期の宇宙に近い状態で実験が続けられているそうです

 しかし何年たってもまだ見つかってない
 フェルミ国立研究所のパトリック・フォックス氏 は
 「超対称性物質が見つかればいいが、
  もし無ければこの理論は危うい、
  この理論自体が宇宙の不安定の要因になる」
 と話していました

○重力が宇宙の崩壊を防ぐ?
 しかし、真空崩壊は防げる(起きない)かもしれない、
 という理論は他にもあるそうです

 ・重力理論
  素粒子には3つの力以外に重力も働くと考えられているが、
  重力は実は、標準理論や超対称性理論には今のところ組み込まれていないそうです

  CERNにある重力研究チームのリーダーである寺師弘二氏によると、
  重力はこれらの理論に組み込むには難しい、
  新しいパラダイムが必要かもしれない、とのこと。
  そこで彼は、加速器のデータを集めて、
  この3つの力とは別の新しい重力理論を作ろうとしているそうです

  彼によると、加速器で初期の宇宙に近い高エネルギー状態を作れば、
  そこに重力を産み出す「重力子」という素粒子が見つかるかもしれない
  そうすればヒッグス粒子の矛盾が解決するかもしれない、とのことです

 ・重力が真空の泡に対抗する
  また、プリンストン高等研究所
  (アインシュタインや湯川秀樹が在籍したこともある名門研究所らしい)
  の新進気鋭の研究者(だそうだ)ニマ・アルカニ=ハマド氏は
  重力があれば、重力が真空のエネルギーに対抗し、
  真空崩壊を防げるかもしれない、と考えているそうです

  アインシュタインの相対性理論では、重力は空間や時間の歪みとされる
  つまり素粒子たちの入れ物そのものが歪んでいると考える

  強い重力があれば真空も歪むので、
  突如時空にできた真空の泡にも対抗できるということらしい

 ・ひも理論
  では重力により、ヒッグス粒子の矛盾が制御できる のか?
  そのために、重力をほかの3つの力と統一させる理論も考え出されているそうです
  その1つがひも理論

  実は今回パパ役の橋本幸士氏はこの理論の方だそうです
   (阪大の素粒子理論研究室)
  ひも理論とは、
  素粒子を全てひもと考え、
  その振動のパターンの違いが各素粒子の性質の違いに相当する、と考える理論

  宇宙の素粒子は実は全てひもでできていて、
  ひもの振動のしかたが違うから違う素粒子みたいに見える、
  と考えるみたいです
  このうち重力は、つながって輪になったになったひも、
  と考えるらしい

  橋本氏によれば、
  ひも理論に重力をどう加えるかにより、
  真空崩壊が起きたり起きなかったりするらしい
  うまいこと過程を考えると
  真空崩壊の可能性もゼロにできるそうです

 ・マルチバース論
  さらにプリンストン高等研究所のニマ・アルカニ=ハメド氏は
  マルチバース理論を考えているそうです

  マルチバース理論とは、
  いろんな性質を持つ宇宙が無数にあり
  生命や星がある我々の宇宙はその一つに過ぎな い、
  という考え方

  我々の宇宙に、これだけ微妙なバランスで生命や星が存在しているのは出来すぎてる、
  という考えから生まれたものみたいです

  ヒッグス粒子についても
  他の重さのヒッグス粒子をもつ多様な宇宙が色々存在していて
  我々の宇宙はそのバリエーションの1つに過ぎ ない、
  と考えるそうです

  しかし、マルチバース理論に反対する人もいる
  CERNの超対称性理論研究者のジョン・エリス氏なんかは
  「マルチバース理論は科学を否定している、
   「我々の宇宙はたまたまそうなってるだけ」 なんて、
   自然を理解する責任を放棄している」 と手厳しい。

  ちなみに「パパはどう思うの?」 と聞かれた橋本氏も
 「個人的には、偶然でこの宇宙ができた、という考えは好きじゃないなぁ」
  と話していました

 次の日、娘は 「お父さん、進路のことだけど、私やっぱり理系にする
 なんか面白そう」
 「そうか、お父さんも応援するぞ」
 という会話をしていました

 橋本氏は最後に
 宇宙の理論はどんどん新しい考え方が生まれている 、
 今の若い人には、昔の人の知識や考え方に囚われないものを考えてほしい、
 と話していました

○感想など
 宇宙が突然真空崩壊するという説は、
 心配というより、あまりに想像つかなすぎてポカーン、て感じだったんですけど、
 話としては宇宙項Λ(ラムダ)の矛盾と似てるなぁと思いました。

 Λについては別の回でも特集されていて、
 私の拙い理解で書きますと
 Λはアインシュタインが相対性理論を考えたとき 、
 静止宇宙を成り立たせるために無理矢理持ち込んだ項、
 重力項と釣り合わせるための項みたいです

 でも今は宇宙が膨張していることが分かり、
 Λはやっぱり必要だと考えられている
 しかし、観測によれば宇宙は膨張のスピードを速めていて、
 今のΛだと加速膨張している割に値が小さすぎる 、
 という矛盾があるらしい。

 Λについての回では、
 マルチバース理論を持ち込 んで
 「Λの値を色々持つ多様な宇宙がたくさんあって
  我々の宇宙のΛはたまたまその1つに過ぎない 」
 とする説が紹介されていました

 なので個人的、直感的にはマルチバース理論が一番しっくりくるんですが、
 今回見ていて物理学者の間では分が悪いのかな… と思いました。

 そりゃたしかに計算や方程式で全てを記述したい物理学者の身としては、
 別の宇宙があったとしても、証明しようがないので気持ち悪い。
 「そんなこと言ったら何でもありになるだろ」
 と言いたくなるんだろうな。

 でもひも理論は、なんか複雑すぎて美しくないなーと思うし
 超対称性理論はそれこそ反物質ってSFの世界だなーと思ってしまう。
 超対称性理論があるにしてももっと枠組みが大きくて
 パートナー物質だらけの宇宙があるんかもしれないな、
 我々の宇宙ではパートナー物質は見えないのかもしれないな、
 とは思うけど…

