2017年12月10日

Eテレ「人間ってナンだ?超AI入門「第10回味わう」」

Eテレ「人間ってナンだ?超AI入門「第10回味わう」」

全12回でAI(主にディープラーニング)について感覚的に学ぶ番組。
進行はチュートリアルの徳井さん、東大の松尾豊氏。

今回はレシピを考える、調理する、味わうことについて、
ゲストは和食料理人の笠原将弘さんでした。

最近では、調理ロボットのほか
AI冷蔵庫が残りの食材からレシピを提案したり
AIソムリエがワインを提案したり
創作レシピを作ったりしているらしい…

○AIの創作料理
 まず最初に、徳井さんと笠原さんの前におしゃれなサラダっぽい料理がありました。
 徳井さん
 「見たことのないような料理がありますね…先生、これ何ですか?」
 松尾氏
 「まず食べてみてください」

 笠原さんがまず食べてから
 「…色んな要素がありますね、
  甘み、酸味、油っぽさとか。
  正直、スゴい美味しいかというとそうではない」(笑)
 徳井さんも食べてみて
 「…おっしゃることが何となく分かります。
  んー、不味くはないんやけど。すごく美味しいわけでもない」

 先生
 「実はこれは、AIが創作したレシピを元に人間が調理したものなんです」

 レシピを見ると
 ・ラード、グリーンカレーペースト、リコリスと薄力粉を炒め
 ・タマリンド、メープルシロップ、お酢、塩、コショウを入れてソースを作る
 ・アボカド、モヤシ、梨、キュウリにライム汁、オリーブオイル、塩、コショウをかける
 ・フライドポテトに上記のものを全てかけてチーズ、ピクルスをトッピングする

…モヤシに梨って斬新すぎる(笑)
 んー、なんか入れすぎでボヤけそうな、節操ない料理だな、というのが私の印象。
 徳井さん
 「人間の気に入りそうなものはこれだろうと考えてってことですかね?」
 先生
 「たくさんのレシピデータを学習して、これとこれを組み合わせたら美味しいだろう、とか、
  あとは栄養のバランスなんかも加味して作っています」

 笠原さんは
 「もう少し工夫したらカフェにも出せそうですけどね」
 徳井さん
 「フライドポテトをマッシュポテトにするとか…」
 笠原さん
 「レシピの根拠を知りたいですね、どんな人が欲すると思ったのか」

○シェフ・ワトソン
 創作レシピを提案するAI、シェフ・ワトソン(IBM製)が紹介されていました

 調理法や安全性、食材、味覚のデータを入れて学習させ、
 美味しくてかつ食材を無駄にしないレシピを提案しているのだそうです

 シェフ・ワトソンが考えたレシピを提供するレストラン?みたいなのがあるらしく、
 ・韓国&トルコ風のキムチいりシーザーサラダ、
 ・そら豆と子牛のチェダーチーズのギリシャ風バーガー、
 など独創的な料理がありました

これらを提供するレストラン?では
「とても美味しいと評判ですよ」

 IBMの上級副所長ジョン・ケリー氏は
 「どんなに優秀な人でも、全ての情報には対応できない。
  AIはそこを補ってくれる
  2050年には、人間はこの相棒なしには生活できないだろう」
 とまで言っています

 松尾氏は
 「AIは固定概念が無いんですね、
  使っちゃいけないのがないので、色んな素材を並列で扱う。
  だから人が思い付きもしないようなレシピを作れる」

 徳井さん
 「笠原さんは経験もたくさんおありだと思うんですけど、
  ありとあらゆる料理を考えててきて、縛りみたいなのは出来てくるんですか」
 笠原さん
 「うーん、結局自分の知ってる味の組み合わせですからね。
  これとこれは相性がいいなとか、習ってきた方程式みたいなのとか、そういうのはありますね」
 徳井さん
 「それなら一切の方程式を取っ払えば美味しくなる、てことはありますか」
 笠原さんは
 「僕の師匠が言ってたのは、根拠がないとダメだ、と」
 例えば、たまに料理が下手でも何となく作ってたまたま上手くいく時がある、
 しかし野球でヘタな人がたまたま打てるのと同じで、
 料理はそれではダメなんじゃないか、と思うそうです
 「だからAIも、学習して確実にこうすればこうなると分かって作ってるのか
  それとも何となくデータを入れて当てはめたらこうなったのかを知りたい」

 先程のワトソンシェフが作ったレシピ本も出ているそうです  「Corrective Cooking with Chef Watson」
 英語版で日本語版は無いのかな?見てみたい気もします…

○人間の感覚に近い味覚センサー
 松尾先生は、AIも学習を重ねればレシピ作りも上達するのではないか、というご意見だそうで
 徳井さん
 「いずれはAIも、人間を唸らせるようなレシピを作れるようになると?」
 松尾氏
 「そうですね」
 徳井さん
 「じゃあ、笠原さんがAIに負けるということでよろしいすね?」(笑)
 松尾氏
 「(笑)…答えにくいですね、
  笠原さんには勝てないと思いますけど、
  笠原さんの下で働く人たちの中には勝てる可能性があるということです」

 味覚は五つの味、
 「甘味、塩味、酸味、苦み、旨味」
 からなる、とされているそうです

 ここで、味覚センサー開発者の鈴木さんが登場していました
 徳井さんと笠原さんの前にコーヒーを置いて
 「まず味わってください」

 笠原さん
 「…いわゆるブラックですね」
 鈴木さん
 「どの味が強いですか」
 徳井さん
 「いわゆる苦味?」

 鈴木さんは
 「お次は、砂糖を2杯いれていただいて…」
 徳井さんは
 「飲まなくても結果は分かってるんですけどね、40過ぎてますし」とブツブツ言いつつ飲む(笑)
 鈴木さん
 「どうですか」
 徳井さん
 「甘くなって飲みやすくなってます」

 鈴木さん開発の味覚センサー「レオ」 がこの味を分析していました。
 味覚センサーは、5つの味の組み合わせを分析し、
 五角形のグラフで示すのだそうですが
 普通のセンサーでは、
 砂糖をいれようが入れまいが「苦味」の数値は変わらない

 「基本的に濃度は変わらないんで…
  でも人間が飲むと、甘さが入ると苦味が薄くなったように感じますよね」

 鈴木さんは、こういう人間の感覚に近いセンサーを開発できないか、と言っていたら
 たまたまAIの研究者が近くにいたので、
 共同でAI味覚センサーを作ることになったそうです

 レオの味覚センサーで味覚を測ると
 砂糖を入れると、甘味数値が増えるのはもちろんだが、
 苦味成分の数値も減っていました

 松尾氏
 「人間がどう感じるか、例えば苦味が減るとかは、どうやって測定してるんですか」
 鈴木さん
 「そこは学習させるんです」
 人間に味覚評価のアンケートを取り、そのデータを入れて学習させるのだそうです

 徳井さん
 「これからどういう研究を?」
 鈴木さんは、味覚のトレンド予測に使えないか、と考えているそうです
 「美味しさにはトレンドがあるんですね、10年前と今は好まれる味覚が違う」
 鈴木さんは、この研究を20年30年続ければ、
 その時代時代のトレンドの味が蓄積される、
 そうなると次の年に何が流行りそうか予測できるかも…
 という話をしていました

 「人間は飽きるんで、常に新鮮さを求める、
  でも新鮮すぎても警戒してしまう、
  新鮮さと警戒との真ん中を予測するのは難しいですけど
  分かるようになったら面白いなと…」
 たしかに流行りもののスイーツや料理などは時代により変わりますね。

○画像からレシピを予測する
 徳井さん
 「笠原さん、見たこともないような料理が出されたら、それを再現できますか」
 笠原さん
 「味見できるなら、ある程度はできると思います」

 徳井さんは松尾氏に
 「AIにはこれが出来るものがあるんですよね?」

 このAIは、料理画像を見てレシピを推定するのだそうです
 松尾氏
 「例えば徳井さん、この画像の料理はどんな材料だと思いますか」
 と言って示した写真は、
 軍艦寿司みたいな料理で
 具として赤い海老みたいなのと菜っぱが載っています
 徳井さん
 「酢飯と海苔ですよね…。あと海老と…」
 笠原さん
 「菜の花」
 徳井さん
 「それから白子?」
 というわけで「海老と菜の花と白子の軍艦」
 笠原さんは
 「でもビジュアルだけだと分からないですね、
  例えば軍艦ももしかしてシャリはシャリじゃないかも…
  AIもそこは分からないですよね」
 と鋭い指摘。

 実際にAIが推定したレシピでは
 「す飯、海苔、サーモン、アボカド、クリームチーズ」を材料としていました

 笠原さん
 「菜の花が緑だからアボカドなんですね、ダメですねAI」(笑)
 徳井さん
 「これアメリカだからアボカドなんですかね?」
 松尾氏
 「そういうのはあるでしょうね、
  料理は文化的な差異が大きいので、日本とアメリカでは全然違うでしょうね」

