2018年02月10日

Eテレ 欲望の経済史 ルールが変わるとき「最終回 欲望が欲望を生む~金融工学の果てに~」

Eテレ欲望の経済史 ルールが変わるとき「最終回 欲望が欲望を生む~金融工学の果てに~」

人々の欲望が資本主義のルールを変えてきた
という視点から経済史を振り返る番組。
最終回の今回は、今までのおさらいと、今後の展望についてでした

○新しい経済学の必要性を訴える学生たち
 最初に、マンチェスター大学で議論している学生たちがいました
 彼らはDCESポスト危機研究会、という団体の人たち
 21か国に48グループあるそうです

 彼らは大学で学ぶ経済学への批判を口にしていました
 「大学で学ぶことは、資本主義の社会問題を無視している。
  本当に必要なことは教えず、卒業する頃にはレールにしかれた就職をするだけ」
 「なぜ大学は今の現実的な問題を扱わないのか」
 「危機に過剰に反応するのは、歴史を俯瞰していないからだ」

 ある学生はこの会の目標として
 「私たちは教育改革や経済の問題を、一般の人を巻き込んで解決していけたらいい」
 と話していました

 さてここからは、前回までの復習です

○時間が富を生む利子
 第1回目で取り上げた「利子」
 これは中世のイタリアでは既に始まっていた

 昔の借用書には、商人どうしのお金の貸し借りが書かれているそうです
 しかし別の記録を見ると、
 借り手は、借りた額プラス利子をつけて返している
 「偽の借用書を書かせて、実際は利子を得ていた」

 なぜこっそり利子をつけていたかというと、
 当時キリスト教で利子は禁じられており
 「利子は地獄に落ちる」
 と言われていたから

 しかし貸し手の商人が半年の借金につけた利子は
 当時の半年分の給料に相当するほどの額
 「利子への欲望は、神も怖れないほど強かった」

 欲望は、キリスト教のルールも書き換えた
 16世紀、カルヴァンが行った宗教改革の結果、プロテスタントでは5%の利子を認めた
 カトリックも、1745年ベネディクト14世が利子を認めたそうです

○空間が富を生む
 第2回目は「貿易」の話
 海洋国家イギリスでは1600年東インド会社が生まれた
 東インド会社は、一時期は植民地経営も行っていた半官半民の企業

 現会長によると
 「東インド会社は世界初のグローバル企業」
 東インド会社は7つの海を支配した
 英語が現在世界共通言語なのも東インド会社のおかげで、
 東インド会社は、世界の人々と感情的に結び付き、意識に染み込んでいると言ってもいい、
 と話していました

 貿易では安いところで買い、高いところで売る
 空間の差異で富を生む仕組み

 貿易で蓄積された富が大きくなると
 やがて国家を富ませるほどになる
 こうして重商主義が始まる

 オックスフォード大学のケビン・オウローク氏は
 「重商主義の重要なポイントは、富を増やすこと、軍事主義の2点」
 重商主義では、植民地や交易ルートを制したものが有利
 各国はそれらを他国から奪い取るため、軍事力を増強した
 「富のためにには軍事力が必要とされ、
  軍事力のためには富が必要だった」

 自国の利益を追求するうちに、
 国民には「愛国心」が芽生えた
 グローバル競争の中で、ナショナリズムが生まれた。これは今起きている状況と似ている

 ロンドン・スクール・オブエコノミクスのジェイムズ・モリソン氏は
 「重商主義は危険な経済システム」
 と話していました
 重商主義は中世で完全に無くなったのではなく、
 無くなったと思ったらまた甦っている、とも。
 今のアメリカと中国の覇権争いもそれなのか?

○勤勉が富を生む
 第3回は宗教心も経済のルールを変えた、という話。
 プロテスタントの教えでは、
 「職業は天職」とし
 「神に与えられた勤労の使命が自らの魂を救う」と説いている
 これにより、勤勉、職業倫理の考え方が人々の中に浸透した

 プロテスタントの職業倫理が実を結んだ例が、スイスの時計産業
 人々は、アルプスに囲まれた土地で黙々と細かい作業に従事した

 勤勉により富を蓄えると、
 その蓄えた富を投資し、増やすことも美徳とされるようになった
 ジュネーブ大学のフランソワ・デルマンジュ氏は
 「カトリックではお金持ちは不誠実とされたが
  この時代、人々は富は恥ではなくむしろ誇りだ、
  という考え方に変わり始めた」

 一方、18世紀後半、アダム・スミスは重商主義を痛烈に批判した
 彼は東インド会社について
 「国家並みの鈍重さと、
  私企業並みの強欲さを兼ね備えた最低の企業」
 と書いているそうです

 ジェイムズ・モリソン氏は
 「アダム・スミスは重商主義の批判者であり、資本主義の産みの親でもあった」

 アダム・スミスは重商主義が国家どうしの争いを招く、
 と懸念していたそうです
 その代わり、労働に価値を見いだすシステムを提唱した
 「土地の改良や分業を進め、
  生産性を上げて国内の産業を育て、
  価値ある商品を売買し、富を得るシステム」
 この考え方は、産業革命の始まるイギリスの精神となった

○技術が富を生む
 第4回では産業革命、技術が富を増やす話でした

 カリフォルニア大学デービス校のグレゴリー・クラーク氏によると
 「産業革命は歴史上の岐路だった」
 そこには2つの分かれ道があって、
 1つは生産性の向上で享受した富でモノを買う道
 もう1つは、労働時間を減らす道
 このとき以来、人々はモノを買う方を選んでいる
 「働かない道を選ぶ道はもはや閉ざされ、
  人々の本性は忙しく働くこと、と決まったかのようだ」