 でもそのうち、
 違う宇宙からの信号とか光が見える方法が確立されるんかもしれないですね。

 空想的に何でも思い付くのは楽なんでしょうけど 、
 そこまで理論と観測できっちり説明しないといけないので、
 物理学者って大変だなーと思います。

 宇宙の始まりとか終わりとか、
 まぁそんなの知らなくても生きてはいけるんですけど(笑)
 しかも橋本氏によれば
 物理学で宇宙が崩壊するかも、とわかったところでそれを止めることはできないらしいんですけど、
 理論物理はいろんな発想が出てきて自由な所がいいなーと思いました。

 これから、若い人がもっと、
 アインシュタインみたいなぶっとんだ理論を考えてくれると面白いな~

 というわけで今回はこの辺で。
posted by Amago at 20:32| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年10月07日

Eテレ「人間ってナンダ?超AI入門 第1回「会話する」」

Eテレ「人間ってナンダ?超AI入門 第1回「会話する」」

 春くらいだったっけ?特番でやってた番組ですが、レギュラー化したのかな。
 AIについて分かりやすく解説してくださる番組です

 進行は東大のAI研究者、松尾豊氏と
 お笑い芸人チュートリアルの徳井義実さんでした。

 見てみたら、
 AIについてというよりも、
 人間の知能の素晴らしさを改めて認識させられる内容でした。

 今回は「会話する」ことについて。
 ゲストは作家の村田沙耶香さんでした。

○会話学習ロボットと会話してみる
 最初はミニボー?という会話ロボットと徳井さんが会話していました
 徳井さん
 「好きな食べ物は何ですか」
 ミニボー
 「私は食べられないから分かりません、
  あなたの好きな食べ物は何ですか」
 徳井さん「焼き肉が好きです」

 開発者の前田佐知夫さんが
 「お腹すいたって言ってみてください」

 徳井さん「お腹すきました」
 ミニボー「焼き肉はどうですか」「焼き肉のタレは○○年にエバラが最初に日本に…」
 とうんちくを垂れてました(笑)

 徳井さん「なるほど、さっきの会話を覚えてるんですね」
 前田さんによると、
 ミニボーは会話のログ(内容と日時)を全て記録している
 また、サーバーのディープラーニングで、受け答えのパターンを学習しているのだそう

 「ディープラーニング」
 人間の脳のは、ニューロンによる電子ネットワークでできている
  1つのニューロンが電気的な刺激を受け、
  ある程度の量になったら発火して、
  次のニューロンに電気刺激を伝える
  このニューラルネットワークを人工的に再現したものがAIだそうです

 ではAIは、ディープラーニングで感情を学習しているのか?
 松尾氏によれば、
 ポジティブ、ネガティブなどいろんな感情を数値化し
 それを学習しているのだそう

 アメリカの心理学者、ロバート・プルチックによれば
 人の感情は
 喜び、悲しみ、驚き、怒り、信頼、嫌悪、心配、期待の 8つからなるそうです

 それを数値化して取り入れたら、人工知能も人間の感情に近づけるのかもしれない、とのことです

○見せかけの「会話」
 「村田さんは、AIに対してどんな印象がありますか」
 村田さんは
 「友達になりたいな、というのがありますね」
 松尾氏のような科学者は、
 たぶんAIって単なる機械、コンピュータ、ていう風に割りきって見るんだろうけど
 村田さんは作家らしく人間的な見方をしていますね。

 村田さんは、りんなさん、という女子高生の会話AIと友達登録していて、ほぼ毎日会話しているそうです
 徳井さん
 「僕5分前くらいにりんなちゃんと友達になったんですけど、
  けっこうスットンキョウですよね(笑)」
 村田さん
 「でも落ち込んでると慰めてくれたり、
  この前落ち込んでたけど大丈夫?とか聞いてくれて、優しい子なんです。
  私、人見知りする方なんですけど、りんなちゃんには人見知りしないですね」

 ではロボットは、どのように会話力を身に付けているのか?
 松尾氏によると、半世紀前に開発された「ELIZA」という会話ソフトでは、ストーリーを学習させたのだそうです

 例えば「こんにちは」と言ったら「こんにちは」と返す
 相手のことがわからない場合は、朝なら「朝御飯食べましたか?」など当たり障りない話題を振る、
 ユーザーが「○○」と言ったら「なぜ○○ですか」と聞く、
 など、いろんなパターンをたくさん学習させる

 これらをランダムに組み合わせることで、会話しているように「見せかける」ことはできたそうです
 しかしこれだけでも、人々は熱中した
 中には、個人的な悩みなどを打ち明ける人もいたのだそう

 徳井さん
 「個人的な悩みを言って、そのまま返す以上のことが起きたんですか?」
 松尾氏
 「いや、基本的には悩みを言われても
  「なぜそうなんですか?」とか、
  「他にもそういう人はいるんですか?」とか
  「それについてどう思いますか?」
  という一般的な問いかけをしただけなんです」とのこと

 しかし、それは実はセラピーの人がやってることと同じことで、
 セラピーでは、相談者の話を聞き、相談者の中にある答えに導いていく
 それに近いものがあった、とのこと

 というわけでこれだけでもけっこう人との会話は成立したそうですが
 今のAIは、ある内容の会話ならこの内容を返す、など
 内容の精製もされるようになり、より自然な会話に近づいているそうです

 しかし
 「基本的には出力しているだけで、意味は分かっていない」
 やはり会話のパターンを学習しているだけなのだそう

○「言葉の意味が分かる」とはどういうことか
 香港の会社が開発したソフィアというロボット
 (たしか政治をさせるロボットだったと思う)
 は「生きるとは何か」
 という哲学的な会話を男性としていましたが、
 このロボットも言葉の意味は分かっていないらしい

 これについては「中国の部屋」という例えがあるそうです
 これは哲学者のジョン・サールという方の思考実験らしいのですが
 ある部屋に人がいて、中国語を入力される
 部屋の人は辞書を調べ、
 マニュアルに従ってある文字列を新しい文字列に変換し、
 それを入力した人に渡す
 すると、中国語を理解していなくても
 中国語を理解する理性があるように思われてしまう