 次はげんこつハンバーグにとろけるチーズ、サラミかドライトマトが乗っているような料理。
 徳井さんは
 「スイーツ?」
 笠原さん
 「僕は一瞬ピザかと」
 徳井さん
 「あー、甘くないかもしれないですね、
  ハンバーグにチーズのっけて、…トマト乗せたような」
 笠原さん
 「僕はサラミかと思いました」

 AIは「螺旋状のパスタ、サラミ、ひき肉、ピザチーズ、モッツァレラチーズ、乾燥パセリ、オニオンパウダー」という材料を出していました

 徳井さん
 「イタリアンな料理と思ったのかな?」

 松尾氏はこのAIについて
 「巨大なデータベースを使って学習しています」
 このAIは、色んな料理の写真のデータを入れて学習させることで、
 画像からこれは何の料理かを分析できる
 また、レシピのデータもたくさん入れることで
 分析した画像から、ありそうなレシピを探し出せる。
 今のところ6割くらいの正答率なんだそうです。

○ディープラーニングの過学習を防ぐ方法
 これらの学習はディープラーニングにより行われるが
 松尾先生がそれについて解説してくださいました

 料理の画像が入力されると、何の料理かが出力として出される
 AIはこの学習をしていくとき、ネットワークの太さを調整していく

 しかしこのとき
 「過学習(overfit)」
 が起きると上手く学習できないんだそうです

 過学習とはなにか?
 松尾氏は
 「勉強のとき、
  練習問題で100点だけど本番で20点とる人と
  練習問題で80点、本番で70点の人とどちらがいいですか」
 徳井さん
 「本番で点とれる人」
 松尾氏は
 「じゃあ本番で20点の人はなんでこんなことになったと思います?」
 笠原さん
 「…本番に弱いタイプ?」(笑)

 徳井さんは
 「んー。訓練の仕方が間違ってるんでしょうね」
 松尾氏
 「その通りで、こっちの人は、問題と答えの組をそのまま覚えてしまうんですね」
 しかし本番は練習とは問題が違うので、
 そのまま丸暗記しても応用が効かない
 「本番でもできるためには、
  練習を丸々暗記するんじゃなくて、
  ポイントをつかんで抽象化して、
  問題と答えの関係を見つけないといけないんですね」

 過学習はそれができないので問題がある。
 しかし、この過学習を防ぐ方法はいくつかあるそうです

 ニューラルネットワーク研究で有名なトロント大学のジェフリー・ヒントン氏は
 AIに画像を見せてその説明文を表示させる学習について
 「ニューラルネットワークは何層にも渡るが、
  目標は画像から説明の一文を導くことです」

 この学習の際、ニューラルネットワークは、説明のタグつきのたくさんの画像を見て学習するが
 その際
 「Rectified Linear Unit」という新しいニューロンを使ったネットワークと
 「ドロップアウト」という新しい学習法を使っているそうです

 これについては松尾先生が
 「解説しますね」

 まず「Rectified Linear Unit」
 これはReLUとも言うそうですが
 ニューラルネットワークは、人間の神経細胞を模したものだが、
 神経細胞は刺激が一定の値(閾値)を越えると発火するようになっている

 このため従来のニューラルネットワークでは、
 マイナスからプラスへ刺激が増大していくとき、
 刺激がある一定の値になるまでは0、一定の値を越えると1になるように関数を設定していた
 これをシグモイド関数、というそうです

 しかし最近では、刺激xがマイナスの時は出力yが0、
 xがプラスの時はy=xになる関数(Max(0,x))にしているそうです
 (これをRectified Linear Unit、正規化線形関数、ランプ関数、と言うそうです)

 「これは神経細胞からしたら、刺激が大きいほど無限大になるからおかしいんですけど、
  これがうまくいくと分かったので使われている」

 (シグモイド関数、は色んなサイトで説明がありますが
 https://mathtrain.jp/sigmoid
 に式とグラフがあって分かりやすかったです
 シグモイド関数は、式にするとy=1/(1+eの-x乗)
 (文章で書くと分かりにくいですね…)
 グラフにすると、xがマイナスの無限大(グラフの左の方)ではyが0に限りなく近づき、
 xがプラスの無限大(グラフの右の方)ではyが限りなく1に近づき、
 その間はSの字を右斜め上にクイっと引き伸ばしたようなグラフ。

 一方神経細胞が刺激を受けて発火する様子を関数、グラフにすると、
 刺激をx、発火をyとすれば、
 xが閾値になるまではyが0、
 xが閾値以上ならyが1、
 という不連続なグラフになる。

 しかし実際は不連続な関数だと扱いにくいので、
 これを連続なシグモイド関数で近似させている、ということらしいです。

 一方ReLUはこれとは違う形なのだが、
 2011年、Xavier Glorotさんらがこの関数を使う方がいい、と発表したんだそうです。
 数学的な根拠もあるみたいなんですが
 (確率の総和とかなんとか言う話だが、長すぎて理解不能…)
 ジェフリー・ヒントンさんたちのネイチャー論文によれば、2015年5月現在これが最善としているそうです)

 「ドロップアウト」については
 「過学習というのは、重要じゃないところも丸々覚えちゃうからまずいんですね」
 そこで、ドロップアウトでは、
 学習させるニューロンの半分をランダムに消して、
 わざと少しのデータで予測させる
 そして、消し方をランダムに色々変えて学習させる、ということを繰り返す

 すると、細かいところまでいちいち覚えていたら答えが合わないので
 だんだん本質的な特徴だけ引き出せるようになるそうです

 うまく過学習を防ぐのを正則化、というそうですが
 ドロップアウトなら正則化できると分かってきたそうです

○過酷な環境の方が学習できる?
 過学習を防ぐ方法はほかにもいくつかあり
 例えばわざと汚い画像にして学習させる、というやり方もあるらしい
 人間と同じで、過酷な環境の方が力が磨かれるのか?

 徳井さん
 「笠原さんどうですか、料理人もあえて過酷な環境に身をおいたりするんですか」
 笠原さん
 「そもそも料理の修行が過酷ですからね」(笑)
 徳井さん
 「悪い食材を使うこともあるんですか」
 笠原さん
 「わざと形の悪い大根で桂剥きの練習することはありますね…
  悪いのが当たっても器用にできるように、とか」
 徳井さん
  「先生、これはドロップアウトに近いですね」

 徳井さんはまた
 「僕の場合はお笑いのとき、わざわざ滑ってお客さんを引かせて、
  冷えきってる状態でネタを始めることがあって、
  ある意味快感になってるんですけど…」(笑)
 松尾氏
 「(笑)…それは、次に上手くやったらリカバーできるのがある程度はあるからですか、
  わざと窮地に追い込むというか」
 徳井さん
 「そこは感覚的にやってるんですけど、
  次にテンションの冷めきったお客さんの前にいきなり出てきたときに上手くできる、
  とかはあるかもしれないですね」

 笑うお客さんを半分にすることで、お客さんの笑いのツボを探す学習ができる、てことなんですかね?

○目で見て行動できるAI
 松尾氏は
 料理のディープラーニングは、
 自動運転や医療診断に比べ、
 まだ学習データが少ないこともあり、まだ実用化段階ではないが
 「料理もデータが増えたら人間を越えるはず、
  と僕は思っています」とのこと

 すると、次に起こるのが、深層強化学習とロボットの組み合わせ、なのだそう。
 深層強化学習は認識を行い、ロボットは実際に動作する
 つまりAIが目で見て、次どう動くかを自分で考えて動けるようになるらしい

 第1回?で出ていたピッキングロボットは、目で見てつかみやすそうな所を探してつかんでいたが
 これが色んな分野でできるようになるとのこと
 今のところ応用が考えられているのは
 農業、建設、食の3つの分野だそうです

 「これらの分野は今人手不足で、社会的にも困っている」
 例えばファミレスは人手不足だが
 それは調理には人間の目でみる過程がどうしても必要だったからで
 調理機械があったとしても補助的にしか使えなかった

 しかしこれがAIで自動化されれば可能性が広がる、とのことです
 「日本の食のレベルは高いけど、海外はそうでもなかった、
  しかし日本の技術をロボットにのせて世界に発信できれば
  世界に職人が増えることになり、これは新しい産業になると思います」

 笠原さん
 「うーん、でも複雑ですね…
  料理人が要らなくなるのは寂しいというか。どこまでAIにやらせるのか」

 しかし松尾氏によると、
 AIに任せるのはそこそこのレベルの料理で、
 レベルを上げるための教師データとして、
 ハイレベルの料理人はやはり必要だと話していました。