 しかし、この忙しさは労働者に富をもたらした、
 とも彼は話していました
 「産業革命は労働者を犠牲にしたという人が多いが、
  競争により価格は下がり、最終的に利益を得たのは労働者。
  つまり産業革命は、民主的な革命だった」
 機械化で雇用が奪われる、とラッダイト運動も起きたが
 そこまでの事態にはならなかった、と。

 また、生産性の向上や労働時間の増加は急激に起きたわけではないそうです
 最近のいくつかの学説では、この時期のGDPの上昇は緩やかだった、としているそうです

 イギリスで産業革命が始まってから1世紀くらい経つと、
 アメリカやドイツがその後を追うようになった

 この時期は技術革新が更に進み、
 重工業を基盤とした発展が起きた

 この時代、人々の労働や経済を大きく変えた経営者がヘンリー・フォード
 経済ジャーナリストのウルリケ・ヘルマン氏は
 「フォードはベルトコンベアー作業を導入し、低コストの大量生産を実現させた。
  同時にフォード車を購入できるよう、労働者に高い賃金を支払った」
 効率化で大量生産を実現し、
 高賃金で消費者の購買力を高める
 これは現代資本主義の「大量生産、大量消費」の基本となっていく

 アメリカで拡大した富は、株式や土地に投資された
 元々は生産効率を高めるための投資は、
 次第にお金を増やすための投機へと変化していく

○繰り返すバブル
 第5回目はバブルの話。

 拡大は永久には続かず、世界大恐慌で急に終わりを迎える
 1週間で当時の国家予算の10倍が失われたそうです

 人々が混乱するなか、大衆心理の本質を言い当てたのがジョン・メイナード・ケインズ
 彼は投資を美人投票に例えた
 それも「一番になった女性に投票した人に賞金を与える」ルール

 チェコの経済学者トーマス・セドラチェク氏は
 「これは株式市場の本質を言い当てている」
 この美人投票で選ばれるのは、
 本当の美人ではなく、たくさんの人が入れるであろう女性
 有利な戦略は、女性ではなく投票者の動きを見ること、
 その結果、誰の好みでもない女性が選ばれても、もう誰も止められない

 投資の世界でも、最良の企業が選ばれるとは限らない
 「株式市場は、企業の本物の価値をはかれないシステムとも言える」
 他人の欲望を真似するのが市場の本質なのか。

 ケインズはこの投機ゲームの行く末について
 「投機は企業活動の健全な流れに浮かぶ泡なら無害だが、
  投機の渦に翻弄されるなら重大な局面を迎える」
 と予言していたそうです

 ケビン・オウローク氏は
 「バブルは生まれては崩壊する、
  なぜなら人々の欲望は消えることがないから」と話しています
 バブルはまた繰り返されるのか?

○これからの資本主義
 欲望に突き動かされた人々はルールを変えてきた
 利子、重商主義、職業倫理、産業革命、それから今回は話には出てないが新自由主義。
 それらによる欲望の拡大の果てのバブル…

 AI、金融工学の発展で
 人々の欲望は自動化され、さらに加速されている
 今後の資本主義はどうなるのか?
 各界の方々に今後の資本主義についてたずねていました

 ・資本主義の本質とは
  グレゴリー・クラーク氏は
  「資本主義の本質とは?」ときかれ、
  「資本主義の定義は人により異なる」
  としながらも
  「私が思うには
   人々が交流し、ビジネスを行い、よりよい結果を生もうとする方法」
  これは昔から、産業革命以前にも存在していた、
  と考えているそうです

  資本主義は、人によって
   搾取のシステム
   権力とコネを持つ人が勝利するシステム
   能力主義、開かれた社会、家柄に左右されない世界
   国家から逃れられるシステム、
  …など見方は色々なので定義は困難、と話していました

 ・文化、芸術への投資が必要
  南カリフォルニア大学のジェイコブ・ツール氏は
  アダム・スミスの
  「お金を稼ぐのは、教養を学ぶため」という言葉を引き合いに出し、
  「今後の資本主義の発展のためには、文化や芸術へ投資すべき」
  と話していました

  安定した継続可能な社会システムを作るには、
  哲学、宗教、歴史、文学などの人文系の教養が必要だ、と。
  歴史的にも、自国の文化を理解している国は財政も統制できているそうです
  それから
  「資本主義では、トリクルダウンは存在しない」
  とも話していました

 ・資源の枯渇と環境汚染への対応が必要
  ウルリケ・ヘルマン氏は
  「資本主義は人類初の、経済を成長させるシステム」
  と話していました

  しかし永久の成長はあり得ない。
  今の資本主義には終焉が見える、とも。

  彼女によると、
  今の資本主義には資源と環境の2つの限界があるそうです
  成長する社会と、エコで循環する社会、
  この2つのつながりが研究されていないのが問題だ、
  と話していました

 ・大学が学び直しや交流の機会を提供すべき
  フランスの経済学者ダニエル・コーエン氏は
  「これからの資本主義ではルーティンワークでは通用しなくなる。
   今よりも効率化を求める企業のあり方が、人々に競争を強いる」