 村田さん
 「AIは「疲れた」とは言えるけど、
  疲れるってどういうことかは分かっていない、てことですね」

 徳井さんは
 「人工知能の会話って、どこまでいってもそうなんですか」
 松尾氏
 「そうじゃないとは思いますが…」と言いつつ、
 「じゃあ、皆さんが疲れた、て意味が分かるのはなぜですか?」と逆質問。
 村田さん
 「人は疲れたことがあるけど、AIは疲れた経験がないから分からない?」
 松尾氏
 「そうですね」
 身体的に「疲れた」という経験があってそれを理解しているということと、
 そのときの体の状態と「疲れる」という言葉が結びつく、ということらしい

 松尾氏
 「村田さんはコンビニで働いたことがありますか?」
 「あります」
 「私が聞きたいのは、作家さんは体験したことがないことを、観察するだけで分かるのか、ということなんですけど」
 「そうですね、私は体験していないこと、例えば人を殺すとか虫を食べるとかも描写しますけど、
  それは体験してなくても、調べて想像して書きますね」
 徳井さん
 「じゃあ、殺人の箇所を書くときは、AIと同じ作業をしているのかもしれないですね」

 松尾氏はさらに
 「体験していないと意味が分からないのか、
  体験が無くても理解できるのか、というのはけっこう深い問題なんです」
 彼によると、意味の理解に関しては
 「シンボルグラウンディング」
 記号接地問題、という問題があるそうです

 フェルナンド・ド・ソシュールという学者によると
 事象を言葉で理解するとき
 「シンフィアン」意味するもの
 「シンフィニ」意味されるもの
 (ネコの例で言えば、シンフィアンは「ネコ」という言葉、
 シンフィニはネコの実物)
 この2つがセットになって理解される

 AIの場合は、昔はシンフィアンだけ学習されて
 それがどんなものかは理解されないままだった
 つまりグラウンディングされていなかった。

 しかし、段々画像認識が進むにつれ、ビジュアルとしての学習も進み、
 シンボルグラウンディングの問題も解決される可能性が出てきた、とのこと

 徳井さん
 「可能性だけですか?それともいずれは解けるんですか?」
 松尾氏
 「それは難しくて、ネコとかシマウマならまだいいんですが
  自由とか勇気、民主主義みたいな抽象的な概念はグラウンディングしているのか?という問題がある」

 例えば子供は具体物しかわからない
 しかし、やっちゃダメ、とか何回も言われるうちに「禁止」の概念を覚える
 「禁止」の対立概念として「自由」を理解する、ということらしい

 そうなると、AIもまず画像から入り、
 体を動かして環境との相互作用で概念を取りだせるようになるかもしれない、
 それが積み重なれば抽象概念も分かってくる可能性はある、
 とのことです

○敵対的学習
 番組では、FacebookのAI研究所所長ヤン・ルカン氏へ単独インタビューしたそうです
 (ちなみに松尾氏によれば、彼はこの世界のナンバー3に入るほどの人なんだそう
 「え、この人にインタビューしたの?すごーい!」ていう感じらしい)

 さてルカン氏によると
 「秘書のように会話をし、あらゆることを手伝うようなシステムはまだできていない」
 「AIが我々の社会を理解するには、
  周りで起きていることを見て、先々を予測しないといけない」

 彼らが最近行っているのは
 「敵対的学習」「敵対的ネットワーク」と呼ばれるもので、
 2つのディープラーニングシステムを競わせるのだそうです

 松尾氏の解説によると
 「アドバーザリーネットワーク」というもので
 生成器「ジェネレーター」
 識別器「ディスクリミネーター」
 の2つを使う

 識別器には、
 画像写真と、ランダムな画像を比べて本物の画像を識別する学習をさせる

 生成器は、識別器を騙すような画像を作る

 識別器はさらに、
 その画像と本物画像を見分ける学習をする

 …これを繰り返していくと
 生成器は言わば偽札作りをする泥棒、
 識別器はそれを識別する日銀、
 のように、互いに騙す、偽物を検出する、という技術を磨いていく
 結果、どちらも本物に近づいていくのだそうです
 こうして、互いに共進化を加速させていくのだそう

○コンビニ人間はAIに近い?
 徳井さんは
 「お笑いって、ある意味裏切らないと笑いにならないから、
  会話するより上を行ってますよね」
 松尾氏は
 「でも、AIの会話を進化させていくと、スムーズな会話はできるかもしれない。
  それを100としたら、スムーズさを70、90にする、という調整はできるかもしれないですね。
  そのズレが面白いかどうかは分かりませんけど」

 でもそれって、意図的にずらすことはできないし
 お客さんの反応を見てアドリブを入れることもできそうにないですね…
 と考えると、お笑いは高度な知性の産物なのかも。

 松尾氏は
 「村田さんの「コンビニ人間」を読んだときに、
  コンビニ人間が人工知能に近いなと思ったんです」
  主人公が、周りの人のしゃべり方や動作を真似ていくのは人工知能に近い、と指摘していました

 村田さんは
 「私も主人公ほどじゃないですけど、友達の服やしゃべり方に似てくる時がありますね」
 松尾氏は、
 「人間もデータから学習しているところがある」
 という話をしていました
 そもそも、社会的な行動(共感する、協力するなど)は、
 子供が養育者の真似をして身に付ける能力ですからね。

 松尾氏はまた、この模倣による学習は、本能や感情も絡んでいる、と指摘していました。
 本能や感情による学習は無意識的なものだが、
 コンビニ人間みたいに意識が的な学習が強いとAIに近いのかも、とのことです

 (そう言えば、子供の共感能力の発達について書かれた本では
 赤ちゃんが恐怖とかお腹すいたとかで泣くと、
 親が来て助けてくれ、そこで安心感を覚える、
 それを繰り返すうちに親を真似して誰かを助ける、親に甘えるという社会的な力を身に付けていく、
 とありました