 私も一瞬、ロボットやAIが人間の仕事を奪うのか?
 と思ってしまったんですけど
 生身の人間の提供する学習データがあってこそのAIなんですね…

○味覚はミステリアス
 フランス料理人の生江史伸さんは
 「定点観測」
 という料理を提供しているそうです
 これは一年同じレシピ、素材で同じ料理を作るもの
 野菜自体は季節により味わいが変わるので、
 その変化を同じ料理法で楽しんでもらおう、というコンセプトだそうです

 彼はイベントでAIの作ったレシピ本の料理を作ったことがあるそうですが
 味覚について興味深い話をしていました
 「AIは予想したことない、食べたことのないものを提案し、
  新しい経験をさせてくれる」
 とは言うものの
 「しかしAIは仕上げまで責任はもっていない」
 奇抜なアイデアはAIに提供できても、
 最終的に人が食べて美味しい、と思える形にできるのはやはり人なのだそう

 そして、
 「まだまだ味覚はミステリアス」という話もされていました
 味覚は5つの味だけでは表現できず、
 環境や一緒に食べた人など、色んな要素が偶発的に混ざって美味しい、と感じるもの。

 人間はそういう、多角的に感じたものを料理におとしこむ力がある、とのことです。
 例えば寒いときには、暖かいものが食べたいから鍋にしようなど、
 ベースを知った料理、環境にあった味を出せる

 しかしAIにはそういうベースがないから
 いくら美味しいものを出しても、食べる人にとってはその時美味しい味ではないかもしれない

 感情的に美味しい、と思うものとは一番複雑怪奇で、
 レベルが一番高いところにあるんじゃないか、
 …という話をしていました

 笠原さんは彼のVTRを見て
 「ラーメンやの流行ってるところは、
  美味しいよりクセがあるよね、
  と料理人の間では言ってるんです」

 「美味しいものは作れても、それは美味しいで終わっちゃう。
  行列ができるような店はなんか臭いとか油っぽいなどクセがある」
 つまり常習性、があるんだそうです

 徳井さん
 「そこはAI、難しいんでしょうね…」
 松尾氏
 「たぶん、記憶に残るんでしょうね」
 クセがあると、何かのきっかけで思い出しやすいが、
 単に美味しいだけだと、バランスが良すぎて記憶に残らないんだろう、とのことです

○2分で分かるディープラーニング
 映像でディープラーニングを理解するコーナー、
 第10回は「分かると作れる、作れると分かる」

 今回は、ニューラルネットワークは画像(猫の写真)から概念(「ネコ」)を学習すると、
 逆もできるようになる、という話でした

 学習のときは、画像を入力、概念を出力とし
 その途中で猫の特徴を抽象化して抽出する

 抽出化がマスターできれば、このネットワークは逆方向に流すこともできる
 このため
 「ネコってどんな姿?」
 と質問したら猫の画像を出せるようにもなる、という話でした

○人間ってナンだ?
 笠原さんは
 「アナログ」とボードに書いていました
 「いつの時代でも、隣の家からカレーの匂いがしたらカレー食べたい、とか
  露店のとうもろこしの醤油の匂いで美味しそうだな、てのありますよね…」

 徳井さんは
 「腹が減る」と書いていました
 「人間は腹が減るけどAIは腹が減らない、
  AIにもグーって腹がなる感覚が分かってきたら、美味しいのを作れるんかなぁ」
 と話していました

 松尾氏は
 「食は人間の感情や、本能のなかでも一番重要だと思います。
  美味しいものを食べたいのは、人間の根元的な欲求で
  何千年も続いてきたもの、これは大きいと思います」

 そして
 「これは高齢化になっても大きいものになると思う、
  たとえば健康上で理由で食べるものに制限が出ても、
  それでも美味しいものを食べたいというニーズはやっぱりあるんですね」

 食への需要は時代が進んでも常にある、ということですね。
 だからこそ
 「日本の技術を世界に向けて提供できれば、日本にとっても大きくなる」
 食のAI化は、これからの日本の強みになるのではないか、とまとめていました

○感想など
・AIレシピ、面白そうなので日本語版もあれば見てみたいです。
 最近は焼きそばにチョコレートとかショートケーキ味とか、あり得ない~っていう商品もたくさんありますけど、
 新しい商品開発の参考にもなりそうですね。

 また、日本のAIが生むレシピ、アメリカのAIが生むレシピ、など、教師データにより生まれるレシピにも個性が出そうだなとも思いました

・「わざと汚い猫の画像を見せて学習させる」という話では
 アモーダル補完だっけ?人間の視覚の補完機能についての話を思い出しました。

 これは人間が、ものとか風景などの一部が隠れて見えなくても、
 脳のなかで見えない部分を補完する機能。
 (Eテレの「0655」という番組の「そうとしか見えない」という曲のミュージックビデオでこれをやってるんですけど
 なかなか面白いです)

 これは、少ないデータでも抽象化できているから残りを想像できているわけで、
 AIのドロップアウトは、この機能を訓練しているようなものなのかな、と。

 人間はまだ赤ちゃんだと、親が見えないと本当にいなくなったと思って泣き叫ぶので、
 こういう機能はまだ無いんだろうと思われる。
 AIも、人間の子供みたいに経験を重ねて身に付けていくんかなと思いました

・深層強化学習の認識+ロボットの運動機能、で、
 目で見て動ける人工知能が作れる、という話も興味深かったです。

 人間の脳には、人の行動を見たら同じように真似して行動できる機能がある
 (ミラーニューロン)
 と聞いたことがあります。

 ミラーニューロンの研究によれば、
 人の行動を見たとき活発になる脳の部位を調べると、
 自分が同じ動きをしているときの運動野も活発になっているそうなんですけど、
 認識のニューラルネットワークと運動のニューラルネットワークを連動させるとか、コピーさせるようにすれば
 AIでもミラーニューロンみたいなのを再現できるんかな~、とか思いました。




認識+動き、で、何かあったときどう動くべきか判断して動くロボットは作れるようになるかもしれないが
自律的な動きをするにはやはり経験、データが必要なのかな

・そこそこレベルの料理人がAIで再現できても、トップレベルの経験、味覚のデータとしてやはり人間の料理人は必要だという松尾先生の指摘と、
 フランス料理人さんの「人間は環境、雰囲気、感情に味覚が左右される」という指摘にはなるほどと思いました。

 体を動かして経験を蓄積することや、
 総合的な判断、方針を決めるなどはやはり人間が勝るのかな。

 将来的には、
 経験は人間が提供、
 その分析をしてベストな選択肢を提示するのがAI、
 それを見てその場の空気とかも考えて最終的に判断するのが人間、
 みたいな、
 AIと人間が協調、融合した使い方ができたら面白いのかなと思います。

色々勉強になりました。
というわけで今回はこの辺で。

2017年12月08日

Eテレオイコノミア「もっと便利に!タクシーの経済学」

Eテレオイコノミア「もっと便利に!タクシーの経済学」

今回はタクシーの経済学。
講師は坂井豊貴先生でした。

タクシーは全国で24万台、利用者は年間14億人(延べ人数)もいるんだそう…
個人的には、タクシーってぜいたく品というか
うん十年生きてきて10回も使ったことないと思う…
しかもうちの周り田舎だし、タクシーって電話で呼ぶもの、って感じなんですけど(笑)
というわけで外国の話のような気分で見てました。。

○今回のゲスト
 今回のゲストは千鳥。又吉さんの先輩芸人コンビです。
 先生は
 「タクシードライバーの漫才をやられる方ですよね?」
 という通り、丁寧すぎるタクシードライバーがネタの漫才をされています
 (関西では割と前からいろんなところでお見掛けしてましたが
  M-1出たくらいから全国的にブレイクされたのかな?)