  それゆえ、失業の危機から人々を守る社会が必要、
  大学が生涯学習の場を提供することも大事だ、
  と話していました

  「人々は工場が閉鎖され、コミュニティがなくなり、途方に暮れる。
   だからこそ、大学で色んな世代の人と交流したり再会したりできるシステムが必要だ」

  これは、フランスや日本のようなヒエラルキー社会では特に必要なのだそうです

 「寛大になることです。
  困難な状況におかれた人たちを、私たちは理解せねばなりません」

 ・まだ先は見えない
  ケインズ研究者のロバート・スキデルスキー氏は
  「進歩とは、歴史を繰り返すことではなく、歴史を乗り越えること」と話していました
 
  しかしどう乗り越えるのか、その先には何があるのか?
  スキデルスキー氏にも答えは見つかっていないようです

  「資本主義が無くなると言う人もいるが、
   無くなった後どうなるかはまだ見えていない」
  
  例えばの話として、
  「資本を蓄積することが重要でなくなり、儲けるモチベーションがなくなる社会では
   既存のシステムは必要なくなる。
  人は、物質的な要求が満たされたら、よりよい生き方はなにか、など別のことを考える」

 とはいえ今はまだ、
 資本主義後の「ポスト資本主義」の中身が分かる段階ではない、と話していました

「私たちの将来は、進歩か安定か、後戻りか。

 記憶と忘却、ルールは今も書き換えられる」

というナレーションで終わっていました

○感想など
資本主義はそもそも
「人やモノに投資し、育ててみんなを豊かにするための仕組み」で、
経済学も
「みんなを豊かにして幸せにするための学問」
が原点だったはず。

最後の各方面の学者さんたちの言葉はみんな、
その原点に戻ろうよと言っているように聞こえました。

「欲望の資本主義2017」でセドラチェク氏は最初に、
「今や成長が目的になっている」
と指摘していました。
我々は、元々豊かになるために成長を目指していたのに、
今は豊かになっている国でも、無理矢理成長を目指している、と。

何のための成長か?
もう十分豊かなんだからもう儲ける必要もないんじゃないか?
それよりも、
世界のまだ豊かでないけど意欲ある人に投資して、その成長を応援したり
あるいは地球環境を守るプロジェクトをしたり、
そういう仕事の方がやりがいがあるんじゃないか?
…てなことを金持ちが考え始めるのが、ポスト資本主義なのかなと思いました。

ただ、現実社会はまだまだ格差が大きい。
コーエン氏が言うように
誰もが学び直し、キャリアをやり直せる社会になるといいと思います。
特に日本では、キャリアを中断すると険しい道が待っていることが多いので…

いつぞやの回では、
「産業革命時、投資家は私欲を貪るどころか、
 公共教育などに投資し、社会貢献した」
とありましたが
同様に現代の富裕層も、公的な教育にもっと投資するようになればいいと思います。

ただ、今は富裕層にそうしたいと思わせるものがない…
産業革命時は、宗教にからむ倫理観が資本家を動かしたようですが
宗教は今はあんまり力を持っていないですし。

資本主義が行き着いて、金持ちがもうそんな儲けなくてもいいかなと思い始めたら世界が変わるのかも。
(これが、ポスト資本主義の倫理観?)
あるいは
「お金を独り占めせずみんなに回した方がみんな豊かになるよ」みたいな理論が科学的に確立したら変わるのかも。

しかし、未来は予測できない。
今の資本主義は心地いいから、結局マネーゲームし続ける可能性もある。
それでも個人的には、未来には楽観的でありたい。楽しみに待とうと思います。

というわけで今回はこの辺で。


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2018年02月09日

NHKBS世界のドキュメンタリー「猟奇的犯人の素顔」

NHKBS世界のドキュメンタリー「猟奇的犯人の素顔」

イギリス2017年のドキュメンタリー。
サイコパスと呼ばれる人たちについてです。

案内役はサイコパス研究の心理学者。
アメリカ、インディアナ州の4人の受刑者のインタビューについて、
様々な専門家の話から彼らの心理を分析していました。

「共感能力」に関わる話なので既視感はありましたが…

○サイコパスの心理
 サイコパスは、自分の悪事を他人事のように話すようです

 最初にインディアナ州の受刑者4人へのインタビュー映像を見ました

 彼らは懲役30年とか50年とか、途方もない量の刑罰を受けていますが
 どの人も、自分の犯行を冷静に語っていました

  女性の首を絞めたあと、心臓や首をナイフで何度も刺した、

  警察官を意識不明になるまで叩きのめした、

  女性を殺害したあと遺体にレイプした、など…

 また、進行役の心理学者は
 5人の女性を拷問、殺害した犯人と手紙のやり取りをしていたそうですが、
 その犯人の手紙を普通に読んだらマトモな人間に思えたそうです

 むしろシェイクスピアを引用したり、詩人の全集を読みこなすなど
 知性は高そうだった、とのことです

○サイコパスの特徴
 司法精神学者のジェレミー・コイド氏によると
 サイコパスの診断と治療は難しいそうです
 サイコパスだからといって殺人犯になるとも限らず、
 犯罪者がみなサイコパスでもない
 犯罪の種類も多種多様らしい

 精神学的には、20の診断基準があるそうです
 ・口が達者でうわべだけの弁が立つ、
 ・自己中心的で自尊心が強い
 ・刺激を求めたがる
 ・良心の呵責、罪悪感が薄い
 …など
 「傾向がない」を0点、「ややある」1点、「間違いなくある」2点、
 としてスコア化するのだそうだ

 しかし、レッテルを貼ることになりかねないので診断は難しいそうです

 この基準からインディアナ州の受刑者のインタビューを見ると
 「車を盗むとアドレナリンが出る」
 「けんかが唯一の癒し」
 「相手が邪魔だから取り除いた」
 と、刺激を求める、自己中心的、罪悪感が薄いなどの特徴が見られました

 それからこのインタビューでは、ある受刑者は
 「他の人は感情に動かされすぎだ、
  相手を人間と思ったら動けない。感情は邪魔だ」
 と発言していた人もいました。
 なぜ彼らは無責任、無感情になれるのか?
 次は、この答えを子供の時からの精神発達に求めています