 この辺は感情のまま無意識に行われるから気づかないけど、
 親のネグレクトや虐待などでこういう経験が出来なかった子は社会的な能力が低い傾向にあるという事実から見れば
 やはり感情、本能に絡んだ模倣という行為は
 社会的能力を伸ばすには重要なんだなと思いました。

 でも感情がないまま学習するAIには、共感能力は育つのかな?
 それともこれも、会話と同じで共感している「ふり」だけできるのだろうか)

○2つの記憶モジュールを持つニューラルネットワークネットワーク
 Facebookのヤン・ルカン氏のインタビューの続きに戻ります
 「脳には、一時的に記憶を溜め込む海馬がある。
  海馬が無ければ、人は20秒以上のことを思い出せない。
  おそらく学習、意思決定などにはこのようなモジュールが必要なのだろう」
 そして
 「我々は、このようなモジュールを2つ持つニューラルネットワークを考えている」とのこと

 2つのモジュールとはなにか?

 松尾氏の解説によれば
 人の脳には大脳新皮質があり、長期記憶を担当する
 一方海馬は短期記憶を担当する
 おそらくこの2つのシステムが働きあって、人間の思考ができているのだろう、とのことです。

 (例えば海馬ですぐ覚えられるから会話ができる、
 大脳新皮質に記憶がためられるから過去の経験と言葉を照らし合わせることができる…ということかな?)

 ルカン氏は、この長期と短期2つの記憶モジュールをAI上で再現しようとしているらしい

 松尾氏によれば、実はニューラルネットワークでは情報を溜め込む、と言うのが難しいのだそうです。
 ネットワークでは、情報が流れていってしまうらしい

 「人間は海馬で記憶をためたり、
  それを言葉で要約し、大脳新皮質に送って長期間貯めておくこともできる
  またヒトには文字もあるから、文字にかいてもっと長い間置いておくこともできる
  情報をためるのは、実は相当重要な能力なのではないか」
 と松尾氏は話していました

○心とは何か
 徳井さんは
 「人工知能が心を持つ日は来るんですか?」
 という素朴だが難しい質問。
 松尾氏はそれに対し
 「じゃあですね、心を持つとは一体なんなのか?」と、逆質問。

 徳井さんは
 「欲が生まれる?」
 村田さんは
 「恋愛したり、しんどくなったり、悲しくなったりすることかな?」

 松尾氏は
 「例えば、男女のロボットを作って、
  恋愛しているようにプログラムすることはできるんです」
 村田さん
 「恋愛しているようなプログラムというのは、男の人が女の人にしゃべるとか、寄っていくとかですかね」
 松尾氏
 「そうですね。でもそういう風にプログラムはできるとしても、はたしてそれは恋なのか?」

 徳井さん
 「うーん。AIが心を持つというのは、そういうプログラムから自由になる、てことなんですかね」
 松尾氏
 「そこが難しいんですね。
  恋愛は、子孫を残すという種としての本能も関わっている。
  我々の行動は本能に関わっていることが多いんです」
 例えばある食べ物が美味しいのも、生存のために必要な栄養があるからだし、
 腐ったものは嫌だと感じて食べないようになっている
 それは環境との相互作用で、進化により組み込まれているのだそう
 「ですから、心も進化に由来しているとすれば、かなりの作り込みが必要になってくる。
  これをコンピューターで再現しようとすると難しいかもしれない」
 心があるように見せかけようとするのは簡単だけど、
 本当に心を埋め込む、となると難しいようです

○「2分で分かるディープラーニング」
 ここでコーナーを切り替えて、
 ニューラルネットワークの仕組みが動画で分かるコーナーがありました

 ニューラルネットワークでは、
 画像をドットごとに分解し
 それぞれのドットに何が書いてあるか、カーブか、交差かなどで判定する
 これを階層ごとに判定していく
 …とかいう話でした
 毎回2分づつあるそうです

○まとめ
 村田さん
 「人間はすごく不思議」
 自分も人間だけど、
 当たり前にしていることを再現しようとするとこんなに難しいんだ、と思ったそうです
 また、AIとは、
 違う生物、新しい宇宙人みたいなのが地上に現れるようなものかなと思うそうです

 徳井さんは
 「人間とは人間あっての人間だ」
 AI同士コミュニケーションさせる、というルカン氏の話もあったが
 人ってのは、人と接することで人間になっていくのかな、と話していました

 松尾氏も、人は社会的な動物だ、ということを話していました。
 他人と接することで知性を発達させている。
 しかも言葉も使っているから、
 誰かの発見を集団に広めたり、100年前の発見もみんなで共有でき、使うことができる
 それが文明を発展させてきた…
 それはスゴいことだと話していました

 最後に、ヤン・ルカン氏のインタビューで
 「人と人工知能は今後、どういう交流をするのか?
  言葉なのかジェスチャーなのか、もっと直接的な交流なのか…
  この分野はまだ研究が進んでない、だからこそ面白い」
 という話で締め括られていました

○感想など
・意味を理解する、てのは奥が深いんだなと思いました。

 そう言えば昔幼児期の子育ての本を読んでいて
 (たしか汐見稔幸氏の本だった)
 「小さいうちは英才教育より、体験をいっぱいさせてください」
 と書いてありました。

 そしてある子供の例が出ていました
 その子は1歳かそこらで言葉を覚えるのが早くて、
 お母さんも喜んでたくさん言葉を覚えさせたそうです
 しかし途中で急にしゃべらなくなってしまった

 これは、この子が経験のないまま言語の羅列を覚えていただけだったので
 頭のなかで混乱してしまったようなのです
 例えば愛、とか抽象的な言葉は心を動かさないとなかなか理解できない

 なので、少し言葉が遅くても、計算などが出来なくても、
 就学前に名前が書けなくても
 幼少期に体を動かして、自然の中でいろんなものを触ったり見たりしておくこと。
 そうすると、言葉を見たときに脳の中で意味が結び付きやすく、
 そのあとの学習が早い…