 大悟さんはタクシードライバーの漫才について
 「本当にそういう人いるから、モデルにしてネタを作ってる」とのこと。
 又吉さんも
 「丁寧な人もいるし、横柄な人もいますよね」
 
 しかし、タクシードライバーの仕事って何をしているのか?
 そこで密着取材していました
○タクシードライバーの一日(前半)
 取材したのは、大手タクシー会社のタクシードライバー
 この会社は450台のタクシー、1200人のドライバーを有するそうです。1日を追っていくと…

 ・午前6時、車の整備点検
 ・整備場が忙しく動いているくらいにドライバーさんが出勤
 ・ドライバーさんは制服に着替え、呼気のアルコール量をチェック
  出勤退勤時にチェック、少しでもあればその日は乗れないそうです。
 ・ドライバーが事務所に集合、
  運行管理者の呼び掛けで点呼し、目標金額や注意事項を確認

 ・出発直前にドライバーが自分の車の点検
  18ものチェックポイントがあるそうです

 ・午前8時50分出発

 ここで取材では、東條さんという10年目の優良ドライバーに密着していました。
 この日は午前3時まで働く予定で、次の日はお休みだそうです
 変則勤務は大変そうですが
 「体が馴れれば大丈夫です」

 この日の目標金額は6万円だそうです
 ちなみに、この会社では基本給+歩合給の賃金体制で、
 お客さんを乗せるほど自分の儲けになる仕組み
 会社の売り上げの6割がタクシードライバーの給料になるそうです

 東條さんはお客さんには必ず
 「私○○タクシーの東條と申します」と礼儀正しく挨拶しています
 「気を付けることは?」と聞かれ
 「乗り心地がどうかな、というのと、
  第1印象が大事なので、臭いをさせないこと」などと話していました
 また、降りるときは忘れ物がないかチェック
 傘やスマホなどは忘れやすいそうです

 ・11時、病院の前に行く
  午前の診察を終えた人が並んで待っていたりする
 このように、曜日や時間帯、天候などでニーズを見極めるのだそうです。

 ・お昼、営業所で食事
 ・1時間半の仮眠をしたあと再び出発
  …午前中はここで終わり。

○日本のタクシーはドライバーや会社を選べない
 取材のVTRを見て、ノブさん、大悟さんが
 「東條さんはいいですね」
 「選べるならあの人の車に乗りたい」と話していました

 先生は
 「運転手が分かっていたらいいですよね。
  僕が苦手なのは、クイズ出してくる人です」(笑)
 3人も
 「話したくないときもありますよね」
 と頷いていました

 先生
 「日本のタクシーは流しが中心で、選べないんですよね」
 タクシーをつかまえるには
 ・取り合えず来た空車に乗る
 ・駅などで順番待ちする
 どっちにしても、乗客は来たものを受け入れるしかない
 先生は
 「このため、タクシー会社はせっかくサービスを差別化しても
  価格に反映されず、他社と差がつきにくい」
 と話していました。

○タクシーの料金規制
 又吉さん、千鳥のお二人はタクシーはよく使われるそうで
 「タクシーの移動が多いと、料金が気になりますね」
 という話をしていました
 大悟さんは
 「2~30分乗るだけで8000円いくからね」
 又吉さん
 「8000円やったら新幹線なら大阪まで行けますね」
 しかし、高いが無いと困る場合もある。

 ではなぜこんなにタクシーの運賃は高いのか?
 先生は
 「タクシーの運賃には規制があるからです」

 日本では、国が全国98のブロックに分けて
 そのブロックごとに料金を決めているそうです

 例えば東京23区ではA、B、C、D4段階の値段設定があり
 Aは初乗りが410円、その後は237mごとに80円加算
 Bは初乗りが400円、その後は243mごとに80円加算
 Cは初乗りが390円、その後は249mごとに80円加算
 Dは初乗りが380円、その後は256mごとに80円加算
 各タクシー会社はいずれかを選んで申請するが、
 大概は上限のAを選ぶのだそう

 では、タクシー運賃にはなぜ上限、下限があるのか?
 これは、
  上限があるのは不法な運賃つり上げを防ぐため
  下限があるのは値下げ競争が起きないため …のようです。

 お客さんにとっては安い方がいいから、下限は要らない気がするんですが
 運送業者の場合、値下げ競争が起きると、
 コストを下げるために安全管理がおろそかになる可能性があり
 これは危険につながるのだそうです

 先生は
 「値下げ競争は底辺への競争、ともいいます」
 又吉さんは
 「牛丼屋にもありましたねぇ」
 ノブさんは
 「でも戻ったよね」
 と話していました。
牛丼屋でも戻ったってことは、食べ物もあんまり安いと安全性に問題が出てくるのかな?

○台数にも規制がある
 先生は
 「料金に規制があると、
  会社としてはパイを奪うため、台数を増やすことを考えるかもしれない」

 しかし会社はそれで儲かるが
 過剰にタクシーが増えると運転手一人あたりの売り上げは下がってしまう
 また、道路や駅前にタクシーがあふれてしまう、つまり供給過剰になる
 先生
 「このため、台数にも規制があるんです」

 タクシードライバーが安くこきつかわれないようにするためと、道路の混雑解消のため、
 あんまりたくさんの台数にならないようにしているんですね。

 大悟さん
 「会社はそれでも儲かるの?」
 先生
 「歩合制だからです」
 お客を乗せれば乗せるほど給料が上がるから台数が無くてもドライバーが頑張る、ということかな?

 先生は
 「お笑い芸人の世界も同じじゃないですか?」
 大悟さん
 「そうか、吉本そうや」
 ノブさん
 「芸人増やしてシェアするんやね」
 大悟さん
 「みんなが稼げば大元に入るお金は増えるんだ、
  でもみんなは少しずつ…」
 又吉さん
 「一年目の子とかほとんどギャラが貰えないですもんね」
 (…でも芸人の場合、実力で差別化されるので、低賃金からの脱出は可能だそうです)

○タクシードライバーの一日(後半)
 さて場面は変わり、タクシードライバーの東條さんの密着続きです

 ・22時、夜の繁華街に行く
  金曜日なので会社などの打ち上げが多いそうです
  案の定、二次会のお店への移動などで待っているお客さんが多い
 
  しかし飲み会移動だと、近距離なのであまり稼げない
  そこで流しでお客さんを探すがあまりいない

  …と思ったら、タクシーチケット利用の方がいました
  タクシーチケットだと長距離利用が多いそうで、
  このお客さんも首都高速に入り、7000円越えしたんだそうです
  (ってことは7000円もタクシーに使う人、いるんですね!)

 東条さんは、オフィスビルの明かりを見て、
 ついていたら残業のお客さんがいるだろう、と思うそうです

 ・夜中の2時半、最後のお客さんを乗せる
 ・2時50分に営業所に帰り、洗車
 ・売り上げを納金
  この日は目標を上回る8万円だったそうです

 東條さんは
 「身近な所で接客して、喜んでいただける、
  込み上げるものがあるのが忘れられなくて続けている、
  これからも頑張ります」と話していました

 VTRを見てノブさんは
 「ドライバーにもテクニックがあるんだな、ビルの明かりで読むとか…」
 大悟さん
 「東條さんは相当スキルが高いんでしょうね。
  でもほんまにドライバーさんのおかげで助かった、てのありますよ…」

○ライドシェア
 というわけでありがたい存在のタクシーですが、
 最近はタクシー業界も厳しいそうで
 利用者は減少中、
 ドライバーも1992年のピーク時には年間378万人いたのに(たぶんバブルのころですね)
 今は減って288万人だそうです

 さらに海外では、ライドシェアというサービスが新たに生まれ
 タクシーにとって脅威となっているそうです

 先生
 「又吉さん、ライドシェアはご存知ですか」
 又吉さん
 「同乗ですか?」
 先生
 「惜しい。
  シェア、というのは自家用車をシェアするんです」

 ライドシェアでは、一般の人が車を貸して、運転をする仕組みです
  ・乗りたい人はアプリを立ち上げて、
   移動先や車種などを指定する
  ・一方車を持っていて手が空いている人は
   送迎により報酬を得られる
  …これらの両者をIT技術によりマッチングするサービスが
  ライドシェア、なのだそう

  ちなみにドライバーには評価システムがあり
  その星の数でユーザーはドライバーを選ぶことができる

  ライドシェアは日本では禁止されているが、
  世界80か国で行われているそうです

 先生によると
 「ライドシェアはタクシー会社にとっては黒船みたいなもの、
  ビジネスモデルがタクシーとは根本的に違う」

 というのは、
  タクシー会社では車やドライバーは自分持ち、自前で管理する
  一方ライドシェア会社は、車も運転手も市場から調達する
  彼らは、アプリのプラットフォームを提供するだけ

 つまりコストがかからないんですね。

○レーティングシステム
 又吉さんはライドシェアについて
 「でも怖くないんかなあ」
 大悟さんも
 「女の子とか怖いかもね、何者か分からんし」
 先生
 「運転手を信頼していいかという不安はあります」
 そこでレーティングシステムがあるが
 「それなら、優れたレーティングシステムがあればいい。
  どうですか、レーティングシステムは信用できますか」

 ノブさん
 「半信半疑なところはありますよね、
  自分で書き込んで星たくさんにするかもしれんし」
 又吉さん
 「たくさんの人の判断ならいいけど、5、6人だと不安かも」

 しかし、先生は
 「実は優れたやり方があるんです、
  それは「majority judgment」マジョリティ・ジャッジメント」

 多数派診断法、とも言うそうですが
 先生は
 「でもなんかしっくりこないので「majority judgment」!」
 響きがカッコいいんだって(笑)

 さて名前はともかく、
 やり方を簡単な例で説明しています

 「レストランノブ」と「大悟食堂」という2つのお店がある
 それらの評価を見ると
 「レストランノブ」
  5(とても良い)…1つ、4(良い)…3つ、3(普通)…1つ、2(悪い)…3つ、1(とても悪い)…1つ
 「大悟食堂」
  5(とても良い)…4つ、4(良い)…なし、3(普通)…なし、2(悪い)…2つ、1(とても悪い)…3つ

 あなたはどちらの飲食店を選ぶ?