○サイコパスは、子供の時から共感能力が弱い
 ユニヴァーサル・カレッジ・ロンドンのエッシ・ヴィディング氏は
 子供が追いかけっこをして遊ぶ様子を観察していました
 子供が相手の感情を読み取っているかを観察するには、遊びはいい素材なのだそうだ
 例えば遊びで相手が怯えていれば、自分が嫌がられることをしていると自覚し、やめる
 相手が楽しそうなら、自分がいいことをしていると分かるそうです

 ヴィディング氏は、
 子供に色んな表情の写真を見せ、
 感情を言い当ててもらう実験をしたそうです

 すると他人の感情に冷淡な子、つまり共感能力が弱い子供もいて、
 そういう子は特に、相手の怯えている顔の意味が分からないそうです

 彼女によると、サイコパス的な受刑者も同様で、
 ある人なんかは
 「そう言えば、人を刺すときみんなこんな顔をしていた」
 と言っていたらしい

 ヴィディング氏によれば
 サイコパスには遺伝的な要因がある、と研究では分かっている
 しかし共感能力には遺伝、環境両方の要因があり、
 「生まれながらのサイコパスはいない」そうです

 この点についてインディアナ州の受刑者たちは
 「子供の頃からモラルがないと言われた。
  人付き合いが苦手で、溶け込もうとしてもいつも一人だった」
 「いつも疎外感を感じていた。
  成績は良かったが、人より速く終わるのがつまらなかった、だから問題を起こした」
 など、もともと人付き合いが苦手で、
 共感能力が弱いことが示唆されていました

 ウィスコンシン州のメンドーサ少年矯正施設は、犯罪を起こした子供を保護する施設だが
 ここの所長も
 「子供たちの多くは感情が希薄、
  対人関係にも問題があり、他人の痛みや苦しみを感じにくい。
  善悪の判断はできるが、悪いことをするのをためらわない」
 と話しています

 しかしヴィディング氏が話していたように、
 犯罪を犯す人間はもともと共感能力が弱いだけではなく、
 育ちの要因もあるようです

 インディアナ州の受刑者の一人は
 「お袋は精神障害で、生まれて数ヵ月の俺を階段から突き落として殺そうとした。
  俺はいとこが頭をぶち抜かれて死ぬのも目撃した。
  親父は性的にも物理的にも俺を虐待した、
  俺がこうなったのも親父のせいだ」
 と話している

 しかし虐待を受けたからといってサイコパスになるとも限らず、
 暴力的な父親の遺伝子を受け継いだ、という見方もできる

 どちらの要因もあるのだろうが、
 サイコパスは脳に原因がある、
 とする研究もあるそうです
○サイコパスの脳は特定部位の活性が弱い
 ヒール博士という方は、可動式のMRIスキャナーを車に載せ、
 8箇所の刑務所の5千人以上の脳を撮影したそうです

 普通の風景の写真、KKKのような反社会的な写真を見せたり
母親を殺すことをどう思うか、などの質問をして
 そのときの脳画像を調べたそうです

 その結果、サイコパスに特徴的なのは
 「眼窩前頭皮質」「扁桃体」
 それからこれらと「辺縁葉」を含めた「傍辺縁系回路」
で、
 サイコパスは「眼窩前頭皮質」の灰白質が少なく、
 傍辺縁系回路の活性が低いのだそう

 脳が原因なら、人格を変えることは難しいのか?
 実際、インディアナ州の受刑者たちは、
 セラピストの心理療法は受けているが
 「自分の中に別の人格がいる」
 と表現していて、
 あまり効果は感じていないようでした

 では薬物で治すことはできないのか?
 次はその研究についてです
○投薬治療の効果
 神経伝達物質で心理を変える研究が紹介されていました

 これはオックスフォード大学のモリー・クロケット氏の研究で、
 実験では、被験者に、お金を払って他人(協力者)に痛みを与えてもらうが、その際
 ・ある程度の額で痛みを与える
 ・額を増やして与える痛みを減らす
 この二つからどちらかを選んでもらう

 被験者を2つのグループに分けて
 一方はセロトニン、一方はプラセーボを投与してこの選択をさせたところ
 セロトニングループの方が額が多い(痛みが少ない)方を選ぶ人が多かったそうです
 (平均金額プラセーボ44ペンス、セロトニン73ペンス)

 セロトニンは精神安定、社会的行動に関与するホルモンだそうです

 しかし
 「セロトニンでサイコパス治療できるか」という質問に対して
 「これは利益と他人に痛みを与えることとどう折り合いをつけるか、の実験に過ぎない」
 「これでサイコパスの過激な行動を変えられるとは思わない」
 とクロケット氏は答えていました

 一方インディアナ州の受刑者には、
 向精神薬の投与を受けている方もいて、
 彼は
 「薬は行動を思い止まらせてくれる、
  飲むとぼんやりした感じになる」
 と、ある程度の薬の効果は認めている。

 しかし、これは行動を抑えるだけで根本的に治すわけではないともいえる。

 しかしそもそも、サイコパスを治す必要があるのか?
 彼らの能力は社会に必要、という見方もあるそうです

○大統領はサイコパスが多い?
 ジョージ・ブッシュ氏までのアメリカ大統領について
 サイコパスの特徴があるかを調べた研究があるそうです

 それによると、
 サイコパスの持つ特徴は、大統領になる資質と類似しているらしい

 ユモリー大学のスコット・リリエンフェルト氏によれば
 それは危険への適応力、ストレスに耐える力、情緒面の回復力、などの能力で
 これは企業の役員、ウォール街の成功者、優れた裁判官などにも見られる資質らしい