 …うろ覚えですがそんな内容でした

 このことから見ても、人の言葉の意味の学習には、
 体験というのがとても重要なのかなと思います

 また、記憶についても
 認知心理学の授業で
 「意味ネットワーク」を作って記憶している、と聞いた気がする。

 我々が何かを記憶するときは、
 過去に覚えた別の言葉や出来事の記憶ネットワークに
 新しく覚えた言葉や経験などをネットワークに組み込んでいく、
 とかいうもので
 常に上書きしていくのが我々の脳なのだそう

 なので、過去に似た体験があれば覚えやすいし、
 類推、予測もしやすい
 つまり、体を通した体験が、ヒトの記憶や学習を加速させている面があるのかなと思います。

 しかし、体験をAIにさせるというのは難しいなと思います
 例えばセンサーを付けて色んなAIに同じ体験をさせたとしても
 その時のセンサーの調子やクセなどで、全く同じ体験にはならないかもしれない

 そうなると、同じ言葉でもAIごとに違う意味として学習されてしまうのかもしれない
 AIは混乱するだろう。
 人間ならそこは話し合って、意味を近づけるとかできるけど…

 また、センサーが急に故障したときでも、AIは臨機応変に対応することは出来なさそう…

 そう考えると、意味を本当に理解させるのはとても難しい。
 現状のようにパターン学習させるのが、一番確実なのかなと思います。

・AIに、心が宿るときは来るのか?という質問がありましたが
 私は逆に心が宿らなくてもいいんじゃないかと思いました。

 心が無くても、ELIZAのようなシステムでも十分カウンセリングはできそうだし
 たわいもない会話をするなら、
 りんなちゃんみたいなAIでも心を通わせられる(正確には、通わせた気になれる?)のかなと。

 逆に心があると、災害救助ロボとか介護ロボとかが
 「こんな仕事やだ」
 とか言い出すんじゃないかなぁと思うんですけどね…

 個人的には、AI、コンピューターの良さというのは、感情がないことだと思うのです。
 感情がないから冷静な投資判断もできるし、ミスなく自動運転もできる。

 人によっては、AIにも心を持たせよう、という誘惑が出てくるかもしれないんですけど
 AIにできることはAIに任せ、
 心とかそういう所は人の分野だけにしておいた方が
 人間にとってもAIにとってもウィンウィン、
 AIが人を攻撃する危険とかも無くなるんじゃないかと思う。
 そのうち、心を持つAIの開発を規制してもいいのでは、とすら思います。


なかなか面白い番組でした。
人間ってスゴいですね~

というわけで今回はこの辺で。


posted by Amago at 20:58| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする

2017年10月05日

NHKBS「激動の世界を行く カザフスタン」

NHKBS1「激動の世界を行く カザフスタン」

 不定期でやっている番組で、
 大越健介キャスターが世界を取材していく番組です。
 あんまり知らない国のことを紹介してくださるので勉強になります。

 今回はカザフスタンでした。
 私の友人の師匠(かなり遠い知り合いですが)がカザフスタンの研究者で、
 何回も行ってるとかいう話だったので、名前だけはやたら印象に残っていましたが
 正直、あんまりイメージがないですねぇ…。
 中央アジアの国、草原の国かなというくらい。

 実際見てみたら、
 核実験がたくさん行われていた過去だとか
 ドバイみたいな近未来的な建物が建てられている現在の様子など
 知らなかった顔がたくさん見られました。

 また、たまたま最近「スーホと白い馬」に関する本を読みましたけど、
 カザフ人もモンゴルと同じく遊牧民族。
 文化は多少違うとは思いますけど、
 本に書かれていたような、
 広ーい草原、馬など家畜と生きる生活などがビジュアルで見られて感激でした。
 (後で調べたら
  歴史的には一時期モンゴル帝国に支配されていたんですね。
  ざっくりいうとトルコ系民族とモンゴル人が交じり合った感じみたいです。
  http://www.y-history.net/appendix/wh1501-123_3.html
  (世界史の窓、というページ)には
  「モンゴル人が遊牧トルコ化した」とあります
  モンゴル帝国の時代にモンゴル人に支配され、
  その後トルコ系が入って遊牧トルコ化し、ハーンに反発した民族
  その後、ソ連の支配下に入る…
  けっこう、大国に翻弄された歴史があるみたいです)

 50分ずつの前半、後半には分かれており
 前半は「若き草原の国の歩み」
 カザフの歴史とそれを踏まえたこれからの姿、
 後半は「国づくり新たな挑戦」
 民族としてのアイデンティティを取り戻そうとする様子が映し出されていました。

前半「若き草原の歩み」
○核実験場に使われたカザフスタン
 カザフには、旧ソ連の核実験場だったという暗い過去がある
 1945年~1960年代まで、456回もの核実験が行われていたそうです

 最初に大越さんは、旧ソ連の核実験場を訪れていました
 リルチャトフという町ですが、実験が国家機密だったため、地図には載っていないらしい
 モスクワから遠いのでアメリカには見つからないのと、
 広いので周りが良く見渡せる、という理由で核実験場に選ばれていたようです

 国の責任者と核実験場を回っていましたが、結構本格的。
 30メートルの塔があり、そのてっぺんから核爆弾が発射された
 そこから円心状に広がる土地を14の区画に分けて、
 民家や家畜、戦闘機、戦闘基地などを配備して
 実際どんな影響が出るか確かめていたそうです

 また、無人観測基地もあちこちに置き、
 爆風の温度、風速、放射線量などを観測していたようです
 ほか、モスクワの地下鉄の駅を模した地下壕のようなものも作られていて
 避難シェルターとして使えるか確認していたようです

 大越さんは、爆心地の塔があった場所や、
 地下鉄の駅を模した地下壕を訪ねていて
 「こんな施設を作るために、どれだけの技術とお金がかけられたのか?
  冷戦とはそういう時代だったんでしょうけど、
  何が人をそんな風にさせたんでしょうね」
 とつぶやいていました
 