 又吉さん
 「ぱっと見、大悟食堂が「とても良い」が4つありますよね」
 ノブさん
 「でも「良い」と「普通」がないな。うさんくさい」
 先生
 「たしかにサクラが多そうですね」
 ノブさん
 「「とても良い」4つてのも、
  「悪い」「とても悪い」が多いからヤバイとなって、自分で「とても良い」を増やしたのかも」(サクラ?)
 大悟さん
 「でもノブの方も、知り合いに俺のとこに「悪い」を入れさせたのかもしれないよ」(嫌がらせ?)

 …というわけでどれを信用したらいいのか分からない。
 では「majority judgment」はどう判断するのか?

 これは至ってシンプルで、中央値を取るのだそうです
 この場合は9人ずつの評価なので、いい方、あるいは悪い方から5人目の評価を見る

 するとレストランノブは「普通」
 大悟食堂は「悪い」

 ノブさん
 「ということは、一見大悟食堂がとても良いが多いけど、
  悪いになってしまうんですね」
 大悟さん
 「でもこんなことし出すと、
  何でも平均のふわっといいものになってしまって、個性が…」
 先生
 「そうですよね、僕もそう思います。
  でもそもそもレーティングシステムは大体の良さがわかればいい。
  本来尖ったものとか個性的なものは、レーティングシステムで探すべきではない」
 個性的なものは自分の感性で探せ、ってことかな。

○タクシーの新しいサービス
 最近では、タクシーも変化しつつあるそうです
 ・スマホでの配車サービス
  タクシー業界にもIT化の波が来ているそうで
  2011年にはスマホでの配車アプリが始まっている

  坂井先生の案では
  配車アプリとレーティングシステムを組み合わせれば
  タクシー業界にも活路が見いだせるのでは、とのことです
  「配車アプリにレーティングシステムがあれば、
   利用者もタクシー会社を取捨選択できるようになる。
   そうなると規制緩和して、市場が選ぶことが可能になってくる」
  そうするとタクシー会社もドライバーもご指名制になって、
  サービスで差別化をはかることもできそうですね。

 ・前もって運賃が分かるサービス
  また、お客さんが乗る前に、
  目的地までの運賃が分かるサービスの実験も行われているそうです
  (2017年8月~10月実証実験済)

  これが実用化すれば、乗る前の運賃の不安が解消される、とのことで
  大悟さんは
  「これはずーっと欲しいと思ってました、
   ナビがついてんのになんで金額出してくれんのよ、と」
 たしかにそう。値段が分からないから乗るのためらわれる、ってのある。

  又吉さんは
  「遠回りする運転手さん、絶対いますよね」だそうです。
  「どちらからいらっしゃいましたか、てのは気を付けた方がいい」
  大悟さん
  「俺らみたいに方言丸出しやったりすると…」

  又吉さんは遠回りされたことがあるそうで、
  「前にいつも通ってて、最短ルートも知り尽くしてる所に乗ったら、
   遠回りされたんですよ。
   それで降りるときに運転手さんに「わざとですか」て聞いたら
   「すんません」って」(笑)
  ノブさん
  「認めたんだ」
  又吉さん
  「「○○通りの方が速かったですかね」って。
   いや知ってるやん、て」(笑)

 ・知らない人との相乗り
  先生
  「さらに、今検討されているのは、知らない乗客同士の相乗りです」
  大悟さん
  「それはいらんな…」
  先生
  「要らないですか、でも値段を下げたい人にとってはいいんですね」

  又吉さん
  「相乗りの場合、料金の分担はどうなるんですか」
  先生
  「気になりますよね、
   それをこれから、経済学の費用分担理論からお見せします」

  例として
   お台場→汐留→六本木→赤坂  のルートを考えていました

   このルートでタクシーに又吉さん、ノブさん、大悟さんがお台場から相乗りする
   最初に又吉さんが汐留で降り、ここまでで3000円
   次に残った2人で乗り、六本木でノブさんが降り、ここまでで6000円
   最後に大悟さん1人で乗って赤坂で降りる、ここで9000円

  さて3人の分担はどうなるか?

  ノブさん「3等分?」
  又吉さん「でも僕は汐留までですよ」

  …などともめた末
  又吉さん
  「汐留までの3000円は3人だから、それぞれ1000円、
   そこから六本木までの3000円をお2人で割って1500円だから、
   ノブさんは合わせて2500円ですよね、
   大悟さんは残りの5500円でしょ」
  ノブさん
  「おお、なんかしっくり来るな」

  先生
  「又吉さん、お見事です、正解です」

  これを経済学では「シャプレー値」というそうです
  シャプレー値、とは
   協力した人で利益や損失を公平になるように分担する方法、
  (ロイド・シャプレーさんが考えたのでこの名前らしい)
   タクシーの場合は、協力して安くできた分を公平に分配する方法だそうです

  (シャプレー値、はゲーム理論の一つだそうです。
   貢献度、利益、損失などを客観的に数値化することができるので、
   交渉事などには便利なようです
   http://gametheory.jp/page.php?id=84
   (「ゲーム理論入門」というサイト)
   では、会社の合併による貢献度を金額で示す、というやり方が書いてありました。
   普通の合併交渉だと、大会社が、小さい会社の貢献を一方的に持って行ってしまうことが多いが
   この方法であれば、互いの貢献度を正しく認識、主張できるのだそうです。
   このように、貢献度、利益、損失などを認識する方法を知っておく、というのは
   何かと便利そうですね)

  しかし大悟さんは
  「わしが最後やからかなぁ、なんか納得いかんな」と不満そう。
  「もしかしてお台場から直接赤坂行ったら、
   9000円より安かった可能性もあるわけでしょ?」
  ノブさん
  「めんどくさいなこいつ」(笑)

  先生は
  「ノブさんがめんどくさい、と言っていただいてありがたいんです、
   それを考えるとめんどくさいんですよね…」(笑)
  この場合、別のルートのシャプレー値も出して、合わせて考えないといけないそうです
  又吉さん
  「それなら、別ルートの値段とも比べて、
   5500円が大悟さんの納得できるくらい安ければいいんですね」

  先生によると、
  この相乗りシステムは2017年度中に実証実験の実施予定だが、
  まだ料金システムは決まっていないそうです

  先生
  「又吉さん、もしこのシステムがあれば使いますか」
  又吉さん
  「うーん…」
  大悟さんは
  「使うわけないやろ」「この男が知らん人と相乗りして帰るわけない」
  とボロクソに言ってましたが(笑)
  
  「週刊誌が写真とりにくくなるかもね。
   誰と乗っても相乗りです、て」
  「そういう逃げ方ができるんかな」
  という話をしていました

○まとめ
 又吉さん
 「どうでしたか」
 ノブさん
 「色々勉強になりました
  タクシー会社とわが吉本が似ているとか…
  運転手さんの頑張りも…」

 又吉さん
 「色んなことが変わっていきそうですね」
 先生
 「日本もタクシーが流し主体じゃなくて、会社主体になると、
  差別化をはかるための色々なアイデアが沸いてくると思います」
 とまとめていました

〇感想など
・ライドシェア、は
 ・利用者にとっては配車が楽、タクシーより安い
 ・電子マネーが使えるので支払いが楽
 ・車と労働提供者にとっては、空いた時間の小遣い稼ぎになる
 といいことづくめに感じるんですけど、
 何かデメリットはあるのかなと思って調べてみました

 http://money-academy.jp/uber-trouble-taxi/
 (「それでもあなたは利用する?トラブル続きの配車サービス「Uber」」という記事)
 http://boss-online.net/issue-2017-10/article-1114
 (「問題山積のライドシェア 断固反対を訴えるタクシー業界」という記事) 
 https://crediblecar.life/technology/uber-stop-rideshare/
 (「Uberが停止した「ライドシェア」はトラブルの元?それとも社会構造を変革する救世主か」という記事)
 https://share.jp/interview/rideshare-sabetto-interview/
 (「ライドシェアが普及しない理由とは? 社会的背景と国民性を探る」
  一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長である佐別当隆志氏のインタビュー)
 http://kazuyan.hatenablog.com/entry/2016/07/28/133000
 (「BlaBlaCarにカーシェアリング事情について教えてもらった!!!」という記事)
 などの記事をまとめますと
 
ライドシェアの問題としては
 ・乗客の安全性の確保
  乗客にとっては、事件や事故に巻き込まれる危険。
  海外では、薬物を盛られたり、性暴力被害を受ける、飲酒運転される、
  という例があったそうです