 他人を支配することで満足感を得る政治家と
 他人に暴力をふるって満足感を得るサイコパスは、
 根っこは同じで、別の枝に分かれているだけなのかもしれないそうです

 そこで、サイコパスの
 「認められたい、見返りが欲しい」
 心理を利用して、彼らを社会に共存させられないか?
 その試みが、先程のメンドーサ少年矯正施設でなされているそうです

○メンドーサ少年矯正施設の行動療法
 「プレイ・トゥモロー・プログラム」
 これは、毎日の行動に対し、賞罰を与えるもので
 いいことをしたら次の日に許可されることが増える。
  例えば食事、電話、娯楽室の使用など。
 表彰状も与えたりするそうです

 このプログラムで賞をもらう子は誇りを感じると話していて
 「これはごほうびをもらいたい、認められたい欲求の現れで、
  この経験は彼の将来の支えになるはず」
 と所長は話していました

 このプログラムのポイントは
 「人格を変えるのではなく
  行動が改善すればいい、と考えている」
 彼らの欲求、脳の仕組みを生かして将来の犯罪を抑える、
 というやり方なので無理がない。

 それからもうひとつ
 「十代のうちに受けることが大事」
 柔軟性があるうちに行動を変えることが重要なのだそう

○まだ解決策は見えない
 サイコパスの人たちは、
 遺伝的にも環境にも恵まれない人たちが多いそうです
 そこで、子供の時にその兆候が見えたら、社会がすぐ介入すべし、という人もいるそうです

 インディアナ州の受刑者のインタビューでは、
 「子供の頃に間違った教育を受けたせいで俺はこうなった」
 「俺はなりたくて殺人鬼になったわけじゃない」
 「自分はサイコパスじゃない」
 「はやくこの人生を終わらせたい」
 …などと話しており、
 悪事を抑えられない自分が、
自分でも嫌になっている様子が伺えます。
 「どちらかというと彼らが気の毒になってくる」
 と進行役の心理学者は話していました

 さらに、サイコパスは統合失調症など、
 精神的な疾患やパーソナリティ障害の兆候を併発している人が多いそうです

 (この辺話の流れがいまいち分からんかったが、
 子供のうちに適切な介入があればサイコパスにならなくても済んだかも、ということか?)

 最後に心理学者は、5人の女性を殺害したサイコパスとやり取りしていた手紙を紹介して終わっていました

  殺人犯は、自分をいい人と主張したがり、
  人を助けた話、表彰された話などはしていたが
  事件についてなど都合の悪いことは何も言わない

  それから自分のいうことが通らないと怒り狂う

  法律や警察は信頼せず、
  「特権階級は、法律を都合のいいように変えている、
   大統領が人を苦しめるなら自分も人を殺していいはず」
  「法律はくもの巣ににている、
   小さなハエは捕まるが、スズメバチは軽く通り抜ける」
  と書いていた

 つまり何事も、自己中心的な解釈をしたがる人間だったようです

 心理学者はまとめとして
 ・サイコパスは犯罪に直結するとは限らない
 ・サイコパスになるかは育ちの環境にも左右される
 ・サイコパスは脳にも関わりがある
 ・サイコパスは、罰するよりも特定が大事で、罪を犯す前に治療できれば希望が持てる

 …と述べつつも

 しかし手紙を送った殺人犯については
 「彼のような人物は、警察に収監するしかないのかもしれない」
 と呟いて終わっていました

○感想など
・子供のうちから、他人に対して冷淡な兆候があったら早めに介入すべき、とあったが、
どんな介入をすればいいんだろうと思いました。

私は自分がサイコパスかどうか分からんけど、
他人のことに興味がない部分もあるし
子供のときは人付き合いが苦手だったので、
サイコパス的な要素はあったのかもしれない。

思春期の頃は母親に
「ほっといて」と言うくせに、
本当にほっとかれて
「愛されてない」
と思い込むややこしい人間でした(笑)

その経験から考えること、
あんまりベタベタして欲しくはないけど
要所要所で見守って欲しいな、と思います。

日常の些末のこと、
例えば何着るとかどんな本読んでるとか言うことは
あんまりゴチャゴチャいってほしく無いけど
進路とか大事なことはズバッと相談にのって欲しい、みたいな。
(私の母親は完全に逆だったのでうっとうしかった)

距離感が難しいけど
いざというときに相談できる、信頼できる人ができれば
だいぶ人生が変わるんだろうと思います。

・受刑者たちが
「自分はサイコパスじゃない、悪い人格がやっている」
「心のなにかがやれと言っている」
「法律は偉い人が自分達の都合で作ったものだから破っていい」
自分は本当は悪いことをしたくない、と言ったり
自分に都合のいい言い方をしていたけど
その心理がよく分からんなと思っていました

しかし色々考えてみて
これは自分を認められたい気持ちの現れだと気づきました。

私がたまに見る番組に
科学の悪の歴史を紹介している「フランケンシュタインの誘惑」という番組がありますが、
ヤバい実験をしてしまう科学者さんも、まさにサイコパス。

この番組に出てくる人の大体の典型パターンとして
優秀だけど対人関係が苦手な科学者が、
功績を認められず、差別や不当な扱いを受けてどんどん暴走していく…てのが多い。
(自惚れすぎてたしなめる人がいない、ていうパターンもあるが)
このとき彼らがたいがい嘆くのは
「なんで俺を認めてくれないんだ」