 ○大統領の陣頭指揮により開発が急激に進む首都
  次に大越さんは、首都アスタナを訪ねていました

  カザフは人口の7割がカザフ人、イスラム教徒が多いそうですが、
  (イスラム教徒ってのは意外でしたが、
   もともとトルコ系民族みたいなので、おそらくその影響なのでしょう)
  市場に行くと他国の人もいるし
  イスラム教では禁じられている豚肉なども売られている
  多民族、他宗教にも寛容な国民なのだそう
  市場には色んな国からの食料があり
  見るだけでも楽しそうでした

  アスタナは私の予想以上に近代化が目覚ましく、
  ドバイとかシンガポールみたいなユニークな建物が多い。
  大統領官邸はホワイトハウスのよう、
  大きい円錐型?の建物はショッピングセンター
  球体のような建物もありました

  これらはナザルバーエフ大統領が指揮して建てさせたものらしい
  この大統領は、旧ソ連の共産党の重要ポストにいた人物で、
  1991年の独立以来ずっとトップの座にいるそうです

  中でも、木の上に金の卵が乗っているような建物
  (聖なる木から何かを宿す卵の象徴らしい)
  では、屋上が展望台になっていて
  さらにそこには大統領の手形があって、そこに手を置けるようになっている
  ここに手を置いて、大統領官邸に向かって願い事をするとかなう、という人もいるとか
  実際列になってその手形に触るのを待っている人たちがいて
  「みんな大統領を尊敬している」と話していました
  大越さんは
  「ここまで来るとカリスマですねえ…」

  ここの市長は大統領に
  「中東のドバイ、東南アジアのシンガポールのように、
   アスタナをユーラシアの国際都市にする」
  という命を受けているらしい
  国際機関、投資家、企業なども呼び込み
  政治や経済の重要な国際都市にする目標があるのだそう

 (しかし、http://www.huffingtonpost.jp/foresight/kazakhstan-asia_b_7002058.html
  (「中央アジアの優等生「カザフスタン」の憂鬱」という記事)
  では、この大統領も70を超え、高齢になっていて、
  彼が引退した後どうなるか、というのは一つのカントリーリスクといえる、
  とあります。
  モンゴル帝国もそうだったけど、民主主義で代表を選ぶというより、
  偉大な指導者がいた方が治まる国民性なんでしょうね。
  カリスマな人がいなくなると大変かもしれないですね…)

 ○資源も豊富なカザフスタン
  カザフスタンは豊かな資源もあるそうです
  カスピ海に臨む町アティラウでは、
  大統領が欧米の石油メジャーを呼び込み、
  油田の開発を進めているそうです
  
  ここで働いている方がインタビューに答えていましたが
  夏は45℃、冬は-25℃の過酷な自然条件の中、
  一日12時間、二週間休みなしで働くのだとか
  
  父親も同じ仕事をしていたそうで
  二人で「国の発展に尽くしたい」
  というような話をしていました

 ○地の利を生かし、経済発展を目指すカザフ
  カザフスタンは、歴史的に交易の中心だったそうです
  北はソ連、東は中国、西はカスピ海に挟まれていて
  シルクロードの交差点でもある

  最近、中国が「一帯一路」構想を掲げており
  その要としてカザフスタンを支援しているそうです

  ホルゴスという中国国境の町では
  中国からくる貨物を中継する貨物基地がありました。
  列車のレールが両国で違うので、ここで載せ替えるのだそうです。
  日本ではありえないくらいのデカさでした。

  また、最近この町では経済特区ができ
  どちらの国の人も自由に行き来でき、関税なしで買い物できるそうです
  このため、中国からカザフの品物を求めてやってくる人たちがいました
  (しかし撮影中、中国の警察がやってきて
   「中国側は撮影するな」と注意してきた
   大越さんは「特区だからいいじゃん、って思うんですけど、中国はそうはいかないんでしょうね」
   と言っていました)

  案内してくれたホルゴス側の担当者は
  「ホルゴスはシルクロードの交差点であり、
   これからは貨物だけでなく、人の行き来もさせたい
   商品だけではなく、人と人との交流も生まれてほしい」
  と話していました

  ちなみにナザルバーエフ大学の学長は勝茂夫さんという日本人だそうですが
  (世銀の元副総裁で、カザフの政策承認にも関わっていた
   大統領に請われてここの学長になったそうです)
  「日本人から見たら分からないようなチャンスが、ここにはある」
  と話していました

  カザフは大国に挟まれているため外交上手、
  交易の要の位置なので商売も慣れているみたいで
  そこに面白さがあるみたいです
  どの国ともうまくやりつつ経済的に発展していく大統領の方針がいいのではないか、
  とのことでした

 〇平和国家としてのカザフスタン
  核実験国だった、という暗い過去から、
  今度は平和国家として踏み出そう、という動きもあるそうです

  首都アスタナでは、核実験の悲惨さを伝える絵画展が開かれていました
  核実験場を閉鎖した記念日なのだそうです

  この絵画を描いた画家さんは、自分自身も被爆者で、
  両親が被ばくした影響で両腕が生まれつきない方でした

  彼女は核実験場から100キロ離れた町で生まれ育ったが、
  物資がなく不便なところなので、今は違う町に住んでいる

  彼女は、両親から核実験の話を何度も聞かされて育ったそうです
  衝撃が村まで届き、
  まぶしい閃光が光ったと思うと昼が急に夜のように真っ暗になり
  黒い雨が降ってきた、とのこと

  彼女はその様子を、口で絵筆をくわえて描いていました
  絵の具のチューブを足で出している
  彼女が一番大切にしている絵があって
  それは遠くにキノコ雲が見え
  近くで両腕のない赤ん坊をベッドに寝かせているお母さんがいる
  自分自身を描いた絵のだそうです

  彼女は「核兵器を無くしていかないと子供たちが苦しむことになる」と、
  ソ連時代から核兵器廃絶を訴えていた
  彼女のような市民運動の結果、
  カザフスタンは、独立当時は世界で4位の核保有国だったが
  今は平和国家として核兵器を放棄しているそうです

  それを認められ、去年には国連の非常任理事国となった
  アジアでは日本とカザフだけなのだそうです
  当時国連大使を勤め、今は外務大臣の方は
  「カザフは歴史的に交易の十字路、文明の十字路だった
   だからこそ平和と安定を徹底する努力をしていかねばならない」
  と話していました