  タクシー会社だと、ドライバーの身元も管理できるし、
  運転前のアルコールのチェックや体調管理も会社がするので保証がある。
  個人の場合、個人の責任に任されるのが不安ですね。

 ・ドライバーの安全の確保
  保険などはドライバーの自己責任、
  事故があったときはライドシェア会社は何も責任がない

 ・ドライバーの労働条件が保障されない
  ドライバーは、車両の経費は自己負担、
  社会保障制度もなく福利厚生もないという厳しさがあるそうです。
  つまり、しんどくても自分で全部やらねばならない、休みや最低賃金の保障もない。
  収入確保のため、ダブルワーカーで無理して働いている場合もあるので
  居眠り事故とか、事故があったときどうするのか、という問題にもなるようです

 また、番組では、現在日本はライドシェアが禁止、という話がありましたが
 ライドシェア大手ウーバーの試験運行が、今年2月福岡県で行われたそうです

 これは「みんなのウーバー」というサービスで、
 具体的には、利用者はスマホのアプリで希望の場所を指定する
 そのときシステムに参加しているドライバーが近くを走っていれば、タクシーのように送迎してくれる
 …というもの
 利用料金は無料だが、
 ドライバーにはデータ収集に協力した報酬として、ウーバーから報酬が支払われる仕組み

 しかし結果的には、国土交通省から中止が入ったそうです
 理由としては、報酬があるのは有償運送(白タク行為)になること、
 額も経費分以上の大幅な額だったケースがあったそうです。
 (ドライバー募集の広告も「儲かりますよ」的なものだったらしい)
 それからドライバーの自動車保険の問題、
 トラブル時の裁判は海外で行う契約内容で、
 これでは利用者双方の安全が確保できない、と国は考えたようです

 …というわけで、日本では導入までの道のりは長そうですが
 これは海外と日本との歴史的な違いや国民性の違い、というのもあるみたいです

 海外では、タクシーの数が足りていないため、タクシーに代わる足の需要があったこと、
 もともと乗り合いが推奨され、ライドシェア的な乗り方には抵抗がなかったこと、
 そしてこれにIT技術の進歩があった、ということで普及したようです
 また、ぼったくりの懸念については、
 海外では高速代やガソリン代、駐車場代など根拠のある額を提示すれば問題ない、
 という了解があるようです

 しかし日本の場合、タクシー料金や台数は、
 市場に任せるのではなくむしろ国が規制していた歴史がある。
 これは規制というか、利用者を守るため、という意味合いが強かったようです。

 というのは、日本でタクシーが始まった頃はドライバーと利用者が直接料金を交渉していた
 しかしこれではボッタクリもあるので、
 それを防ぐために運賃メーターと統一料金を導入した
 また、ドライバーの営業区域を決めているのも、
 一ヶ所にタクシーが集中しないようにするため
 それからタクシーには特別な二種免許が必要なのも、ドライバーの質を保証するためだった

 日本のタクシー業界の主張としては
 タクシーがライドシェアより高いのは、
 運転手に二種免許を取らせる費用や、
 アルコールチェックや車の整備費用などの経費がかかるから、というのがある。

 利用者側としても、全く見知らぬ人と密室で一緒、というのは怖いと考える人が多い

 つまり、日本の場合、利便性より安全性を重視する気持ちが強いし、
 都市部をのぞけばタクシーがそんなに足りないわけでもない。
 そのために慎重にならざるを得ないところがあるのだろう、と思われる。

 とはいえライドシェアは、又吉さんが最後にしていたように
 いろんな変化をもたらしそうです。

 1つはタクシー業界の変化。
 タクシー業界としても、ライドシェア全否定ではなく、
 いいところは見習おう、という動きはある。
 後半で紹介されていた
 ・配車アプリの導入
 ・事前確定運賃の導入
 などはその現れだろうし、
 タクシーのライドシェア的な乗り方が、
 過疎地域での乗り物手段としても活用できそうな期待もあります。

 そしてもう1つはライドシェア会社側の変化。
 最近はライドシェア会社も多様化しているらしく、
 ウーバーとは別タイプのものもたくさん出ている。
 そのうち、ヨーロッパではウーバーよりも人気なのは
 「ブラブラカー(blablacar)」だそうです
 
 これは、相乗りみたいなサービスで、
 長距離移動や旅行など、目的地に自家用車で移動する人が、
 同乗する人を募集する、というもの
 
 ウーバーと何が違うかというと、
 こちらはドライバーは営利目的ではなく、
 あくまで自分の用事のついでにほかの人も乗せてあげる、というもの。
 儲けを狙うというより、一緒に旅を楽しもうよ、という感じらしい。
 このため報酬は少ないが、
 それでガソリン代や高速代も浮くし、エコでもある、旅の連れもできるということで 
 満足感を得る人が多いらしい

 こちらでも安全性は問題になるが、
 「blablacar」では、身元確認をきちんとする仕組みを作ったり
 保険会社と共同でライドシェア特化型保険を作る、などの取り組みをしているそうです。
 (https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171026-00010003-dime-sci
 
 日本では同様のものが「notteco」という会社が行っているそうです
 こちらは保険は自己責任だそうですが、身元確認はきちんと行っているようです。
 過疎地域では取り入れる動きもあるそうで、
 北海道天塩町で実証実験が行われているそうです。

 そういえば、うちの地域は過疎っていうほど田舎ではないが、
 コミュニティバスに乗る人が少ないのか、
 いつの間にか定期便から予約制タクシーになっていました。
 今後はこれが、ライドシェアというか相乗りバスみたいになっていくんかな…とも思いました。

 しかしこういう仕組み、病院の診察に行きたいお年寄りとかに良さそうだけど、
 そこまでお年寄りにスマホなど使いこなせるかは不安なので、
 もし過疎地域に導入するなら、使いやすいシステムも開発してほしいな~と思います。

・マジョリティジャッジメント、はシンプルだけど面白いなと思いました。
 以前多数決の回で、多数決も完全ではない、やり方によっては結果が変わってしまう、
 というのがお笑い芸人3組への投票で示されていましたけど
 好みって人それぞれなので、
 評価システムも完璧ではなく、見る人の読み方によっては判断が変わるんかもしれないなと思いました。

 ならば平均を出せばいいのではないか、と思うんだけど、
 好き嫌いが極端に分かれそうな店の場合だと問題になるのかな。
 そういう店は、好きでハマる人はめちゃんこ高い点をつけるだろうけど、
 数としては少なくて、敬遠する人が大多数、という場合だと
 平均よりも中央値を取る方が、よりましな評価が出るんかな…と思ったりしました。

 ちなみに私はひねくれものなので?本でも店でも、悪い評価の方から読みます。。
 どのポイントが気に入らないのかを見て、
 それが自分にとってダメかどうかで判断します。

 ライドシェアとかタクシーって関係ないんかな~と思っていたけど
 いろいろ勉強になりました。
 うーん、でも自分がライドシェア使うかは微妙…
 (海外の旅行先とかならいいけど、日常生活では怖いかも)

 というわけで今回はこの辺で。
posted by Amago at 11:24| Comment(0) | テレビ(オイコノミア) | 更新情報をチェックする

2017年12月06日

「ニュートリノ」(多田将)「ブラックホールをのぞいてみたら」(大須賀 健)

「ニュートリノ」(多田将)「ブラックホールをのぞいてみたら」(大須賀 健)

どちらも物理学者さんが書いた入門的な物理学の本なんですが、
難しい話を分かりやすく書く、
ということに感心させられた本です。

「ニュートリノ」(多田将)
この本の筆者は、高エネルギー加速器研究機構でニュートリノなどの研究をされている方だそうです。
ネットで見ると金髪で結構インパクトありそうな方ですね(笑)

ニュートリノ、というと、
日本人でのノーベル賞受賞で話題になっていましたが
素人がニュースでその研究内容を見てもいまいち分からない。
マスコミでは研究の意義が十分伝えられていない、
ということで書かれた本だそうです。

内容としては
〇そもそもニュートリノとは何か
〇反物質とは何か
〇ニュートリノはどうやって検出するか
〇カミオカンデ、スーパーカミオカンデは何をしたのか
〇これからのニュートリノ研究

…という感じです。
後半に行くにつれだんだんハードになって理解が怪しくなるんですが(笑)

〇ニュートリノとはそもそも何か
 ニュートリノというのは、予想から始まった物質なのだそうです
 中性子が崩壊して、電子と陽子に分かれる反応で、
 反応の前後でエネルギーの総量が合わないことが分かり、
 その分放出される物質としてニュートリノ
 (正確に言えば反ニュートリノ、ニュートリノの反物質)
 が考え出されたのだそう