受刑者たちの不可解な表現も
自分を認めてくれよ、という心の叫びなのかなと思います。

例えば悪事を「悪い人格」のせいにしてしまうのは、
本当は自分はいい人なんだ、それを認めてくれよ、
という気持ちからではないかと思う。

法律が悪いんだ、俺は悪くないというのも
だれも自分を認めてくれない。
誰も認めてくれないのは、現実が間違っているからに違いない、と考えるのだろうと思う。
(心理的なバイアスですね)

さらに掘り下げれば、
彼らの「認められない」不満の根っこは子供時代にあるのかも。
共感能力が薄い子供だと、
大人から子供らしくない、と否定的に評価されがちになるからかもしれない。

そして子供時代認めてもらえないと
認めてもらうために悪いことでもなんでもしてしまう。
もしくはどうせ俺はワルなんだと自棄になり
ならばワルを完璧に演じてやろう、と考えてしまうのかもしれない。

でも共感能力が薄いのは悪いことではないはずで、
例えば大統領とか優秀な経営者、医者にもサイコパスが多いと言っていたけど、
これらの職業では、
共感能力が強すぎると、
みんなのことを考えすぎて決断出来なくなってしまうから、
共感能力が薄いのはむしろ有利なのだろう。

だから大人の関わり方って重要だと思います。
大人もこの子、子供らしくない、可愛くないと偏見もったらいかんなと思います。
それだけに、彼らの良さを生かそうとする少年矯正の取り組みは興味深い。

サイコパスの人たちは競争に強く、優秀な人が多いので
彼らの能力をほめて、何かチャレンジを与えることだと思う。
認められたいエネルギーを別の有益なことに回すことだと思う。
さらにそこで何か達成できれば、自己肯定感も高まっていい方向に回る。
それから彼らは認められるためなら悪もためらわないので
貧困とか差別、暴力から遠ざけることはもちろん大事だろう。

ただ、あの手紙の主のように、大人になると矯正は難しそう…
自分以外の世界は信用しないどころか、見下していそう。

せめて若い人たちに対しては、
彼らを受け入れて、能力を生かすように持っていくことかなと思いました。

今回はこの辺で。
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2018年02月07日

NHKBS世界のドキュメンタリー「透明人間になった私」

NHKBS世界のドキュメンタリー「透明人間になった私」

フランス、2015年のドキュメンタリー。

「監視社会」がテーマです。

IT技術の進歩は我々の生活を便利にしたが、
同時にIT技術は、我々から個人情報が抜き取られるのを可能にした、
という問題があります。

例えば我々のネット通販の買い物履歴、サイトの閲覧履歴などは、サービスと引き換えに企業に利用される。
ウェアラブル端末も同じで、血圧測定し、健康管理アプリに送るサービスでは、企業は我々の健康情報を利用できる。

エドワード・スノーデンによれば
「アメリカ国家安全保障局NSAは、世界中のインターネット情報を監視している」
とのことなので、サービスを提供する企業だけではなく
国家も我々の個人情報を閲覧している可能性がある。

それから街中の監視カメラもネットに繋がれば、誰がどこにいるか追跡可能になってしまう。

つまりは現在、いつでもどこでも個人が監視される社会になっている。

そこで、アレクサンドラさんという女性ディレクターが
ネットや監視カメラなどから遮断された生活は可能か?
を体を張って試しています。

彼女は
「隔離された生活はイヤ、旅行も友人との交流も買い物も今まで通り楽しみたい」
と最初には話していました。

○ネットに流す情報に注意する
 彼女は最初、CNIL
 (個人情報保護をする独立法人)
 で話を聞き、
 「サイトに書き込む情報を慎重に選ぶように」
 とのアドバイスを受け、
 ・ネット上のパスワード設定を頻繁に変える
 ・ネットではプライベートモードで見て、履歴を残さない
 ・携帯をパスワードでロックする

 つまり、ネットは使うが使い方に気を付ける、という対策を取っていました

 その他、アレクサンドラさんが行った行動は
 ・ネット上の自分とのつながりを把握するため
  今までネットを通じて個人情報を提供してきたお店、銀行、サービスに
  自分の履歴を照会する手紙を書く

  あとからその記録が送られてきて
  「デジタルパートナーの相関図」
  つまり自分の個人情報とつながる企業、サービスを洗い出していました

 ・悪い情報を削除してくれる会社に情報削除を依頼する
  マルセイユにある情報削除サービスの会社によると、
  見られたくないサイトを削除、あるいは検索不能にすればいいのだそうです
  また、この会社はSERPスカルプティングという、
  肯定的な情報を検索の上位に来るようにする技術も持っているのだとか

○ネットのツールを透明性の高いものにする
 次に、ベルサイユの「プライバシーカフェ」の経営者は、
 GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)
が提供するサービスを使うとそれらの企業にデータが送られてしまう、
 オープンソースのフリーソフトウェアを使うべき、と指摘していました

 そこでアレクサンドラさんは
 ・インターネットブラウザを「firefox」にする
 (「Chrome」を使うとGoogle、
 「インターネットエクスプローラ」を使うとMicrosoftに利用者情報が送られるが、これはそれがない)
 ・パソコンのOSを「ウブントゥ」にする
 これはウブントゥという会社が提供しているオープンソースのOS

○位置情報が追跡される
 次に、フリーソフトを作っているアメリカのプログラマー、リチャード・ストールマン氏に
 「あなたが心がけていることは」と聞くと
 ・乗り物にはICカードを使わない
 ・買い物もカードではなく現金で行う
 ・携帯電話は、居場所が追跡されたり盗聴の恐れがあるので持ち歩かない