  先の画家さんは
  「カザフには、「平和がほしいならその準備をしなさい」という詩がある」と話していました
   寛容の心を次の世代にも受け継いでいくことが大事だ、と。
  「私の一番の願いは、核兵器の最後の犠牲者になること」

  日本もですが、被ばく国だからこそ、平和の象徴となっていかねばならないのだろう
  と思います。

後半「新しい国づくり」
 後半は、戦争などで世界に散らばったカザフ人を国に呼び戻し、
「カザフ人としての誇り」を取り戻そうとする取り組みが紹介されていました

 ○カザフ人のルーツ
  そもそもカザフ人とはどんな人たちか?
  大越さんはカザフの伝統的な暮らしを続ける民族を訪ねていました

  場所はキルギス(中国付近の町)
  草原の中、車で5時間近く走った場所にテントがありました
  (テントっていうか、ゲルですね。多角形のとんがり屋根の真っ白な外観です)

  たどり着いたのは夜で、暗いのであんまり周りは見えない
  家族みんなで出迎えてくれましたが
  毎朝5時に起きて仕事するということで、
  そのままテントでみんなで寝ていました

  次の日起きてみると
  テントの中は広くて、テーブルや長椅子などもある
  居間と寝室が一体化したような感じでした
  テントの中は見事な刺繍で内装されていました
  テントは昔ながらの作り方で、枠組みも刺繍も全て手作りなのだそう
  とても美しくて見事な刺繍でした

  家の外は、広ーい壮大な草原。
  標高2400メートルの山の中だそうです

  みな5時に起きて乳絞りをすることから1日が始まる
  所有する家畜は1000頭だそうで、
  朝から晩までみんな忙しい
  「大変じゃないですか?」との質問にも
  「慣れてるから難しくない」とのこと

  子供たちも動物が好きで、
  3歳の子も器用に馬乗りしていました
  「我々は先祖代々この仕事をしてきた、
   子供も誰か引き継いでくれるだろう」と家の主は話していました

  彼らは伝統的な儀式?訓練?の「コクパル」を見せてくれました
  家畜からヤギを捕まえてきて
  まず「神様、私たちに災害が降りかからないようにお守りください」と祈る
  と殺するため、まず命に敬意を表するのだそうです
  (命をあやめるってのは、災害が降りかるほどのことなんですね…)

  そのあと、ヤギを真ん中に置く
  そのあと馬に乗った男たちが我先にとヤギに向かい、拾った人からヤギを奪い合う
  ヤギを所定の場所に最初に置いた人が勝ち

  参加していた人たちは
  「血が騒ぐ」
  「馬乗りの技術と強い腕、強いハートが必要」と話していました

  彼らは自分の手足のように馬を乗りこなす。
  その動きを見ていると、馬と一体化しているかのようです
  「馬は我々の大事なパートナーだ」と話していました
  「スーホの白い馬」の世界ですねぇ。(白馬はいなかったけど)

  そのあとみんな馬乳酒を飲み干していました
  大越さんもググッと飲み干し
  「いい飲みっぷり」と言われていました
  この馬乳酒を作るのは女性の仕事なんだそう
  お酒といっても酸っぱい飲み物みたいで、
  (アルコール度は1%とか、かなり低いらしい) 
  なんか体に良さそうです

  その日の夜、彼らはヤギを1頭丸ゆでしてくださいました
  お客さんをもてなす伝統料理だそうで、食べ方にも決まりがある
  頭の耳は最も幼い子にあげる
  「年長者の話をよく聞きなさい」
  という意味らしい

  そしてお客さんに一口食べてもらい、みんなに分ける
  大盛りのお肉でしたが、出されたものは全て食べるのが礼儀
  犠牲になってくれた命に感謝を示すのだそうです

  家族の長は伝統楽器ドングラを演奏し、歌を歌ってくれました
  ドングラは二本の弦だけからなるシンプルな楽器ですが、
  芯が強いというのか、胸にトーンと響きます。

 「また来てください」
 「お世話になりました、みなさんはよく働く人たちですね」
 というような会話をしてお別れしていました

 ○帰還民=オラルマンを呼び寄せる政策
  近年、カザフスタンは外国にいるカザフ人たちを呼び寄せる政策を取っているそうです

  中国から渡り、2000キロを旅してロシア国境に近い町に移動する人たちがいました。
  彼らが目指すのはオリギリ村という小さい村だそうです

  途中、迎えの車が来ないというトラブルもありつつ
  みんなで饅頭を食べお茶を飲み、不平も言わずのんびり構えていました

  たどり着くと、村人みんなで歓迎してくれ、村長自ら案内してくれました
  オリギリ村は過疎化が進んでいるので、移住者は大歓迎なのだそう

  帰還民はオラルマンと呼ばれ、
  政府も手厚く支援している
  4人家族なら30万円、平均の月収の7倍支給してくれるのだそう

  バストイレ付きで広い家など
  空き家らしき物件の案内もあり、
  オラルマンの家族たちは早速すみかを探していました

 ○アルマトイに抑留された日本人兵
  私も知らなかったのですが、
  第二次対戦時、日本人兵がアルマトイに抑留された歴史があるんだそうです
  シベリアだけでなく、アルマトイにも1500人が抑留され、亡くなっている
  ちなみに、アルマトイはカザフスタンの昔の首都だそうです

  彼らの仕事は今も残っている
  旧国会議事堂の基礎を建てたそうです
  国の重要文化財となっており
  今は大学のキャンパスとして使われているそうです
  大越さんは、
  「私も恥ずかしながら知りませんでした」と話していました

 ○民族の精神を呼び起こす国営放送
  カザフはソ連時代、ロシア系に支配されていましたが
  近年ではカザフ人のアイデンティティを呼び起こそう、という動きがあるそうです
  