 このうち、前半では筆者は
 「中性子」「電子」「陽子」って何?
 さらにそれより細かいレプトンとかクオークって何?
 「反物質」って何?
 っていうところからかみ砕いてくれていました。

 しかも説明に使う例えも面白くて
 電子の「電荷」や強い力に働く「色荷」は
 「猫荷」
 (猫好きな人が猫の写真に反応する様子
 …嫌いでも好きでもない人は中性なんだそうです)と例えていたり
 「反物質」と「物質」は、お金を借りる人、貸す人に例えていたり

 また、ニュートリノは毎日大気中でも大量に生成されているんだそうですが
 それなのに
 「今日は日差しきついわあ」と同じく「今日はニュートリノきついわあ」
 とならないのはなぜか、という表現がなかなか良かったです(笑)
 (普通の物質と反応しないので、大きな地球すらもスカスカに通り抜けて、
 反応する確率はごくわずかなんだそうです)

後半はちょっとハードになってきまして、
〇ニュートリノの検出、の方法は
 中性子+ニュートリノ→電子+陽子
 の反応を起こさせて、このとき生じる電子を検出するのだそうです。

 しかも電子だけ検出すると機器が高いので、別の方法を使う。

 電子を水の中で高速で移動させると、
 電子が光より速く進めるので、光が衝撃波となって観測されるんだそうで
 その衝撃波(チェレンコフ放射)が描く円みたいなのを観測するんだそうです。

 つまり、ニュートリノ→電子→衝撃波→軌道、
 という少々まどろっこしい手順を踏んでいるんだそうだ

 カミオカンデはそれを世界初に検出した装置ですが、
 もともとカミオカンデは陽子の崩壊を検出するための装置だったそうです。
 しかし、陽子の寿命が計算違いで思っていたより長く、すぐには検出できないことが分かった
 (「理論屋はよくこういうことをやらかします」
  と書いているのが面白かったです(笑))
 ニュートリノ検出用に仕様を変えたのだそうです

 そこへ、超新星崩壊、という現象がたまたま起き
 この現象で発生したニュートリノをとらえたのだそうです
 筆者はこれは棚ぼた的な発見ではなく、
 ちゃんと備えていたからこそだということを強調していました(笑)
 
〇ニュートリノ振動、今後のニュートリノ検出
 これから先はさらにハードな内容…

 「ニュートリノ振動」とは、2015年のノーベル賞のテーマで
 これを実証したということで日本の梶田氏も受賞しています。
 これについての解説もありまして、私の理解した範囲でかくと
(間違いあったらすみません)
 ・ニュートリノには3世代あって、
  電子からできる電子ニュートリノ、
  ミューオンからできるミューニュートリノ、
  タウロンからできるタウニュートリノがある
  (大雑把にいうと大きさが違うらしい)

  これら3世代のニュートリノは素粒子なので、波の性質を持つが
  これら3世代は、時間がたつにつれてお互い周期的に変換していく、
  …というのがニュートリノ振動、という現象なんだそうです。

  この理由を説明したのがニュートリノ振動理論で、
  それによると、電子、ミュー、タウの違いは見かけの違いであり
  いずれも3種類の波の混合物で、
  その3種類の波の混合組成が違うため違って見える(行列式であらわされるらしい)

  そして、時間が経つにつれて、その波の混合組成が変化していくので
  電子、ミュー、タウのニュートリノは周期的に互いに変換していく
 
  …これが起きると、大気中ニュートリノは
  例えば日本で測定すると、日本の大気のニュートリノ組成と
  ブラジル(地球の裏側)のニュートリノ組成は
  測定までに届く時間に差があるので、違いが出るんだそうです

  そして実際にスーパーカミオカンデで大気のニュートリノを測定したところ
  実際に違いがあることが分かり、
  この理論が正しいことが証明されたのだそうです。

  そしてこの理論の意義というのは、
  ニュートリノに質量があることを示した、ということなんだそうです。
  (ニュートリノは質量がないと考えられていたのだそうだ)

  というのは、ニュートリノ振動が起きる、ということは
  それぞれのニュートリノは別の波長を持つことを意味していて、
  波とはエネルギーなので、各ニュートリノにエネルギーがあることになる
  そうすると、アインシュタインのE=mc2乗の式により、エネルギーは質量と等価なので
  それぞれが質量をもつことになるんだそうだ
  (質量が無いなら、お互いの波長は一定のはずなのだそう)

  筆者の所属する高エネルギー加速器研究機構ではこの現象を人工的に起こして
  ニュートリノ振動はたしかにあることを証明したそうです

 ・現在では
  現在、この世界にはなぜ反物質がほとんどなくて物質だらけなのか、
  という謎が残っているそうです
  これは「CP対称性の破れ」という現象に由来していると考えられているそうです

  (+、-の荷電だけ違って後の物理的性質が同じ物質どうしはC対称、
   鏡で映して反転するだけで、あとの物理的性質が同じ物質どうしはP対称、
   物理学の法則では、これらの粒子、反粒子は対になって存在するはずだが
   粒子の崩壊など、「弱い力」が介在する世界では、それが覆されている場合があるらしい)
  
  この破れがなぜ起こるのかは謎だったそうですが
  「クォーク(強い力が働く粒子)が3世代あればCP対称性の破れは起こりうる」 
  とする理論を考えたのが小林氏、益川氏で、
  2008年のノーベル賞はこの理論が受賞対象だったそうです
  (理論発表当時はクオークが2世代だけで、この理論の予言通り3世代めがのちに発見されたらしい)

  この理論自体はよくわかんなかったんですが
  筆者は「家族でも3世代の方が2世代よりうまくいく」
  という例えをしてくれて、なんとなくわかった気分になりました(笑)

  まあとにかく、この世界に反物質が無いのはなぜか?という謎は解明されそうです。
  もし物質と反物質が存在すれば、それらはぶつかって消滅するが
  その際質量分のエネルギーを放出、つまり大爆発を起こす大変な事態になっちゃうのですが
  それはどうやらこの地球上では起きそうにないらしい
  
  これからはこの理論の実証が残っているそうで
  筆者によると、ミューニュートリノ、反ミューニュートリノを飛ばして
  それらの振動に違いがあると分かれば、この理論が証明されるんだそうです

  筆者によると、ニュートリノ振動とか、CP対称性の破れは日本人の方が考えた理論で、
  (特にニュートリノ振動を考えた坂田氏は、ノーベル賞候補にもなっていたが病死されたそうです)
  弟子たちが、どうしても日本で検証してやるぞ、
  という執念みたいなものがあったそうで、
  理論はよくわかりませんが、少なくともその意気込みは伝わってきました。。


「ブラックホールをのぞいてみたら」(大須賀 健)
 こちらはブラックホールについての本。
 筆者は理論天文学者だそうで、
 数式を使わずに説明する、というコンセプトが徹底されていて
 理系でなくても馴染めそうな本でした。
 しかも筆者の人柄がにじみ出るような温かい文章がいいです。

 こちらは構成としては
 〇ブラックホールとは何か
 〇アインシュタインの功績
 〇ブラックホールの発見
 〇ブラックホールの周りは輝いている
 〇ブラックホールはどうやって生まれたか
 〇宇宙の終わりはブラックホールも消える?

〇ブラックホールとは何か
 では、ブラックホールとは、
 物質がぎゅうぎゅうに集まりすぎて自分の重力でつぶれてできたもの、
 光さえ飲み込んでしまう、という話とか、

 ブラックホールの特異点(中心)には物質がスカスカだとか
 ブラックホールの事象の地平面(境目)にいる人を遠くから見ると時間が止まって見える
 などの不思議な現象、それはなぜかを説明していました

 ホワイトホール、ワームホールの話も少し触れられていました

〇アインシュタインの功績
 ブラックホールは、アインシュタインの一般相対性理論から予言されたものなので、
 一般相対性理論はブラックホールの生みの親みたいなものだそうです。
 そこで、アインシュタインの功績についてここでは書かれています。

 アインシュタインは量子力学でも功績を残しているそうですが(ノーベル賞の対象は量子力学の功績)、
 やはり彼一人でほぼ完成させた相対性理論は偉大らしい
 
 この一般相対性理論は
 「重力により空間がゆがむ」という話ですが
 これをニュートン力学と比べて書いてあるのが分かりやすかったです。

 ニュートンは2つの物体が引き合う万有引力を発見し
 万有引力が物体の質量に比例し、2つの間の距離の2乗に反比例することを発見した

 これにより天体運動を説明した功績があるそうですが、
 しかし重力は何により引き起こされるか、は説明できなかった
 というのは、普通力は接触するものどうしで働くのに、重力は何も接触してないのに働く
 いわばユーレイみたいな力だというわけです