 それから彼は、
 ・街のカメラは無くすべき
 と主張していました

 カメラがネットに繋がればデータが保存されるし、
 顔認識ソフトがあれば個人がどこまでも追跡される、と。

 そこで、アレクサンドラさんが実際に町を自転車で走ると、
 カメラはパリの町中に50個以上ありました。

○我々は喜んで監視されている?
 一方カナダのクィーンズ大学の教授デイヴィッド・ライアン氏の話によると
 「我々は、メディアを使うたびに知らない間に監視されている。
  さらに我々は監視されているだけでなく、自ら監視に関わっている」
 パソコン、スマホのサービス、ウェアラブル端末のサービスを使うたび、
 我々は気づかない方法で提供先の企業に監視されている、と。
 Facebookの情報も、政府機関に提供されているそうです

 さらに教授は
 「これは民主主義への脅威になるか?」ときかれ
 「国民を分類したがる傾向は以前からあるが、
  問題なのはそれがある集団にとってリスクを増やすこと」
 個人が追跡されるだけではなく、
 例えば欧米におけるイスラム系の人たちなど、一部の人たちへの監視や差別を助長する、
 と指摘していました

 同様に、ボストンの情報セキュリティ専門家のブルース・シュナイアー氏は
 「政府により常に監視されている社会は危険」と話していました
 国が国民を監視するのは反発されるが、携帯を持っていれば居場所がわかる。
 手紙を当局に出すのは抵抗されるが、メールのリストはプロバイダから手に入る。
 友達リストは当局に出しされないが、Facebookのデータでわかる
 監視はこうして起こる、と。

○個人情報追跡への対策
 これらの意見を聞き、アレクサンドラさんは
 「なんだか常に監視されている気になってきた」と、
 ・Facebookやリンクトインのアカウント削除
 ・クレジットカード解約
 ・ポイントカード、ICカードも捨てる
  これらのカードは買い物記録、金銭の状態や好みを知らせてしまうため。

 さらに、追跡を防ぐ携帯電話についても取材していました
 ・スイス、ジュネーブ在住のフィリップ・ジマーマン氏
 (彼はスイスはデータ情報保護が法律化されているため、アメリカから移住したらしい)
  彼が作った「blackphone」という携帯電話は
  暗号化技術を使い、通話やメールが全て暗号化される
  ただしこの携帯電話同士でないと使えない(他の電話と通信できるアプリはある)

 ・フランス、レンヌの企業が作った携帯電話
  この電話では回線が保護され、プライバシーが守られる、
  GPSの位置情報を撹乱できるモードが選べる、
  などの機能があるらしい
  ただしこれはビジネス専用電話だそう

 アレクサンドラさんはどちらも使いないため
 次善の策として特定のアプリ、GPSの位置情報を削除していました

 ・Torのブラウザ
  これはパソコンのブラウザアプリで、
  ブラウザに接続するときIPアドレスを保護し、
  接続先に自分のアドレスを分からなくしてくれるらしい
  セキュリティレベルも選べるそうです(ただし速度は遅くなる)

○最終的には、インターネット通信から遮断するしかない?
 次に、フランス政府から「暗号テロリストグループの首謀者」と言われている方に話を聞くと、
 彼は
 ・当局に狙われるので、重要なデータはネットに繋がっていないパソコンに保存
 ・e-mailは重要なやり取りには使わない
 つまりネットは基本的に遮断していると話していました

 ちなみに彼の話によれば
 NSAの提供するサイトでは、監視ツールが買える(彼も購入していた)
 例えば
 ・ターゲットのパソコンの画面を離れたパソコンに写し出す部品
 ・キー入力記録を収集するチップ
 ・ウィルスを感染させ、データを抜き取るUSBメモリ
 ・ターゲットの携帯電話といれかれられる偽の携帯電話
 「NSAはどこまでやるのか」と話していました

 それからベルリンで行われたハッカーの集会で、
 情報ネットワーク企業の方の話を聞くと
 「モバイルネットワークは個人情報を保護してくれない、
  例えば電話番号から位置情報はわかる」
 つまり携帯は守れても、ネットワークからは情報が漏れると話していました

 彼によれば、どんなに携帯を安全なものにしても、
 同じウェブサイトを何回も訪れると、
 使用言語やキー入力方法で同じ人が来たとわかってしまう、
 そこから個人を推測するのは可能、と。

 携帯電話を手放さないと完全に身は隠せないらしい

 アレクサンドラさんは
 「まるで旧東ドイツのシュタージ」
 シュタージ経験者は「あの頃は悪夢だった」
 そして彼女はインターネット環境からの遮断を行うことにする
 ・携帯を解約、連絡は公衆電話で行う
 ・パソコンもタイプライターとゲームだけに使う
 ・電車は切符を使う
 ・飛行機はチケットから情報がもれるからあまり使わない

 こうして友人とは連絡がつきにくくなり、
 ヨーロッパ旅行も、飛行機をなるべく使わないため
 二時間で行けるところが二日かかっていました

 こうなると、社会から隔離された形になる
 ある専門家は
 「スマホやメールを使うのをやめたら社会ののけ者になる」
 と話していました

 しかし、それでも残っている監視ツールがあるんだそうです。
 それは街中のカメラ。

○カメラをごまかす技術
 監視カメラは逃れようがないが、
 それへの対抗手段を考える芸術家たちがいました
 ・フランスのファッションデザイナー
  彼は、顔認証システムを撹乱するヘアメイク、ファッションを考えているそうです
  顔に市松模様みたいなメイクをするので余計目立ちそうですが(笑)
 アレクサンドラさんなんか「これでカメラから自由~」と踊ってました(笑)

 ・ニューヨークのアーティスト
  彼はアート作品で対抗していました
  例えばLEDライトをつけ、監視カメラを惑わす傘、
  予想外のルートを出すナビのアプリ、
  個人情報が監視されていることを警告するアプリ、など…

 ・仮面を作ってくれるサイト
  シカゴのアーティストが作ったサイト(ユーアーミー)では
  仮面をダウンロードできるらしい
  これを顔につければ顔認証システムを撹乱できる?