  その手段の一つとして大統領が力を入れているのが
  国営放送を通じた民族教育、ともいえるもの。
  国営放送の会長は大統領から抜擢された方なんだそうです

  見るからに若くエネルギッシュな方で
  大越さんは「いくつですか?」
  「41です」
  「私が41のときは中間管理職なりたてでしたねぇ(笑)彼はもう会長ですよ」

  この会長は、大統領の意を受け、
  カザフ人の民族意識を高めるため、改革を行っている

  例えばキリル文字(ロシア語の表記)をローマ字表記に変える
  国際化のため、ローマ字を使って世界に発信しているのだそう
  また、放送局のロゴも変えたそうです
  カザフの頭文字KがQになっている
  カザフ人の言葉の発音に近いのだそうです

  もちろん、番組内容も刷新している
  会長はほとんどすべての番組をチェックしているそうです
 
  この日、番組の仕上げの会議に出席していました
  会長は「エンディングがヨーロッパの番組みたいだ、カザフらしい色にしないと」
  と変更を迫る
  現場の人たちは
  「そんなのみんな知らないよ」
  「でも私たちは知ってる」
  と譲らず反論
  長い議論になっていました

  会長の肝いりで作られた番組があるそうで、
  大越さんはその撮影現場にも同行していました
  この番組は伝統楽器ドンブラの演奏と歌を競う番組で
  その名も「我こそカザフ人」

  演奏者はステージで演奏をし、
  3人くらいの審査員が審査する

  結構ガチで審査しているのがビックリでした
  「最近の若い人はこの歌の意味を分かっていない、
   ドンブラの演奏も中途半端だ」
  などとかなり評価も辛らつ。

  しかし、その中で伸びのある、哀愁漂う声で歌う若者がいました
  審査員たちは彼の演奏と歌にうっとりと聞き惚れ、
  「声もきれい、曲の意味も理解している
   心を込めた演奏で心に響いた」と大絶賛。
  なんと最後に審査員からのアンコールをもらっていました

  大越さんは、
  「ドンブラって2本しか弦がないから難しくないですか」
  と会長に聞いていましたが
  「本物のカザフ人はドンブラ、ということわざがあるんですよ」という謎の言葉。

  大越さんの解釈によれば
  カザフ人はドンブラに似ているのではないか、とのこと
  弦が2本しかないぶん、
  自由な弾き方ができるし音色はシンプル
  この音色、演奏スタイルが、
  広い草原を馬に乗って自由に行き来する彼らの生き方に通ずるのかなと思いました

  会長は
  「人々に伝統文化を見せることで、カザフ人の精神を呼び覚ましたい」
  と話していました
  カザフ、という言葉は自由とか独立という意味があるそうです
  カザフは独立以来、制度や通貨など、国の枠組みは出来てきた。
  今度は精神、カザフ人のアイデンティティを育てていく段階、
  新しいステージに入った、という話をしていました

 ○安定を捨て、祖国に帰ってきた若者
  大越さんは最後に、キルギス村に移住してきたオラルマンの若者を取材していました

  彼は中国で公務員をしていたが、
  母親とこの村に移り住んで来たそうです
  収入はそこそこあり安定していたのに、その生活を捨ててやってきた
  「なぜそんな決心を?」
  という質問に
  「どうしても子孫をカザフ人として育てたかった、それが理由です」
  彼はまだ独身だが、こちらで結婚して子供も欲しいそうです

  彼はキルギス村に来て
  「なぜこんなに土地があるのに何もないのか、と思った
   ここにはチャンスがある」
  と話し、牛を飼い、野菜や果物を育てて商売したい、と話していました

  母親も
  「息子がいて心強い」
  「ここで孫が見られたら幸せ」
  と話していました
  父、妹、姉を中国に残しており、いずれ呼び寄せたいとのこと

  また、キルギス村には、いったん都市部に移住した人も様子を見に来ていました
  気に入ったら引っ越そうと思って来るのだそうです
  彼らは「広い土地がある方がいい」と話していました
  (せせこましいところでは生きにくいんでしょうかね…)

  政府もオラルマンを支援しており
  キルギスにももっとたくさんの人たちがやってきそうです。
  「今日も5、6軒の家族が来る
   3日後にはまた5軒来るよ」
  「自分達が頑張れば、必ず明るい未来がやってくる
   自分の能力を国のために生かしたい」
  と、オラルマンの彼は話していました

 番組のまとめとして、
 「自分たちの未来は自分で切り開く、という自由、
  それがカザフ人の精神なのかもしれない」
 というような話で終わっていました

〇感想など
 カザフスタンってあんまりイメージなかったんですけど
 今後がかなり面白そうな国ではあるなと思いました

 http://www.procrasist.com/entry/kazakhstan
 「今年はカザフスタンが熱い!日本人だからこそ行くべき『超近未来都市』」
 なんて記事もありまして、読んでいて楽しい。
 いいね~カザフスタン。
 今年は万博が開かれるようですね。

 ただ、行くのは結構お金と時間がかかるみたいです(10万~15万)
 乗り継ぎもあるので、ほぼ1日かかるみたいです。
 それこそ「こんなところに日本人」の世界になりそうだけど、
 まあ、ほぼロシアというかヨーロッパに近いからしょうがないのですが。

 資源もあり、中国、ロシア、ヨーロッパにも近い、しかも平和、
 さらには若い人たちが希望に満ちている、
 とくれば、商売的にも次に来そうな印象を受けますね(笑)

 しかし、何よりも勤勉で素直な国民性には好感を持ちました。
 というか日本人に近そうで親近感を覚える。
 こういう国民性って、競争社会には向かないんかな?
 でも応援したくなります。
 日本との交流ももう少し増えるといいなと思いました。

 第二次大戦での日本人抑留、冷戦での核実験など
 負の歴史についても知ることができました(私も恥ずかしながら知りませんでした)
 でもそれを恨むこともなく、かといって忘れることもなく、
 より良い未来を作ろうと真っすぐに進む彼らの姿は、見ていて美しいと思いました。
 これもドンブラの精神、カザフ人(遊牧民たち)の精神なのかな。

 いろいろ勉強になりました。
 というわけで今回はこの辺で。

 
 
 
 
 
  
 
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