 しかしアインシュタインはこれを「重力で空間が歪んだから」
 と説明して解決した、ということです

 筆者は「空間の歪み」を、空間を平面のゴム板みたいなのに見立てた図で
 重たいボール(強い重力を持つ物体)が乗っかるとゴム板がへこむので、
 別のボールが勝手に転がる、と説明していて
 絵もついていたのでわかりやすかったです
 
 ブラックホールはこの凹みが無限大に深いところ、だということです

 相対性理論が予言する現象についても、この章では書かれていて
 ・波長の赤方遷移
  音や光は波長の性質を持つが
  重力が大きいところだとその波も引き伸ばされて、波長が大きくなる、つまり振動数が小さくなる
  重力がとてつもなく大きいブラックホールの近くにいる宇宙船は、
  遠くから見るとスローモーションに見えるのもこのせい、と書いていました

 ・重力波
  重力の大きいものが空間中で動くと、空間がトランポリンみたいに揺れて波が起きる
  この重力波はよほど大きい重力からでないと揺れが産まれないが
  2016年、2つのブラックホールの合体による重力波が観測され
  (これは今年のノーベル賞ですね)、相対性理論が証明された、という話も書いてありました

  ほか、アインシュタインの理論が実測で証明されていった経緯とか
  アインシュタインには運命も味方していた、という話もあって引き込まれました
  (実測での証明は、実際に行われた時より4年前に計画があったそうなのですが
   第一次大戦のため幻に終わったそうです
   しかしそのときは理論が未完成で、計算のずれがあったので
   もし行われていたら「この理論は間違い」とされていたのかもしれないのだそう
   戦争が良かったわけではないが、運命も天才に味方した、ということなんでしょうかね…)

○ブラックホールの発見
 ブラックホールは、アインシュタインの一般相対性理論が出た時
 シュヴァルツシルトさんという方が解いて出した特殊解の結果、予言されたのだそうです。
 (ちなみにこの方は、従軍中にも研究されていたのだそう)
 しかしアインシュタイン自身はブラックホールにあまり興味を持たず、進まなかった

 しかし意外なことに、恒星の研究から、ブラックホールが存在しうることが分かったそうです
 当時は恒星は燃え尽きると白色矮星になる、と考えられていたが
 チャンドラセカールさん、というインド出身の方が
 「質量がある程度以上大きい星では、自らの重力でどんどんつぶれていく」
 ということを証明したそうです
 この「自らの重力でつぶれた星」の成れの果てがブラックホール、というわけです

 この理論は当時イギリスのエディントンという有名な科学者に否定され、論争になった
 しかしそのあとブラックホールの理論を勧めたのは意外にもエディントンの研究だった…

 という話は読んでいて引き込まれました。
 
 そのあと実測でもブラックホールではないか?という天体は発見されて
 今ではいろんな質量のブラックホールがあること、
 銀河の中心には大質量のブラックホールがあること、
 などが分かっているそうです

 現在では、いろんな望遠鏡を集めて一つの望遠鏡のようにして
 ブラックホールを直接見るプロジェクトが進んでいるそうです
 
〇ブラックホールの周りは輝いている
 ブラックホールは真っ暗な印象があるが、
 実は周りに吸い込むガスさえあれば光り輝く場合もあるのだそうだ。

 これは、ブラックホールは周りの物質を吸い込んでいるが
 穴が小さいのでいっぺんにたくさんは入らず、
 入らない物質はガスとなって周りを漂っている
 そして、この周りにあるガスが、ブラックホールの特異点に引き込まれるとき
 摩擦で熱を出して、それが光になって放出されるらしい

 この光はかなり温度が高く、強力なので
 遠い星からも観測され、クエーサーとして昔から知られていたそうです

 ブラックホールって真っ暗というイメージだったので
 へえ~明るいんだ~と思いました
 (ただし可視光の範囲ではないので、目で見て輝いているわけではないみたいですが)
 
〇ブラックホールはどうやって生まれたか
 ブラックホールには大きさがいろいろあって
 太陽の10倍くらいの質量のものもあれば
 10億倍などとてつもない質量のブラックホールもあるらしい 

 しかしこの大質量のブラックホールが130億光年のところにもあるが
 これだと地球が誕生してから8億年でブラックホールができなくてはいけない

 しかし、ブラックホールはそんなに急激に大きくはなれないんだそうです
 というのは、ブラックホールの周りにはガスがあるが
 このガスの光が明るすぎると、光の力でガスが外へ行こうとし
 なかなか吸い込めない
 長い時間をかけないと大質量のブラックホールはできないそうです

 ならばこの大質量ブラックホールはどうやってできたのか?
 という話をしています

 3つほど説があって
 ・ブラックホールが吸い込める物質は意外と多いかもしれない
  ブラックホールの周りのガスが明るすぎると、光の力でガスが吸い込めない…とありましたが、
  光が上下方向にも抜けていけば、横方向の光の力が弱くなり
  その分ガスがブラックホールに引き込まれやすくなるのでは…という考え方らしい
  筆者はこれをシミュレーションして、ブラックホールは数百万年で大きくなれる、
  と証明したのだそうです
 
 ・小さいブラックホールが集まって一緒になる
  ブラックホールは意外とたくさんできている、ということが分かっているそうで
  これが集団になって集まればぶつかる確率も高くなり、不可能ではないらしい
 
 ・大きなブラックホールが一気にできた
  初期の宇宙では密度やエネルギーが高いので、これも起こりうるらしい

 いずれにせよ、まだどれが有力、というのは確定していないようです。

 また、各銀河には、中心部付近に大質量のブラックホールが存在するそうですが
 そのブラックホールの大きさは、銀河の大きさにほぼ比例する、
 という関係も分かっているそうです。
 しかしこれは、体が大きいなら頭が大きいんじゃないの?という単純な話ではないそうで
  大質量ブラックホール自体はサイズは大きくない
  (大質量、というのは質量が大きいというだけで、サイズは小さい)
  さらに、ブラックホールの重力は強いが、その重力が及ぶ範囲は狭い
 なので、とてつもなく大きい銀河のサイズに比して、大質量ブラックホールの影響力は小さく
 なぜ相関関係があるのかは謎なんだそうです
 それについても、現在研究中のことが紹介されていました
  
〇ブラックホールが消える?
 今のところ、宇宙が終わるときは
 宇宙のそこら中にあるブラックホールが、星やガスなどを飲み込んでしまう、
 と考えられているそうです
 ただし宇宙の背景放射(宇宙が産まれた時の放射)は
 量が多いので吸い込み切れず、
 ブラックホールと背景放射だけ残る、と考えられているそうです

 しかし、スティーブン・ホーキングが
 量子力学と一般相対性理論を融合させて考えた理論によると
 ブラックホールからはわずかに物質が放射されているらしい
 (ホーキング放射、というそうです)
 ただし、普段のときは、ブラックホールが吸い込む重力の方がはるかに大きいので
 放射の影響はほとんどない
 
 しかし宇宙の終わりになると吸い込む物質も無くなるので
 ブラックホールからは放射されるのみとなり
 ブラックホールすら消えてしまうらしい
 その時点では宇宙は膨張しきっていて、物質が集まって再び宇宙を作る力もない、
 熱的な死を迎えるのだそうです…
 
 …というブラックホールの悲しい終わり方でこの本は終わっていましたが
 あとがきで筆者の執筆生活について書かれていてほっこりした気分になりました(笑)
 大変そうな執筆作業なんですが、なんかほのぼのした書きぶりがファンになりそうです。


昔は科学者さんって「俺の研究は分かりたいやつだけ分かればいい」みたいな感じで
私が学生時代に受けた授業とかも、
マニアックすぎてさっぱりわからん人も多かったんですが
(私の偏見かもですかね(笑))

最近はこういう一般向けの本を、ユーモラスに書いてくださったり
テレビで説明してくださる方々がたくさんいらしゃるのがいいなと思います。
自分が高校くらいのときに、こういう本読みたかったな。。

昔って、勉強ってカッコ悪いというか、
一生懸命やると「がり勉」とかからかわれていた時代もあったけど
学ぶ、新しいことを知るのはおもしろい(interestingという意味で)
そして、世界はまだまだ分からないことだらけなんだな、とも思います。

しかしこう言う本を読むと
難しい理論を一般向けの言葉に置き換える努力には頭が下がります…。
大須賀氏も、分かりやすい表現を見つけるのに苦労して何回も書き直した、
と書かれていました。
私も、文章ってのは分かりやすいのが理想だな、と思っているので
その姿勢はぜひ見習いたい、と思いました。

お二人とも文章が面白かったので
ぜひぜひ直接読まれることをおすすめします。
そんなに分厚くないので読みやすい本だと思います。

というわけで、今回はこの辺で。
posted by Amago at 13:21| Comment(0) | 本(科学) | 更新情報をチェックする