○政治に意見を反映させるべき
 しかし、彼女がそんなささやかな抵抗をしている間に
 フランスでは監視を合法化する法律が可決されたそうです

 スイス在住のジマーマン氏は
 「我々は情報を隠すことを強要されてはならないのです。
  個人で情報を隠しても意味がない。
  解決するには政治の場で抵抗することだ」

 シュナイアー氏も
 「法律を変え、社会を変え、生活を変えねばならない。
  監視より安全、プライバシー保護を優先させるよう行動に移すべきだ」
 と話していました

 実際、ドイツではハッカーの集団「デジタルの勇気」が
 行きすぎた監視をやめろ、とデモ活動をしているそうです
 代表の方は
 「武器がない戦い、敵の見えない戦いだから難しい」
 としながらも
 「しかし未来の世界をGoogleに支配されてはいけない」
 「我々が勝てると信じている、でなければ人間らしく生きられない」

 アレクサンドラさんは最後に
 「私は数ヵ月の間、なんとか透明人間にはなれたが、
  普通の生活は諦めざるを得なかった」
 「私は全てを自分で決めたい、監視されるのは嫌だ。
  しかし私一人では何もできない。
  あなたも自分で決断してください。
  これからどんな世界で生きていきたいのかを」

というメッセージで終わっていました

○感想など
アレクサンドラさんの体を張った取材には脱帽(かなり労力かかってると思うよ)。
もはやインターネットなどのITサービスから逃れられない現実が、
クスっとさせられながらもありありと分かりました。

しかしドキュメンタリー全体としては
IT技術で、我々の情報が監視され放題だよ…
という面が強調され過ぎかな?
(まぁ、今回のドキュメンタリーは、監視社会をコメディタッチに描く趣旨なので仕方ないが)

この点に関しては
便利さのためなら、ある程度の個人情報が漏れたってしょうがないでしょ、別にいいじゃん
と思う人もいるはずで、
私もそう思っていました。

しかし真の問題は、途中で専門家が触れていた
「ネット上での分類化が、差別を助長する」こと、
「それなのに、我々は喜んで個人情報を提供している」ことかなと思います。

ここはあんまり詳しく取り上げられて無かったのが少々残念ですが
(次次回の内容ですかね)

カナダの教授が話していたのは、
例えばある人が、ネット上の検索履歴とか交遊関係で
「この人はアラブ系」
と分類されてしまうとする。
そうすると当局は「こいつは要注意人物」と監視対象にしてしまう
何かあれば入国拒否、テロリスト、犯罪人にされてしまうかもしれない。

あるいはネットにその情報が拡散したら
ありもしない話を作られたり
色んな差別を受けたりするかもしれない、
…という話だと思います。

これは日本にとっては遠い話に思えますけど
最近読んだ本に恐ろしいシナリオがありました

例えば誰かが若気の至りで、
うったりネット上に過激なことを書いてしまったとする。
するとネットの記録から人物査定をするAIがあるとして、
「この人は過激な思想の持ち主」
という評価を下す。

そして、その評価が就職の時に使われ、
「あなたは採用できない」
と言われる。
なぜですか、とたずねても
「分からないがAIがそう評価している」となる

そしてその評価は別の企業でも使われ、
自分でも理由が分からないままいつまでも仕事に就けない。

そうなると、その人にはやり直すチャンスもあったはずなのに、
自分は無能者だと無気力になってしまうかもしれない。
もしくは自暴自棄になり、本当に過激思想の持ち主になってしまうかもしれない。

…もちろんこれは現実には起きていないが、
ネットの交遊記録から、ローンなどの信頼度を調査するシステムは、
海外の会社では実用化が検討されているそうです
また、就職の人物評価にAIを使う試みも行われつつあるので
全くの絵空事でもない。

つまりネット上に自分が無防備に流す情報により、
自分が勝手に分類され、ランク付けされ、評価されて
気づかないまま社会地位を決められている社会になるのかもしれない。
自己評価さえ、誰かに作られてしまうかもしれない。

その危険性を認識しないまま、
我々はサービスを喜んで使い、
そのバーターとして個人情報を提供し、
進んで企業や国家に監視されている可能性があるわけです。

なので、法規制を求める必要はあると思う。
自分や家族が、ネットの記録から勝手に何かの烙印を押され
一生好きなことが自由にできない人生になったらたまらんなと思います。
ネットでどんな情報が誰に使われているか知る権利、
使われなくない情報を削除、拒否できる権利、
などが必要だと思います。

まぁ、それには自分で自分の情報を管理しなきゃならないめんどくささもあるんですけどね。

ここまで来ると、
近代技術を拒否しているアーミッシュやユダヤ教の厳格派の人たち
(なんせ、彼らはテレビも車も拒否している!)
の方が幸せなのかなーとも思えてきます。

しかしながら、ネットでの検索は便利だし
後戻りはできないんだろうな。
GAFAM、のIT企業も国家も、
個人を監視してやろうとか支配してやろうとかいう悪意?野心?はないのだろうと思う。
できればみんな対等に、平等に、仲良くテクノロジーの恩恵を預かりたいもんだと思います。

色々考えさせられました。
今回はこの辺で。



posted by Amago at 16:47| Comment(0) | テレビ(科学) | 更新情報をチェックする